JP7153316B2 - インク用バインダーおよびそれを含有するインク、熱転写シート - Google Patents
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Description
熱転写方法の一つである溶融転写方式は、着色剤とバインダーを含む熱溶融インク層を備える熱転写シートを、熱転写受像シートと重ね合わせ、熱転写シートの背面側からサーマルヘッド等の加熱手段により画像情報に応じたエネルギーを印加して、熱転写受像シート上に、熱溶融インクを転写する画像形成方法である。
溶融転写方式による印刷は、各種の印字をサーマルヘッドで簡便に行うことができ、メンテナンス性にも優れるため、工場などにおいて、ラベル等にバーコードなどを印字し、製品管理や物流管理によく利用されている。
熱転写方式に使用する熱溶融インクは、熱転写受像シートなどの相手材への転写性が要求され、転写後の印字には、耐擦傷性、耐熱性、耐水性、耐油性、耐候性などの性能をバランスよく有することが要求されている。
熱溶融インクを構成するバインダーとしては、一般的に、ワックスまたは熱可塑性樹脂が使用されている。バインダーとしてワックスを使用した熱溶融インクは、転写性、印字濃度、耐水性、耐油性、耐候性には優れるものの、耐擦傷性や耐熱性に劣っていた。一方、バインダーとして熱可塑性樹脂を使用した熱溶融インクは、耐擦傷性や耐熱性には優れるものの、転写性が不十分であった。
また、特許文献2には、セルロースアセテートプロピオネート樹脂をバインダーとして使用することが開示されている。
また、特許文献2に開示されたバインダーを使用した場合でも、耐熱性には優れるものの、相手材の種類によっては十分な転写性が得られなかった。
本発明の課題は、相手材の種類に関係なく、転写性に優れ、また、印字が、相手材との密着性、耐擦傷性および耐熱性に優れた熱転写シート、およびそれを構成するインク、インク用バインダーを提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)アミン価が0.4mgKOH/g未満であるダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有することを特徴とするインク用バインダー。
(2)ダイマー酸系ポリアミド樹脂のジカルボン酸成分の50モル%以上がダイマー酸であることを特徴とする(1)記載のインク用バインダー。
(3)ダイマー酸系ポリアミド樹脂の軟化点温度が100~180℃であることを特徴とする(1)または(2)記載のインク用バインダー。
(4)ダイマー酸系ポリアミド樹脂の酸価が1~50mgKOH/gであることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のインク用バインダー。
(5)ダイマー酸系ポリアミド樹脂の溶融粘度(JIS K6862-1984)が、2000~3500mPa・sであることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載のインク用バインダー。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載のインク用バインダーと着色剤とを含有することを特徴とするインク。
(7)基材上に、(6)記載のインクから得られるインク層が積層された熱転写シート。
(8)インク層の溶融粘度(JIS K6862-1984)が、2500~8000mPa・sであることを特徴とする(7)記載の熱転写シート。
本発明のインク用バインダーは、ダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有するものであり、本発明のインクは、前記バインダーと着色剤とを含有し、本発明の熱転写シートは、基材上に前記インクから得られるインク層が積層されたものである。
本発明のインク用バインダーは、ダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有する。
ダイマー酸系ポリアミド樹脂をバインダーとして含有することによって、インクは、ωアミノ酸を重縮合反応させたポリアミド樹脂や、ホモナイロンモノマー同士を共重合した共重合ナイロンなどを含有するインクに比べ、転写後の各種相手材に対する密着性、耐湿性、耐熱性、可撓性が向上する。
ダイマー酸とは、オレイン酸やリノール酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られるものであり、本発明においては、ダイマー酸成分の25質量%以下であれば、単量体であるモノマー酸(炭素数18)、三量体であるトリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含んでもよく、さらに水素添加して不飽和度を低下させたものでもよい。ダイマー酸は、ハリダイマーシリーズ(ハリマ化成社製)、プリポールシリーズ(クローダジャパン社製)、ツノダイムシリーズ(築野食品工業社製)などとして市販されており、これらを用いることができる。
ダイマー酸系ポリアミド樹脂のジカルボン酸成分としてダイマー酸以外の成分を用いる場合は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ノナンジカルボン酸、フマル酸などを用いることが好ましく、これらを含有することにより、樹脂の軟化点温度や接着性などの制御が容易となる。
ダイマー酸系ポリアミド樹脂の軟化点温度が100℃未満であると、得られる印字物は、耐熱性、耐擦傷性、耐ヒートショック性が急激に低下する場合がある。一方、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の軟化点温度が180℃を超えると、熱転写シートは、印字の際に多くの熱量が必要となり、印字かすれや転写不良になる可能性がある。
なお、酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数で定義されるものである。一方、アミン価とは、樹脂1g中の塩基成分とモル当量となる水酸化カリウムのミリグラム数で表されるものである。いずれも、JIS K2501に記載の方法で測定される。
上記溶融粘度は、JIS K6862-1984に記載の方法で、210℃で測定される。
本発明のインクは、前記インク用バインダーと着色剤とを含有する。
インクを構成する着色剤としては、従来公知の熱転写性インクの着色剤として使用されているものが使用でき、カーボンブラックをはじめとして、無機および有機の各種顔料や染料が適宜使用でき、1つまたは複数を用いてもよい。
例えば、有機顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、アゾメチンアゾ系、アゾメチン系、アンスラキノン系、ぺリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、インダスレン系顔料等の有彩色顔料等が挙げられる。
また、無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料、体質顔料、酸化チタン系顔料、酸化鉄系顔料、スピンネル顔料等が挙げられる。
本発明の熱転写シートは、上記インクから得られるインク層が基材上に積層されたものである。
(インク層)
基材上にインクを塗工して得られたインク層は、単位面積当たりの質量が、0.5~3.0g/m2であることが好ましく、コスト面や性能安定性の面から、1.0~2.0g/m2であることがより好ましい。インク層は、この量が0.5g/m2未満であると、十分な印字濃度が得られず、3.0g/m2を超えると、転写性が低下する傾向にある。
インク層の溶融粘度は、転写性と相手材との密着性の観点から低い方が好ましい。一方、耐擦傷性、耐熱性の観点においては、インク層の溶融粘度は高い方が好ましい。
本発明の熱転写シートを構成する基材は、特に限定されず、サーマルヘッド等の加熱手段に対する耐熱性と強度を有する従来公知の材料を適宜選択して用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリサルフォンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等が挙げられる。
本発明の熱転写シートは、基材とインク層との間に離型層が積層されてもよい。離型層を構成する樹脂としては、従来公知の離型性に優れた樹脂を使用することができ、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、熱架橋性エポキシ-アミノ樹脂および熱架橋性アルキッド-アミノ樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で使用しても、混合物として使用してもよい。
上記離型層が積層された熱転写シートは、基材/離型層/インク層からなる構成であるが、熱転写シートの要求特性に応じて、転写後のインク層に機能を付与するために、例えば、基材/離型層/機能層/インク層のような構成として、機能層をインク層とともに転写してもよい。
上記機能層としては、転写後のインク層に耐熱性を付与したり、熱による基材の破断を防止するための耐熱層や、転写後のインク層の耐擦傷性を向上するためのハードコート層が挙げられる。耐熱層の材料としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ニトロセルロース樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂などの耐熱性樹脂、あるいは耐熱性樹脂に滑材を混合したものなどが挙げられる。また、上記列挙した材料を複数積層したものを耐熱層として使用してもよい。ハードコート層の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。インク層と機能層との間に接着層が積層されてもよい。
本発明の熱転写シートは、基材上にインク層が積層されたものであり、着色剤とダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有するインクからなるインク層形成用塗剤を、基材上に塗布、乾燥することにより製造することができる。基材上に塗布するインク層形成用塗剤は、例えば、媒体中に分散または溶解した液体状のダイマー酸系ポリアミド樹脂と、着色剤とを混合することによって、調製することができる。
インク層形成用塗剤を構成する液体状のダイマー酸系ポリアミド樹脂は、ダイマー酸系ポリアミド樹脂が水性媒体中に分散、溶解、または、有機溶剤中に溶解したものであることが好ましく、作業環境面を考慮して、水性媒体に分散させた水性分散体であることが好ましい。水性媒体は、水を主成分とする液体であり、後述する塩基性化合物や親水性有機溶剤を含有してもよい。
本発明において、水性分散体は、ダイマー酸系ポリアミド樹脂中のカルボキシル基が塩基性化合物で中和されており、アルカリ性域で安定した形態を保つことができる。水性分散体のpHとしては、7~13の範囲が好ましい。
常圧時の沸点が185℃未満の塩基性化合物としては、アンモニア、有機アミン化合物などのアミン類などが挙げられる。有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N、N-ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等を挙げることができ、中でもトリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミンが好ましい。
保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン-プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸-無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼインなど、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物などが挙げられる。
ダイマー酸系ポリアミド樹脂の水性分散体を得るにあたっては、密閉可能な容器を用いることが好ましい。つまり、密閉可能な容器に各成分を仕込み、加熱、攪拌する手段が好ましく採用される。
具体的に、まず、所定量のダイマー酸系ポリアミド樹脂と、塩基性化合物と、水性媒体とを容器に投入する。なお、前述したように、水性媒体中に塩基性化合物や後述する親水性有機溶剤を含有させてもよいので、例えば、塩基性化合物を含有する水性媒体を用いるのであれば、別途、塩基性化合物を投入せずとも、結果的に容器中に塩基性化合物が仕込まれることになる。
次に、容器を密閉し、好ましくは70~280℃、より好ましくは100~250℃の温度で、加熱撹拌する。加熱攪拌時の温度が70℃未満になると、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の分散が進み難く、樹脂の数平均粒子径を0.5μm以下とすることが難しくなる傾向にあり、一方、280℃を超えると、ダイマー酸系ポリアミド樹脂の分子量が低下するおそれがあり、また、系の内圧が無視できない程度まで上がることがあり、いずれも好ましくない。
加熱撹拌する際は、樹脂が水性媒体中に均一に分散されるまで毎分10~1000回転で加熱撹拌することが好ましい。
前述の塩基性化合物のときと同様、水性媒体中に親水性有機溶剤を含有させてもよいので、親水性有機溶剤を含有する水性媒体を用いるのであれば、別途、親水性有機溶剤を追加投入せずとも、結果的に容器中に親水性有機溶剤が仕込まれることになる。
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-sec-ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルなどのエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;さらには、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、トルエン、キシレン、シクロヘキサンが挙げられ、必要に応じて、これらの有機溶剤を混合して用いてもよい。
そして、インク層形成用塗剤を基材に塗布、乾燥して、インク層を形成することができる。インク層形成用塗剤の塗布方法としては、例えば、バーコーティング、スプレーコーティング、スリットリバースコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、オフセットグラビアコーティング等の方法が挙げられ、乾燥方法としては、乾燥機によって媒体を揮発乾燥する方法が挙げられる。
(1)ダイマー酸系ポリアミド樹脂の特性値
〔酸価、アミン価〕
JIS K2501に記載の方法により測定した。
〔軟化点温度〕
樹脂10mgをサンプルとし、顕微鏡用加熱(冷却)装置ヒートステージ(リンカム社製、Heating-Freezing STAGE TH-600型)を備えた顕微鏡を用いて、昇温速度20℃/分の条件で測定を行い、樹脂が溶融した温度を軟化点温度とした。
〔ダイマー酸含有量〕
テトラクロロエタン(d2)中、120℃にて1H-NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、求めた。
〔溶融粘度〕
JIS K6862-1984に記載されているホットメルト接着剤の溶融粘度測定方法のB法に準拠し、210℃にて行った。
熱転写シートにおけるインク層面のインクを、溶媒(トルエン/メタノール=1/1(質量比))で分離した。分離されたインクを、100℃、常圧で5時間乾燥した後、100℃でさらに減圧乾燥を行い、インクの乾燥物を得た。得られた乾燥物を、JIS K6862-1984に記載されているホットメルト接着剤の溶融粘度測定方法のB法に準拠し、210℃にて溶融粘度の測定を行った。
実施例および比較例で得られた熱転写シートを用いて、下記の条件により、下記の相手材の表面に対して印字した。印字サンプルを下記に示す基準で評価した。評価結果◎~▲が実用的であり、◎~△が好ましく、◎~○がより好ましく、◎がさらに好ましい。
<印字条件>
プリンタ:SMRATDATE SD3C(マーケム社製)
印字解像度:300dpi
印字速度:150mm/sec
印字濃度:140%
<相手材>
・PET(ポリエチレンテレフタレートフィルム):ユニチカ社製、エンブレットS-25、厚み25μm
・Ny(ナイロン6フィルム):ユニチカ社製、エンブレムON-25、厚み25μm
・紙:日本製紙社製、アイベスト紙、厚み150μm
・PP(ポリプロピレンフィルム):三井化学東セロ社製、OP U-1、厚み25μm
・アルミ箔:UACJ社製、1N30、厚み12μm
<評価基準>
◎:転写不良および印字カスレが全く見られない
○:転写不良は見られないが、印字カスレが細部にわずかに見られる
△:部分的な転写不良および印字カスレが見られる
▲:部分的な転写不良および印字カスレがやや多く見られる
×:全く転写しない
セロピック試験と呼ばれる方法を用いた。具体的には、幅18mmのセロハンテープを、(3)で得られた印字サンプルの印字面に、空気が入らないようにセロハンテープの背面を自重200gのローラーで押し当てて、しっかり密着させてから1時間以上放置した。その後、貼り合わせたセロハンテープを、剥離角90°、引張力4.9Nで剥離した。剥離が終わったセロハンテープに付着した印字の形跡をもとに、下記に示す基準で評価した。評価結果◎~▲が実用的であり、◎~△が好ましく、◎~○がより好ましく、◎がさらに好ましい。
◎:印字部が全く取れない
○:印字部がわずかに取れる
△:印字部が薄く取れる
▲:印字部の取れる部分が多い
×:印字部がほぼ完全に取れる
上記(3)で得られた印字サンプルについて、直径1cmのABS性樹脂球を500gの点荷重で印字面に当てて、毎秒1往復の速度で50回往復した後の印字の状態をもとに、下記に示す基準で評価した。評価結果◎~▲が実用的であり、◎~△が好ましく、◎~○がより好ましく、◎がさらに好ましい。
◎:印字部が全く取れない
○:印字部がわずかに取れる
△:印字部が薄く取れる
▲:印字部の取れる部分が多い
×:印字部がほぼ完全に取れる
上記(3)で得られた印字サンプルについて、沸騰水中に1時間入れた後に、棒に取り付けた綿布によって20g/cm2の圧力をかけながら印字部位を10往復擦り付けた後の印字の状態をもとに、下記に示す基準で評価した。基材が紙の場合については、十分に水分を切ってから試験を行った。評価結果◎~▲が実用的であり、◎~△が好ましく、◎~○がより好ましく、◎がさらに好ましい。
◎:印字変形が全くない
○:印字変形がわずかにある
△:印字変形が小さい
▲:印字変形がやや大きい
×:印字変形が非常に大きい
上記(3)で得られた印字サンプルについて、印字面を表側にして包材を袋状にし、それに水を充填して封をした袋を、沸騰水中に30分入れた後に、すぐに氷水に入れて10分以上急冷した後に取り出して、印字面を綿布で20回強く擦りながら水分を拭き取った。この工程を2回繰り返した後の印字の状態をもとに、下記に示す基準で評価した。評価結果◎~▲が実用的であり、◎~△が好ましく、◎~○がより好ましく、◎がさらに好ましい。
◎:印字欠けなし、印字濃度低下なし
○:印字欠けなし、印字濃度低下小
△:印字欠けあり、印字濃度低下小
▲:印字欠けあり、印字濃度低下中
×:印字欠けあり、印字濃度低下大
表1に記載された構成と特性を有するものを使用した。
撹拌機およびヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、75.0gのダイマー酸系ポリアミド樹脂P-1、37.5gのイソプロパノール(IPA)、37.5gのテトラヒドロフラン(THF)、7.2gのN,N-ジメチルエタノールアミンおよび217.8gの蒸留水を仕込んだ。回転速度を300rpmで撹拌しながら、系内を加熱し、120℃で60分間加熱攪拌を行った。その後、撹拌しながら室温付近(約30℃)まで冷却し、100gの蒸留水を追加した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)でごくわずかに加圧しながらろ過した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA、THF、水の混合媒体約100gを留去し、乳白色の均一なダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体E-1を得た。
ダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体E-1の製造において、樹脂P-1を樹脂P-2~P-11に変更した以外は同様の製造方法で、ダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体E-2~E-11を得た。
ダイマー酸系ポリアミド樹脂P-1を濃度20質量%になるように混合有機溶剤(メタノール/トルエン=1/1(質量比))に溶解し、ダイマー酸系ポリアミド樹脂溶液O-1を得た。
ダイマー酸系ポリアミド樹脂溶液O-1の製造において、樹脂P-1を樹脂P-2~P-7に変更した以外は同様の製造方法で、ダイマー酸系ポリアミド樹脂溶液O-2~O-7を得た。
ホモポリプロピレン樹脂280gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で、キシレン470gに加熱溶解した後、系内温度を140℃に保って、撹拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸20.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド10.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この樹脂をさらに撹拌したアセトン中で洗浄する操作を数回行い、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥してポリオレフィン樹脂Q-1を得た。酸価が25.0mgKOH/g、軟化点温度が150℃、溶融粘度が5000mPa・sであった。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂Q-1、90.0gのn-プロピルアルコール、9.0gのN,N-ジメチルエタノールアミンおよび141.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、撹拌状態を維持したまま、空冷にて内温が40℃になるまで冷却した。さらに、水を添加し、ロータリーエバポレーターを用い、浴温80℃で溶媒を留去させた。その後空冷にて、室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、固形分濃度が20質量%の、均一なポリオレフィン樹脂水性分散体A-1を得た。
ポリアミド樹脂水溶液A-2として、水溶性ポリアミド樹脂Q-2(東レ社製、ダイマー酸成分0モル%、軟化点温度142℃、アミン価0.1mgKOH/g、酸価0.1mgKOH/g、溶融粘度7000mPa・s)の50質量%水溶液を使用した。
ポリエチレンワックス(三井化学社製、ハイワックス 220P、融点110℃)を、溶解釜にて、トルエンに固形分濃度が10質量%になるように溶解して、ポリエチレンワックス溶液(R1)を調製した。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル社製、EVA 210)を、トルエンに固形分濃度が10質量%になるように溶解して、エチレン-酢酸ビニル共重合体溶液(R2)を調製した。R1とR2とを、R1/R2(質量比)が9/1になるようにディゾルバーで混合して、離型層形成用の塗剤を得た。
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、S-12、厚み12μm)のコロナ面に、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように、離型層形成用の塗剤を塗布し、100℃で10秒乾燥することにより、離型層が積層された基材を得た。
ダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体E-1に、カーボン(三菱ケミカル社製、カーボンブラック #85)を、ダイマー酸系ポリアミド樹脂/カーボン(質量比)が80/20になるよう添加して、ディゾルバーで十分に攪拌混合し、ビーズミルを用いてカーボン等を分散および発色させ、インク層形成用塗剤を得た。
基材上に積層された離型層上に、上記インク層形成用塗剤をグラビア塗装機にて塗布し、乾燥して、単位面積当たりの質量が1.0g/m2のインク層を積層し、熱転写シートを得た。
インク層形成用塗剤を構成する液体状の樹脂の種類を、表2記載のものになるようにした以外は実施例1と同様の操作を行って、インク層形成用塗剤、熱転写シートを得た。
インク層を構成する樹脂がポリオレフィン樹脂である熱転写シート(比較例1)やダイマー酸系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂である熱転写シート(比較例2)は、相手材の種類によって、転写性に劣り、印字物は、密着性、耐擦傷性、耐熱性および耐ヒートショック性に劣る結果となった。
Claims (8)
- アミン価が0.4mgKOH/g未満である ダイマー酸系ポリアミド樹脂を含有することを特徴とするインク用バインダー。
- ダイマー酸系ポリアミド樹脂のジカルボン酸成分の50モル%以上がダイマー酸であることを特徴とする請求項1記載のインク用バインダー。
- ダイマー酸系ポリアミド樹脂の軟化点温度が100~180℃であることを特徴とする請求項1または2記載のインク用バインダー。
- ダイマー酸系ポリアミド樹脂の酸価が1~50mgKOH/gであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のインク用バインダー。
- ダイマー酸系ポリアミド樹脂の溶融粘度(JIS K6862-1984)が、2000~3500mPa・sであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のインク用バインダー。
- 請求項1~5のいずれかに記載のインク用バインダーと着色剤とを含有することを特徴とするインク。
- 基材上に、請求項6記載のインクから得られるインク層が積層された熱転写シート。
- インク層の溶融粘度(JIS K6862-1984)が、2500~8000mP・sであることを特徴とする請求項7記載の熱転写シート。
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