JP7145388B2 - 車両用シート構造 - Google Patents
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Description
このS字状のカーブは生理的前湾と言われ、頚椎が約20度前湾し、胸椎が約20~40度後湾し、腰椎が約35~60度前湾することによって形成されている。
それ故、シートに着座している乗員(以下、単に乗員と略す。)の生理的前湾を歩行状態と同様に維持することにより、骨格における椎間板の負担等の違和感を最小化し、長時間の車両操作を可能にすることが可能である。
車両の旋回走行時には、乗員に対して旋回方向外側に向かう慣性力(遠心力)が作用することから、乗員の旋回方向外側の股関節が外旋すると共に下肢は外転している。
図11に示すように、大腿骨sfは、内転筋群を介して骨盤と連結されている。
骨盤は、腸骨s1、恥骨s2、坐骨s3、仙骨s4の4つの骨から構成され、仙骨s4は、背骨の延長線上に位置している。
一方、内転筋群は、大内転筋m1、短内転筋m2、長内転筋m3、恥骨筋m4、薄筋m5等から構成され、それらの一端が骨盤の腸骨の下部に連結されている。
それ故、旋回走行時に股関節が外旋した場合、内転筋群を介した下肢の外転に伴って腸骨s1が前方に引っ張られて骨盤が後傾する。骨盤が後傾すると腰椎が屈曲するため脊椎が後湾し、乗員の生理的前湾が崩れることになる。
特許文献1の車両用シートは、シートのクッションパンに左右の端部側程高くなる左部傾斜面と右部傾斜面とを設け、シートに着座した乗員の左右の座骨に左部傾斜面及び右部傾斜面の双方からの反力を作用させるように構成されている。
この左右の座骨に作用するシートからの反力によって、左右方向に沿って揺動した乗員の骨盤位置をシートクッションの車幅方向中央部分に戻している。
しかし、特許文献1の車両用シートでは、乗員の骨盤の移動、所謂姿勢悪化の運動を利用してセンタリング用反力を発生させているため、前提として姿勢の悪化が必要である。
姿勢が悪化した場合、前述したように、骨盤の移動に伴って乗員の生理的前湾が崩れ、操作性の低下等を招くことが懸念される。
しかし、乗員の骨盤を左右両側から常に保持する場合、圧迫感等によって乗員が違和感を覚え、運転快適性を損なう虞がある。
即ち、乗員姿勢のホールド性を確保しつつ乗員の違和感を解消することは容易ではない。
これにより、乗員の座り心地を損なうことなく、旋回走行時における乗員の股関節の外旋を抑制している。
前記第1支持部の車幅方向外側端部から外側に延び且つ上方に突出する突出部が設けられたため、車両の旋回走行時、第1支持部の上下方向の沈み込み量を突出部の左右方向の変位量に変換することにより、旋回方向外側の大腿部に対して突出部から内旋方向の反力を作用させることができる。
前記支持領域は、第1,第2支持部の間に第1支持部の剛性と第2支持部の剛性の間の剛性を有する中間支持部を備えているため、隣り合う支持部の剛性の格差を低減し、乗員の座り心地を向上することができる。
支持領域は、第1支持部と第2支持部との間に第1支持部の剛性と第2支持部の剛性の間の剛性を有する中間支持部を備えているため、隣り合う支持部の剛性の格差を低減し、乗員の座り心地を向上することができる。
この構成によれば、左右何れの旋回であっても、旋回方向外側の大腿部に対して内旋方向の反力を作用させることができる。
この構成によれば、乗員下肢の運動機能を維持することにより、各種ペダルの操作性を確保することができる。
この構成によれば、突出部の左右方向の変位量を増加することにより、突出部から内旋方向の反力を増加することができる。
図1に示すように、本実施形態の車両用シート1は、着座した乗員(以下、単に乗員と略す。)Dの頭部を受けるヘッドレスト2と、シート1を車室床面に固定する脚機構3と、乗員Dの脊椎(骨)に対応した部位(背部)を支持するシートバック10と、乗員Dの坐骨に対応した部位(臀部)を支持するシートクッション20等を主な構成要素としている。以下、シート1に着座した乗員Dの視線方向を、前方とし、シート1に着座した乗員Dの左側方向を、左方として説明する。
シート1の剛性は、弾性特性に相当し、また、ばね定数は作用させた荷重を変位量で除することにより求められるため、シート1の剛性をばね定数によって表すことが可能である。それ故、このシート1は、同一の荷重を作用させた場合において、シート構成部材(弾性部材及びクッション部材)自体の変形量DS、フレーム構造体(フレーム)の変形量DFとしたとき、次式(1)の条件を満足するように構成されている。
20≦DS/DF …(1)
特に、フレーム構造体のばね定数を70N/mm以上に設定することで、乗り心地を一層向上させている。
具体的なばね定数の演算については、本出願人が既に出願している特許出願(例えば、特願2017-145340)を含め種々の手法が存在するため、詳細な説明を省略する。
図1,図2に示すように、脚機構3は、車両床面に直接固定され、脚機構3と床面との間に、実質的にクッション性を与える部材は配設されていない。
脚機構3は、床面に対してシートバック10及びシートクッション20を前後にスライド可能にするスライド機構を備えている。このスライド機構は、左右1対のスライドレール5に沿ってスライド可能な1対のスライダ4を乗員Dが所望する位置で係止可能に形成されている。
弾性部材12は、網状に張り渡された複数の金属ワイヤから構成されたばねであり、その周囲が縦フレーム11に固定されている。この金属ワイヤの弾性変形によって乗員Dの背部を支持している。
本実施例のクッション部材13には、他の領域よりも剛性が高く設定された寛骨支持部と胸郭支持部とが設けられている(何れも図示略)。
寛骨支持部は、寛骨の後端部相当の領域を後方から支持することにより骨盤を保持している。胸郭支持部は、乗員Dの第7胸椎に相当する領域を後方から支持することにより胸郭を保持している。これにより、車両の静的状態において、乗員Dがシートバック10に凭れたとき、乗員Dの背骨はS字状の生理的前湾(脊柱湾曲)の状態で保持される。
図2に示すように、シートクッション20は、構造的強度を付与する左右1対の金属製サイドフレーム21と、金属製弾性部材22と、ウレタン製のクッション部材23と、サイドフレーム21の前端部分に左右に亙って掛け渡されたチルトパン24と、これらを覆う表皮(図示略)等を備えている。
弾性部材22は、複数の金属製Sばねであり、その前後端がサイドフレーム21に固定されている。これにより、乗員Dが着座したとき、弾性部材22が弾性変形し、乗員Dの臀部を下方から支持している。
クッション部材23は、サイドフレーム21及び弾性部材22に支持され、これらを覆うように配設されている。このクッション部材23は、弾性変形特性と振動減衰特性を有している。クッション部材23の左右両端部には、前後に亙って上方に突出した左右1対のサイドサポート23aが形成されている。
これにより、乗員Dが着座したとき、クッション部材23は、上下方向に圧縮変形され、弾性部材22と協働して乗員Dの臀部及び大腿部を支持している。乗員Dが離席したとき、圧縮変形したクッション部材23は、元の形状に復帰する。
車両の旋回走行時、乗員Dの股関節が外旋して下肢が外転するため、骨盤が後傾する。骨盤が後傾した結果、腰椎が屈曲して乗員Dの生理的前湾が崩れる現象が生じる。
外旋抑制機能とは、車両の旋回走行時、乗員Dの股関節に内旋方向の運動モーメントを作用させることで、股関節の外旋を抑制する機能である。
支持領域Aは、クッション部材23の後端に対して基準線L上の基準位置HP(乗員Dのヒップポイント)から前側程基準線Lから離隔する方へ移行する左側支持領域A1及び右側支持領域A2からなり、略V字状に構成されている。
左側支持領域A1及び右側支持領域A2は、基準線Lに対して線対称構造であるため、以下、主に左側支持領域A1について説明する。
第2支持部32の剛性よりも第3支持部33の剛性が高く設定され、第3支持部33の剛性よりも第1支持部31の剛性が高く設定されている。
本実施例では、第1支持部31のばね定数を約5N/mm、第2支持部32のばね定数を約2N/mm、第3支持部33のばね定数を約3N/mmに設定している。
尚、サイドサポート23a、左側支持領域A1の上側部分よりも下側の部分(下側支持部)及び第1,第3支持部31,33以外の領域については、第2支持部32と同様の剛性(ばね定数)に設定され、第2支持部32と一体的に形成されている。
第1支持部31の前部には、第1支持部31の左端から左側に延び且つ上方に突出する突出部34が設けられている。この突出部34は、第1支持部31の左端からサイドサポート23aの頂部近傍位置に亙って延設されている。
本実施例では、突出部34と第1支持部31が、同一仕様で一体的に形成されている。
第3支持部33は、左側支持領域A1に対する左右方向の占有率が前側程大きくなるように形成されている。それ故、乗員Dに当接する低剛性領域(第2,第3支持部S2,S3)が、前側程拡大している。
また、第3支持部33は、第2支持部32よりも硬度及び反発弾性率が高くなるように構成され、第1支持部31は、第3支持部33よりも硬度及び反発弾性率が高くなるように構成されている。
車両が右旋回する場合を例に説明する。
図7に示すように、車両が右旋回する際、乗員Dに対して左向きの慣性力Fが作用し、股関節の外旋及び大腿部の外転が誘発される。
しかし、乗員Dの臀部及び大腿部の基準線Lから離間した外側領域に高剛性の第1支持部31が配設され且つ第1支持部31よりも基準線Lに接近した大腿の内側領域に第1支持部31よりも低剛性の第2支持部32が配設されるため、車両の静的状態から臀部及び大腿部の内側部分には上方に向かう反力f1'が作用し、臀部及び大腿部の外側部分には上方に向かう反力f1が作用し、且つ反力f1'よりも反力f1を大きくすることで、股関節の外旋を抑制している。
しかも、旋回走行時には、第1支持部31が乗員Dの大腿部の押圧により押し下げられるため、突出部34が、第1支持部31の右端部を回転中心としたてこの原理によって大腿部に当接して基準線Lに向かう反力f2を作用させる。
これら反力f1,f1',f2によって乗員Dの大腿部を内転させる運動モーメントMを発生させることができ、股関節に内旋方向の力を付与し、乗員Dの股関節の外旋を更に効果的に抑制することができる。
尚、車両が左旋回する場合、右側支持領域A2において、同様の現象が生じている。
以下、実験結果について説明する。
尚、図8(a)は、車体前後方向におけるシート後端に相当する基準位置HPにおける車幅(左右)方向の撓み量、図8(b)は、車体前後方向におけるシート中央に相当する基準位置HPよりも100mm前方位置の車幅方向撓み量、図8(c)は、車体前後方向におけるシート前端に相当する基準位置HPよりも250mm前方位置の車幅方向撓み量、図8(d)は、シートの車幅方向中央における前後方向の撓み量を示している。
図8(b),図8(c)に示すように、クッション部材23の前端において撓み量が大きいため、乗員Dの下肢の自由度が大きく、各種ペダルの操作性を向上している。
図8(d)に示すように、前方程撓み量が大きくなるため、クッション部材23からの反力を乗員Dの大腿部に効果的に作用させている。
作用、効果の説明にあたり、検証実験を行った。
この検証実験では、実施例1と同仕様のシートと比較例のシートを準備し、車両の左旋回走行時、シートクッションの圧力分布と、足周辺の圧力分布とを計測した。
比較例のクッション部材は、全体に亙って一様な剛性に設定されている。
実施例1のシートでは、図9(a)に示すように、左右の坐骨周辺に夫々均等な荷重が掛かっていることから、右側股関節の外旋が抑制され、骨盤の後傾が発生していないことが分かる。図9(b)に示すように、踵とアクセルペダル踏部との左右幅が小さい(75mm)ことから、大腿部の外転が抑制され、乗員によるアクセルペダル操作性が維持されている。尚、高圧力程、高密度のハッチングで示している。
比較例のシートでは、図10(a)に示すように、左右の坐骨周辺に掛かる荷重が不均等であり、坐骨周辺の荷重が小さく広範囲に亙っていることから、右側股関節が外旋し、骨盤が後傾していることが分かる。図10(b)に示すように、踵とアクセルペダル踏部との左右幅が大きい(110mm)ことから、大腿部の外転が発生し、乗員によるアクセルペダル操作性が低下している。
これにより、乗員Dの座り心地を損なうことなく、旋回走行時における乗員の股関節の外旋を抑制している。
1〕前記実施例においては、支持領域を剛性が異なる3つの支持部に区分した例を説明したが、少なくとも支持領域の外側部分を高剛性の第1支持部で支持すれば良く、第1支持部と第2支持部の2つの支持部に区分しても良く、第1支持部と第2支持部の間を2つ以上の異なる剛性の支持部で支持しても良い。
第1支持部以外の第2,第3支持部についても、前後方向に複数分割可能である。
10 シートバック
20 シートクッション
23 クッション部材
31 第1支持部
32 第2支持部
33 第3支持部(中間支持部)
34 突出部
A 支持領域
A1 左側支持領域
A2 右側支持領域
L 基準線
Claims (4)
- シートクッションと、シートバックとを備えた車両用シート構造において、
前記シートクッションの上部構造が、着座乗員の大腿部及び臀部に当接して下方から支持すると共に平面視にて前記シートクッションの車幅方向中央の基準線に対して略左右対称に形成された支持領域を有し、
前記支持領域は、前記基準線から離隔する側に位置する第1支持部と、前記第1支持部よりも前記基準線に近接する側に位置する第2支持部と、前記第1,第2支持部の間に位置し且つ前方ほど車幅方向外方に拡大している中間支持部とを備え、
前記第1支持部の剛性が第2支持部の剛性よりも高く設定され、中間支持部の剛性は第1支持部の剛性と第2支持部の剛性の間に設定され、
前記第1支持部は、平面視において前方且つ車幅方向外方に延びてシートクッションの前端部まで延設され、
前記第2支持部と中間支持部の境界部は、平面視において支持領域の延伸方向と略同方向に延び、前記第1支持部と中間支持部との境界部は、第2支持部と中間支持部との境界部よりも平面視において車幅方向外方に傾斜状に設けられ、
前記第1支持部の前部における車幅方向外側端部から外側に延び且つサイドサポートの頂部近傍位置まで上方に突出する突出部が設けられたことを特徴とする車両用シート構造。 - 前記支持領域は、前記シートクッションの後端に対して前記基準線上の位置から前側程前記基準線から離隔する方へ移行する左側支持領域及び右側支持領域から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート構造。
- 前記左側支持領域及び右側支持領域のうち少なくとも一方は、前記シートクッションの平面視にて車幅方向における前記第1支持部の占有比率が前記第2支持部に比べて前側程小さくなるように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の車両用シート構造。
- 前記第1支持部は、前記第1支持部よりも剛性が低い下側支持部の上に載置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート構造。
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