JP4483095B2 - H形鋼柱とrc耐震壁との接合構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物におけるH形鋼柱と鉄筋コンクリート耐震壁との接合構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、集合住宅のような構造方向性の強い建築物においては、梁間方向をラーメン構造とし、桁行き方向を壁式構造とする複合構造とすることが耐震性を向上させる上で有効とされており、こような躯体構造とする場合は、鋼柱と鉄筋コンクリート耐震壁(以下、RC耐震壁という)との接合部の構造が重要な課題となっている。
【0003】
このような接合構造の一例として、特開平11−324108号公報に記載された発明がある。この発明に係る鋼管柱とRC耐震壁の接合構造は、RC耐震壁と鋼管柱とを、鋼管柱の外面に突設されてRC耐震壁のコンクリートに埋め込まれた剪断力伝達部材を用いて接合するようにしたもので、鋼管柱は、内部にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管柱で構成し、剪断力伝達部材には、鋼管柱の上下方向に多数設けられたスタットボルト又は溝形部材等を用いたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術は、柱配筋と型枠を省略できるというメリットがあるが、鋼管柱とRC耐震壁のコンクリート打設を別々に行わなければならないので、面倒であり、また、剪断力伝達部材の曲げ破壊を抑制するためには、これを取付ける鋼管柱の板厚を十分厚くしなければならず、これらにより建設費の増嵩は避けられない。
さらに、RC耐震壁の横配筋が鋼管柱のコンクリートに定着されていないため、RC耐震壁の引張り力により鋼管柱との接合部のコンクリートが剥離してしまうおそれがある等、種々問題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、RC耐震壁から鋼柱への剪断力の伝達を確実に行うと共に、RC耐震壁の引張り力による鋼柱との接合部のコンクリートが剥離するおそれのないH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造を提供することを目的としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造は、H形鋼柱のウェブ若しくはフランジの内壁又はウェブとフランジの内壁に複数の剪断力伝達部材を設置し、前記H形鋼柱のウェブの両側又は一方の側のウェブとフランジで囲まれた空間内にRC耐震壁を一体化してコンクリートを打設したものである。ただし、前記H形鋼柱は、束柱であるH形鋼柱を除く。
【0007】
また、本発明に係るH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造は、H形鋼柱のウェブ若しくはフランジの内壁又はウェブとフランジの内壁に複数の剪断力伝達部材を設置し、かつ前記H形鋼柱の両フランジの間にRC耐震壁の鉄筋骨組を配置して、前記H形鋼柱のウェブとフランジで囲まれた空間内とRC耐震壁とにコンクリートを打設したものである。ただし、前記H形鋼柱は、束柱であるH形鋼柱を除く。
【0008】
さらに、本発明に係るH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造は、H形鋼柱のウェブ若しくはフランジの内壁又はウェブとフランジの内壁に複数の剪断力伝達部材を設置し、かつ前記H形鋼柱の両フランジ間にプレキャストRC耐震壁を配置して、前記H形鋼柱のウェブとフランジで囲まれた空間内にコンクリートを打設した。ただし、前記H形鋼柱は、束柱であるH形鋼柱を除く。
【0009】
また、上記のH形鋼柱のウェブとフランジで囲まれた空間内に柱補強筋を配置した。
さらに、上記のRC耐震壁の横配筋をH形鋼柱のウェブに貫通した。
【0010】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係るH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造を示す縦断面図、図2は図1のA−A断面図である。
両図において、1はウェブ2と上下のフランジ3a,3bからなる断面H状のH形鋼柱で、4a,4bはウェブ2とフランジ3a,3bで囲まれた溝状の空間部(以下、単に空間部という)である。なお、このH形鋼柱1は、ウェブ2及びフランジ3a,3bの厚みが厚いものが望ましい。
【0011】
5はH形鋼柱1の空間部4a,4b内において、ウェブ2の一方の壁面又は両壁面に設けられたスタッドボルト、溝形部材等からなる剪断力伝達部材で、例えば、ウェブ2の横方向(ウェブ高さ方向)に2列で、かつ上下方向に所定の間隔で設けられており、例えばウェブ2の壁面に穿孔された穴にその先端部を差し込んで、溶接等により固定したものである。
【0012】
10はH形鋼柱1の空間部4a,4b内に、その端縁部が位置するように設けられたRC耐震壁である。11はRC耐震壁10の横配筋で、先端部を内側にU字状に折り曲げて折り曲げ部を形成し、この折り曲げ部をH形鋼柱1の空間部4a,4b内に配設したものである。なお、折り曲げ部は剪断力伝達部材5に結合してもよいが、上下の剪断力伝達部材5の間に配設してもよい。なお、12はRC耐震壁10の縦配筋である。
【0013】
このようにして、H形鋼柱1の両側に横配筋11と縦配筋12からなるRC耐震壁10の鉄筋骨組を形成したのち、H形鋼柱1の周囲及びRC耐震壁10の鉄筋骨組の両側に型枠(図示せず)を設置し、H形鋼柱1の空間部4a,4bを含む型枠内にコンクリート20を打設する。なお、状況によっては、H形鋼柱1の空間部4a,4bの開口部及びRC耐震壁10の鉄筋骨組の両側のみに型枠を設置し、空間部4a,4bを含む型枠内にコンクリート20を打設してもよい。
コンクリート20が固化したのち型枠を取り外せば、RC耐震壁10の造成及びH形鋼柱1とRC耐震壁10との接合が終了する。
【0014】
この場合、RC耐震壁10の造成のための鉄筋骨組の形成及び型枠の設置に代えて、H形鋼柱1の間にプレキャストRC耐震壁を設置し、その横配筋の先端部を折り曲げてH形鋼柱1の空間部4a,4b内に配設して、H形鋼柱1の外周及び空間部4a,4b内、又は空間部4a,4b内にコンクリート20を打設し、両者を一体に接合するようにしてもよい。
【0015】
本実施の形態によれば、RC耐震壁10の造成及びH形鋼柱1との接合にあたり、両者に同時にコンクリート20を打設することができるので、施工が簡単で工期を短縮することができる。なお、RC耐震壁1にプレキャストRC耐震壁を用いた場合は、RC耐震壁の造成を省略できるので、さらに工期を短縮できる。
また、H形鋼柱1のウェブ2に設けた剪断力伝達部材5により、H形鋼柱1とコンクリート20との付着力が増大するため、RC耐震壁10の剪断力をH形鋼柱1に確実に伝達することができる。
【0016】
さらに、RC耐震壁10の横配筋11を、H形鋼柱1の空間部4a,4bに打設したコンクリート20に定着させたので、RC耐震壁10の引張り力による横配筋11の引き抜きを抑え、引張り力をH形鋼柱1に確実に伝達することができる。またこれにより、H形鋼柱1とRC耐震壁10との接合部におけるコンクリートの剥離を防止できる。
【0017】
[実施の形態2]
図3は本発明の実施の形態2の平断面図である。なお、以下の実施の形態においては、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態は、H形鋼柱1のウェブ2に、RC耐震壁10の横配筋11に対応した位置に貫通穴6を設け、一方のRC耐震壁10の横配筋11をそれぞれこの貫通穴6に挿通し、他方のRC耐震壁10の横配筋11と一体化したものである。その他の構成及び施工方法は、実施の形態1の場合と同様である。
本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果に加え、H形鋼柱1のウェブ2にRC耐震壁10の横配筋11を貫通させたので、H形鋼柱1とコンクリート20との付着力を増大することができる。
【0018】
[実施の形態3]
図4は本発明の実施の形態3の平断面図である。
本実施の形態は、H形鋼柱1の空間部4a,4b内の、ウェブ2に設けた剪断力伝達部材5の近傍(例えば、剪断力伝達部材5の間及び両側)の上下方向に、複数の柱補強筋7を配設し、RC耐震壁10の横配筋11をエンドレス状に折り曲げて、柱補強筋7のフープ筋としたものである。その他の構成及び施工方法は、実施の形態1の場合と同様である。
本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果に加えて、空間部4a,4bに柱補強筋7を設けたことにより、空間部4a,4b内のコンクリート20が負担するRC耐震壁10の引張り力を軽減することができる。
【0019】
[実施の形態4]
図5は本発明の実施の形態4の平断面図である。
本実施の形態は、実施の形態1においては、H形鋼柱1の空間部4a,4b内においてフランジ3a,3bの壁面の上下方向に、剪断力伝達部材5とほぼ同じ間隔で、スタッドボルト、溝形部材等からなる剪断力伝達部材5を設けると共に、この剪断力伝達部材5の両側、したがって空間部4a,4bのほぼ4隅の上下方向に柱補強筋7を配設し、この柱補強筋7の上下方向に所定の間隔で複数のフープ筋8を設けたものである。その他の構造及び施工方法は、実施の形態1の場合と同様である。
本実施の形態の効果も実施の形態1の場合と同様であるが、RC耐震壁10からH形鋼柱1への剪断力及び引張り力の伝達を、より確実に行うことができる。
【0020】
[実施の形態5]
図6は本発明の実施の形態5の平断面図である。
本実施の形態は、実施の形態1において、実施の形態4の場合と同様にフランジ3a,3bの壁面に剪断力伝達部材5を設けると共に、この剪断力伝達部材5の外側(ウェブ2の反対側)にそれぞれ柱補強筋7を配設し、この柱補強筋7の上下方向に所定の間隔で、ウェブ2に設けた貫通穴6に挿通したフープ筋8aを設けたものである。その他の構造及び施工方法は、実施の形態1の場合と同様である。
本実施の形態によれば、実施の形態4の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0021】
[実施の形態6]
図7は本発明の実施の形態6の平断面図である。
本実施の形態は、実施の形態5において、ウェブ2に設けた貫通穴6に挿通されたフープ筋8aを分割し、両端部をU字状に折り曲げて横配筋9として、それぞれ柱補強筋7に結合したもので、その他の構造、施工方法は実施の形態1の場合と同様である。
本実施の形態によれば、実施の形態4の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。なお、上記各実施の形態においては、H形鋼柱1のウェブ2又はウェブ2とフランジ3a,3bの剪断力伝達部材5を設けた場合を示したが、フランジ3a,3bのみに剪断力伝達部材5を設けてもよい。
【0022】
【実施例】
次に、実施の形態1に係るH形鋼柱1とRC耐震壁10との接合構造の実施例について説明する。
(1)H形鋼柱1
ウェブ2の厚み50mm、フランジ3a,3bの厚み50mmのH形鋼を用いた。
(2)剪断力伝達部材5
H形鋼柱1のウェブ2の両壁面の幅方向(ウェブ高さ方向)に穴を設け、この穴にスタッドボルトの先端部を挿入し、溶接により固定した。
(3)RC耐震壁10
RC耐震壁10を施工するH形鋼柱1の間に、先端部をU字状に折り曲げた横配筋11を上下方向に配筋し、先端折り曲げ部をH形鋼柱1のウェブ2に設けた頭付きスタッドボルトの間に配置した。また、縦配筋12を配筋し、鉄筋骨組を形成した。
【0023】
そして、H形鋼柱1の空間部4a,4bの開口部及びRC耐震壁10のための鉄筋骨組の周囲に型枠を設置し、両者同時にコンクリート20を打設した。コンクリート20が固化したのち型枠を取り外した。これにより、RC耐震壁10の造成及びRC耐震壁10とH形鋼柱1との接合が終了した。
【0024】
上記のように、H形鋼柱1のウェブ2及びフランジ3a,3bの厚みを通常のH形鋼柱より厚く、例えば、ウェブ2の厚みを40cm〜100cm、フランジ3a,3bの厚みを40mm〜100mmとすることにより、前述の実施の形態1〜6の効果に加えて、次のような効果を得ることができる。すなわち、剪断力伝達部材5を取付けるH形鋼柱1のウェブ2及びフランジ3a,3bが厚いため、剪断力伝達部材5の曲げ破壊を防止することができる。また、ウェブ2が厚いため、RC耐震壁10の横配筋11を安定して貫通させることができるので、H形鋼柱1とコンクリート20との付着力をさらに増大することができる。
【0025】
さらに、H形鋼柱1のウェブ2を貫通して横配筋11を設置することにより、H形鋼柱1の断面を除く柱断面(空間部4a,4bに打設したコンクリート20の断面)のみで鉛直方向の軸力に耐えることができるので、H形鋼柱1の耐火被覆を省略することができる。
また、H形鋼柱1のウェブ2とフランジ3a,3bを厚くすることにより、H形鋼柱1と梁との接合部をノンダイヤフラム構造とすることができるので、複数層のH形鋼柱1に連続してコンクリート20を打設することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明に係るH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造は、H形鋼柱のウェブ若しくはフランジの内壁又はウェブとフランジの内壁に複数の剪断力伝達部材を設置し、H形鋼柱のウェブの両側又は一方の側にRC耐震壁を一体化してコンクリートを打設し、
あるいは、H形鋼柱のウェブ若しくはフランジの内壁又はウェブとフランジの内壁に複数の剪断力伝達部材を設置し、かつH形鋼柱の両フランジの間にRC耐震壁の鉄筋骨組を配置して、H形鋼柱のウェブとフランジで囲まれた空間内とRC耐震壁とにコンクリートを打設するようにしたので、RC耐震壁の造成及びH形鋼柱との接合にあたり、両者に同時にコンクリートを打設することができるため、施工が簡単で工期を短縮することができる。
【0027】
また、H形鋼柱に設けた剪断力伝達部材により、H形鋼柱とコンクリートとの付着力が増大するため、RC耐震壁の剪断力をH形鋼柱に確実に伝達することができる。
さらに、RC耐震壁の横配筋を、H形鋼柱の空間部に打設したコンクリートに定着させたので、RC耐震壁の引張り力による横配筋の引き抜きを抑え、引張り力をH形鋼柱に確実に伝達することができ、これによりH形鋼柱とRC耐震壁との接合部におけるコンクリートの剥離を防止できる。
【0028】
また、本発明に係るH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造は、H形鋼柱のウェブ若しくはフランジの内壁又はウェブとフランジの内壁に複数の剪断力伝達部材を設置し、かつH形鋼柱の両フランジ間にプレキャストRC耐震壁を配置して、H形鋼柱のウェブとフランジで囲まれた空間内にコンクリートを打設したので、上記とほぼ同様の効果が得られるばかりでなく、RC耐震壁の造成を必要としないため、工期をより短縮することができる。
【0029】
上記のH形鋼柱のウェブとフランジで囲まれた空間内に柱補強筋を配置したので、空間部が負担するRC耐震壁の引張り力を軽減することができる。
また、上記のRC耐震壁の横配筋をH形鋼柱のウェブを貫通して配設したので、H形鋼柱とコンクリートとの付着力をさらに増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2の平断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3の平断面図である。
【図5】本発明の実施の形態4の平断面図である。
【図6】本発明の実施の形態5の平断面図である。
【図7】本発明の実施の形態6の平断面図である。
【符号の説明】
1 H形鋼柱
2 ウェブ
3 フランジ
4a,4b 空間部
5 剪断力伝達部材
7 柱補強筋
8,8a フープ筋
10 RC耐震壁
11 横配筋
20 コンクリート
Claims (5)
- H形鋼柱のウェブ若しくはフランジの内壁又はウェブとフランジの内壁に複数の剪断力伝達部材を設置し、前記H形鋼柱のウェブの両側又は一方の側のウェブとフランジで囲まれた空間内にRC耐震壁を一体化してコンクリートを打設したことを特徴とするH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造。ただし、前記H形鋼柱は、束柱であるH形鋼柱を除く。
- H形鋼柱のウェブ若しくはフランジの内壁又はウェブとフランジの内壁に複数の剪断力伝達部材を設置し、かつ前記H形鋼柱の両フランジの間にRC耐震壁の鉄筋骨組を配置して、前記H形鋼柱のウェブとフランジで囲まれた空間内とRC耐震壁とにコンクリートを打設したことを特徴とするH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造。ただし、前記H形鋼柱は、束柱であるH形鋼柱を除く。
- H形鋼柱のウェブ若しくはフランジの内壁又はウェブとフランジの内壁に複数の剪断力伝達部材を設置し、かつ前記H形鋼柱の両フランジ間にプレキャストRC耐震壁を配置して、前記H形鋼柱のウェブとフランジで囲まれた空間内にコンクリートを打設したことを特徴とするH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造。ただし、前記H形鋼柱は、束柱であるH形鋼柱を除く。
- 前記H形鋼柱のウェブとフランジで囲まれた空間内に柱補強筋を配置したことを特徴とする請求項1,2又は3のいずれかに記載のH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造。
- 前記RC耐震壁の横配筋をH形鋼柱のウェブに貫通したことを特徴とする請求項1,2,3又は4のいずれかに記載のH形鋼柱とRC耐震壁との接合構造。
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