JP3978642B2 - 杭と桁の結合構造体 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、建設工事における杭と桁の結合構造体に係り、特に杭頭に加わる荷重が非常に大きい場合に好適な杭と桁の結合構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の杭を打設し、これら杭頭間を桁で結んで上部構造体を支持する構造は、一般に建築工事において採用されている。その建築工事の一例として、図8に示すように、拡幅道路を新たに構築する山岳道路工事がある。
この山岳道路工事は、所定間隔をあけて地盤Gに打設した複数本の杭2A、2Bの頭部(以下、杭頭)2aにトッププレート4を溶接により固定し、谷側に突出しながら杭2A、2Bの上方に配置した桁6の下端を、トッププレート4に溶接により固定し、桁6上に床版10を配置して、既存道路R1に平行に、谷側に突出した拡幅道路R2を設けた道路としている。
【0003】
この構造によると、杭2A、2Bの打設誤差などにより桁6と杭頭2aとの位置が多少ずれている場合であっても、問題なく杭頭2aと桁6とを固定できるというメリットがある。
また、既存道路R1側に大型車両等の通行による大荷重が加わると、桁6と杭頭2aとの結合部分に対して桁6から非常に大きな押し込み荷重が作用し、拡幅道路R2側に大荷重が加わると、杭2Aを支点として杭2Bの桁6と杭頭2aとの結合部分に対して桁6から非常に大きな引き抜き荷重が作用するが、杭頭2aと桁が6がトッププレート4を介して強固に固定されているので、それらの荷重に十分に耐える構造としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した杭頭2aと桁6の結合構造は、現場における溶接作業が律速工程となり、工期が不安定で、品質も一定とするのが難しく、しかもコスト的にも割高になるデメリットがある。また、杭頭2aとトッププレート4との溶接作業のために杭頭2aよりもかなり下方まで地盤Gを掘削する余計な作業を必要としていた。
【0005】
ところで、現場溶接作業を不要とする杭頭と桁との構造として、例えば特開平8−284159号公報に開示されているように、外面突起付きの杭の杭頭の外周を覆うように、桁が連結した内面突起付きの大径鋼管を配置し、それらの相互間にコンクリートを充填してその付着力により杭頭及び桁を一体化する構造が知られている。
【0006】
しかし、この特開平8−284159号公報に開示した構造を図8の工事に採用すると、前述したように桁6と杭頭2aとの結合部分に非常に大きな押し込み荷重、引き抜き荷重が作用するので、杭頭と大径鋼管との間のコンクリート充填高さを大きくして杭頭及びコンクリートの間、コンクリート及び大径外管の間の剪断抵抗を大きくする必要があり、桁6と杭頭2aとの結合部分が過大に大型構造となるおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、杭の打設誤差により桁と多少の偏心が生じた場合にも簡単に結合が可能であり、溶接を不要として現場作業の省力化を図るとともに、コンパクトな構造ながら杭頭に大きな荷重が作用してもそれに対抗し得る耐力を発生することができる杭と桁の結合構造体を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、杭と桁とを強固に繋ぐ結合構造体であって、円筒部及び当該円筒部の上部開口を閉塞する注入口を有する蓋部とからなる外管が、前記円筒部の外周に桁を接続した状態で、該円筒部の内周面で杭の杭頭部を取り囲み、前記蓋部の下面及び前記杭頭部の頂部との間に蓋部補強部材を介装するとともに、前記蓋部に設けられた注入口から注入されたモルタル又はコンクリートが、少なくとも前記外管と前記杭頭部との間に生じた隙間に充填され、さらには前記蓋部補強部材が埋設されるように充填されることで、前記杭及び前記桁を一体化するようにした。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の杭と桁の結合構造体において、前記蓋部補強部材を、複数本の板状部材を井桁状に組み込んで形成した。
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の杭と桁の結合構造体において、前記杭頭部と前記外管とを、互いに隙間を設けた状態で補強ボルトで連結した。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明に係る実施形態を具体的に説明する。
図1は、第1実施形態の杭と桁の結合構造体をその平面について示したものであり、図2は、図1のA−A線断面図を示したものである。
これらの図の符号12は、地盤に打設されている中空円筒形状の杭であり、この杭12の杭頭部12aを、外管14が隙間を設けた状態で取り囲んでいる。なお、符号16は、外管14と杭頭部12aの隙間の下側を閉塞する閉塞ブラケットであり、杭12の外周に締め付けた状態で配置されている。
【0011】
この閉塞ブラケット16は後述する杭頭部12aと外管14との隙間へモルタル、或いはコンクリートなどを充填する際の底板として使用するものであり、本発明を構成する部材でない。モルタル、或いはコンクリートなどの施工、養生が終わった時点で取り外して別の杭頭部の施工に再利用することができる。もちろん、再利用する手間を省力する場合には放置していても良い。
【0012】
外管14は、水平方向に延在するH形鋼からなる桁18の端部が外周に溶接により接続され、杭頭部12aの外径より大きな内径とした円筒部20と、円筒部20の上部開口部を閉塞する蓋部22とを備えた部材である。そして、蓋部22の中心位置には、蓋部22の外部から内部に貫通する注入穴22aが形成されているとともに、蓋部22の外周側にも、周方向に所定間隔をあけて複数の空気抜き穴22bが形成されている。なお、外管14と桁18の端部との接続、円筒部20及び蓋部22からなる外管14は、予め、工場等で製作されている。
【0013】
また、外管14は、蓋部22の下面と杭頭部12aの頂部との間に補強ビーム24を介在させた状態で杭頭部12aを取り囲んでいる。
補強ビーム24は、図3に示すように、金属製の複数の板状部材24aを互いに直角に交叉するように接続して外観が井桁状をなす部材であり、予め、蓋部22の下面に溶接により固定されている。
【0014】
そして、蓋部22の注入穴22aからモルタル又はコンクリート26を注入していく。注入したモルタル又はコンクリート26は、杭12の下側から充填されていき、杭頭部12aまで充填されていった後、杭頭部12aから溢れ出て、補強ビーム24の各板状部材24aの間を通過して外管14と杭頭部12aとの間の隙間に充填されていく。この際、外管14と杭頭部12aとの間に存在している空気は、蓋部22に形成した空気抜き穴22bから外部に抜け出ていく。
【0015】
なお、モルタル、或いはコンクリートなどは、杭12の内部全体へ充填される必要はなく、外管14に対応する範囲程度で杭12の内部へ充填されれば強度上十分である。予め、杭12内部に底板を設けておくことで、適当な位置で杭12内へモルタル、或いはコンクリートなどを充填することができる。また、杭14としてコンクリート杭を使用した場合には、当然、杭頭内部へモルタル、或いはコンクリートが注入されることはないが、本発明の効果を得るのに妨げとなるものではない。
【0016】
この第1実施形態の杭と桁の結合構造体によると、従来、不可欠であった現場溶接の工程を省くことができるとともに、杭12の打設において多少の偏心があっても、それを解消することができる。
また、蓋部22の下面と杭頭部12aの頂部との間に補強ビーム24を介在させたことにより、桁18に押し込み荷重(図2のF1で示す荷重)が作用しても蓋部22の剛性を高めることができる。すなわち、結合構造体を道路工事の躯体として使用すると、大型車両による大荷重の押し込み荷重F1が桁18に加わり、蓋部22を上部に押し上げようとする杭反力が杭頭部12aから働くが、複数の板状部材24aを井桁状に組み込んでなる補強ビーム24は、自身の変形耐力が大きいので蓋部22の剛性を高める。したがって、本実施形態の結合構造体は、桁18に押し込み荷重が作用する場合、桁18と杭頭部12aとの結合部分を過大に大型構造としなくても、強度を長期にわたって維持することができる。
【0017】
さらに、モルタル又はコンクリート26は、補強ビーム24を構成する井桁状に組み込んだ板状部材24aの間を通過して充填されるので、杭12の内部、杭頭部12a及び外管14の間の隙間への充填をスムーズに行うことができる。
加えて、補強ビーム24として井桁状に組み込んだ板状部材とすることで、杭12の打設において多少の偏心があった場合でも、井桁に組んだ中央の交差部分の少なくとも3点以上が杭頭部上に載置させることが可能であり、大荷重が掛かったときに補強ビームと杭頭の間の荷重伝達を良好に維持でき、好適である。
【0018】
次に、図4は、第2実施形態の杭と桁の結合構造体の平面について示したものであり、図5は、図4のB−B線断面図を示したものである。なお、第1実施形態と同一構成部分には、同一符号を付してその説明を省略する。また、図5では、便宜的に、補強ボルト28、ナット30を断面をずらして記入した。
本実施形態は、杭頭部12a及び外管14を補強ボルト28が貫通しており、この補強ボルト28の両端部をナット30が螺合して締め付けている。なお、杭頭部12a、外管14には、現場或いは工場等でボルト貫通孔が設けられているものとする。
【0019】
この第2実施形態の杭と桁の結合構造体は、第1実施形態と同様に、現場溶接の工程を省くことができるとともに、杭12の打設において多少の偏心があっても、それを解消することができる。
また、本実施形態は、補強ボルト28が杭頭部12a及び外管14を貫通していることで、桁18に引き抜き荷重(図6のF2で示す荷重)が作用しても杭12と桁18の結合力を高めることができる。すなわち、結合構造体を道路工事の躯体として使用すると、他の箇所に配置した杭12を支点として図5の桁18に大荷重の引き抜き荷重F2加わる場合があるが、補強ボルト28の曲げ耐力が作用することで杭12と桁18の結合力を高める。
【0020】
したがって、本実施形態の結合構造体は、桁18に押し込み荷重、或いは引き抜き荷重の両者が作用する場合、桁18と杭頭部12aとの結合部分を過大に大型構造としなくても、強度を長期にわたって維持することができる。
【0021】
【実施例】
図1から図3に示した第1実施形態の結合構造体を図6に示す山岳道路の拡幅工事に採用する場合に、第1実施形態の結合構造体を構成する補強ビーム24の形状、材質を設定した。
谷側に突出した拡幅道路R2に大型車両等が通過する際には、桁18に100トン(tf)[9.81×105 N]の押し込み荷重F1が加わるものとした。この場合、杭18から杭反力が作用する補強ビーム24は、図3に示すように、4本の板状部材24aにより構成されているので、一本の板状部材24aに作用する杭反力は25tf[2.45×105 N]である。各板状部材24aに作用する最大曲げモーメントMmax を3.125tf・m、許容応力度を1400kgf/cm2 [132.3 MPa]、必要断面係数Wを223cm3 とすると、各板状部材24aは、材質をSS400材として、形状を高さ200mm、厚さ35mmの矩形板状体とした。したがって、図6に示す具体例においても、杭12の打設誤差により桁18と多少の偏心が生じた場合にも簡単に結合が可能であり、溶接を不要として現場作業の省力化を図るとともに、コンパクトな構造ながら杭頭部12aに大きな押し込み荷重F1が作用しても対抗し得る耐力を発生する山岳道路の拡幅工事を行うことができる。
【0022】
次に、図4及び図5に示した第2実施形態の結合構造体を、図7に示す山岳道路の拡幅工事に採用する場合に、第2実施形態の結合構造体を構成する補強ボルト30を設定した。
既存道路R1に大型車両等が通過する際には、図6でも説明したように、補強ビーム24を配設したことによって、大きな押し込み荷重が作用しても対抗し得る耐力を発生することができる。
【0023】
それに対して、拡幅道路R2に大型車両等が通過する場合には、図7の左側の杭12を支点として、右側の杭12の杭頭部12a付近に引き抜き力F2が作用する。
ここで、杭12を厚さ9.5mm、直径が508mmになるシーム鋼管とし、外管14を、厚さ9.5mm、直径が711.2mmになるシーム鋼管とすると、ボルト直径が36mmの補強ボルト28を、杭頭部12a及び外管14を貫通させた。
【0024】
この補強ボルト28を使用し、杭12及び杭12の周囲にモルタル(普通モルタル)を充填して杭の引き抜き試験(試験条件:静的載荷試験、破壊までの単調載荷)を行ったが、その結果、補強ボルト28を有しない他は同様の条件になる結合構造体においては荷重の増加は停止したであろうと考えられる点以降もボルトの曲げ耐力により再び荷重が緩やかに増加し240.1tf[2.35×106 N]の最大荷重を確認できた。
【0025】
したがって、図7に示す具体例においても、杭12の打設誤差により桁18と多少の偏心が生じた場合にも簡単に結合が可能であり、溶接を不要として現場作業の省力化を図るとともに、コンパクトな構造ながら杭頭部12aに大きな押し込み荷重F1、引き抜き荷重F2が作用しても、十分に対抗し得る耐力を発生する山岳道路の拡幅工事を行うことができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の杭と桁の結合構造体によると、従来、不可欠であった現場溶接の工程を省くことができるとともに、杭の打設において多少の偏心があっても、正常に結合構造体を構築することができる。また、蓋部の下面と杭頭部の頂部との間に蓋部補強部材を介在させたことにより、桁に押し込み荷重が作用しても蓋部の剛性を高めることができ、杭と桁との結合部分を過大に大型構造としなくても、強度を長期にわたって維持することができる。
【0027】
また、請求項2記載の杭と桁の結合構造体によると、蓋部補強部材を井桁状に組み込んだ板状部材で構成しているので、蓋部から注入したモルタル又はコンクリートは、各板状部材の間を通過して、杭の内部や、杭頭部及び外管の間の隙間に向けてスムーズに流れていくので、充填作業を容易に行うことができる。
さらに、請求項3記載の杭と桁の結合構造体によると、補強ボルトが杭頭部及び外管を貫通していることで、桁に引き抜き荷重が作用しても杭と桁の結合力を高めることができる。したがって、さらに、杭と桁の結合部分の強度を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態の杭と桁の結合構造体を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】第1実施形態で使用している蓋部補強部材を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態の杭と桁の結合構造体を示す平面図である。
【図5】図4のB−B線断面図である。
【図6】第1実施形態の構造体を採用した山岳道路の拡幅工事を示す図である。
【図7】第2実施形態の構造体を採用した山岳道路の拡幅工事を示す図である。
【図8】従来の杭と桁の結合構造体を採用した山岳道路の拡幅工事を示す図である。
【符号の説明】
12 杭
12a 杭頭部
14 外管
18 桁
20 円筒部
22 蓋部
22a 注入穴(注入口)
24 補強ビーム(蓋部補強部材)
24a 板状部材
26 モルタル又はコンクリート
28 補強ボルト

Claims (3)

  1. 杭と桁とを強固に繋ぐ結合構造体であって、円筒部及び当該円筒部の上部開口を閉塞する注入口を有する蓋部とからなる外管が、前記円筒部の外周に桁を接続した状態で、該円筒部の内周面で杭の杭頭部を取り囲み、前記蓋部の下面及び前記杭頭部の頂部との間に蓋部補強部材を介装するとともに、前記蓋部に設けられた注入口から注入されたモルタル又はコンクリートが、少なくとも前記外管と前記杭頭部との間に生じた隙間に充填され、さらには前記蓋部補強部材が埋設されるように充填されることで、前記杭及び前記桁が一体化されてなることを特徴とする杭と桁の結合構造体。
  2. 前記蓋部補強部材を、複数本の板状部材を井桁状に組み込んで形成したことを特徴とする請求項1記載の杭と桁の結合構造体。
  3. 前記杭頭部と前記外管とを、互いに隙間を設けた状態で補強ボルトで連結したことを特徴とする請求項1又は2記載の杭と桁の結合構造体。
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