JP2012122252A - 梁の振動低減機構 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本体梁2が接合されている柱1または本体梁の端部に対して基端が固定され先端が自由端とされた短スパンの片持ち梁8を設けて、該片持ち梁を本体梁の側部において本体梁に対して上下方向に相対振動可能に並設する。片持ち梁の先端と本体梁との間に回転慣性質量ダンパー3を介装し、回転慣性質量ダンパーと片持ち梁とにより構成される付加振動系の固有振動数を主振動系としての本体梁の固有振動数に同調させる。片持ち梁をトラス材により構成する。回転慣性質量ダンパーと本体梁または片持ち梁との間に、片持ち梁とともに付加振動系の固有振動数を調整するための付加ばねとしての板ばね11を介装する。
【選択図】図1
Description
それに対処する従来技術として、たとえば特許文献1に示されるようなTMD(Tuned Mass Damper)がある。これは床上に付加質量として設置したTMDを床の振動周期に対して同調するように振動させることによって床の振動低減を図るものであるが、この種のTMDは一般に500kg〜1tonもの質量を要するから制振対象の床やそれを支持する梁に大きな負担がかかるという問題がある。
これは、図6に示すように柱1間に架設された制振対象の本体梁2の長さ方向中央位置に、ボールねじ機構によって小質量の回転錘(フライホイール)を回転させる構成の回転慣性質量ダンパー3を設置するとともに、それを作動させるための斜材5を本体梁2の側部に下に凸の折れ線状をなすように張設したもので、本体梁2やその上部に一体に形成されているスラブ4が上下振動を生じた際に回転慣性質量ダンパー3が作動して制振効果を得るものである。
これによれば、回転錘の実際の質量が慣性質量効果によって数百倍にも拡大されてTMDにおける付加質量として利用し得るので回転錘の実際の質量は小さくて済み、したがって通常のTMDを設置する場合のように梁や床に対して大きな負担になることがない。
そして、図6に示したものでは本体梁2の側部に張設した斜材5を付加ばねとして機能せしめて、基本的にはその斜材5のばね剛性の調節により固有振動数の同調を行うようにしている。
また、本体梁1にスラブ4を受けるための直交小梁を設ける場合、本体梁1の端部に設置するべき小梁が斜材に干渉してしまって小梁の配置計画に支障を来す場合もある。
これは柱1間に架設された本体梁2(図示例ではH形鋼からなる鉄骨梁)を制振対象として、その本体梁2およびその上部に一体に形成されているスラブ4の上下方向の振動を低減するためのものである。
本実施形態の振動低減機構は、基本的には特許文献2に示されているものと同様に、回転慣性質量ダンパー3を利用してTMDとして機能することにより制振効果を得るものであるが、本実施形態では回転慣性質量ダンパー3を図6や図7に示したもののように本体梁2の中央部に設置することに代えて、全4台の回転慣性質量ダンパー3を本体梁2の両端部においてその両面側にそれぞれ片持ち梁8を介して設置したことを主眼とする。
そして、そのうえで図2に示すように片持ち梁8の先端に回転慣性質量ダンパー3を下向きに固定し、回転慣性質量ダンパー3の下端には板ばね11の中央部を連結し、板ばね11の両端部を本体梁2の下フランジに対して連結具12を介して固定しており、これにより本体梁2が上下振動(片持ち梁8に対する相対振動)を生じた際には回転慣性質量ダンパー3が作動するようになっている。
いずれにしても、本実施形態のように回転慣性質量ダンパー3を梁端部に設置する場合には中央位置に設置する場合に比べて慣性質量と減衰性能をより大きく設定する必要があるが、慣性質量は回転錘(フライホイール)の慣性質量モーメントに比例し、慣性質量モーメントは回転錘の厚さが同じであれば直径の4乗に比例するから、回転錘の直径を僅かに大きくするだけで慣性質量モーメントを十分に大きくすることができるし、回転錘の質量や径方向の質量分布の調整により直径が同じであっても回転慣性を大きくできるから、回転慣性質量ダンパー3全体をさして大形化することなく所望の回転慣性を容易に得ることができる。
また、減衰性能を大きくするためには適宜の減衰要素を付加すれば良いし、後述するように回転慣性質量ダンパー3自体に減衰機能を持たせることも可能であるから、減衰性能を大きくすることも特に支障はない。
また、本体梁2にスラブ4を受ける小梁を設ける場合、デッキ床を受けるための小梁スパンは通常3.2m以下であるから、片持ち梁8の先端に設置する回転慣性質量ダンパー3の設置位置をその寸法内に納めれば小梁配置計画に支障を来すこともない。
また、図7に示したように本体梁2の全長にわたってトラス材7を設ける場合に比較すれば、大掛かりな二重梁構造となることもないから構造全体を簡略化でき、コスト的にも施工性の点でも遙かに有利である。
また、上記実施形態では片持ち梁8の端部両面側にそれぞれ回転慣性質量ダンパー3を設置したが、回転慣性質量ダンパー3を片持ち梁8の片面側にのみ設置することでも良い。
また、片持ち梁8を図7に示したようなトラス材7により形成すれば、その片持ち梁8の設置位置に対しても梁貫通孔6を設けることができ、結果的に本体梁2の全長にわたって梁貫通孔6を設けることも可能であるから、梁貫通孔6の位置に対する制約をさらに軽減することができる。
いずれにしても、板ばね11を片持ち梁8とともに付加ばねとして機能させてそのばね剛性の調節によりTMDとしての同調を行えば良いが、その場合においては図2に示すように板ばね11の両端部を本体梁2に対して連結具12を介して支持するようにすると良い。あるいは、上記のように回転慣性質量ダンパー3を本体梁2に対して固定する場合には、板ばね11を連結具12を介して片持ち梁8に対して連結すれば良い。
これにより、板ばね11の素材やその厚み、形状寸法を調節することで板ばね11としてのばね剛性を容易に調節できるばかりでなく、連結具12による板ばね11の支持点間の距離を調節することによってもばね剛性を任意にかつ広範囲に調節可能であるので、TMDとしての同調を行う上で有利である。
但し、必ずしもそうすることはなく、片持ち梁8を単独で加ばねとして機能させてその片持ち梁8のばね剛性の調節のみで同調を行うことが可能であれば(その場合の具体的な同調例については後述する)、板ばね11を省略することも可能である。
これは、ケーシング20内にボールナット21を回転自在に支持してそれにボールねじ軸22を螺着し、ボールナット21に磁性材料からなるフライホイール23を連結するとともにフライホイール23に対して磁石24を近接配置したものであり、この回転慣性質量ダンパー3が作動してフライホイール23が回転した際には磁石24によりフライホイール23に渦電流が発生して運動エネルギーを消費することにより減衰効果を得る構成のものである。
本体梁2をH-800×300×16×28×18のH形鋼、断面二次モーメントI=309000cm4、せん断断面積Aw=128cm2、自重227kg/mとし、その本体梁2に単位面積重量4750N/m2、奥行き6.4m、スパン18mのスラブ4が一体化した合成梁を想定し、それを解析対象とする。
スラブ4との合成効果により断面二次モーメントは本体梁2単体の場合の2倍とする。主振動系としての減衰は一次固有振動数に対し1%の初期剛性比例型とする。
この主振動系は固有値解析により一次固有振動数は6.22050Hz、刺激係数β=1.31868、有効質量4.253×104kgである。
また、他の比較例として、図3(b)に示すように回転慣性質量ダンパー3を梁中央位置に設置して斜材5により作動させる場合をCase2とする。Case2は基本的には図6に示したものと同様であるが、ここでは斜材5の両端を本体梁2の梁端から1400mm内側の位置に固定して全副15.2mとし、ライズ700mmとしている。
その斜材5としてはφ77mmの鋼棒を用い、斜材5のばね剛性Kd=2.097×106N/mとする。Case2での回転慣性質量ダンパー3の減衰係数Cd=1.479×104N/(m/s)、慣性質量md=1222.9kgとする。
本発明での回転慣性質量ダンパー3の諸元は、減衰係数Cd=6.316×104N/(m/s)、慣性質量md=5221.0kgとする。
本解析では板ばね11のばね剛性を無視して片持ち梁8のばね剛性のみを付加ばねとして評価することとし、付加ばねとしての片持ち梁8をC-450×138×9×14の溝形鋼としてそのばね剛性Kd=8.954×106N/mとする。但し、板ばね11のばね剛性を考慮して片持ち梁8と板ばね11との総合ばね剛性をそのように設定しても同様である。
Case1では6.2Hzに非常に大きなピークが存在しているが、Case2ではそれが激減している。
また、本発明のCase3では、TMDの設置位置を本体梁2の端部に変更したにも係わらず、TMDとしての諸元を適切に設定してCase2の場合に比べて慣性質量と減衰性能を大きくしたことにより、Case2と同等の効果が得られることが確認できた。
その結果として、Case1では最大8gal程度となって非常に大きい応答となるが、Case2ではそれが激減しており、さらに本発明のCase3でもCase2と同程度の応答レベルが得られることが確認できた。
2 本体梁
3 回転慣性質量ダンパー
4 スラブ
8 片持ち梁
9 スチフナ
10 リブ
11 板ばね
12 連結具
20 ケーシング
21 ボールナット
22 ボールねじ軸
23 フライホイール
24 磁石
Claims (3)
- 振動を抑制するべき対象の本体梁に組み付けられて該本体梁の上下方向の振動を抑制するための振動低減機構であって、
前記本体梁が接合されている柱または前記本体梁の端部に対して基端が固定され先端が自由端とされた短スパンの片持ち梁を設けて、該片持ち梁を前記本体梁の側部において該本体梁に対して上下方向に相対振動可能に並設し、
該片持ち梁の先端と前記本体梁との間にそれらの間で生じる相対振動により作動する回転慣性質量ダンパーを介装するとともに、
該回転慣性質量ダンパーと前記片持ち梁とにより構成される付加振動系の固有振動数を主振動系としての前記本体梁の固有振動数に同調させてなることを特徴とする梁の振動低減機構。 - 請求項1記載の梁の振動低減機構であって、
前記片持ち梁をトラス材により構成してなることを特徴とする梁の振動低減機構。 - 請求項1または2記載の梁の振動低減機構であって、
前記回転慣性質量ダンパーと前記本体梁または前記片持ち梁との間に、前記回転慣性質量ダンパーおよび前記片持ち梁に対して直列に接続されて前記片持ち梁とともに前記付加振動系の固有振動数を調整するための付加ばねとしての板ばねを介装してなることを特徴とする梁の振動低減機構。
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