JP3870871B2 - 架構の補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐震性が不足している既存建物の架構の剛性と耐力を増加させ、もって規準で要求される耐震性能に改善する際等に適用して好適な架構の補強構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
耐震診断の結果、補強が必要と判定された鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造の既存の建物に対して、柱と梁から形成される架構内に枠付の鉄骨ブレースや鉄筋コンクリート造の補強壁等の補強部材を増設して、建物の剛性と耐力を増加させることにより、補強後の構造耐震指標Isを0.6以上にする耐震補強構造が多々採用されている。
このような耐震補強構造では、既存架構と増設した上記補強部材との間で地震時に発生するせん断力等を十分に伝達させるために、既存躯体と補強部材との接合部に所定間隔でアンカー筋(接着系または金属系のあと施工アンカー)を打設し、既存架構と補強部材を一体化する耐力型の補強法が一般的である。
【0003】
図5は、従来のこの種の耐震補強構造における梁と補強枠組との接合部分を示すもので、既存建物の鉄筋コンクリート造の柱および梁1からなる架構に、鉄骨ブレースを有する補強骨組2を配設し、補強骨組2のウエブ2aに複数本のスタッドボルト3を植設するとともに、既存建物の梁1側にも、スタッドボルト3間に位置するようにあと施工アンカーボルト(アンカー筋)4を植設し、さらに当該補強骨組2と梁1との間の空間に、所定の配筋5を施した後に、補強骨組2のウエブ2aとフランジ2bとを型枠として利用してモルタル6を充填・固化させることにより、これらを一体化させたものである。
【0004】
そして、一般にこの種の補強構造を適用した場合のせん断耐力Quは、「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針・同解説」に示された次式(1)および(2)に基づき、いずれか小さい方の値として評価されている。
Qu=Q´u+2αQc (1)
Qu=Qj+pQc+αQc (2)
ここで、Q´u:補強部材のせん断耐力
Qj :梁下面に設けられた接合材のせん断耐力の和
pQc:柱頭のパンチングシアー耐力
Qc :他方の柱の曲げまたはせん断耐力の小さい方
α :変形の状態を考慮した低減係数であり、
1.0=柱せん断破壊、0.7=柱曲げ破壊である。
【0005】
上記評価式(1)および(2)から判るように、補強後の架構におけるせん断耐力Quを増加させるには、(1)式における補強部材自体のせん断耐力Q´uを増加させるのみでは充分ではなく、(2)式の梁下面に設けられた上記補強部材における接合材のせん断耐力Qjおよび柱頭のパンチングシアー耐力pQcも向上させる必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これに対して、図5に示した従来の耐力型補強構造においては、接合材(補強骨組2)のせん断耐力Qjを向上させるために、柱や梁1に多数のアンカー筋4を打設しているため、施工の多大の手間を要するうえに、さらに表面から突出するアンカー4筋が邪魔になって、柱も一緒に補強することが困難になり、よって(2)式における所望の柱頭のパンチングシアー耐力pQcを確報することが難しいという問題点があった。
【0007】
また、上記補強骨組2による補強においては、ウエブ2aとフランジ2bとを梁1等との接合用の型枠として用いているために、当該補強骨組2における強軸が面外方向を向くことになる。このため、地震発生時の終局において、上記補強骨組2のフランジ2bが面外方向に開いてしまい、この結果柱に対する充分な拘束効果を得ることができないという問題点もあった。
【0008】
一方、従来の他の耐震補強構造として、特公平7−74548号公報に記載されているような、エネルギー吸収と変形性能に着眼した靭性型補強が知られている。
この靭性型補強は、鉄筋コンクリート造の既存架構の構面内に、枠部材を密着させて設け、この枠部材内にY型の靭性抵抗型ブレースを配し、柱の外周を鋼板または炭素繊維等で補強するとともに、当該柱の上下端部の少なくとも一方に、内部に埋設される柱主筋の一部を切断して切欠を設けることにより、既存柱と補強骨組の両方の靭性能力を高めたものである。
【0009】
しかしながら、上記公報に記載された補強法は、柱の靭性改善を図るべく、柱に鋼板または繊維等を巻回すとともに、柱主筋の一部を切断して切欠を設けているために、逆に補強用の枠部材から柱に作用するせん断力に対しては、柱頭のパンチングシアー耐力が低下することになり、よって特に上記(2)式によって評価される架構のせん断耐力を向上させることができないという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、柱や梁に多数のアンカー鉄筋を打設することなく補強部材を一体化させ、かつ柱頭の補強も行うことにより、当該架構全体における高いせん断耐力を得ることができ、よって特に既存建物の耐震補強に適用して好適な架構の補強構造を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明に係る架構の補強構造は、建物の柱梁架構内の内周に、鉄筋コンクリート造の補強壁を組み込み、両者間に、アンカー筋を介在させることなく、注入・固化させた充填材のみによって地震時に生じるせん断力を伝達可能に一体的に接合するとともに、上記柱梁架構の少なくとも柱頭部に、上記補強壁から作用するせん断力に対して当該柱の耐力を増大させる横拘束補強を施してなることを特徴とするものである。
【0012】
ここで、柱梁架構と補強構造とを充填材によって地震時に生じるせん断力を伝達可能に一体的に接合するとは、従来の補強構造のように柱梁架構に打設したアンカー筋(あと施工アンカー)のダボ効果でせん断力を伝達するのではなく、地震時に接合部に生じるせん断力を、もっぱら両者間に注入・固化させたグラウトやエポキシ樹脂等の接着剤を用いた充填材による摩擦力や接着強度を利用して、伝達することを意味するものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の横拘束補強が、上記柱頭部の外周に巻回された鋼板または繊維であることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明は、建物の柱梁架構内の内周に、鉄骨造の補強部材を、そのフランジ面を上記柱および梁に沿わせて上記架構内に組み込み、上記フランジ面と上記架構の内周との間に、アンカー筋を介在させることなく、注入・固化させた充填材のみによって地震時に生じるせん断力を伝達可能に一体的に接合するとともに、上記柱梁架構の柱頭部に、上記補強部材から作用するせん断力に対して当該柱の耐力を増大させる鋼板を巻回し、当該鋼板と上記柱頭部の外周との間にグラウトを充填・固化させるとともに、上記鋼板と上記補強部材とを結合したことを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の上記フランジに、上記補強部材の倒れ止めとして作用するスタッドボルトの基端部が固定され、当該スタッドボルトの先端部が、上記充填材を介して上記梁内に埋め込まれていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項1〜4のいずれかに記載の架構の補強構造においては、地震時等に層せん断力が作用すると、その大半は建物の梁下面の上記充填材を介して、および片側の柱の頭部から、それぞれ上記補強部材に入力し、下の階の梁や柱へと伝達される。この結果、架構全体としてのせん断耐力が、上記補強部材のせん断耐力に相当する分、増加するために耐震性が大幅に向上する。
加えて、横拘束補強によって、柱の頭部を外部から拘束して補強することができるために、柱が補強部材からせん断力を受けて膨らむのを拘束することにより、柱頭のパンチングシアー耐力も増加させることができるために、前述の(2)式から明確なように架構全体の補強耐力を高めることができる。
【0016】
この際に、上記補強構造によれば、従来のように多数のアンカー筋を使用していないために、施工が容易であるとともに、例えば既存建物に補強部材等を増設する場合に、騒音、振動、粉塵を発生することがなく、特に建物を使用しながら建物の剛性および耐力を大きくする際に有利である。
また架構のコンクリート強度が小さい場合にも適用可能であり、多数のアンカー筋を打設する際の削孔で架構を傷めることもないため、補強を行う対象建物の拡大を図ることが可能となる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明によれば、補強部材として鉄骨造の骨組みを使用する場合に、そのフランジ面を上記柱および梁に沿わせて架構内に配置しているので、図5に示したものと異なり、上記補強部材と柱梁架構の内周との間を狭くして上記充填材を注入・固化させることが可能となる。この結果、注入すべき充填材の量を大幅に減らすことができ、かつ図5に示したようもののように多数のアンカー筋を用いることなく、当該充填材のみによっても高い接合強度を確保することができる。
加えて、フランジ面を柱梁に沿わせて配設する結果、上記鉄骨が架構の面内方向に強軸となるため、図5に示したもののように地震時に当該鉄骨が面外方向に開くことがなく、よって柱に対する充分な拘束効果も得ることができる。
【0018】
さらに、請求項4に記載の発明のように、上記フランジにスタッドボルトの基端部を固定し、このスタッドボルトの先端部を、上記充填材を介して上記梁内に埋め込んでおけば、地震時に多数回の繰返し載荷を受けた場合でも、上記スタッドボルトが倒れ止めとして作用することにより、補強部材が構面から外れて倒壊することを防止することができるとともに、当該スタッドボルトによるダボ効果によって、充填材の接合強度も補強することが可能となる。
【0019】
また、請求項1に記載の横拘束補強は、各種構成のものを適用することができるが、請求項2に記載の発明のように、鋼板や炭素繊維あるいやアラミド繊維等の繊維を使用することが好適である。この際に、上記鋼板または繊維と柱との取合い部をグラウト充填または接着剤で固めることが好ましい。
【0020】
上記鋼板や炭素繊維またはアラミド繊維等を柱の外周に巻付ける補強は、コンクリートを拘束することで圧縮靭性を改善し、変形性能を向上させる補強として用いられることが多く、特に曲げ降伏が先行するような柱に単独で用いた場合は、水平耐力はそれほど大きくならない。しかし本発明のように柱梁架構の構面内に配した補強部材と併せて用いることで、補強部材とのせん断伝達に必要な柱自身の耐力(主としてパンチングシア耐力)を増大させ、前述の(2)式に示したように、その増大分を含めた耐力を算入することにより、架構全体として大きな補強耐力を得ることが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の架構の補強構造を、耐震性が不足している既存建物の架構の剛性と耐力を増加させる補強構造に適用した場合の一実施形態について説明する。
図1〜図3において、符合10、11は各々既存建物における鉄筋コンクリート造の柱および梁であり、これら柱10および梁11が剛接合されることにより、ラーメン構造の架構が構成されている。
【0022】
そして、上記既存建物の架構に対し、本補強構造においては、先ず柱頭部に、柱10のせん断耐力を増大させるための横拘束補強が施されている。
この横拘束補強としては、柱10の柱頭部におけるせん断耐力を増大させ得るものであれば、各種構成のものが適用可能である。ちなみに、本実施形態においては、図1および図3(a)、(b)に、上記横拘束補強として好適な2つの例を示してある。
【0023】
すなわち、図1中左方の柱10の柱頭部に施した横拘束補強は、同図および図3(a)に示すように、炭素繊維またはアラミド繊維等の繊維12を巻回することによって構成したものである。また、図1中右方の柱10に施した横拘束補強は、同図および図3(b)に示すように、上記柱10の柱頭部に鋼板13を巻回するとともに、当該鋼板13と柱頭部の外周との間にグラウト14を充填・固化させることによって構成したものである。
【0024】
このようにして、柱頭部に横拘束補強が施された柱梁架構内に、H形鋼からなる鉄骨造の補強骨組(補強部材)20が一体的に組み込まれている。
この補強骨組20は、水平枠材21および垂直枠材22によって構成された枠組内に、トラスを形成するブレース23がハ字状に設けられるたもので、全体として矩形パネル状の面材として機能するように構成されている。ここで、補強骨組20は、水平枠材21および垂直枠材22のフランジ面21a、22aが、それぞれ梁11の上下面または柱10の側面と対向するように組み立てられており、これにより当該補強骨組20は、上記柱梁架構の面内方向に強軸となるように構成されている。
【0025】
また、補強骨組20は、その外法寸法が柱梁架構に内接するように形成されており、フランジ面21a、22aと柱10および梁11と間に僅かな隙間の接合目地24を介して上記架構内に配設されている。
さらに、水平枠材21のフランジには、これを貫通する複数本(図では各2本)のスタッドボルト25の頭部(基端部)が図示されないナット等によって固定されており、これらスタッドボルト25の先端部は、梁11に形成された穴部11a内に挿入されている。
【0026】
そして、補強骨組20は、接合目地24と鋼板13の型枠が完了した後、梁11上の水平接合目地の1ヶ所または2ヶ所から、フランジ面21a、22aと柱梁架構との間の接合目地24および上記穴部11a内に充填材が注入されて固化されることにより、地震時に生じるせん断力を伝達可能に、柱梁架構に一体的に接合されている。
ここで、接合目地24に充填する充填材としては、セメントペーストやモルタル等のセメント系のグラウトの他、エポキシ等の高分子樹脂が適用可能であるが、いずれにしても建物に地震力が作用した際に、この充填材が既存の柱梁架構に先行して破壊しない程度の材料強度を有することが必要である。
【0027】
なお、上記柱頭部に巻回する鋼板13は、コの字型に半割にしてその一方を鉛直枠組22と一体として製作すれば、補強骨組20の組立てと同時に施工することができるが、鉛直枠組22とは別個に製作し、補強骨組20の組立てと前後して施工することも可能である。後者の方法においても、最終的には柱断面を囲う鋼板13と補強骨組20とを溶接またはボルトで結合すれば、鋼板13の仮固定が不要になって効率的である。
【0028】
以上の構成からなる架構の補強構造においては、図4に示すように、地震時等に図中矢印で示す層せん断力が作用すると、その大半は建物の梁11の下面から充填材(24)の付着力や摩擦力によって補強骨組20に伝達されるとともに、併せて図中左方の柱10の頭部からも補強骨組20に伝達され、下の階の梁11や柱10へと伝達されることになる。この結果、架構全体としてのせん断耐力が、上記補強骨組20のせん断耐力に相当する分、増加するために耐震性が大幅に向上する。
【0029】
また、本補強構造によれば、従来のように多数のアンカー筋を使用していないために、施工が容易であるとともに、横拘束補強12、13によって柱10の柱頭部を外部から拘束して補強することができ、この結果柱10が補強骨組20からせん断力を受けて膨らむのを拘束することで、柱頭部のパンチングシアー耐力も増加させることができるために、総じて架構全体の補強耐力を高めることができる。
【0030】
加えて、補強骨組20におけるフランジ面21a、22aを、それぞれ柱10および梁11に沿わせて架構内に配置しているので、図5に示したものと異なり、補強骨組20と柱梁架構の内周との間の接合目地24の間隔を狭くして充填材を注入・固化させることができる。この結果、注入すべき充填材の量を大幅に減らすことができ、かつ図5に示したようもののように多数のアンカー筋を用いることなく、当該充填材のみによっても高い接合強度を確保することができる。
しかも、フランジ面21a、22aを柱10または梁11に沿わせて配設した結果、補強骨組20を構成する鉄骨が架構の面内方向に強軸となるため、柱10に対する充分な拘束効果も得ることができる。
【0031】
ところで、上記架構の補強構造においては、柱梁架構と補強骨組20とを充填材によって直接的に結合しているため、接合目地24に生じる引張力を負担できるような鉄筋はない。このため、地震時の水平力を受けて建物の応答が大きくなると、鉛直や水平の接合目地24にはひびわれが発生し、この結果梁11下における補強骨組20との間のずれが生じる虞がある。
【0032】
この点、上記補強構造においては、水平枠材21のフランジにスタッドボルトの基端部を固定し、このスタッドボルト25の先端部を、充填材を介して梁11の穴部11a内に埋め込んでいるので、地震時に多数回の繰返し載荷を受けた場合においても、スタッドボルト25が倒れ止めとして作用することにより、補強骨組20が構面から外れて倒壊することを防止することができ、よって、確実に補強骨組20による補強耐力を得ることができる。加えて、スタッドボルト25によるダボ効果によって、充填材による接合強度も補強することができる。
【0033】
なお、上記実施形態においては、補強部材として鉄骨造の補強骨組20を用いた場合について説明したが、これに限るものではなく、上記補強骨組20に代えて、ブレースとして鉄筋コンクリート造のものを組み込んだ補強骨組や、鉄筋コンクリート造あるいは鉄板からなる補強壁等の補強部材を適用することも可能である。また、鉄骨造の補強骨組を用いる場合についても、上述したH形鋼からなる水平骨組21、垂直骨組22等によって構成する場合に限定されるものではなく、他の種類の形鋼やこれらを組合わせた複合部材、さらには座屈を防ぐための拘束材を備えた部材等の各種の鋼材を使用することも可能である。
【0034】
また、本発明は、上述した既存建物における柱梁架構を補強する場合に限らず、新規建物や既存建物に柱梁を増設する場合にも同様に適用することができ、建物の構造についても、上述した鉄筋コンクリート造の他、鉄骨鉄筋コンクリート造のものに対して、同様に適用することが可能である。
さらに、柱10に施工する横拘束補強についても、柱頭部のみに限定されるものではなく、これに加えて同様の横拘束補強を柱脚あるいは柱全長に亘って施す場合も含まれる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜4のいずれかに記載の架構の補強構造によれば、地震時等に建物の架構に作用するせん断力が梁下面の充填材を介して、および横拘束補強が施された片側の柱の頭部から、それぞれ上記補強部材に伝達することにより、架構全体としてのせん断耐力を大幅に高めることができる。しかもこの際に、従来のように多数のアンカー筋を使用していないために、施工が容易であるとともに、架構のコンクリート強度が小さい場合にも適用可能になり、よって補強を行う対象建物の拡大を図ることが可能となる。
【0036】
また、請求項3に記載の発明によれば、補強部材として鉄骨造の骨組みを使用する場合に、そのフランジ面を上記柱および梁に沿わせて架構内に配置しているので、上記補強部材と柱梁架構の内周との間を狭くして上記充填材を注入・固化させることが可能になり、よって注入すべき充填材の量を大幅に減らすことができて経済性に優れるとともに、容易に当該充填材のみによって高い接合強度を確保することができる。加えて、フランジ面を柱梁に沿わせて配設する結果、上記鉄骨が架構の面内方向に強軸となるため、地震時に当該鉄骨が面外方向に開くことを防止して柱に対する充分な拘束効果も得ることができる。
【0037】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、地震時に多数回の繰返し載荷を受けた場合でも、スタッドボルトが倒れ止めとして作用することにより、補強部材が構面から外れて倒壊することを防止することができ、かつ当該スタッドボルトによるダボ効果によって、充填材の接合強度も補強することが可能となるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の架構の補強構造の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線視断面図である。
【図3】図1の横拘束補強を示すもので、(a)はa−a線視断面図、(b)はb−b線視断面図である。
【図4】図1の補強構造に作用する地震時のせん断力の流れおよび圧縮域を模式的に示した正面図である。
【図5】在来の鉄骨ブレース補強構造の接合部を示す断面図である。
【符号の説明】
10 柱
11 梁
12 繊維
13 鋼板
14 グラウト
20 補強骨組(補強部材)
21 水平枠材
22 垂直枠材
21a、22a フランジ面
23 ブレース
24 接合目地(充填材)
25 スタッドボルト
Claims (4)
- 建物の柱梁架構内の内周に、鉄筋コンクリート造の補強壁を組み込み、両者間に、アンカー筋を介在させることなく、注入・固化させた充填材のみによって地震時に生じるせん断力を伝達可能に一体的に接合するとともに、上記柱梁架構の少なくとも柱頭部に、上記補強壁から作用するせん断力に対して当該柱の耐力を増大させる横拘束補強を施してなることを特徴とする架構の補強構造。
- 上記横拘束補強は、上記柱頭部の外周に巻回された鋼板または繊維であることを特徴とする請求項1に記載の架構の補強構造。
- 建物の柱梁架構内の内周に、鉄骨造の補強部材を、そのフランジ面を上記柱および梁に沿わせて上記架構内に組み込み、上記フランジ面と上記架構の内周との間に、アンカー筋を介在させることなく、注入・固化させた充填材のみによって地震時に生じるせん断力を伝達可能に一体的に接合するとともに、上記柱梁架構の柱頭部に、上記補強部材から作用するせん断力に対して当該柱の耐力を増大させる鋼板を巻回し、当該鋼板と上記柱頭部の外周との間にグラウトを充填・固化させるとともに、上記鋼板と上記補強部材とを結合したことを特徴とする架構の補強構造。
- 上記フランジに、上記補強部材の倒れ止めとして作用するスタッドボルトの基端部が固定され、当該スタッドボルトの先端部が、上記充填材を介して上記梁内に埋め込まれていることを特徴とする請求項3に記載の架構の補強構造。
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