JP2004316207A - 土留壁と床版との接合構造及びその構築方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋼矢板を打撃、振動又は圧入によって直接地中に貫入して土留壁を形成し、その隣接地域を掘削して、掘削した地中に、鋼矢板を本設構造物の地中壁体の芯材として利用した地中構造物の土留壁体と床版との結合構造を提供する。
【解決手段】H形鋼12の背面側に爪付きフランジ11を取り付けた鋼矢板13を用いて土留壁を地中に築造し、鋼矢板13の内空側の地中を掘削し、鋼矢板腹腔内の土砂を除去した後、床版の主鉄筋21を鋼矢板13と力学的に結合し、壁体コンクリート23、床版コンクリート24を打設して鋼矢板と一体化した床版を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】H形鋼12の背面側に爪付きフランジ11を取り付けた鋼矢板13を用いて土留壁を地中に築造し、鋼矢板13の内空側の地中を掘削し、鋼矢板腹腔内の土砂を除去した後、床版の主鉄筋21を鋼矢板13と力学的に結合し、壁体コンクリート23、床版コンクリート24を打設して鋼矢板と一体化した床版を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土留壁と床版との接合構造及びその構築方法に関する。さらに詳しくは、土留壁を形成する鋼矢板を本設地中構造物の壁体の芯材として利用し、これと地中構造物の床版とを一体化させた接合構造及びその構築方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、H形鋼などの鉄骨を芯材として利用して地中に空間を形成するための壁体として、ソイルセメント地中連続壁や地中鉄骨鉄筋コンクリート連壁などがある。
【0003】
ソイルセメント地中連続壁は、地上から地中にほぼ鉛直な多数のオーガー孔を並列に削孔するか、又はトレンチを掘削し、その中にセメントミルクを注入撹拌してソイルセメント層を形成し、このソイルセメント層中に、H形鋼などを建込み、ソイルセメントを硬化させて地中に土留壁を形成する技術である。
【0004】
また、地中鉄骨鉄筋コンクリート連壁は、地中壁を形成すべき部分を地上からチエーンソー等により順次掘削しながらトレンチを形成し、このトレンチ内に鉄骨鉄筋を順次組み立て、コンクリート打設しながら、トレンチ掘削、コンクリート打設を順次繰返して施工し、地中に構築する土留コンクリート壁である。この技術では、コンクリート打設前にトレンチ内にベントナイト懸濁液を充填し、このベントナイト懸濁液中に鉄骨鉄筋を建込み、ついで、トレンチ内にコンクリートを打設して前記ベントナイト懸濁液と置換し、コンクリート土留壁を形成する技術もある。
【0005】
このような地中土留壁の隣接区域を掘削して、地中に建築物や構築物を築造する場合に、土留壁の鉄骨鉄筋を利用し、土留壁中の鉄骨鉄筋に床版の主鉄筋を結合して床版を形成する技術がある。
【0006】
この場合、土留壁を構成するソイルセメントやコンクリート連壁の固化体は、壁体に隣接する区域の地中を掘削する時に、壁体背面の地下水や土砂が流れ込んでくるのを抑える重要な役割を果たすものであるから、これを破損しないように、壁体と床版の主鉄筋とを接合する必要がある。このため、ソイルセメント等の中に建て込むH形鋼などに予め壁体厚を超えない程度の短尺鉄筋等の短尺部材を取り付けておき、壁体に隣接する区域を掘削した後に、この短尺部材等に長尺の別の主鉄筋を結合する方式が採用されている。
【0007】
図15はこのような技術を模式的に示す工程図である。図15はすべて平面図である。先ず地中にトレンチ110を掘削し、このトレンチ110内にソイルセメント層を形成するか、ベントナイト懸濁液111を充填し、その中にH鋼等の芯材112を挿入する。このとき、図15(b)に示すように、H形鋼等に短尺部材113等を取り付けておく。固化前のソイルセメントやベントナイト懸濁液中にH形鋼を挿入することは容易である。トレンチ中のソイルセメントが硬化するか、又はベントナイト懸濁液をコンクリートと置換し、これらが硬化して土留壁114が形成された後、土留壁114の隣接区域115を掘削する。
【0008】
この掘削した区域にH形鋼112と結合した構造物等を構築する場合、鉄筋116をH形鋼112に取り付けられている短尺部材113と結合材117で結合すればよい。
【0009】
図15ではトレンチ内にH形鋼112を芯材として挿入する土留壁を示したが、このような地中土留壁を構築する場合に、H形鋼に代り、ウエブの両端にフランジを有する補強部材(例えばH形鋼)の一方のフランジが、爪つき鋼板(爪つきフランジ)の面に取り付けられた鋼矢板を用いる技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
このような鋼矢板は、曲げ剛性が大きく、隣接鋼材同士を爪で連結しているので不透水性を有し、湾曲した壁体や壁体のコーナ部をも容易に形成することができる。また、爪をガイドとして隣接鋼材を案内させ容易に地中に挿入することができる。
【0011】
図16には、H形鋼の代りにH形鋼122と爪つきフランジ121とを溶接した鋼矢板123を挿入するときのトレンチ110との関係を示した。この場合も短尺部材113を取り付けることができる。
【0012】
また、地中に構造物を構築する場合、ソイルセメントを硬化させた土留壁に隣接する空間、又はこのような土留壁に囲まれた地中に、構造物構築空間を掘削し、鋼矢板の腹腔内のソイルセメント等を除去し、土留壁の構成部材である鋼矢板やH形鋼を地中構造物の壁体コンクリートの芯材として利用し、地中構造物を構築する技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0013】
図17はこの技術を示す説明図で、H形鋼102の背面側に爪つきフランジ101を溶接により取り付けた鋼矢板103を用いて、地中にソイルセメントによる土留壁104を形成し、その土留壁104の内側空間105を掘削し、この空間105内に建築物の床版106構築した状態を示した斜視図である。この従来技術では土留壁104の鋼矢板103の内空側、つまり、H形鋼102を内包していたソイルセメントを除去し、床版106を取り付ける壁体107の芯材として鋼矢板103を利用してコンクリートを打設し、このコンクリート壁に床版106一体に結合している。図17では床版106より上方の鋼矢板103が露出している状態を示しているが、壁体107はこの部分にも形成される。
【0014】
しかしながら、予め形成したトレンチ内に鉄骨を挿入する場合には、鉄骨に短尺部材を取り付けておくことができるが、トレンチを掘削することなく、打撃工法、振動工法又は圧入工法などによって鋼矢板を爪を噛み合わせて直接地面に貫入する土留施工法では取り付けられた短尺部材が鋼矢板の貫入性を低下させるという問題がある。さらに、この鋼矢板の貫入作業中に、短尺部材が損傷する恐れがある。さらに、打撃、振動又は圧入工法では、施工機械が施工時に鋼矢板のウェブをチャッキングするものがあるため、あらかじめ短尺部材をウェブ等に取り付けておくと鋼矢板を施工機械にセットすることができなかったりチャッキングすることができないという問題があった。
【0015】
【特許文献1】
特開平11−81491号公報(第2−5頁、図3)
【特許文献2】
特開平11−158865号公報(第2−5頁、図1)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、H形鋼の背面に爪つきフランジを取り付けた高剛性の鋼矢板を打撃、振動又は圧入工法などによって直接地中に貫入して土留壁を形成し、その隣接地域を掘削して空間を形成し、地中に構造物や構築物を構築する場合に、この土留壁を本設構造物の壁とし、土留壁に用いた鋼矢板を本設構造物の地中壁体の芯材として利用することとした、地中構造物の地中壁体と床版との接合構造、及びその構築方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、その技術手段は、地中に空間を形成するための土留壁と床版との接合構造において、土留壁は内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を地中に貫入して形成した壁体とし、床版は鉄筋コンクリート構造であって主鉄筋と該鋼矢板との力学的な結合部を有することを特徴とする土留壁と床版との接合構造である。
【0018】
ここで内空とは、土留壁を施工して土留壁によって土留された、本設構造物を築造するための掘削空間を云う。また本発明では、H形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた高剛性の鋼矢板を用いる。つまり、本発明では平板状でその両耳に係止爪を形成した通常の鋼矢板にH形鋼を取り付けて、曲げ剛性を著しく高めた組合せ体を鋼矢板として用いる。
【0019】
前記床版の主鉄筋は、前記鋼矢板の背面フランジに取り付けた鉄筋とすればよい。また、前記床版の主鉄筋は、抜け防止部材を取り付けた鉄筋としても良い。また、前記床版の主鉄筋は、先端部に折り曲げ部を設けた鉄筋としても良い。
【0020】
さらに、前記床版の主鉄筋は、上述のような種々の形状の異なる鉄筋が混在していても差し支えない。
【0021】
なお、前記床版の主鉄筋は、前面フランジを貫通させたものでも良く、前面フランジを貫通せずに、隣接する前面フランジ間の開放部に配設されたものであってもよい。
【0022】
さらに、鋼矢板とコンクリートとの一体性を向上させるために、前記鋼矢板との力学的な結合部近傍の鋼矢板の内面に、ずれ止めリブを取り付けると好ましく、このずれ止めリブは高さ9〜50mmの棒鋼、角鋼又は平鋼からなることが好ましい。ずれ止めリブの高さを9〜50mmとしたのは、9mm未満ではコンクリートと鋼矢板とのずれ止めの効果が乏しく、高さが50mmを越えると、鋼矢板の沈設のときに貫入抵抗が大きくなり、大きな沈設動力を要したり、ずれ止めリブが土砂の抵抗により脱落したりするのを防止するためである。
【0023】
上記接合構造を施工する本発明の構築方法は、地中に空間を形成するための土留壁と床版とからなる接合構造を地中に形成するに当たり、内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を打撃、振動又は圧入により地中に貫入して土留壁を地中に築造し、鋼矢板の内空側の地中を掘削し、鋼矢板腹腔内の土砂を除去した後、鉄筋コンクリート構造である床版の主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合し、床版コンクリートを打設して鋼矢板を芯材とする壁体と一体化した床版を形成することを特徴とする土留壁と床版との接合構造の構築方法である。ここで鋼矢板腹腔とは鋼矢板の内空側に面したH形鋼のフランジとウエブで囲まれ、フランジ内面、ウエブ側面に接する空間を云う。
【0024】
前記力学的に結合する手段としては、床版の主鉄筋を鋼矢板の背面フランジに取り付ける手段でもよく、床版の主鉄筋の先端部に抜け防止部材を取り付け、引抜き耐力を向上させる手段でもよく、床版の主鉄筋の先端部に折り曲げ部を設ける手段としてもよい。さらに、前記力学的に結合する手段としては、上述の何れかの異なる手段を併用した手段としてもよい。
【0025】
また、前記主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合させる部分近傍の鋼矢板の腹腔内に、鋼矢板とコンクリートとの一体性を向上させるずれ止めリブを、予め取り付けておくとよく、さらに好ましくはH形鋼のフランジ内面、ウエブ側面に予め取り付けておくと、鋼矢板とコンクリートとの一体化に寄与し、土留壁と床版との接合構造の剛性を高めることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明は、鋼矢板を打撃、振動、圧入などによって直接地中に貫入して土留壁を形成し、その隣接地域を掘削して、掘削した地中に構造物や構築物を構築する場合に、この土留壁を本設構造物の壁とし、土留壁に用いた鋼矢板を本設構造物の地中壁体の芯材として利用する技術である。土留壁は内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を地中に貫入して形成した壁体とし、床版は主鉄筋を該鋼矢板と力学的に結合させて前記土留壁と一体化した床版とした土留壁と床版との接合構造である。
【0027】
そして、この接合構造の具体的な構築方法は、鋼矢板の内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を用いて土留壁を地中に築造し、鋼矢板の内空側の地中を掘削し、鋼矢板腹腔内の土砂を除去した後、床版の主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合し、主鉄筋を囲む型枠内に床版コンクリートを打設して鋼矢板と一体化した床版を形成する。
【0028】
以下図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0029】
図1は本発明の構築方法を示す工程図である。
【0030】
図1(a)〜(d)は土留壁の部分断面図を示している。図1では、鋼矢板13が既に地中14に貫入した状態を示している。貫入は紙面に垂直な方向に行われた。図1(a)に示すように、H形鋼12と爪つきフランジ11とから成る鋼矢板13を打撃、振動又は圧入により地中14に貫入させて地中土留壁の内空側に空間15が掘削された状態を示している。H形鋼12の腹腔内の土砂16は矢印17で示すように除去され、図1(b)に示す状態になる。
【0031】
次いで図1(c)に示すように、コンクリート床版の主鉄筋又はこれと結合する鉄筋部材(以下主鉄筋又は鉄筋部材を主鉄筋21と総称する)を、鋼矢板13の前面フランジ12bを貫通させて配設するか、又は隣接する前面フランジ相互間を通って配設する。
【0032】
その後図1(d)に示すように、所要の鉄筋22等を組立て、壁体コンクリート23及び床版コンクリート24を打設する。図2は図1(d)のA−A矢視を示す縦断面図で、鋼矢板13を壁体コンクリート23と床版コンクリート24の共通芯材として床版25とを結合した結合構造を示している。
【0033】
図3は鋼矢板13と主鉄筋21との結合例を示すもので、主鉄筋21はH形鋼12の前面フランジ12bを貫通して背面フランジ12aに溶接40によって取り付けた鉄筋である。図4は溶接40に代り、ナット41をH形鋼12の背面フランジ12aに溶接し、このナットを介してフランジに取り付けた鉄筋を示したものである。これらの鉄筋の詳細例を図5〜図7に示した。
【0034】
図5(a)に示すように、H形鋼12の背面フランジ12aにナット41を溶接しておき、図5(b)に示すように、主鉄筋21の先端に雄ねじを設けておき、この雄ねじを図5(c)に示すようにナット41にねじ込み鋼矢板の背面に取り付けた鉄筋である。
【0035】
図6は別の例を示すもので、図6(a)に示すように、長ナット42をボルト43で背面フランジ12aにに取りつけておき、先端に雄ねじを設けた主鉄筋21を図6(b)、(c)に示すように長ナット42にねじ込んで取り付ける。この方式は図5に示すようなナットの溶接が適切でない熱感受性の高い高強度材に適用される。また高力ボルトを用いるとよい。
【0036】
図6に示す長ナット42を取り付けると矢板打込時に鋼矢板を地中に貫入するときの貫入抵抗が大きくなるので、図7(a)に示すようにボルト43を高さの低いナット44を用いて取り付けておき、主鉄筋21の取付時に図7(b)に示すようにこのナット44を取外し、図7(c)に示すように、主鉄筋21の先端の雄ねじに長ナット42を装着して、図7(d)に示すように、長ナット42を介して主鉄筋21とナット43とを結合し、鋼矢板の背面フランジに主鉄筋を取り付けた例である。
【0037】
図8は別の例を示す鋼矢板と主鉄筋21との結合を示す縦断面図で、鋼矢板13のH形鋼12のフランジ12bを貫通した主鉄筋21の先端部に抜け防止部材45を取り付けた例である。抜け防止部材45は、例えば主鉄筋21に雄ねじを刻設しておき、これにワッシャ付ナットなどを螺合するとよい。
【0038】
図9は主鉄筋21の先端部に折曲げ部46を設けたものでコンクリートを介して鋼矢板と主鉄筋とを結合するものである。
【0039】
図10は、図9に示すように先端部に折曲げ部を設けた主鉄筋21の取付工程の一例を示すもので、図10(a)に示すように折曲げ部を設けた主鉄筋21の先端を矢印51で示すようにH形鋼12の前面フランジ12bに設けた孔から挿入し、図10(b)に示すように主鉄筋21を矢印52で示すように旋回させ、次いで図10(c)に示すように主鉄筋21を矢印53で示すように背面フランジ側まで押込んでセットが完了する。
【0040】
次に図11〜図14を参照して、主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合させる部分近傍の鋼矢板の内面に、接合部の鋼矢板とコンクリートの一体性を向上させるずれ止めリブを取り付けた土留壁と床版との接合構造について説明する。
【0041】
図11、図13は鋼矢板13の横断面図、図12、図14はその側面図である。主鉄筋21と鋼矢板とを力学的に結合させる部分近傍の鋼矢板の内面にずれ止めリブ60を取り付ける。このずれ止めリブ60はコンクリートと鋼矢板13との結合を高めるもので、高さ9〜50mmの棒鋼や平鋼等から成り、溶接によって予め鋼矢板のH形鋼のフランジの内側、ウエブの側面などに取り付けておく。
【0042】
本発明の特徴は、次の通りである。
(1)壁体と床版とを結合する鉄筋部材は、鋼矢板を打設して掘削した後に取り付けること。
(2)土留壁施工後に鋼矢板の腹腔内の土砂を取り除くことが前提となるため、鋼矢板の背面は爪付フランジが連続して結合されて地下水や土砂が土留壁の内空側に流入しないよう対処されているとともに、鋼矢板の内空側は鋼材相互間が開放されていること。
(3)床版の主鉄筋は、鋼矢板のH形鋼のフランジを貫通させるか、鋼材相互間が開放された部分から鋼矢板の腹腔内に配設すること。
(4)コンクリート打設後に形成する壁体と床版との力学的な結合部は、主鉄筋と鋼矢板を直接に取り付けた結合部、あるいは、コンクリートを介して主鉄筋と鋼矢板を間接に取り付けた結合部とすること。これらの結合部を形成する手段としては、それぞれ次の(イ)および(ロ)がある。
【0043】
(イ)鋼矢板に主鉄筋を直接的に取り付ける手段としては、現場溶接する手段(図3)、又は背面フランジにあらかじめ機械式継手などの部材(例えばボルト、ナットなど)を溶着または埋め込んでおき主鉄筋と結合する手段(図4〜図7)がある。このような部材は鋼矢板を地中に貫入させるために、貫入施工機に鋼矢板をセットするときに支障がなく、鋼矢板打設時の障害にならない程度の突出物であればよい。また、背面フランジに予めねじ孔加工を施しておき、主鉄筋端部をねじ加工してねじ結合する手段などでもよい。鋼矢板に予めナットなどを溶接しておく手段では、ナットの下側に丸鋼などを取り付けておくと、鋼矢板を地中に貫入する際、ナットに作用する地盤抵抗力を軽減し、ナットの保護を兼ねることができる。
【0044】
(ロ)コンクリートを介して鋼矢板と主鉄筋とを間接的に取り付ける手段としては、支圧面積の広い抜け防止部材を主鉄筋の端部に取り付ける手段(図8)、異形鉄筋の有するコンクリートと鉄筋との付着特性を利用する手段、主鉄筋の先端部に折り曲げ部を設け、鉄筋とコンクリートとの必要付着耐力を確保する手段(図9〜図10)などがある。さらに、鋼矢板とコンクリートの付着特性を確保するため、図11〜図14に示すように、床版接合部付近に丸鋼、角鋼、平鋼などから成るずれ止めリブを取り付ける。ずれ止めリブとしてジベル筋などを溶接によって取り付けてもよい。特に、丸鋼、角鋼、平鋼などから成るずれ止めリブとして、高さが9〜50mm程度のものを使用すると、鋼矢板を地中に貫入する時の抵抗もさほど上昇せず、また鋼矢板を地中に貫入する施工機にセットする際の妨げにもならない。これらのずれ止めリブは鋼矢板を地中に貫入する前にあらかじめ取り付けておくことが可能である。
【0045】
これらの手段は、現場での作業環境や工程、地盤条件等に応じて適宜選択すればよい。さらに、鋼矢板問の土砂の除去作業を容易にするため、ウォータージェットを用いたり、又はアースオーガーなどにより鋼矢板腹腔内の土砂を緩める手段を併用すれば、現場での作業性がさらに改善される。
【0046】
【発明の効果】
本発明は、打撃、振動、圧入などによって鋼矢板を地中に貫入して土留壁を形成し、この鋼矢板を芯材として利用した壁体を持つ地中構造物であり、地中構造物構築空間の掘削量を削減することができ、例えば、隣地との境界等の極く近くまでを有効に利用することができ、また、土留用の鋼矢板を地下構造物の力学的構造要素として利用するので、地下構造物の鉄筋量を削減することができ、経済性の高い構造物を得ることができる。
【0047】
本発明方法によれば上記地中構造物を容易に施工することができ、工事費の削減、工期の短縮等に寄与するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構築方法を示す工程図で、図1(a)〜(d)は土留壁の部分断面図を示している。
【図2】図1(d)のA−A矢視を示す縦断面図である。。
【図3】鋼矢板と主鉄筋との結合例を示す図である。
【図4】ナットを溶接した例を示す図である。
【図5】結合部の詳細例を示した図である。
【図6】結合部の詳細例を示した図である。
【図7】結合部の詳細例を示した図である。
【図8】別の例を示す鋼矢板と主鉄筋との結合を示す縦断面図である。
【図9】先端部に折曲げ部を設けた主鉄筋の説明図である。
【図10】折曲げた主鉄筋の取付工程の一例を示す図である。
【図11】鋼矢板の横断面図である。
【図12】図11の側面図である。
【図13】鋼矢板の横断面図である。
【図14】図13の側面図である。
【図15】模式的工程図で、すべて平面図である。
【図16】従来技術の説明図である。
【図17】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
11 爪つきフランジ
12 H形鋼
12a 背面フランジ
12b 前面フランジ
14 地中土留壁
15 空間
16 コンクリート
17 矢印
21 主鉄筋
13 鋼矢板
22 鉄筋
23 壁体コンクリート
24 床版コンクリート
25 床版
40 溶接
41 ナット
42 長ナット
43 ボルト
44 ナット
45 抜け防止部材
46 折曲げ部
51、52、53 矢印
60 ずれ止めリブ
101 爪つきフランジ
102 H形鋼
103 鋼矢板
104 土留壁
105 内側空間
106 床版
107 壁体
110 トレンチ
111 ベントナイト懸濁液
112 H形鋼
113 短尺部材
114 土留壁
115 隣接地域
116 鉄筋
117 結合材
121 爪つきフランジ
123 鋼矢板
【発明の属する技術分野】
本発明は、土留壁と床版との接合構造及びその構築方法に関する。さらに詳しくは、土留壁を形成する鋼矢板を本設地中構造物の壁体の芯材として利用し、これと地中構造物の床版とを一体化させた接合構造及びその構築方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、H形鋼などの鉄骨を芯材として利用して地中に空間を形成するための壁体として、ソイルセメント地中連続壁や地中鉄骨鉄筋コンクリート連壁などがある。
【0003】
ソイルセメント地中連続壁は、地上から地中にほぼ鉛直な多数のオーガー孔を並列に削孔するか、又はトレンチを掘削し、その中にセメントミルクを注入撹拌してソイルセメント層を形成し、このソイルセメント層中に、H形鋼などを建込み、ソイルセメントを硬化させて地中に土留壁を形成する技術である。
【0004】
また、地中鉄骨鉄筋コンクリート連壁は、地中壁を形成すべき部分を地上からチエーンソー等により順次掘削しながらトレンチを形成し、このトレンチ内に鉄骨鉄筋を順次組み立て、コンクリート打設しながら、トレンチ掘削、コンクリート打設を順次繰返して施工し、地中に構築する土留コンクリート壁である。この技術では、コンクリート打設前にトレンチ内にベントナイト懸濁液を充填し、このベントナイト懸濁液中に鉄骨鉄筋を建込み、ついで、トレンチ内にコンクリートを打設して前記ベントナイト懸濁液と置換し、コンクリート土留壁を形成する技術もある。
【0005】
このような地中土留壁の隣接区域を掘削して、地中に建築物や構築物を築造する場合に、土留壁の鉄骨鉄筋を利用し、土留壁中の鉄骨鉄筋に床版の主鉄筋を結合して床版を形成する技術がある。
【0006】
この場合、土留壁を構成するソイルセメントやコンクリート連壁の固化体は、壁体に隣接する区域の地中を掘削する時に、壁体背面の地下水や土砂が流れ込んでくるのを抑える重要な役割を果たすものであるから、これを破損しないように、壁体と床版の主鉄筋とを接合する必要がある。このため、ソイルセメント等の中に建て込むH形鋼などに予め壁体厚を超えない程度の短尺鉄筋等の短尺部材を取り付けておき、壁体に隣接する区域を掘削した後に、この短尺部材等に長尺の別の主鉄筋を結合する方式が採用されている。
【0007】
図15はこのような技術を模式的に示す工程図である。図15はすべて平面図である。先ず地中にトレンチ110を掘削し、このトレンチ110内にソイルセメント層を形成するか、ベントナイト懸濁液111を充填し、その中にH鋼等の芯材112を挿入する。このとき、図15(b)に示すように、H形鋼等に短尺部材113等を取り付けておく。固化前のソイルセメントやベントナイト懸濁液中にH形鋼を挿入することは容易である。トレンチ中のソイルセメントが硬化するか、又はベントナイト懸濁液をコンクリートと置換し、これらが硬化して土留壁114が形成された後、土留壁114の隣接区域115を掘削する。
【0008】
この掘削した区域にH形鋼112と結合した構造物等を構築する場合、鉄筋116をH形鋼112に取り付けられている短尺部材113と結合材117で結合すればよい。
【0009】
図15ではトレンチ内にH形鋼112を芯材として挿入する土留壁を示したが、このような地中土留壁を構築する場合に、H形鋼に代り、ウエブの両端にフランジを有する補強部材(例えばH形鋼)の一方のフランジが、爪つき鋼板(爪つきフランジ)の面に取り付けられた鋼矢板を用いる技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
このような鋼矢板は、曲げ剛性が大きく、隣接鋼材同士を爪で連結しているので不透水性を有し、湾曲した壁体や壁体のコーナ部をも容易に形成することができる。また、爪をガイドとして隣接鋼材を案内させ容易に地中に挿入することができる。
【0011】
図16には、H形鋼の代りにH形鋼122と爪つきフランジ121とを溶接した鋼矢板123を挿入するときのトレンチ110との関係を示した。この場合も短尺部材113を取り付けることができる。
【0012】
また、地中に構造物を構築する場合、ソイルセメントを硬化させた土留壁に隣接する空間、又はこのような土留壁に囲まれた地中に、構造物構築空間を掘削し、鋼矢板の腹腔内のソイルセメント等を除去し、土留壁の構成部材である鋼矢板やH形鋼を地中構造物の壁体コンクリートの芯材として利用し、地中構造物を構築する技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0013】
図17はこの技術を示す説明図で、H形鋼102の背面側に爪つきフランジ101を溶接により取り付けた鋼矢板103を用いて、地中にソイルセメントによる土留壁104を形成し、その土留壁104の内側空間105を掘削し、この空間105内に建築物の床版106構築した状態を示した斜視図である。この従来技術では土留壁104の鋼矢板103の内空側、つまり、H形鋼102を内包していたソイルセメントを除去し、床版106を取り付ける壁体107の芯材として鋼矢板103を利用してコンクリートを打設し、このコンクリート壁に床版106一体に結合している。図17では床版106より上方の鋼矢板103が露出している状態を示しているが、壁体107はこの部分にも形成される。
【0014】
しかしながら、予め形成したトレンチ内に鉄骨を挿入する場合には、鉄骨に短尺部材を取り付けておくことができるが、トレンチを掘削することなく、打撃工法、振動工法又は圧入工法などによって鋼矢板を爪を噛み合わせて直接地面に貫入する土留施工法では取り付けられた短尺部材が鋼矢板の貫入性を低下させるという問題がある。さらに、この鋼矢板の貫入作業中に、短尺部材が損傷する恐れがある。さらに、打撃、振動又は圧入工法では、施工機械が施工時に鋼矢板のウェブをチャッキングするものがあるため、あらかじめ短尺部材をウェブ等に取り付けておくと鋼矢板を施工機械にセットすることができなかったりチャッキングすることができないという問題があった。
【0015】
【特許文献1】
特開平11−81491号公報(第2−5頁、図3)
【特許文献2】
特開平11−158865号公報(第2−5頁、図1)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、H形鋼の背面に爪つきフランジを取り付けた高剛性の鋼矢板を打撃、振動又は圧入工法などによって直接地中に貫入して土留壁を形成し、その隣接地域を掘削して空間を形成し、地中に構造物や構築物を構築する場合に、この土留壁を本設構造物の壁とし、土留壁に用いた鋼矢板を本設構造物の地中壁体の芯材として利用することとした、地中構造物の地中壁体と床版との接合構造、及びその構築方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、その技術手段は、地中に空間を形成するための土留壁と床版との接合構造において、土留壁は内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を地中に貫入して形成した壁体とし、床版は鉄筋コンクリート構造であって主鉄筋と該鋼矢板との力学的な結合部を有することを特徴とする土留壁と床版との接合構造である。
【0018】
ここで内空とは、土留壁を施工して土留壁によって土留された、本設構造物を築造するための掘削空間を云う。また本発明では、H形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた高剛性の鋼矢板を用いる。つまり、本発明では平板状でその両耳に係止爪を形成した通常の鋼矢板にH形鋼を取り付けて、曲げ剛性を著しく高めた組合せ体を鋼矢板として用いる。
【0019】
前記床版の主鉄筋は、前記鋼矢板の背面フランジに取り付けた鉄筋とすればよい。また、前記床版の主鉄筋は、抜け防止部材を取り付けた鉄筋としても良い。また、前記床版の主鉄筋は、先端部に折り曲げ部を設けた鉄筋としても良い。
【0020】
さらに、前記床版の主鉄筋は、上述のような種々の形状の異なる鉄筋が混在していても差し支えない。
【0021】
なお、前記床版の主鉄筋は、前面フランジを貫通させたものでも良く、前面フランジを貫通せずに、隣接する前面フランジ間の開放部に配設されたものであってもよい。
【0022】
さらに、鋼矢板とコンクリートとの一体性を向上させるために、前記鋼矢板との力学的な結合部近傍の鋼矢板の内面に、ずれ止めリブを取り付けると好ましく、このずれ止めリブは高さ9〜50mmの棒鋼、角鋼又は平鋼からなることが好ましい。ずれ止めリブの高さを9〜50mmとしたのは、9mm未満ではコンクリートと鋼矢板とのずれ止めの効果が乏しく、高さが50mmを越えると、鋼矢板の沈設のときに貫入抵抗が大きくなり、大きな沈設動力を要したり、ずれ止めリブが土砂の抵抗により脱落したりするのを防止するためである。
【0023】
上記接合構造を施工する本発明の構築方法は、地中に空間を形成するための土留壁と床版とからなる接合構造を地中に形成するに当たり、内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を打撃、振動又は圧入により地中に貫入して土留壁を地中に築造し、鋼矢板の内空側の地中を掘削し、鋼矢板腹腔内の土砂を除去した後、鉄筋コンクリート構造である床版の主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合し、床版コンクリートを打設して鋼矢板を芯材とする壁体と一体化した床版を形成することを特徴とする土留壁と床版との接合構造の構築方法である。ここで鋼矢板腹腔とは鋼矢板の内空側に面したH形鋼のフランジとウエブで囲まれ、フランジ内面、ウエブ側面に接する空間を云う。
【0024】
前記力学的に結合する手段としては、床版の主鉄筋を鋼矢板の背面フランジに取り付ける手段でもよく、床版の主鉄筋の先端部に抜け防止部材を取り付け、引抜き耐力を向上させる手段でもよく、床版の主鉄筋の先端部に折り曲げ部を設ける手段としてもよい。さらに、前記力学的に結合する手段としては、上述の何れかの異なる手段を併用した手段としてもよい。
【0025】
また、前記主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合させる部分近傍の鋼矢板の腹腔内に、鋼矢板とコンクリートとの一体性を向上させるずれ止めリブを、予め取り付けておくとよく、さらに好ましくはH形鋼のフランジ内面、ウエブ側面に予め取り付けておくと、鋼矢板とコンクリートとの一体化に寄与し、土留壁と床版との接合構造の剛性を高めることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明は、鋼矢板を打撃、振動、圧入などによって直接地中に貫入して土留壁を形成し、その隣接地域を掘削して、掘削した地中に構造物や構築物を構築する場合に、この土留壁を本設構造物の壁とし、土留壁に用いた鋼矢板を本設構造物の地中壁体の芯材として利用する技術である。土留壁は内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を地中に貫入して形成した壁体とし、床版は主鉄筋を該鋼矢板と力学的に結合させて前記土留壁と一体化した床版とした土留壁と床版との接合構造である。
【0027】
そして、この接合構造の具体的な構築方法は、鋼矢板の内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を用いて土留壁を地中に築造し、鋼矢板の内空側の地中を掘削し、鋼矢板腹腔内の土砂を除去した後、床版の主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合し、主鉄筋を囲む型枠内に床版コンクリートを打設して鋼矢板と一体化した床版を形成する。
【0028】
以下図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0029】
図1は本発明の構築方法を示す工程図である。
【0030】
図1(a)〜(d)は土留壁の部分断面図を示している。図1では、鋼矢板13が既に地中14に貫入した状態を示している。貫入は紙面に垂直な方向に行われた。図1(a)に示すように、H形鋼12と爪つきフランジ11とから成る鋼矢板13を打撃、振動又は圧入により地中14に貫入させて地中土留壁の内空側に空間15が掘削された状態を示している。H形鋼12の腹腔内の土砂16は矢印17で示すように除去され、図1(b)に示す状態になる。
【0031】
次いで図1(c)に示すように、コンクリート床版の主鉄筋又はこれと結合する鉄筋部材(以下主鉄筋又は鉄筋部材を主鉄筋21と総称する)を、鋼矢板13の前面フランジ12bを貫通させて配設するか、又は隣接する前面フランジ相互間を通って配設する。
【0032】
その後図1(d)に示すように、所要の鉄筋22等を組立て、壁体コンクリート23及び床版コンクリート24を打設する。図2は図1(d)のA−A矢視を示す縦断面図で、鋼矢板13を壁体コンクリート23と床版コンクリート24の共通芯材として床版25とを結合した結合構造を示している。
【0033】
図3は鋼矢板13と主鉄筋21との結合例を示すもので、主鉄筋21はH形鋼12の前面フランジ12bを貫通して背面フランジ12aに溶接40によって取り付けた鉄筋である。図4は溶接40に代り、ナット41をH形鋼12の背面フランジ12aに溶接し、このナットを介してフランジに取り付けた鉄筋を示したものである。これらの鉄筋の詳細例を図5〜図7に示した。
【0034】
図5(a)に示すように、H形鋼12の背面フランジ12aにナット41を溶接しておき、図5(b)に示すように、主鉄筋21の先端に雄ねじを設けておき、この雄ねじを図5(c)に示すようにナット41にねじ込み鋼矢板の背面に取り付けた鉄筋である。
【0035】
図6は別の例を示すもので、図6(a)に示すように、長ナット42をボルト43で背面フランジ12aにに取りつけておき、先端に雄ねじを設けた主鉄筋21を図6(b)、(c)に示すように長ナット42にねじ込んで取り付ける。この方式は図5に示すようなナットの溶接が適切でない熱感受性の高い高強度材に適用される。また高力ボルトを用いるとよい。
【0036】
図6に示す長ナット42を取り付けると矢板打込時に鋼矢板を地中に貫入するときの貫入抵抗が大きくなるので、図7(a)に示すようにボルト43を高さの低いナット44を用いて取り付けておき、主鉄筋21の取付時に図7(b)に示すようにこのナット44を取外し、図7(c)に示すように、主鉄筋21の先端の雄ねじに長ナット42を装着して、図7(d)に示すように、長ナット42を介して主鉄筋21とナット43とを結合し、鋼矢板の背面フランジに主鉄筋を取り付けた例である。
【0037】
図8は別の例を示す鋼矢板と主鉄筋21との結合を示す縦断面図で、鋼矢板13のH形鋼12のフランジ12bを貫通した主鉄筋21の先端部に抜け防止部材45を取り付けた例である。抜け防止部材45は、例えば主鉄筋21に雄ねじを刻設しておき、これにワッシャ付ナットなどを螺合するとよい。
【0038】
図9は主鉄筋21の先端部に折曲げ部46を設けたものでコンクリートを介して鋼矢板と主鉄筋とを結合するものである。
【0039】
図10は、図9に示すように先端部に折曲げ部を設けた主鉄筋21の取付工程の一例を示すもので、図10(a)に示すように折曲げ部を設けた主鉄筋21の先端を矢印51で示すようにH形鋼12の前面フランジ12bに設けた孔から挿入し、図10(b)に示すように主鉄筋21を矢印52で示すように旋回させ、次いで図10(c)に示すように主鉄筋21を矢印53で示すように背面フランジ側まで押込んでセットが完了する。
【0040】
次に図11〜図14を参照して、主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合させる部分近傍の鋼矢板の内面に、接合部の鋼矢板とコンクリートの一体性を向上させるずれ止めリブを取り付けた土留壁と床版との接合構造について説明する。
【0041】
図11、図13は鋼矢板13の横断面図、図12、図14はその側面図である。主鉄筋21と鋼矢板とを力学的に結合させる部分近傍の鋼矢板の内面にずれ止めリブ60を取り付ける。このずれ止めリブ60はコンクリートと鋼矢板13との結合を高めるもので、高さ9〜50mmの棒鋼や平鋼等から成り、溶接によって予め鋼矢板のH形鋼のフランジの内側、ウエブの側面などに取り付けておく。
【0042】
本発明の特徴は、次の通りである。
(1)壁体と床版とを結合する鉄筋部材は、鋼矢板を打設して掘削した後に取り付けること。
(2)土留壁施工後に鋼矢板の腹腔内の土砂を取り除くことが前提となるため、鋼矢板の背面は爪付フランジが連続して結合されて地下水や土砂が土留壁の内空側に流入しないよう対処されているとともに、鋼矢板の内空側は鋼材相互間が開放されていること。
(3)床版の主鉄筋は、鋼矢板のH形鋼のフランジを貫通させるか、鋼材相互間が開放された部分から鋼矢板の腹腔内に配設すること。
(4)コンクリート打設後に形成する壁体と床版との力学的な結合部は、主鉄筋と鋼矢板を直接に取り付けた結合部、あるいは、コンクリートを介して主鉄筋と鋼矢板を間接に取り付けた結合部とすること。これらの結合部を形成する手段としては、それぞれ次の(イ)および(ロ)がある。
【0043】
(イ)鋼矢板に主鉄筋を直接的に取り付ける手段としては、現場溶接する手段(図3)、又は背面フランジにあらかじめ機械式継手などの部材(例えばボルト、ナットなど)を溶着または埋め込んでおき主鉄筋と結合する手段(図4〜図7)がある。このような部材は鋼矢板を地中に貫入させるために、貫入施工機に鋼矢板をセットするときに支障がなく、鋼矢板打設時の障害にならない程度の突出物であればよい。また、背面フランジに予めねじ孔加工を施しておき、主鉄筋端部をねじ加工してねじ結合する手段などでもよい。鋼矢板に予めナットなどを溶接しておく手段では、ナットの下側に丸鋼などを取り付けておくと、鋼矢板を地中に貫入する際、ナットに作用する地盤抵抗力を軽減し、ナットの保護を兼ねることができる。
【0044】
(ロ)コンクリートを介して鋼矢板と主鉄筋とを間接的に取り付ける手段としては、支圧面積の広い抜け防止部材を主鉄筋の端部に取り付ける手段(図8)、異形鉄筋の有するコンクリートと鉄筋との付着特性を利用する手段、主鉄筋の先端部に折り曲げ部を設け、鉄筋とコンクリートとの必要付着耐力を確保する手段(図9〜図10)などがある。さらに、鋼矢板とコンクリートの付着特性を確保するため、図11〜図14に示すように、床版接合部付近に丸鋼、角鋼、平鋼などから成るずれ止めリブを取り付ける。ずれ止めリブとしてジベル筋などを溶接によって取り付けてもよい。特に、丸鋼、角鋼、平鋼などから成るずれ止めリブとして、高さが9〜50mm程度のものを使用すると、鋼矢板を地中に貫入する時の抵抗もさほど上昇せず、また鋼矢板を地中に貫入する施工機にセットする際の妨げにもならない。これらのずれ止めリブは鋼矢板を地中に貫入する前にあらかじめ取り付けておくことが可能である。
【0045】
これらの手段は、現場での作業環境や工程、地盤条件等に応じて適宜選択すればよい。さらに、鋼矢板問の土砂の除去作業を容易にするため、ウォータージェットを用いたり、又はアースオーガーなどにより鋼矢板腹腔内の土砂を緩める手段を併用すれば、現場での作業性がさらに改善される。
【0046】
【発明の効果】
本発明は、打撃、振動、圧入などによって鋼矢板を地中に貫入して土留壁を形成し、この鋼矢板を芯材として利用した壁体を持つ地中構造物であり、地中構造物構築空間の掘削量を削減することができ、例えば、隣地との境界等の極く近くまでを有効に利用することができ、また、土留用の鋼矢板を地下構造物の力学的構造要素として利用するので、地下構造物の鉄筋量を削減することができ、経済性の高い構造物を得ることができる。
【0047】
本発明方法によれば上記地中構造物を容易に施工することができ、工事費の削減、工期の短縮等に寄与するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構築方法を示す工程図で、図1(a)〜(d)は土留壁の部分断面図を示している。
【図2】図1(d)のA−A矢視を示す縦断面図である。。
【図3】鋼矢板と主鉄筋との結合例を示す図である。
【図4】ナットを溶接した例を示す図である。
【図5】結合部の詳細例を示した図である。
【図6】結合部の詳細例を示した図である。
【図7】結合部の詳細例を示した図である。
【図8】別の例を示す鋼矢板と主鉄筋との結合を示す縦断面図である。
【図9】先端部に折曲げ部を設けた主鉄筋の説明図である。
【図10】折曲げた主鉄筋の取付工程の一例を示す図である。
【図11】鋼矢板の横断面図である。
【図12】図11の側面図である。
【図13】鋼矢板の横断面図である。
【図14】図13の側面図である。
【図15】模式的工程図で、すべて平面図である。
【図16】従来技術の説明図である。
【図17】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
11 爪つきフランジ
12 H形鋼
12a 背面フランジ
12b 前面フランジ
14 地中土留壁
15 空間
16 コンクリート
17 矢印
21 主鉄筋
13 鋼矢板
22 鉄筋
23 壁体コンクリート
24 床版コンクリート
25 床版
40 溶接
41 ナット
42 長ナット
43 ボルト
44 ナット
45 抜け防止部材
46 折曲げ部
51、52、53 矢印
60 ずれ止めリブ
101 爪つきフランジ
102 H形鋼
103 鋼矢板
104 土留壁
105 内側空間
106 床版
107 壁体
110 トレンチ
111 ベントナイト懸濁液
112 H形鋼
113 短尺部材
114 土留壁
115 隣接地域
116 鉄筋
117 結合材
121 爪つきフランジ
123 鋼矢板
Claims (14)
- 地中に空間を形成するための土留壁と床版との接合構造において、土留壁は内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を地中に貫入して形成した壁体とし、床版は鉄筋コンクリート構造であって主鉄筋と該鋼矢板との力学的な結合部を有することを特徴とする土留壁と床版との接合構造。
- 前記床版の主鉄筋は、前記鋼矢板の背面フランジに取り付けた鉄筋であることを特徴とする請求項1記載の土留壁と床版との接合構造。
- 前記床版の主鉄筋は、抜け防止部材を先端部に取り付けた鉄筋であることを特徴とする請求項1記載の土留壁と床版との接合構造。
- 前記床版の主鉄筋は、先端部に折り曲げ部を設けた鉄筋であることを特徴とする請求項1記載の土留壁と床版との接合構造。
- 前記床版の主鉄筋は請求項2〜4の何れかに記載の形状の異なる鉄筋が混在した鉄筋であることを特徴とする請求項1記載の土留壁と床版との接合構造。
- 前記床版の主鉄筋は、前面フランジを貫通させるか又は前面フランジの開放部に配設されたことを特徴とする請求項1〜5に記載の土留壁と床版との接合構造。
- 前記力学的な結合部近傍の鋼矢板の内面に、該鋼矢板とコンクリートの一体性を向上させるずれ止めリブを取り付けたことを特徴とする請求項1〜6に記載の土留壁と床版との接合構造。
- 前記ずれ止めリブは高さ9〜50mmの棒鋼または平鋼からなることを特徴とする請求項7記載の土留壁と床版との接合構造。
- 地中に空間を形成するための土留壁と床版とからなる接合構造を地中に形成するに当たり、内空側のH形鋼の背面側に爪付きフランジを取り付けた鋼矢板を打撃、振動又は圧入により地中に貫入して土留壁を地中に築造し、鋼矢板の内空側の地中を掘削し、鋼矢板腹腔内の土砂を除去した後、鉄筋コンクリート構造である床版の主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合し、床版コンクリートを打設して鋼矢板を芯材とする壁体と一体化した床版を形成することを特徴とする土留壁と床版との接合構造の構築方法。
- 前記力学的に結合する手段は、床版の主鉄筋を鋼矢板の背面フランジに取り付ける手段であることを特徴とする請求項9記載の土留壁と床版との接合構造の構築方法。
- 前記力学的に結合する手段は、床版の主鉄筋の先端部に抜け防止部材を取り付け、引抜き耐力を向上させる手段であることを特徴とする請求項9記載の土留壁と床版との接合構造の構築方法。
- 前記力学的に結合する手段は、床版の主鉄筋の先端部に折り曲げ部を設ける手段であることを特徴とする請求項9記載の土留壁と床版との接合構造の構築方法。
- 前記力学的に結合する手段は請求項10〜12の何れかに記載の異なる手段を併用した手段であることを特徴とする請求項9記載の土留壁と床版との接合構造の構築方法。
- 前記主鉄筋を鋼矢板と力学的に結合させる部分近傍の鋼矢板の腹腔内に、鋼矢板とコンクリートの一体性を向上させるずれ止めリブを予め取り付けておくことを特徴とする請求項9〜13に記載の土留壁と床版との接合構造の構築方法。
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