JP4091870B2 - 床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造 - Google Patents

床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、床を有する建築物その他の構造物において、H型などの開断面や角形鋼管などの閉鎖断面を有する鋼部材もしくはコンクリート充填鋼管材(CFT)を柱材とし、この柱材の側面にH形鋼、I形鋼、C形鋼などからなる梁材を取り付ける床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物その他の構造物において、地震の水平力などにより梁に梁せん断力が作用したときに、柱・梁の接合部では、強力な曲げモーメントおよびせん断力が作用し、この接合部が損壊を受けやすいという問題があり、この損壊を防止するため、柱・梁の接合構造については従来種々の改良がなされている。
【0003】
さらに説明すると、鋼製柱と鋼製梁の接合構造には、▲1▼慣例的な従来技術として、通しダイアフラム形式の溶接方法があるが、この方法は、鋼製柱を切断してダイアフラムを溶接した後、再度溶接するもので加工数が多くなり、また品質確保の点で問題がある。▲2▼また、特開2002−266424では高力ボルトを主体とする接合構造とすることで接合品質の安定確保を図っているが、多大な接合金物が必要なため加工・施工工数が大きいことや接合金物重量増大などの問題がある。
【0004】
▲3▼実開昭62−12063号公報には、CFT柱と鋼製梁の接合構造と、梁上フランジ非接合の構造が示されている。ここに開示の技術は、鋼製柱がCFTで、柱にアンカーボルトまたはスラブ鉄筋貫通用の孔をあけることが前提であるが、梁上フランジの応力をスラブ鉄筋で柱に伝達させる場合、十分なスラブ鉄筋を配筋するためには、柱の孔径を大きくする必要があり、柱の強度が低下する。また、CFT内に充填されたコンクリートだけでは、スラブ鉄筋との付着長さが不十分である。
【0005】
図10によって、従来の柱・梁の接合構造の一例を説明する。図に示される鋼製柱1は角形鋼管で構成されているとともに、鋼製梁2はH形鋼で構成さている。鋼製柱1の相対する側面には上下一対のスプリットティ3、4のフランジ3a、4がボルト7で接合されているとともに、これら上下両スプリットティ3、4のウエブ3b、4bの間には前記H形鋼製の鋼製梁2の上下両フランジ3a、4aの端部がボルト7にて組みつけられている。
【0006】
そして、鋼製梁2の梁上フランジ5上面には、床面材としてのコンクリート床スラブ10が打設されていて、梁上フランジ5に溶接した頭付きスタッド(ずれ止め部材)14を介して鋼製梁2と床スラブ10とが一体化されている。床スラブ10内には複数のスラブ鉄筋が配設されているが図示を省略している。
【0007】
前記柱・梁の接合構造において、地震等により鋼製梁2に梁軸方向応力が作用したときに、柱を中心として水平力が作用する下流側において、鋼製柱1及び鋼製梁2の梁上フランジ5の端部5aでの上部スプリットティ3による接合部には強大な引張力が作用し、接合部が剛結合の場合損傷することがある。また、柱・梁の接合部の損壊を回避するため梁上フランジ5と鋼製柱1とを非接合とする場合があるが、その場合は鋼製梁上部と鋼製柱1との適切な応力の伝達機構が必要であるが、既存の床スラブ補強鉄筋に所期の伝達機能を期待するのは困難である。
【0008】
【特許文献1】
実開昭62−12063号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
鉄骨建築物における柱・梁の接合構造には、地震時などの水平力によって損壊しない構造とすることが求められるが、簡潔な構造により前記の要望を満たす柱・梁の接合構造が従来はなかった。
【0010】
本発明は、鋼製梁と一体化されるコンクリート床スラブと軸力伝達材を組合わせることにより、柱の相対する一側の柱・梁接合部に作用する引張力を柱の相対する他側の柱・梁接合部に圧縮力として伝達させることにより、前記従来の問題点を解決したものである。すなわち、本発明は、加工・施工手間が大幅に低減可能で、かつ接合品質確保の容易な剛または半剛の柱と梁の接合構造を実現することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明は次のように構成する。
【0012】
第1の発明は、柱の相対する2つの側面にそれぞれ梁を接合し、前記梁上にコンクリート床スラブを構築してなる建物の柱・梁の接合構造において、梁上フランジに作用する梁軸方向応力を前記床スラブへ伝達する機能を有するずれ止め部材を梁上フランジに有しており、前記柱の周辺で、かつ前記柱の相対する2つの側面に接合した梁に跨って軸力伝達材を前記床スラブ内に配設されるスラブ鉄筋とは別の設計に基づき当該床スラブ内に配置し、前記軸力伝達材の長さを下記(1)式を満足するものとし、一方の梁フランジに作用する引張力を他方の梁上面の床スラブを介して柱に圧縮力として伝達可能に構成したことを特徴とする。
L≧40D ・・・ (1)
ここで、
L:軸力伝達材の端部の近傍に位置し、柱に近接する側のずれ止め部材との間隔が最も短くなる軸力伝達材の一部から軸力伝達材の端部までのコンクリートへの付着長さ
D:軸力伝達材の直径
【0013】
第2の発明は、柱の相対する一方の側面に梁を接合し、前記梁上にコンクリート床スラブを構築してなる建物の柱・梁の接合構造において、梁上フランジに作用する梁軸方向応力を前記床スラブへ伝達する機能を有するずれ止め部材を梁上フランジに有しており、前記柱の周辺でかつ前記梁を接合した側面から相対する側面に跨って軸力伝達材を前記床スラブ内に配設されるスラブ鉄筋とは別の設計に基づき当該床スラブ内に配置し前記軸力伝達材の長さを下記(1)式を満足するものとし、前記軸力伝達材に結合した接合部材を介して梁フランジに作用する引張力を柱に圧縮力として伝達可能に構成したことを特徴とする。
L≧40D ・・・ (1)
ここで、
L:軸力伝達材の端部の近傍に位置し、柱に近接する側のずれ止め部材との間隔が最も短くなる軸力伝達材の一部から軸力伝達材の端部までのコンクリートへの付着長さ
D:軸力伝達材の直径
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記梁上フランジは、柱に対し非接合とされていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第1〜第3の何れかの発明において、梁上フランジ上面に梁フランジに作用する梁軸方向応力を前記床スラブヘ伝達するずれ止め部材を設け、前記軸力伝達材は、前記ずれ止め部材の上端より梁上フランジ上面寄りに配置されていることを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、前記ずれ止め部材が頭付きスタッドであることを特徴とする。
【0017】
第6の発明は、第4の発明において、前記ずれ止め部材がアングル材もしくはスプリットティーなど梁上フランジに接合されている金物であることを特徴とする。
【0018】
第7の発明は、第1〜第6の発明において、前記軸力伝達材は、鋼製梁と平行若しくは鋼製梁に対し所定の角度傾斜配置した異形鉄筋で構成したことを特徴とする。
【0019】
第8の発明は、第1〜第6の何れかの発明において、前記軸力伝達材は、鋼製梁と平行に配置したアンカー機能を有するボルトで構成したことを特徴とする。
【0020】
【作用】
地震の水平力などにより建物に梁軸方向応力が作用したときに、鋼製柱を中心に水平力が作用する下流側の鋼製柱と鋼製梁の接合部には引張力が作用し、この接合部が損壊を受けやすいが、本発明では、鋼製柱の周囲において床スラブ内に配置した軸力伝達材により柱・梁の下流側接合部に作用する引張力を、柱・梁の上流側接合部に圧縮力として伝達させるので、床スラブ合成効果により柱・梁の下流側接合部に作用する引張力低減でき、柱・梁の接合部の接合品質の確保が容易かつ確実にでき、しかも加工・施工手間を大幅に低減可能である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。なお、従来と同一要素には同一符号を付して説明する。
【0022】
図1(a)は、実施形態1に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。同図に示される鋼製柱1は角形鋼管で構成されているとともに、鋼製梁2はH形鋼で構成さている。鋼製柱1の相対する側面には下部スプリットティ4のフランジ4aがボルト7で接合されているとともに、下部スプリットティ4のウエブ4bの上面には前記H形鋼製の鋼製梁2の梁下フランジ6の端部がボルト7にて組みつけられている。また、鋼製柱1の相対する側面で下部スプリットティ7の上方部位には、中間部スプリットティ11のフランジ11aがボルト7で接合されているとともに、中間部スプリットティ11のウエブ11bの側面には前記H形鋼製の鋼製梁2のウエブ2aの端部がボルト7にて組みつけられている。したがって、鋼製梁2の梁上フランジ5の端部5aと鋼製柱1の間は非接合に設けられている。
【0023】
そして、鋼製梁2の梁上フランジ5上面には、床面材としてのコンクリート床スラブ10が打設されていて、梁上フランジ5に溶接した頭付きスタッド等のずれ止め部材14を介して鋼製梁2と床スラブ10とが一体化されている。床スラブ10内には複数のスラブ鉄筋を配設しているが図示を省略している。
【0024】
前記柱・梁の接合構造において、地震等により鋼製梁2に梁軸方向応力が作用したときに、柱を中心として水平力が作用する下流側において、鋼製柱1及び鋼製梁2の梁上フランジ5の端部5aの間に引張力が作用する。とくに実施形態1の場合、鋼製柱1と梁上フランジ5の端部5aの間は非接合であるから、非接合部に作用する引張力を鋼製柱1に伝達する機構が必要であり、このため実施形態1では、軸力伝達材15をコンクリート床スラブ10に配置している。
【0025】
軸力伝達材15は本発明の主要素であるので詳しく説明する。図1(a)に示すように軸力伝達材15は、鋼製柱1の周辺で、かつ鋼製柱1の相対する2つの側面に接合した鋼製梁2、2に跨って、これと平行に床スラブ内に配置している。軸力伝達材15はアンカーボルトまたは異形鉄筋などで構成するとともに所定の長さに設定し、この軸力伝達材15を1本または複数本所定の間隔をあけて配置する。さらに、軸力伝達材15は、床スラブ10内において、ずれ止め部材14の上端より梁上フランジ5の上面寄りに配置されている。
【0026】
実施形態1によると、建物に水平力が作用し、梁軸方向応力が発生した場合において、鋼製柱1を中心に水平力の柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を、軸力伝達材15及び鋼製梁2と一体化された床スラブ10を介して鋼製柱1の上流側の柱・梁の接合部に圧縮力として伝達させることができる。すなわち、図1(b)に矢印で示す水平力は、柱の下流側の水平力(B)を軸力伝達材15と床スラブ10を介して柱の上流側の水平力(A)に伝達でき、したがって、いわゆる床スラブ合成効果により、柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を低減でき、柱・梁の接合部の接合品質の確保が容易かつ確実にできる。軸力伝達材15は、梁上フランジ5の端部5aと柱を結合する従来のスプリットティなどに代わる接合機能を有するもので、床スラブ鉄筋(図示省略)とは別に設計に基づき柱の周辺に配置されるものである。なお軸力伝達材15の長さは、以下の条件を満たすように設定するのが望ましい。
L≧40×D
ここで、Lは軸力伝達材15のコンクリートへの付着長さで、Dは軸力伝達材の直径である。
【0027】
図3(a)は、実施形態2に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。実施形態2では、実施形態1における下部スプリットティ4に代えて、下部外ダイアフラム16が鋼製柱1の外周に溶接されていて、この下部外ダイアフラム16の上面にH形鋼製の鋼製梁2の梁下フランジ6の端部が溶接17にて組みつけられている。他の構成は実施形態1と同じである。
【0028】
実施形態2によると、実施形態1と同様に柱の下流側の水平力を軸力伝達材15と床スラブ10を介して柱の上流側の水平力に伝達できる。したがって、柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を低減でき、柱・梁の接合部の接合品質の確保が容易かつ確実にできる。
【0029】
図4(a)は、実施形態3に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。実施形態3では、下部通しダイアフラム18が鋼製柱1に設けられ、この下部通しダイアフラム18にH形鋼製の鋼製梁2の梁下フランジ6の端部が溶接17にて組みつけられている。また、H形鋼製の鋼製梁2の梁上フランジ5の端部5aにアングル材19が高力ボルトにて組みつけられ、このアングル材19の起立部に開口された孔20に軸力伝達材15が挿通支持されている。また、このアングル材19は高いずれ止め効果を有するずれ止め材であり、頭付きスタッドをずれ止め材として用いた場合に比べ、接合部をコンパクト化でき、コストも低減できる。他の構成は実施形態2と同じである。
【0030】
実施形態3によると、実施形態1、2と同様に柱の下流側の水平力を軸力伝達材15と床スラブ10を介して柱の上流側の水平力に伝達できる。したがって、柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を低減でき、柱・梁の接合部の接合品質の確保が容易かつ確実にできる。
【0031】
(a)は、実施形態4に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。実施形態4では、鋼製柱1の相対する一方の側面にH形鋼製の鋼製梁2が接合されている。そして、下部外ダイアフラム16が鋼製柱1の外周に溶接されていて、この下部外ダイアフラム16の上面に鋼製梁2の梁下フランジ6の端部が溶接17にて組みつけられている。
【0032】
さらに実施形態4では、鋼製梁2は鋼製柱1の相対する一方の側面(図の右側)のみに接合されるており、軸力伝達材15も鋼製柱1の右側に伸長して、鋼製梁2と平行に配置されている。鋼製柱1の両側に配設される軸力伝達材15の他端(図の左側)は、鋼製柱1の側部に接して配設された所定長、所定幅の接合部材21に開設された孔20に挿通されていて、その端部にナット等の定着部材22が固着されている。その他の構成は、実施形態1〜3と同じである。
【0033】
実施形態4によると、柱に作用する水平力(梁軸方向応力)により柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を、床スラブ10と軸力伝達材15に結合した接合部材21を介して柱の上流側に圧縮力として伝達できる。したがって、柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を低減でき、柱・梁の接合部の接合品質の確保が容易かつ確実にできる。
【0034】
図6、図7は、実施形態5に係る柱・梁の接合構造の横断平面図と縦断面図である。実施形態5では、鋼製柱1の相対する四方の各側面にH形鋼製の鋼製梁2が接合されている。そして、下部通しダイアフラム18が鋼製柱1に設けられていて、この下部通しダイアフラム18に鋼製梁2の梁下フランジ6の端部が溶接17にて組みつけられている。
【0035】
さらに、実施形態5では、所定長の軸力伝達材15は、鋼製柱1を取り囲んでその周囲に平行に配設した複数本が一組となって井桁状に配設され、鋼製柱1の四方向に接合される鋼製梁2に対して所定の角度傾斜して配置されている。その他の構成は、実施形態1〜4と同じである。
【0036】
実施形態5によると、鋼製柱1の四方向に接合される鋼製梁2の接合構造において、柱に作用する水平力(梁軸方向応力)により柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を、井桁状に配置した軸力伝達材15と床スラブ10を介して柱の上流側に圧縮力として伝達できる。したがって、柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を低減でき、柱・梁の接合部の接合品質の確保が容易かつ確実にでき、さらに軸力伝達材15は柱梁接合部まわりの床スラブのひび割れ防止筋としての機能も付与できる。なお軸力伝達材15の長さは、以下の条件を満たすように設定するのが望ましい。
L≧40×D
ここで、Lは軸力伝達材15のコンクリートへの付着長さで、Dは軸力伝達材の直径である。
【0037】
図8(a)は、実施形態6に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。実施形態6では、軸力伝達材15の配置形態が実施形態1と相異し、鋼製柱1の相対する側面にH形鋼製の鋼製梁2が接合されるとともに、鋼製梁2の梁下フランジ6および梁ウエブ2aの端部が、下部スプリットティ4と中間部スプリットティ11により鋼製柱1に接合される構成は実施形態1と同じである。
【0038】
実施形態6では、軸力伝達材15は、鋼製柱1の相対する両側面に接合される鋼製梁2の一方の鋼製梁2(図7の右側)と平行に配置されていて、この軸力伝達材15の一方の端部(図7の左側)の間は、他方の鋼製梁2(図7の左側)の上部において、軸力伝達材接合部15aによって接合されている。軸力伝達材15と軸力伝達材接合部15aは、長尺の異形鉄筋等を平面U字形に曲げ成形することで一体成形できる。
【0039】
実施形態6によると、柱に作用する水平力(梁軸方向応力)により柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を、軸力伝達材15及びこれと一体の軸力伝達材接合部15a並びに床スラブ10を介して柱の上流側に圧縮力として伝達できる。したがって、柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を低減でき、柱・梁の接合部の接合品質の確保が容易かつ確実にできる。
【0040】
図9、図10は、実施形態7に係る柱・梁の接合構造の横断平面図と縦断面図である。実施形態7では、鋼製柱1の相対する四方の各側面にH形鋼製の鋼製梁2が接合されている。また、所定長の軸力伝達材15は、鋼製柱1を取り囲んでその周囲に矩形状に曲げ配置され、したがって、鋼製柱1の四方向に接合される鋼製梁2に対して所定の角度傾斜して配置されている。その他の構成は、実施形態5と同じである。
【0041】
実施形態5によると、鋼製柱1の四方向に接合される鋼製梁2の接合構造において、柱に作用する水平力(梁軸方向応力)により柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を、矩形状に配置した軸力伝達材15と床スラブ10を介して柱の上流側に圧縮力として伝達できる。したがって、柱・梁の下流側の接合部に作用する引張力を低減でき、柱・梁の接合部の接合品質の確保が容易かつ確実にできる。
【0042】
本発明は、各実施形態で示した構成を適宜設計変更して実施することは構わない。
【0043】
【発明の効果】
本発明によると次の効果がある。すなわち、地震の水平力などにより建物に梁軸方向応力が作用したときに、鋼製柱を中心に水平力が作用する下流側の鋼製柱と鋼製梁の接合部には引張力が作用し、この接合部が損壊を受けやすいが、本発明では、鋼製柱の周囲において床スラブ内に配置した軸力伝達材により柱・梁の下流側接合部に作用する引張力を、柱・梁の上流側接合部に圧縮力として伝達させるので、床スラブ合成効果により柱・梁の下流側接合部に作用する引張力低減でき、柱・梁の接合部の接合品質の確保が容易かつ確実にでき、しかも加工・施工手間を大幅に低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、実施形態1に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。
【図2】(a)は、実施形態2に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。
【図3】(a)は、実施形態3に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。
【図4】(a)は、実施形態4に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。
【図5】実施形態5に係る柱・梁の接合構造の横断平面図である。
【図6】図5の縦断面図である。
【図7】(a)は、実施形態7に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。
【図8】実施形態8に係る柱・梁の接合構造の横断平面図である。
【図9】図8の縦断面図である。
【図10】(a)は、従来例に係る柱・梁の接合構造の横断平面図、(b)は、縦断面図である。
【符号の説明】
1 鋼製柱
2 鋼製梁
2a ウエブ
3 上部スプリットティ
4 下部スプリットティ
5 梁上フランジ
5a フランジの端部
6 梁下フランジ
7 ボルト
10 コンクリート床スラブ
11 中間部スプリットティ
14 ずれ止め部材
15 軸力伝達材
15a 軸力伝達接合部
16 下部外ダイアフラム
17 溶接
18 下部通しダイアフラム
19 アングル材
20 孔
21 接合部材
22 定着部材

Claims (8)

  1. 柱の相対する2つの側面にそれぞれ梁を接合し、前記梁上にコンクリート床スラブを構築してなる建物の柱・梁の接合構造において、梁上フランジに作用する梁軸方向引張応力を前記床スラブへ伝達する機能を有するずれ止め部材を梁上フランジに有しており、前記柱の周辺で、かつ前記柱の相対する2つの側面に接合した梁に跨って軸力伝達材を前記床スラブ内に配設されるスラブ鉄筋とは別の設計に基づき当該床スラブ内に配置し、前記軸力伝達材の長さを下記(1)式を満足するものとし、一方の梁上フランジに作用する引張力を他方の梁上面の床スラブを介して柱に圧縮力として伝達可能に構成したことを特徴とする床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造。
    L≧40D ・・・ (1)
    ここで、
    L:軸力伝達材の端部の近傍に位置するずれ止め部材であって、柱に近接する側のずれ止め部材との間隔が最も短くなる軸力伝達材の一部から軸力伝達材の端部までのコンクリートへの付着長さ
    D:軸力伝達材の直径
  2. 柱の相対する一方の側面に梁を接合し、前記梁上にコンクリート床スラブを構築してなる建物の柱・梁の接合構造において、梁上フランジに作用する梁軸方向引張応力を前記床スラブへ伝達する機能を有するずれ止め部材を梁上フランジに有しており、前記柱の周辺でかつ前記梁を接合した側面から相対する側面に跨って軸力伝達材を前記床スラブ内に配設されるスラブ鉄筋とは別の設計に基づき当該床スラブ内に配置し、前記軸力伝達材の長さを下記(1)式を満足するものとし、前記軸力伝達材に結合した接合部材を介して梁フランジに作用する引張力を柱に圧縮力として伝達可能に構成したことを特徴とする床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造。
    L≧40D ・・・ (1)
    ここで、
    L:軸力伝達材の端部の近傍に位置するずれ止め部材であって、柱に近接する側のずれ止め部材との間隔が最も短くなる軸力伝達材の一部から軸力伝達材の端部までのコンクリートへの付着長さ
    D:軸力伝達材の直径
  3. 前記梁上フランジは、柱に対し非接合とされていることを特徴とする請求項1または2記載の床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造。
  4. 梁上フランジ上面に梁フランジに作用する梁軸方向応力を前記床スラブヘ伝達するずれ止め部材を設け、前記軸力伝達材は、前記ずれ止め部材の上端より梁上フランジ上面寄りに配置されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項記載の床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造。
  5. 前記ずれ止め部材が頭付きスタッドであることを特徴とする、請求項4記載の床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造。
  6. 前記ずれ止め部材がアングル材もしくはスプリットティーなど梁上フランジに接合されている金物であることを特徴とする、請求項4記載の床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造。
  7. 前記軸力伝達材は、梁と平行若しくは梁に対し所定の角度傾斜配置した異形鉄筋で構成したことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造。
  8. 前記軸力伝達材は、鋼製梁と平行に配置したアンカー機能を有するボルトで構成したことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の床スラブ合成機能を有する柱・梁の接合構造。
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