JP5051590B2 - 慣性質量ダンパー - Google Patents

慣性質量ダンパー Download PDF

Info

Publication number
JP5051590B2
JP5051590B2 JP2008180490A JP2008180490A JP5051590B2 JP 5051590 B2 JP5051590 B2 JP 5051590B2 JP 2008180490 A JP2008180490 A JP 2008180490A JP 2008180490 A JP2008180490 A JP 2008180490A JP 5051590 B2 JP5051590 B2 JP 5051590B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
torque
damper
ball screw
inertial mass
weight
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008180490A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010019347A (ja
Inventor
和彦 磯田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimizu Corp
Original Assignee
Shimizu Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimizu Corp filed Critical Shimizu Corp
Priority to JP2008180490A priority Critical patent/JP5051590B2/ja
Publication of JP2010019347A publication Critical patent/JP2010019347A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5051590B2 publication Critical patent/JP5051590B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Buildings Adapted To Withstand Abnormal External Influences (AREA)
  • Vibration Prevention Devices (AREA)
  • Vibration Dampers (AREA)

Description

本発明は、回転錘による慣性質量効果を利用した慣性質量ダンパーに関する。
周知のように慣性質量ダンパー(慣性接続要素ともいわれる)はダンパー両端の相対加速度に比例した反力を生じる装置であって、一般にはボールねじ軸とボールナットから構成されるボールねじ機構を振動伝達機構として利用して構造体の振動を回転錘(フライホイール)の回転運動に変換することにより、回転錘の実際の質量の数百倍もの慣性質量効果を生み出せるものである。
図33はそのような慣性質量ダンパーの基本構成を示すものである。これは、互いに離接する方向に相対振動する2つの構造体A,B間に介装されてその相対振動に対する制振効果を得るためのもので、振動伝達機構としてのボールねじ機構1を構成しているボールねじ軸2の一端を構造体Aに対して回転自在に支持するとともに、それに螺着させたボールナット3を構造体Bに対して固定し、ボールねじ軸2の他端部を構造体Bを貫通させてその先端部に回転錘4(フライホイール)を取り付けたものである。
この慣性質量ダンパーでは、構造体A,B間に生じる相対振動によりボールナット3がボールねじ軸2に対して軸方向に相対変位し、それに伴ってボールねじ軸2が回転(自転)せしめられて回転錘4が回転し、それにより生じる慣性質量ψによる反力Pが構造体A、B間に作用して優れた制振効果が得られるものである。
この種の慣性質量ダンパーを利用するものとして、特許文献1に示される免震システムや特許文献2に示される上下免震装置が知られている。
特開2006−16935号公報 特開2007−71399号公報
ところで、この種の慣性質量ダンパーは、図34に示すように構造体A,B間の相対加速度に比例して反力が生じる(慣性質量ψがその比例定数となる)という線形の特性を呈することから、優れた制振効果が得られる反面、地震時に想定を超える過大な相対加速度がダンパーに作用した場合にはダンパー自体や構造体への接合部に過大な応力が生じて破損を生じてしまう懸念もあり、したがってそのような場合に対するフェールセーフ機能が求められている。
上記事情に鑑み、本発明は過大な加速度が作用した場合にダンパー反力(負担力)を制限して頭打ちとすることができ、以て破損を防止し得る有効適切な慣性質量ダンパーを提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、互いに離接する方向に相対振動する構造体間に設置され、それら構造体間に生じる相対振動を振動伝達機構により回転運動に変換して回転錘に伝達して該回転錘を回転させることにより、該回転錘の慣性質量による反力を前記構造体に作用せしめて前記相対振動に対する制振効果を得る構成の慣性質量ダンパーであって、前記振動伝達機構と前記回転錘との間に、該回転錘を該振動伝達機構に対してトルク伝達可能に連結するとともにそれらの間で伝達されるトルクが所定の制限値を超えた時点で回転錘を振動伝達機構に対して相対回転させてトルク伝達を制限するトルク制限機構を介装してなることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の慣性質量ダンパーであって、前記振動伝達機構をボールねじ軸とボールナットによるボールねじ機構により構成するとともに、前記ボールねじ軸にフランジプレートを固定して、該フランジプレートに対して前記回転錘を前記トルク制限機構を介して一体回転可能かつ前記制限値を超えるトルクで相対回転可能に連結してなり、前記トルク制限機構を、前記フランジプレートと前記回転錘の双方に跨るように支圧プレートを装着して、該支圧プレートをトルク調整ボルトにより前記回転錘または前記フランジプレートに対して締結することによって該支圧プレートにより前記フランジプレートまたは前記回転錘を所定の押圧力で挟持するとともに、前記支圧プレートと前記フランジプレートまたは前記回転錘との間に前記制限値を超えるトルクで滑りを生じる滑り材を介装してなることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の慣性質量ダンパーであって、前記振動伝達機構をボールねじ軸とボールナットによるボールねじ機構により構成して、該ボールねじ機構における前記ボールねじ軸または前記ボールナットに対して前記回転錘を前記トルク制限機構を介して一体回転可能かつ前記制限値を超えるトルクで相対回転可能に連結してなり、前記トルク制限機構を、前記ボールねじ軸または前記ボールナットに対して一体回転可能に連結されるハブと、該ハブに対して一体回転可能かつ前記制限値を超えるトルクで滑りを生じて相対回転可能に装着されたフランジを有するトルク保持装置により構成して、該トルク保持装置における前記フランジに対して前記回転錘を一体回転可能に連結してなることを特徴とする。
本発明の慣性質量ダンパーは、通常の慣性質量ダンパーと同様に相対加速度に比例する反力による優れた制振効果が得られることはもとより、トルク制限機構によって過大なトルク伝達を制限することによってダンパー反力を所定の制限値で頭打ちとすることができ、したがって想定外の過大な加速度が作用した場合でもダンパーや接合部の破損を防止することができる。
また、本発明の慣性質量ダンパーを用いて建物等の構造物を対象とする応答低減システムを構成すれば、応答低減効果を損なうことなく反力を有効に低減させることができる。
特に、相対振動を回転運動に変換して回転錘に伝達するための振動伝達機構としてはボールねじ機構が好適に採用可能であるし、トルク伝達を制限するためのトルク制限機構としては滑り材の摩擦抵抗力を利用するものや、汎用のトルク保持装置を好適に利用可能であるので、いずれにしても簡単な構成で安価に構成することができ、パッシブな応答低減システムに適用するものとして好適である。
図1は本発明の実施形態である慣性質量ダンパーの概略構成を示すものである。これは図33に示した従来の慣性質量ダンパーと同様に構造体A,B間に生じる相対振動によりボールねじ機構1を介して回転錘10(フライホイール)を回転させてその慣性質量効果により制振効果を得ることを基本とするものであるが、従来のものは単なる円盤状の回転錘4をボールねじ軸2に対して直接固定しているのに対し、本実施形態の慣性質量ダンパーは環状の回転錘10をボールねじ軸2に対してトルク制限機構11を介して連結した構成とされ、ボールねじ軸2のトルクが所望の制限値を超えると回転錘10がボールねじ軸2と一体には回転し得ずにスリップ回転し、それにより制限値以上のトルク伝達が制限されて実質的にトルク伝達が頭打ちになる構成とされている。
具体的には、図3〜図4に示すように、ボールねじ軸2に小径のフランジプレート12が装着されてロックナット13によりボールねじ軸2に対して回転不能に固定され、そのフランジプレート12の外側に環状の回転錘10が配置され、その回転錘10がトルク制限機構11を介してフランジプレート12に対して相対回転可能な状態で装着されている。
トルク制限機構11は、フランジプレート12と回転錘10の双方に跨る大きさの2枚の環状の支圧プレート14をそれらフランジプレート12と回転錘10の両面側に配置し、支圧プレート14の外周部を回転錘10に対してトルク調整ボルト15によって締結するとともにその締結部には皿ばね16を介装し、かつ支圧プレート14の内周部とフランジプレート12との間には環状の滑り材17を介装することにより、両側の支圧プレート14によってフランジプレート12を滑り材17を介して押圧状態で挟持する構成とされている。
上記構成のトルク制限機構11は、フランジプレート12と支圧プレート14との間に介装された滑り材17に対して、トルク調整ボルト11による締結力によって圧縮された皿ばね16を介して圧縮応力が作用し、フランジプレート12のトルクがその摩擦抵抗力を超えない範囲では回転錘10がフランジプレート12と一体的に回転するが、トルクが摩擦抵抗力を上回ると滑り材17による滑りを生じて回転錘10はフランジプレート12に対して相対回転してしまい、それ以上のトルク伝達が制限される。
この場合、滑り始めるときのトルクT0、つまりトルク伝達が限界となる制限値は、トルク調整ボルト15により皿ばね16を介して滑り材17に導入する圧縮応力(つまりは摩擦抵抗力)を調整することにより設定することができる。
すなわち、滑り始めるときのトルクT0は、トルク調整ボルト15により滑り材17に導入される圧縮応力N、滑り材17の摩擦係数μ、滑り材17の径寸法(内径寸法と外径寸法の平均値の1/2。図3に示す回転中心からの距離a)によって次式で定まる(2倍となっているのは摩擦面が2面であるためである)。
0=2μNa
本実施形態の慣性質量ダンパーにおいて生じる反力Pは、基本的には従来のこの種のダンパーと同様に相対加速度に比例する特性となるのであるが、上記のようにトルク制限機構11によって回転錘10に伝達されるトルクが実質的に頭打ちになることによりその反力Pも頭打ちになり、したがって図2に示すように慣性質量ψを比例定数とする第1勾配を有するのみならず、所定の相対加速度以上では緩やかな第2勾配を有する非線形を呈するものとなる。
この場合、反力Pは、ボールねじ機構1に作用するトルクT、ボールねじ軸2のリード(ねじ山ピッチ)Lとすると
P=(2π/L)T
となるから、頭打ちとなる反力P0は、上記の滑り始めるときのトルクT0、つまりトルク伝達を制限するべき制限値から
0=(2π/L)T0
となる。
なお、ボールねじ軸2やフランジプレート12の慣性モーメントによりボールねじ機構1自体が生じる慣性質量を完全に無視し得る場合には、伝達トルクが頭打ちとなった以降は反力P0がそのまま増大することなく保持されるが、実際上は図2に示しているようにボールねじ機構1自体の慣性質量ψ1(相対すべり回転しないでねじと一体化したプレート、ナット等を含む)よる緩やかな第2勾配によりわずかな反力増加分が生じることになる。
いずれにしても、本実施形態の慣性質量ダンパーは反力が一定の制限値に達した以降は実質的にそれを保持するものであり、したがって反力がゼロになってダンパー機能を失うものではないばかりか、後述するように反力が頭打ちとなった以降は摩擦ダンパーとしても機能し得るものである。
本実施形態の慣性質量ダンパーの効果を以下に列挙する。
(1)ダンパー反力を所定の制限値で頭打ちにできる(実質的に制限値に保持するか、もしくはその後の増分を充分に小さくできる)から、想定外の過大な加速度が作用した場合でも、ダンパーや接合部の破損を防止することができる。
なお、本発明の慣性質量ダンパーのように相対加速度に比例した反力をもつものではない他の形式のダンパーにおいては、反力を頭打ちにすること自体は既知の技術である。たとえば、反力が相対速度に比例する粘性ダンパー(オイルダンパー等)においては、逃がし弁によるリリーフ機構によりピストン内圧を調整して過大な反力が生じないように制限する機構が知られている。また、反力が相対変位に比例する履歴ダンパー(鋼材ダンパー等)においては、弾性範囲内ではバネ剛性が線形で変位に比例した反力となるが、降伏後には変位増分による耐力増加はわずかになって自ずとダンパーに過大な反力が生じないものとなる。
(2)トルク制限機構11はトルクを一定に保持しながら回転錘10を回転させる機構であるので、反力が制限値を超えると滑りを生じて相対回転を生じ、そのときに滑り面に摩擦力が作用しつつ変位するので、その状態では摩擦ダンパーとして機能し得る。つまり、本実施形態のダンパーは反力が制限値に達するまでは通常の慣性質量ダンパーとして機能し、それを超えると摩擦ダンパーとして機能するという、従来にない複合的な機能のダンパーとして機能する。
なお、摩擦ダンパーとして挙動すると滑り材17の周辺部では発熱が生じるので、必要に応じて周辺部材の耐熱性能や放熱性能を考慮すれば良いが、本実施形態では滑り材17に接するフランジプレート12や支圧プレート14等の部材としていずれも鋼材を採用可能であるので、摩擦による温度上昇が生じても耐熱性や放熱性に特に問題は生じない。
(3)トルク制限機構11は滑り材17による摩擦滑りを利用した単純な機構なので安価に製造できるし、トルク調整ボルト15による締結力の調整のみで摩擦力の調整(つまり頭打ちとするトルクの調整)も容易に行うことができる。また、皿ばね16を介して摩擦面に対して面的に圧縮力をかけているので、多少の摩耗があっても安定した面圧を保持できる。
(4)本実施形態の慣性質量ダンパーを建物や構造物等に設置して応答低減システムを構成する場合、ダンパー反力を頭打ちにするという非線形特性を考慮することにより、頭打ちにしない通常の線形特性のダンパーを用いる場合に比べてダンパー反力を1/2程度に低減できるにも拘わらず、ダンパー本来の特性は大きく変化せずに構造体の応答を同等にできる。
このことは、従来一般の線形特性の慣性質量ダンパーを用いる応答低減システムの制振効果を劣化させずに反力だけを有効に低減させ得ることを意味し、その結果、ダンパー自体のみならず構造体への負荷も低減でき、接合部や構造躯体も含めた総コストの軽減を図ることができる(この点については後述する)。
以上で本発明の慣性質量ダンパーの最も基本的な構成例を説明したが、以下にその変形例を図5〜図8を参照して説明する。
上記実施形態ではトルク制限機構11における支圧プレート14を回転錘10に対して連結して、伝達トルクが制限値を超えた際にはトルク制限機構11を回転錘10とともにフランジプレート12に対して相対回転させるようにしたが、図5に示すように支圧プレート14をフランジプレート12に対して連結して滑り材17を支圧プレート14と回転錘10との間に介装することにより、トルク制限機構11をフランジプレート12とともに回転させて回転錘10のみをそれらに対して相対回転させるようにしても良い。
なお、その場合には、トルク制限機構11がフランジプレート12とともに回転することから、反力Pが頭打ちとなった以降の慣性質量ψはその分だけ大きくなり、図2に示す特性図における第2勾配は上記の場合に比べてやや大きくなる。
トルク制限機構11としては、各種分野で使用されている各種のトルク保持装置の類を利用することも考えられ、たとえば図6〜図7に市販のトルク保持装置20(いわゆるトルクキーパー)を利用する場合の構成例を示す。
そのトルク保持装置20は、ハブ21に対してフランジ22を滑り軸受け23を介して相対回転可能に装着し、ハブ21に固定した調節ナット24に調節ボルト25を螺着してパイロットプレート26、皿ばね27を介してプレート28をフランジ22に押圧する構成としたものであり、所定トルクまではハブ21とフランジ22とが一体に回転するが、それを超えるとフランジ22がハブ21に対してスリップして相対回転を生じるものである。
このトルク保持装置20をボールねじ軸2に対して一体に回転可能に固定し、フランジ22に対して回転錘10を連結すると、ボールねじ機構1からの伝達トルクが所定の制限値を超えるまではトルク保持装置20と回転錘10の全体が一体に回転するが、制限値を超えるとフランジ22および回転錘10のみがハブ21に対してスリップ回転を生じてそれ以上のトルク伝達が制限される。
以上の実施形態は、いずれもボールねじ機構1におけるボールねじ軸2を回転させる場合(ボールナット3は回転させずにボールねじ軸2に対して軸方向に相対移動させる場合)の構成例であるが、逆にダンパー内でボールナット3を回転させる場合(ボールねじ軸2は回転させずにボールナット3に対して軸方向に相対移動させる場合)にも適用できる。
図8はその場合の構成例であって、ボールナット3をダンパーケーシング29に対してベアリング30により回転自在で支持してそのボールナット3に上記のトルク保持装置20を連結し、ボールねじ軸2をそれらボールナット3とトルク保持装置20に挿通させて軸方向に変位させることによって、トルク保持装置20(つまりトルク制限機構11)をボールナット3とともに一体に回転させるようにしたものであり、この場合も上記と同様に機能するものとなる。
次に、本発明の慣性質量ダンパーを建物等の構造体に設置して応答低減システム(TMD機構および振動遮断機構)を構成する場合の具体的な設計例とその効果について説明する。
(I)付加バネと直列に設置する場合
図9に示すように、固定端に対して構造体バネと構造体減衰により支持された1質点系の構造体を対象として慣性質量ダンパーを設置してTMD機構として機能させる場合において、その慣性質量ダンパーとして、図1に示したような本発明のトルク制限機構付きの慣性質量ダンパーを用いるケースと、図33に示したようなトルク制限機構のない従来の単なる慣性質量ダンパーを用いるケースについて、比較検討を行う。
「設計条件」
構造体質量M=100ton、構造体バネ剛性K=39.5kN/cm、構造体減衰C=0.25kN/kine、構造体の固有振動数f=1.0Hz、構造体の減衰定数h=0.02とする。
付加質量を構造体の0.1倍の質量をもつTMDとして設計し、したがって付加質量としての慣性質量ψ=10ton、付加バネ剛性k0=3.36kN/cm、付加減衰c0=0.25kN/kine、付加振動系の固有振動数f=0.92Hz、付加振動系の減衰定数h0=0.216とする。
トルク制限機構を設けるケースでは、図10に示すように、ダンパー両端の相対加速度1.0m/s2(100gal)で滑り始める設計とし、したがって頭打ちとなる反力をP0=10kNに設定する。滑り後の慣性質量ψ1は初期の1/10として、ψ1=0.1ψ=1tonとする。
この場合、ダンパーに角振動数ωの正弦波加振で変位振幅を与えたときのダンパー反力(負担力)とダンパー両端の相対変位との関係は図11のようになり、ダンパー特性が非線形であることから正弦波振動でも履歴吸収エネルギー(図11において平行四辺形で示される履歴面積)があることが分かる。なお、ダンパーが線形の場合(トルク制限がない場合)には原点を通る直線上を往復するだけの特性になるので履歴吸収エネルギーはない。
解析に用いる入力地震動としては図12に示すTAFT(EW)を用い、最大加速度176galを固定端から入力するものとする。
「応答解析結果」
図13〜図17に応答解析結果としての質点変位、質点加速度、ダンパー変位、ダンパー加速度、ダンパー反力を示す。いずれも太線が本発明の慣性質量ダンパー(トルク制限機構を有する非線形特性のもの)による場合であり、細線が従来の慣性質量ダンパー(トルク制限機構のない線形特性のもの)による場合である。
これらの結果から、本発明の場合には質点変位、質点加速度は殆ど変わらないもののダンパー反力を大きく低減できることが分かる。特に、図16(b)および図17(b)から、4秒付近で滑り始めた以降は慣性質量効果による周期延長効果が低減して位相が進み、ダンパー加速度が増すものの反力が60%程度に大幅に低減することが分かる。なお、ダンパー加速度は若干増えるが問題にならない程度である。
この場合のダンパー履歴特性を図18〜図19に示す。図18は反力(ダンパー負担力)と相対加速度の関係を表し、図10に示した特性図とほぼ同様の結果が得られた。図19は反力(ダンパー負担力)と相対変位の関係を表し、図11に示した履歴特性とほぼ同様の結果が得られた。
さらに、参考までに、慣性質量ダンパーを設置する場合の改善効果をそれを設置しない場合と比較して図20〜図21に示す。ここでの慣性質量ダンパーは図33〜図34に示したような従来一般のトルク制限機構のない線形特性のものであるが、そのような慣性質量ダンパーを用いる場合(太線で示す)には、それを設置しない場合(細線で示す)に較べて、最大応答値が変位で38%、加速度で36%も低減することが分かる。
以上により、トルク制限機構のない従来の慣性質量ダンパーを用いる場合であっても充分な応答低減効果が得られるが、本発明のトルク制限機構付きの慣性質量ダンパーを用いることにより(従来の慣性質量ダンパーにトルク制限機構を付加することにより)、さらなる改善効果が得られることが分かる。
(II)構造体バネと並列に設置する場合
図22に示すように、固定端に対して構造体バネと構造体減衰により支持された1質点系の構造体を対象として慣性質量ダンパーを構造体バネと並列に設置する場合において、その慣性質量ダンパーとして、図1に示したような本発明のトルク制限機構付きの慣性質量ダンパーを用いるケースと、図33に示したようなトルク制限機構のない従来の慣性質量ダンパーを用いるケースについて比較検討を行う。
「設計条件」
上記(I)の場合と同様に、構造体質量M=100ton、構造体バネ剛性K=39.5kN/cm、構造体減衰C=0.25kN/kine、構造体の固有振動数f=1.0Hz、構造体の減衰定数h=0.02とする。
付加質量としての慣性質量ψを構造体の1.0倍としてψ=100tonとし、それに付加減衰を並列に設置し、付加減衰c0=1.26kN/kine(構造体減衰の約5倍)とする。
トルク制限機構を設けるケースでは、図23に示すように、ダンパー両端の相対加速度0.4m/s2(40gal)で滑り始める設計とし、したがって頭打ちとなる反力をP0=40kNに設定する。滑り後の慣性質量ψ1は初期の1/10として、ψ1=0.1ψ=10tonとする。
この場合も、ダンパー反力(負担力)とダンパー両端の相対変位との関係は図24に示すようになり、(I)の場合と同様に履歴吸収エネルギーがある。
「応答解析結果」
入力地震動は(I)の場合と同様(図12)とし、図25〜図28に応答解析結果としての質点変位、質点加速度、ダンパー加速度、ダンパー反力を示す。
これらの結果から、質点変位、質点加速度は殆ど変わらず、ダンパー反力を大きく低減できることが分かる。特に、図27(b)および図28(b)から、3.7秒付近で滑り始めた以降はダンパー加速度が増すもののダンパー反力が50%程度に大幅に低減することが分かる。なお、この場合もダンパー加速度は若干増えるが問題にならない程度である。
この場合のダンパー履歴特性を図29〜図30に示す。図29は反力(ダンパー負担力)と相対加速度の関係を表し、図23に示した特性図とほぼ同様に結果が得られた。図30は反力(ダンパー負担力)と相対変位の関係を表し、図24に示した履歴特性とほぼ同様の結果が得られた。
さらに、参考までに、慣性質量ダンパーを設置する場合の改善効果を、それを設置しない場合と比較して図31〜図32に示す。ここでの慣性質量ダンパーは従来一般のトルク制限機構のない線形特性のものであるが、そのような慣性質量ダンパーを用いる場合(太線で示す)には、それを設置しない場合(細線で示す)に較べて、最大応答値が変位で23%、加速度で37%も低減することが分かる。
以上により、トルク制限機構のない従来の慣性質量ダンパーを用いる場合であっても充分な応答低減効果が得られるが、本発明のトルク制限機構付きの慣性質量ダンパーを用いることにより(従来の慣性質量ダンパーにトルク制限機構を付加することにより)、反力を頭打ちしながらさらなる改善効果が得られことが分かる。
本発明の実施形態である慣性質量ダンパーの概略構成図である。 同、特性を示す図である。 同、要部拡大断面図である。 同、要部組立図である。 同、他の構成例を示す図である。 同、他の構成例を示す図である。 同、要部組立図である。 同、他の構成例を示す図である。 本発明の慣性質量ダンパーによる応答低減システムの概要を示す図である。 同、特性を示す図である。 同、特性を示す図である。 同、解析に用いる入力地震動を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 本発明の慣性質量ダンパーによる他の応答低減システムの概要を示す図である。 同、特性を示す図である。 同、特性を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 従来一般の慣性質量ダンパーの概略構成を示す図である。 同、特性図である。
符号の説明
A,B 構造体
1 ボールねじ機構(振動伝達機構)
2 ボールねじ軸
3 ボールナット
10 回転錘(フライホイール)
11 トルク制限機構
12 フランジプレート
13 ロックナット
14 支圧プレート
15 トルク調整ボルト
16 皿ばね
17 滑り材
20 トルク保持装置(トルク制限機構)
21 ハブ
22 フランジ
23 滑り軸受け
24 調節ナット
25 調節ボルト
26 パイロットプレート
27 皿ばね
28 プレート
29 ダンパーケーシング
30 ベアリング

Claims (3)

  1. 互いに離接する方向に相対振動する構造体間に設置され、それら構造体間に生じる相対振動を振動伝達機構により回転運動に変換して回転錘に伝達して該回転錘を回転させることにより、該回転錘の慣性質量による反力を前記構造体に作用せしめて前記相対振動に対する制振効果を得る構成の慣性質量ダンパーであって、
    前記振動伝達機構と前記回転錘との間に、該回転錘を該振動伝達機構に対してトルク伝達可能に連結するとともにそれらの間で伝達されるトルクが所定の制限値を超えた時点で回転錘を振動伝達機構に対して相対回転させてトルク伝達を制限するトルク制限機構を介装してなることを特徴とする慣性質量ダンパー。
  2. 請求項1記載の慣性質量ダンパーであって、
    前記振動伝達機構をボールねじ軸とボールナットによるボールねじ機構により構成するとともに、前記ボールねじ軸にフランジプレートを固定して、該フランジプレートに対して前記回転錘を前記トルク制限機構を介して一体回転可能かつ前記制限値を超えるトルクで相対回転可能に連結してなり、
    前記トルク制限機構を、前記フランジプレートと前記回転錘の双方に跨るように支圧プレートを装着して、該支圧プレートをトルク調整ボルトにより前記回転錘または前記フランジプレートに対して締結することによって該支圧プレートにより前記フランジプレートまたは前記回転錘を所定の押圧力で挟持するとともに、前記支圧プレートと前記フランジプレートまたは前記回転錘との間に前記制限値を超えるトルクで滑りを生じる滑り材を介装してなることを特徴とする慣性質量ダンパー。
  3. 請求項1記載の慣性質量ダンパーであって、
    前記振動伝達機構をボールねじ軸とボールナットによるボールねじ機構により構成して、該ボールねじ機構における前記ボールねじ軸または前記ボールナットに対して前記回転錘を前記トルク制限機構を介して一体回転可能かつ前記制限値を超えるトルクで相対回転可能に連結してなり、
    前記トルク制限機構を、前記ボールねじ軸または前記ボールナットに対して一体回転可能に連結されるハブと、該ハブに対して一体回転可能かつ前記制限値を超えるトルクで滑りを生じて相対回転可能に装着されたフランジを有するトルク保持装置により構成して、該トルク保持装置における前記フランジに対して前記回転錘を一体回転可能に連結してなることを特徴とする慣性質量ダンパー。
JP2008180490A 2008-07-10 2008-07-10 慣性質量ダンパー Active JP5051590B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008180490A JP5051590B2 (ja) 2008-07-10 2008-07-10 慣性質量ダンパー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008180490A JP5051590B2 (ja) 2008-07-10 2008-07-10 慣性質量ダンパー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010019347A JP2010019347A (ja) 2010-01-28
JP5051590B2 true JP5051590B2 (ja) 2012-10-17

Family

ID=41704462

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008180490A Active JP5051590B2 (ja) 2008-07-10 2008-07-10 慣性質量ダンパー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5051590B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5521720B2 (ja) * 2010-04-08 2014-06-18 株式会社大林組 接合部の制振構造
JP5096551B2 (ja) * 2010-12-20 2012-12-12 Thk株式会社 ねじ運動機構及びこれを用いた減衰装置
JP5861883B2 (ja) * 2011-12-28 2016-02-16 清水建設株式会社 回転慣性質量ダンパー及びブレースダンパー並びにブレース架構
JP5945889B2 (ja) * 2012-07-23 2016-07-05 清水建設株式会社 免震構造
JP6493755B2 (ja) * 2015-06-15 2019-04-03 清水建設株式会社 可変剛性装置及びこれを備えた制振構造物
JP6580457B2 (ja) 2015-10-29 2019-09-25 Thk株式会社 回転慣性質量ダンパ
JP6902191B2 (ja) * 2017-09-14 2021-07-14 株式会社大林組 減衰装置、及び、免震構造

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5320126A (en) * 1976-08-09 1978-02-24 Nhk Spring Co Ltd Inertial vibration proofing device
JP4843881B2 (ja) * 2001-08-13 2011-12-21 株式会社大林組 回転慣性力を利用した連結制振装置
JP2005009565A (ja) * 2003-06-18 2005-01-13 Tokkyokiki Corp 振動減衰装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010019347A (ja) 2010-01-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5051590B2 (ja) 慣性質量ダンパー
CN108138894B (zh) 旋转惯性质量减震器
JP5096551B2 (ja) ねじ運動機構及びこれを用いた減衰装置
JP5832570B2 (ja) トルクコンバータ
CN214661755U (zh) 扭振减振器
US9494208B2 (en) Damping device
EP1765662B1 (en) Damper apparatus
JP6902191B2 (ja) 減衰装置、及び、免震構造
JP7286361B2 (ja) 回転慣性装置
RU2313014C1 (ru) Амортизатор
JP2011144831A (ja) 軸抵抗型慣性質量ダンパー
JPH0942346A (ja) 建築物用免振ダンパー
JP2011007323A (ja) 免震装置
JP4232454B2 (ja) 橋梁の制振構造
JP6498467B2 (ja) 回転慣性制振装置、及び構造物の振動抑制装置
JP6726381B2 (ja) 回転マスダンパの設置構造
JP2012072785A (ja) 摩擦ダンパー
JP4286795B2 (ja) 制震装置および安全装置
JP6778592B2 (ja) マスダンパー
JP5508874B2 (ja) ダンパー
JP5646392B2 (ja) 複合制震ダンパー
JP5646393B2 (ja) 複合制震ダンパー
Yamaguchi et al. Linear friction damper consisting of cylindrical friction block and inclined lever (Investigation of fundamental property)
JP5758532B2 (ja) 複合制震ダンパー
JP7428348B2 (ja) 制振装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110303

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20110722

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20110804

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20111013

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111018

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120214

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120619

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120713

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5051590

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150803

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150803

Year of fee payment: 3