JP2020153423A - 回転慣性装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】地震時に発生する建物の加速度を抑制すると共に、変位を抑制することができる回転慣性装置を提供する。【解決手段】本発明は、地震時に免震対象物の周期を長周期化とともに変位抑制するための回転慣性装置1であって、免震対象物と分離され、地盤側に固定された筐体2と、筐体に設けられ直線運動を回転運動に変換すると共に、一端が免震対象物に連結されたボールネジ機構10と、筐体内において回転自在に支持された回転ホイール20と、ボールネジ機構に生じる所定回転方向に対する回転を回転ホイールに伝達するワンウェイクラッチ25と、を備えることを特徴とする、回転慣性装置である。【選択図】図1

Description

本発明は、変位方向により回転慣性力の発揮のON/OFFを切り替える機能を有し、免震建物を長周期化するとともに、最大応答変位の増大も抑制することが可能な回転慣性装置に関する。
近年、大きな地震波形が観測されることが多く、従来の免震建物の変位が設計当時の想定値よりも大きくなって擁壁に衝突するという可能性が危惧されている。そのため、地震時における免震建物の最大変位を抑制することが求められている。免震建物は、地震により入力された力に基づく振動の周期を伸ばして振動を低減する構造を備える。近年の免震建物は、長周期長時間地震動への対策も必要とされてきており、周期を伸ばすだけではなく、さらなる変位抑制を図るよう設計されることが重要となっている。
長周期長時間地震動に対する対策として例えば、特許文献1及び特許文献2に記載された装置が提案されている。特許文献1には、長周期地震動の振動に対して建物が共振しないように建物の変位に応じて剛性と回転慣性質量が変化するように構成された免震構造物が記載されている。特許文献2には、長周期地震動の振動に対して建物が共振しないように建物の変位に応じて弾性係数が変化し、剛性を調節することができる免震構造物が記載されている。
建物の免震に用いられる免震装置には、例えば、回転慣性装置と硬化型装置とが知られている。回転慣性装置と硬化型装置の役割を簡単に示すと以下のようになる。回転慣性装置は、付加質量効果により周期が伸びることで応答加速度を抑制することができる。しかしながら、回転慣性装置は、見かけの剛性低下により免震対象物の変位を増大させることがある。硬化型装置は、大変形時に大きな変位抑制効果が期待できる。しかしながら、硬化型装置は、剛性増大により周期が短くなり免震対象物の応答加速度を増大させることがある。
特許文献1および特許文献2では、これら2つの装置を適切に組み合わせることにより、変位抑制効果と加速度低減効果の両方を満たす画期的な構造形式となっている。
特開2017−003089号公報 特開2017−003090号公報
特許文献1に記載された回転慣性を利用した装置は、立体カム機構を用いることで可変回転慣性質量機構を実現している。この可変回転慣性質量機構は特許文献2の可変剛性機構と組み合わせることにより、共振現象による変位増大を抑制している。しかしながら、可変回転慣性装置そのものは、地震時に建物の見かけの剛性を低下させるため、建物の変位を増大させてしまう虞がある。そこで、発明者は、回転慣性装置の稼働タイミングを制御することで、地震時における回転慣性装置に課せられた長周期化という機能を満たしつつ、最大変位を抑制することについて鋭意研究を重ねてきた。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、免震対象物の動作方向等によるON/OFFの切り替え機能を付加することにより、地震時に発生する建物の加速度を抑制すると共に、変位増大をも抑制することができる回転慣性装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、本発明は、地震時に免震対象物の長周期化とともに変位抑制をするための回転慣性装置であって、前記免震対象物と分離され、地盤側に固定された筐体と、前記筐体に設けられ直線運動を回転運動に変換すると共に、一端が前記免震対象物に連結されたボールネジ機構と、前記筐体内において回転自在に支持された回転ホイールと、前記ボールネジ機構に生じる所定回転方向に対する回転を前記回転ホイールに伝達するワンウェイクラッチと、を備えることを特徴とする回転慣性装置である。
本発明によれば、ボールネジ機構が地震時に生じる筐体の変位を回転運動に変換し、ワンウェイクラッチは、ボールネジ機構に生じる回転のうち、一方向の回転のみを回転ホイールに伝達するため、地震時に発生する建物の加速度を抑制すると共に、変位を抑制することができる。
上記発明は、また、前記回転ホイールの回転を減速させる摩擦部を更に備えるように構成されていてもよい。
本発明によれば、摩擦部が摩擦を生じさせて回転ホイールの回転による運動エネルギーを熱による熱エネルギーに変換し、回転ホイールを減速させることができる。
上記発明は、また、前記摩擦部が前記回転ホイールに当接する方向に付勢力を与える付勢部を備えるように構成されていてもよい。
本発明によれば、摩擦部が付勢部により回転ホイールに当接する方向に付勢されて回転ホイールとの間に摩擦力を発生させ、回転ホイールの回転を減速することができる。
上記発明は、また、前記摩擦部が前記回転ホイールの回転速度に応じて摩擦力を発生するように構成されていてもよい。
本発明によれば、回転ホイールの回転時に摩擦部による抵抗が低減され、回転ホイールの回転を容易にすることができる。
上記発明は、また、前記ボールネジ機構が、一端が免震対象物に連結され、前記筐体に対して軸線方向に摺動自在に挿通され、ネジ溝が形成されたロッドと、前記ネジ溝にボールを介して螺合して前記ロッドの摺動運動により前記軸線回りの回転運動に変換するボールネジ部と、を備えるように構成されていてもよい。
本発明によれば、地震時に免震対象物が変位した際に、免震対象物に連結されたロッドの摺動運動をボールネジ部の回転運動に変換して回転ホイールに回転を伝達することができる。
本発明によれば、免震対象物を長周期化することにより地震時に発生する建物の加速度を抑制すると共に、変位の増大を抑制することができる。
本発明の実施形態に係る回転慣性装置の構成を示す側面方向から見た断面図である。 回転慣性装置の構成を示す正面方向から見た断面図である。 回転慣性装置の建物への設置状態を示す図である。 ワンウェイクラッチが設けられている回転慣性装置が発生する理想とする力の波形を示す図である。 地震時における建物に生じる変位と加速度の位相を比較する図である。 ワンウェイクラッチが設けられていない回転慣性装置による周期および振幅の変化を考慮する前の力の波形を示す図である。 ワンウェイクラッチが設けられていない回転慣性装置による周期および振幅の変化を考慮した場合の力の波形を示す図である。 回転慣性装置の付加により変動する振動数と応答倍率との関係を示す図である。 回転慣性装置の付加により変動する周期と加速度応答スペクトルとの関係を示す図である。 建物に生じる変位の時間的変動の1周期において最大変位を増大させずに長周期化することが可能となるような回転慣性装置が作用する理想的な時間帯を示す図である(図4と同じ)。 ブランコの変位を増大させる方向に作用する力を示す図である。 ブランコの周期を長くする方向に作用する力を示す図である。 ブランコの変位を低減する一方で、周期を短くする方向に作用する力を示す図である。 回転慣性装置の作用状態により変化する周期の変動を示す図である。 回転慣性装置を建物に設置した状態を示す図である。 変形例に係る回転慣性装置の構成を示す側面方向から見た断面図である。 変形例に係る回転慣性装置の構成を示す背面方向から見た断面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る回転慣性装置の実施形態について説明する。回転慣性装置は、地震時に免震対象物を長周期化することにより、入力する地震動エネルギーを少なくし、加速度を低減するための装置である。本発明で提案している回転慣性装置では、変位方向により回転慣性力のON/OFFを切り替える機構を有し、その結果、変位増大をも抑制することができる。
図1から図3に示されるように、回転慣性装置1は、建物Rと分離されると共に、地盤E側に固定された筐体2と、筐体2に設けられたボールネジ機構10と、筐体2内に設けられた回転ホイール20と、筐体2内に設けられた摩擦部30とを備える。
筐体2は、地盤E側に支持台Dを介して固定されている。筐体2は、支持台Dにより地盤Eに対して回転自在に固定されている。支持台Dは、ピンQによりピン接合されたジョイントを備える。筐体2は、支持台DによりピンQ周り回転自在に地盤E側に固定され、水平方向に対する角度が変化する。
筐体2は、円筒状に形成された本体部3を備える。本体部3の一端側には、円形の第1開口2Aを覆う第1蓋部4が設けられている。本体部3の他端側には、円形の第2開口2Bを覆う第2蓋部5が設けられている。第1蓋部4は、ドーナッツ板状に形成された板部4Aを備える。板部4Aは、第1開口2Aを覆うように本体部3の一端側に取り付けられている。板部4Aの中央部には、円形の開口部4Dが形成されている。板部4Aの中央部には、開口部4Dを覆うように有頂の円筒状に形成された突出部4Bが設けられている。
突出部4Bは、本体部3と同心に外方に突出して形成されている。突出部4Bの中心には、円形の貫通孔4Cが形成されている。突出部4Bは、は、後述のボールネジ機構のボールネジ部15を回転自在に支持する。第2蓋部5は、円板状に形成されている。第2蓋部5の中心には、円形の貫通孔5Aが形成されている。貫通孔4C,5Aには、後述のロッド11が挿通される。
筐体2の内部には、直線運動を回転運動に変換するボールネジ機構10が設けられている。ボールネジ機構10は、一般的なボールネジが用いられる。ボールネジ機構10は、棒状に形成されたロッド11と、ロッド11に対して回転自在なボールネジ部15と、を備える。ロッド11の一端11Aは、建物R側に連結部材Fを介して回転自在に連結されている。これにより、ロッド11は、地震時に建物Rが地盤E側に対して相対的に移動した際に筐体2に対して摺動する。
ロッド11は、表面に螺旋状のネジ溝12が形成された棒ネジである。ネジ溝12は、ボール13が溝に沿って移動するように溝の断面が欠円形状に形成されている。ロッド11の一端側は、建物R側に連結されている。ロッド11は、筐体2に設けられた貫通孔4C,5Aに挿通されている。即ち、ロッド11は、筐体2に対して軸線L方向に摺動自在に挿通されている。
ロッド11には、ボール13を介してボールネジ部15が螺合している。ボールネジ部15は、円筒状に形成された本体部16を備える。本体部16には、貫通孔16Aが形成されている。貫通孔16Aの壁面には、螺旋状のネジ溝16Bが形成されている。ネジ溝16Bは、ボール13が溝に沿って移動するように溝の断面が欠円形状に形成されている。本体部16の一端16C側には、ドーナッツ板状のフランジ部17が形成されている。フランジ部17は、ベアリングB1を介して第1蓋部4に回転自在に支持されている。ベアリングB1は、ボール、ボールベアリング、ころ軸受等が用いられる。
上記構成により、ボールネジ機構10は、ロッド11が摺動運動すると、ボール13がネジ溝12,16Bを移動することによりボールネジ部15が軸線L回りに回転する。即ち、ボールネジ機構10は、ロッド11の摺動運動をボールネジ部15の軸線L回りの回転運動に変換する。ボールネジ部15のフランジ部17と、回転ホイール20との間には、ワンウェイクラッチ25が設けられている。
ワンウェイクラッチ25は、フランジ部17に生じる回転を一方向の所定回転方向にのみ回転ホイール20に伝達する。ワンウェイクラッチ25は、例えば、ロッド11が筐体2に対して引張される方向に移動した際に回転ホイール20に回転を伝達する。ワンウェイクラッチ25は、スプラグ式やカム式等既知のものが用いられる。ワンウェイクラッチ25と回転ホイール20との間には、更に過負荷防止機構Pが設けられている。過負荷防止機構Pは、急激な動きがロッド11に伝達されることによりワンウェイクラッチ25に過大なトルクが伝達されて破壊されることを防止する装置である。
過負荷防止機構Pは、ワンウェイクラッチ25側に固定された第1回転部P1と、第1回転部P1と摩擦により係合する第2回転部P2とを備える。第1回転部P1は、ドーナッツ板状に形成されている。第2回転部P2は、第1回転部P1と対向して当接すると共に、回転ホイール20の一端面20A側に取り付けられている。第1回転部P1と第2回転部P2との間には、例えば、機械式のトルク遮断器が設けられている。トルク遮断器は、既知のトルクリミッター等の装置が用いられる。これにより第1回転部P1と第2回転部P2とは、既定以上のトルクが加わるとトルクの伝達が遮断される。
回転ホイール20は、ベアリングB2を介して筐体2の本体部3の内部において回転自在に支持されている。ベアリングB2は、ボール、ボールベアリング、ころ軸受等が用いられる。回転ホイール20は、円筒状に形成されている。回転ホイール20は、例えば、金属等の重量物により形成されている。回転ホイール20に形成された貫通孔21には、ロッド11が挿通されている。回転ホイール20の一端面20A側には、上述のように過負荷防止機構Pが設けられている。回転ホイール20の他端面20B側には、摩擦部30が設けられている。
摩擦部30は、回転ホイール20に当接して摩擦力を生じさせ、回転ホイール20の回転を減速させるブレーキ装置である。摩擦部30は、本体部3の内部において第2蓋部5側に設けられた複数の摩擦板31と、摩擦板31と第2蓋部5との間に設けられたバネ部32(付勢部)とを備える。摩擦板31は、本体部3の内部に取り付けられている。複数の摩擦板31は、例えば、軸線Lに沿った方向(−X方向)から見て回転ホイール20の他端面20B側に放射状に等間隔で当接している。摩擦板31の一面側は、回転ホイール20の他端面20Bに当接する。摩擦板31の一面側には、摩擦材が貼り付けられている。摩擦板31の他面側には、バネ部32が取り付けられている。
バネ部32は、摩擦板31を押圧して、回転ホイール20の他端面20B側に対して付勢力を与える。これにより摩擦板31と回転ホイール20の他端面20Bとの間に摩擦力が生じている。摩擦力は、上述した規定のトルクより小さくなるように調整されている。これにより、ロッド11が通常の摺動運動した場合、ワンウェイクラッチ25から過負荷防止機構Pを介して回転ホイール20に回転力が伝達される際に、過負荷防止機構Pは滑らずに、摩擦部30が滑る。
次に、回転慣性装置1の動作について図4を参照にしつつ説明する。
(1)の領域において、ロッド11を筐体2に向かって押した場合、ロッド11は、軸線L方向に沿って移動する。それに伴い、ボールネジ部15が回転する。しかし、ワンウェイクラッチ25は、ロッド11が押される方向に摺動する場合には、回転ホイール20に力を伝達しないように設定されているため、ボールネジ部15が空転する。
(2)の領域において、その後、ロッドが引張方向に動き出した場合には、ボールネジ部15には(1)の逆方向の回転が発生する。ワンウェイクラッチ25は、過負荷防止機構Pを介して回転ホイール20に回転モーメントを伝達する。回転ホイール20が静止していた場合は、動き出すまで最初は大きな回転モーメントが必要であるが、回転ホイール20が動き出すと、反力として得られる回転モーメントは徐々に少なくなる。この現象は、例えば、自転車のクランクをこぎ出す際に力を加えることに相当する。
(3)の領域において、ロッド11は引っ張られている状態であるが、速度は小さくなってくるため、回転ホイール20の回転速度よりもボールネジ部15の回転速度が小さくなり、ワンウェイクラッチ25が空回りしている状態になる。
(4)の領域において、この領域で発生している矢印の力は、後述のように当該装置と一対となっている回転慣性装置1により生じるものであり、当該装置では圧縮方向にロッドが動いているため引き続きワンウェイクラッチが空回りしている状態である。
再び(1)→(2)の領域において、回転ホイール20が回転したままだと、ボールネジ部15の回転速度が回転ホイール20の回転速度を上回らないかぎり、ワンウェイクラッチ25の空回りが発生する。そのため、再度(2)の領域に戻る前に、回転ホイール20の回転速度を減少させておく必要がある。摩擦部30は、回転ホイール20に接触して回転ホイール20の運動エネルギーを摩擦により熱エネルギーに変換することで、回転ホイール20の速度を低減させる。
ワンウェイクラッチ25と回転ホイール20との間に設けられた過負荷防止機構Pは2つの役目がある。1つ目は、装置に高振動数のパルスが入力された場合に、過度な力が伝達されて装置が破損することから守ることである。2つ目は、建物Rへ伝わるパルス的な荷重の上限を設定することにある。回転慣性装置1は質量項で地盤と建物Rを連結していることと同じとなるため、地震動の高振動数成分をそのまま建物R本体に伝えてしまうという欠点がある。
ここで、建物Rの質量をm、過負荷防止機構Pの上限荷重をFmaxとした場合、ニュートンの第2法則(ニュートンの運動方程式)により当該装置に起因して発生する加速度の上限は、
αmax=Fmax/m
と示される。上記式とは逆に、建物Rで許容できる加速度に基づいて、過負荷防止機構の上限荷重を決定してもよい。
次に、回転慣性装置1の作用について説明する。先ず、ワンウェイクラッチ25が無い一般的な回転慣性装置の動作について説明する。
図5に示されるように、地震時に建物Rが地盤Eに対して相対的に変位した場合、回転慣性装置に連結された建物が変位する変位波形と、建物に生じる加速度の加速度波形とは、逆位相となる。回転慣性装置は加速度波形に比例した力を加速度とは逆向きに発生させる。
図6に示されるように、回転慣性装置は、建物の変位が増大している区間(A)と、変位が減少している区間(B)において回転ホイールを正転及又は反転方向に回転させることにより力を発生させるように構成されている。
図7に示されるように、地震時に回転慣性装置が動作すると、回転慣性装置により生じる力の影響で、建物の変位が増大すると共に、周期が伸びる。例えば、建物の実質量mに対して、回転慣性装置による付加質量m´が同じ大きさの場合(m=m´)周期は√2倍となり、応答変位も√2倍となる。上記結果は、加振正弦波の振動数を免震建物が共振するように調整して周期変化させた場合に相当する。図8に示されるように、振動数と応答倍率との関係は共振曲線により表される。この場合、加振力は振動数に依存せずに一定とした際の結果が表されている。
実際の地震動では、長周期になるほど加速度応答スペクトルは小さくなる。すなわち一般構造物に対して、免震化することにより揺れが長周期化し、加振力は小さくなる。建物に回転慣性装置を付加することにより、周期がさらに長くなり加振力もさらに小さくなる。したがって、通常の地震により外力が入力される場合は、上述した共振曲線で応答倍率が√2倍になっていても入力地震動の特性による低減効果により相殺されて問題となることは少ないと考えられる。
しかし、近年話題となっている長周期長時間地震動では、図9に示したような長周期化による入力低減効果が期待できない可能性も考えられる。そのため、地震動の長周期成分が大きくなる場合にも対応するために、回転慣性装置の付加による変位増大を低減することが望ましい。回転慣性装置1は、上記構成により回転ホイール20の回転を片効きにすることで応答倍率の増加を低減するように構成されている。
図10に示されるように、回転慣性装置1は、変位が減少している区間(C),(C´)のみに有効となるように力を作用させる。力が作用しない区間(D),(D´)は、回転慣性装置1が付加されていない場合と同じ挙動を示す。回転慣性装置1によれば、変位が減少している区間(C),(C´)において変位減少ペースが落ちるため長周期化が達成される。さらに、回転慣性装置1によれば、最大変位については回転ホイール20の回転を片効きさせることにより増加を抑制することができる。なお、回転慣性装置1は作動方向が異なる2つをペアとして用いることにより、(C)と(C´)の慣性力を実現することができる。
図11から図13に示されるように、上記効果は、振動しているブランコZを停止させる原理により説明できる。
区間(A)(図6、図7参照)の矢印方向に加わる力は、ブランコZの変位が大きくなる領域でさらにブランコの変位を大きくする方向に力を加えることに相当する(図11参照)。これに対して、区間(B)(図6、図7参照)の矢印方向に加わる力は、ブランコの変位が小さくなろうとしている領域で変位が小さくなる割合を抑制する方向に力を加えることに相当する(図12参照)。実際に、公園でのブランコの止め方を見てみると、最大変位点でブランコをキャッチし、そのまま区間(B)の矢印方向の力を調整して加えながら変位0の地点で止まるようにしていることが多い。
なお、ブランコの他の止め方として、ブランコの変位が大きくなる領域で、変位を抑制する方向に力をかける方法がある(図13参照)。このような方法によれば、ブランコの持つ運動エネルギーは、変位を抑制する方向に加わる力によって吸収されて、その結果ブランコの変位が次第に小さくなり、最終的にブランコを停止させることができる。
図14に示されるように、ブランコの変位が小さくなろうとしている領域で変位が小さくなる割合を抑制する方向に力を加えることと、ブランコの変位が大きくなる領域で、変位を抑制する方向に力を加えることは、ブランコの運動エネルギーを吸収しているという意味では同じであるが、系の振動周期という意味では大きな違いがある。即ち、ブランコの変位が小さくなろうとしている領域で変位が小さくなる割合を抑制する方向に力を加えると建物の周期は長周期化する(図14(A)参照)。
それに対して、ブランコの変位が大きくなる領域で、変位を抑制する方向に力を加えると建物の周期は短周期化する(図14(B)参照)。積層ゴム等により構成された免震構造は建物の周期を長周期化することで地震動によるエネルギー入力を低減している構造形式である。それに加えて、回転慣性装置1によれば、建物の変位が小さくなろうとしている領域で変位が小さくなる割合を抑制する方向に力を加えることでさらに建物の周期を長周期化することができる。
次に、回転慣性装置1を建物Rに適用する際の構成について説明する。
図15に示されるように、建物Rは、底面部が免震装置Xにより支持されている。建物Rの底面部には、更に変位抑制用の硬化型装置Yが取り付けられている。建物Rの底面部から外側に離間して擁壁が設けられている。回転慣性装置1は、例えば、免震装置Xに追加されて用いられる。上述したように回転慣性装置1は、片効きにより作用するので、建物Rには、一対の回転慣性装置1が配置される。2つの回転慣性装置1を組み合わせて一つの回転慣性装置を構成してもよい。一対の回転慣性装置1は、例えば、建物Rに対して側面視してハの字型になるように配置される。一対の回転慣性装置1をハの字型に配置することにより、地震時に建物Rが揺れた際に建物R全体に生じる回転モーメントによる免震装置の浮き上がりが防止される。
上述したように回転慣性装置1によれば、地震時に発生する建物の加速度を抑制すると共に、変位を抑制することができる。回転慣性装置1は、回転慣性を発生する回転ローラに対して一方向の回転方向にのみ回転を発生させるため、回転ローラの回転慣性により伸びる建物の周期及び増大する変位を抑制し、長周期地震動が発生した際の建物の共振を防止することができる。
[変形例]
上述した回転慣性装置1は、摩擦部30が回転ホイール20に常時当接しているものであった。摩擦部30が常時回転ホイール20に当接して摩擦力を発生させると、回転ホイール20の回転開始時に抵抗となり、回転ホイール20への回転トルクの伝達の妨げとなる虞がある。従って、摩擦部30は、回転ホイール20の回転速度に従って摩擦力を発生させる遠心クラッチの機構が用いられてもよい。
図16及び図17に示されるように、変形例に係る摩擦部50は、筐体2側に設けられた第1摩擦部51と、回転ホイール20側に設けられた第2摩擦部52とを備える。第1摩擦部51は、円環状に形成された摩擦部材であり、本体部3の内壁に沿って延在している。第1摩擦部51に対して非接触で第2摩擦部52が設けられている。第2摩擦部52は、複数の第2摩擦材53と、複数の第2摩擦材53を支持する複数のアーム部54とを備える。
アーム部54の基端部は、回転ホイール20の他端面20B側の貫通孔21近傍に回転自在に取り付けられている。アーム部54の基端部には、バネ55が取り付けられ、回転が規制されている。アーム部54の先端部には、第2摩擦材53が取り付けられている。アーム部54は、バネ55により第2摩擦材53が本体部3の径方向の内方に向かって第1摩擦部51に対して離間して配置されるような角度に位置決めされている。
上記構成により、回転ホイール20の回転速度が上昇すると、第2摩擦材53に働く遠心力によりアーム部54が外側に広がり、第2摩擦材53と第1摩擦部51とが当接し摩擦力が発生する。その結果、回転ホイール20の運動エネルギーが熱エネルギーに変換され、回転ホイール20の回転速度が減速する。
変形例に係る摩擦部50によれば、ワンウェイクラッチ25が回転ホイール20に回転を伝達する際に摩擦部50に摩擦力が生じていないため、回転ホイール20の回転の開始時の抵抗を低減することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1 回転慣性装置
2 筐体
3 本体部
4 第1蓋部
5 第2蓋部
10 ボールネジ機構
11 ロッド
11A 一端
13 ボール
15 ボールネジ部
16 本体部
17 フランジ部
20 回転ホイール
21 貫通孔
25 ワンウェイクラッチ
30 摩擦部
31 摩擦板
32 バネ部
50 摩擦部
51 第1摩擦部
52 第2摩擦部
53 第2摩擦材
54 アーム部
55 バネ
P 過負荷防止機構
P1 第1回転部
P2 第2回転部

Claims (5)

  1. 地震時に免震対象物の周期を長周期化とともに変位抑制するための回転慣性装置であって、
    前記免震対象物と分離され、地盤側に固定された筐体と、
    前記筐体に設けられ直線運動を回転運動に変換すると共に、一端が前記免震対象物に連結されたボールネジ機構と、
    前記筐体内において回転自在に支持された回転ホイールと、
    前記ボールネジ機構に生じる所定回転方向に対する回転を前記回転ホイールに伝達するワンウェイクラッチと、を備えることを特徴とする、
    回転慣性装置。
  2. 前記回転ホイールの回転を減速させる摩擦部を更に備えることを特徴とする、
    請求項1に記載の回転慣性装置。
  3. 前記摩擦部は、前記回転ホイールに当接する方向に付勢力を与える付勢部を備えることを特徴とする、
    請求項2に記載の回転慣性装置。
  4. 前記摩擦部は、前記回転ホイールの回転速度に応じて摩擦力を発生することを特徴とする、
    請求項2または3に記載の回転慣性装置。
  5. 前記ボールネジ機構は、
    一端が免震対象物に連結され、前記筐体に対して軸線方向に摺動自在に挿通され、ネジ溝が形成されたロッドと、
    前記ネジ溝にボールを介して螺合して前記ロッドの摺動運動により前記軸線回りの回転運動に変換するボールネジ部と、を備えることを特徴とする、
    請求項1から4のうちいずれか1項に記載の回転慣性装置。
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