JP7147392B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関し、特に、低温定着性、定着分離性及び耐ドキュメントオフセット性に優れた静電潜像現像用トナーに関する。
近年では、画像形成装置の高速化、省エネルギー化に対する市場からの要求により、低温定着性に優れ、高品位な画像を提供できるトナーが求められている。トナーにおいては、結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げると低温定着化の達成が期待される一方で、ホットオフセットの発生や離型剤の浸みだし不良に起因する定着分離性の悪化、印刷直後のドキュメントオフセットの悪化が懸念される。
例えば、特許文献1に開示されている技術では、イオン性解離基付与のウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を含有したトナーで、示差走査熱量測定による熱物性を規定することで、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の結晶性セグメントによる低温定着性の確保、ウレタン重合セグメントによる高温時の適度な弾性が維持されることによる高光沢化の抑制と耐ドキュメントオフセット性が維持できるとされている。しかしながら、当該特許文献1では、ある程度の低温定着性は改善されるものの、高温時の弾性付与が不十分なことから、定着分離性やドキュメントオフセットとの両立に問題がある。
また、例えば、特許文献2に開示されている技術では、結着樹脂として結晶性セグメントと非晶性セグメントからなるブロック共重合体を含むトナーで、大振幅振動法(LAOS)測定による最大弾性応力値等のパラメータを規定することにより、トナーの低温定着性と耐熱保存性の両立の他、耐擦性、顔料分散性及び機械耐久性の向上を図っている。しかしながら、特許文献2で示されたパラメータ範囲ではある程度の弾性率を保持した状態での低温定着性を示しているが、高温時の弾性を付与した設計にはなっていないため、定着分離性やドキュメントオフセット性の確保は不十分であった。
特許第5983653号公報 特開2015-055661号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温定着性、定着分離性及び耐ドキュメントオフセット性に優れた静電潜像現像用トナーを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、非晶性樹脂と結晶性樹脂を含有するトナーの温度130℃、歪み振幅100%における動的粘弾性測定で描いた応力歪み曲線で表される面積と傾きを特定範囲に規定することで、低温定着性、定着分離性及び耐ドキュメントオフセット性に優れた静電潜像現像用トナーを提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.結着樹脂を含有するトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有し、前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル重合セグメントとウレタン重合セグメントとが結合してなるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を少なくとも含有し、前記結晶性樹脂のうち、未変性の結晶性ポリエステル樹脂の含有量をa[質量%]、前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の含有量をb[質量%]としたとき、bに対するaの比の値a/bが、0.1~1.0の範囲内であり、
温度130℃、周波数1Hz、歪み振幅1.0~500%の条件下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、歪み振幅100%における応力歪み曲線の応力の積分値をS130、長径の傾きをθ130としたとき、
前記S130が、0Pa超350000Pa以下であり、
前記θ130が、22°超90°未満であり、
蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度が、0.1~0.7の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
2.前記S130が、0Pa超300000Pa以下であることを特徴とする第1項に記載の静電潜像現像用トナー。
3.前記θ130が、25°以上80°未満であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電潜像現像用トナー。
4.前記結着樹脂が、非晶性ビニル樹脂を含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
.前記結晶性樹脂の含有量が、前記結着樹脂全量に対して3~30質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
.前記静電潜像現像用トナーの軟化点が、90~105℃の範囲内であることを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
.前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂単独の、示唆走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められた、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における融解ピークのピーク温度が50~90℃の範囲内であることを特徴とする第項又は第項に記載の静電潜像現像用トナー。
.下記各種条件A下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、下記条件A(3)下の歪み振幅100%における応力歪み曲線の長径の傾きをθ70としたとき、前記θ70が30°以上であることを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
<条件A>
(1)温度:130℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
(2)温度:100℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
(3)温度:70℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~100%
の順に測定する。
本発明の上記手段により、低温定着性、定着分離性及び耐ドキュメントオフセット性に優れた静電潜像現像用トナーを提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
従来、トナーの溶融変形として、昇温中にあるトナーに一定の加重をかけながらトナーの溶融状態変化を測定することにより得られる軟化点から定着性への効果を予測していた。しかし、実際の軟化点と定着性の関係を調べるとつじつまが合わないことが多く、軟化点からの情報だけでは、定着性を予測するには不十分であることが分かった。そこで、本発明では、トナーに温度や線速、圧力が加わった定着過程におけるトナーの溶融変形について、レオロジーの観点から考えた。
トナーなどの粘弾性体に周期的に変化する歪みを加えると、発生する応力との間に位相差が生じ、応力と歪みの変化により規定される応力歪み曲線(リサージュ)の面積は、変形による発熱、すなわち変形により失われるエネルギーに相当することが分かっている。(参考:特開平11-237332号公報)
図1では、時間を横軸座標とした粘弾性体の応力とひずみの特性を表し、図2はひずみを横軸座標、応力を縦軸座標として応力とひずみの特性を表す(応力歪み曲線)。
図1に示されるように、粘弾性体では、歪みに対し応力の位相がδだけ遅れ、ここで0<δ<π/2である。また、図2に示されるように、粘弾性体の応力歪み曲線は楕円となり、楕円の面積Sは、1サイクルの変形に際して損失したエネルギーであり、発熱エネルギーに相当する。
よって、定着過程のトナーにおいて、応力歪み曲線の面積に相当する溶融変形に必要なエネルギーが低温定着性の指標となる。
応力歪み曲線の面積が小さければ、変形に必要なエネルギーも小さいことから、低温定着性(最低定着温度)に優れるのに対し、面積が大きければ、変形に必要なエネルギーが大きいため、低温定着性には不利になることが推測される。
また、応力を歪みで割ると弾性率が分かるため(応力÷歪み=弾性率)、この応力歪み曲線の楕円の傾きは、図3に示す楕円の長径と横軸のなす角度を示し、これは、その測定温度時にかけた歪みから得られるトナーが有する弾性率を表す。弾性率の大小から、トナーの延性が分かる。弾性率が小さければ(傾きが小さい)、そのトナーは変形によって延びやすく、元に戻りにくいため、紙などのメディアへの追随性に優れ、凹凸紙や紙の繊維に食い込みやすいと推測される。
一方、弾性率が大きければ(傾きが大きい)、そのトナーは変形によるエネルギーを加えても、一旦は延びるが元に戻ろうとする力が働く(トナーの弾性回復)。
そこで、本発明で規定した範囲、すなわち、前記S130が、0Pa超350000Pa以下であり、前記θ130が、22°超90°未満という範囲は、小さなエネルギーで変形しやすく、弾性率が大きい特徴がある。小さなエネルギーで変形しやすいほど低温定着性に有利であり、弾性率が大きいほど、弾性回復しやすい=元に戻りやすいことから、定着分離過程において、溶融した樹脂を定着ベルトから剥離する時に樹脂の弾性回復力を利用して剥離しやすくなる。さらに、印刷後の画像積み重ねによるドキュメントオフセットにおいても、樹脂の弾性率の大きさから冷却過程において瞬時に固化し、さらに樹脂の弾性回復力が大きいために画像と紙が張り付きにくくなる。よって、優れた低温定着性と定着分離性の確保と印刷後のドキュメントオフセットの両立が期待される。
一般的な粘弾性体について時間を横軸座標としたときの応力及び歪みの変化を示すグラフ 図1のグラフについて、歪みを横軸座標、応力を縦軸座標に変換したグラフ(応力歪み曲線) 応力歪み曲線の長径の傾きを表す模式図 動的粘弾性の歪み分散測定における歪みの印加を表す模式図 実施例におけるトナー1について、温度130℃、周波数1Hz、歪み振幅1.0~500%の条件で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、歪み振幅100%で歪みを印加した際の応力変化から得られる応力歪み曲線
本発明の静電潜像現像用トナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有し、前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル重合セグメントとウレタン重合セグメントとが結合してなるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を少なくとも含有し、前記結晶性樹脂のうち、未変性の結晶性ポリエステル樹脂の含有量をa[質量%]、前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の含有量をb[質量%]としたとき、bに対するaの比の値a/bが、0.1~1.0の範囲内であり、温度130℃、周波数1Hz、歪み振幅1.0~500%の条件下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、歪み振幅100%における応力歪み曲線の応力の積分値をS130、長径の傾きをθ130としたとき、前記S130が、0Pa超350000Pa以下であり、前記θ130が、22°超90°未満であり、蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度が、0.1~0.7の範囲内であることを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記S130が、0Pa超300000Pa以下であることが、低温定着性やメディア追随性に優れる点で好ましい。
また、前記θ130が、25°以上80°未満であることが、定着ベルトからの剥離性に優れ、かつ、粘弾性体として振る舞える点で好ましい。
前記結着樹脂が、非晶性ビニル樹脂を含有することが、ワックスとの親和性向上によって離型剤の染み出し量が適量となり、定着分離性向上の点で好ましい。
また、蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度が、0.1~0.7の範囲内であることが、トナー中のナトリウムと結着樹脂との間の相互作用の形成量が多すぎることも少なすぎることもなく適量となり、離型剤の染み出し量も適量となり、定着分離性の点で好ましい。
前記結晶性樹脂の含有量が、前記結着樹脂全量に対して3~30質量%の範囲内であることが好ましい。3質量%以上であれば、定着後の画像中の結晶性樹脂と非晶性樹脂の相溶化を抑制し、30質量%以下であることにより、定着後の画像中の結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相分離状態になることを抑制させるのに適当な量となる。
前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル重合セグメントとウレタン重合セグメントとが結合してなるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を少なくとも含有することが、結晶性ポリエステル重合セグメントによる低温定着性の確保と、ウレタン重合セグメントによる高温時の適度な弾性が維持されることによる高光沢化の抑制と耐ドキュメントオフセット性の維持という2つの機能を備える点で好ましい。
前記結晶性樹脂のうち、未変性の結晶性ポリエステル樹脂の含有量をa[質量%]、前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の含有量をb[質量%]としたとき、bに対するaの比の値a/bが、0.1~1.0の範囲内であることが、未変性及び変性部の結晶性セグメントによる低温定着性の確保と、変性部のウレタン重合セグメントにおける高温時の弾性維持による高光沢化の抑制、定着分離性と耐ドキュメントオフセット性を両立させる点で好ましい。
前記静電潜像現像用トナーの軟化点が、90~105℃の範囲内であることが、低温定着性の点で好ましい。
前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂単独の、示唆走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められた、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における融解ピークのピーク温度が50~90℃の範囲内であることが好ましい。50℃以上であることにより、熱定着時に溶融が生じるタイミングが早くなり過ぎることなく、非晶性樹脂と混合されて発揮されるシャープメルト性を有効に得ることができ、十分な低温定着性が得られる。一方、90℃以下であることにより、熱定着時に溶融が生じるタイミングが遅くなり過ぎることなく、非晶性樹脂と混合されて発揮されるシャープメルト性を有効に得ることができて、十分な定着性が得られる。
前記各種条件A下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、前記条件A(3)下の歪み振幅100%における応力歪み曲線の長径の傾きをθ70としたとき、前記θ70が30°以上であることが、定着剥離性、特に薄紙の定着剥離性の点で好ましい。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[静電潜像現像用トナー]
本発明の静電潜像現像用トナー(以下、単にトナーともいう。)は、結着樹脂を含有するトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有し、温度130℃、周波数1Hz、歪み振幅1.0~500%の条件下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、歪み振幅100%における応力歪み曲線の応力の積分値をS130、長径の傾きをθ130としたとき、前記S130が、0Pa超350000Pa以下であり、前記θ130が、22°超90°未満であることを特徴とする。
<S130及びθ130の算出方法>
(動的粘弾性の歪み分散測定)
トナーの動的粘弾性の歪み分散測定は、TAインスツルメント社製ARES-G2を使用して行う。
まず、トナー粉体0.2gを圧縮成型機にて、20MPaの圧力を30秒印加して、厚さ2.0mm±0.3mm、1cmφのペレットを作製する。次に、ペレットの上側を8mmφのアルミディスポザブルパラレルプレート、下側を25mmφのアルミディスポザブルパラレルプレートにセットし、130℃に昇温した後、所定のギャップまで圧縮し、上側のパラレルプレートにはみ出た溶融体をトリミングする。
初期のノーマルフォースが0になるようにサンプルをセットする。そして、その後の測定においては、自動テンション調整(Auto Tension Adjustment ON)にすることで、ノーマルフォースの影響をキャンセルする。測定条件は、以下のように設定し、図4に示すように各歪み振幅につき歪みを3周期分印加し、その際の応力を測定する。
1. 直径8mmのパラレルプレートを用いる
2. 測定ギャップを1mmとする
3. 周波数(Frequency)を1Hzとする
4. 印加する歪み振幅(Strain)を1.0%(Initial)、1.5%、2.5%、4%、6%、10%、16%、25%、40%、62%、100%、158%、250%、400%、500%(Final)に設定する。
(応力歪み曲線の分析)
上記の動的粘弾性の歪み分散測定において、歪み振幅100%で歪みを1周期分印加した際の応力のデータを採取し、横軸に歪みγを、縦軸に応力σをとり、この際、歪みγの100%分の目盛りが応力σの1500Pa分の目盛りに等しくなるようにして、応力歪み曲線を作成する。歪み振幅100%における残り2周期分についても、同様にして応力歪み曲線を作成し、計3周期分の応力歪み曲線を得る。
各曲線について、TRIOS(TAインスツルメント株式会社製)により応力σの積分値[Pa]を算出し、曲線3周期分の応力σの積分値を平均化し、S130[Pa]を算出する。
また、図3に示すように、応力歪み曲線の中心点(0,0)から最も距離が長くなる点A(a,b)を特定し、当該点Aと中心点を直線で結び、当該直線を外挿して応力歪み曲線を交わる点をBとして、点Aと点B(中心点を通る)を結んだ直線を長径とする。短径はその長径に対して、垂直に交わる直線と応力歪み曲線が交わる2点を結んだ直線をさす。傾きθは、長径と横軸のなす角度をいい、長径をなす端点A(a,b)の座標値からtanθ=|b|/|a|を求めることで算出できる。曲線3周期分のθを平均化し、θ130[°]とする。
応力歪み曲線の面積が小さければ、変形に必要なエネルギーも小さいことから、低温定着性(最低定着温度)に優れるのに対し、面積が大きければ、変形に必要なエネルギーが大きいため、低温定着性やメディア追随性には不利になることが推測される。
低温定着性の要件として、面積が小さいことが重要になるが、面積がゼロの場合、応力歪み曲線は直線を示し、純弾性体(ゴム)を表すため、トナー用の高分子設計としては面積がゼロよりも大きい必要がある。一方、面積が大きすぎると、変形に必要なエネルギーが大きくなるため、低温定着性やメディア追随性の達成が困難になる。
そこで、本発明のトナーは、前記S130が0Pa超350000Pa以下であることを特徴とし、好ましくは、前記S130が0Pa超、300000Pa以下であり、特に、0Pa越、200000Pa以下が好ましい。
また、応力を歪みで割ると弾性率が分かる(応力÷歪み=弾性率)。つまり、応力歪み曲線の長径の傾きは弾性率を表す。弾性率の大小から、ニップ通過直後のトナーの弾性回復力が分かる。
前記長径の傾きθ130が22°よりも小さいと、弾性回復がしにくく、つまり、粘性優位の状態となるため、定着ベルトからの剥離性が悪化すると推測される。前記長径の傾きθ130が90°以上の時は、粘弾性体としての振る舞いはなく、又は測定が正しく行われていないことが示唆される。前記長径の傾きθ130は、25°以上80°未満であることが好ましく、30°以上80°未満であることが特に好ましい。
前記S130及びθ130を前記範囲にするためには、下記(i)~(iii)の全てを満たすことにより達成することができる。
(i)ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の活用
ウレタン変性結晶性ポリエステルの結晶性重合セグメントの存在でシャープメルト性(低温定着性)を確保し、ウレタン重合セグメントの存在によって高温時でも粘弾性の低下を抑制する(定着分離性及び耐ドキュメントオフセット性の確保)ことができる。
(ii)ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の分割添加(初期添加と昇温完了添加)
初期(昇温前)と昇温完了後にそれぞれ、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液を分割添加することで、トナー全体に均一に分散させることができる。それにより、ウレタン変性結晶性ポリエステルの上記効果が発揮しやすくなる。初期添加のみでは、内部にのみ、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂が配置された状態になり、昇温完了後ではトナー外側のみにウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂が配置されることになる。
(iii)未変性結晶性ポリエステル樹脂とウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂との併用
未変性及び変性した結晶性ポリエステル樹脂の併用により、結晶性セグメント部分による低温定着性と、ウレタン重合セグメントの高温時の弾性維持により、高光沢化の抑制、定着分離悪化の抑制及び耐ドキュメントオフセット性の双方を確保することができる。
[θ70]
本発明のトナーは、下記各種条件A下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、下記条件A(3)下の歪み振幅100%における応力歪み曲線の長径の傾きをθ70としたとき、前記θ70が30°以上であることが好ましい。
≪条件A≫
(1)温度:130℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
(2)温度:100℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
(3)温度:70℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~100%
の順に測定する。
<θ70の算出方法>
前記<S130及びθ130の算出方法>の(動的粘弾性の歪み分散測定)の項と同様にして、下記条件Aで動的粘弾性の歪み分散測定を行う。なお、下記条件A中、「歪み振幅:1.0~500%」は、印加する歪み振幅を1.0%(Initial)、1.5%、2.5%、4%、6%、10%、16%、25%、40%、62%、100%、158%、250%、400%、500%(Final)に設定することを意味する。図4に示すように各歪み振幅につき歪みを3周期分印加し、その際の応力を測定する。
≪条件A≫
(1)温度:130℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
(2)温度:100℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
(3)温度:70℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~100%
上記条件A(3)の動的粘弾性の歪み分散測定において、歪み振幅100%で歪みを3周期分印加した際の応力のデータを採取し、各周期分について、横軸に歪みγを、縦軸に応力σをとり、この際、歪みγの100%分の目盛りが応力σの250000Pa分の目盛りに等しくなるようにして、応力歪み曲線を作成し、計3周期分の応力歪み曲線を得る。これについて、<S130及びθ130の算出方法>の(応力歪み曲線の分析)の項と同様にして、θ70[°]を算出する。
70℃は、トナー定着直後を想定した温度であり、温度70℃、歪み100%の応力歪み曲線の傾きθ70から、定着直後を想定した温度における、トナーの分子運動性と、樹脂弾性回復力が分かる。
前記傾き(弾性率)θ70については、30°以上であると、冷却工程において溶融したトナーの運動性が小さいことから弾性回復力が大きく、定着剥離性、特に薄紙の定着剥離性に優れる。
前記θ70は、30~80°の範囲内であることが好ましい。
なお、前記θ70を前記範囲内にするためには、ウレタン変性結晶性樹脂の融解ピーク温度が50℃以上であることにより達成することができる。
<ナトリウムのNet強度>
本発明のトナーは、蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度が、0.1~0.7の範囲内であることが好ましい。
上記のように、低粘度化効果が発揮されると、薄紙への剥離不良(定着分離性)が悪化する。この場合は定着ベルトからの剥離に対して、トナー自身がもつ弾性が効果を発揮しないことが原因と推測される。そこで、トナーに含まれるナトリウム(Na)と結着樹脂との間の相互作用(Naと結着樹脂が有するNaと相互作用する官能基、例えばカルボキシ基、スルホニウム基等との間の相互作用)の形成量を調整することで、離型剤(ワックス)の染み出し量をコントロールすることができる。
トナー中のNaと結着樹脂との間の相互作用の形成量が多すぎると、離型剤が染み出しにくくなり、前記形成量が少なすぎると、離型剤がトナー表面に染み出し易くなり、粉塵の発生量が増大することから、前記Net強度は0.1~0.7の範囲内であることが好ましく、0.15~0.65の範囲内であることがより好ましく、0.2~0.65の範囲内であることが特に好ましい。
(ナトリウムのNet強度の測定方法)
測定前処理として、トナー1gを加圧成型機で15ton、10秒間の加圧条件下で圧縮成型する。そして、圧縮成型された試料を、(株)島津製作所の蛍光X線装置XRF-1700を使用し、管電圧40KV、管電流95mAの測定条件で、全元素分析により、ナトリウムのNet強度の測定を行う。
<トナー母体粒子>
本発明のトナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子を含む。
なお、本発明において、トナー粒子とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをいい、トナー粒子の集合体をトナーという。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂を含有する。また、本発明に係るトナー母体粒子は、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)、着色剤及び荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
<結着樹脂>
本発明に係る結着樹脂は、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有する。特に、結着樹脂が非晶性ビニル樹脂を含有することがワックスとの親和性向上によって離型剤の染み出し量が適量となり、定着分離性向上の点で好ましい。
(非晶性ビニル樹脂)
非晶性ビニル樹脂とは、少なくともビニル単量体を用いた重合により得られる樹脂である。
例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。非晶性ビニル樹脂は、結晶性樹脂との相分離を制御しやすい。中でも、乳化凝集法における製造性(つまり、均一な凝集性を持つラテックスが作られることで、粒度分布のシャープなトナーが得られる。)や、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・アクリル共重合体樹脂が好ましい。非晶性ビニル樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
非晶性ビニル樹脂の含有量の下限値は、結着樹脂全量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらにより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。5質量%以上であれば、結晶化樹脂との相溶状態が良好となり、低温定着性が良好となる。
また、低温定着性向上の観点から、非晶性ビニル樹脂の含有量の上限値は、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
なお、上記の非晶性ビニル樹脂の含有量は、結着樹脂全量に対する全ての非晶性ビニル樹脂の含有量である。したがって、例えば、結着樹脂が、非晶性ビニル樹脂及び結晶性樹脂以外に、非晶性ビニル樹脂とのハイブリッド構造を有するハイブリッド樹脂を含む場合には、トナー中に含有される主成分としての非晶性ビニル樹脂の含有量に加えて、ハイブリッド樹脂中の非晶性ビニル重合セグメントの含有量も、上記の非晶性ビニル樹脂の含有量に含むものとする。
(1)スチレン単量体
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン及びこれらの誘導体など。
(2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体など。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
(6)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなど。
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体など。
また、ビニル単量体としては、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものがある。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。
さらに、リン酸基を有する単量体としてはアシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
さらに、ビニル単量体として、多官能性ビニル類を使用し、非晶性ビニル樹脂を、架橋構造を有するものとすることもできる。多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
非晶性ビニル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。
非晶性ビニル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が25~60℃の範囲内である非晶性樹脂であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が35~55℃の範囲内である非晶性樹脂であることがより好ましい。
なお、本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて測定される値である。測定手順としては、測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0~200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat-cool-Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度とする。
また、非晶性ビニル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で10000~100000の範囲内であることが好ましい。
なお、本明細書において、樹脂のGPCによる分子量は、以下のようにして測定される値である。
すなわち、装置「HLC-8120GPC」(東ソー株式会社製)及びカラムTSKgel guardcolumn SuperHZ-L」及び「TSKgel SuperHZM-M」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、測定試料(樹脂)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。
次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
<結晶性樹脂>
結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル重合セグメントとウレタン重合セグメントとが結合してなるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を少なくとも含有することが好ましく、さらに、未変性の結晶性ポリエステル樹脂(以下、「未変性結晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)も含有することが好ましい。
結着樹脂における前記結晶性樹脂の含有割合は、3~30質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましく、特に15~20質量%の範囲内であることが好ましい。
結着樹脂における結晶性樹脂の含有割合が3質量%以上であることにより、定着後の画像中の結晶性樹脂と非晶性樹脂の相溶化を抑制し、30質量%以下であることにより、定着後の画像中の結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相分離状態になることを抑制させるのに適当な量となる。
<未変性結晶性ポリエステル樹脂>
未変性結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)及び/又はヒドロキシカルボン酸と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な融解ピークを有する樹脂をいう。明確な融解ピークとは、具体的には、上述の未変性結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、2回目の昇温過程における融解ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
未変性結晶性ポリエステル樹脂の融点は、65~85℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは75~85℃の範囲内である。未変性結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記範囲であることにより、十分な低温定着性及び優れた画像保存性が得られる。なお、未変性結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。ここに、未変性結晶性ポリエステル樹脂の融点は、上述の未変性結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、2回目の昇温過程における融解ピークのピークトップ温度である。なお、当該DSC曲線において融解ピークが複数存在する場合は、一番吸熱量の大きい融解ピークのピークトップ温度を融点とする。
未変性結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、吸熱ピークのピークトップの温度であり、ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いてDSCによって測定することができる。具体的には、試料をアルミニウム製パンKITNo.B0143013に封入し、熱分析装置 Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。1回目の加熱時には室温(25℃)から、2回目の加熱時には0℃から、10℃/分の昇温速度でそれぞれ150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/分の降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点として測定する。
未変性結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。未変性結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分としては、飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
未変性結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。未変性結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
未変性結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒下で反応させる一般的なポリエステルの重合法を用いて製造することができ、例えば直接重縮合やエステル交換法を、単量体の種類によって使い分けて製造することが好ましい。
また、直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸を、前記多価カルボン酸及び/又は多価アルコールと組み合わせて用いることができる。未変性結晶性ポリエステル樹脂を形成するための直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、5-ヒドロキシペンタン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、7-ヒドロキシペンタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、9-ヒドロキシノナン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸:及びこれらのヒドロキシカルボン酸が環化したラクトン化合物、又は炭素数1~3のアルコールとのアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、未変性結晶性ポリエステル樹脂を形成する際に、多価カルボン酸と多価アルコール成分とを用いることで反応を制御することが容易になり、目的の分子量の樹脂を得ることができるため好ましい。
未変性結晶性ポリエステル樹脂の製造に使用することのできる触媒としては、例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタン触媒や、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドなどのスズ触媒などが挙げられる。
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.2/1~1/1.2の範囲内である。
未変性結晶性ポリエステル樹脂は、その酸価が5~30mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~25mgKOH/g、さらに好ましくは15~25mgKOH/gの範囲内である。この酸価は、1gの試料に含まれる酸の中和に必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmg単位で表したものである。樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に準じて下記手順により測定される。
(試薬の準備)
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製する。JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとする。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製する。標定はJIS K0070-1992の記載に従う。
(本試験)
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とする。
(空試験)
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液のみとする)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行う。
本試験と空試験の滴定結果を下記式(1)に代入して酸価を算出する。
式(1) A=〔(C-B)×f×5.6〕/S
A:酸価(mgKOH/g)
B:空試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
C:本試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
f:0.1mol/リットルの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
未変性結晶性ポリエステル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量分布から算出された重量平均分子量(Mw)が5000~50000の範囲内、数平均分子量(Mn)が1500~25000の範囲内であることが好ましい。
GPCによる分子量測定は、以下のように行う。
すなわち、装置「HLC-8320」(東ソー社製)及びカラム「TSKgel guardcolumn SuperHZ-L」及び「TSKgel SuperHZM-M」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流す。測定試料(未変性結晶性ポリエステル樹脂)を、室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して試料溶液を得る。この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。
検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。
<ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂>
本発明に係る結晶性樹脂は、前記した未変性結晶性ポリエステル樹脂以外に、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を少なくとも含有することが好ましい。
前記結晶性樹脂のうち、未変性結晶性ポリエステル樹脂の含有量をa[質量%]、前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の含有量をb[質量%]としたとき、bに対するaの比の値a/bが、0.1~1.0の範囲内であることが、未変性及び変性部の結晶性セグメントによる低温定着性の確保と、変性部のウレタン重合セグメントにおける高温時の弾性維持による高光沢化の抑制、定着分離性と耐ドキュメントオフセット性を両立させる点で好ましい。
前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は、ウレタン重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメント(以下、単に「結晶性重合セグメント」ともいう。)とが結合してなるブロック共重合体からなる結晶性樹脂である。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂のDSC測定における融解ピーク温度)
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の融解ピーク温度は、50~90℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは60~85℃の範囲内である。ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性が確実に得られる。
前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の融解ピーク温度は、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定(DSC測定)によって得られるDSC曲線から求められた0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における融解ピークのピーク温度である。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の結晶性重合セグメントの含有割合)
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂における結晶性重合セグメントの含有割合は、50~99.5質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは60~97質量%、特に好ましくは60~95質量%の範囲内である。
結晶性重合セグメントの含有割合は、具体的には、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、結晶性重合セグメントとなる多価カルボン酸及び多価アルコールと、ウレタン重合セグメントとなる多価アルコール及び多価イソシアネートとを合計した全質量に対する、結晶性重合セグメントとなる多価カルボン酸及び多価アルコールの質量の割合である。
結晶性重合セグメントの含有割合が50質量%以上であることによって、十分なシャープメルト性が得られ、よって、優れた低温定着性を得ることができる。一方、99.5質量%以下であることによって、熱定着時に高温となった場合にも結着樹脂全体として十分な粘弾性が維持されるので、その弾性回復によって定着ベルトからの定着分離性を確保するとともに十分な耐ドキュメントオフセット性が得られる。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の合成方法)
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は、あらかじめ、結晶性重合セグメントとなる、両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマー(後述の結晶性ポリエステルジオールなど)、及び、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンユニットを、それぞれ合成し、両者を混合して反応させる(合成反応A)ことによって、合成することができる。
また、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は、まず、結晶性重合セグメントとなる、両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマー(後述の結晶性ポリエステルジオールなど)を合成し、次いで、当該プレポリマーの両末端のヒドロキシ基に多価イソシアネート化合物のみ、又は、多価イソシアネート化合物及び多価アルコールを反応させる(合成反応B)ことによってウレタン重合セグメントを形成することにより、合成することもできる。
上記の合成反応Aは、両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマー及び末端にイソシアネート基を有するポリウレタンユニットをともに溶解することができる溶媒中で行う。同様に、上記の合成反応Bは、両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーと多価イソシアネート化合物及び多価アルコールを溶解することができる溶媒中で行う。
このような反応溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒を挙げることができる。反応溶媒は、副反応を防ぐために脱水精製したものであることが好ましい。
また、上記の合成反応A及びBは、合成反応を促進するために加温下で行うことが好ましい。反応温度としては、溶媒の沸点によっても異なるが、50~80℃の範囲内とすることが好ましい。
(結晶性重合セグメント)
結晶性重合セグメントは、結晶性を有する重合体からなるものであれば限定されないが、特に、結晶性ポリエステルジオールからなることが好ましい。
結晶性ポリエステルジオールは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する多価カルボン酸及び1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する多価アルコールにより形成され、その両末端にヒドロキシ基を有する結晶性のものであって、具体的には示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものをいう。
多価カルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸としては、結晶性重合セグメントに優れた結晶性が得られるという観点から、好ましくはカルボキシ基を含めた主鎖の炭素数が4~12、特に好ましくは主鎖の炭素数が6~10である直鎖型の脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。
多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、n-ドデシルコハク酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸;ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらの無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。
結晶性ポリエステルジオールを形成するための多価カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸の含有量が80構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは90構成モル%以上である。多価カルボン酸における脂肪族カルボン酸の含有量が80構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステルジオールの結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られる。
多価アルコールとしては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを併用してもよい。
多価アルコールとしては、結晶性重合セグメントに優れた結晶性が得られるという観点から、脂肪族ジオールの中でも、主鎖の炭素数が2~15である直鎖型の脂肪族ジオールを用いることが好ましく、特に、主鎖の炭素数が2~10である脂肪族ジオールを用いることが好ましい。
多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブテン-1,4-ジオールなどの脂肪族ジオール:グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。
結晶性ポリエステルジオールを形成するための多価アルコールとしては、脂肪族ジオールの含有量が80構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは90構成モル%以上である。多価アルコールにおける脂肪族ジオールの含有量が80構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステルジオールの結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られる。
結晶性ポリエステルジオールの製造方法としては、特に制限はなく、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒下で反応させる一般的なポリエステルの重合法を用いて製造することができ、例えば直接重縮合やエステル交換法を、モノマーの種類によって使い分けて製造することが好ましい。
結晶性ポリエステルジオールの製造に使用することのできる触媒としては、例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタン触媒や、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドなどのスズ触媒などが挙げられる。
上記の多価カルボン酸と多価アルコールとの使用比率は、多価アルコールのヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.2/1~1/1.2である。
多価カルボン酸と多価アルコールとの使用比率が上記の範囲にあることにより、両末端にヒドロキシ基を有する結晶性ポリエステルジオールを得ることができる。
(ウレタン重合セグメント)
ウレタン重合セグメントは、多価アルコールと多価イソシアネートとから得られるものである。ウレタン重合セグメントを形成するために用いることのできる多価アルコールとしては、上述と同様のものを用いることができる。
ウレタン重合セグメントを形成するための多価アルコールは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ウレタン重合セグメントを形成するために用いることのできる多価イソシアネートとしては、炭素数6~20(ただし、NCO基中の炭素は除く)の芳香族ジイソシアネート、炭素数2~18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4~15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8~15の芳香脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの変性物などが挙げられる。
ウレタン重合セグメントを得るためのジイソシアネート成分としては、上記のジイソシアネートとともに3価以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
ウレタン重合セグメントを形成するための多価イソシアネートは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’-及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-及び/又は2,6-ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートは、m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α、α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネートの変性物としては、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレシイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基による変性物などが挙げられる。具体的には、ウレタン変性MDI、ウレタン変性TDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなどが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
結着樹脂におけるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、10~50質量%の範囲内であることが好ましい。
結着樹脂におけるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が10質量%以上であることにより、十分な低温定着性を確実に得ることができる。また、結着樹脂におけるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が50質量%以下であることにより、耐熱保管性が得られる。
<離型剤>
離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知の種々のものを用いることができ、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
離型剤の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して1~30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~20質量部の範囲内である。離型剤の含有割合が上記範囲内であることにより、十分な定着分離性が得られる。
離型剤のトナー粒子への導入方法としては、後述のトナーの製造方法の凝集、融着工程において、離型剤のみよりなる微粒子を非晶性樹脂微粒子、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子などとともに水系媒体中で凝集、融着する方法が挙げられる。離型剤微粒子は、離型剤を水系媒体に分散させた分散液として得ることができる。離型剤微粒子の分散液は、界面活性剤を含有する水系媒体を離型剤の融点以上に加熱し、溶融した離型剤溶液を加えて機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、冷却することによって調製することができる。
また、非晶性樹脂が例えばスチレン・アクリル樹脂などである場合には、凝集、融着工程に供される非晶性樹脂微粒子(スチレン・アクリル樹脂微粒子)に離型剤をあらかじめ複合させておくことによって、当該離型剤をトナー粒子へ導入することもできる。具体的には、スチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体の溶液に離型剤を溶解させ、これを界面活性剤を含有する水系媒体中に加え、上記と同様に機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、重合開始剤を加えて所望の重合温度で重合を行う、いわゆるミニエマルション重合法によって、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液を調製することができる。
<着色剤>
着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、マグネタイト、フェライトなどの磁性体、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に使用することができる。カラーのトナーを得るための着色剤としては、染料、有機顔料などの公知のものを任意に使用することができる。
具体的には、有機顔料としては例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:2、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントブルー15:3、同60、同76などを挙げることができる。
染料としては例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同69、同70、同93、同95などを挙げることができる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して1~20質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは4~15質量部の範囲内である。
<トナー粒子を構成する成分>
本発明に係るトナー母体粒子中には、結着樹脂、着色剤及び離型剤の他に、必要に応じて荷電制御剤などの内添剤が含有されていてもよい。
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して通常0.1~5.0質量部の範囲内とされる。
[トナー粒子の平均粒径]
本発明のトナー粒子の平均粒径は、例えば体積基準のメジアン径で3~9μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは3~8μmの範囲内とされる。この平均粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成などによって制御することができる。
体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
トナー粒子の体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
<トナー粒子の平均円形度>
本発明に係るトナー粒子は、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.930~1.000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.940~0.995の範囲内である。
本発明において、トナー粒子の平均円形度は、「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて測定されるものである。
具体的には、試料(トナー粒子)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA-2100」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
<トナーの軟化点>
トナーの軟化点は、当該トナーに低温定着性を得る観点から、80~120℃の範囲内であることが好ましく、低温定着性の観点から、より好ましくは90~105℃の範囲内である。
トナーの軟化点は、下記に示すフローテスターによって測定されるものである。
具体的には、まず、20℃、50%RHの環境下において、試料(トナー)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP-10A」(島津製作所社製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作成する。次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、軟化点とされる。
<外添剤>
本発明に係るトナー粒子は、そのままで本発明のトナーを構成することができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
後処理剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、又は、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー100質量部に対して0.05~5質量部の範囲内、好ましくは0.1~3質量部の範囲内とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
[トナーの製造方法]
本発明に係るトナーの製造方法は、水系媒体中に分散された、結着樹脂を形成すべき非晶性樹脂による微粒子、及び、当該非晶性樹脂と非相溶であり、結着樹脂を形成すべき、結晶性重合セグメントとウレタン重合セグメントとが結合してなるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂による微粒子と、未変性結晶性ポリエステル樹脂による微粒子とを凝集、融着する工程を有することを特徴とする方法である。
具体的には、例えば結着樹脂を構成する樹脂(非晶性樹脂、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂、未変性結晶性ポリエステル樹脂)による微粒子を、凝集、融着させることによりトナー粒子を得る乳化凝集法を用いることが好ましい。
乳化凝集法は、結着樹脂を構成する樹脂の微粒子の分散液を及び必要に応じてその他のトナー粒子構成成分の微粒子の分散液と混合し、pH調整による微粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナー粒子を製造する方法である。
このようなトナーの製造方法の具体的な一例としては、
(1)着色剤を水系媒体中に分散させ、着色剤粒子分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程
(2)ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させ、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製するウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
(3)未変性結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させ、未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製する未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
(4)離型剤及び必要に応じて荷電制御剤などのトナー粒子構成成分が含有された非晶性樹脂を水系媒体中に分散させ、非晶性樹脂粒子分散液を調製する非晶性樹脂粒子分散液調製工程
(5)非晶性樹脂微粒子、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子、未変性s結晶性ポリエステル樹脂微粒子及び着色剤微粒子を、水系媒体中で凝集、融着させて凝集粒子を形成する凝集、融着工程
(6)凝集粒子を熱エネルギーにより熟成して形状調整を行い、トナー粒子分散液を作製する熟成工程
(7)トナー粒子分散液を冷却する冷却工程
(8)冷却したトナー粒子分散液より当該トナー粒子を固液分離し、トナー粒子表面より界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程
(9)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程から構成され、必要に応じて
(10)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添処理工程
を加えることができる。
本発明において、「水系媒体」とは、水50~100質量%と、水溶性の有機溶媒0~50質量%とからなる媒体をいう。
水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒を使用することが好ましい。
(1)着色剤粒子分散液調製工程
着色剤粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
この着色剤粒子分散液調製工程において調製される着色剤粒子分散液中の着色剤微粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で10~300nmの範囲内とされることが好ましい。
この着色剤粒子分散液中の着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800(大塚電子社製)」で測定されるものである。
着色剤は、後述の非晶性樹脂粒子分散液調製工程においてミニエマルション法を用いてあらかじめ非晶性樹脂を形成するための単量体溶液に溶解又は分散させることによってトナー粒子中に導入してもよい。
(2)ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、当該ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解又は分散させて油相液を調製するとともに、界面活性剤を含有する水系媒体(水相)を用意し、油相液又は水相に無機アルカリ化合物又は有機アルカリ化合物を添加した状態で、油相液を水相中に添加し、機械的な剪断力、例えば高速撹拌、超音波照射などを行って乳化して油滴を形成した後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。
また、上記の油相液に水相を添加するいわゆる転相乳化法を用いることもできる。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50~2000質量部の範囲内であることが好ましい。
水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
使用される界面活性剤としては、例えば上述の界面活性剤と同様のものを挙げることができる。
油相液の調製に使用される有機溶媒としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒の使用量は、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、通常1~300質量部、好ましくは1~100質量部、さらに好ましくは25~70質量部の範囲内である。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、トナー粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に層流の撹拌状態で昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。
このウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程において得られるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子の平均粒子径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲にあることが好ましい。
なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
(3)未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
未変性結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程と同様にして、未変性結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解又は分散させて油相液又は水相に無機アルカリ化合物又は有機アルカリ化合物を添加した状態で、油相液を水相中に添加し、機械的な剪断力、例えば高速撹拌、超音波照射などを行って乳化して油滴を形成した後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。
水系媒体、界面活性剤、有機溶媒等については、上記と同様である。
(4)非晶性樹脂粒子分散液調製工程
非晶性樹脂がスチレン・アクリル樹脂である場合、非晶性樹脂粒子分散液は、臨界ミセル形成濃度(CMC)以上の濃度の界面活性剤を含有した水系媒体に添加し、非晶性樹脂となるスチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体を加え、撹拌を行いつつ所望の重合温度で水溶性重合開始剤を加え、重合を行うことにより、非晶性樹脂粒子分散液を調製することができる。
一方、同様に非晶性樹脂がスチレン・アクリル樹脂である場合、非晶性樹脂粒子分散液は、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性樹脂となるスチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体に必要に応じて離型剤や荷電制御剤などのトナー構成成分を溶解又は分散させた単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させることにより、非晶性樹脂粒子分散液を調製することもできる。なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。このような非晶性樹脂粒子分散液調製工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において形成させる非晶性樹脂微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成のものとすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した第1樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する方法を採用することができる。
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
(重合開始剤)
使用される重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を使用することができる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルなどの過酸化物類;2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール-2,2′-アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、水溶性重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸を好ましく用いることができる。また、重合開始剤としては、過硫酸塩とメタ重亜硫酸塩、過酸化水素とアスコルビン酸のようなレドックス重合開始剤を用いることもできる。
(連鎖移動剤)
非晶性樹脂粒子分散液調製工程においては、非晶性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において得られる非晶性樹脂微粒子の平均粒子径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
(5)凝集、融着工程
この工程は、上記の工程で形成した着色剤微粒子、非晶性樹脂微粒子、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子及び未変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子を、水系媒体中で凝集、融着させるものである。この工程では、水系媒体中に非晶性樹脂粒子分散液、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液を添加して、これらの微粒子を凝集、融着させる。
着色剤微粒子、非晶性樹脂微粒子、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子及び未変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子を凝集、融着する具体的な方法としては、水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加し、次いで、非晶性樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ、離型剤、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂及び未変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子の融解ピーク温度以上の温度に加熱することによって、着色剤微粒子、非晶性樹脂微粒子、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子及び未変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子などの微粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進め、所望の粒子径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う方法である。
この方法においては、凝集剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くして速やかに結着樹脂に係る非晶性樹脂微粒子のガラス転移点以上の温度に加熱することが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によっては粒子の凝集状態が変動して粒径分布が不安定になったり、融着させた粒子の表面性が変動したりする問題が発生することが懸念されるためである。この昇温までの時間としては通常30分間以内であることが好ましく、10分間以内であることがより好ましい。また、昇温速度としては1℃/分以上であることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定されるものではないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、反応系がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該反応系の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、トナー粒子の成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上させることができる。
(凝集剤)
使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
(6)熟成工程
この工程は、具体的には、凝集粒子を含む系を加熱撹拌することにより、凝集粒子の形状を所望の平均円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間を制御して調整し、所望の形状を有するトナー粒子を形成する工程である。この工程においては、熱エネルギー(加熱)によりトナー粒子の形状制御を行うことが好ましい。
(7)冷却工程~(9)乾燥工程
冷却工程、濾過、洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。
(10)外添処理工程
この外添処理工程は、乾燥処理したトナー粒子に、必要に応じて外添剤を添加、混合する工程である。
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー粒子に粉体状の外添剤を添加して混合する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を用いることができる。
以上のトナーの製造方法によれば、上記のトナーを製造することができる。
[現像剤]
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15~100μmの範囲内のものが好ましく、25~80μmの範囲内のものがより好ましい。
[画像形成装置]
本発明のトナーは、一般的な電子写真方式の画像形成方法に用いることができ、このような画像形成方法が行われる画像形成装置としては、例えば静電潜像担持体である感光体と、トナーと同極性のコロナ放電によって当該感光体の表面に一様な電位を与える帯電手段と、一様に帯電された感光体の表面上に画像データに基づいて像露光を行うことにより静電潜像を形成させる露光手段と、トナーを感光体の表面に搬送して前記静電潜像を顕像化してトナー像を形成する現像手段と、当該トナー像を必要に応じて中間転写体を介して転写材に転写する転写手段と、転写材上のトナー像を加熱定着させる定着手段を有するものを用いることができる。
また、本発明のトナーは、定着温度(定着部材の表面温度)が100~200℃とされる比較的低温のものにおいて好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1の調製]
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、当該反応容器の内温を80℃に昇温させた。昇温後、得られた混合液に過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液を添加し、得られた混合液の温度を再度80℃とした。当該混合液に、下記組成からなる単量体混合液1を1時間かけて滴下後、80℃にて前記混合液を2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液a1を調製した。
(単量体混合液1)
スチレン 480質量部
n-ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
(2)第2段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、当該溶液を80℃に加熱後、80質量部の樹脂微粒子の分散液a1(固形分換算)と、下記組成からなる単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた単量体混合液2とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック株式会社製、「CLEARMIX」は同社の登録商標)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。下記ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステルは、離型剤であり、その融点は85℃である。
(単量体混合液2)
スチレン 285質量部
n-ブチルアクリレート 95質量部
メタクリル酸 20質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部
ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル 190質量部
次いで、前記分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、得られた分散液を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液a2を調製した。
(3)第3段重合
さらに、樹脂微粒子の分散液a2にイオン交換水400質量部を添加し、十分に混合した後、得られた分散液に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記組成からなる単量体混合液3を1時間かけて滴下した。滴下終了後、前記分散液を2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(スチレン・アクリル樹脂)からなる非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1を調製した。
(単量体混合液3)
スチレン 307質量部
n-ブチルアクリレート 147質量部
メタクリル酸 52質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部
得られた非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1について物性を測定したところ、非晶性樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は220nmであり、ガラス転移温度(Tg)は46℃であり、重量平均分子量(Mw)は32000であった。
[結晶性ポリエステルジオール〔1〕の合成]
冷却管、撹拌機、窒素導入管及び減圧装置を装着した反応容器中に、ジカルボン酸成分:テトラデカン二酸883質量部、ジオール成分:1,4-ブタンジオール328質量部、及び、テトラブトキシチタネート2質量部を入れ、180℃に昇温し、同温度で窒素気流下、生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで、220℃まで徐々に昇温しながら窒素気流下、水を留去しながら5時間反応させた。さらに、0.007mmHg~0.0026MPaの減圧下において水を留去しながら反応させ、酸価が0.1mgKOH/gになった時点で取り出し、結晶性ポリエステルジオール〔1〕を得た。
結晶性ポリエステルジオール〔1〕の重量平均分子量(Mw)は8000、融点は77℃であった。
[結晶性ポリエステルジオール〔2〕~〔5〕の合成]
上記の結晶性ポリエステルジオール〔1〕の合成において、下記表Iの処方にしたがったこと以外は同様にして、結晶性ポリエステルジオール〔2〕~〔5〕を得た。また、得られた結晶性ポリエステルジオールについて、重量平均分子量(Mw)及び融点を下記表Iに示した。
Figure 0007147392000001
[ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂U-1の合成]
冷却管、撹拌機、温度計及び窒素導入管を装着した反応容器中に、脱水メチルエチルケトン500質量部、結晶性ポリエステルジオール〔1〕486質量部を加え、窒素気流下において60℃、300rpmで1時間撹拌を行い、溶解させた後、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート15質量部を加え、80℃で10時間反応を行い、さらにメチルエチルケトンを留去し取り出した。これをウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂U-1とした。
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂U-1の数平均分子量(Mn)は17000、重量平均分子量(Mw)は36000であった。
[ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂U-2~U-5の合成]
結晶性ポリエステルジオール〔1〕を結晶性ポリエステルジオール〔2〕~〔5〕に変えた以外はウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂U-1の合成と同様の手法で、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂U-2~U-5を得た。
また、得られたウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂について、重量平均分子量(Mw)及び融解ピーク温度を下記表IIに示した。
Figure 0007147392000002
[ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液UED-1の調製]
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂U-1を100質量部、メチルエチルケトン400質量部に加え、撹拌しながら70℃に加熱して溶解させた。さらにトリエチルアミン1.5質量部を加えて中和を行い、これにより油相を調製した。
一方、脱イオン水900質量部にドデシル硫酸ナトリウム0.8質量部を溶解させて水相を得た。
この水相を撹拌しながら油相を徐々に加えた後、高速撹拌を行い、得られた乳化液をレーザー式粒度分布測定装置「LA-920」(堀場製作所社製)を用いて粒径を測定し、粒径が変動しなくなった時点で高速撹拌を終了した。この後、減圧下において乳化液からメチルエチルケトンを除去することにより、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液UED-1を調製した。
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液UED-1における微粒子の平均粒径は200nm、固形分は22%であった。
[ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液UED-2~UED-5の調製]
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂U-1をウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂UU-2~U-5に変更した以外は、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液UED-1と同様の調製方法で、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液UED-2~UED-5を調製した。固形分は全て22%であった。
[未変性結晶性ポリエステル樹脂C-1の合成]
窒素導入管、脱水管、撹拌拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに下記の重縮合系樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒としてTi(OBu) 0.4質量部を入れ、180℃で4時間反応させた。
・セバシン酸:450質量部
・1,4ブタンジオール:125質量部
その後、毎時10℃で210℃まで昇温し、210℃で5時間保持した後、減圧下(8kPa)にて1時間反応させることで未変性結晶性ポリエステル樹脂C-1を得た。得られた未変性結晶性ポリエステル樹脂C-1は、数平均分子量(Mw)が20000、融点が66℃であった。
[未変性結晶性ポリエステル樹脂C-2の合成]
窒素導入管、脱水管、撹拌拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに下記の重縮合系樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒としてTi(OBu) 0.4質量部を入れ、180℃で4時間反応させた。
・テトラデカン二酸:574質量部
・1,4ブタンジオール:125質量部
その後、毎時10℃で210℃まで昇温し、210℃で5時間保持した後、減圧下(8kPa)にて1時間反応させることで未変性結晶性ポリエステル樹脂C-2を得た。得られた未変性結晶性ポリエステル樹脂C-2は、数平均分子量(Mw)が21500、融点が78℃であった。
[未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液CED-1の調製]
未変性結晶性ポリエステル樹脂C-1を30質量部溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の未変性結晶性ポリエステル樹脂C-1の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が200nmの結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液(未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液)CED-1を調製した。
[未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液CED-2の調製]
前記未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液CED-1の調製において、未変性結晶性ポリエステル樹脂C-1の代わりに未変性結晶性ポリエステル樹脂C-2を用いた以外は同様の手法で、結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液(未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液)CED-2を得た。未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液CED-2における結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は200nmであった。なお、体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法により測定した。
[着色剤粒子分散液Cy1の調製]
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)420質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の水系分散液(着色剤粒子分散液)Cy1を調製した。
得られた着色剤粒子分散液Cy1について、着色剤粒子の体積基準のメジアン径(d50)は110nmであった。
[トナー1の作製]
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、コア用非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1を315質量部(固形分換算)、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液UED-1を14.32質量部(固形分換算)、未変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液CED-1を14.32質量部(固形分換算)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩を樹脂比で1質量%(固形分換算)及びイオン交換水2000質量部を投入した。室温下(25℃)下で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
さらに、着色剤粒子分散液Cy1を30質量部(固形分換算)投入し、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解させた溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。3分間放置した後、60分間かけて80℃まで昇温し、80℃に到達後、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液UED-1を14.32質量部(固形分換算)及びイオン交換水74質量部を投入した。
粒子径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整して、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)により測定した体積基準のメジアン径が6.0μmになるまで成長させた。
次いで、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解させた水溶液を添加して、粒子径の成長を停止させた。次いで、昇温して80℃の状態で撹拌し、トナー母体粒子の平均円形度が0.965になるまで粒子の融着を進行させ、下記の洗浄・乾燥工程を行った。
<洗浄・乾燥工程>
凝集・融着工程にて生成したトナー母体粒子の分散液を、バスケット型遠心分離機を用いて、固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、35℃のイオン交換水で洗浄後、25%の水酸化ナトリウム水溶液にてpHが4.0になるまで調整した(Net強度 0.10相当)。前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後、「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子1」を作製した。
<外添剤処理工程>
上記の「トナー母体粒子1」に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナー1を作製した。
[トナー2~トナー5の作製]
前記トナー1の作製において、洗浄時の水酸化ナトリウムによるpHを下記表IIIのように変更した以外は、トナー1と同様にして、トナー2~トナー5を作製した。
Figure 0007147392000003
[トナー6~トナー23の作製]
前記トナー1の作製において、トナー構成を下記表IVのように変更した以外は同様にして、トナー6~トナー23を作製した。
Figure 0007147392000004
[現像剤1~23の作製]
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子を5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成し、体積基準メジアン径40μmのキャリアを得た。
キャリアの体積基準メジアン径は、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「へロス・アンド・ロドス(HELOS & RODOS)」(シンパティック社製)により測定した。
上記キャリアにトナー1~トナー23をそれぞれトナー濃度が7質量%になるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器械株式会社)に投入し、回転速度45rpmで30分間混合し現像剤1~現像剤23を作製した。
[トナーの軟化点]
前記で作製したトナーの軟化点を、下記に示すフローテスターによって測定した。
具体的に、まず、20℃、50%RHの環境下において、前記で作製した各トナー1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP-10A」(島津製作所社製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作成した。
次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetを、軟化点とし、下記表Vに示した。
[S130及びθ130の算出方法]
前記で作製した各トナーについて、下記方法によりS130及びθ130を算出した。
(動的粘弾性の歪み分散測定)
トナーの動的粘弾性の歪み分散測定は、TAインスツルメント社製ARES-G2を使用して行った。まず、トナー粉体0.2gを圧縮成型機にて、20MPaの圧力を30秒印加して、厚さ2.0mm±0.3mm、1cmφのペレットを作製した。
次に、ペレットの上側を8mmφのアルミディスポザブルパラレルプレート、下側を25mmφのアルミディスポザブルパラレルプレートにセットし、130℃に昇温した後、所定のギャップまで圧縮し、上側のパラレルプレートにはみ出た溶融体をトリミングした。
初期のノーマルフォースが0になるようにサンプルをセットした。そして、その後の測定においては、自動テンション調整(Auto Tension Adjustment ON)にすることで、ノーマルフォースの影響をキャンセルする。測定条件は、以下のように設定し、図4に示すように各歪み振幅につき歪みを3周期分印加し、その際の応力を測定した。
1. 直径8mmのパラレルプレートを用いる
2. 測定ギャップを1mmとする
3. 周波数(Frequency)を1Hzとする
4. 印加する歪み振幅(Strain)を1.0%(Initial)、1.5%、2.5%、4%、6%、10%、16%、25%、40%、62%、100%、158%、250%、400%、500%(Final)に設定する。
(応力歪み曲線の分析)
上記の動的粘弾性の歪み分散測定において、歪み振幅100%で歪みを1周期分印加した際の応力のデータを採取し、横軸に歪みγを、縦軸に応力σをとり、この際、歪みγの100%分の目盛りが応力σの1500Pa分の目盛りに等しくなるようにして、応力歪み曲線を作成する。歪み振幅100%における残り2周期分についても、同様にして応力歪み曲線を作成し、計3周期分の応力歪み曲線を得た。図5にトナー1の応力歪み曲線を示した。
各曲線について、TRIOS(TAインスツルメント株式会社製)により応力σの積分値[Pa]を算出し、曲線3周期分の応力σの積分値を平均化し、S130[Pa]を算出した。
また、図3に示すように、応力歪み曲線の中心点(0,0)から最も距離が長くなる点A(a,b)を特定し、当該点Aと中心点を直線で結び、当該直線を外挿して応力歪み曲線を交わる点をBとして、点Aと点B(中心点を通る)を結んだ直線を長径とする。短径はその長径に対して、垂直に交わる直線と応力歪み曲線が交わる2点を結んだ直線をさす。傾きθは、長径と横軸のなす角度をいい、長径をなす端点A(a,b)の座標値からtanθ=|b|/|a|を求めることで算出できる。曲線3周期分のθを平均化し、θ130[°]とした。得られたS130及びθ130を下記表Vに示した。
[θ70の算出方法]
前記で作製した各トナーについて、下記方法によりθ70を算出した。
前記<S130及びθ130の算出方法>の(動的粘弾性の歪み分散測定)の項と同様にして、下記条件Aで動的粘弾性の歪み分散測定を行った。なお、下記条件A中、「歪み振幅:1.0~500%」は、印加する歪み振幅を1.0%(Initial)、1.5%、2.5%、4%、6%、10%、16%、25%、40%、62%、100%、158%、250%、400%、500%(Final)に設定することを意味する。図4に示すように各歪み振幅につき歪みを3周期分印加し、その際の応力を測定した。
≪条件A≫
(1)温度:130℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
(2)温度:100℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
(3)温度:70℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~100%
上記条件A(3)の動的粘弾性の歪み分散測定において、歪み振幅100%で歪みを3周期分印加した際の応力のデータを採取し、各周期分について、横軸に歪みγを、縦軸に応力σをとり、この際、歪みγの100%分の目盛りが応力σの250000Pa分の目盛りに等しくなるようにして、応力歪み曲線を作成し、計3周期分の応力歪み曲線を得た。これについて、<S130及びθ130の算出方法>の(応力歪み曲線の分析)の項と同様にして、θ70[°]を算出した。得られたθ70を下記表Vに示した。
[評価]
<アンダーオフセット温度(低温定着性)>
画像形成装置として、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、市販のフルカラー複合機「bizhub PRO(登録商標)C1100」(コニカミノルタ株式会社製)を、定着上ベルト及び定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用いた。記録材「mondi 90g/m」(mondi社製)上に、トナー付着量8.0g/mのベタ画像を、表面温度を120~170℃の範囲にて、定着速度460mm/secで出力する試験を、定着温度を1℃刻みで減少させるよう変更しながら、コールドオフセットが発生するまで繰り返し行い、コールドオフセットが発生しなかった定着上ベルトの最低の表面温度を調査し、これを定着下限温度として低温定着性を評価した。各試験において、定着温度とは定着上ベルトの表面温度をいい、定着下ローラーの表面温度は、常に定着上ベルトより20℃低い温度に設定した。定着下限温度が低いほど低温定着性に優れることを示す。本評価においては、145℃未満である場合を合格とした。
(評価基準)
○:135℃以下
△:136℃以上145℃未満
×:145℃以上
<定着分離性>
「bizhub(登録商標) C754」(コニカミノルタ株式会社製)の改造機を使用し、常温常湿環境(温度25℃、相対湿度50%RH)において一晩放置して調湿した記録材「金藤85g/m T目」(王子製紙株式会社製)上に、常温常湿環境(温度25℃、湿度50%RH)において、ニップ幅11.2mm、定着時間34msec、定着圧力133kPa、上ベルトが150℃となる定着温度で、トナー付着量4.0g/mの全面ベタ画像を、先端余白を8mmとして出力する試験を、先端余白を7mm、6mm・・・と1mm単位で減少させるよう変化させながら、紙詰まり(ジャム)が発生するまで繰り返し行い、紙詰まり(ジャム)が発生しなかった最小の先端余白を調査し、これによって定着分離性を評価した。最小の先端余白が小さい方が定着分離性に優れることを示す。本発明においては、「◎」「○」「△」のレベルである場合を合格とする。
(評価基準)
◎:先端余白が2mm以下
○:先端余白が3mm以下
△:先端余白が4mm以下
×:先端余白が4mmを超える。
<耐ドキュメントオフセット性>
定着温度を変更することができるよう改造した「bizhub PRO(登録商標)C1100」(コニカミノルタ社製)を用い、トナー付着量11.3g/mのベタ画像を、定着温度150℃、定着線速400mm/secで定着したものを2枚出力した。得られた2枚の定着画像を、画像部と、非画像部及び画像部とが重なるように向かい合わせて重ね、重ねた部分に対して80g/cm相当になるように重りを載せ、温度60℃、湿度50%の恒温恒湿槽に3日間放置した。放置後、重ねた2枚の定着画像を剥離し、その画像欠損度合いを下記の評価基準にしたがってレベル分けし、これにより耐ドキュメントオフセット性を評価した。
本発明においては、「◎」「○」「△」のレベルである場合に耐ドキュメントオフセット性を有し、合格と判断される。
(評価基準)
◎:画像部、非画像部ともに全く画像欠損や画像移行が見られない。
○:重ねた2枚の画像を離す際に、パリッと音がし、非画像部にも僅かに画像移行が見られるが、画像欠損はなく、全く問題無いレベルである。
△:重ねた2枚の画像を離す際に、互いの定着画像の表面に画像のあれやグロス低下は発生するが、画像として画像欠損はほとんどなく許容できるレベルである。非画像部に若干の移行が見られる。
×:画像同士が接着していたため、画像部のところどころに画像欠損の白抜けが発生している。
Figure 0007147392000005
上記結果より、本発明のトナーは、比較例のトナーに比べて、低温定着性、定着分離性及び耐ドキュメントオフセット性の点で優れることが認められる。

Claims (8)

  1. 結着樹脂を含有するトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記結着樹脂が、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有し、前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル重合セグメントとウレタン重合セグメントとが結合してなるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を少なくとも含有し、前記結晶性樹脂のうち、未変性の結晶性ポリエステル樹脂の含有量をa[質量%]、前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の含有量をb[質量%]としたとき、bに対するaの比の値a/bが、0.1~1.0の範囲内であり、 温度130℃、周波数1Hz、歪み振幅1.0~500%の条件下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、歪み振幅100%における応力歪み曲線の応力の積分値をS130、長径の傾きをθ130としたとき、
    前記S130が、0Pa超350000Pa以下であり、
    前記θ130が、22°超90°未満であり、
    蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度が、0.1~0.7の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
  2. 前記S130が、0Pa超300000Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記θ130が、25°以上80°未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記結着樹脂が、非晶性ビニル樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記結晶性樹脂の含有量が、前記結着樹脂全量に対して3~30質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 前記静電潜像現像用トナーの軟化点が、90~105℃の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  7. 前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂単独の、示唆走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められた、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における融解ピークのピーク温度が50~90℃の範囲内であることを特徴とする請求項又は請求項に記載の静電潜像現像用トナー。
  8. 下記各種条件A下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、下記条件A(3)下の歪み振幅100%における応力歪み曲線の長径の傾きをθ70としたとき、前記θ70が30°以上であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
    <条件A>
    (1)温度:130℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
    (2)温度:100℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~500%
    (3)温度:70℃、周波数:1Hz、歪み振幅:1.0~100%
    の順に測定する。
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