以下、記録装置を備えた記録システムについて図面を参照して説明する。
図1に示すように、記録システム100は、複数台の記録装置11を備える。記録装置11は、用紙等の媒体Mに画像を記録する。記録装置11は、媒体Mに画像を記録するプリンター12と、記録後の媒体Mを搬送する中間装置13と、中間装置13が搬送した記録後の媒体Mに後処理を行う後処理装置14とを備える。
プリンター12は、媒体Mに液体の一例としてのインクを付着させることで文字や図表、写真などの画像を記録するインクジェット式プリンターである。プリンター12は、ユーザーにより操作される操作部15を有する。プリンター12は、媒体Mを積層状態で収容するカセット20を1つ又は複数有している。カセット20は、プリンター12の下部に挿抜可能に挿着されている。プリンター12が記録した媒体Mは中間装置13に送られる。
中間装置13は、その内部で記録後の媒体Mを所定経路で搬送する。中間装置13は、直近に記録された記録面が上向きで搬入された媒体Mを反転し、その記録面を下向きにして後処理装置14に排出する。中間装置13は、媒体Mの反転を伴う搬送経路を搬送される搬送過程で、記録後の媒体Mを乾燥させる。中間装置13で媒体Mの搬送時間を稼ぐことで、後処理装置14へ供給される媒体Mの乾燥不足に起因するカールを抑える。
後処理装置14は、中間装置13から搬入した記録後の媒体Mに後処理を行う。後処理としては、例えば、ステープル、裁断、紙折り、パンチ穴開けやソートなどがある。そして、後処理後の媒体Mは、後処理装置14の排出スタッカー34に排出され積層される。
記録装置11は、自装置以外の記録装置11と通信する通信部16を有している。複数台の記録装置11は、それぞれの通信部16により通信網CNを介して互いに通信可能に接続される。通信網CNは、有線でも無線でもよく、さらに有線と無線の両方を含んでもよい。通信網CNとしては、有線LANや無線LANが挙げられるが、近距離無線通信網でもよい。
また、複数の記録装置11は、通信網CN又は他の通信線を通じて1つ又は複数のホスト装置(図示せず)と通信可能に接続されている。ユーザーはホスト装置の操作部15を操作することで、記録装置11に対する記録指示を含む各種の指示及び各種の設定を行うことができる。ホスト装置には、例えば印刷ドライバーがインストールされている。印刷ドライバーは、ホスト装置の表示部に設定画面を表示させる表示機能、及びホスト装置のキー操作で入力又は選択された各種の設定情報を受け付ける受付機能を有する。記録装置11に対する各種の指示及び各種の設定は、ユーザーによるホスト装置のキー操作又はユーザーによる操作部15の操作により行われる。
次に、図2を参照して記録装置11の詳細な構成を説明する。
図2に示すように、記録装置11は、プリンター12と中間装置13と後処理装置14とを備える。記録装置11には、プリンター12から中間装置13を経由して後処理装置14まで続く図2に二点鎖線で示す搬送経路17が設けられている。記録装置11は、搬送モーター18の駆動により搬送経路17に沿って媒体Mを搬送する1つ又は複数の搬送ローラー対19を備える。すなわち、記録装置11は、搬送経路17に沿って媒体Mを搬送する複数の搬送ローラー対19を含む搬送部40を備える。搬送部40は、プリンター12内でカセット20から媒体Mを給送するとともに記録後の媒体Mを搬送する第1搬送部41と、中間装置13内で記録後の媒体Mを搬送する第2搬送部42と、後処理装置14内で記録後の媒体Mを搬送する第3搬送部43とを備える。なお、中間装置13及び後処理装置14はそれぞれが備える搬送ローラー対19を有する各搬送部42,43の駆動源となる1つ又は複数の不図示の搬送モーターを備える。
図2では、記録装置11はオフィスのフロア等の水平面上に設置されており、重力の方向をZ軸で示し、Z軸と交差する面に沿う方向をX軸及びY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、好ましくは互いに直交し、X軸とY軸は、水平面に沿う。以下の説明では、X軸と平行な方向を幅方向X、Z軸と平行な方向を鉛直方向Zともいい、幅方向Xと直交して搬送経路17に沿う方向を搬送方向Y1ともいう。搬送方向Y1は、搬送ローラー対19が媒体Mを搬送する方向であり、上流側のプリンター12から下流側の後処理装置14に向かう方向である。
プリンター12は、カセット20に収容された媒体Mのうち、最上位の媒体Mを送り出すピックアップローラー21と、ピックアップローラー21により送り出された媒体Mを1枚ずつ分離する分離ローラー22とを備える。
プリンター12は、媒体Mに記録を行う記録部23を備える。記録部23は、搬送経路17の途中で媒体Mを支持する支持部24と、支持部24により支持された媒体Mにノズル25から液体を吐出して記録する記録ヘッド26とを備える。記録ヘッド26は、搬送経路17を挟んで支持部24と対向する位置に設けられている。記録ヘッド26は、媒体Mの幅全域に亘って配列された複数のノズル25から一斉に液体を吐出可能なラインヘッドとしてもよいし、幅方向Xに移動しながら液体を吐出するシリアルヘッドとしてもよい。
プリンター12は、搬送経路17の一部として搬送経路17Aを有する。搬送経路17Aは、媒体Mが排出される排出経路101と、媒体Mがスイッチバック搬送されるスイッチバック経路102と、媒体Mの姿勢が反転される反転経路103とを備える。記録ヘッド26により記録された媒体Mは、排出経路101を通って排出部104に排出される。
両面印刷を実行する際、片面に印刷された媒体Mは、スイッチバック経路102へ搬送された後、逆方向に搬送され、スイッチバック経路102から反転経路103へ搬送される。反転経路103で反転した媒体Mは、再び記録ヘッド26へ給送され、記録ヘッド26により、既に印刷された面とは反対側の面に印刷される。こうしてプリンター12は、媒体Mに両面印刷を行う。プリンター12は、記録後の媒体Mを排出部104又は中間装置13に向けて搬送する。
なお、プリンター12は、記録ヘッド26のノズル25の目詰まりを予防又は解消するためにノズル25から強制的にインクを吸引排出するクリーニングを行う不図示のメンテナンスユニットを備える。また、クリーニング以外のメンテナンス動作として、ノズル25からメンテナンスユニットのキャップ又はインク受け部にインク滴を吐出するフラッシングや、記録ヘッド26のノズル開口面を払拭するワイピングを行う。記録装置11は、記録動作を行っていないときにメンテナンス動作を行う。
中間装置13は、搬送経路17の一部として搬送経路17Bを有する。搬送経路17Bは、導入経路201と、第1スイッチバック経路202と、第2スイッチバック経路203と、第1合流経路204と、第2合流経路205と、導出経路206とを備える。
プリンター12から中間装置13の導入経路201に導入された媒体Mは、不図示のフラップ等によって、第1スイッチバック経路202又は第2スイッチバック経路203へ搬送される。第1スイッチバック経路202へ搬送された媒体Mはスイッチバック搬送されたのちに、第1合流経路204を通って導出経路206へ搬送される。一方、導入経路201から第2スイッチバック経路203へ搬送された媒体Mはスイッチバック搬送されたのちに、第2合流経路205を通って導出経路206へ搬送される。
中間装置13では、媒体Mがスイッチバック搬送されることで、プリンター12において直前の記録面が上方を向く姿勢から下方を向く姿勢へ反転される。これにより、導出経路206を通って中間装置13から後処理装置14へ直前の記録面が下方を向く姿勢で媒体Mが導出される。また、中間装置13内を搬送される過程で記録後の媒体Mの乾燥時間が確保される。このため、中間装置13から後処理装置14へは乾燥した媒体Mが送られる。この結果、後処理装置14内でインクの転写や媒体Mのカールが抑制される。
次に、後処理装置14について説明する。図2に示すように、後処理装置14は、搬送経路17の一部として搬送経路17Cを有する。第3搬送部43は、搬送経路17Cに沿って記録後の媒体Mを搬送する。第3搬送部43は、搬入された記録後の媒体Mを搬送する搬送ローラー対19と、搬送ローラー対19から媒体Mを受け取って搬送する搬送機構28とを備える。搬送機構28は、環状の搬送ベルト29を有し、搬送ベルト29に媒体Mを吸着して搬送と逆搬送とを伴うスイッチバック搬送を行う。センサー31が検出した媒体Mが回転する搬送ベルト29に吸着されてその後端が所定位置に達すると、搬送ベルト29の回転方向が逆転して媒体Mがスイッチバック搬送される。後処理装置14は、搬送機構28の下方位置に、搬送機構28が搬送した媒体Mを受ける中間スタッカー32と、中間スタッカー32に積載される媒体Mに後処理を施す後処理機構33とを備える。
搬送機構28は、搬送ベルト29に媒体Mを吸着して搬送と逆搬送とを伴うスイッチバック搬送を経て中間スタッカー32に媒体Mを1枚ずつ受け渡す。後処理機構33は、中間スタッカー32に所定枚数の媒体Mが積層し終わる度に、媒体Mの束に後処理を施す。例えば、媒体Mの束に後処理としてステープル処理が施される。後処理後の媒体Mは中間スタッカー32から排出された後、排出スタッカー34に積層される。なお、図1、図2に示す記録装置11では、中間装置13を1つの独立した装置として構成したが、中間装置13の第2搬送部42の機能が後処理装置14に組み込まれた構成としてもよい。また、記録装置11は、図1及び図2に示す例では、中間装置13及び後処理装置14を備える構成としたが、プリンター12のみの構成でもよい。また、プリンター12は、原稿を読み取る画像読取装置を備えた複合機であってもよい。
次に、図3を参照して、記録システム100の電気的構成について説明する。図3に示すように、複数の記録装置11は、電気的に同じ構成を有している。そのため、以下では、複数のうちの1つの記録装置11(第1記録装置11A)を例にして電気的構成を説明する。記録装置11は制御部50を備える。制御部50には、操作部15、通信部16、検出部27等が電気的に接続されている。
操作部15は、例えばタッチパネル式の表示部及び操作ボタンなどを有する。制御部50は、表示部に各種の設定画面を表示したり、操作部15からユーザーの操作に基づく操作信号を受け付けたりする。
通信部16は、自装置以外の他の記録装置11と通信する機能を有する。通信部16は、有線LAN、無線LAN及び近距離無線通信のうち少なくとも1種の通信が可能な1つ又は複数の通信器(通信インターフェイス)を含む。制御部50は自装置の通信部16により他の記録装置11の通信部16と所定の通信方式で通信網CNを介して通信し、他の記録装置11の制御部50と情報のやり取りをする。本実施形態では、通信でやり取りされる情報には、検出部27の出力結果等が含まれる。通信部16は、有線LANに対応可能な有線LAN用通信部、無線LANに対応可能な無線LAN用通信部、及び近距離無線通信器のうちから選択される1つ又は複数よりなる。無線LAN通信部としては、例えば、IEEE802.11に準じた無線LAN通信部や、Wi-Fi(登録商標)通信器などが挙げられる。また、近距離無線通信器としては、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)通信器や、IrDA(Infrared Data Association)規格の赤外線通信器などが挙げられる。さらに、通信部16は、インターネット通信が可能なインターネット通信部でもよい。そして、通信網CNには、通信部16の通信方式に対応可能な通信網が用いられる。通信網CNとしては、有線LAN、無線LAN、近距離無線通信網及びインターネット回線網のうち1つ又は複数が用いられる。また、複数台の記録装置11は、不図示のサーバーを介して互いに接続され、サーバーを介して互いに通信する構成でもよい。この場合、複数台のうち1台がサーバーを兼ねてもよい。
検出部27は、記録装置11の使用環境を検出する。制御部50は、検出部27が検出する使用環境に基づいて記録条件を決定する。本例の検出部27は、使用環境として温度と湿度を検出する。検出部27は、例えば温湿度センサーよりなる。なお、検出部27は、温度センサーと湿度センサーとを備えた構成でもよい。ここで、使用環境とは、媒体Mに記録された記録物の記録品質に影響を与える環境を指す。記録過程、搬送過程、後処理過程の各処理のうち少なくとも1つに悪影響を与える環境も含まれる。また、後処理装置14を備える本実施形態では、使用環境として後処理ミスをもたらす媒体Mのカールの原因となる環境も含まれる。そのため、使用環境は、温度と湿度のうち一方のみでもよいし、温度と湿度の一方と他の環境との組合せ、あるいは温度と湿度と他の環境との組合せでもよい。
検出部27の検出結果と、通信部16により通信が可能な他の記録装置11における他の検出部27の検出結果とが異なっていた場合、制御部50は、検出部27の検出結果及び他の検出部27の検出結果を基に検出部27の補正を行う。
記録装置11は、補正方法、補正タイミング、補正間隔を、ユーザーが選択できる選択部を備えてもよい。選択部は、例えば記録装置11の操作部15、記録装置11に通信可能に接続されるホスト装置(図示略)の印刷ドライバーが挙げられる。例えば、ユーザーは操作部15を操作することにより、補正方法、補正タイミング、補正間隔を選択する。また、印刷ドライバーはホスト装置の表示部に選択用の設定画面を表示し、ユーザーはホスト装置のキーボードやポインティングデバイスを操作して印刷ドライバーに対し、補正方法、補正タイミング、補正間隔を選択する。なお、ホスト装置としては、パーソナルコンピューター、携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistants))又はスマートフォン等のスマートデバイス等が挙げられる。
媒体Mは記録前においては湿度に影響され、例えばカールし易くなる。また、媒体Mの記録後においては乾燥度合が低いとカールが発生し易い。インクが付着した媒体Mは、インク付着面側が膨潤することで、媒体Mの表面に皺ができるコックリングや媒体Mが反るカールが発生する。媒体Mの表面に付着したインク中の水分等の溶媒が蒸発してインクの乾燥が進むと、媒体Mのカール等は小さくなる。媒体Mのカールは、搬送ミス、ジャム等の搬送エラー、記録ミス、後処理ミス等の原因になる。媒体Mのカールの度合はインクの乾燥速度に影響され、そのインクの乾燥速度は、温度と湿度に依存する。つまり、温度が高いほど乾燥速度が高まり、湿度が低いほど乾燥速度が高まる。そのため、検出部27を用いて使用環境として温度と湿度を検出する。制御部50は、記録装置11における記録速度を決める条件である後述する記録条件を、検出部27の出力結果に応じて調整する。
また、制御部50には、出力系として、記録ヘッド26、搬送部40及び後処理機構33が、電気的に接続されている。搬送部40は、プリンター12の第1搬送部41、中間装置13の第2搬送部42、及び後処理装置14の第3搬送部43を含む。各搬送部41~43は、駆動源となる搬送モーター18(図2参照)をそれぞれ備える。制御部50は、記録ヘッド26及び第1搬送部41を駆動制御することで、プリンター12の記録動作を制御する。また、制御部50は第2搬送部42を駆動制御することで中間装置13の搬送動作を制御する。さらに制御部50は、第3搬送部43及び後処理機構33を駆動制御することで後処理装置14の後処理動作を制御する。このため、制御部50が行う記録制御の中には、中間装置13の搬送制御及び後処理装置14の後処理制御も含まれる。
制御部50は、コンピューター51及びメモリー52を備える。コンピューター51は、時間又は時刻を計時可能なタイマー53を備える。メモリー52には、コンピューター51が実行するプログラムPR、補正データCD1、較正データCD2、及び記録条件データPCDが記憶されている。コンピューター51がメモリー52に記憶されたプログラムPRを実行することにより、記録制御及び通信制御を含む各種の制御を行う。プログラムPRには、図10~図12にフローチャートで示される各種の処理を行うプログラムが含まれる。
補正データCD1は、検出部27を補正するために用いられる。制御部50は、補正データCD1を用いて自装置の検出部27の検出結果を補正することで、複数台の記録装置11間で検出部27の検出結果を揃える補正を行う。
また、較正データCD2は、検出部27を較正するために用いられる。例えば、ユーザー又はメンテナンス作業者は、記録装置11の個々の使用環境を、計測器を用いて高い精度で計測し、その計測器の計測結果を操作部15の操作又はホスト装置のキー操作を介して記録装置11に入力する。制御部50は、入力した計測器の計測結果とその時の検出部27の出力結果とに基づき図4に示す較正データCD2を作成する。検出部27が温湿度センサーである本例では、検出部27により環境値として温度と湿度が検出される。制御部50は、計測器が計測した温度と湿度のそれぞれの真値と検出部27の出力結果との誤差を小さくすべく出力値の較正に用いる較正データCD2を作成する。そして、制御部50は、検出部27が検出した温度・湿度を基に、較正データCD2を参照して後述する較正用のオフセット値を取得し、オフセット値を用いて較正された温度と湿度を取得する。なお、検出部27の較正データCD2の作成方法及び較正データCD2を用いた較正方法の詳細については後述する。
較正データCD2は、複数台の記録装置11のうち選択された特定の基準の記録装置11Sのメモリー52にのみ記憶されていてもよい。また、較正データCD2をメモリー52に記憶する記録装置11の検出部27が基準検出部27Sとされ、基準検出部27Sを備える記録装置11が基準の記録装置11Sとなる設定でもよい。基準の記録装置11Sは1台に限らず、全台数(N台)よりも少ない数の複数台(M台)でもよい。ここで、N,Mは、N>M>1の関係を満たす自然数である。図3に示す例では、記録システム100は、1台の基準の記録装置11Sと、1台又は複数台の他の記録装置11とを備える。なお、図1、図3では、記録装置11を区別するため、N台の記録装置11を、第1記録装置11A、第2記録装置11B、…、第N記録装置11Nと記す。
次に、検出部27の較正方法について説明する。制御部50は、検出部27が較正されると、検出部27の実際の検出結果を較正する際に参照される較正データCD2を生成しメモリー52に記憶する。例えば、較正データCD2を記憶する記録装置11のうち基準に設定されたものの検出部27が基準検出部27Sとなる。そして、基準検出部27Sを備える記録装置11が、基準の記録装置11Sとなる。
図5に示すように、ユーザー又はメンテナンス作業者は、計測器を用いて記録装置11の使用環境として環境温度及び環境湿度を計測する。計測器は、検出部27に比べ計測精度が高い。ユーザー又はメンテナンス作業者は、計測器を用いて信頼性の高い環境温度及び環境湿度を計測する。このとき、複数の環境条件でその温度及び湿度を計測する。例えば、図5に示すように、環境温度20℃、25℃、30℃の環境で、検出部27の出力値を取得し、計測値による信頼性の高い出力値に対する検出部27の出力値の誤差を測定する。例えば、環境温度20℃、25℃、30℃において図5に示す狙いの湿度RH15%、45%、75%に対して図5に示す誤差が得られたとする。
図5は、温度環境が20℃、25℃、30℃のときの湿度と誤差の関係を示すグラフである。グラフの横軸は狙いの湿度RH(%)、縦軸は計測器により計測した湿度の真値に対する検出部27の検出湿度の誤差である。狙いの湿度に対して環境温度ごとに異なる誤差が生じる。制御部50は、このデータを基に図4に示す較正データCD2を作成する。
ユーザー又はメンテナンス作業者は、操作部15の操作又はホスト装置の操作により、狙いの湿度に対する環境温度ごとの誤差を記録装置11に入力する。制御部50は、入力した狙いの湿度に対する環境温度ごとの誤差のデータを基に温度と湿度の区分の組合せごとのオフセット値を算出し、算出した組合せごとのオフセット値から図4に示す較正データCD2を作成し、これをメモリー52に記憶する。
図4に示すように、較正データCD2は、温度T(℃)と湿度RH(%)のテーブルデータである。温度Tは、0~15℃、16~30℃、31~45℃の例えば3つの範囲に区分され、湿度RHは、0~30%、31~60%、61~100%の例えば3つの範囲に区分される。図4は、湿度RHを較正するための較正データCD2を示す。温度Tの区分範囲と湿度RHの区分範囲との組合せごとに湿度RH(%)のオフセット値「a」~「i」が設定されている。なお、較正データCD2には、温度を較正するための温度較正用の較正データCD2も同様に作成され、メモリー52に記憶される。
そして、制御部50は、検出部27の出力値を基に較正データCD2を参照してその出力値の温度・湿度の属する範囲の組合せに応じたオフセット値を取得し、取得したオフセット値を用いて、以下の計算式に基づく計算を行う。
温度最終出力値=温度出力値+温度オフセット値
湿度最終出力値=湿度出力値+湿度オフセット値
制御部50は、検出部27の出力値と、図4に示す較正データCD2を参照して得たオフセット値とを用いて、上記計算を行って検出部27の較正後の最終出力値を取得する。つまり、制御部50は、その時々の検出部27の出力値を得る度に、その出力値を基に図4に示す温度用と湿度用の各較正データCD2を参照して、温度オフセット値と湿度オフセット値を取得し、上記計算を行って較正後の温度最終出力値と湿度最終出力値とを取得する。
次に、図6、図7を参照して、検出部27の較正データCD2の別の作成例について説明する。例えば、複数台の記録装置11が同じフロアに設置されているオフィスの空調環境が1年を通して一定に管理されている場合がある。図6に示す例では、オフィス内が1年を通して温度25℃に設定されている。例えば2台の記録装置11でそれぞれの検出部27の出力値のばらつきを無くすように較正する。温度25℃の一定の温度環境下で計測器を用いて湿度の真値を計測する。計測器で計測した湿度の真値を2台の記録装置11に操作部15の操作で入力する。記録装置11の制御部50は、環境温度25℃の温度登録値と、入力した湿度の真値と、検出部27の出力値とに基づいて、環境温度25℃の下での検出部27の狙いの湿度ごとの誤差を算出する。図6は、環境温度25℃の下で、機体Aと機体Bの2台の記録装置11について狙いの湿度RHごとの湿度の真値と検出湿度との誤差を示す。機体Aでは誤差δ1、機体Bでは誤差δ2である。
図6の例では、狙いの湿度RH=50%に対して機体Aでは誤差δ1=+2.7、機体Bでは誤差δ2=-2.8となっている。そのため、制御部50は、狙いの湿度RH=50%での誤差を無くすために、機体Aの検出部27に対して-δ1をオフセットし、機体Bの検出部27に対して-δ2をオフセットする。つまり、機体Aではオフセット値-δ1として「-2.7」を設定し、機体Bではオフセット値-δ2として「+2.8」を設定することで、狙いの湿度RH=50%で湿度の真値に対する誤差が「0」になるように検出部27を較正する。なお、狙いの湿度RHが30%の場合、機体Aのオフセット値が、図6から「-4.2」、機体Bのオフセット値が、図6から「+3.3」となる。また、狙いの湿度RHが70%の場合、機体Aのオフセット値が、図6から「-0.9」、機体Bのオフセット値が、図6から「+3.2」となる。このように較正したオフセット値が較正データCD2としてメモリー52に記録される。
次に、図8を参照して、記録条件データPCDについて説明する。記録条件データPCDは、検出部27の検出結果から取得される環境情報を基に記録条件を決定する際に参照される。本例では、検出部27の出力結果から得られる環境情報は、温度と湿度である。図8に示すように、記録条件データPCDは、温度T(℃)及び湿度RH(%)と、複数の記録条件との対応関係を示すデータである。図8に示す例では、温度Tが最低温度Tminから最高温度Tmaxまでの範囲で設定され、湿度RHが0~100%の範囲で設置されている。そして、記録条件データPCDは、温度Tと湿度RHの組み合わせに応じて合計9つの記録条件A~Iが設定されている。制御部50は、検出部27の検出結果として得られる温度Tと湿度RHとを基に記録条件データPCDを参照することで、温度Tと湿度RHとの組み合わせに応じた1つの記録条件を選択する。
図8に示すように、複数の記録条件A~Iは、温度Tの閾値と湿度RHの閾値で切り替わる。図8の例では、温度Tの閾値は15℃と30℃となっており、湿度RHの閾値は30%と60%となっている。制御部50は、検出部27が検出した温度と湿度の組合せのうち一方でも閾値を超えると、それまでの記録条件から、閾値を超えた先の温度と湿度の組合せに応じた記録条件に切り替える。このとき、複数台の記録装置11間で検出部27の検出精度にばらつきがあると、同じ使用環境下に設置された記録装置11であるにも関わらず、検出部27の検出結果のばらつきが原因で、同じ環境下の記録装置11が異なる記録条件で駆動されることになる。この場合、同じ印刷内容を同じ種類の媒体Mに同じ記録装置11に記録させているにも関わらず、記録速度を含む記録条件が異なることになる。ユーザーは複数の記録装置11間で記録速度などの記録条件に差異があることに違和感を覚える。場合によっては記録装置11の故障又はメンテナンスが必要と認識してしまう恐れがある。また、記録装置11間での記録条件の差異が記録品質の差異となって現れる恐れもある。このため、オフィスの同じフロアに設置されているなど同じ環境下で使用される記録装置11間では記録条件が揃うことが好ましい。
また、インクジェット式のプリンター12においては、インクが付着した記録後の媒体Mが湾曲状にカールする場合がある。カールは、媒体Mの単位面積当たりに付着したインクの量が多いほど発生し易い。媒体Mの厚みもカールの度合に影響し、媒体Mの厚みが薄いほどカールの度合が大きくなり易い。これは、媒体Mの単位体積当たりのインクの量が多いほどカールし易いことによる。
本実施形態では、制御部50は、使用環境に応じて記録条件を決めることに加え、媒体Mにインクを吐出して打ち込まれるインクの打込み量(吐出量)に応じて記録条件を決定してもよい。詳しくは、制御部50は、インクの打込み量に応じて記録速度を変化させることが望ましい。ここで、媒体Mに対するインクの打込み量が閾値を超える場合、中間装置13が通常の搬送速度であると、記録後の媒体Mの乾燥が不十分となり、後処理装置14に送られた媒体Mがカールし易くなる心配がある。カールした媒体Mはジャムを招いたり、後処理ミスを招いたりする。このため、本実施形態の制御部50は、検出部27が検出して得られる環境情報に加え、インクの打ち込み量に応じて記録条件を変更する。制御部50は、インクの打込み量が閾値以下である場合は、環境情報から決まる記録条件に基づく記録速度と同じ第1記録速度を選択する。一方、インクの打込み量が閾値を超える場合は、環境情報から決まる記録条件に基づく記録速度である第1記録速度よりも所定速度分だけ低速な第2記録速度を選択する。ここで、記録速度を低下させる所定速度分とは、第1記録速度に対する比率(%)でもよいし、記録速度の低減分の速度量でもよい。また、インクの打ち込み量の閾値を複数設定し、記録速度を3段階以上の複数段階で補正する構成としてもよい。なお、温度と湿度とインク打ち込み量とを基に記録条件データPCDを参照して記録条件を決めてもよい。さらに、インク打ち込み量に加え媒体Mの厚みを考慮して記録条件を決めてもよい。
次に、制御部50が、自装置以外の他の記録装置11との間で、使用環境の検出情報などを、通信を介してやり取りする際の通信制御について説明する。制御部50は、所定の通信時期になると、自装置の検出部27の検出結果である環境情報を情報交換するために他の記録装置11と通信する。制御部50は、所定の通信時期条件を満たすか否かを判定し、通信時期条件を満した通信時期に他の記録装置11と通信する。通信時期条件には、装置設置時、電源ON時、記録開始時、タイマー設定時、定期などを含む所定時期が設定され、これらの所定時期に該当するかどうかが条件とされる。「装置設置時」とは、記録装置11を最初にオフィス等に設置するときを指す。例えば、装置設置時にテスト等を行うために、設置作業者が操作部15の操作又はホスト装置のキー操作によって、設定画面で「装置設置テスト」の項目を選択したときが該当する。また、「電源ON時」は記録装置11の電源が投入されたときが該当し、「記録開始時」は記録装置11が印刷ジョブ等の記録命令を受信したときが該当する。「タイマー設定時」は、1日又は1週間のうち通信時期として設定された時期又は時刻になったことをタイマー53が検出したときが該当する。タイマー設定される時期としては、1日の例では朝・昼・夕の3回の時期が挙げられる。タイマー設定される時刻としては、1日の例では9時・12時・15時の3回の時刻が挙げられる。1週間の例では月曜・水曜・金曜の3回の時期が挙げられる。曜日指定の場合は、その1日のうちの時期又は時刻も設定可能である。なお、1日の通信回数は3回以外の複数回でもよいが、1回でもよい。さらに「定期」は、記録装置11の電源ON中に定期的に通信を行うことを意味する。「定期」には、1時間毎、2時間毎、3時間毎などの設定された間隔時間が経過したことをタイマー53が計時したときが該当する。間隔時間は、10分単位又は1分単位でも設定可能である。また、「定期」においては、記録条件の変わり目近くの環境では、通信間隔を短く変更して頻度の高い第1通信頻度で通信が行われ、一方、記録条件の変わり目近くではない環境では、通信間隔の長い第2通信頻度で通信が行われる。
図9は、通信時期条件が「定期」の場合の記録条件と通信間隔との関係の一例を示す。図9では、上側に記録条件データPCDの閾値の近傍を示し、下側に環境に応じた通信間隔を、温度と湿度とのうち湿度の例で示す。図9に示すように、温度閾値を含むその近傍範囲である温度閾値近傍範囲TAと、湿度閾値を含むその近傍範囲である湿度閾値近傍範囲HAとが設定される。ここで、これらの閾値近傍範囲TA,HAは、閾値±Rの範囲である。値Rは、例えば隣同士の閾値と閾値との間隔に対する比率(%)で示されるが、温度又は湿度の値でもよい。図9では、R=5%の例を示す。これらの閾値近傍範囲外の環境のときは通信間隔として第1時間t1が設定され、これらの閾値近傍範囲内の環境では通信間隔として、第1時間t1よりも短い第2時間t2が設定される(t1>t2)。つまり、本例では、温度と湿度との少なくとも一方が、閾値近傍範囲外にあれば通信間隔として第1時間t1が設定され、閾値近傍範囲内にあれば通信間隔として第2時間t2が設定される。また、図9では、湿度に関する通信間隔のみを示すが、温度に関する通信間隔も同様であり、温度閾値近傍範囲TA外で第1時間t1、温度閾値近傍範囲TA内で第2時間t2が設定される。なお、図8の例では、湿度閾値は30%と60%であり、温度閾値は15℃と30℃である。
次に、記録装置11の作用を説明する。制御部50は、ホスト装置(図示略)から印刷データを受信する。印刷データには印刷条件情報と印刷画像データとが含まれている。制御部50は、印刷条件情報を基に、媒体Mのサイズ、媒体Mの種類(用紙種)、両面印刷の有無(両面印刷又は片面印刷)、印刷色(カラー又はグレイスケール)、印刷品質(普通印刷又は高精細印刷)及び印刷枚数に関する情報を取得する。制御部50は、複数台の記録装置11間で通信を行い、自装置の検出部27が検出した温度と湿度を含む使用環境の情報を互いに交換し、オフィスの同じフロアなど同じ使用環境下に設置された複数台の記録装置11間で媒体Mに記録する際の記録条件を揃える処理を行う。また、使用環境に基づく記録条件の設定に加え、制御部50は、印刷画像データを基にインクの打込み量を算出し、算出したインク打ち込み量に応じて記録速度を制御する。ここで、インク打ち込み量とは、媒体Mの単位面積当たりに打ち込まれるインクの量を指す。インク打ち込み量は、印刷画像データに基づくインクのドット数とドットサイズとに基づいて1枚の媒体Mに打ち込まれるインク量を算出し、その1枚当たりに打ち込まれるインク量を媒体Mの面積で割ることでインク打ち込み量は算出される。媒体Mの種類によっても乾燥速度は異なるが、同じ種類の媒体Mであれば、インク打ち込み量が多いほど、媒体Mの厚みが薄いほど媒体Mは乾燥しにくい傾向にある。媒体Mが乾燥不足であると、媒体Mはカールし易い。
次に、制御部50のコンピューター51が実行する処理について説明する。以下では、プログラムを実行する制御部50を備える記録装置11を自装置、自装置以外の他の記録装置11を他装置ともいう。なお、記録システム100を構成する複数台の記録装置11のうち2台以上が電源オン状態にあり、自装置と通信可能な他の記録装置11が1台以上あるものとする。また、他の記録装置11の装置設置時に、ユーザー又はメンテナンス作業者が検出部27を較正することで、検出部27を基準となる基準検出部27Sとする。このため、複数台の記録装置11のうち少なくとも1台の他の記録装置11は、較正済みの基準検出部27Sを備えた基準の記録装置11Sとなっている。図3に示す例では、第2記録装置11Bが装置設置時に検出部27が較正された基準検出部27Sを備えた基準の記録装置11Sとなっている。
まずステップS11では、制御部50は、通信時期か否かを判定する。制御部50は、所定の通信時期条件を満たすか否かを判定し、通信時期条件を満たせばステップS12に進み、通信時期条件を満たさなければ当該ルーチンを終了する。詳しくは、制御部50が図11に示す通信時期判定ルーチンを行う。
ステップS12では、制御部50は、他の記録装置11と通信し、他の記録装置11の他の検出部27の検出結果を取得する。制御部50は、通信時期条件を満たすと、他の記録装置11に対して検出部27の検出結果の提供を通信部16により通信網CNを介して要求する。この要求を受信した他の記録装置11では、他の検出部27の検出結果を他の通信部16により通信網CNを介して要求元の記録装置11へ送信する。
ステップS13では、制御部50は、自装置の検出結果を取得する。すなわち、制御部50は、自装置の検出部が検出した検出結果を取得する。
ステップS14では、制御部50は、自装置の検出結果と他装置の他の検出結果とを比較する。
ステップS15では、制御部50は、検出結果が異なるか否かを判断する。制御部50は、自装置の検出結果と他装置の検出結果とを比較し、これらの検出結果の中に許容範囲を超えて異なるものがある場合、検出結果が異なると判断する。例えば、比較対象の他の記録装置11が複数ある場合、検出結果の異なる他の記録装置11が1台でもあれば検出結果が異なると判定する。また、例えば、比較対象の他の記録装置11のうち検出結果の異なる他の記録装置11が1台又は複数台あっても、各検出結果に応じて決まる記録条件が同じであれば、検出結果が同じであると判断してもよい。これは、検出部27を補正しなくても、複数の記録装置間で記録条件を揃えられるからである。但し、その後、通信が行われない期間での環境変化によって記録条件が記録装置11間で異なる恐れがある場合は、検出結果が異なる旨の判定を行って、次のステップの処理で検出部27を補正しておくことが好ましい。こうしてこのステップでは、自装置の検出結果と他装置の検出結果とが異なれば、ステップS16に進む。一方、自装置の検出結果と他装置の検出結果とが異ならなければ、つまり検出結果が許容範囲内で同じであれば、ステップS22に進む。
ステップS16では、制御部50は、検出部27の補正方式を判定する。本実施形態では、記録装置11には4種類の補正方式のうち1つが設定されている。ユーザーが操作部15の操作又はホスト装置のキー操作により4種類の補正方式のうち1つを選択することで、予め1つの補正方式が設定されている。この補正方式の設定情報は、記録システム100を構成する複数台の記録装置11間で共有される。例えば、各記録装置11のメモリー52には共有情報として補正方式の設定情報が記憶されている。制御部50は、メモリー52から読み出した設定情報を基に、検出部27の補正方式を認識する。このステップでは、制御部50は、まず補正方式が第1方式であるか第2方式であるかを判定する。そして、制御部50は、補正方式が第1方式であればステップS17に進み、第2方式であればステップS18に進む。また、制御部50は、補正方式が第1方式と第2方式のいずれでもなければステップS19に進み、更に補正方式が第3方式であるか第4方式であるかを判定する。そして、制御部50は、補正方式が第3方式であればステップS20に進み、第4方式であればステップS21に進む。
ステップS17では、制御部50は、検出部27の検出結果を平均値に揃えることで、第1方式の補正を行う。すなわち、制御部50は、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果との平均値となるように検出部27の補正を行う。詳しくは、制御部50は、他の記録装置11から通信により取得した他の検出部27の検出結果と自装置の検出部27の検出結果との平均値を算出する。つまり、制御部50は、平均温度と平均湿度とを算出する。そして、自装置の検出部27の検出結果を、算出した平均温度と平均湿度に補正する。また、他の記録装置11においても同様に他の検出部27の検出結果が平均値に補正される。なお、記録装置11の個々の制御部50が平均値を算出するのに替え、1台の記録装置11の制御部50が算出した平均値を他の記録装置11へ送信し、他の記録装置11が他の検出部27の検出結果を、受信した平均値に補正する構成でもよい。
ステップS18では、制御部50は、基準検出部27Sに合わせることで、第2方式の補正を行う。本例では、第2記録装置11Bの検出部27が基準検出部27S(図3参照)に定められている。制御部50は、自装置の検出部27を基準検出部27Sの検出結果に近づくように検出部27の補正を行う。
ステップS20では、制御部50は、第3方式の補正として、記録速度が速い方に合わせる。すなわち、制御部50は、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果のうち、記録速度が速くなる方の検出結果に近づくように検出部27の補正を行う。
ステップS21では、制御部50は、第4方式の補正として、記録速度が遅い方に合わせる。すなわち、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果のうち、記録速度が遅くなる方の検出結果に近づくように検出部27の補正を行う。
ステップS22では、制御部50は、検出部の検出結果に応じた記録条件を取得する。すなわち、制御部50は、必要に応じて補正した検出部27の検出結果を基に記録条件データPCD(図8参照)を参照して検出結果に応じた記録条件を取得する。詳しくは、制御部50は、ステップS17~S21で補正した検出結果又はステップS15で否定判定のため補正なしの検出結果として得られた温度Tと湿度RHの組合せに応じて記録条件データPCDから決まる記録条件を取得する。このとき、複数台の記録装置11間で、温度と湿度の検出結果が補正により揃えられるか、あるいは補正なしの場合は揃っているので、複数台の記録装置11間で記録条件が統一される。
ステップS23では、制御部50は、記録条件で記録動作を行う。この結果、複数台の記録装置11間で媒体Mに同じ記録条件で記録が行われる。ここで、記録条件は、記録速度を決める条件である。このため、複数台の記録装置11間で媒体Mに同じ記録速度で記録が行われる。記録装置11が例えばシリアルプリンターである場合、記録速度とは、記録ヘッド26の移動速度と媒体Mの搬送速度とのうち一方又は両方の速度を指す。この場合、記録ヘッド26のノズル25からの単位時間当たりのインク吐出数で示されるインク吐出頻度、ヘッド移動速度、媒体搬送速度の少なくとも一つが、複数台の記録装置11間で揃うことになる。また、記録装置11が例えばラインプリンターである場合、記録速度とは、記録ヘッド26のノズル25からの単位時間当たりのインク吐出数で示されるインク吐出頻度と、媒体Mの搬送速度とのうち一方又は両方の速度を指す。この場合、インク吐出頻度と媒体搬送速度のうち一方又は両方が、複数台の記録装置11間で揃うことになる。こうして複数台の記録装置11間で媒体Mに記録する記録速度が統一される。
図10に示す補正処理では、自装置の検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果とが異なる場合、検出部27を補正することにより自装置の記録条件と他の記録装置11の記録条件とを合致させている。これに対して、自装置の検出部27の検出結果から決まる記録条件と、他の記録装置11の他の検出部27の検出結果から決まる記録条件とが異なる場合、自装置の記録条件と他の記録装置11の記録条件とを合致させる補正を行ってもよい。つまり、制御部50は、自装置の検出部27の検出結果から決まる記録条件と、他の検出部27の検出結果から決まる記録条件とを含む複数の記録条件が全て同じであるか否かを判定する。そして、制御部50は、この判定結果が、複数の記録条件のうち1つでも他と異なるものが存在する否定判定であれば、所定の補正方法で自装置の記録条件と他の記録装置11の記録条件とを合致させる補正を行う。この記録条件を合致させる補正方法では、制御部50は、検出部27を補正してもよいし補正しなくてもよい。
ここで、制御部50が記録条件を合致させるために行う所定の補正方法は、以下に示す複数のうちいずれか1つであればよい。1つ目は、複数台の記録装置11のうち基準の記録装置11Sの検出部27の検出結果から決まる基準の記録条件に、基準以外の他の記録装置11の記録条件を合致させる補正方法である。また、2つ目は、複数台の記録装置11のそれぞれの検出部27の検出結果から決まる複数の記録条件の平均値に合わせる補正方法である。例えば、記録速度に複数の異なる値があった場合はそれらの値の平均値に記録速度を合わせる。この平均値は、搬送速度の平均値、インク吐出頻度の平均値、ヘッド移動速度の平均値のうちいずれか1つであればよい。また、使用環境の段階に応じて記録速度が段階的に決まる場合、複数台の記録装置11間で段階の異なる記録速度が複数ある場合は、異なる段階の中間の段階を平均値として設定してもよい。例えば、記録速度として低速側から順に第1記録速度から第5記録速度まで設定されている場合、複数の記録装置11の検出結果に応じて決まる記録条件の中に第2記録速度と第4記録速度とが含まれる場合、これらの記録速度の中間の段階である第3記録速度を、平均値の一例として選択する。さらに3つ目は、複数台の記録装置11のそれぞれの検出部27の検出結果から決まる複数の記録条件のうち記録速度の速い方に合わせる補正方法である。また、4つ目は、複数台の記録装置11のそれぞれの検出部27の検出結果から決まる複数の記録条件のうち記録速度の遅い方に合わせる補正方法である。
上記の記録条件を補正する補正方法を実現するため、例えば、制御部50が実行する図10における処理内容を次のように変更すればよい。ステップS12の処理に替え、他の記録装置11の他の検出結果に応じた記録条件を取得する。この場合、他の記録装置11から他の検出結果を通信で取得しこの他の検出結果に応じた記録条件を取得してもよいし、他の記録装置11の制御部50が他の検出部27の検出結果に応じて取得した記録条件を他の記録装置11から通信で取得してもよい。また、ステップS13の処理に替え、自装置の検出結果に応じた記録条件を取得する。ステップS14の処理に替え、自装置の記録条件と他の記録条件とを比較する。ステップS15の処理に替え、自装置の記録条件と他の記録条件とが異なるか否かを判定する。ステップS16,S19の処理に替え、記録条件の補正に用いる補正方法を判定する。そして、ステップS17の処理に替え、記録条件を平均値に揃える。ステップS18の処理に替え、基準の記録条件に合わせる。ステップS20の処理に替え、記録条件を記録速度が速い方に合わせる。ステップS21の処理に替え、記録条件を記録速度が遅い方に合わせる。そして、ステップS22の処理は廃止し、ステップS23において記録条件で記録動作を行う。検出部27の補正については、制御部50は実行してもよいし実行しなくてもよい。このような記録条件を補正する補正方法であっても、複数台の記録装置11間で媒体Mに記録する記録速度が統一される。
次に、図11を参照して、上記の記録装置11の補正処理におけるステップS11で行われる通信時期判定ルーチンについて説明する。
まずステップS31では、制御部50は、装置設置時か否かを判断する。記録装置11の設置時には、ユーザー又は作業者は操作部15の操作又はホスト装置のキー操作により設定画面で「装置設置時」の項目を選択し、装置設置時である旨を記録装置11に通知する。この装置設置時の旨の通知を受け付けると、制御部50は装置設置時であると判定する。制御部50は、装置設置時であればステップS22に進み、装置設置時でなければ当該ルーチンを終了する。
ステップS32では、制御部50は、電源ON時か否かを判断する。電源ON時とは、記録装置11の電源が投入されたときが該当する。制御部50は、電源ON時であればステップS33に進み、電源ON時でなければ当該ルーチンを終了する。
ステップS33では、制御部50は、時期設定がなされているか否かを判断する。本実施形態の記録装置11では、ユーザーは記録装置11に対して通信時期を設定することができる。本例の記録装置11には3種類の通信時期が用意されており、ユーザーは3種類の中から1つの通信時期を設定できる。予めユーザーは操作部15の操作又はホスト装置のキー操作により設定画面上で「通信時期設定」の項目を選択し、その下位画面で通信時期として「記録開始時」を設定する際に選択される「第1時期」と、「タイマー設定」を設定する際に選択される「第2時期」と、所定時間ごとの時期を設定する際に選択される「定期」とのうちから1つを選択する。ユーザーにより設定された通信時期の設定情報は、記録システム100を構成する複数台の記録装置11間で通信を介して共有される。各記録装置11のメモリー52には共有情報の1つとして通信時期情報が記憶される。制御部50は、メモリー52から読み出した通信時期情報を基に時期設定の内容が、第1時期、第2時期及び定期のうちのいずれであるかを判定する。そして、制御部50は、時期設定内容が「第1時期」であればステップS34に進み、「第2時期」であればステップS35に進み、「定期」であればステップS36に進む。
ステップS34では、制御部50は、記録開始時か否かを判断する。制御部50は、印刷ジョブ等の印刷命令を受信しておりその命令で指示された印刷動作の開始前であるときを記録開始時と判断する。制御部50は、記録開始時であればステップS12へ進み、記録開始時でなければ当該ルーチンを終了する。記録開始時でないとは、印刷命令を受信していないときや記録動作中のときなどが挙げられる。
ステップS35では、制御部50は、タイマー設定時か否かを判断する。ここで、「タイマー設定時」とは、1日又は1週間のうち通信時期として設定された時期又は時刻になったことをタイマー53が検出したときが該当する。タイマー設定時期としては、1日の例では朝・昼・夕の3回の時期が挙げられる。タイマー設定時刻としては、1日の例では9時・12時・15時の3回の時刻が挙げられる。1週間の例では月曜・水曜・金曜の3回の時期が挙げられる。曜日指定の場合は、その1日のうちの時期又は時刻も設定可能である。制御部50は、ユーザーによるタイマー設定がなされている場合、タイマー53から設定時期又は設定時刻に達した旨の通知を受け付けると、タイマー設定時であると判定し、タイマー53からこの種の通知を受け付けていないときはタイマー設定時ではないと判断する。制御部50は、タイマー設定時であればステップS12に進み、タイマー設定時でなければ当該ルーチンを終了する。
ステップS36では、制御部50は、記録条件の閾値±R内であるか否かを判断する。制御部50は、検出部27の検出結果から温度と湿度を取得し、温度と湿度のうち少なくとも一方が記録条件を切り替える閾値の±Rの範囲で規定される近傍範囲にあるか否かを判断する。図9に示すように、例えばR=5%である場合、制御部50は、湿度が湿度閾値の±5%内の湿度閾値近傍範囲HA内であるか否かを判断する。また、制御部50は、温度が温度閾値±5%内の温度閾値近傍範囲TA内であるか否かを判断する。制御部50は、検出部27が検出した温度と湿度のうち少なくとも一方が記録条件の閾値±R内でなければステップS37に進み、記録条件の閾値±R内であればステップS38に進む。
ステップS37では、制御部50は、第1時間t1を経過したか否かを判断する。図9に示すように、例えば湿度が湿度閾値の±5%内になければ、通信間隔を第1時間t1とする。制御部50は、前回の通信終了時点から計時を開始しているタイマー53から経過時間が第1時間t1に達した旨の通知を受け付けると、第1時間t1が経過したと判断する。制御部50は、第1時間t1を経過すればステップS12に進み、第1時間t1が経過していなければ当該ルーチンを終了する。
ステップS38では、制御部50は、第2時間t2を経過したか否かを判断する。図9に示すように、例えば、湿度が湿度閾値の±5%の範囲である湿度閾値近傍範囲HA内であると、通信間隔を第2時間t2とし、温度が温度閾値の±5%の範囲である温度閾値近傍範囲TA内であると、通信間隔を第2時間t2とする。制御部50は、前回の通信終了時点から計時を開始しているタイマー53から経過時間が第2時間t2に達した旨の通知を受け付けると、第2時間t2が経過したと判断する。制御部50は、第2時間t2を経過すればステップS12に進み、第2時間t2が経過していなければ当該ルーチンを終了する。この場合、第1時間t1よりも短い第2時間t2を経過する度に、他の記録装置11と通信して他の検出部27の検出結果を取得する。よって、他の検出結果を取得するための通信頻度が高くなる。この結果、記録条件の閾値の近傍範囲にあるときは、高い通信頻度で通信するため、検出部27の検出結果を補正する補正頻度が高くなる。このため、検出部27の検出結果が記録条件の閾値を超えると、複数台の記録装置11間でほぼ同じタイミングで記録条件が切り替えられる。なお、図11の処理は、上述した記録条件の補正方法における通信時期の決定にも適用でき、その場合、ステップS34,S35,S37,S38で肯定判定であるときの移行先であるステップS12では、他の記録装置11の他の検出結果に応じた記録条件を取得する。
上記第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)媒体Mに記録を行う記録部23と、使用環境を検出する検出部27と、検出部27が検出する使用環境に基づいて記録条件を決定する制御部50と、自装置以外の記録装置11と通信する通信部16と、を備える。検出部27の検出結果と、通信部16により通信が可能な他の記録装置11における他の検出部27の検出結果とが異なっていた場合、制御部50は、検出部27の検出結果及び他の検出部27の検出結果を基に検出部27の補正を行う。よって、複数の記録装置11の記録条件を自動で統一することができる。
(2)制御部50は、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果との平均値となるように検出部27の補正を行う。よって、複数の記録装置11の検出部27のばらつきを自動で平均補正することができる。
(3)制御部50は、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果のうち、記録速度が速くなる方の検出結果とに近づくように検出部27の補正を行う。よって、複数の記録装置11の記録条件を記録速度の速い側に統一することができるため、ユーザーの記録速度に対する不満を抑制することができる。
(4)制御部50は、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果のうち、記録速度が遅くなる方の検出結果に近づくように検出部27の補正を行う。よって、複数の記録装置11の記録条件を記録速度の遅い側に統一することができるため、記録後の媒体Mの乾燥不足のリスクを抑制することができる。
(5)他の検出部27の少なくとも1つを基準検出部27Sとした場合、制御部50は、基準検出部27Sの検出結果に近づくように検出部27の補正を行う。よって、基準となる記録装置11の記録条件に、他の記録装置11の記録条件を自動で合わせることができる。
(6)記録装置11は、媒体Mに記録を行う記録部23と、使用環境を検出する検出部27と、検出部27が検出する使用環境に基づいて記録条件を決定する制御部50と、自装置以外の記録装置11と通信する通信部16と、を備える。検出部27の検出結果と、通信部16により通信が可能な他の記録装置11における他の検出部27の検出結果とが異なることにより自装置の記録条件と他の記録装置11の記録条件とが異なる場合、制御部50は、自装置の記録条件と他の記録装置11の記録条件とを合致させる補正を行う。よって、複数の記録装置11の記録条件を自動で統一することができる。
(7)記録装置11の補正方法は、媒体Mに記録を行う記録部23と、使用環境を検出する検出部27と、を備える記録装置において、検出部27が検出する使用環境に基づいて記録条件を決定する。この補正方法は、通信部16により通信が可能な他の記録装置11と通信を行うこと、検出部27の検出結果と他の記録装置11における他の検出部27の検出結果とが異なる場合に、検出部27の検出結果及び他の検出部27の検出結果を基に検出部27の補正を行うこと、を含む。よって、上記(1)の効果が同様に得られる。
(8)記録装置11の補正方法では、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果とが異なる場合に、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果との平均値となるように検出部27の補正を行う。よって、上記(2)の効果が同様に得られる。
(9)記録装置11の補正方法では、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果とが異なる場合に、記録速度が速くなる方の検出結果に近づくように検出部27の補正を行う。よって、上記(3)の効果が同様に得られる。
(10)記録装置11の補正方法では、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果とが異なる場合に、記録速度が遅くなる方の検出結果に近づくように検出部27の補正を行う。よって、上記(4)の効果が同様に得られる。
(11)記録装置11の補正方法では、他の検出部27の少なくとも1つを基準検出部27Sに決定することを更に含み、検出部27の検出結果と他の検出部27の検出結果とが異なる場合に、基準検出部27Sの検出結果に近づくように検出部27の補正を行う。よって、上記(5)の効果が同様に得られる。
(12)記録装置11の補正方法では、他の記録装置11の設置時に基準検出部27Sを較正することを更に含む。よって、基準となる記録装置11の検出部27の検出結果を実際の環境に近づけることができるとともに、他の記録装置11の検出部27の検出結果も実際の環境に自動で近づけることができる。
(13)記録装置11の補正方法は、媒体Mに記録を行う記録部23と、使用環境を検出する検出部27と、を備える記録装置11において、検出部27が検出する使用環境に基づいて記録条件を決定する。この補正方法は、通信部16により通信が可能な他の記録装置11と通信を行うこと、検出部27の検出結果と、通信部16により通信が可能な他の記録装置11における他の検出部27の検出結果とが異なることにより自装置の記録条件と他の記録装置11の記録条件とが異なる場合、自装置の記録条件と他の記録装置11の記録条件とを合致させる補正を行うこと、を含む。よって、複数の記録装置11の記録条件を自動で統一することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図12を参照して説明する。記録動作中に補正を行う記録動作中ルーチンについて説明する。ここで、検出部27の出力のばらつきが原因で複数台の記録装置11間で記録速度が不統一になることを防ぐために補正を行う。このため、記録動作を行う予定のない他の記録装置11については、補正の対象から除外してもよい。
例えば、自装置に記録命令があった場合に、(a)他の記録装置11で記録が行われていない、(b)他の記録装置11で記録命令を受信していない、(c)他の記録装置11がクリーニング、フラッシング及びワイピングを含むメンテナンス動作などの他の動作を行っている、などの場合には、自装置の補正を行わない。但し、補正の対象から除外した他の記録装置11が、その後、記録命令を受信した場合、自装置の記録動作中に他の記録装置11が開始した記録動作と自装置の記録動作との実施タイミングが重なる場合がある。
そこで、この第2実施形態では、自装置の記録動作中に他の記録装置11に記録命令があった場合に次の(d)~(f)のうちいずれか1つの処理を行う。すなわち、(d)記録動作を行っている自装置の検出部27を基準検出部27Sとし、記録動作を開始する他の記録装置11の他の検出部27に対し基準検出部27Sに合わせる補正を行う。(e)自装置の検出部27の検出結果と他の記録装置11の他の検出部27の検出結果とを基に検出部27の補正を行う。(f)自装置の検出部27を他の記録装置11の他の検出部27の検出結果に合わせる補正を行う。こうして自装置の記録動作開始後の記録動作中に、他の記録装置11が記録命令を受信しても、両記録装置11を含む複数の記録装置11間で記録速度の統一を図る。なお、上記(d)~(f)のうち実施されるいずれか1つは、ユーザーが操作部15の操作で予め選択して設定されているか、予めメモリー52に登録されている。
制御部50は、自装置が記録命令を受信して記録動作を開始すると、図12に示す記録動作中ルーチンを実行する。以下、図12を参照して、制御部50が自装置の記録動作中に行う補正処理について説明する。なお、制御部50は、第1実施形態で示した図10、図11のフローチャートに従って、通信、比較及び補正に基づく記録条件で記録動作を行い、その記録動作中に図12に示す記録動作中ルーチンを実行する。
まず、ステップS41では、制御部50は、他の記録装置が記録命令を受信したか否かを判断する。制御部50は、他の記録装置が記録命令を受信すると、その記録命令受信情報を他の記録装置11から受信する。制御部50は、他の記録装置11から記録命令受信情報を受信したことをもって他の記録装置11が記録命令を受信したと判断する。他の記録装置が記録命令を受信すればステップS42に進み、受信していなければステップS51に進む。
ステップS42では、制御部50は、他の記録装置の他の検出結果を取得する。つまり、制御部50は、記録命令を受信した他の記録装置11を含む他の記録装置11と通信して、他の検出部27の検出結果を取得する。
次のステップS43では、制御部50は、自装置の検出結果を取得する。
ステップS44では、制御部50は、検出結果が異なるか否かを判断する。制御部50は、自装置の検出結果と他装置の検出結果とを比較し、これらの検出結果の中に許容範囲を超えて異なるものがある場合、検出結果が異なると判断する。この比較処理は、第1実施形態のステップS15の処理と同様である。
ステップS45では、制御部50は、検出部の補正方法を判定する。この記録動作中ルーチンでは、記録動作中である事情を考慮して前記第1実施形態の補正方式と一部異なる補正内容の補正方式を採用する。本例では3種類の補正方式が用意され、3種類のうち1つの補正方式がユーザーによる操作部15の操作又はホスト装置のキー操作により予め設定されている。補正方式の設定情報は、記録システム100を構成する複数台の記録装置11間で共有されている。制御部50は、補正方式が第1方式であればステップS46に進み、第2方式であればステップS47に進み、第3方式であればステップS48に進む。
ステップS46では、制御部50は、自装置に合わせる。すなわち、制御部50は、検出部27の出力値を他の記録装置11に送信し、他の記録装置11の検出部27を自装置の検出部27の出力値に合わせる補正を他の記録装置11に指示する。このとき送信する自装置の検出部27の出力値は、現在、記録動作中の記録条件を決めるときに用いたメモリー52に記憶しておいた検出部27の出力値であることが好ましい。
ステップS47では、制御部50は、他の記録装置に合わせる。すなわち、制御部50は、自装置の検出部27を、他の記録装置11から取得した検出部27の出力値に合わせる補正を行う。
ステップS48では、制御部50は、平均値に切り替える。すなわち、制御部50は、他の記録装置11から取得した他の検出部27の出力値と自装置の検出部27の出力値との平均値を算出し、自装置の検出部27を平均値に切り替える補正を行う。このとき制御部50は、他の記録装置11に平均値を送信し、他の記録装置11に他の検出部27の出力値を平均値に切り替える補正を指示する。
ステップS49では、制御部50は、補正した検出部の検出結果に応じた記録条件を取得する。すなわち、制御部50は、補正後の検出部27の検出結果を基に記録条件データPCD(図8参照)を参照して補正後の検出結果に応じた記録条件を取得する。詳しくは、制御部50は、ステップS46~S48で必要に応じて補正した検出結果又はステップS44で否定判定のため補正なしの検出結果として得られた温度Tと湿度RHの組合せに応じて記録条件データPCDから決まる記録条件を取得する。このとき、複数台の記録装置11間で、温度と湿度の検出結果が補正により揃えられるか、あるいは補正なしの場合は揃っているので、複数台の記録装置11間で記録条件が統一される。
ステップS50では、制御部50は、取得した記録条件に切り替えて記録動作を行う。この結果、複数台の記録装置11間で媒体Mに同じ記録条件で記録が行われる。このため、複数台の記録装置11間で媒体Mに同じ記録速度で記録が行われる。記録装置11が例えばシリアルプリンターである場合、記録ヘッド26のノズル25からの単位時間当たりのインク吐出数で示されるインク吐出頻度、記録ヘッド26の移動速度、媒体Mの搬送速度の少なくとも一つの速度が、複数台の記録装置11間で揃うことになる。また、記録装置11が例えばラインプリンターである場合、記録速度とは、記録ヘッド26のノズル25からの単位時間当たりのインク吐出数で示されるインク吐出頻度と、媒体Mの搬送速度とのうち一方又は両方の速度が、複数台の記録装置11間で揃うことになる。こうして複数台の記録装置11間で媒体Mに記録する記録速度が統一される。なお、媒体Mの記録途中で記録条件を切り替えることは記録品質上好ましくないので、各記録装置11の制御部50は、1枚の媒体Mの記録を終えた媒体Mの切り替わり時又はそのときの印刷ジョブ終了後の次の印刷ジョブの記録開始時に記録条件を切り替えることが望ましい。
ステップS51では、制御部50は、記録終了であるか否かを判断する。制御部50は、記録終了前であればステップS41に戻り、同様の処理を繰り返し、ステップS50において記録終了と判断すると当該ルーチンを終了する。例えば、ステップS41で否定判定のうちは、当初の記録条件で記録動作を継続する。そして、記録動作の途中でステップS41で肯定判定となると、前述のステップS42~S48の検出部27の補正を必要に応じて行い、補正した場合は、記録動作途中の所定のタイミングで補正後の記録条件に切り替えて記録動作を継続する。こうして複数台の記録装置11間で同じ記録条件で記録動作が行われる。なお、本実施形態においては、前記第1実施形態と同じ補正方式を採用してもよい。
また、図12の処理についても、記録条件を補正する補正方法に変更してもよい。例えば、制御部50が実行する図12における処理内容を次のように変更すればよい。ステップS42の処理に替え、他の記録装置11の他の検出結果に応じた記録条件を取得する。この場合、他の記録装置11から他の検出結果を通信で取得しこの他の検出結果に応じた記録条件を取得してもよいし、他の記録装置11の制御部50が他の検出部27の検出結果に応じて取得した記録条件を他の記録装置11から通信で取得してもよい。また、ステップS43の処理に替え、自装置の検出結果に応じた記録条件を取得する。ステップS44の処理に替え、自装置の記録条件と他の記録条件とが異なるか否かを判定する。ステップS45の処理に替え、記録条件の補正に用いる補正方法を判定する。そして、ステップS46の処理に替え、記録条件を自装置に合わせる。ステップS47の処理に替え、記録条件を他の記録装置に合わせる。ステップS48の処理に替え、記録条件を平均値に切り替える。ここで、記録条件の平均値とは、前記第1実施形態で述べたものと同様である。そして、ステップS49の処理は廃止し、ステップS50において、取得した記録条件に切り替えて記録動作を行う。制御部50は検出部27を補正してもよいし補正しなくてもよい。このように記録装置11は、自装置の記録動作中に他の記録装置11が記録動作を開始したときに、複数台の記録装置11間で記録条件を合致させる補正を行う。このため、自装置の記録動作中に他の記録装置11が記録動作を開始した場合においても、複数台の記録装置11間で媒体Mに記録する記録速度が統一される。
上記第2実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(12)自装置に記録命令があった場合に、(a)他の記録装置11で記録が行われていない、(b)他の記録装置11で記録命令を受信していない、(c)他の記録装置11がクリーニング、フラッシング及びワイピングを含むメンテナンス動作などの他の動作を行っている、などの場合には、この第2実施形態において自装置の補正を行わない。そして、自装置の記録動作中に補正の対象から除外した他の記録装置11が記録命令を受信した場合、自装置の検出部27の検出結果と他の記録装置11の他の検出部27の検出結果とに基づき自装置の検出部27を補正する。よって、複数の記録装置11の記録条件を自動で統一することができる。
(13)記録動作を行っている自装置の検出部27を基準検出部27Sとし、記録動作を開始する他の記録装置11の他の検出部27に対し基準検出部27Sに合わせる補正を行う。よって、基準検出部27Sを有する基準の記録装置11Sの記録条件に、他の記録装置11の記録条件を自動で合わせることができる。
(14)自装置の検出部27の検出結果と他の記録装置11の他の検出部27の検出結果とを基に検出部27の補正を行う。そして、検出部27を、平均値に揃える補正を行う。よって、複数の記録装置11の検出部27のばらつきを自動で平均補正することができる。
(15)自装置の検出部27を他の記録装置11の他の検出部27の検出結果に合わせる補正を行う。よって、自装置の記録条件を、他の記録装置の記録条件に自動で合わせることができる。
(16)記録条件を補正する補正方法を採用する場合についても、自装置の記録動作中に他の記録装置11が記録動作を開始した場合に、複数の記録装置11の記録条件を自動で統一することができる。
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
・前記各実施形態において、補正は、(a)装置設置時、(b)電源ON時、(c)記録開始時、(d)タイマー設定時間、(e)定期、(F)通信が可能な複数の記録装置で同時に記録が行われる時(第2実施形態)のいずれかのタイミングとしたが、これらの全てのタイミング、又は幾つかの組み合わせで行ってもよい。また、補正のタイミングは、ユーザーが選択して設定する構成に限らず、予め記録装置11に設定されていてもよい。また、補正タイミングは、予め設定された一部とユーザーが選択する他の一部とが混在していてもよい。
・前記第1実施形態では、記録条件が切り替わる環境(温度や湿度)の閾値の近傍範囲(例えば閾値±R範囲)内では、当該範囲以外の環境のときよりも短い時間間隔で通信及び比較を行ったが、閾値の近傍範囲以外の環境では、環境(温度や湿度)が所定値(例えば閾値の間隔の5%)変化するごとに通信及び比較を行ってもよい。つまり、所定時間ごとに替え、環境の検出値が所定値変化するごとに通信及び比較を行ってもよい。また、所定時間ごとと所定値変化するごととの両方で通信及び比較を行ってもよい。
・複数の記録装置11間の検出結果の違いが所定割合以上になった場合に検出部27の補正を行うようにしてもよい。
・使用環境は、温度と湿度を含んだが、気圧又は高度(標高)を含んでもよい。この場合、検出部27は、温湿度センサー、あるいは温度センサー及び湿度センサーに替え、又はこれに加え、気圧センサー又は高度センサーを含んでもよい。また、使用環境は、温度のみ、湿度のみ、気圧のみ、高度のみでもよいし、温度、湿度、気圧及び高度のうちから選択される少なくとも気圧又は高度を含む二以上の組合せでもよい。要するに、記録に影響する使用環境であればよい。気圧が低くなる(又は高度が高くなる)と、記録ヘッド26のノズル25内の液体のメニスカスが下がるため、吐出量が増加する方向となる。ヒーター素子によるインクの膜沸騰時の気泡の圧力を利用してインクを吐出する方式のインクジェット式の記録ヘッド26の場合は、これに加え、気圧が低くなるとインクの沸点が下がるため、これもまた吐出量が増加する方向となる。よって、気圧が低くなるほど吐出量が増加し、媒体Mに記録されたインクが乾燥しにくくなる可能性がある。気圧が低い場合や高度が高い場合は、記録速度や搬送速度が遅くなる方に検出結果に合わせ、気圧が高い場合や高度が低い場合は、逆に記録速度や搬送速度が速くなる方に検出結果を合わせる補正を行うのが望ましい。また、この場合、記録条件を決める気圧又は高度の閾値は、記録ヘッド26の実際の特性に合わせて設定するのが望ましい。例えば、閾値±所定値Rの範囲内の気圧又は高度では、通信間隔及び補正間隔を決める時間を、当該範囲以外のときの第1時間t1よりも短い第2時間t2に設定することが好ましい。なお、記録条件を補正する補正方法においては、気圧が低い場合や高度が高い場合は、記録速度や搬送速度が遅くなる方の記録条件に合わせ、気圧が高い場合や高度が低い場合は、逆に記録速度や搬送速度が速くなる方の記録条件に合わせる補正を行うのが望ましい。
・前記実施形態では、制御部50は、検出部27の検出結果を揃える補正の基準として、記録速度の速い又は遅いで判断しているが、搬送速度の速い又は遅いで判断するようにしてもよい。この場合でも、記録速度の速い又は遅いで判断する場合と同様の効果が得られる。
・前記実施形態では、他の記録装置が複数台ある例で示したが、他の記録装置は1台でもよい。
・記録装置が複数台ある例では、基準検出部27Sはいずれか1つに決定するのが望ましいが、複数設けてもよい。この場合、例えば、記録動作中又は記録命令を受信した記録装置11の基準検出部27Sの検出結果に合わせたり、複数の基準検出部27Sのうちの1つを制御部50が選択したり、複数の基準検出部27Sが検出した複数の検出結果の平均値に合わせたりする補正を行ってもよい。なお、記録条件を補正する補正方法においても、記録動作中又は記録命令を受信した記録装置11の基準検出部27Sの検出結果から決まる記録条件に合わせたり、複数の基準の記録装置11Sのうちそれぞれの基準検出部27Sの中から制御部50が選択した1つの検出結果から決まる記録条件に合わせたりしてもよい。また、複数の基準検出部27Sが検出した複数の検出結果からそれぞれ決まる複数の記録条件の平均値に合わせる補正を行ってもよい。
・記録装置11を構成するプリンター12は、シリアルプリンター及びラインプリンターに限らず、ラテラル式プリンター又はページプリンターなどでもよい。また、記録装置11は、オフセット印刷装置、捺染印刷装置などとしてもよい。
・記録装置11は、インクジェット式プリンター以外に、ドットインパクト式プリンター、熱転写式プリンターや電子写真式プリンターでもよい。
前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を、その作用効果と共に以下に記載する。
[思想1]
記録装置は、媒体に記録を行う記録部と、使用環境を検出する検出部と、前記検出部が検出する前記使用環境に基づいて記録条件を決定する制御部と、自装置以外の記録装置と通信する通信部と、を備え、前記検出部の検出結果と、前記通信部により通信が可能な他の記録装置における他の検出部の検出結果とが異なっていた場合、前記制御部は、前記検出部の検出結果及び前記他の検出部の検出結果を基に前記検出部の補正を行う。
この構成によれば、複数の記録装置の記録条件を自動で統一することができる。
[思想2]
[思想1]に記載の記録装置において、前記制御部は、前記検出部の検出結果と前記他の検出部の検出結果との平均値となるように前記検出部の補正を行う。
この構成によれば、複数の記録装置の検出部のばらつきを自動で平均補正することができる。
[思想3]
[思想1]に記載の記録装置において、前記制御部は、前記検出部の検出結果と前記他の検出部の検出結果のうち、記録速度が速くなる方の検出結果に近づくように前記検出部の補正を行う。
この構成によれば、複数の記録装置の記録条件を記録速度の速い側に統一することができるため、ユーザーの記録速度に対する不満を抑制することができる。
[思想4]
[思想1]に記載の記録装置において、前記制御部は、前記検出部の検出結果と前記他の検出部の検出結果のうち、記録速度が遅くなる方の検出結果に近づくように前記検出部の補正を行う。
この構成によれば、複数の記録装置の記録条件を記録速度の遅い側に統一することができるため、記録後の媒体の乾燥不足のリスクを抑制することができる。
[思想5]
[思想1]に記載の記録装置において、前記他の検出部の少なくとも1つを基準検出部とした場合、前記制御部は、前記基準検出部の検出結果に近づくように前記検出部の補正を行う。
この構成によれば、基準となる記録装置の記録条件に、他の記録装置の記録条件を自動で合わせることができる。
[思想6]
記録装置は、媒体に記録を行う記録部と、使用環境を検出する検出部と、前記検出部が検出する前記使用環境に基づいて記録条件を決定する制御部と、自装置以外の記録装置と通信する通信部と、を備え、前記検出部の検出結果と、前記通信部により通信が可能な他の記録装置における他の検出部の検出結果とが異なることにより自装置の記録条件と前記他の記録装置の記録条件とが異なる場合、前記制御部は、自装置の記録条件と前記他の記録装置の記録条件とを合致させる補正を行う。
この構成によれば、複数の記録装置の記録条件を自動で統一することができる。
[思想7]
記録装置の補正方法において、媒体に記録を行う記録部と、使用環境を検出する検出部と、を備え、前記検出部が検出する前記使用環境に基づいて記録条件を決定する記録装置の補正方法であって、通信部により通信が可能な他の記録装置と通信を行うこと、前記検出部の検出結果と前記他の記録装置における他の検出部の検出結果とが異なる場合に、前記検出部の検出結果及び前記他の検出部の検出結果を基に前記検出部の補正を行うこと、を含む。この方法によれば、[思想1]と同様の効果が得られる。
[思想8]
[思想7]に記載の記録装置の補正方法において、前記検出部の検出結果と前記他の検出部の検出結果とが異なる場合に、前記検出部の検出結果と前記他の検出部の検出結果との平均値となるように前記検出部の補正を行う。
この方法によれば、[思想2]と同様の効果が得られる。
[思想9]
[思想7]に記載の記録装置の補正方法において、前記検出部の検出結果と前記他の検出部の検出結果とが異なる場合に、記録速度が速くなる方の検出結果に近づくように前記検出部の補正を行う。
この方法によれば、[思想3]と同様の効果が得られる。
[思想10]
[思想7]に記載の記録装置の補正方法において、前記検出部の検出結果と前記他の検出部の検出結果とが異なる場合に、記録速度が遅くなる方の検出結果に近づくように前記検出部の補正を行う。
この方法によれば、[思想4]と同様の効果が得られる。
[思想11]
[思想7]に記載の記録装置の補正方法において、前記他の検出部の少なくとも1つを基準検出部に決定することを更に含み、前記検出部の検出結果と前記他の検出部の検出結果とが異なる場合に、前記基準検出部の検出結果に近づくように前記検出部の補正を行う。
この方法によれば、[思想5]と同様の効果が得られる。
[思想12]
[思想11]に記載の記録装置の補正方法において、前記他の記録装置の設置時に前記基準検出部を較正することを更に含む。
この方法によれば、基準となる記録装置の検出部の検出結果を実際の環境に近づけることができるとともに、他の記録装置の検出部の検出結果も実際の環境に自動で近づけることができる。
[思想13]
記録装置の補正方法は、媒体に記録を行う記録部と、使用環境を検出する検出部と、を備え、前記検出部が検出する前記使用環境に基づいて記録条件を決定する記録装置の補正方法であって、通信部により通信が可能な他の記録装置と通信を行うこと、前記検出部の検出結果と前記他の記録装置における他の検出部の検出結果とが異なることにより自装置の記録条件と前記他の記録装置の記録条件とが異なる場合、自装置の記録条件と前記他の記録装置の記録条件とを合致させる補正を行うこと、を含む。
この方法によれば、[思想6]と同様の効果が得られる。