JP7142090B2 - ガラス積層体、その製造方法、及びそれを用いた表示装置の前面板 - Google Patents

ガラス積層体、その製造方法、及びそれを用いた表示装置の前面板 Download PDF

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Description

本発明は、ガラス基材を含むガラス積層体、その製造方法、及びそれを用いた表示装置の前面板に関する。
各種電子機器や車載装置等のディスプレイ装置には、視認性を向上させるための反射防止機能や耐指紋機能等を付与したり、使用時の耐久性を向上するためにハードコート層や耐傷付き層を設けたりすることが行われている。また透明部分の材料としては一般的にガラス材料が広く用いられているが、脆性材料であるガラスが割れた際の破片が飛び散ることを防止するために、飛散防止性を付与することが行われている。例えば、特許文献1には、ガラス板基材の片面に粘着接着層を介してプラスチックフィルム層を有し、プラスチックフィルム層の表面に反射防止層が形成されている反射防止性ガラス積層体が記載されている。特許文献2には、第1基材、第1粘着層、及びハードコート層を有する飛散防止フィルムを貼り付けた曲面ガラスが記載されている。このようなガラス基材は、建材、電気製品、自動車用部品等に広く使用されており、例えば、車載ディスプレイ等の表示装置の前面板等にも用いられている。
特開平8-283045号公報 WO2017/010483号
最近、自動車の自動運転技術の進展やIoT化による情報量の増加により、車載ディスプレイ等の表示装置の大型化・多画面化が進んでいる。また車載ディスプレイ等の表示装置とその周囲の機器や内装材とのデザインの一体化や、これに伴うディスプレイ表示部の、周辺デザインにあわせた曲面化等も要求されるようになってきている。ディスプレイ等の表示装置の前面板にガラス基材を用いた場合には、表面の反射防止や傷付き防止、指紋付着防止等の機能の付与に加えて、上述のデザイン上の観点から、曲面化への対応、ガラス基材のエッジ部の露出を防止すること等が求められるようになって来ている。また、ディスプレイの大型化や前面板との一体化により、例えば自動車事故の発生の際に、ディスプレイ面の破損により発生するガラスの破片により搭乗者に危害が及ぶリスクが大きくなってきている。このため、ガラス面の割れの防止や破片の飛散防止、特に保護されていない端面の微細な凹凸からの割れや飛散を防止することの必要性が高まっている。
しかしながら、特許文献1は曲面形状への積層方法が記載されておらず、平面状のガラスに、比較的接着力の低い粘着剤を用いて貼り合わせる方法が検討されている。このため、例えば平面状のフィルムをガラス基材の主面及び主面に接する端面まで廻り込んで積層したり、深い曲面形状や凹凸形状の主面に積層することが困難な方法である。また特許文献2では、曲面形状を有するガラス部材への飛散防止フィルムの積層体が示されているが、具体的な積層方法は記載されておらず、例えば、平面状のフィルムを、ガラス基材の端面まで廻り込んで積層したり、深い曲面形状や凹凸形状等を有する主面に追随させて積層することは実質的に困難である。また主にガラス基材の主面の割れや飛散防止性が検討されており、ガラス基材の端部、すなわちエッジ部の割れについては防止策が取られていなかった。さらに反射防止機能等のディスプレイ面に必要とされる高度な機能性を曲面ガラスの表面に付与するための方法も検討されていない。
本発明者らは、機能層を有する熱可塑性樹脂フィルムでガラス基材の少なくとも一方の主面と、該主面に接する端面の少なくとも一部を被覆することで、ガラス基材のエッジ部の耐割れ性が向上し、飛散が抑制されることを見出した。一方、ガラス等の無機材料と、熱可塑性樹脂等の有機材料は、熱膨張係数が大きく異なることから、機能層を有する熱可塑性樹脂フィルムでガラス基材の少なくとも一方の主面と、該主面に接する端面の少なくとも一部を被覆した場合、積層後に、熱可塑性樹脂フィルムの収縮によって、積層体の周縁部における接着層の擦れ跡の発生、エッジ部の露出、フィルム端部の剥離等のいわゆるスプリングバックや、熱可塑性樹脂フィルムや機能層のクラック等が発生し、適正な成形体が得られない場合があるという問題を見出した。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、エッジ部を含むガラス基材の全体に対する割れ防止効果が高く、所定の機能性を有するガラス積層体、その製造方法、及びそれを用いた表示装置の前面板を提供する。
本発明は、ガラス基材、接着層、及び機能性フィルムを含むガラス積層体であって、前記機能性フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム、及び熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の主面上に配置されている機能層を含み、前記機能性フィルムは、120℃クラック伸度が20%以上であり、前記ガラス基材の少なくとも一方の主面と、該主面に接する端面の少なくとも一部を、接着層を介して連続的に被覆しており、前記ガラス基材と前記機能性フィルム間の90°剥離強度が25N/25mm以上であることを特徴とするガラス積層体に関する。
前記ガラス基材は、全光線透過率が85%以上の透明ガラス板であることが好ましい。前記ガラス基材の一方又は両方の主面は、曲面部を有することが好ましい。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、アクリル樹脂、及びゴム成分を含有するグラフト共重合体粒子を含むアクリル系樹脂組成物で構成されたアクリル系樹脂フィルムであることが好ましい。
前記機能層は、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、耐指紋層、耐傷付き層、帯電防止層、紫外線遮蔽層、赤外線遮蔽層、及び表面凹凸層からなる群から選ばれる1種以上の機能層を含んでもよい。
前記接着層は、ホットメルト型接着剤、反応硬化型接着剤、及び反応硬化型ホットメルト接着剤からなる群から選ばれる一種以上の接着剤で構成されていることが好ましい。前記接着剤は、スチレンジエン系接着剤、ブチルゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、及びシリル系接着剤からなる群から選ばれる一種以上であることが好ましい。
前記ガラス積層体は、ヘイズが3.0%以下であることが好ましい。
前記ガラス積層体は、さらに加飾層を含み、前記加飾層は前記機能性フィルムが配置されているガラス基材の主面と反対側の主面の少なくとも一部を覆うように配置されていてもよい。
本発明は、また、前記のガラス積層体を用いたことを特徴とする表示装置の前面板に関する。
本発明は、また、前記のガラス積層体の製造方法であって、真空圧空成形により、ガラス基材に対して、接着層を介して機能性フィルムを積層成形する工程を含むことを特徴とするガラス積層体の製造方法に関する。
本発明によれば、エッジ部を含むガラス基材の全体に対する割れ防止効果が高く、所定の機能性を有するガラス積層体及びそれを用いた表示装置の前面板を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、エッジ部を含むガラス基材の全体に対する割れ防止効果が高く、所定の機能性を有するガラス積層体を、成形性良く作製することができる。
図1は、本発明の1以上の実施形態に係るガラス積層体の模式的断面図である。 図2はエッジ部の耐割れ性を評価した実験の結果を示しており、(a)は実施例1、(b)は比較例1、(c)は比較例2の結果である。
本発明者らは、熱可塑性樹脂フィルム、及び熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の主面上に配置されている機能層を有する機能性フィルムを用い、該機能性フィルムの120℃クラック伸度を20%以上にし、かつ該機能性フィルムとガラス基材間の90°剥離強度を25N/25mm以上にすることで、成形性よく、ガラス基材の少なくとも一方の主面と、該主面に接している端面の少なくとも一部を機能性フィルムで連続的に被覆できることを見出した。また、該機能性フィルムで、ガラス基材の一方の少なくとも主面と、該主面に接している端面の少なくとも一部を連続的に被覆することによって、エッジ部の耐割れ性が向上し、エッジ部を含むガラス基材全体の飛散が抑制されることを見出した。本発明の1以上の実施形態において、「一方の主面」(第1の主面とも記す。)は、面積が相対的に最も広い面をいい、第1の主面の反対側の面を他方の主面(第2の主面とも記す。)という。また、本発明の1以上の実施形態において、端面は、実質的に第1の主面と第2の主面に挟まれている側面と一致する。また、本発明の1以上の実施形態において、エッジ部は、主面と端面の交わり部を意味する。
図1は、本発明の1以上の実施形態に係るガラス積層体の模式的断面図である。ガラス積層体1は、ガラス基材2、接着層3、及び機能性フィルム4を含み、機能性フィルム4は、接着層3を介して、ガラス基材2の第1の主面21と、第1の主面21に接している端面22a、22bを連続的に被覆している。図1において、機能性フィルム4は、接着層3を介して、第1の主面21と、第1の主面21に接している端面22a、22bの全部を連続的に被覆しているが、第1の主面21と、第1の主面21に接している端面22a、22bの一部を連続的に被覆していてもよい。このように、端面の少なくとも一部を含む覆うことで、必ず、エッジ部も覆うことになり、それゆえ、エッジ部32a(第1の主面21と端面22aの交わり部)及びエッジ部32b(第1の主面21と端面22bの交わり部)の耐割れ性が向上する。なお、図1では、2つの端面しか示されていないが、第1の主面21に接している4つの端面の少なくとも一部、好ましくは全部を連続的に被覆する。また、機能性フィルム4は、接着層3を介して、第1の主面21と、第1の主面21に接する4つ端面の全部と、第2の主面23の一部を連続的に被覆していてもよい。
[機能性フィルム]
機能性フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム、及び熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の主面上に配置されている機能層を含む。
(熱可塑性樹脂フィルム)
熱可塑性樹脂フィルムは、通常、ガラス基材の飛散防止に用いることができるものであればよく、特に限定されないが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂、ジアセチルセルロース系樹脂、アセテートブチレートセルロース系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、トリメチルペンテン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等の熱可塑性樹脂のフィルムが用いられる。中でも、アクリル樹脂、及びゴム成分を含有するグラフト共重合体粒子を含むアクリル系樹脂組成物で構成されたアクリル系樹脂フィルムであることが好ましい。該アクリル系樹脂フィルムは、透明性、耐候性、表面硬度、及び二次成形性に優れ、種々の硬化性樹脂等で構成された機能層に対する密着性が良好であり、さらに曲面形状を含む種々の表面形状に対する追従性に優れた表面積層用の機能性フィルムを得やすい。
<アクリル系樹脂フィルム>
アクリル系樹脂フィルムは、アクリル樹脂、及びゴム成分を含有するグラフト共重合体粒子を含むアクリル系樹脂組成物で構成されている。ゴム成分を含有するグラフト共重合体粒子として、平均粒子径が20nm以上200nm以下であるグラフト共重合体粒子(A)を含むことが好ましく、グラフト共重合体粒子(A)に加えて、グラフト共重合体粒子(A)より平均粒子径が大きいグラフト共重合体粒子(B)を含んでもよい。具体的には、アクリル系樹脂フィルムにおいて、アクリル樹脂、又は、アクリル樹脂及びその他の成分を含むマトリックス中に、グラフト共重合体粒子(A)が分散して、又は、グラフト共重合体粒子(A)及びグラフト共重合体粒子(B)が分散している。
アクリル系樹脂フィルムは、透明性に優れる観点から、ヘイズ値が1.3%以下であることが好ましく、1.1%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらにより好ましく、0.6%以下であることが特に好ましい。本発明において、「ヘイズ」は、JIS K 7136:2000に準じて測定するものである。
アクリル系樹脂フィルムの破断点伸度は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらにより好ましく、40%以上が最も好ましい。なお、破断点伸度は、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の条件下、テンシロン引張試験機を用いて、チャック間距離40mm、引張速度200mm/分の条件で測定される値である。また、破断点伸度の値は、5つ以上の試験片、好ましくは5つの試験片を用いて得られた測定結果のうち、最も高い値と、最も低い値とを除いた平均値として測定される。
アクリル系樹脂フィルムの、JIS K 5600-5-4に準じて測定される鉛筆硬度は、2B以上が好ましく、B以上がより好ましく、HB以上が特に好ましい。
折り曲げ速度90°/秒にてアクリル系樹脂フィルムを180°折り曲げる折り曲げ試験において、折り曲げ部分に白化が生じにくく透明性が維持されるのが好ましく、折り曲げ部分に白化が生じず透明性が維持されるのがより好ましい。上記の折り曲げ試験は、温度23℃±2℃、湿度50%±5%において行われる。
《アクリル樹脂》
アクリル系樹脂フィルムに用いるアクリル樹脂としては、従来公知のものが使用できる。例えば、硬度、成形性の観点からは、アクリル樹脂が、アクリル樹脂の全量を100質量%とした場合、メタクリル酸メチル単位50質量%以上100質量%以下、及びその他の構成単位0質量%以上50質量%以下から構成される熱可塑性アクリル重合体を20質量%以上100質量%以下含むのが好ましい。
その他の構成単位としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、芳香族ビニル誘導体、シアン化ビニル誘導体、及びハロゲン化ビニリデン等に由来する構成単位が挙げられる。アクリル樹脂に含まれるその他の構成単位は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
アクリル酸誘導体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、及びアクリル酸グリシジル等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。
メタクリル酸誘導体としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-フェノキシエチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸グリシジル、及びメタクリル酸アダマンチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
芳香族ビニル誘導体としては、スチレン、ビニルトルエン、及びα-メチルスチレン等が挙げられる。
シアン化ビニル誘導体としては、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等が挙げられる。
ハロゲン化ビニリデンとしては、塩化ビニリデン、及びフッ化ビニリデン等が挙げられる。
アクリル樹脂の耐熱性、剛性や表面硬度等を改善するため、アクリル樹脂に対して特定の構造を有する構成単位を共重合、官能基修飾及び変性等により導入してもよい。このような特定の構造としては、例えば、特開昭62-89705号、特開平02-178310号、及びWO2005/54311等に示されているようなグルタルイミド構造、特開2004-168882号、及び特開2006-171464号等に示されているようなラクトン環構造、特開2004-307834号等に示されているような(メタ)アクリル酸単位が熱的に縮合環化して得られるグルタル酸無水物構造、特開平5-119217号に示されているようなマレイン酸無水物構造、並びにWO2009/84541号に示されるようなN-置換マレイミド構造及び非置換マレイミド構造等が挙げられる。例えば、これらの構造がアクリル樹脂に導入されることで、分子鎖が剛直となる。その結果、耐熱性の向上、表面硬度の向上、加熱収縮の低減、耐薬品性の向上等の効果が期待できる。
アクリル樹脂の製造方法は、特に限定されず、例えば、公知の懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、分散重合法等の重合法を適用可能である。また、公知のラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法のいずれを適用することも可能である。
《ゴム成分を含有するグラフト共重合体》
前述のとおり、アクリル系樹脂フィルムは、ゴム成分を含有するグラフト共重合体粒子として、グラフト共重合体粒子(A)を含むことが好ましく、必要に応じてグラフト共重合体粒子(A)に加えてさらにグラフト共重合体粒子(B)を含んでも良い。
グラフト共重合体粒子(A)は、ゴム成分である架橋エラストマー(A1)と、架橋エラストマー(A1)よりも表層側に位置するグラフトポリマー層(A2)とを備えるコアシェル構造(多層構造)を有することが好ましい。
架橋エラストマー(A1)は、公知の架橋エラストマーであってよい。好ましくは、架橋エラストマー(A1)は、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(アクリル酸エステルを主成分とした重合体からなる架橋エラストマー)である。
アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)の粒子は、架橋エラストマー層の内部に硬質又は半硬質の架橋樹脂層を備える、同心球状の多層構造を有していてもよい。このような硬質又は半硬質の架橋樹脂層としては、例えば特公昭55-27576号等に示されるような硬質の架橋メタクリル樹脂粒子、特開平4-270751に示されるようなメタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-スチレンからなる半硬質の架橋粒子、さらには架橋度の高い架橋ゴム粒子等が挙げられる。このような硬質又は半硬質の架橋樹脂層を備えることにより透明性や色調等の改善が期待できる場合がある。
グラフト共重合体粒子(A)は、前述のアクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)の粒子の存在下で、グラフトポリマー層(A2)をグラフト重合して形成される、コアシェル構造を有するのが好ましい。
グラフト共重合体粒子(A)の平均粒子径は20nm以上200nm以下であり、50nm以上150nm以下がより好ましく、50nm以上120nm以下が特に好ましい。
グラフト共重合体粒子(A)の平均粒子径が過小である場合、アクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性及び耐折曲げ割れ性が低下する傾向がある。グラフト共重合体粒子(A)の平均粒子径が過大である場合、アクリル系樹脂フィルムの透明性が悪化する傾向や、折り曲げによる白化が発生しやすくなる傾向がある。
アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)としては、アクリル酸エステルと、任意にアクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体と、アクリル酸エステルと共重合可能であり、1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体を含む単量体混合物(a-1)を重合して得られる架橋エラストマー粒子を好ましく使用できる。
アクリル酸エステル、他のビニル系単量体、及び多官能性単量体は全部を混合して1段階で重合されてもよい。また、アクリル系樹脂フィルムの靱性、耐白化性等を調節する目的で、適宜、アクリル酸エステル、他のビニル系単量体、及び多官能性単量体の組成を変化させて、或いは同一の組成のまま、アクリル酸エステルと、他のビニル系単量体と、多官能性単量体とが、2段階以上の多段階に分けて重合されてもよい。
アクリル酸エステルとしては、重合性に優れ、安価であり、Tgが低い重合体を与える等の点から、アクリル酸の脂肪族エステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素原子数が1以上22以下のアクリル酸アルキルエステルを特に好ましく用いることができる。
好ましいアクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用されてもよく、2種以上を併用されてもよい。
アクリル酸エステルの量は、単量体混合物(a-1)100質量%において50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。アクリル酸エステル量が50質量%以上であれば、アクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性や引張破断時の伸びが良好であり、二次成型時にクラックが発生しにくい。
他のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸イソボルニル、及びメタクリル酸ジシクロペンテニル等のメタクリル酸エステル;塩化ビニル、及び臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のシアン化ビニル誘導体;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、ビニルトルエン、及びα-メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体;塩化ビニリデン、及びフッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;アクリル酸;アクリル酸ナトリウム、及びアクリル酸カルシウム等のアクリル酸の塩;アクリル酸β-ヒドロキシエチル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、及びN-メチロ-ルアクリルアミド等のアクリル酸誘導体;メタクリル酸;メタクリル酸ナトリウム、及びメタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸の塩;メタクリルアミド、メタクリル酸β-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸誘導体;無水マレイン酸;N-アルキルマレイミド、及びN-フェニルマレイミド等のマレイン酸誘導体等が挙げられる。これらは1種を単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、耐候性、透明性の点より、メタクリル酸エステル及び芳香族ビニル誘導体からなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。
他のビニル系単量体の量は、単量体混合物(a-1)100質量%において0質量%以上49.9質量%以下であることが好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上20質量%以下であることが最も好ましい。他のビニル系単量体の量が49.9質量%を超えると、アクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性が低下しやすく、引張破断時の伸びが低下し、二次成型時にクラックが発生しやすい場合がある。
多官能性単量体としては、架橋剤及び/又はグラフト交叉剤として通常使用されるものでよい。多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、及びジプロピレングリコールジメタクリレート等を使用することができる。これらの多官能性単量体は、1種を単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
多官能性単量体の量は、単量体混合物(a-1)100質量%において0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。多官能性単量体の配合量がかかる範囲内であれば、アクリル系樹脂フィルムの耐折り曲げ割れ性、及び耐折り曲げ白化性や、成形時における樹脂の流動性の観点から好ましい。
また、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)において、後述するグラフトポリマー層(A2)のグラフト被覆効率を高める目的で、多官能性単量体の量を、架橋エラストマー(A1)の内部と表面近傍で変更してもよい。具体的には、特許第1460364号公報や特許第1786959号公報等に示されているように、架橋エラストマー(A1)の表面近傍において、グラフト交叉剤としての機能をもつ多官能性単量体の含有量を内部よりも多くすることにより、グラフト共重合体粒子(A)のグラフトポリマー層による被覆を改善し、アクリル樹脂への分散性を良好にしたり、グラフト共重合体粒子(A)とアクリル樹脂の界面の剥離による耐割れ性の低下を抑制したりすることができる。さらに、相対的に少量のグラフトポリマー層(A2)で充分な被覆が得られることから、アクリル系樹脂組成物への所定量の架橋エラストマー(A1)を導入するためのグラフト共重合体粒子(A)の配合量を削減でき、それゆえアクリル系樹脂組成物の溶融粘度を低下し、アクリル系樹脂フィルムの溶融加工性、フィルム加工精度の向上、表面硬度の向上等が期待できる。
また、単量体混合物(a-1)には、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)の分子量や架橋密度の制御、及び重合時の不均化停止反応に伴うポリマーの二重結合末端の減少により熱安定性等を制御する目的で、連鎖移動剤を加えてもよい。連鎖移動剤は、通常ラジカル重合に用いられるものの中から選択して用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、及びt-ドデシルメルカプタン等の炭素原子数2以上20以下の単官能或いは多官能のメルカプタン化合物、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素或いはそれらの混合物等が好ましい。連鎖移動剤の添加量は、単量体混合物(a-1)の総量100質量部に対して、0質量部以上1.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0質量部以上0.2質量部以下である。
架橋エラストマー(A1)の粒子は、上記のアクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)からなる単一層であってもよく、上記のアクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)からなる層を2層以上含む多層構造であってもよく、硬質又は半硬質の架橋樹脂層を含む多層粒子の少なくとも1層にアクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)を有するものでもよい。
硬質又は半硬質の架橋樹脂層を構成する単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、及びアクリル酸n-オクチル等のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、及びαメチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル誘導体、無水マレイン酸やマレイミド類等のマレイン酸誘導体、1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体等が挙げられる。
これらのなかでは特にメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、スチレン、アクリロニトリル等からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。また、多官能性単量体としては、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)層の重合に使用するものと同様のものが使用できる。さらに硬質又は半硬質の架橋樹脂層の重合時には、これらの単量体に加えて、架橋密度の制御やポリマーの二重結合末端の減少により熱安定性等を制御する目的で、連鎖移動剤を併用してもよい。連鎖移動剤はアクリル酸エステル系の架橋エラストマー(A1)層の重合と同様の連鎖移動剤が使用できる。連鎖移動剤の添加量は、硬質又は半硬質の架橋樹脂層の総量100質量部に対して、0質量部以上2質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0質量部以上0.5質量部以下である。
グラフト共重合体粒子(A)が、コア粒子である架橋エラストマー粒子(A1)と、グラフトポリマー層(A2)との2層構造である場合、グラフト共重合体粒子(A)は、典型的には、架橋エラストマー粒子(A1)の存在下で、メタクリル酸エステル50質量%以上100質量%以下と、メタクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体0質量%以上50質量%以下を含む単量体混合物(a-2)をグラフト共重合させてグラフトポリマー層(A2)を形成することにより得ることができる。
単量体混合物(a-2)中のメタクリル酸エステルの量は、マトリクスであるアクリル樹脂との相溶性の確保及びアクリル系樹脂フィルムへのコーティング時の溶剤の含浸等によるコーティングフィルムの靱性低下や成形時の延伸による白化、割れの抑止の観点より、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
グラフトポリマー層(A2)は、好ましくは、架橋エラストマー粒子(A1)5質量部以上90質量部以下の存在下で、メタクリル酸アルキルエステル70質量%以上99質量%以下、アルキル基の炭素原子数が2以上のアクリル酸アルキルエステル0.5質量%以上30質量%以下、及び他のビニル系単量体0質量%以上19質量%以下を含む単量体混合物(a-2)10質量部以上95質量部以下を、少なくとも1段階以上でグラフト共重合させることにより得られるものである。ただし、架橋エラストマー粒子(A1)と、単量体混合物(a-2)との合計量が100質量部を満たすものとする。
グラフトポリマー層(A2)において、メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、及びメタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素原子数が1~4のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。
グラフトポリマー層(A2)において、他のビニル系単量体としては、アルキル基の炭素原子数が2以上のアクリル酸アルキルエステルを用いることができる。アルキル基の炭素原子数が2以上のアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、及びアクリル酸ステアリル等からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、及びアクリル酸t-ブチルからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、アクリル酸n-ブチルが特に好ましい。
単量体混合物(a-2)において使用可能な他のビニル系単量体としては、スチレン及びその核置換体等の芳香族ビニル誘導体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、アクリル酸及びその誘導体、N-置換マレイミド類、無水マレイン酸、メタクリルアミド、アクリルアミド等が挙げられる。
単量体混合物(a-2)は、他のビニル系単量体として反応性紫外線吸収剤を含むことが好ましい。つまり、グラフトポリマー層(A2)が、反応性紫外線吸収剤に由来する構成単位を含むことが好ましい。単量体混合物(a-2)が反応性紫外線吸収剤を含む場合、耐候性、耐薬品性が良好であるアクリル系樹脂フィルムを得やすい。
反応性紫外線吸収剤としては、公知の反応性紫外線吸収剤を使用することができ、特に限定されない。アクリル系樹脂フィルムの成形加工性及び耐候性の点から、反応性紫外線吸収剤としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0007142090000001
(一般式(1)中、Xは水素原子又はハロゲン原子であり、R1は水素原子、メチル基、又は炭素原子数4以上6以下のt-アルキル基であり、R2は直鎖状、又は分岐鎖状の炭素原子数2以上10以下のアルキレン基であり、R3は水素原子又はメチル基である。)
一般式(1)で表される反応性紫外線吸収剤としては、具体的には、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール類が挙げられ、より具体的には、2-(2’-ヒドロキシ-5’-アクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシプロピルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチル-3’-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。好ましくは、コスト及び取り扱い性から、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを用いる。
グラフトポリマー層(A2)における、反応性紫外線吸収剤に由来する構成単位の含有量は、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
グラフト共重合体粒子(A)の製造において、とりわけ架橋エラストマー粒子(A1)、例えばアクリル酸エステル系の架橋エラストマー粒子(A1)の存在下における単量体混合物(a-2)のグラフト共重合に際して、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー粒子(A1)に対してグラフト結合していない重合体成分(フリーポリマー)が生じる場合がある。このようなフリーポリマーは、アクリル系樹脂組成物及びアクリル系樹脂フィルムのマトリクス相を構成するアクリル樹脂の一部又は全部を構成するものとして使用できる。
単量体混合物(a-2)には、重合体の分子量の制御、及び上記の架橋エラストマー(A1)へのグラフト率や架橋エラストマー(A1)に結合していないフリーポリマーの生成量、及び重合時の不均化停止反応に伴うポリマーの二重結合末端の減少により熱安定性等を制御する目的で、連鎖移動剤を加えてもよい。このような連鎖移動剤は、架橋エラストマー(A1)の重合に使用可能な連鎖移動剤と同様の連鎖移動剤が使用できる。連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物(a-2)の総量100質量部に対して、0質量部以上2質量部以下、好ましくは0質量部以上0.5質量部以下である。
架橋エラストマー粒子(A1)に対する単量体混合物(a-2)のグラフト率は、5%以上250%以下が好ましく、10%以上200%以下がより好ましく、20%以上150%以下がさらに好ましい。グラフト率が5%未満であると、アクリル系樹脂フィルムの耐折曲げ白化性が低下したり、透明性が低下したり、引張破断時の伸びが低下して二次成型時にクラックが発生しやすくなったりする傾向がある。グラフト率が250%を超えると、フィルム成形時にアクリル系樹脂組成物の溶融粘度が高くなりやすく、アクリル系樹脂フィルムの成形性が低下する傾向がある。
アクリル系樹脂フィルム中の架橋エラストマー粒子(A1)の平均粒子径d(nm)と、アクリル酸エステル系の架橋エラストマーに用いられる多官能性単量体の量w(質量%)は、関係式:0.015d≦w≦0.06dを満たすのが好ましく、0.02d≦w≦0.05dを満たすのがより好ましい。多官能性単量体の量が、上記関係式の範囲であれば、アクリル系樹脂フィルムの二次成形時の伸びが低下しにくく、成形加工や切削の際にクラックが生じにくく、透明性に優れ、かつ折り曲げや引張変形の際に応力白化が生じ難い、といった利点を有する。
前述の通り、必要に応じて使用されるグラフト共重合体粒子(B)も、グラフト共重合体粒子(A)と同じく、ゴム成分である架橋エラストマー(B1)を備える。グラフト共重合体粒子(B)は、典型的には、グラフト共重合体粒子(A)と同じく、架橋エラストマー(B1)よりも表層側に位置するグラフトポリマー層(B2)を備える。つまり、グラフト共重合体粒子(B)は、架橋エラストマー(B1)と、グラフトポリマー層(B2)とを備えるのが好ましい。
グラフト共重合体粒子(B)について、その平均粒子径がグラフト共重合体粒子(A)よりも大きいことを除いて、グラフト共重合体粒子(A)と原料、製造方法等概ね同様であってもよい。好ましくは、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(B1)の粒子は、架橋エラストマー層の内部に硬質或いは半硬質の架橋樹脂層を備える同心球状の多層構造を有する。このような硬質或いは半硬質の架橋樹脂層としては、例えば特公昭55-27576号等に示されるような硬質の架橋メタクリル樹脂粒子や、特開平4-270751号やWO2014/41803等に示されるようなメタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-スチレン共重合体等からなる半硬質層を有する架橋粒子等が挙げられる。このような硬質或いは半硬質の架橋樹脂層を導入することにより、グラフト共重合体粒子(A)よりも粒子径の大きいグラフト共重合体粒子(B)の透明性、耐折り曲げ白化性、耐折曲げ割れ性等を改善させることができる。
グラフト共重合体粒子(B)の平均粒子径は、150nm以上400nm以下であることが好ましく、200nm以上350nm以下であることがより好ましい。
グラフト共重合体粒子(B)の平均粒子径は、グラフト共重合体粒子(A)の平均粒子径よりも大きい。平均粒子径の大きなグラフト共重合体粒子(B)は、アクリル系樹脂材料に対する外力の作用に対して、グラフト共重合体粒子の周囲のアクリル樹脂相に塑性変形(クレイズ)をより効果的に誘起する。このため、グラフト共重合体粒子(B)は、アクリル樹脂材料に耐衝撃性と耐クラック性とを付与する効果に非常に優れている。他方で、グラフト共重合体粒子(B)は、グラフト共重合体粒子(A)よりも、耐折曲げ白化性や耐溶剤白化性等に劣る。このため、例えば、アクリル樹脂とグラフト共重合体粒子(A)を含むアクリル系樹脂組成物に対して、グラフト共重合体粒子(B)を少量添加することで、アクリル系樹脂フィルムに対する軟質成分の総含有量を低くしてアクリル系樹脂フィルムの表面硬度を低下させず、アクリル系樹脂フィルムに外部応力が加わった時や、有機溶剤を含む塗布液を塗布した時や成形加工時の白化性は悪化させにくく、機能性フィルムの耐割れ性、二次成形性等は効率的に向上させる効果が期待できる。
本発明の1以上の実施態様において、グラフト共重合体粒子(A)、及びグラフト共重合体粒子(B)の平均粒子径は、日機装株式会社製のMicrotrac粒度分布測定装置MT3000等のレーザー回折式の粒度分布測定装置を使用し、ラテックス状態での光散乱法を用いて測定できる。
グラフト共重合体粒子(A)、及びグラフト共重合体粒子(B)の製造方法は、特に限定されず、公知の乳化重合法、ミニエマルジョン重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、又は分散重合法が適用可能である。樹脂構造の調整幅が大きい点から、乳化重合法が特に好ましい。
グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)の乳化重合において使用される開始剤としては、有機系過酸化物、無機系過酸化物、及びアゾ化合物等の公知の開始剤を使用することができる。具体的には、t-ブチルハイドロパ-オキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパ-オキサイド、スクシン酸パ-オキサイド、パ-オキシマレイン酸t-ブチルエステル、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機系過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を使用できる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの開始剤は、熱分解型のラジカル重合開始剤として使用されてもよく、或いは、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせた、レドックス型重合開始剤系として使用されてもよい。なお、硫酸第一鉄はエチレンジアミン四酢酸-2-ナトリウム等の錯体と併用してもよい。
これらの中でも、重合安定性、粒子径制御の点から、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機系過酸化物を用いるか、或いは、t-ブチルハイドロパーオキサイドやクメンハイドロパーオキサイド等の有機経過酸化物を2価の鉄塩等の無機系還元剤及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、還元糖、アスコルビン酸等の有機系還元剤と組み合わせたレドックス開始剤系を使用するのがより好ましい。
上記の無機過酸化物又は有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法等の公知の方法で添加することができる。アクリル系樹脂フィルムの透明性の観点から、単量体に混合して添加する方法、及び乳化剤水溶液に分散させて添加する方法が好ましい。
グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)の乳化重合に使用される界面活性剤(乳化剤とも称される。)には特に限定はない。乳化重合には、公知の界面活性剤が広く使用できる。好ましい界面活性剤としては、例えば、アルキルスルフォン酸、アルキルベンゼンスルフォン酸、ジオクチルスルフォコハク酸、アルキル硫酸、脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、アルキルリン酸、アルキルエーテルリン酸、アルキルフェニルエーテルリン酸、サーファクチン等のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。アルキルエーテルリン酸及びその塩としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸及びそのナトリウム塩等を好適に用いることできる。これらの界面活性剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
乳化重合により得られるグラフト共重合体粒子(A)のラテックス、又はグラフト共重合体粒子(B)のラテックスから、公知の方法により、グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)を分離、回収することができる。例えば、ラテックスに、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶性電解質を添加して凝固させた後、もしくは凍結により凝固させた後、固形分の濾別、洗浄及び乾燥の操作により、グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)を分離、回収できる。また、ラテックスに対する噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理により、グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)を分離、回収することもできる。
好ましくは、アクリル系樹脂フィルムの外観欠陥や内部異物を低減する目的で、グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)の分離、回収に先立ち、予めグラフト共重合体粒子(A)のラテックス、又はグラフト共重合体粒子(B)のラテックスをフィルターやメッシュでろ過して、環境異物や、重合スケール等の、異物欠陥原因となる物質が除去される。
フィルターやメッシュとしては、液状媒体のろ過に用いられる公知のフィルターやメッシュを使用可能である。フィルターやメッシュの形式、フィルターの目開き、濾過精度、及び濾過容量等は、対象となる用途、除去すべき異物の種類、大きさや量に応じて適宜選択される。フィルターやメッシュの目開きは、例えば、それぞれ、グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)の平均粒子径よりも2倍以上大きいものが好ましい。
アクリル系樹脂フィルム中において、グラフト共重合体粒子(A)の含有量は特に限定されないが、1質量%以上70質量%以下であることが好ましく、5質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
アクリル系樹脂フィルム中において、グラフト共重合体粒子(B)の含有量は特に限定されないが、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが最も好ましい。
《他の成分》
アクリル系樹脂フィルム(アクリル系樹脂フィルムを構成するアクリル系樹脂組成物)は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、アクリル樹脂と少なくとも部分的に相溶性を有する熱可塑性樹脂を含んでもよい。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶質の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、オレフィン-メタクリル酸誘導体樹脂、オレフィン-アクリル酸誘導体樹脂、セルロース誘導体(セルロースアシレート等)、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂、及びPHBH(ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)樹脂等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル樹脂、スチレン-メタクリル酸樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、スチレン-N置換マレイミド樹脂、スチレン-非置換マレイミド樹脂、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、及びスチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。中でも、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びセルロースアシレート樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂との相溶性に優れ、アクリル系樹脂フィルムの耐折り曲げ割れ性、耐溶剤性、低吸湿性、また積層体のガラス飛散防止性能等を向上できる可能性があることから好ましい。
アクリル系樹脂フィルム(アクリル系樹脂フィルムを構成するアクリル系樹脂組成物)は、また、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、アクリル系樹脂フィルムに使用される従来公知の添加剤を含んでも良い。このような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光拡散剤、艶消し剤、滑剤、顔料及び染料等の着色料、繊維状充填材、有機粒子や無機粒子からなるアンチブロッキング剤、金属や金属酸化物からなる赤外線反射剤、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加剤は、これらに限定されない。これらの添加剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、もしくは本発明の効果を増強するため、添加剤の種類に応じた任意の量用いることができる。
<アクリル系樹脂フィルムの製造方法>
アクリル系樹脂フィルムは、公知の加工方法により製造できる。公知の加工方法の具体例としては、溶融加工法、カレンダー成形法、プレス成形法、及び溶剤キャスト法等が挙げられる。溶融加工法としては、インフレーション法やTダイ押出法等が挙げられる。また、溶剤キャスト法では、アクリル系樹脂組成物を溶剤に溶解・分散させた後、得られた分散液を、ベルト状基材上にフィルム状に流涎する。次いで、流涎されたフィルム状の分散液から溶剤を揮発させることにより、アクリル系樹脂フィルムを得る。これらの方法の中では、溶剤を使用しない溶融加工法、特にTダイ押出法が好ましい。溶融加工法によれば、表面性に優れたフィルムを高い生産性で製造でき、且つ溶剤による自然環境や作業環境への負荷や、製造にかかるエネルギーやコストを低減することができる。
アクリル系樹脂組成物を、溶融加工法又は溶剤キャスト法によりフィルム化する場合、アクリル系樹脂フィルムの外観品質の向上の観点から、フィルター又はメッシュを用いるろ過により、アクリル系樹脂フィルムの外観欠陥や内部異物等の原因となる、アクリル系樹脂組成物中の環境異物や重合スケール、劣化樹脂等を除去することが好ましい。
溶融加工によるフィルム製造時には、溶融混合によるアクリル系樹脂組成物の調製時、溶融したアクリル系樹脂組成物のペレット化時、及びTダイによるフィルム製膜工程のうちの、1以上の任意のタイミングでろ過を行うことができる。溶剤キャスト法では、アクリル樹脂、グラフト共重合体粒子(A)、及びグラフト共重合体粒子(B)を溶剤と混合した後、キャスト製膜を行う前にろ過を行えばよい。
このようなフィルターやメッシュとしては、フィルターやメッシュが溶融加工条件に応じた耐熱性、耐久性や、キャスト用の溶剤に対する耐性を有する限りにおいて、公知のフィルターやメッシュを特に制限なく利用できる。アクリル系樹脂フィルムを溶融加工により製造する場合、特に高品質のアクリル系樹脂フィルムを得るためには、濾過容量が大きく、フィルムの品質を損なう樹脂劣化物や架橋物等の発生原因となる、溶融樹脂の滞留が少ないフィルターが好ましい。例えばリーフディスク型フィルターやプリーツ型フィルターを用いるのが、ろ過効率や生産性の上で好ましい。
アクリル系樹脂フィルムの製造において、必要に応じて、フィルムを成形加工する際に、溶融状態のフィルム両面を冷却ロール又は冷却ベルトに同時に接触させる(挟み込む)ことにより、表面性のより優れたフィルムを得ることができる。この場合、溶融状態のフィルムを、アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度-5℃以下、好ましくはガラス転移温度-10℃以下の温度に維持したロール又は金属ベルトに同時に接触させるのが好ましい。
より好ましくは、このような挟み込みを行うためのロールの少なくとも一方として、例えば、特開2000-153547号や特開平11-235747等に開示されたような弾性を有する金属スリーブを有するロールを使用し、低い挟み込み圧力を用いてロール鏡面の転写を行うことで、平滑性に優れかつ内部歪のより少ないフィルムを得ることができる。
また、目的に応じて、フィルムの成形に引続いて、一軸延伸或いは二軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸或いは二軸延伸は、公知の延伸装置を用いて実施できる。二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、縦延伸の後、縦方向を緩和しつつ横延伸を行い、フィルムのボウイングを低減させる方法等、公知の形式で実施することが可能である。
さらに、用途の必要に応じて、アクリル系樹脂フィルムの片面又は両面に、ヘアライン、プリズム、凹凸形状、艶消し表面等の任意の表面形状を付与してもよい。このような表面形状の付与は、公知の方法で実施できる。例えば、押出直後の溶融状態のフィルム、又は繰り出し装置から繰り出された成形済みのフィルムの両面を、少なくとも一方の表面に表面形状を有する2本のロール又はベルトで挟み込むことにより、ロールの表面形状を転写する方法が挙げられる。アクリル系樹脂フィルムの片面又は両面に凹凸形状が付与された場合、該凹凸形状は後述する表面凹凸層として機能してもよい。アクリル系樹脂フィルムの片面又は両面を艶消し表面にした場合、該艶消し表面が後述する艶消層として機能してもよい。
アクリル系樹脂フィルムの厚さとしては、例えば、20μm以上500μm以下であることが好ましく、40μm以上300μm以下であることがより好ましい。アクリル系樹脂フィルムの厚さがかかる範囲内であると、成形加工性が良好であり、アクリル系樹脂フィルムの巻取りが容易であり、且つアクリル系樹脂フィルムの巻取り時にシワが入りにくい。
<機能層>
機能性フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはアクリル系樹脂フィルム)の少なくとも一方の主面上に配置されている機能層を有する。機能層は1層でもよく、2層以上でもよい。また、機能層は熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはアクリル系樹脂フィルム)の一方の主面上に配置されてもよく、両方の主面上に配置されてもよい。機能層は、熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはアクリル系樹脂フィルム)の少なくとも一方の面に直接接しているのが好ましい。
機能層としては、特に限定されず、例えば、従来公知の種々の機能層を採用することができる。機能層の具体例としては、ハードコート層、反射防止層、防眩層、防汚層、耐指紋層、耐傷付き層、帯電防止層、紫外線遮蔽層、赤外線遮蔽層、表面凹凸層、光拡散層、艶消層、偏光層、着色層、意匠層、エンボス層、導電層、ガスバリア層、ガス吸収層等が挙げられる。機能性フィルムは、これらの機能層を、2種以上組み合わせて備えていてもよい。また一つの機能層が、二つ以上の複数の機能を兼ね備えても良い。反射防止層は、低屈折率層で構成されてもよく、高屈折率層及び低屈折率層の両方で構成されてもよく、また、可視光の波長よりも微細な表面凹凸形状を機能層の表面に形成することにより構成しても良い。
各機能層の厚さは特に限定されず、ガラス積層体の使用目的や、機能に応じて適宜設定される。典型的には、機能性フィルムの厚さは、20μm以上500μm以下が好ましく、40μm以上300μm以下がより好ましい。機能性フィルムの厚さがかかる範囲内であると、成形加工性が良好であり、機能性フィルムの巻取りが容易であり、且つ機能性フィルムの巻取り時にシワが入りにくい。機能層の厚さは、例えば、0.1μm以上20μm以下であってもよく、1μm以上10μm以下であってもよい。
機能性フィルムに良好な耐薬品性や耐汚染性を付与でき、成形品の製造用途に好適な機能性フィルムが得られることから、機能性フィルムは、少なくとも1層のハードコート層を備えるのが好ましい。また、ハードコート層を備える機能性フィルムは、反射防止機能の付与を目的として、ハードコート層上に、低屈折層を備えるのが好ましく、ハードコート層と低屈折層との間に高屈折層を備えるのがより好ましい。このように、機能性フィルムが、ハードコート層上に低屈折層や、低屈折層と高屈折層とを備える場合、機能性フィルム表面の反射率を低下させることができる。
機能性フィルムの製造方法は、基材フィルムである前述の熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはアクリル系樹脂フィルム)の主面上に、所望する種類及び数の機能層を設ける方法であれば、特に限定されない。機能層は、ラミネート等の方法により基材フィルムの主面上に積層されてもよく、機能層形成用の塗布液を用いて基材フィルムの主面上に形成されてもよい。また、機能層は、プライマーや粘着剤や、粘着性のフィルム等を介して、基材フィルムの主面上に積層されてもよい。機能層の形成方法としては、大面積の基材フィルム上でも均一な加工が容易であることや、基材フィルムに対する密着性に優れる機能層を形成できることから、有機溶剤を含む機能層形成用の塗布液を用いる方法が好ましい。
有機溶剤を含む機能層形成用の塗布液を用いて、基材フィルムの主面上に機能層を形成する場合、基材フィルムと、機能層との界面において、基材フィルムの表面が機能層形成用の塗布液と若干溶け合うことにより、基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂、例えばアクリル樹脂と、機能層の構成材料とが混ざり合った混成領域が形成される場合がある。このため、有機溶剤を含む機能層形成用の塗布液を用いて形成される機能層は、基材フィルムから剥離しにくい。
典型的な機能性フィルムの製造方法としては、前述のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、有機溶剤を含む機能層形成用の塗布液を塗布して塗布膜を形成することと、塗布膜を乾燥させるか、或いは塗布膜を乾燥及び硬化させて機能層を形成することと、を含む方法が挙げられる。
塗布液を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、キスコート法、ワイヤーバーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度は、有機溶剤を塗布膜から除去できる限りにおいて特に限定されない。乾燥温度は、アクリル系樹脂フィルムに変形が生じない程度の範囲の温度に適宜設定される。硬化方法は、所望する機能層を形成できる限りにおいて特に限定されない。硬化方法は、塗布液の組成に応じて適宜選択される。典型的には、塗布膜の硬化は、加熱、又は紫外線等のエネルギー線を照射(露光)することにより行われる。また、塗布液が水分硬化型の組成物である場合には、加熱や露光を行うことなく、塗布膜を静置することにより硬化を進行させられる場合がある。
以下、機能性フィルムにおける好適な機能層であるハードコート層について詳細に説明する。
《ハードコート層》
ハードコート層としては、従来より種々の機能性フィルムや樹脂成形品等において設けられている種々のハードコート層を特に限定なく採用することができる。ハードコート層は、例えば、多官能(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、シリコンアクリレート、ポリカーボネートアクリレート、及びポリアクリルアクリレート等のラジカル反応性官能基を有するモノマー、オリゴマー、樹脂、或いはこれらの混合物を含む組成物を硬化させることにより形成できる。また、例えば、エポキシ基、及びオキセタン基等のカチオン硬化性又はアニオン硬化性官能基を有するモノマー、オリゴマー、樹脂、或いはこれらの混合物を含む組成物を硬化させることにより、ハードコート層を形成できる。さらに、アルコキシ基置換シリル化合物を加水分解及び部分的に縮合させたポリシロキサン系樹脂を、熱的に硬化させることにより、ハードコート層を形成できる。或いは、シリル化合物に反応性官能基を導入しこれを反応させて硬化させることにより、ハードコート層を形成できる。ハードコート層の形成に用いられる上記成分は、1種を単独で使用してもよく、適宜2以上の成分を混合して使用してもよい。
多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個以上有する限り特に制限されない。具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。さらに紫外線硬化性ハードコート剤として市販されているもの等が挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリレートは、メタクリレート及びアクリレートを包含する意味である。本明細書において、(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基及びアクリロイル基を包含する意味である。
エポキシアクリレート系モノマーとしては特に制限がない。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3、4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、及びビニルシクロヘキセンモノオキサイド(すなわち、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン)等が挙げられる。
ウレタンアクリレート樹脂は、例えば、多価アルコールと、多価イソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートとを混合して、イソシアネート基と水酸基との反応によりウレタン結合を生成させることにより得ることができる。
ウレタンアクリレート樹脂の各種特性は、多価アルコールの構造と、多価イソシアネートの種類と、水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する、アクリロイル基又はメタクリロイル基(CH2=CH-CO-、又は、CH2=C(CH3)-CO-)の数によって適宜調整でき、特に制限されない。さらに紫外線硬化性ハードコート剤として市販されているウレタンアクリレート樹脂等も挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、特に制限されることなく、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタアクリレートのほか、必要により、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合を持つ化合物、例えば2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、エチレングリコールアリルエーテル、グリセリン(モノ、ジ)アリルエーテル、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等或いはこれらの混合物が添加可能である。
多価イソシアネートとしては特に制限されない。2つ以上のイソシアネート基を含有する化合物である多価イソシアネート化合物として、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタントリイソシアネート、3,3'-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリエチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリエチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネートのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネートは、1種を単独或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
イソシアネート成分のイソシアネート基との反応を促進するために、有機錫系ウレタン化触媒が使用される。有機錫系ウレタン化触媒としては、ウレタン化反応に一般に使用されるものであればよく、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアルキルマレート、ステアリン酸錫、オクチル酸錫等が挙げられる。これら有機錫系ウレタン化触媒の使用量は特に制限されるものではないが、0.005質量%以上3質量%以下の範囲内で用いるのが適当である。下限に満たないとウレタン反応が十分に進行せず、上限を超えるとウレタン反応時の発熱により反応制御が困難となる。
ポリシロキサン系樹脂組成物からなるハードコート形成用の組成物は、好ましくは、下記一般式(2):
4-(SiR5 a(OR63-a) (2)
(一般式(2)中、R4は、少なくとも一部の末端が、エポキシ基、オキセタン基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、官能基保護されたアミノ基からなる群から選ばれる反応性置換基で置換された、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数6以上25以下のアリール基、及び炭素原子数7以上12以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1価の炭化水素基である。R5はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数6以上25以下のアリール基、及び炭素原子数7以上12以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1価の炭化水素基である。R6はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基である。aは0以上2以下の整数である。)で表される、加水分解性シリル基を有するシラン化合物(Z)を加水分解及び縮合させて得られる縮合物(A)、及び、反応性置換基を反応せしめる触媒或いは硬化剤(B)を含有する、硬化性組成物である。
好ましくは、縮合物(A)の重量平均分子量は30,000以下である。また、反応性置換基を有するシラン化合物の使用割合が全体の10質量%以上であるのが好ましい。この場合、ハードコート層としての硬化物が、硬度、耐薬品性、及び耐久性等に優れる。
触媒或いは硬化剤(B)は、組成物の光硬化性の点から、光ラジカル発生剤、光カチオン発生剤、光アニオン発生剤から選ばれる1種以上の触媒或いは硬化剤であるのが好ましい。
一般式(2)における反応性置換基は、ハードコート層形成時の硬化収縮が少ない点と、耐久性に優れカールが抑制された機能性フィルムを得やすい点から、エポキシ基又はオキセタン基であるのが好ましい。
シラン化合物(Z)の加水分解縮合反応を行う際の触媒としては、中性塩触媒を用いることがより好ましい。反応性置換基がエポキシ基、オキセタン基である場合に、加水分解縮合時の反応性置換基の分解を抑制しやすいためである。
縮合物(A)の原料であるシラン化合物(Z)が有するケイ素原子に直接結合したOR6基のモル数Pに対する、縮合物(A)が有するケイ素原子に直接結合したOR6基のモル数Qの比Q/Pが0.2以下であることがより好ましい。硬化物の硬度、耐薬品性、耐久性等が優れるためである。
ハードコート層を形成する際に樹脂組成物を硬化させる方法としては、公知の方法を適用できる。硬化方法としては、紫外線に代表される活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。活性エネルギー線の照射により硬化を行う場合には、通常、ハードコート層形成用の組成物に、光重合開始剤、光アニオン発生剤、及び光カチオン発生剤等が添加される。
光重合開始剤の具体例としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン化合物等が挙げられる。これらの中では、樹脂との相溶性に優れる1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンが好ましい。
光カチオン発生剤の具体例としては、例えば、サンアプロ社製のCPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、及びCPI-200S;和光純薬工業社製のWPI-124、WPI-113、WPI-116、WPI-169、WPI-170、及びWPI-124;ローディア社製のロードシル2074等が挙げられる
光アニオン発生剤の具体例としては、例えば、アセトフェノンo-ベンゾイルオキシウム、ニフェジピン、2-(9-オキソキサンテン2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ〔4.4.0〕デカ-5-エン、2-ニトロフェニルメチル4-メタクリロイルオキシピペリジン-1-カルボキシラート、1,2-ジイソプロピル-3-〔ビス(ジメルアミノ)メチレン〕グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルピグアニジウム、及びn-ブチルトリフェニルバラート等が挙げられる。
硬化性組成物からなる塗布膜を硬化させてハードコート層を形成する場合、硬化性組成物には、塗布性の改善等の目的で、公知の各種レベリング剤が配合されてもよい。レベリング剤としては、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、及びそれらの付加物或いは混合物を使用することができる。レベリング剤の配合量は特に限定されないが、例えば、硬化性組成物100質量部に対し0.03質量部以上3.0質量部以下の範囲内の量である。
硬化性組成物を塗布することによりハードコート層を形成する場合、硬化性組成物には、紫外線吸収剤、光安定化剤、消泡剤、酸化防止剤、光拡散剤、艶消し剤、防汚剤、滑剤、顔料及び染料等の着色料、有機粒子、無機微粒子、及び帯電防止剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加できる。添加剤は、これらに限定されない。
硬化性組成物に適切な塗布性を付与するためには、通常、有機溶剤が配合される。有機溶剤としては、硬化性組成物に所望する塗布性を付与でき、所望する膜厚及び性能のハードコート層を形成できる限り特に限定されない。有機溶剤の沸点は50℃以上150℃以下が、塗布性と、形成される塗布膜の乾燥性の点から好ましい。
有機溶剤の具体例としては、ヘキサン等の飽和炭化水素;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、及び塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びブタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブ、及びエチルセロソルブ等のエーテル類;Nメチルピロリドン、及びジメチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化性組成物を、基材フィルムである前述の熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはアクリル系樹脂フィルム)の主面上に塗布する場合、塗布方法としては任意の方法を特に制限なく採用することができる。塗布方法としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、キスコート法、ワイヤーバーコート法、及びカーテンコート法等が挙げられる。これらの塗布方法は、1種を単独又は複数組み合わせて実施されてもよい。
以上説明したハードコート層形成用の硬化性組成物を基材フィルムである前述の熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはアクリル系樹脂フィルム)の表面に塗布した後、乾燥による塗布膜からの有機溶剤の除去と、紫外線照射等の光による硬化とを行うことにより、ハードコート層が形成される。
乾燥により有機溶剤を除去する際の塗布膜の乾燥温度は、60℃以上120℃以下であることが好ましく、70℃以上100℃以下であることがより好ましい。乾燥温度が低すぎると、塗布膜中に有機溶剤が残留する場合がある。また、乾燥温度が高すぎると、基材フィルムの熱変形により、機能性フィルムの平坦性が損なわれる場合がある。
塗布膜を硬化させる際に照射される紫外線の波長は200nm以上400nm以下の範囲が好ましい。紫外線の照射条件は、硬化性組成物の構成成分の種類や組成に応じて適宜調整される。紫外線等の露光光の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、及びエキシマランプ等のランプ光源や、アルゴンイオンレーザー及びヘリウムネオンレーザー等のパルス又は連続のレーザー光源等を備える照射装置を用いることができる。
ハードコート層形成用組成物としては、例えば、アイカ工業株式会社製の品名「Z-879」、DIC株式会社製の品名「ユニディックESS108」、大日精化工業株式会社「NSC-7312」、荒川化学工業株式会社製の品名「ビームセット575」、日本合成化学工業株式会社製の品名「UV-1700B」、大成ファインケミカル株式会社製の品名「8BR-600」、日本化工塗料株式会社製の品名「FA-3280H」等の市販品を用いてもよい。硬化後にも伸度を有することから、機能性フィルムの120℃クラック伸度をより高めることができる。
《高屈折率層》
高屈折率層は、典型的には、高屈折率層用組成物を硬化させることにより形成される。高屈折率層は、前述したハードコート層との有意な屈折率差及び後述の低屈折率層との有意な屈折率差により、反射防止効果を発現させるための層である。高屈折率層としては、従来より反射防止フィルム等に用いられている公知の層を特に制限なく使用できる。高屈折率層用組成物としては、ベースとなる有機材料に、屈折率調整用の無機材料を適宜添加した組成物を用いることができる。
有機材料としては、ハードコート層と同様の組成物を、特に制限なく使用できる。屈折率調整用の無機材料として、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化錫、及びITO等の微粒子を使用できる。
高屈折率層用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として各種添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、重合開始剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
《低屈折率層》
低屈折率層は、典型的には、低屈折率層用組成物を硬化させることにより形成される。低屈折率層としては、従来より反射防止フィルム等に用いられている公知の層を特に制限なく使用できる。低屈折率層用組成物としては、ベースとなる有機材料に、屈折率調整用の材料を適宜添加したものを用いることができる。
有機材料としては、ハードコート層と同様の組成物を、特に制限なく使用できる。屈折率調整用の材料として、例えばシリカ微粒子、中空シリカ微粒子、及びフッ化物微粒子等が使用できる。フッ化物微粒子を構成するフッ化物としては、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、及びフッ化カルシウム等が挙げられる。
低屈折率層に防汚性を付与するために、有機材料の一部を撥水性材料、又は撥油性材料に置き換えてもよい。撥水性材料、又は撥油性材料は一般にワックス系の材料等が挙げられる。
低屈折率層には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として各種添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、光重合開始剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤、及び防指紋剤等の添加剤が挙げられる。
低屈折率層用組成物としては、例えば、アイカ工業株式会社製の品名「Z-824」、荒川化学工業株式会社製の品名「TU-2359」、日揮触媒化成工業株式会社製の品名「ELCOM P-5062」等の市販品を用いても良い。硬化後にも伸度を有することから、機能性フィルムの120℃クラック伸度をより高めることができる。
機能性フィルムは、120℃クラック伸度が20%以上であり、好ましくは25%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。120℃クラック伸度が20%以上であると、機能性フィルムを接着層を介してガラス基材と積層成形した際、特には真空成形又は真空圧空成形した際に機能性フィルムにクラックが発生することを抑制することができ、ガラス積層体を成形性よく得ることができる。機能性フィルムの120℃クラック伸度の上限は特に限定されないが、例えば、硬度の観点から、200%以下であってもよい。機能性フィルムの120℃クラック伸度の測定は後述するとおりに行う。機能層としては、伸度を有するものを用いることで、機能性フィルムの120℃クラック伸度をより高めることができる。
機能性フィルムは、透明性に優れる観点から、ヘイズ値が3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.3%以下であることがさらに好ましく、1.1%以下であることがさらにより好ましく、0.8%以下であることがさらにより好ましく、0.6%以下であることが特に好ましい。なお、機能性フィルムが、反射光の散乱による防眩機能や艶消し表面を有している場合には、ヘイズ値は上記の範囲に限定されない。
[ガラス基材]
ガラス基材として、特に限定されず、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロンシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス等を使用できる。ガラス基材は、面取加工等の処理がなされていてもよい。
ガラス基材は、透明性に優れる観点から、全光線透過率が85%以上の透明ガラス板であることが好ましい。前記透明ガラス板の全光線透過率は90%以上であることがより好ましい。ガラス基材は、両方の主面が平坦な平面形状のガラス板であってもよく、一方又は両方の主面が曲面部を有する曲面形状のガラスであってもよい。また、端面にも曲面部を有してもよい。曲面部は、2次元に屈曲してもよく、3次元に屈曲してもよい(立体形状)。
ガラス基材の厚さは、特に限定されず、ガラス積層体の用途等に応じて適宜に決めることができる。例えば、0.1mm以上50mm以下であってもよく、1mm以上20mm以下であってもよい。
[接着層]
本発明において、接着層は、接着剤(感圧接着剤を含む。)で構成されている。感圧接着剤は粘着剤とも称される。すなわち、本発明において、接着層は粘着層を含む広い意味の接着層である。接着層は、機能性フィルムとガラス基材を接着させており、接着層は、機能性フィルムとガラス基材間の90°剥離強度が25N/25mm以上になるような接着強度を有する必要がある。機能性フィルムとガラス基材間の90°剥離強度の測定は後述するとおりに行う。
機能性フィルムとガラス基材間の90°剥離強度が25N/25mm以上であると、機能性フィルムを接着層を介してガラス基材と積層成形した際、特には真空成形又は真空圧空した際にスプリングバックが発生することを抑制することができ、ガラス積層体を成形性よく得ることができる。
機能性フィルムとガラス基材間の90°剥離強度は、好ましくは30N/25mm以上であり、より好ましくは35N/25mm以上であり、さらに好ましくは40N/25mm以上である。機能性フィルムとガラス基材間の90°剥離強度の上限は特に限定されないが、例えば、ハンドリング性の観点から、100N/25mm以下であってもよい。
接着層の厚さは、特に限定されないが、例えば、ハンドリング性の観点から、10μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい。
前記接着剤は、一般的に接着強度が優れる硬質の接着剤又は硬化性を有する硬化型接着剤であることが好ましい。硬質あるいは硬化性を有する接着剤としては、例えば、加熱時に溶融し、冷却時に固化するホットメルト型接着剤、光、熱、湿分、硬化剤、硬化触媒等による反応硬化性を有する反応硬化型接着剤、ホットメルト性及び反応硬化性を有する反応硬化型ホットメルト接着剤等が挙げられる。接着強度をより高める観点から、反応硬化型接着剤や反応硬化型ホットメルト接着剤を用いることがより好ましい。
また、前記接着剤は、一般的に難接着性といわれているガラスに対する接着強度に優れ、接着後にガラス積層体の透明性を損なわないものが好ましい。例えば、スチレンジエン系、ブチルゴム系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系、エポキシ系、シリル系等の接着剤が例示される。スチレンジエン系接着剤としては、具体的には、スチレンブタジエン系接着剤等が挙げられる。
前記スチレンブタジエン系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、横浜ゴム株式会社製の「ハマタイトMシリーズ」、日東シンコー株式会社製の「FB-ML60」(ホットメルト型接着剤)等の市販品を適宜選択用いてもよい。
前記ポリエステル系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、日東シンコー株式会社製の「FB-ML80」(ホットメルト型接着剤)等の市販品を用いることができる。
前記アクリル系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、藤森工業株式会社製の「マスタック(登録商標)TS」(熱硬化型接着剤)、ノーテープ工業株式会社製の「アクリルメルトUV-120」(UV硬化型ホットメルト接着剤)等の市販品を用いることができる。
前記エポキシ系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、DIC株式会社製の「GFT50UT7」(UV硬化型接着剤)等の市販品を用いることができる。
前記ポリウレタン系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、3M社製の「TS23」、ヘンケル社製の「テクノメルトASシリーズ」等の市販品を適宜用いてもよい。
前記ポリアミド系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ヘンケル社製の「テクノメルトPAシリーズ」等が例示される。
前記シリル系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、株式会社カネカ製の「カネカゼムラック」や「サイリル(登録商標)」、セメダイン株式会社の「スーパーX」シリーズ等の市販品を適宜用いてもよい。
その他ガラス等の無機材料への接着性に優れた市販の接着剤として、例えば、ヤスハラケミカル社製の「ヒロダイン7000シリーズ」、株式会社リーダー製の「ホットメルト#60-3」、日本バイリーン社製の「MFシリーズ」、日本マタイ社製の「エルファンNTシリーズ」、「エルファンUHシリーズ」及び「エルファンPHシリーズ」、東亞合成社製の「アロンメルトPESシリーズ」、クラボウ製の「クランベター」等の市販品が挙げられる。例えばこれらの中から、機能性フィルムとガラス基材間の90°剥離強度が25N/25mm以上になるような接着力を有するものを適宜選択して用いてもよい。
接着層は、シート状(フィルム状とも称される。)の接着剤(接着剤シート)を機能性フィルムの一方の主面上にラミネートすることで形成してもよく、液状の接着剤を機能性フィルムの一方の主面上に塗布することで形成してもよい。機能性フィルムにおいて、機能層が熱可塑性樹脂フィルムの一方の主面上のみに配置されている場合、接着層は機能層が配置されている熱可塑性樹脂フィルムの主面とは反対側の主面、すなわち機能層が配置されていない主面上に形成されていることが好ましい。
透明性の観点から、接着層付き機能性フィルムは、ヘイズ値が3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.3%以下であることがさらに好ましく、1.1%以下であることがさらにより好ましく、0.8%以下であることがさらにより好ましく、0.6%以下であることが特に好ましい。
[加飾層]
ガラス積層体は、意匠性の観点から、さらに加飾層を含んでもよい。機能性フィルムがガラス基材の一方の主面と該主面と接する端面の少なくとも一部を覆うように配置される場合は、加飾層は、機能性フィルムが配置されていないガラス基材の主面の少なくとも一部を覆うように配置することができる。
加飾層は、ガラス積層体の成形時にずれが生じるのを防ぐ観点から、ガラス基材の一方の主面上に一般的な印刷法によりインキを印刷することによって設けることが好ましい。前記印刷法としては、例えば、シルク印刷、スクリーン印刷、熱転写印刷、グラビア印刷等が挙げられる。
加飾層は、ガラス積層体に各種の意匠性を付与するものであれば特に制限されず、例えば、ガラス積層体が車載ディスプレイ等の表示装置の前面板として使用される際に、表示部の周囲に視認される文字や図形、或いは、表示部に額縁状に設けられる黒色の縁取り状の加飾層等が挙げられる。
加飾層の厚さは、特に限定されないが、例えば、印刷性及び意匠性の観点から、1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましく、2μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
加飾層を形成するインキは、ガラス基材に対する印刷に用いることができるあらゆる無機系インキや有機系インキを用いることができる。有機系インキとしては、特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の有機系インキを用いても良い。前記インキは、さらに着色剤を含んでもよい。着色剤としては、例えば加飾層を黒色とする場合はカーボンブラック等の黒色の着色剤を用いることができる。
[ガラス積層体の製造方法]
機能性フィルムを、ガラス基材の表面へ積層する方法として、公知の方法を特に制限なく使用できる。特に曲面形状を有するガラス基材の表面に前記機能性フィルムを積層する方法、あるいは、前記機能性フィルムをガラス基材の主面及びこれに隣接する端面に廻り込んで積層する方法としては、例えば、特許第3733564号公報や特許第3924760号公報、特許第5549036号公報に記載の方法と同様な3次元ラミネート成形法が挙げられる。具体的には、3次元ラミネート成形法は、上述した機能性フィルムに接着層を積層後、熱で軟化させた接着層付きの機能性フィルムを、真空状態もしくは圧空状態を利用して、平面形状、曲面形状、立体形状等の形状を有するガラス基材の表面及び端面に対して貼り付ける成型方法である。ガラス基材には予め加飾層が印刷されてもよい。その際、樹脂温度及び成形条件等は、機能性フィルムの形状や熱的・物理的性状、ガラス基材の形状、サイズ等を勘案して、適宜設定することができる。また本来、上記の3次元ラミネート成形法を用いることにより、積層工程において、端面をすべて被覆することが可能であるが、基材の形状、用途、積層成形や積層後のフィルムのトリミング時の効率等を勘案し、必ずしも全ての端面を完全に被覆したものに限定されるのではなく、たとえば部分的に端面が露出していても、本発明の範囲を逸脱するものではない。
ガラス積層体は、目的とする用途に応じて、様々な形状に成形されたガラス基材を用いることで、たとえば表示部や操作部等が組み込まれた様々な成形体又は部材の表面を保護しつつ反射防止、傷付き防止等の種々の機能を付与する表面材として用いることができる。前記ガラス積層体の具体的な用途としては、例えば、インストルメントパネル、車載ディスプレイの前面板、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用途;、ドアミラー、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用途;スマートフォン、携帯電話、タブレット等の携帯電子機器の表示窓、ボタン;テレビ、DVDプレイヤー、ステレオ装置、その他の家庭用電子電気機器;家具製品等の筐体、フロントパネル、ボタン、表面化粧材等の用途、;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途等が挙げられる。
ガラス積層体を用いることで、複雑な立体形状を有し、表面の防汚性、反射特性、及び防眩性等の機能性が制御された、外観にすぐれる成形品を容易に製造できる。このため、ガラス積層体は、以上の用途の中でも、例えば、平面形状、曲面形状、及び立体形状等の様々な形状を有する車載ティスプレイ等の表示装置の前面板等の用途に好ましく用いられる。
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例のみに限定されない。なお、下記製造例、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
〔製造例1:グラフト共重合体粒子(A)〕
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
(1)脱イオン水 200部
(2)ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.24部
(3)ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレ-ト 0.15部
(4)エチレンジアミン四酢酸-2-ナトリウム 0.001部
(5)硫酸第一鉄 0.00025部
その後、重合装置内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、下記混合物(I)30部を10部/時間の割合で連続的に添加し、添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、架橋エラストマー(A1)の粒子(平均粒子径80nm)のラテックスを得た。重合転化率は99.5%であった。
混合物(I)の配合割合:
(1)ビニル系単量体混合物(アクリル酸n-ブチル(BA)90%及びメタクリル酸メチル(MMA)10%) 10部
(2)アリルメタクリレート(AlMA) 1部
(3)クメンハイドロパーオキサイド(CHP) 0.2部
その後、重合装置にジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.05部を仕込んだ後、内温を60℃にし、グラフトポリマー層(A2)形成のために、下記混合物(II)70部を10部/時間の割合で連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体粒子(A)(平均粒子径90nm)のラテックスを得た。重合転化率は98.2%であった。得られたラテックスを目開き10μmのステンレス製メッシュで濾過した後、塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥して、粉末状のグラフト共重合体粒子(A)を得た。
混合物(II)の配合割合:
(1)ビニル系単量体混合物(MMA98%、BA1%、及びRUVA1%)70部、
(2)t-ドデシルメルカプタン(t-DM)0.5部
(3)CHP0.5部
なお、RUVAは、反応性紫外線吸収剤(2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2-H-ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製、RUVA-93))である。
〔製造例2:グラフト共重合体粒子(B)〕
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
(1)脱イオン水 180部
(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸 0.002部
(3)ホウ酸 0.4725部
(4)炭酸ナトリウム 0.04725部
(5)水酸化ナトリウム 0.0098部
その後、重合装置内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、過硫酸カリウム0.027部を2%水溶液で入れ、次いでメタクリル酸メチル26.19部、アクリル酸ブチル0.81部、アリルメタクリレート0.135部、n-オクチルメルカプタン0.3部、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.094部からなる混合物を81分かけて連続的に添加した。さらに60分重合を継続することにより、重合体粒子のラテックスを得た。重合転化率は99.0%であった。
その後、水酸化ナトリウム0.0267部を2%水溶液で添加し、過硫酸カリウム0.08部を2%水溶液で添加し、次いでアクリル酸ブチル41部、スチレン9部、メタクリル酸アリル0.75部、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.233部からなる混合物を150分かけて連続的に添加した。添加終了後、過硫酸カリウム0.015部を2%水溶液で添加し、120分重合を継続し、2層構造を有する架橋エラストマー粒子(B1)のラテックスを得た。重合転化率は99.0%であり、架橋エラストマー粒子(B1)の平均粒子径は230nmであった。
その後、過硫酸カリウム0.023部を2%水溶液で添加し、メタクリル酸メチル18.4部、アクリル酸ブチル4.6部からなる混合物を70分かけて連続的に添加し、さらに60分重合を継続し、2層構造を有する架橋エラストマー粒子(B1)(コア)の表側にグラフトポリマー層(B2)を形成して、グラフト共重合体粒子(B)のラテックスを得た。重合転化率は100.0%であり、グラフト共重合体(B)の平均粒子径は240nmであった。得られたラテックスを目開き10μmのステンレス製メッシュで濾過した後、硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体粒子(B)を得た。
(実施例1)
[機能性フィルムの作製]
<アクリル系樹脂フィルムの作製>
アクリル樹脂(住友化学株式会社製、品名「スミペックス(登録商標)EX」)65部と、製造例1で得られたグラフト共重合体粒子(A)を31部と、製造例2で得られたグラフト共重合体粒子(B)を4部と、フェノール系酸化防止剤(ADEKA製、品名「アデカスタブAO-60」)0.6部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで、目開き10μmの7インチ径リーフディスクフィルター(長瀬産業製)を備えたベント付き58mm径同方向二軸押出機(東芝機械製)を使用し、シリンダ温度を200℃~240℃、フィルター部及びダイス部設定温度を250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量180kg/hrにて溶融混練を行い、ストランド状に引き取り、水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて切断し、アクリル系樹脂組成物のペレットを得た。
得られたアクリル系樹脂組成物のペレットを、Tダイ付90mm径単軸押出機を用いて、シリンダ設定温度190℃~240℃にて吐出量130kg/hrにて溶融混練し、ダイス温度240℃にてTダイより吐出し、95℃に温調したキャストロールと、65℃に温調した弾性金属スリーブを有するタッチロールで挟圧しながら成膜し、厚さ175μmのアクリル系樹脂フィルムを得た。アクリル系樹脂フィルムのヘイズは0.6%であった。
<機能層の形成>
上記で得られたアクリル系樹脂フィルムの一方の主面に、ハードコート層形成用組成物(アイカ工業株式会社製、品名「Z-879」)を、メチルエチルケトンにより固形分濃度30%になるように希釈した液を、グラビアコート法で塗布し、80℃で1分間乾燥した後、紫外線照射により硬化させてハードコート層(厚さ3μm)を形成した。その後、ハードコート層の主面上に、低屈折率層形成用組成物(アイカ工業株式会社製、品名「Z-824」)を、メチルエチルケトンにより固形分濃度30%になるように希釈した液を、グラビアコート法で塗布し、80℃で1分間乾燥した後、紫外線照射により硬化させて、反射防止層(厚さ0.1μm)を形成し、機能性フィルムを得た。機能性フィルムのヘイズは0.3%であった。
[接着層の形成]
上記で得られた機能性フィルムの機能層が形成された主面と反対側の主面に、熱ローラーラミネート機を用いてスチレンブタジェン系ホットメルト接着剤シート(日東シンコー株式会社製、品名「FB-ML60」)を100℃で溶融させてラミネートし、接着層(厚さ50μm)を形成し、接着層付きの機能性フィルムを得た。接着層付き機能性フィルムのヘイズは0.6%であった。
[加飾層の形成]
ガラス基材(ソーダライムガラス、全光線透過率90.7%、240mm×130mm×1mmの平板状)の一方の主面の周縁部に幅20mmになるように、カーボンブラックを含むウレタン樹脂系インキをシルクスクリーン印刷法で印刷して黒色の縁取り状の加飾層を形成した。
[ガラス積層体の作製]
真空圧空成形機(布施真空株式会社製、NGF-0406-S)を用いて、上記で得られた加飾層付きのガラス基材と、上記で得られた接着層付きの機能性フィルム(297mm×210mm)を、接着層を介して接着させた。成形機は、上部と下部からなっており、下部に加飾層付きのガラス基材を設置し、上部と下部の中間に接着層付きの機能性フィルムを設置した。その後、上部及び下部ともに、-100kPaまで減圧し、上部に設置されている赤外線加熱機で接着層付きの機能性フィルムを加熱した。130℃まで加熱された段階で、機能性フィルムがガラス基材の加飾層が配置されている主面と反対側の主面及び該反対側の主面と接する4つの端面の全部を覆うように、加飾層付きのガラス基材を、接着層付きの機能性フィルムに押し当て、続いて、上部に圧空を導入して300kPaとし、成形を行った。
(実施例2)
機能層を下記のように形成した以外は、実施例1と同様にしてガラス積層体を得た。
<機能層の形成>
ハードコート層形成用組成物として、DIC株式会社製の品名「ユニディックESS-108」を用いた以外は、実施例1と同様にして、機能性フィルムを得た。機能性フィルムのヘイズは0.3%であった。
(実施例3)
接着層を下記のように形成した以外は、実施例1と同様にしてガラス積層体を得た。
[接着層の形成]
上記で得られた機能性フィルムの機能層が形成された主面と反対側の主面に、熱ローラーラミネート機を用いてポリエステル系ホットメルト接着剤シート(日東シンコー株式会社製、品名「FB-ML80」)を100℃で溶融させてラミネートし、接着層(厚さ50μm)を形成した。接着層付き機能性フィルムのヘイズは66.1%であった。
(実施例4)
接着層を下記のように形成した以外は、実施例1と同様にしてガラス積層体を得た。
[接着層の形成]
機能性フィルムの機能層が形成された主面と反対側の主面に、ローラーラミネート機を用いてアクリル系熱硬化性粘着材シート(藤森工業株式会社製、品名「マスタック(登録商標)TS」)(厚さ25μm)を貼り合わせて、接着層付き機能性フィルムを形成した。接着層付き機能性フィルムのヘイズは0.7%であった。
なお、真空圧空成形によって加えられた熱(130℃)により、接着層が硬化して機能性フィルムとガラス基材が接合した。
(実施例5)
[機能性フィルムの作製]
実施例1と同様にして、機能性フィルムを得た。
[接着層の形成]
上記で得られた機能性フィルムの機能層が形成された主面と反対側の主面に、ローラーラミネート機を用いてウレタンーエポキシ系UV硬化性接着材シート(DIC株式会社製、品名「GFT50UT7」)(厚さ50μm)を貼り合わせて、接着層付き機能性フィルムを形成した。接着層付き機能性フィルムのヘイズは42.5%であった。
[加飾層の形成]
実施例1と同様にして、加飾層付きのガラス基材を得た。
[ガラス積層体の作製]
接着層付き機能性フィルムにUVを照射(積算光量:1500mJ/cm2)し、接着層が硬化する前に(UV照射後30分以内)、実施例1と同様にして、真空圧空成形機(布施真空株式会社製、NGF-0406-S)を用いて、ガラス積層体を作製した。
なお、UV照射後、約30分経過すると、接着層の硬化が進展して機能性フィルムとガラス基材が接合した。
(実施例6)
[機能性フィルムの作製]
実施例1と同様にして、機能性フィルムを得た。
[接着層の形成]
上記で得られた機能性フィルムの機能層が形成された主面と反対側の主面に、熱ローラーラミネート機を用いてアクリル系UV硬化性ホットメルト接着剤シート(ノーテープ工業株式会社製、品名「アクリルメルトUV-120」)(厚さ100μm)を100℃で溶融させてラミネートし、接着層付き機能性フィルムを形成した。接着層付き機能性フィルムのヘイズは0.8%であった。
[加飾層の形成]
実施例1と同様にして、加飾層付きのガラス基材を得た。
[ガラス積層体の作製]
実施例1と同様に真空圧空成形によって得られたガラス積層体にUVを照射(積算光量:300mJ/cm2)することにより、接着層が硬化して機能性フィルムとガラス基材が接合した。
(比較例1)
ガラス基材(ソーダライムガラス、全光線透過率90.7%、240mm×130mm×1mmの平板状)の一方の主面の周縁部に幅20mmになるように、カーボンブラックを含むウレタン樹脂系インキをシルクスクリーン印刷法で印刷して黒色の縁取り状の加飾層を形成した。
(比較例2)
ガラス積層体の作製時に、80℃まで加熱された段階で、機能性フィルムがガラス基材の加飾層が配置されている主面と反対側の主面のみを覆うように、加飾層付きのガラス基材を、接着層付きの機能性フィルムに押し当てた以外は、実施例1と同様にしてガラス積層体を得た。
(比較例3)
機能層を下記のように形成した以外は、実施例1と同様にしてガラス積層体を得た。
<機能層の形成>
ハードコート層形成用組成物として、DIC株式会社製の品名「ユニディックEQS-1291」を用いた以外は、実施例1と同様にして、機能性フィルムを得た。機能性フィルムのヘイズは0.3%であった。
(比較例4)
接着層を下記のように形成した以外は、実施例1と同様にしてガラス積層体を得た。
[接着層の形成]
機能性フィルムの機能層が形成された主面と反対側の主面に、熱ローラーラミネート機を用いてアクリル系ホットメルト接着剤シート(日東電工株式会社製、品名「CS9862UA」)を100℃で溶融させてラミネートし、接着層(厚さ50μm)を形成した。接着層付き機能性フィルムのヘイズは0.6%であった。
(比較例5)
接着層を下記のように形成した以外は、実施例1と同様にしてガラス積層体を得た。
[接着層の形成]
機能性フィルムの機能層が形成された主面と反対側の主面に、熱ローラーラミネート機を用いてホットメルト接着剤シート(日栄化工株式会社製、品名「18346」)を100℃で溶融させてラミネートし、接着層(厚さ50μm)を形成した。接着層付き機能性フィルムのヘイズは0.7%であった。
(比較例6)
接着層を下記のように形成した以外は、実施例1と同様にしてガラス積層体を得た。
[接着層の形成]
機能性フィルムの機能層が形成された主面と反対側の主面に、熱ローラーラミネート機を用いてホットメルト接着剤シート(日栄化工株式会社製、品名「18347」)を100℃で溶融させてラミネートし、接着層(厚さ50μm)を形成した。接着層付き機能性フィルムのヘイズは0.7%であった。
(比較例7)
接着層を下記のように形成した以外は、実施例1と同様にしてガラス積層体を得た。
[接着層の形成]
機能性フィルムの機能層が形成された主面と反対側の主面に、アクリル系粘着シート(日栄化工株式会社製、感圧粘着型、品名「G25」)を貼りあわせて、接着層(厚さ25μm)を形成した。接着層(アクリル系粘着層)付き機能性フィルムのヘイズは0.8%であった。
実施例1~6、及び比較例1~7において、機能性フィルムの120℃クラック伸度、及びガラス基材と機能性フィルム間の90°剥離強度を下記のように測定した。また、実施例1~6、及び比較例1~7においてガラス積層体のエッジ部及び主面部の割れ性、機能性フィルムのクラック発生の有無、スプリングバックの発生有無を下記のように評価した。また、実施例1~6、及び比較例1~7において、ガラス積層体のヘイズ、全光線透過率及び反射率を下記のように測定した。これらの結果を表1に示した。表1には、接着層付き機能性フィルムのヘイズも示した。
(120℃クラック伸度)
機能性フィルムを用いて120℃クラック伸度を測定した。具体的には、機能性フィルムを10mm(幅)×100mm(長さ)に切り出し、120℃に設定された恒温槽が取り付けられたテンシロン引張試験機(株式会社島津製作所、AG-2000D)を用いて、予熱時間2分、チャック間距離50mm、引張速度200mm/分の条件で引張試験を行なった。機能層にクラックが発生した時の伸度の測定をn=3で行ない、得られた試験結果の平均値を、120℃クラック伸度とした。
(90°剥離強度)
JIS K 6854―1に準じて、ガラス基材と機能性フィルム間の剥離強度を測定した。ガラス積層体の主面上の機能性フィルムに10mm(幅)×100mm(長さ)の切れ目を入れ、切れ目の端部より機能性フィルムを10mm長さ分予め引き剥がし、ガラス基材と、引き剥がした機能性フィルムの端部をそれぞれ測定機(IMADA製)のクランプで挟み、90°剥離モードで剥離応力を測定した。測定した応力値a(N)を、以下の数式にて、25mm幅における剥離強度値(N/25mm)に換算した。
90°剥離強度(N/25mm)=a×25/10
(クラック)
ガラス積層体における機能性フィルムのクラック発生有無を目視にて確認し、下記の3段階の基準で評価した。
A:クラック発生なし
B:ガラス基材の端面を覆う樹脂フィルムに10mm未満の長さのクラックが発生する
C:ガラス基材の端面を覆う樹脂フィルムに10mm以上の長さのクラックが発生する
(スプリングバック)
ガラス積層体における機能性フィルムのスプリングバックの発生有無を目視にて確認し、下記の5段階の基準で評価した。以下において、「接着層の擦れ跡の距離」とは、周縁部において、ガラス積層体の端部に対する接着層の擦れ跡の垂直距離を測定し、測定値の内から選択した最大値を意味する。
A:スプリングバック無し
B:周縁部における接着層の擦れ跡の距離が1mm未満
C:周縁部における接着層の擦れ跡の距離が1mm以上2mm未満
D:周縁部における接着層の擦れ跡の距離が2mm以上
E:ガラス積層体の端部より機能性フィルムの剥離やガラス積層体のエッジ部の露出が発生している
(ヘイズ)
JIS K 7136:2000に準じて、ヘイズ値を測定した。なお、ヘイズは、加飾層が設けられていない箇所で測定した。
(全光線透過率)
JIS K 7375に準じて、ガラス積層体の全光線透過率を測定した。ガラス基材の全光線透過率は、JIS R 3106に準じて測定した。なお、全光線透過率は、加飾層が設けられていない箇所で測定した。
(反射率)
反射分光計(フィルメトリクス社製、型番「F20」)を用いて、ガラス積層体の反射スペクトル(380~1050nm)を測定し、550nmでの反射率の値を出した。なお、反射率は、加飾層が設けられていない箇所で測定した。
(エッジ部の耐割れ性)
デュポン式衝撃変形試験機(安田精機製作所製)を用い、ガラス基材のエッジ部の耐割れ性を評価した。半径6.35mmの撃ち型と受け台とを取り付け、機能性フィルム面を上にして、ガラス積層体の長辺の中央エッジ部が撃ち型の中央に当たるように挟んだ。重さ300gの錘を、機能性フィルム側の上方10cmの高さから落下させ、割れの有無を確認した。割れが発生しない場合は、高さを10cm上げて錘を長辺の中心部に落下させ、割れの有無を確認する操作を繰り返した。割れ発生後、下記のように、割れ発生応力を算出した。ガラス積層体の外観を目視にて確認し、飛散の程度に応じて下記の5段階の基準でガラス積層体の飛散程度を評価した。図2に、(a)実施例1、(b)比較例1及び(c)比較例2のエッジ部の耐割れ性試験後のガラス積層体の写真を示した。
割れ発生応力(kg・cm)=割れが発生する高さ(cm)×錘の重さ(kg)
<飛散程度>
A:衝撃部にクラックが発生しているが、ガラス基材は樹脂フィルムと接合しており、ガラス基材が飛散しない。
B:衝撃部にクラックが発生し、衝撃部の一部がガラス積層体と分離、破片となって飛散する。
C:衝撃部全体がガラス積層体と分離または破片となって飛散する
D:ガラス基材全体に割れが及び、ガラス基材の一部が飛散する
E:ガラス基材全体に割れが及び、ガラス基材の大半が飛散する
(主面部の耐割れ性)
デュポン式衝撃変形試験機(安田精機製作所製)を用いて主面部の割耐割れ性を評価した。半径6.35mmの撃ち型と受け台とを取り付け、機能性フィルム面を上にして、ガラス積層体の主面の中央部が撃ち型の中央に当たるように挟んだ。重さ150gの錘を、機能性フィルム側の上方10cmの高さから落下させ、割れの有無を確認した。割れが発生しない場合は、高さを10cm上げて錘を長辺の中心部に落下させ、割れの有無を確認する操作を繰り返した。割れ発生後、下記のように、割れ発生応力を算出した。ガラス積層体の外観を目視にて確認し、飛散の程度に応じて下記の3段階の基準でガラス積層体の飛散程度を評価した。
割れ発生応力(kg・cm)=割れが発生する高さ(cm)×錘の重さ(kg)
<飛散程度>
A:衝撃部にクラックが発生しているが、ガラス基材は樹脂フィルムと接合しており、ガラス基材が飛散しない。
B:衝撃部にクラックが発生し、衝撃部の一部がガラス積層体と分離、破片となって飛散する。
C:衝撃部全体がガラス積層体と分離または破片となって飛散する
D:ガラス基材全体に割れが及び、ガラス基材の一部が飛散する
E:ガラス基材に割れが及び、ガラス基材の大半が飛散する
(立体被覆性)
機能性フィルムが被覆されている側からガラス積層体の外観を目視にて確認し、下記の5段階の基準で立体被覆性を評価した。以下において、「エッジ部の露出が~%」とは、エッジ部の外周に対する露出したエッジ部の長さの割合をいう。
A:主面に気泡及び剥離等の欠陥がなく、エッジ部の露出もない
B:主面に気泡及び剥離等の欠陥がないが、エッジ部の露出が0%超え25%以下
C:主面に気泡及び剥離等の欠陥がないが、エッジ部の露出が25%超え50%以下である;或いは、主面に部分的な欠陥(気泡の混入、剥離、クラック)が発生しているが、エッジ部の露出はない
D:主面に気泡及び剥離等の欠陥がないが、エッジ部の露出が50%を超える;或いは、主面に部分的な欠陥(気泡の混入、剥離、クラック)が発生しており、エッジ部の露出が0%を超え25%以下である
E:主面に部分的な欠陥(気泡の混入、剥離、クラック)が発生しており、エッジ部の露出が25%を超える
Figure 0007142090000002
上記表1に結果から分かるように、機能性フィルムがガラス基材の一方の主面及びそれに接する4つの端面の全部を被覆した実施例1~6のガラス積層体では、エッジ部の耐割れ性、具体的には飛散程度が大幅に改善され、図2(a)に示されているように、衝撃部にクラックが発生しているが、ガラス基材は樹脂フィルムと接合しており、ガラス基材が飛散していなかった。一方、ガラス基材と加飾層のみを有し、機能性フィルムで被覆されていない比較例1のガラス積層体は、エッジ部が衝撃を受けて割れが発生した場合、図2(b)に示されているように、ガラス基材全体に割れが及び、ガラス基材の大半が飛散していた。機能性フィルムがガラス基材の一方の主面のみを被覆している比較例2では、図2(c)に示されているように、エッジ部が衝撃を受けて割れが発生した場合、衝撃部全体がガラス積層体と分離または破片となって飛散しており、エッジ部の耐割れ性が悪かった。また、機能性フィルムがガラス基材の少なくとも一方の主面及びそれに接する端面を被覆した実施例1~6のガラス積層体では、主面部の耐割れ性が、機能性フィルムを有しない比較例1に比べて格段に向上していた。また、機能性フィルムがガラス基材の一方の主面及びそれに接する端面の全部を被覆した実施例1~6のガラス積層体は、立体被覆性が良好であったが、機能性フィルムがガラス基材の一方の主面のみを被覆している比較例2のガラス積層体は、立体被覆性が悪かった。
また、120°クラック伸度が20%以上の機能性フィルムを用いた実施例1~6では、ガラス積層体を真空圧空積層成形した後、機能性フィルムにクラックが発生することがなかった。一方、120°クラック伸度が20%未満の機能性フィルムを用いた比較例3では、真空圧空成形後に機能性フィルムにクラックが発生してしまう不都合があった。
また、ガラス基材と、機能性フィルム間の90°剥離強度が25N/25mm以上である実施例1~6では、ガラス積層体を真空圧空成形した後、スプリングバックが発生しておらず、成形性が良好であった。一方、ガラス基材と、機能性フィルム間の90°剥離強度が25N/25mm未満である比較例4~6では、ガラス積層体を真空圧空成形した後、スプリングバックが発生しており、立体被覆性が悪かった。
また、ハードコート層と反射防止層を有する機能性フィルムでガラス基材を被覆した実施例1~6のガラス積層体は、反射率が、機能性フィルムを有しない比較例1(ガラス基材)に比べて低く、反射防止性が良好であった。
また、ヘイズが3.0%以下の接着層付き機能性フィルムを用いて形成した実施例1~2、4及び6のガラス積層体は、ヘイズ3.0%以下であり、透明性に優れていた。一方、ヘイズが3.0%を超える接着層付き機能性フィルムを用いて形成した実施例3及び5のガラス積層体は、ヘイズが高く、透明性に劣っていた。
1 ガラス積層体
2 ガラス基材
3 接着層
4 機能性フィルム
21 ガラス基材の第1の主面
22a、22b ガラス基材の端面
32a、32b エッジ部

Claims (11)

  1. ガラス基材、接着層、及び機能性フィルムを含むガラス積層体であって、
    前記機能性フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム、及び熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の主面上に配置されている機能層を含み、
    前記機能性フィルムは、120℃クラック伸度が20%以上であり、
    前記機能性フィルムは、前記ガラス基材の少なくとも一方の主面と、該主面に接する端面の少なくとも一部を、接着層を介して連続的に被覆しており、
    前記ガラス基材と前記機能性フィルム間の90°剥離強度が25N/25mm以上であることを特徴とするガラス積層体。
  2. 前記ガラス基材は、全光線透過率が85%以上の透明ガラス板である請求項1に記載のガラス積層体。
  3. 前記ガラス基材の一方又は両方の主面は、曲面部を有する請求項1又は2に記載のガラス積層体。
  4. 前記熱可塑性樹脂フィルムは、アクリル樹脂、及びゴム成分を含有するグラフト共重合体粒子を含むアクリル系樹脂組成物で構成されたアクリル系樹脂フィルムである請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス積層体。
  5. 前記機能層は、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、耐指紋層、耐傷付き層、帯電防止層、紫外線遮蔽層、赤外線遮蔽層、及び表面凹凸層からなる群から選ばれる1種以上の機能層を含む請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス積層体。
  6. 前記接着層は、ホットメルト型接着剤、反応硬化型接着剤、及び反応硬化型ホットメルト接着剤からなる群から選ばれる一種以上の接着剤で構成されている請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス積層体。
  7. 前記接着剤は、スチレンジエン系接着剤、ブチルゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、及びシリル系接着剤からなる群から選ばれる一種以上である請求項6に記載のガラス積層体。
  8. 前記ガラス積層体は、ヘイズが3.0%以下である請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス積層体。
  9. 前記ガラス積層体は、さらに加飾層を含み、前記加飾層は前記機能性フィルムが配置されているガラス基材の主面と反対側の主面の少なくとも一部を覆うように配置されている請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス積層体。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載のガラス積層体を用いたことを特徴とする表示装置の前面板。
  11. 請求項1~9のいずれか1項に記載のガラス積層体の製造方法であって、
    真空圧空成形により、ガラス基材に対して、接着層を介して機能性フィルムを積層成形する工程を含むことを特徴とするガラス積層体の製造方法。
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