JP2010038318A - 梁の振動低減機構 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本体梁1の長さ方向中間部に該本体梁の上下方向の振動により作動する回転慣性質量タンパー3を設置する。回転慣性質量ダンパーに対して本体梁の曲げ変形を伝達するための斜材4を本体梁の側部において下に凸の折れ線状をなすように張設し、斜材の両端部をそれぞれ本体梁の両端上部に連結するとともに斜材の中間部を回転慣性質量ダンパーに連結する。斜材を付加バネ5により緊張してプレストレスを導入する。回転慣性質量ダンパーと斜材と付加バネとにより構成される付加振動系の固有振動数を主振動系としての本体梁の固有振動数(1次固有振動数や特定の共振振動数)に同調させる。
【選択図】図1
Description
また、回転慣性質量ダンパーと斜材は本体梁の梁成の範囲内に設置することも可能であり、これを設置するための格別のスペースを確保する必要はないし、有効天井高が小さくなり階高を大きくする必要も生じない。
図中、符号1は振動低減対象の本体梁であり、2はその本体梁1の上下振動を低減するべく本体梁1の側部に組み付けられた振動低減機構である。
なお、回転慣性質量ダンパー3と付加バネ5に対してさらに並列に付加減衰6を配置するが、回転慣性質量ダンパー3自体に摩擦、粘性体、磁気抵抗機構などの減衰要素を組み込んで付加減衰6を省略することも可能である。
具体的には、図2に示すように、回転慣性質量ダンパー3の設置位置において、斜材4と付加バネ5と本体梁1だけからなる構造体に対して、回転慣性質量ダンパー3の上下端に荷重Pが作用したときの上端での変位をδ1、下端での変位をδ2、したがって上下端の鉛直変位をδ=δ1+δ2とし、そのときに生じる回転慣性質量がψ0であるとき、次式のように振動低減機構2の固有振動数f0を本体梁の1次固有振動数f1に同調させる。
なお、回転慣性質量ψ0はフライホイールの質量やその径寸法、厚さ、径方向の質量分布の調整により自由にかつ幅広く調整可能であるし、付加バネ5の剛性k0や斜材4の鉛直剛性k2等の諸元の調整も同様であるから、固有振動数の同調は容易に行うことができる。
勿論、特許文献2に示されるような付加梁は必要としないし、後述する具体例のように回転慣性質量ダンパー3と斜材4は本体梁1の梁成の範囲内に設置することも可能であるので、これを設置するための格別のスペースを確保する必要はないし、有効天井高が小さくなったり、階高を大きくする必要も生じない。
本例では本体梁1としてH形鋼を採用し、振動低減機構2を本体梁1の一方の側部においてその断面内、つまりウェブと上フランジと下フランジとにより囲まれる範囲内に配置するようにしたものである。
なお、付加減衰6として機能する適宜の減衰要素を一体に組み込むことが好ましく、それにより格別の付加減衰を設置する必要がない。例えば、ボールねじとナット部の摩擦トルクを減衰することもでき、予圧を調整することで摩擦トルクを設定できる。
本例においては、図5に示すように回転慣性質量ダンパー3を本体梁1のウェブに対してブラケット15により固定し、ケーシング14から下方に突出しているボールねじ軸11(もしくはボールねじ軸11の先端に連結した他のねじ軸)の中間部に斜材4を連結している。また、ボールねじ軸11(もしくはボールねじ軸11の先端に連結した他のねじ軸)の先端部を下フランジに形成されている孔内に挿通させ、その最先端部にはストッパー16を螺着してストッパー16と下フランジとの間に付加バネ5を介装している。
本体梁1の側部に斜材4を折れ線状に配置してその両端部を本体梁1の両端上部に固定する。回転慣性質量ダンパー3を本体梁1のウェブに固定する際には、ボールねじ軸11をケーシング14内に最大限引っ込めた状態でそのボールねじ軸11(もしくはボールねじ軸11を下方に延長するようにそれに連結した他のねじ軸)に上側のロックナット17を螺着し、ボールねじ軸11を斜材4の中間部に形成しておいた貫通孔に挿通させた後に下側のロックナット17を螺着して、上下のロックナット17により斜材4をボールねじ軸11に対して連結する。
同時に、ボールねじ軸11の先端部を本体梁1の下フランジに形成しておいた貫通孔に挿通させ、そこに付加バネ5(皿バネ)を装着してストッパー16を螺着する。
斜材4に対するプレストレスの導入はストッパー16の締め付け力を調整してボールねじ軸11を介して斜材を下方に引き寄せることで行うが、導入張力が大きい場合には多数の皿バネを重ねて使用すれば良い。
なお、図4〜図5に示すように本体梁1の要所には補強リブ18を取り付ければ良い。
本体梁をスパン16.5mの鉄骨梁(H-900×250×12×22)とし、床荷重は構造体を含め0.6tonf/m2とする。等価な振動モデルにおいて、構造体有効質量m=0.6×3.6×16.5/2=17.8ton、本体梁の断面積A=213cm2、断面2次モーメントI=275000cm4、両端ピンで全長にわたり正曲げ(コンクリートスラブが圧縮側)となるので、合成梁として機能することを考慮して断面2次モーメントの割増係数を2.0、J=550000cm4とする。
本体梁の長期鉛直たわみは中央部で1.8cmより、k1=9.9tonf/cm=9.7MN/m。
斜材のライズ(高低差)を800mmとすると、k2=1.2tonf/cm=1.2MN/m=0.12k1。
付加バネとして皿バネ(外径28mm、内径14.2mm、厚さ1.6mm、荷重3760N)を20枚直列使用すると、その全体高さ(厚さ)45mm、バネ剛性k0=0.37tonf/cm=370kN/m=0.038k1。
以上の諸元からψ0=0.145m=2.6ton。
固有値解析結果より、本体梁の1次固有振動数はf1=4.07Hz、固有角振動数はω0=2πf1=25.6rad/sec。
付加振動系の減衰は1次振動数でh=0.15として、c0=2hω0ψ0=20.0kN・sec/m=19.6kgf/kine。
本体梁の構造減衰は1次に対してh=0.01とした。
図7から、本発明の振動低減機構により応答倍率が90%も低減されることが分かる。また、斜材を剛結した場合には単に共振点がやや高振動数側にシフトするだけで応答低減は期待できないことが分かる。
上記設計例に対して本体梁の両端から上下動加振したときに応答倍率を図9に示す。床上からの加振モデルで同調させているために地震入力に対してはわずかに同調がずれているが、制振なしと比較すると共振点近傍において大幅な応答低減(約88%減)ができることが分かる。
本体梁の固有振動数が約4Hzなので、図7に示した応答倍率グラフの横軸ξ=0.5の入力が卓越することになり、制振による応答低減効果はこの2Hz加振にはほとんど効果が得られないが、加振力による床梁の振動を速やかに減衰させる効果は充分に得られる。
図11〜図12はその場合の応答特性を制振なしの場合と比較して示すものである。本発明による制振により最大応答変位が52μmから42μmへと0.80倍に低減し、また最大応答加速度は3.6galから2.6galへと0.72倍に低減し、10秒以降の後揺れが急峻に収束することが分かる。ただし、2Hzの加振成分については制振による低減効果はやはり小さい。
日本建築学会の「建築物の振動に関する居住性能評価指針」にある鉛直振動に関する性能評価曲線にこの結果をプロットすると図13に示すようになり、制振により一般的な事務所ビルでの性能(V−70)を満足する程度に納まることが分かる(応答結果をオクターブバンド処理せずに単に最大応答値だけで評価しているので、安全側だがやや過大評価となっている)。なお、床上での飛びはね等の衝撃荷重による後揺れについての特性は図11〜図12に示したようになるので、急峻に後揺れが減衰して居住性の向上を図ることができる。
上記の上下動加振入力を与えたときの応答結果を図15〜図16に示す(地震波形は30秒であるが後揺れの検討のために40秒間の応答解析とする)。
本発明の制振により最大応答変位が20mmから10mmへと0.50倍に低減し、最大応答加速度は689galから307galへと0.45倍に低減し、30秒以降の後揺れが急峻に収束し、大きな振幅の回数も大幅に低減することが分かる。
(1)従来のTMD機構と比較して小形軽量ながら大幅に応答低減できる機構である。回転慣性質量は実際の回転錘の数百倍〜千倍以上となり、これが従来のTMDの付加質量と同じに機能することから、従来のTMDでは実現できなかった大きな付加質量効果を付与できるためである。
(2)従来のTMDでは付加質量を構造物の1〜3%程度しか与えることが現実的にできなかったが、本発明によれば10〜50%以上でも容易に実現できるので、風や交通振動のような小振幅だけでなく地震時の応答低減にも適用できる。
(4)本体梁の断面性能をアップさせても共振点が高振動数側に移動するだけであるが、本発明によれば大きな減衰性能を付与できるのではるかに大きな応答適限が図れる。
(5)各構成要素を全てローコストな部品で構成できるため、大スパン梁に対する従来の振動低減対策に比較してローコストでより大きな振動抑制ができ、コストパフォーマンスに優れた機構である。
(6)回転慣性質量ダンパーに作用する反力(負担力)は加振力よりも小さいので容易に対応できる。
(7)構造体にTMDを設置する場合にはその重量が構造体躯体への負荷となるが、本発明の指導低減機構は従来のTMDに較べて遙かに軽量であることから、これを設置しても構造体躯体に対して大きな負荷とならない。
(8)インパクトダンパーと異なり応答低減効果は振幅に依存せず、そのため微振動から大振幅まで幅広く対応できる。
また、回転慣性質量ダンパーを作動させるための斜材の素材や張設の形態も、本体梁の側部において下に凸の折れ線状に張設する限りにおいて任意であって、たとえば図17(a)に示すように斜材4の両端を本体梁1の両端部からやや内側の位置に固定することでも良い。
また、上記実施形態では斜材の中央1個所のみを折れ点として扁平なV状の折れ線状に張設したが、たとえば図17(b)に示すように斜材4の中間部に2個所の折れ点を設定したり、さらに多数個所に折れ点を設定して多折れ線状に張設しても良く、いずれにしても斜材4の各折れ点の位置にそれぞれ回転慣性質量ダンパー3を設置して適正な同調を行えば良い。
2 振動低減機構
3 回転慣性質量ダンパー
4 斜材
5 付加バネ
6 付加減衰
10 ボールねじ機構
11 ボールねじ軸
12 ボールナット
13 フライホイール
14 ケーシング
15 ブラケット
16 ストッパー
17 ロックナット
18 補強リブ
Claims (3)
- 振動を抑制すべき対象の本体梁に組み付けられて該本体梁の上下方向の振動を抑制するための機構であって、
前記本体梁の長さ方向中間部に該本体梁の上下方向の振動により作動する回転慣性質量タンパーを設置し、
前記回転慣性質量ダンパーに対して前記本体梁の曲げ変形を伝達するための斜材を該本体梁の側部において下に凸の折れ線状をなすように張設して、該斜材の両端部をそれぞれ前記本体梁の両端上部に連結するとともに該斜材の中間部を前記回転慣性質量ダンパーに連結し、
前記斜材を付加バネにより緊張してプレストレスを導入し、
前記回転慣性質量ダンパーと前記斜材と前記付加バネとにより構成される付加振動系の固有振動数を、主振動系としての前記本体梁の固有振動数に同調させてなることを特徴とする梁の振動低減機構。 - 請求項1記載の梁の振動低減機構であって、
前記回転慣性質量ダンパーは、前記本体梁の上下方向の振動を回転運動に変換するボールねじ機構と、該ボールねじ機構により回転せしめられて回転慣性質量を生じるフライホイールと、それらボールねじ機構とフライホイールを収容するケーシングとを備えてなり、前記ケーシングを前記本体梁に対して固定するとともに、前記ボールねじ機構を構成しているボールねじ軸に対して前記斜材を連結し、
前記付加バネを前記ボールねじ軸と前記本体梁との間に介装することにより、該付加バネによって前記ボールねじ軸を介して前記斜材を緊張することにより該斜材に対してプレストレスを導入してなることを特徴とする梁の振動低減機構。 - 請求項2記載の梁の振動低減機構であって、
前記本体梁はH形鋼からなり、
前記斜材は前記本体梁としてのH形鋼のウェブと上フランジと下フランジとの間に配置される帯鋼からなり、
前記回転慣性質量ダンパーは、前記ケーシングが前記本体梁としてのH形鋼のウェブに対して固定されるとともに、前記ボールねじ軸が該H形鋼の下フランジを挿通してその先端部にストッパーが固定され、
前記付加バネは、前記ボールねじ軸の先端部に固定された前記ストッパーと前記本体梁としてのH形鋼の下フランジとの間に介装された皿バネからなることを特徴とする梁の振動低減機構。
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