以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る同調制御型制振装置の正面図である。図2は、図1におけるA-A断面図である。なお、図2において、第4アーム37の周辺部分は、簡略化されている。図3は、図1における支持部材の拡大図である。図4は、図1における連結部材の拡大図である。図5は、図2における連結部材の拡大図である。図6は、図1におけるB-B断面図である。
実施の形態1に係る同調制御型制振装置1は、地震時等における建物の振動を抑制するための装置である。図1に示すように同調制御型制振装置1は、建物の第1梁101、第2梁102、第1柱103及び第2柱104で囲まれた領域に配置される。第1梁101及び第2梁102は水平方向に延びている。第2梁102は、第1梁101の下方に位置する。例えば、第1梁101及び第2梁102はH形鋼である。第1柱103及び第2柱104は鉛直方向に延びている。例えば、第1柱103及び第2柱104は角形鋼管である。第1梁101、第2梁102、第1柱103及び第2柱104は、建物の骨組を構成する構造材である。
以下の説明において、XYZ直交座標系が用いられる。Y軸は、第1梁101及び第2梁102の長手方向に沿う軸である。Z軸は、第1柱103及び第2柱104の長手方向に沿う軸である。X軸は、Y軸及びZ軸の両方に対して直交する軸である。X軸に沿う方向はX方向と記載され、Y軸に沿う方向はY方向と記載され、Z軸に沿う方向はZ方向と記載される。X方向及びY方向が水平方向であり、鉛直方向がZ方向である。X方向のうち建物の外部から内部に向かう方向を+X方向とする。+X方向を向いた場合の右方向を+Y方向とする。Z方向のうち鉛直方向で下から上に向かう方向を+Z方向とする。
図1に示すように、同調制御型制振装置1は、慣性質量粘性ダンパー2と、ダンパー支持部材30と、第1アーム31と、第2アーム32と、ダンパー支持部材35と、第3アーム36と、第4アーム37と、弾性支持ユニット4と、ストッパー6と、を備える。同調制御型制振装置とは、慣性質量粘性ダンパーのうちの慣性質量要素とばね(柔支持部材)を含む振動系の固有振動数を建物の固有振動数(例えば建物の1次固有振動数)と同調させた装置である。振動系の固有振動数が建物の固有振動数と同調することで、地震時等の応答が効率よく抑制される。
慣性質量粘性ダンパー2は、ケース20と、ねじ軸212と、ねじ軸212の直動運動によって回転する慣性質量要素23と、粘性減衰要素25と、を備える。慣性質量粘性ダンパー2は、粘性減衰要素25による粘性減衰力(エネルギー吸収)とにより抵抗力を生じさせるダンパーである。慣性質量粘性ダンパー2において、慣性質量要素23及び粘性減衰要素25は、別々に配置される。粘性減衰要素25の構成は、特に限定されない。粘性減衰要素25は、例えば、粘性流体が充填されたシリンダ250と、シリンダ250に対して相対移動できるピストン252と、を備える。慣性質量粘性ダンパー2がばね(柔支持部材)としての弾性支持ユニット4に接続されることで、慣性質量粘性ダンパー2に設けられたねじ軸212の移動範囲が大きくなる。これにより、同調制御型制振装置1の減衰性能が向上する。同調制御型制振装置1においては、慣性質量要素23と弾性支持ユニット4を含む振動系が、粘性減衰要素25の効率的な作動に寄与する。粘性減衰要素25が効率的に作動することによって、粘性減衰要素25の作動域(変位)が構造材間の相対変位を上回る。
図1に示すダンパー支持部材30は、慣性質量要素23を支持するための部材である。ダンパー支持部材30は、第1梁101に固定されている。ダンパー支持部材30は、第1梁101から第2梁102に向かって延びている。
第1アーム31は、慣性質量要素23の一端に取り付けられている。例えば、第1アーム31は、ケース20のねじ軸212とは反対側の端部に固定されている。第1アーム31は、ピン310を介してダンパー支持部材30に連結されている。すなわち、第1アーム31はダンパー支持部材30にピン接合されている。ピン310は、ダンパー支持部材30をX方向に貫通している。第1アーム31は、ピン310を中心に回転できる。すなわち、ダンパー支持部材30と第1アーム31との間で曲げモーメントは伝達されない。
第2アーム32は、慣性質量要素23の他端に取り付けられている。例えば、第2アーム32は、ケース20のねじ軸212の端部に固定されている。第2アーム32は、ピン320を介して弾性支持ユニット4に連結されている。すなわち、第2アーム32は弾性支持ユニット4にピン接合されている。第2アーム32は、ピン320を中心に回転できる。すなわち、弾性支持ユニット4と第2アーム32との間で曲げモーメントは伝達されない。
ダンパー支持部材35は、粘性減衰要素25を支持するための部材である。ダンパー支持部材35は、第1梁101に固定されている。ダンパー支持部材35は、第1梁101から第2梁102に向かって延びている。
第3アーム36は、シリンダ250の一端に取り付けられている。第3アーム36は、ピン360を介してダンパー支持部材35に連結されている。すなわち、第3アーム36はダンパー支持部材35にピン接合されている。ピン360は、ダンパー支持部材35をX方向に貫通している。第3アーム36は、ピン360を中心に回転できる。すなわち、ダンパー支持部材35と第3アーム36との間で曲げモーメントは伝達されない。
第4アーム37は、ピストン252の一端に取り付けられている。第4アーム37は、ピン320を介して弾性支持ユニット4に連結されている。すなわち、第4アーム37は弾性支持ユニット4にピン接合されている。第4アーム37は、ピン320を中心に回転できる。すなわち、弾性支持ユニット4と第4アーム37との間で曲げモーメントは伝達されない。
同調制御型制振装置1においては、慣性質量要素23と弾性支持ユニット4を含む振動系の固有振動数を建物の固有振動数と同調させる結果、地震時等におけるねじ軸212の軸方向の変位は、構造材間の相対変位よりも大きくなる場合がある。例えば、構造材間の相対変位は、地震時等における第1梁101のY方向の変位と第2梁102のY方向の変位との間の差である。弾性支持ユニット4は、第2梁102に支持される。弾性支持ユニット4は、図1に示すように支持部材40と、弾性部材42と、補助部材43と、締結部材44と、連結部材45と、を備える。
支持部材40は、図1に示すように第2梁102に固定される。支持部材40は、図3に示すように、基部401と、端面部402と、2つのクランプ部403と、締結部材404と、を備える。基部401は、例えばH形鋼である。基部401の一端が第2梁102に固定される。端面部402及びクランプ部403は、基部401の他端に設けられた板である。端面部402は、Z軸に対して直交する。クランプ部403は、Y軸に対して直交する。2つのクランプ部403は、端面部402のY方向の両端に配置される。
弾性部材42は、板バネである。弾性部材42は、支持部材40に固定される。弾性部材42は、地震時等において第1構造材(第1梁101)、第2構造材(第2梁102)、及び慣性質量粘性ダンパー2の相互作用に応じて変形する。弾性部材42のうち最も面積の大きい面である主面429は、Y軸に対して直交している。2つの主面429間の距離が弾性部材42の厚さである。すなわち、弾性部材42の厚さ方向はY軸に沿っている。弾性支持ユニット4は複数の弾性部材42を備える。複数の弾性部材42がY方向に重ねられている。複数の弾性部材42は、端面部402に置かれ且つ2つのクランプ部403の間に配置されている。複数の弾性部材42のうちY方向の端に位置する弾性部材42とクランプ部403との間にはスペーサ41が設けられる。弾性部材42の厚さ及び弾性部材42の数に応じてスペーサ41の厚さ及び数が調整される。弾性部材42は、締結部材404によってクランプ部403に固定されている。例えば締結部材404は、クランプ部403、スペーサ41、及び複数の弾性部材42を貫通するボルト及びナットである。
図3に示すように、クランプ部403は、長穴403hを備える。長穴403hの長手方向はZ軸に沿う。スペーサ41は、長穴41hを備える。長穴41hの長手方向はZ軸に沿う。Y方向から見て、長穴41hは、長穴403hに重なる。弾性部材42は、長穴42hを備える。長穴42hの長手方向はZ軸に沿う。Y方向から見て、長穴42hは、長穴41h及び長穴403hに重なる。締結部材404のボルトは、長穴403h、長穴41h及び長穴42hを貫通している。締結部材404のナットが緩められると、締結部材404はZ方向に移動できる。
弾性部材42は、図3及び図4に示すように複数の取付部420を備える。取付部420は、例えば孔である。例えば、1つの弾性部材42が備える取付部420の数は例えば2つである。取付部420は、弾性部材42をY方向に貫通している。すなわち、取付部420は、一方の主面429から他方の主面429に向かって延びている。取付部420は、支持部材40の連結部材45側の端部から連結部材45の支持部材40側の端部までの間に配置される。
補助部材43は板状の部材である。例えば、補助部材43のX方向の長さは、弾性部材42のX方向の長さに等しい。補助部材43のY方向の長さは、弾性部材42のY方向の長さに等しい。補助部材43のZ方向の長さは、弾性部材42のZ方向の長さよりも小さい。補助部材43のうち最も面積の大きい面である主面439は、Y軸に対して直交している。2つの主面439間の距離が補助部材43の厚さである。すなわち、補助部材43の厚さ方向はY軸に沿っている。弾性支持ユニット4は、例えば2つの補助部材43を備える。補助部材43が、複数の弾性部材42のY方向の両側に1つずつ重ねられている。
補助部材43は、図3及び図4に示すように複数の取付部430を備える。取付部430は、例えば孔である。取付部430は、補助部材43をY方向に貫通している。すなわち、取付部430は、一方の主面439から他方の主面439に向かって延びている。1つの補助部材43が備える取付部430の数は例えば2つである。隣接する取付部430の間の間隔は、隣接する取付部420の間の間隔に等しい。Y方向から見て、取付部430は取付部420に重なる。
連結部材45は、弾性部材42に対して支持部材40とは反対側に配置される。図4に示すように、連結部材45は、本体部451と、フランジ部452と、2つのクランプ部453と、突出部457と、を備える。本体部451は、第2アーム32及び第4アーム37に連結される板状部材である。ピン320が本体部451をX方向に貫通している。フランジ部452は、本体部451の第2梁102側の端部に固定された板である。クランプ部453は、L字状の部材である。クランプ部453は、締結部材456によってフランジ部452に固定されている。例えば締結部材456は、クランプ部453及びフランジ部452を貫通するボルト及びナットである。2つのクランプ部453は、複数の弾性部材42をY方向の両側から挟む。弾性部材42は、締結部材454によってクランプ部453に固定されている。例えば、締結部材454は、クランプ部453及び複数の弾性部材42を貫通するボルト及びナットである。突出部457は、本体部451の第1梁101側の端部に固定される。図5に示すように、突出部457はT字状の部材である。突出部457は、Z軸に対して直交する底板4571と、底板4571から+Z方向に突出する縦板4572と、を備える。
ストッパー6は、図2に示す弾性支持ユニット4のX方向の揺れを制限する部材である。図5に示すように、ストッパー6は、第1梁101に固定される。ストッパー6は、例えばL字状の部材である。同調制御型制振装置1は、2つのストッパー6を備える。2つのストッパー6は、X方向に沿って並んでいる。2つのストッパー6の間には隙間が設けられている。
2つのストッパー6の間に突出部457が配置される。具体的には、縦板4572が2つのストッパー6の間に配置される。2つのストッパー6により、突出部457のX方向の移動が制限される。言い換えると、弾性支持ユニット4に加わるX方向の荷重は、突出部457及びストッパー6を介して第1梁101に伝わる。一方、突出部457はX方向に移動できる。弾性支持ユニット4に加わるY方向の荷重は、ストッパー6に伝わらない。したがって、X軸まわりの曲げモーメントに対しては、弾性支持ユニット4は片持ち梁として変形する。
地震時等において弾性支持ユニット4にはX軸まわりの曲げモーメントが加わる。弾性支持ユニット4にはX軸まわりの曲げが生じる。このため、連結部材45がY方向に沿って往復運動する。連結部材45の往復運動は、第2アーム32を介してねじ軸212に伝わる。また、連結部材45の往復運動は、第4アーム37を介してピストン252に伝わる。
図6に示す断面におけるX軸に関する断面二次モーメントは、Y軸に関する断面二次モーメントよりも小さい。
なお、弾性支持ユニット4は必ずしも第2梁102に固定されていなくてもよい。弾性支持ユニット4は、第1梁101に固定されていてもよい。慣性質量粘性ダンパー2は、必ずしも第1梁101に支持されていなくてもよい。慣性質量粘性ダンパー2は、弾性支持ユニット4が固定された構造材とは異なる構造材に支持されていればよい。
なお、取付部420の数は、必ずしも2つでなくてもよい。例えば取付部420の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。ただし、取付部420の数は2つ以上である方が、補助部材43の位置がずれにくい点で好ましい。
以上で説明したように、同調制御型制振装置1は、慣性質量粘性ダンパー2と、弾性支持ユニット4と、を備える。慣性質量粘性ダンパー2は、第1構造材(第1梁101)に支持される。弾性支持ユニット4は、第1構造材(第1梁101)とは異なる第2構造材(第2梁102)に支持され且つ慣性質量粘性ダンパー2に連結される。弾性支持ユニット4は、第1構造材(第1梁101)、第2構造材(第2梁102)、及び慣性質量粘性ダンパー2の相互作用に応じて変形する弾性部材42と、弾性部材42を支持する支持部材40と、を備える。支持部材40は、弾性部材42の長手方向に沿う長穴403hを有し且つ弾性部材42の両側に配置されるクランプ部403と、長穴403hに取り付けられる締結部材404と、を備える。
これにより、建物が完成した後でも、弾性部材42の弾性変形可能な長さを調整することが可能となる。建物の実際の固有周期が測定された後に弾性部材42の弾性変形可能な長さが調整されると、弾性支持ユニット4の剛性が適切な値に近付く。同調制御型制振装置1は、慣性質量粘性ダンパー2に連結される部材(弾性支持ユニット4)の剛性を容易に適切な値に近付けることができる。
また、慣性質量粘性ダンパー2の軸方向に平行な軸を第1軸(Y軸)とし、第1軸(Y軸)に対して直交し且つ弾性部材42の長手方向に対して直交する軸を第2軸(X軸)とする。この場合、弾性部材42の長手方向に対して直交する平面で弾性部材42を切った断面(図6に示す断面)において、第2軸(X軸)に関する断面二次モーメントは、第1軸(Y軸)に関する断面二次モーメントよりも小さい。なお、慣性質量粘性ダンパー2の軸方向は、ねじ軸212の軸方向を意味する。言い換えると、慣性質量粘性ダンパー2の軸方向は、慣性質量要素23の回転軸と平行な方向を意味する。
これにより、弾性支持ユニット4の剛性を調整しやすくなるので、弾性支持ユニット4の剛性を所望の値にすることが容易となる。
慣性質量粘性ダンパー2は、慣性質量要素23と、粘性減衰要素25と、を備える。
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係る同調制御型制振装置の正面図である。図8は、図7におけるC-C断面図である。なお、図8において、第4アーム37の周辺部分は、簡略化されている。図9は、図7における支持部材の拡大図である。図10は、図8における支持部材の拡大図である。図11は、図7における連結部材の拡大図である。図12は、図8における連結部材の拡大図である。図13は、図7におけるD-D断面図である。なお、上述した実施の形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図7に示すように、実施の形態2に係る同調制御型制振装置1Aは、弾性支持ユニット4Aと、スライダー7と、を備える。
同調制御型制振装置1Aにおいては、慣性質量要素23と弾性支持ユニット4Aを含む振動系の固有振動数を建物の固有振動数と同調させる結果、地震時等におけるねじ軸212の軸方向の変位は、構造材間の相対変位よりも大きくなる場合がある。弾性支持ユニット4Aは、第1梁101及び第2梁102に支持される。弾性支持ユニット4Aは、図7に示すように支持部材40Aと、弾性部材42Aと、補助部材43Aと、締結部材44Aと、連結部材45Aと、を備える。
支持部材40Aは、図9に示すように2つのスペーサ407と、2つのクランプ部405と、4つの締付部406と、締結部材409と、を備える。スペーサ407は、複数の弾性部材42Aに対してY方向の両側に配置される。クランプ部405は、例えばL字状の部材である。クランプ部405は、第2梁102に固定される。2つのクランプ部405は、複数の弾性部材42AをY方向の両側からスペーサ407を介して挟む。クランプ部405は、長穴405aを備える。長穴405aの長手方向はY軸に沿う。クランプ部405は、締結部材408によって第2梁102に固定される。例えば締結部材408は、長穴405a及び第2梁102を貫通するボルト及びナットである。締付部406は、例えばC字状の部材である。締付部406は、図9及び図10に示すように第1側板4061と、2つの第2側板4062とを備える。第1側板4061は、X軸に対して直交している。第2側板4062は、第1側板4061のY方向の端部に配置され、Y軸に対して直交している。2つの第2側板4062が2つのクランプ部405をY方向から挟んでいる。締付部406は、締結部材409によってクランプ部405に固定される。例えば、締結部材409は、締付部406、クランプ部405及びスペーサ407を貫通するボルト及びナットである。締付部406は、スペーサ407を介してクランプ部405を弾性部材42Aに押し付ける。
締付部406がクランプ部405から外され且つ長穴405a及び第2梁102を貫通するボルトが緩められると、クランプ部405はY方向に移動できる。2つのクランプ部405間のY方向の距離を調整することが可能である。
弾性部材42Aは、板バネである。弾性部材42Aは、支持部材40Aに固定される。弾性部材42Aは、地震時等において第1構造材(第1梁101)、第2構造材(第2梁102)、及び慣性質量粘性ダンパー2の相互作用に応じて変形する。弾性部材42Aのうち最も面積の大きい面である主面429Aは、X軸に対して直交している。2つの主面429A間の距離が弾性部材42Aの厚さである。すなわち、弾性部材42Aの厚さ方向はX軸に沿っている。弾性支持ユニット4Aは複数の弾性部材42Aを備える。複数の弾性部材42AがY方向に重ねられている。複数の弾性部材42Aは、第2梁102に置かれ且つ2つのクランプ部405の間に配置されている。複数の弾性部材42Aは、2つのクランプ部405に締め付けられる。
図9に示すように、スペーサ407は、長穴407hを備える。長穴407aの長手方向はZ軸に沿う。クランプ部405は、長穴405hを備える。長穴405hの長手方向はZ軸に沿う。締結部材409のボルトは、第2側板4062に設けられた丸孔4062a、長穴405h及び長穴407hを貫通している。締結部材409のボルトは、弾性部材42Aを貫通していない。締結部材409のナットが緩められると、締結部材409は締付部406と共にZ方向に移動できる。
弾性部材42Aは、図10及び図12に示すように複数の取付部420Aを備える。取付部420Aは、例えば孔である。取付部420Aは、弾性部材42AをX方向に貫通している。すなわち、取付部420Aは、一方の主面429Aから他方の主面429Aに向かって延びている。1つの弾性部材42Aが備える取付部420Aの数は例えば3つである。取付部420Aは、支持部材40Aの連結部材45A側の端部から連結部材45Aの支持部材40A側の端部までの間に配置される。
補助部材43Aは板状の部材である。例えば、補助部材43AのX方向の長さは、弾性部材42AのX方向の長さに等しい。補助部材43AのY方向の長さは、弾性部材42AのY方向の長さに等しい。補助部材43AのZ方向の長さは、弾性部材42AのZ方向の長さよりも小さい。補助部材43Aのうち最も面積の大きい面である主面439Aは、X軸に対して直交している。2つの主面439A間の距離が補助部材43Aの厚さである。すなわち、補助部材43Aの厚さ方向はX軸に沿っている。弾性支持ユニット4Aは、例えば2つの補助部材43Aを備える。補助部材43Aが、複数の弾性部材42AのX方向の両側に1つずつ重ねられている。
補助部材43Aは、図10及び図12に示すように複数の取付部430Aを備える。取付部430Aは、例えば孔である。取付部430Aは、補助部材43AをX方向に貫通している。すなわち、取付部430Aは、一方の主面439Aから他方の主面439Aに向かって延びている。1つの補助部材43Aが備える取付部430Aの数は例えば3つである。隣接する取付部430Aの間の間隔は、隣接する取付部420Aの間の間隔に等しい。X方向から見て、取付部430Aは取付部420Aに重なる。
補助部材43Aは、締結部材44Aによって弾性部材42Aに固定される。例えば締結部材44Aは、取付部420A及び取付部430Aを貫通するボルト及びナットである。補助部材43Aは、弾性部材42Aが振動している時に弾性部材42Aがはらみだすことを抑制する。弾性部材42Aにおいて、はらみだすとは、X方向の両側に向かって弧を描くように膨張することを意味する。
連結部材45Aは、弾性部材42Aに対して支持部材40Aとは反対側に配置される。図11に示すように、連結部材45Aは、2つのスペーサ458と、2つのクランプ部453Aと、2つの締付部454Aと、を備える。スペーサ458は、複数の弾性部材42Aに対してY方向の両側に配置される。クランプ部453Aは、L字状の部材である。クランプ部453Aは、長穴453aを備える。長穴453aの長手方向はY軸に沿う。クランプ部453Aは、締結部材456Aによってフランジ部452に固定されている。例えば締結部材456Aは、長穴453a及びフランジ部452を貫通するボルト及びナットである。2つのクランプ部453Aは、複数の弾性部材42AをY方向の両側からスペーサ458を介して挟む。締付部454Aは、図11及び図12に示すように第1側板4541と、2つの第2側板4542とを備える。第1側板4541は、X軸に対して直交している。第2側板4542は、第1側板4541のY方向の端部に配置され、Y軸に対して直交している。2つの第2側板4542が2つのクランプ部453AをY方向から挟んでいる。締付部454Aは、締結部材455によってクランプ部453Aに固定される。例えば締結部材455は、締付部454A、クランプ部453A及びスペーサ458を貫通するボルト及びナットである。締付部454Aは、スペーサ458を介してクランプ部453Aを弾性部材42Aに押し付ける。
締付部454Aがクランプ部453Aから外され且つ長穴453a及びフランジ部452を貫通するボルトが緩められると、クランプ部453AはY方向に移動できる。2つのクランプ部453A間のY方向の距離を調整することが可能である。
スライダー7は、第1梁101に固定される。スライダー7は、連結部材45Aの本体部451に連結される。スライダー7は、弾性支持ユニット4Aの+Z方向の端部を、Y方向に移動でき且つX方向及びZ方向には移動できないように支持する。X軸まわりの曲げモーメントは、連結部材45Aからスライダー7を介して第1梁101に伝わる。
図13に示す断面におけるX軸に関する断面二次モーメントは、Y軸に関する断面二次モーメントよりも大きい。
弾性支持ユニット4Aの第2梁102との接合部に生じる曲げ応力は、実施の形態1の弾性支持ユニット4の第2梁102との接合部に生じる曲げ応力の1/2倍である。これは、弾性支持ユニット4Aの一端がスライダー7を介して第1梁101に支持されていることに起因する。
同調制御型制振装置1Aは、外から見えることがある。このため、弾性支持ユニット4AのY方向の寸法は小さい方が好ましい。実施の形態2の同調制御型制振装置1Aにおいては弾性部材42A及び補助部材43AがX方向に重なるため、弾性支持ユニット4AのY方向の寸法が小さくなりやすい。
なお、取付部420Aの数及び取付部430Aの数は、必ずしも3つでなくてもよい。例えば取付部420Aの数及び取付部430Aの数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。ただし、取付部420Aの数及び取付部430Aの数は2つ以上である方が、補助部材43Aの位置がずれにくい点で好ましい。
図14は、同調制御型制振装置の施工方法を示すフローチャートである。建物の固有周期は設計時点においてある程度予測することができる。しかしながら、予測した固有周期と実際の固有周期との間にずれが生じる可能性がある。実施の形態1の同調制御型制振装置1及び実施の形態2の同調制御型制振装置1Aによれば、設置後に減衰力を調整することが可能となる。下記においては、実施の形態2の同調制御型制振装置1Aを例として説明する。
図14に示すように、建物の理論上の固有周期に基づき、弾性部材42Aが施工される(ステップS1)。なお、ステップS1において補助部材43Aが弾性部材42Aに固定されてもよいし、別の工程で補助部材43Aが弾性部材42Aに固定されてもよい。
次に、建物の実際の固有周期が測定される(ステップS2)。建物の実際の固有周期は、例えば常時微動によって生じる建物の揺れを解析することで得られる。常時微動とは、常に生じている建物床面等の微小な揺れである。常時微動によって生じる建物の揺れは、例えば加速度センサ等を用いて計測される。
理論上の固有周期と実際の固有周期とのずれが許容値未満であった場合(ステップS3、No)、同調制御型制振装置1Aの施工は完了する。一方、理論上の固有周期と実際の固有周期とのずれが許容値以上であった場合(ステップS3、Yes)、実際の固有周期に基づき弾性支持ユニット4Aの適切な剛性が算出される(ステップS4)。
次に、ステップS4で算出された弾性支持ユニット4Aの適切な剛性に基づき、弾性部材42Aの適切な弾性変形可能な長さを算出する(ステップS5)。
次に、ステップS5で算出された弾性部材42Aの適切な弾性変形可能な長さに基づいて、締結部材409の位置が変更される(ステップS6)。
また、ステップS4の算出結果によっては、弾性部材42Aの数を変更してもよい。この場合、弾性部材42Aと支持部材40Aとの間の連結、及び弾性部材42Aと連結部材45Aとの間の連結が一旦解除される。具体的には、図9に示す締付部406がクランプ部405から外され且つ締結部材408が緩められる。図11に示す締付部454Aがクランプ部453Aから外され且つ締結部材456Aが緩められる。連結部材45Aがスライダー7に支持されているので、締結部材408及び締結部材456Aが緩められても連結部材45Aの位置は保たれる。これにより、弾性部材42Aの追加及び弾性部材42Aの取り外しが可能となる。例えば、ステップS4で算出された弾性支持ユニット4Aの適切な剛性に基づき、弾性部材42Aの適切な数が算出される。適切な弾性部材42Aの数がステップS1で施工された弾性部材42Aの数よりも多ければ、弾性部材42Aが追加される。適切な弾性部材42Aの数がステップS1で施工された弾性部材42Aの数よりも少なければ、弾性部材42Aの一部が取り外される。
また、ステップS4の算出結果によっては、弾性部材42Aの向きが変えられてもよい。すなわち、厚さ方向がY軸に沿うように弾性部材42Aが回転させられてもよい。この場合、弾性部材42Aと支持部材40Aとの間の連結、及び弾性部材42Aと連結部材45Aとの間の連結が一旦解除される。連結部材45Aがスライダー7に支持されているので、弾性部材42Aが弾性支持ユニット4Aから取り外されても連結部材45Aの位置は保たれる。弾性部材42Aの向きが変えられた後、弾性部材42Aが支持部材40A及び連結部材45Aに連結される。弾性部材42Aの回転前と回転後でY方向の長さが変わる場合、2つのクランプ部405間の距離及び2つのクランプ部453A間の距離が調整される。
また、同調制御型制振装置1Aの特徴は下記の通りである。すなわち、慣性質量粘性ダンパー2の軸方向に平行な軸を第1軸(Y軸)とし、第1軸(Y軸)に対して直交し且つ弾性部材42Aの長手方向に対して直交する軸を第2軸(X軸)とする。この場合、弾性部材42Aの長手方向に対して直交する平面で弾性部材42Aを切った断面(図13に示す断面)において、第2軸(X軸)に関する断面二次モーメントは、第1軸(Y軸)に関する断面二次モーメントよりも大きい。
これにより、弾性支持ユニット4Aの剛性を所望の値にするために必要な弾性部材42Aの数が少なくなる。さらに、複数の弾性部材42Aを第2軸(X軸)に沿う方向に重ねやすいので、弾性支持ユニット4AのY方向の寸法が小さくなりやすい。
また同調制御型制振装置1Aの施工方法は、建物の固有周期を測定する第1ステップ(図14のステップS2)と、固有周期に基づいて弾性支持ユニット4Aに求められる剛性を算出する第2ステップ(図14のステップS4)と、剛性に基づいて弾性部材42Aに求められる弾性変形可能な長さを算出する第3ステップ(図14のステップS5)と、弾性部材42Aに求められる弾性変形可能な長さに基づいて締結部材409の位置を変更する第4ステップ(図14のステップS6)と、を含む。
これにより、建物の実際の固有周期に基づいて弾性部材42Aの弾性変形可能な長さが調整される。このため、弾性支持ユニット4Aの剛性が適切な値に近付く。同調制御型制振装置1Aの施工方法は、慣性質量粘性ダンパー2に連結される部材(弾性支持ユニット4A)の剛性を容易に適切な値に近付けることができる。
(実施の形態3)
図15は、実施の形態3に係る同調制御型制振装置の正面図である。なお、上述した実施の形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図15に示すように、実施の形態3に係る同調制御型制振装置1Bは、慣性質量粘性ダンパー2Bを備える。慣性質量粘性ダンパー2Bにおいては、慣性質量要素23及び粘性減衰要素25Bが1つのケース20Bの内部に配置される。粘性減衰要素25Bの構成は、特に限定されない。粘性減衰要素25Bは、例えば、粘性流体が充填されたシリンダと、ピストンと、を備えていてもよい。粘性減衰要素25Bは、慣性質量要素23と、慣性質量要素29に接する粘性流体が充填されたケース20Bとで構成されてもよい。
弾性支持ユニット4の剛性が適切に設定されることで、同調制御型制振装置1Bの減衰性能が向上する。なお、実施の形態3の慣性質量粘性ダンパー2Bは、実施の形態2の弾性支持ユニット4Aと組み合わせられてもよい。