JP7155346B1 - インバータ劣化診断装置、およびインバータ劣化診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】エレベータのかごドアを戸閉保持状態に維持する三相インバータの余寿命を延命することができる。【解決手段】実施形態のインバータ劣化診断装置は、測定部と、制御部と、を備える。測定部は、電動機に対して交流電流を供給してエレベータのかごドアを戸閉保持状態に維持する三相インバータの各相の表面温度を測定する。制御部は、三相インバータの相のうち、表面温度が予め設定された標準温度より高くなった回数が予め設定された回数より多い第1相を特定し、かごドアが戸閉保持状態において、第1相から電動機に供給される交流電流の第1電流値を、三相インバータの相のうち第1相以外の第2相から電動機に供給される交流電流の第2電流値より小さくする。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、インバータ劣化診断装置、およびインバータ劣化診断方法に関する。
エレベータのドア制御基板が有するインバータにおいて異常が発生した場合、エレベータのかご内に乗客が閉じ込められてしまうリスクがある。
エレベータのかご内に乗客が閉じ込められてしまうリスクに対して、当該インバータが故障する前に、その予兆を把握する技術が求められている。
実施形態のインバータ劣化診断装置は、測定部と、制御部と、を備える。測定部は、電動機に対して交流電流を供給してエレベータのかごドアを戸閉保持状態に維持する三相インバータの各相の表面温度を測定する。制御部は、三相インバータの相のうち、表面温度が予め設定された標準温度より高くなった回数が予め設定された回数より多い第1相を特定し、かごドアが戸閉保持状態において、第1相から電動機に供給される交流電流の第1電流値を、三相インバータの相のうち第1相以外の第2相から電動機に供給される交流電流の第2電流値より小さくする。
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかるインバータ劣化診断装置、インバータ劣化診断方法の一例について説明する。
図1は、本実施形態にかかるインバータ劣化診断装置を備えるエレベータの構成の一例を示すブロック図である。まず、図1を用いて、本実施形態にかかるインバータ劣化診断装置を備えるエレベータ1の構成の一例について説明する。
本実施形態にかかるエレベータ1は、図1に示すように、箱型のかご10と、かごドア11と、ドアモータ12と、を備える。
かご10は、乗客や荷物を内部に収納する。かご10は、乗客や荷物の乗り降りするための開口を有する。エレベータ1のドアには、かご10側に設けられるドアと、乗り場側に設けられるドアがある。ここで、かご10側に設けられるドアをかごドア11という。かごドア11は、かご10の開口を覆うように、かご10に設けられる。
本実施形態では、かごドア11は、第1かごドア11aと、第2かごドア11bと、を含む。第1かごドア11aと第2かごドア11bとは、互いに近づく方向、および、互いに離れる方向にスライドする。このようにして、かごドア11は開閉する。
ドアモータ12は、電動モータ等であり、かご10に設けられる。ドアモータ12は、交流電流が供給されると、当該供給された交流電流に応じたトルクを発生させて、かごドア11を駆動する電動機の一例である。
また、本実施形態にかかるエレベータ1は、図1に示すように、ドア制御装置としての制御装置14を備える。制御装置14は、信号を入出力するI/O(Input / Output)を備える。制御装置14は、主処理部14cと、戸閉保持トルク制御部14dと、ドア制御基板14eと、温度測定部14fと、を有し、エレベータ劣化診断装置の一例として機能する。
主処理部14cは、エレベータ1の運転全体を統括して制御する。
戸閉保持トルク制御部14dは、かごドア11が閉じている状態(以下、戸閉保持状態と言う)を維持するために、どの程度のトルクをドアモータ12に発生させるかを決定する。すなわち、戸閉保持トルク制御部14dは、ドアモータ12が発生する戸閉保持トルクを決定する。
温度測定部14fは、サーミスタ等であり、後述するドア制御基板4が有する主回路素子141の各相の表面温度を測定する測定部の一例である。そして、温度測定部14fは、主回路素子141の各相の表面温度の測定結果をドア制御基板14eに出力する。
ドア制御基板14eは、主回路素子141、および制御部142を有する。主回路素子141は、戸閉保持トルク制御部14dから戸閉保持トルクの情報を取得する。また、主回路素子141は、戸閉保持トルクに基づいて、ドアモータ12に対して交流電流を供給して、かごドア11を戸閉保持状態に維持する。具体的には、主回路素子141は、電源から供給される直流電流または交流電流を、戸閉保持トルクを実現する交流電流(所謂、戸閉保持電流)に変換してドアモータ12に供給する三相インバータの一例である。
ところで、ドア制御基板14eの主回路素子141において異常が発生した場合、乗客や荷物がかご10内に閉じ込められる故障となるリスクがある。このリスクに対して、当該主回路素子141が故障する前のその予兆を把握可能とすることが求められている。
そこで、本実施形態では、かごドア11が戸閉保持状態から復帰して動き出した際の当該主回路素子141の表面温度(ジャンクション温度)が最も高いことに着目し、制御部142によって、当該主回路素子141の温度上昇の高い点(表面温度のピーク)をプロットする。
そして、制御部142は、主回路素子141の表面温度のピークが頻発する場合(使用頻度が高い場合、若しくは、主回路素子141が有する相の使用に偏りがある場合)、ドア制御基板14eの主回路素子141が有する相のうち、余寿命が短いと想定される相に流れる交流電流(戸閉保持電流)を小さくする。例えば、制御部142は、当該余寿命が短いと想定される相に戸閉保持電流が流れないように、ドアモータ12が有する磁極のうち、主回路素子141から戸閉保持電流の供給を受ける磁極を変更する。
具体的には、制御部142は、主回路素子141の各相について、温度測定部14fにより測定される表面温度が予め設定された標準温度より高くなる点を記録する。そして、制御部142は、記録した点の回数が所定回数より多い相(第1相の一例)を特定する。
制御部142は、かごドア11の戸閉保持状態において第1相からドアモータ12に供給される交流電流の電流値(第1電流値の一例)を、主回路素子141の相のうち、第1相以外の第2相からドアモータ12に供給される交流電流の電流値(第2電流値の一例)より小さくする。本実施形態では、制御部142は、主回路素子141の相のうち第1相に戸閉保持電流が流れないように、ドアモータ12が有する磁極のうち、主回路素子141から戸閉保持電流が供給される磁極を変更する。
これにより、エレベータ1のかご10内に乗客が閉じ込められてしまうリスクに対して、主回路素子141が故障する前に、その予兆を把握し、かつ、主回路素子141の相のうち省エネ運転モードに入ることが少なく戸閉保持電流が集中している相に対して、戸閉保持電流が流れることを抑制できる。その結果、エレベータ1のかご10内に乗客が閉じ込められてしまうリスクを軽減でき、かつ主回路素子141の余寿命を延命することができる。
また、制御部142は、主回路素子141が有する各相のオン電圧を記録する。そして、当該主回路素子141の各相の表面温度の上昇と比較して、当該オン電圧の上昇が著しい場合には、当該主回路素子141のはんだ劣化の可能性が高い。そのため、制御部142は、ドアモータ12が有する磁極のうち、ドア制御基板14eの主回路素子141から戸閉保持電流を供給する磁極を変更することも可能である。
具体的には、制御部142は、主回路素子141のオン電圧を記録する。そして、制御部142は、主回路素子141の各相の表面温度の変化率に対する当該各相のオン電圧の変化率が所定量より大きい相(第3相の一例)を特定する。そして、制御部142は、かごドア11の戸閉保持状態において、主回路素子41の相のうち第3相以外の相からドアモータ12に対して交流電流を供給する。本実施形態では、制御部142は、主回路素子141の相のうち第3相に戸閉保持電流が流れないように、ドアモータ12が有する磁極のうち、主回路素子141から戸閉保持電流が供給される磁極を変更する。
これにより、主回路素子141の相のうち、オン電圧の上昇が著しくはんだ劣化の可能性が高い相に戸閉保持電流が流れることを抑制できるので、主回路素子141の余寿命を延ばすことができる。
図2は、本実施形態にかかるエレベータにおけるインバータ劣化診断処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、図2を用いて、本実施形態にかかるエレベータ1におけるインバータ劣化診断処理の流れの一例について説明する。
温度測定部14fは、主回路素子141の各相の表面温度の上昇を測定する(ステップS201)。さらに、ドア制御基板14eの制御部142は、温度測定部14fにより測定される主回路素子141の各相の表面温度を記録する(ステップS201)。
次に、制御部142は、主回路素子141の各相の表面温度を標準温度と比較して、主回路素子141が有する相のうち、特定の相において、その表面温度の上昇が高い状態が頻発しているか否かを判断する(ステップS202)。言い換えると、制御部142は、主回路素子141が有する相のうち、温度測定部14fにより測定される表面温度が予め設定された標準温度より高くなった回数が所定回数より多い第1相が存在するか否かを判断する。
図3は、本実施形態にかかるエレベータにおける主回路素子の劣化診断処理の一例を説明するための図である。図3(a)において、縦軸は、かごドア11が戸閉保持状態から復帰する際のかごドア11が開く速度(ドア開速度)を表し、横軸は、時間を表す。また、図3(b)において、縦軸は、主回路素子141の相(UVW相)によりドアモータ12に発生させる戸閉保持トルクを表し、横軸は、時間を表す。図3(c)において、縦軸は、主回路素子141の各相(UVW相)の表面温度が標準温度より高くなった回数(温度上昇最高点回数)を表し、横軸は、主回路素子141が有する各相(UVW相)を表す。
図3(a)および図3(b)に示すように、主回路素子141の各相の表面温度は、かごドア11が戸閉保持状態から復帰して動き出し、戸閉保持トルクが最も大きくなった際に、標準温度より高くなる温度上昇最高点に達する。そして、制御部142は、図3(c)に示すように、主回路素子141のUVW相のそれぞれの表面温度が標準温度(温度上昇最高点)を超えた回数(温度上昇最高点回数)を記録する。次いで、制御部142は、主回路素子141のUVW相のそれぞれの表面温度が温度上昇最高点を超えた温度上昇最高点回数が所定回数より多い第1相(例えば、W相)を特定する。
図2に戻り、主回路素子141が有する相のうち、特定の相において、その表面温度の上昇が高い状態が頻発している場合(ステップS202:Yes)、すなわち、第1相が特定された場合、制御部142は、表面温度が高い第1相に対して流れる戸閉保持電流が小さくなるように、ドアモータ12が有する磁極のうち、主回路素子141から戸閉保持電流が供給される磁極を変更する(ステップS203)。これにより、制御部142は、主回路素子141が有する相のうち、第1相以外の相に戸閉保持電流が流れるように制御する。
一方、主回路素子141が有する相のうち、特定の相において、その表面温度の上昇が高い状態が頻発していない場合(ステップS202:No)、すなわち、第1相が特定されなかった場合、制御部142は、主回路素子141の各相の表面温度の変化率に対する当該各相のオン電圧の変化率が所定量より大きい第3相が存在するか否かを判断する(ステップS204)。
そして、主回路素子141の各相の表面温度の変化率に対する当該各相のオン電圧の変化率が所定量より大きい第3相が存在する場合(ステップS204:Yes)、制御部142は、かごドア11の戸閉保持状態において、主回路素子41の相のうち第3相以外の相からドアモータ12に対して交流電流を供給して、インバータ劣化診断処理を終了する(ステップS205)。
図4は、本実施形態にかかるエレベータにおける主回路素子の劣化診断処理の一例を説明するための図である。図4において、縦軸は、主回路素子141の表面温度および主回路素子141に印加されるオン電圧を表し、横軸は、時間を表す。
本実施形態では、制御部142は、図4に示すように、主回路素子141の各相の表面温度の変化量(単位時間当たりの変化量)に対する当該各相のオン電圧の変化量(単位時間当たりの変化量)の差分が標準値より離れている第3相(例えば、W相)を特定する。そして、制御部142は、かごドア11の戸閉保持状態において、ドアモータ12が有する磁極のうち主回路素子141から戸閉保持電流が供給される磁極を変更して、主回路素子41の相のうちW相以外のUV相からドアモータ12に対して交流電流を供給する。
図2に戻り、一方、主回路素子141の各相の表面温度の変化率に対する当該各相のオン電圧の変化率が所定量より大きい第3相が存在しない場合(ステップS204:No)、制御部142は、インバータ劣化診断処理を終了する。
このように、本実施形態にかかるエレベータ1によれば、エレベータ1のかご10内に乗客が閉じ込められてしまうリスクに対して、主回路素子141が故障する前に、その予兆を把握し、かつ、主回路素子141の相のうち省エネ運転モードに入ることが少なく戸閉保持電流が集中している相に対して、戸閉保持電流が流れることを抑制できる。その結果、エレベータ1のかご10内に乗客が閉じ込められてしまうリスクを軽減でき、かつ主回路素子141の余寿命を延命することができる。
なお、本実施形態の制御装置14で実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)等に予め組み込まれて提供される。本実施形態の制御装置14で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
さらに、本実施形態の制御装置14で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の制御装置14で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
本実施形態の制御装置14で実行されるプログラムは、上述した各部(主処理部14c、戸閉保持トルク制御部14d、制御部142等)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、主処理部14c、戸閉保持トルク制御部14d、制御部142等が主記憶装置上に生成されるようになっている。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…エレベータ、10…かご、11a…第1かごドア、11b…第2かごドア、12…ドアモータ、14…制御装置(インバータ劣化診断装置)、14c…主処理部、14d…戸閉保持トルク制御部、14e…ドア制御基板、14f…温度測定部(測定部)、141…主回路素子(三相インバータ)、142…制御部。
Claims (4)
- 電動機に対して交流電流を供給してエレベータのかごドアを戸閉保持状態に維持する三相インバータの各相の表面温度を測定する測定部と、
前記三相インバータの相のうち、前記表面温度が予め設定された標準温度より高くなった回数が予め設定された回数より多い第1相を特定し、前記かごドアが戸閉保持状態において、前記第1相から前記電動機に供給される交流電流の第1電流値を、前記三相インバータの相のうち前記第1相以外の第2相から前記電動機に供給される交流電流の第2電流値より小さくする制御部と、
を備えるインバータ劣化診断装置。 - 前記制御部は、さらに、前記三相インバータの相のうち、前記三相インバータの各相の前記表面温度の変化率に対する当該各相のオン電圧の変化率が所定量より大きい第3相を特定し、前記かごドアの戸閉保持状態において、前記第3相以外の相から前記電動機に対して交流電流を供給する、請求項1に記載のインバータ劣化診断装置。
- 前記制御部は、前記電動機が有する磁極のうち、前記第1相から交流電流を供給する前記磁極を変更して、前記第1電流値を前記第2電流値より小さくする、請求項1または2に記載のインバータ劣化診断装置。
- インバータ劣化診断装置で実行されるインバータ劣化診断方法であって、
測定部が、電動機に対して交流電流を供給してエレベータのかごドアを戸閉保持状態に維持する三相インバータの各相の表面温度を測定する工程と、
制御部が、前記三相インバータの相のうち、前記表面温度が予め設定された標準温度より高くなった回数が予め設定された回数より多い第1相を特定し、前記かごドアが戸閉保持状態において、前記第1相から前記電動機に供給される交流電流の第1電流値を、前記三相インバータの相のうち前記第1相以外の第2相から前記電動機に供給される交流電流の第2電流値より小さくする工程と、
を含むインバータ劣化診断方法。
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