JP6493755B2 - 可変剛性装置及びこれを備えた制振構造物 - Google Patents

可変剛性装置及びこれを備えた制振構造物 Download PDF

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本発明は、変位に依存して弾性係数(剛性)が変化する可変剛性装置及びこれを備えた制振構造物に関する。
長周期地震動などが作用して共振が生じると、構造物に大きな応答が発生する。このため、従来、マンションやオフィスビルなどの建物(構造物)では、建物内に制振ダンパーを設置し、この制振ダンパーで地震時に作用した地震エネルギー(振動エネルギー)を吸収・減衰させ、建物の応答を低減させるようにしている。また、このような制振ダンパーには、鋼材等の降伏耐力やすべり材の摩擦抵抗を利用した履歴系ダンパー、粘性体の粘性抵抗を利用したオイルダンパーなどの粘性系ダンパー、粘弾性体のせん断抵抗を利用した粘弾性系ダンパーが多用されている。
ここで、図25は周期的な外力を受ける建物についてのシミュレーション結果(共振曲線)であり、横軸は固有周期に対する入力波(正弦波)の振動数の比率、縦軸は動的解析結果の変位を、静的に荷重1を加えたときの変位で基準化した動的応答倍率を示している。また、図中の3つの曲線のうち、中央の曲線は、構造物の諸元をm(質量)=1、k(剛性)=1、c(減衰係数)=0.04(減衰h=c/(2√(mk)=0.02に相当)とした基本モデルのシミュレーション結果を示している。基本モデルの左側の曲線は、基本モデルに対して質量を増やした場合(m=4)、右側の曲線は剛性を増やした場合(k=9)の結果を示している。
この図25から、線形範囲では共振すると大きな動的応答倍率になることが確認された。これに対し、制振ダンパーを増やし減衰hを増やせばピークを抑えることが可能である。しかしながら、共振点のピークが1/(2h)で決まるため、非常に多くの制振ダンパーを設置・増設することが必要になり、現実的には設置スペースなどの関係で共振現象を回避できるほどに減衰を増やすことが難しいケースも多い。
一方、建物の地震時応答を低減させるための他の手段として、TMD(Tuned Mass Damper)と称する制振装置を建物の頂部側(屋上など)に設置することも提案、実用化されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
具体的に、TMDは、建物の1次固有周期と同調させた付加質量が建物の振動と逆方向に振動することにより、建物に作用した地震エネルギーをTMD側に移動させ、建物の応答を低減させることができる。
また、免震装置を設置し、建物などの構造物の1次固有周期を長周期側にずらすことによって応答を低減する手法も多用されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2000−18323号公報 特開2011−220511号公報 特開2010−070909号公報
しかしながら、TMDを制振装置として建物の屋上などに設置して共振を抑えるためには、建物全体の1%程度の付加質量が必要になり、広いスペースを屋上に確保する必要があるなどの制約も多い。
さらに、2方向で異なる固有周期を有する建物に適用する場合には、各方向で異なる同調周期を有するTMDが必要になるなどのデメリットもある。
また、免震構造物においては、軟弱地盤上や盆地など、地震時に長周期成分波が長時間継続するような場合の共振に対する検討も必要になる。
本発明は、上記事情に鑑み、周期的な振動エネルギーの入力による共振現象を効果的に回避することを可能にする可変剛性装置及びこれを備えた制振構造物を提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の可変剛性装置は、直線運動を回転運動に変換する立体カム機構を備え、該立体カム機構によって変位と弾性係数の関係が非線形性を有する可変剛性装置であって、剛性調節機構と、硬化型剛性機構と、を備え、前記剛性調節機構は、中心軸線を装置の軸線と同軸上に配して設けられたねじ軸と、該ねじ軸の一端側に螺着して配設された第1回転体と、前記ねじ軸の他端側に螺着して配設された第2回転体と、を備え、振動エネルギーが作用することによって生じる構造物の変位に応じて前記ねじ軸が軸線方向に進退移動すると、該ねじ軸の進退に応じて前記第1回転体および前記第2回転体が軸線周りに回転可能に構成され、前記剛性調節機構は、前記第1回転体の回転運動を軸線方向に沿う直線運動に変換する一方の非線形特性調節機構と、前記第2回転体の回転運動を軸線方向に沿う直線運動に変換する他方の非線形特性調節機構と、を備え、前記一方の非線形特性調節機構および前記他方の非線形特性調節機構は、前記立体カム機構であり、円筒カムおよび従動体を備え、前記第1回転体および前記第2回転体は、それぞれ前記円筒カムを兼ねており、前記第1回転体および前記第2回転体の外周面にカム溝が形成され、前記従動体は、略円筒状に形成され、リニアスライダーによって軸線方向に沿って進退自在に支持され、前記円筒カムを内包するようにして同軸上に設けられ、かつ、前記円筒カムの前記カム溝に係合され、前記従動体は、前記第1回転体および前記第2回転体が軸線周りに回転すると前記軸線方向に進退可能に構成され、前記硬化型剛性機構は、複数の皿バネを積層配置して構成され、前記ねじ軸の一端側と他端側の間の中央部に円盤状の押圧治具が設けられ、前記押圧治具と前記一方の非線形特性調節機構の前記従動体との間に、第一群の皿バネ体が設けられ、前記押圧治具と前記他方の非線形特性調節機構の前記従動体との間に、第二群の皿バネ体が設けられ、前記ねじ軸が軸線方向に進退移動すると、前記ねじ軸と一体化した前記押圧治具も軸線方向に動き、移動した方向の皿バネ体を圧縮することで反力を得るように構成され、前記押圧治具と前記従動体との間隔が、前記ねじ軸の軸線方向の変位量に応じて変化することで剛性が変化するように構成されていることを特徴とする。
本発明の制振構造物は、上記の可変剛性装置を備えた制振構造物であって前記制振構造物の剛性は、主構造の剛性と具備された前記可変剛性装置の剛性との和であり、前記制振構造物の変位に応じて生じるねじ軸の変位により前記可変剛性装置の剛性が変わることで変化するように構成されていることを特徴とする。
本発明の可変剛性装置及び制振構造物によれば、周期的な地震エネルギーなどの振動エネルギーが入力された際に変位に応じて弾性係数が変化し、可変剛性装置の剛性を調節することができる。このため、この可変剛性装置を構造物(耐震構造物)に付加することで、周期的な振動エネルギーが入力された際に制振構造物の固有周期を変化させることが可能になる。これにより、共振現象を効果的に回避することが可能になる。
本発明の一実施形態に係る制振構造物のモデルを示す図である。 本発明の一実施形態に係る制振構造物の共振曲線の一例を示す図であり、図3のタイプ1の共振曲線を示す図である。 強非線形剛性要素と非線形回転慣性要素の質量変動分の変位依存の設定例を示す図である。 図3のタイプ2の共振曲線を示す図である。 図3のタイプ3の共振曲線を示す図である。 Duffing方程式の共振曲線を示す図である。 本発明の一実施形態に係る第一例の非線形回転慣性要素(非線形回転慣性質量装置)を示す図であり、可変慣性質量体が回動して開いた状態を示す図である。 図7のX1−X1線矢視図である。 本発明の一実施形態に係る第一例の非線形回転慣性要素(非線形回転慣性質量装置)を示す図であり、可変慣性質量体が閉じた状態を示す図である。 図9のX1−X1線矢視図である。 本発明の一実施形態に係る第一例の非線形回転慣性要素の立体カム機構(直線運動変換機構)のカム溝の形状を示す図である。 回転慣性質量の変動分と軸方向変位の関係を示す図である。 可変回転慣性質量の変動分とリニアスライダーの水平方向変位の関係を示す図である。 図3のタイプ1に対応した非線形回転慣性要素のカム溝の形状を示す図である。 図3のタイプ2、3に対応した非線形回転慣性要素のカム溝の形状を示す図である。 本発明の一実施形態に係る第二例の非線形回転慣性要素(非線形回転慣性質量装置)を示す図である。 本発明の一実施形態に係る強非線形剛性要素(可変剛性装置)を示す図である。 皿バネ単体の復元力特性を示す図である。 本発明の一実施形態に係る強非線形剛性要素の立体カム機構(直線運動変換機構)のカム溝の形状を示す図である。 発生する荷重と軸方向変位の関係を示す図である。 ねじ溝のピッチを決定する説明で用いた図である。 図3のタイプ1に対応した強非線形剛性要素のカム溝の形状を示す図である。 図3のタイプ2に対応した強非線形剛性要素のカム溝の形状を示す図である。 図3のタイプ3に対応した強非線形剛性要素のカム溝の形状を示す図である。 線形モデルの共振曲線を示す図である。
以下、図1から図25を参照し、本発明の一実施形態に係る可変剛性装置及び制振構造物について説明する。
はじめに、本実施形態の可変剛性装置は、構造物(制振構造物)に具備され、地震エネルギーなどの振動エネルギーが作用して変位した際に構造物の変位に応じて剛性を調節(調整)して固有周期(固有周期)を変化させ、周期的な振動エネルギーの入力に対する構造物の共振現象を回避するために用いられている。
そして、本実施形態の制振構造物1は、図1に示すように、変位に応じて剛性と回転慣性質量が変化する変位依存型調節機構2を備え、周期的な振動エネルギーが入力された際に変位依存型調節機構2によって固有周期を調節するように構成されている。
さらに、本実施形態の変位依存型調節機構2は、強非線形剛性要素(Fk)である可変剛性装置3と、非線形回転慣性要素(Fm)4とを構成要素とし、これらの非線形性が変位に依存するように構成されている。
すなわち、本実施形態の制振構造物1においては、図25に示した前述の基本モデルに強非線形剛性要素3と非線形回転慣性要素4を備えた変位依存型調節機構2を追加することで、図25に示した線形モデルの共振曲線の形状を図2のように折り曲げるように変化させた共振特性を与え、周期的な振動エネルギーが入力された場合に最も小さい動的応答倍率までしか共振が発生しないようにしている。
ここで、図3に、変位依存型調節機構2の強非線形剛性要素3と非線形回転慣性要素4の質量変動分の変位依存の設定例を示す。
この図3において、横軸は変位(基本モデルの静的変位で基準化したもの)を示している。また、強非線形剛性要素3に関する図の縦軸は、発生する荷重(Fk)を示し、非線形回転慣性要素4に関する図の縦軸は、非線形回転慣性要素4の質量変動分(Ma)を示している。
そして、本実施形態の制振構造物1では、変位依存型調節機構2を設け、図3に示す次の(a)、(b)の変位依存曲線の特徴を備えるようにする。
(a)強非線形剛性要素3は、初期段階で機能していないが、図3中の変位Ugで示した途中からその機能が発揮され始め、変位Upで大きな値fpに達する。なお、それ以降、ゼロまで荷重が低下するケース、機能をfpで維持するケース、変位Upでの割線剛性で荷重を増やすケースなどに分かれる。
(b)非線形回転慣性要素4は、初期段階で十分に機能し(最大値ma)、図3中の変位Ugで示した途中からその機能が低下し、変位Upで最小値(図3中では0とした)となる。なお、それ以降、元の機能を回復するケース、最小値を維持するケースなどに分かれる。
言い換えれば、本実施形態の制振構造物1は、変位が小さいときに、相対的に強非線形剛性要素3の作用が小、非線形回転慣性要素4の作用が大となり、変位がある値(Up(Up付近)まで大きくなると、強非線形剛性要素3の作用が大、非線形回転慣性要素4の作用が小となるように構成されている。
このような(a)、(b)の個々の特徴を備えることにより、また、これら特徴を合わせて備えることにより、変位がUg以下では、図25に示した基本モデルと比較し、構造物が長周期化する。また、変位がUgからUpに増大するとき、構造物全体の瞬間的な固有周期が急激に短くなる。つまり、長周期構造物から短周期構造物に振動特性が急激に変化する。
なお。本実施形態では図3に示すタイプ1、タイプ2、タイプ3に示した区分3次曲線を用いているが、変位によって構造物の固有周期(固有振動数)を変化させることが可能であれば、変位−荷重関係や変位−回転慣性質量の質量変動関係が直線、階段的、2次曲線等の特性であっても構わない。
そして、上記のような強非線形剛性要素3と非線形回転慣性要素4を構成要素とした変位依存型調節機構2を設け、図3のタイプ1の特性を備えた場合の共振曲線のシミュレーション結果を図2に、タイプ2の特性を備えた場合のシミュレーション結果を図4に、タイプ3の特性を備えた場合のシミュレーション結果を図5に示す。
これら図2、図4、図5において、実線が安定周期解、破線が不安定周期解を示している。なお、通常は安定周期解に応答値が収れんする。
また、強非線形構造物の場合には共振曲線に分岐現象が発生することが知られ、図2、図4、図5では、○がサドルノード分岐、●がピッチフォーク分岐、◎が倍周期分岐点となっている。
そして、1つの振動数比に対して複数の安定周期解がある場合には、初期条件によって、収れんする周期解が決まる。
すなわち、構造物が静止した状態を初期値にした場合には、最も動的応答倍率が小さい周期解に収れんする。具体的に、図2では、安定周期解がおおむね(1)、(2)、(3)、(4)で示す領域に区分でき、静止状態を初期値にした場合には、(1)及び(2)の領域に収れんする。
これにより、図25に示した線形モデルと比較し、本実施形態の制振構造物1においては大幅に動的応答倍率が抑制できることが確認された。
また、(2)では分岐が発生して若干動的応答倍率が大きくなっている領域もあるが、動的応答倍率は2以下であり、優れた応答低減効果が得られることが確認された。
(4)の領域では多数の分岐現象が発生するが、構造物が静止した状態を初期値とした場合には(4)の領域まで応答倍率が増えることはないため無視できる。
一方、高振動数へのスイープ加振の場合には、(2)の領域から(3)の領域に入っていき動的応答倍率が漸次増加するが、振動数比β=2.5付近で(1)の領域に飛び移ることで応答倍率は激減する。これにより、静止状態から(4)の領域に収れんするような状況になる可能性は非常に低い。また、大きな初期値を与えた場合には(3)、(4)の領域に収れんする可能性も考えられるが、(3)、(4)の領域よりも(1)、(2)の領域の方が安定性が高いため、この場合においても僅かな外乱で(1)、(2)の周期解まで応答が低減する。
次に、タイプ2では、図4に示すように、(4)に対応する領域の勾配が大きいため、(4)に共振する振動数範囲が狭くなっている。また、タイプ3では、図5に示すように、共振域が振動数比β=3付近に限定されている。
なお、タイプ3では、図25に示した線形モデルのk=9のケースと比較すると、振動数比β=3付近の共振曲線が似通っているが、線形モデルでは振動数比β=3で加振すると共振曲線のピークまで共振するのに対し、タイプ3では(1)の領域(図中ではほとんどゼロ)に収れんするという点が決定的に異なっている。
ここで、次の式(1)のDuffing方程式は線形運動方程式にαωの項を追加した力学系であり、周知の式である。なお、ωはω=√(k/m)、hは構造物の減衰(h=c/2√(mk))、αは構造物の非線形ばね定数、pは外力倍率、βは構造物のωに対する強制外力の振動数比、mは構造物の質量、cは構造物の減衰係数、kは構造物の剛性である。
Figure 0006493755
そして、図6(a)は、この式(1)による共振曲線の例を示している。また、図6(b)は、参考文献1(渡辺宏一,中井正一:強非線形を有する1自由度系の振動特性に関する検討、日本建築学会(近畿)、2014年9月14日)に示された降伏を考慮したDuffing方程式による共振曲線である。
強非線形性を含む項を力学系に入れると、図6に示すように共振曲線が傾くことは多くの文献に記載れている周知の事実である。
また、共振曲線が傾いた場合には、同じ振動数比βに対して複数の周期解があること、どの周期解に収れんするかは構造物の初期状態に依存すること、初期値が静止状態のときは最も動的応答倍率が小さい周期解に収れんすることも知られている。
さらに、加振力の周期を変動させた場合(スイープ加振)、高振動数側にスイープさせると、図6におけるD→Aに移行して動的応答倍率が増加し、低振動数側にスイープさせると、C→E→Dと異なる経路をたどることも知られている。
また、上記の参考文献1に記載のように、硬化型復元力特性を有する強非線形剛性要素3に降伏を考慮することは装置(2)の周りの設計を考えた場合に当然に最初に検討される項目である。
一方、参考文献1に示されるように、図6におけるE付近の振動数において初期値がゼロでない場合にDに収れんし、動的応答倍率が増大してしまうケースがある。
これに対し、本実施形態の制振構造物1、変位依存型調節機構2においては、非線形回転慣性要素(本実施形態の回転慣性質量装置/可変慣性質量装置)4を組み込むことで、E点の位置を長周期側(振動数比βが小さくなる方向)にずらすようにしている。
すなわち、非線形回転慣性要素4を組み込むと、動的応答倍率が小さい図2の(1)の領域部分を長周期側まで食い込むように拡大させることができる。また、図3のタイプ3では、共振する可能性が高い振動数を狭い範囲(図5の(4))に限定することができ、且つその共振現象が発生する可能性を著しく低くすることができる。
したがって、本実施形態の制振構造物1においては、周期的な振動エネルギーが入力された際に、非線形の回転慣性質量効果が発揮され、制振構造物1の固有周期を変化させることができる。これにより、周期的な振動エネルギーの入力による共振現象を効果的に回避することが可能になる。また、特に構造物1の固有周期に近い周期荷重が長時間作用する場合に有効である。
そして、このような特徴を有する本実施形態の変位依存型調節機構2(可変慣性質量装置4、可変剛性装置3)は、免震構造物への適用が効果的であり、免震層に本実施形態の変位依存型調節機構2を付加することにより、地震時に長周期成分の加振が多数繰り返された場合にも共振を抑制することが可能になる。また、大地震時のストッパー装置の替わりに設置することも可能である。
また、免震構造物以外に本実施形態の変位依存型調節機構2を付加した場合には、従来のように制振ダンパーを多数設置しなくても共振を抑制することができる。
さらに、機械振動や鉄道走行時振動など、特定振動数成分を多く含む複数回の加振が想定される場合に本実施形態の変位依存型調節機構2を付加することにより共振現象を効果的に抑えることができる。
また、大型振動台等の加振源の基礎部分に本実施形態の変位依存型調節機構2を付加することで、周辺地盤の共振を抑制できる。さらに、強風を受ける構造物や橋梁の共振抑制に適用するも可能である。
ここで、制振構造物1の変位が小さいときに、相対的に強非線形剛性要素3の作用が小、非線形回転慣性要素4の作用を大とし、変位がある値(Up(Up付近))まで大きくなると、強非線形剛性要素3の作用を大、非線形回転慣性要素4の作用を小にすることができる強非線形剛性要素(可変剛性装置)3、非線形回転慣性要素(可変慣性質量装置)4の具体例について説明する。
はじめに、本実施形態の第一例の非線形回転慣性要素4は、変位に応じて回転慣性質量効果を大小変化させることが可能な回転慣性質量装置、言い換えれば、非線形の回転慣性特性を有する回転慣性質量装置であり、図7から図10に示すように、回転慣性質量機構5と非線形特性調節機構(回転慣性質量可変機構)6とを備えて構成されている。
回転慣性質量機構5は、中心軸線O1を装置の軸線O1と同軸上に配して設けられたねじ軸7と、ねじ軸7に螺着して配設された第1回転錘8とを備えている。
ねじ軸7は、その一端(基端)にボールジョイントやクレビスなどの連結部材9が取り付けられている。また、このねじ軸7には、その外周面に、第1回転錘8が螺着する第1ねじ溝(雄ネジ)10が形成され、且つ第1ねじ溝10よりも他端(先端)側の外周面に、後述の第2回転錘14が螺着する第2ねじ溝(雄ネジ)11が形成されている。さらに、第1ねじ溝10は、ねじピッチが小さく、密に形成されている。第2ねじ溝11は、第1ねじ溝10よりもネジピッチが大きく、疎に形成されている。
また、回転慣性質量機構5は、ねじ軸7がケーシング12に軸線O1方向に進退自在に支持され、ケーシング12から一端側を外側に配し、第1ねじ溝10及び第2ねじ溝11が形成された部分をケーシング12内に配して設けられている。さらに、第1ねじ溝10に螺合した第1回転錘8がケーシング12内に配設されるとともに、略円盤状の第1回転錘8がその外周側をケーシング12に一体に取り付けられたベアリング13に回転可能に支持されて配設されている。
これにより、この回転慣性質量機構5においては、振動エネルギーが作用することによって生じる構造物1の変位に応じてねじ軸7が軸線O1方向に進退移動すると、このねじ軸7の進退に応じて密な第1ねじ溝10に螺着した第1回転錘8が回転し、この第1回転錘8の質量の数千倍もの慣性質量効果を発生させることができる。
非線形特性調節機構(回転慣性質量可変機構)6は、ねじ軸7の第2ねじ溝11に螺着して配設された第2回転錘14を備えている。
これにより、振動エネルギーが作用することによって生じる構造物1の変位に応じてねじ軸7が軸線O1方向に進退移動すると、このねじ軸7の進退に応じて第1回転錘8とともに第2ねじ溝11に螺着した第2回転錘14が回転する。
このとき、第1回転錘8が密な第1ねじ溝10に螺着して設けられ、第2回転錘14が疎な第2ねじ溝11に螺着して設けられているため、第1回転錘8は高速で回転し、第2回転錘14は低速で回転することになる。
なお、第2回転錘14に対応する疎な第2ねじ溝11は、力の伝達を確実にするため、複数の溝(本実施形態では4本)を平行に配置して巻き数の不足を補うように構成されている。
また、非線形特性調節機構6は、第2回転錘14の回転運動を軸線O1方向に沿う直線運動に変換する直線運動変換機構15と、直線運動変換機構15が作用して回転質量効果を変化させる可変回転慣性質量機構16とを備えている。
本実施形態の直線運動変換機構15は、立体カム機構であり、円筒カム20と従動体21とを備えて構成されている。
円筒カム20は、外周面に一連のカム溝が形成されている。また、本実施形態の円筒カム20は、ねじ軸7を内孔に挿通し、互いの軸線O1を一致させつつ第2回転錘14の一部として形成されている。
従動体21は、略円筒状に形成され、ケーシング12に一体に設けられたリニアスライダー22によって軸線O1方向に沿って進退自在に支持されている。また、この従動体21は、円筒カム20を内包するように同軸上に設けられ、且つ円筒カム20のカム溝に爪を係合させて設けられている。これにより、従動体21は、円筒カム20が軸線O1周りに回転するとともにカム溝に案内されて軸線O1方向に進退する。
すなわち、本実施形態の直線運動変換機構15においては、第2回転錘14(円筒カム20)の回転運動が従動体21の直線運動に変換される。
可変回転慣性質量機構16は、ラックピニオン23と可変慣性質量体27とを備えて構成されている。
ラックピニオン23は、第1回転錘8に軸線O1方向に進退自在に支持され、第1回転錘8とともに軸線O1周りに回転するラック24と、軸線O1に直交する方向に回転軸線を向け、第1回転錘8に回転軸線周りに回転可能に軸支された回転軸25と、回転軸25に一体に取り付けられるとともにラック24に噛合して設けられ、ラック24が進退する直線運動を回転軸25の回転運動に変換するピニオン26とを備えている。
また、回転軸25には回転ばねなどの付勢手段が取り付けられ、常時一方向に回転させるように付勢されている。これにより、ピニオン26が一方向に付勢され、ラック24がねじ軸7の図7のB側に移動するように付勢されている。
可変慣性質量体27は、一端をラックピニオン23の回転軸25に固着し、回転軸線に直交する方向に延設されている。
上記構成からなる本実施形態の第一例の非線形回転慣性要素4の回転慣性質量装置においては、ねじ軸7が軸線O1方向に進退すると、第1回転錘8とともに第2回転錘14が回転し、立体カム機構の直線運動変換機構15の従動体21が第2回転錘14に連動して軸線O1方向に進退する。
そして、図7及び図8に示すように、従動体21がねじ軸7の図7のB側に移動すると、この従動体21が可変回転慣性質量機構16のラック24を押す力が弱くなるので、これとともに、ラックピニオン23の回転軸25が付勢手段によって回動し、可変慣性質量体27が回転軸線周りに回動して傘を開くように移動する。
また、図9及び図10に示すように、従動体21が逆にねじ軸7の図7A側に移動すると、ラックピニオン23の回転軸25が従動体21によって押圧され、可変慣性質量体27が傘を閉じるように移動する。
このように可変慣性質量体27が開閉移動することによって回転慣性質量効果を変化させることが可能になる。
また、立体カム機構の従動体21の爪の数は1個、複数個とすることが可能であるが、本実施形態では上下左右の4箇所に爪を設けるようにしている。この場合、図11に示すように、円筒カム20のカム溝28のリード長は、ねじ軸7の軸線O1方向の動きに対して±45°以下の回転に収まるように設定する。すなわち、この±45°の回転に応じて所定の軸線O1方向変位が実現できるように立体カム機構のカム溝28の形状を決定することになる。
図3に示した非線形回転慣性要素(Fm)4のタイプ1、タイプ2、タイプ3を実現するためには、図11のようなカム溝28の形状となる。
また、図9及び図10に示した傘が閉じたような状態でも多少の回転慣性質量が存在するが、そのときの回転慣性質量を回転質量ゼロとみなせば、図3のタイプを実現できたことになる。
また、直線運動変換機構(立体カム機構)15の軸線O1方向の従動体21の動きと、可変慣性質量体27による回転慣性質量の関係は、数値計算により求め、図表などとして表すことが可能である。
具体的には、従動体21の変位から可変慣性質量体27の幾何学的な位置が決定でき、これにより、可変慣性質量体27による可変の回転慣性質量を算定することができる。例えば、図3の3次区分曲線を実現するには、必要な回転慣性質量から逆にたどって、可変慣性質量体27の変位を求め、その変位を実現できるようにカム溝28等を形成すればよい。
さらに具体的に非線形回転慣性質量変動分の特性を実現するためのカム溝28の形状の決定方法の一例について説明する。
図3におけるタイプ1、タイプ2、タイプ3を重ねて示すと、図12のような回転慣性質量の変動分と軸方向変位の関係となる。
そして、カム溝28の形状を決定する手順としては、まず、第1回転錘8の可変慣性質量の変動分(可変慣性質量体27)とリニアスライダー22の水平方向変位の関係を求める。リニアスライダー22の水平方向変位とは、従動体21及びラック24の変位を意味する。
リニアスライダー22の水平方向変位が決まれば可変慣性質量体27が傘状に開くときの角度がラック24のギア比により幾何学的に算定できる。
これにより、図13に示すようなリニアスライダー22の水平方向変位と可変慣性質量体27による可変部分の回転慣性質量の関係を得ることができる。
そして、この図13に示したA、B、C、D、E、Fは図12のタイプ1の回転慣性質量を実現するための目標点である。すなわち、図12の軸線O1方向変位がUg、U1、Up、U2、U3、U4のときに、リニアスライダー22の水平方向変位が図13となるようにカム溝28を設定すればよいことになる。
図14にタイプ1の場合のカム溝28の設定例を示す。図中のCの位置は、図13のL2の水平変位に対応している。また、図中のB、Dの位置は図13のL1の水平位置に対応している。なお、図14(b)には立体カム制御用の第2回転錘14の0度から45度についてのカム溝28の形状を示しているが、0度から−45度については0度を軸とした線対称の形状となる。
図15にタイプ2、タイプ3の場合のカム溝28の設定例を示す。図中のCの位置は、図13のL2の水平変位に対応している。また、図中のBの位置は図13のL1の水平位置に対応している。C点以降はCの状態を維持すればよいので、カム溝28の位置は図15(b)のようになる。なお、図15(b)には立体カム制御用の第2回転錘14の0度から45度についてのカム溝28の形状を示しているが、上記と同様、0度から−45度については0度を軸とした線対称の形状となる。
次に、本実施形態の第二例の非線形回転慣性要素(非線形回転慣性質量装置)4について説明する。この第二例の非線形回転慣性要素4においても、第一例と同様、変位に応じて回転慣性質量効果を大小変化させることが可能な非線形回転慣性質量装置である。
一方、第一例の非線形回転慣性要素4は回転慣性質量−変位の関係を任意の曲線で表現できるように構成したが、この関係が階段状でもよい。このため、第二例としての非線形回転慣性要素4は回転慣性質量−変位の関係を階段状で表現できるように構成されている。
具体的に、本実施形態の第二例の非線形回転慣性要素4は、図16に示すように、回転慣性質量機構5と非線形特性調節機構(回転慣性質量可変機構)6とを備えている。
また、回転慣性質量機構5は、第一例と同様に構成されている。すなわち、中心軸線O1をダンパーの軸線O1と同軸上に配して設けられたねじ軸7に第1回転錘8を螺着して構成されている。
ねじ軸7には、その外周面に、第1回転錘8が螺着する第1ねじ溝10と第2回転錘14が螺着する第2ねじ溝11が形成されている。第1ねじ溝10は、ねじピッチが小さく、密に形成されている。第2ねじ溝11は、第1ねじ溝10よりもネジピッチが大きく、疎に形成されている。
非線形特性調節機構(回転慣性質量可変機構)6は、第2ねじ溝11に螺着した第2回転錘14を備えている。
さらに、この非線形特性調節機構6は、第2回転錘14の回転運動を軸線O1方向に沿う直線運動に変換する直線運動変換機構15と、直線運動変換機構15が作用して回転質量効果を変化させる可変回転慣性質量機構30とを備えている。
直線運動変換機構15は、立体カム機構であり、第一例と同様に円筒カム20と従動体21とを備え、円筒カム20が軸線O1周りに回転するとともにカム溝28に案内されて従動体21が軸線O1方向に進退する。また、従動体21の先端側にはバネ31aとボール31bで構成された押付け機構31が設けられている。
本実施形態の第二例の可変回転慣性質量機構30は、従動体21が軸線A側方向に移動すると、この従動体21に押圧されて第1回転錘8に押圧され、第1回転錘8とともに回転する付加回転慣性質量体32を備えている。
また、付加回転慣性質量体32と第1回転錘8との間に摩擦部材33が設けられ、従動体21が軸線A側方向に移動して付加回転慣性質量体32が第1回転錘8に押圧されるとともに摩擦部材33との摩擦によって確実に第1回転錘8と一体に回転するように構成されている。
そして、ねじ軸7の軸線O1方向の進退に応じて従動体21がA側方向に移動すると付加回転慣性質量体32の回転慣性効果が付加され、従動体21がB側方向に移動すると、摩擦が切れて付加回転慣性質量体32の回転慣性効果がなくなる。
この例では回転慣性効果のON、OFFの2段階であるが、変位に応じて回転慣性質量を増減することが可能になる。また、この摩擦を使った非線形回転慣性要素(非線形特性を有する回転慣性質量装置)4は、第一例の非線形回転慣性要素4よりもコンパクトで、大きな付加回転慣性質量を実現することができる。
なお、押付け機構31の剛性や摩擦部材33の摩擦係数を種々のレベルに調整した複数の装置4を例えば建物当該階に配置することによって、建物(構造物1)の層全体として多段の階段状の回転慣性質量−変位関係を実現することも可能である。
次に、本実施形態の強非線形剛性要素(非線形の剛性特性を有する可変剛性装置)3は、図17に示すように、剛性調節機構35と硬化型剛性機構36とを備えて構成されている。
剛性調節機構35は、中心軸線O2を装置の軸線O2と同軸上に配して設けられたねじ軸37と、ねじ軸37の一端側に螺着して設けられた第1回転体38と、ねじ軸37の他端側に螺着して設けられた第2回転体39とを備えている。
ねじ軸37は、その一端(基端)にボールジョイントやクレビスなどの連結部材40が取り付けられている。また、このねじ軸37には、その外周面に、第1回転体38が螺着する第1ねじ溝(雄ネジ)41が形成され、且つ第1ねじ溝41よりも他端(先端)側の外周面に、第2回転体39が螺着する第2ねじ溝(雄ネジ)42が形成されている。
また、ねじ軸37がケーシング43に軸線O2方向に進退自在に支持され、ケーシング43から一端側を外側に配し、第1ねじ溝41及び第2ねじ溝42が形成された部分をケーシング43内に配して設けられている。さらに、第1ねじ溝41に螺合した第1回転体38、第2ねじ溝42に螺合した第2回転体39はそれぞれ、ケーシング43内に配設されるとともに、略円盤状の第1回転体38、第2回転体39がその外周側をケーシング43に一体に取り付けられたベアリング44に回転可能に支持されている。
これにより、振動エネルギーが作用することによって生じる構造物1の変位に応じてねじ軸37が軸線O2方向に進退移動すると、このねじ軸37の進退に応じて第1回転体38、第2回転体39が軸線O2周りに回転する。
また、剛性調節機構35は、第1回転体38の回転運動を軸線O2方向に沿う直線運動に変換する一方の非線形特性調節機構45と、第2回転体39の回転運動を軸線O1方向に沿う直線運動に変換する他方の非線形特性調節機構46とを備えている。
各非線形特性調節機構45、46は、立体カム機構であり、円筒カム47と従動体48とを備えて構成されている。
本実施形態においても、第1回転体38、第2回転体39がそれぞれ円筒カム47を兼ねており、各回転体38、39の外周面に一連のカム溝を形成して構成されている。
従動体48は、略円筒状に形成され、ケーシング43に一体に設けられたリニアスライダー49によって軸線O2方向に沿って進退自在に支持されている。また、この従動体48は、円筒カム47を内包するようにして同軸上に設けられ、且つ円筒カム47のカム溝に爪を係合させて設けられている。これにより、従動体48は、円筒カム47である第1回転体38、第2回転体39がそれぞれ軸線O2周りに回転するとともにカム溝に案内されて軸線O2方向に進退する。
硬化型剛性機構36はバネ部材を用いて構成される。本実施形態では、この硬化型剛性機構36が複数の皿バネ50を積層するように並設して構成されている。
また、ねじ軸37には一端側と他端側の間の中央部に円盤状の押圧治具51が一体に設けられている。そして、この押圧治具51と一方の非線形特性調節機構45の従動体48の間に第一群の皿バネ体52が、押圧治具51と他方の非線形特性調節機構46の従動体48の間に第二群の皿バネ体53がそれぞれ介装されている。なお、本実施形態では、初期状態で、押圧治具51と第一群の皿バネ体52との間、押圧治具51と第二群の皿バネ体53との間にそれぞれ、隙間Ugが形成されるように構成されている。
そして、この強非線形剛性要素3においては、ねじ軸37が軸線O2方向に進退移動すると、ねじ軸37と一体化した押圧治具51も軸線O2方向に動き、移動した方向の皿バネ体51、52を圧縮することで反力が得られる。
また、このとき、2つの非線形特性調節機構45、46が両端側に設けられ、ねじ軸37の軸線O2方向の移動を第1回転体38と第2回転体39の回転方向の動きに変換する。さらに、各回転体38、39には立体カム機構を構成するためのカム溝が設けられ、各回転体38、39の回転変位をカム溝に係合した従動体48の軸線O2方向の直線運動(直線変位)に変換する。
これにより、押圧治具51と各従動体48の間隔がねじ軸37の軸線O2方向の変位量に応じて変わり、強非線形剛性要素3の剛性が可変となる。よって、図3の変位Up以降の変位−荷重関係を実現することが可能になる。
なお、図3の強非線形剛性要素3の変位−荷重関係において、変位Upまではタイプ1、タイプ2、タイプ3共通であり、複数の皿バネ50を組み合わせることによって実現可能である。
また、本実施形態では、立体カム機構の従動体48の爪の数は1個、複数個とすることが可能であるが、例えば上下左右の4箇所に爪を設けるようにしている。この場合、円筒カム47のカム溝のリード長は、ねじ軸37の軸線O2方向の動きに対して±45°以下の回転に収まるように設定する。すなわち、この±45°の回転に応じて所定の軸線O2方向変位が実現できるように立体カム機構のカム溝の形状を決定することになる。
ここで、皿バネ単体の復元力特性の一例を図18に示す。曲げ高さに対するたわみ量f/hが0.75程度の範囲までは線形の復元力特性を示し、その後、剛性が増大し、皿バネ50が完全に押し潰された状態(f/h=1.0)では剛性が∞となる。
皿バネ50の耐久性を確保するためにはf/hを0.75(75%)以下に抑えることが望ましい。一方、例えば免震構造物においてギャップストッパー作動時には層間変位が大きくなるに従ってギャップ部分の剛性を∞に近づける必要がある。
そこで、本実施形態では、図17に示すように、隣り合う皿バネ50の間にたわみ制限治具(変位制限治具)55を介装することで、f/hを0.75(75%)以下にしつつ剛性を∞にできるようにしている。そして、剛性が異なる複数の皿バネ50を連結したり、たわみ制限治具55の厚みを調節することでより滑らかな硬化型復元特性を実現することが可能になる。また、皿バネ50と押圧治具51の間に隙間Ugを設けることによりギャップ(全く荷重が発生しない領域)を実現することが可能になる。
また、図3に示した強非線形剛性要素3のタイプ1、タイプ2、タイプ3を実現するカム溝57の形状は、例えば図19のようになる。
また、非線形特性調節機構(立体カム機構)45、46の軸線O2方向の従動体48の動きと、皿バネ50の変位−荷重の関係は、数値計算により求め、図表などとして表すことが可能であり、図3を実現するようなカム溝位置を図表により求めることによって、容易にカム溝位置を設定することができる。
さらに具体的に強非線形剛性要素3の特性を実現するためのカム溝形状の決定方法の一例について説明する。
図3におけるタイプ1、タイプ2、タイプ3を重ねて示すと、図20のような発生する荷重と軸方向変位の関係となる。また、図20の軸方向変位U4は、強非線形剛性要素3の使用限界変位となる。
そして、本実施形態では、立体カム機構の従動体48に4つの爪があるため、1つの爪は360度/4=90度範囲のカム溝57で制御することになる。また、従動体48の動作に関与する第1回転体38、第2回転体39のねじ溝41、42のピッチは緩やかにしており、使用限界範囲U4の時にこれら回転体38、39は±45度の回転が生じるようにねじ軸37のピッチを決定する(図21参照)。
図22にタイプ1の場合のカム溝の設定例を示す。
図22には、±45度の部分の上半分である0度から45度のみを示している。ここで、0度から45度は皿バネ50が圧縮する方向にねじ軸37が移動した場合である。また、第1回転体38と第2回転体39は、カム溝57の形状を反転させる(左右入れ替える)必要がある。なお、0度から−45度については皿バネ50が引っ張られる方向なので従動体48を移動させる必要がないため、初期位置と同じ位置にカム溝57があればよい。
軸線O2方向変位Ugまでは、図17に示した皿バネ部分の隙間Ugによって荷重がゼロとなる。軸線O2方向変位U1(図20のA点)までは、皿バネ50による硬化型復元力特性と同じであるので、従動体48は初期状態から動く必要はない。それ以降は、図22の黒線と破線の変位差の分だけ従動体48によって有効となる変位を少なくすればよい。例えば、B点ではdbだけ従動体48によって有効となる変位を小さくする。同様にC点ではdcだけ従動体48によって有効となる変位を小さくする。以下同様にして、対応するカム溝位置を決定する。
図23にタイプ2の場合のカム溝57の設定例を示す。A点まではタイプ1と同じである。それ以降は荷重fpを維持するために、図23の縦線との水平距離の分だけ、従動体48で変位を緩和すればよい。したがって、B点以降はE点を通る直線のカム溝形状となる。
図24にタイプ3の場合のカム溝57の設定例を示す。B点まではタイプ2と同じであるが、それ以降は実線と破線の差の分だけ変位を緩和すればよいので、B点以降に直線となる。タイプ2とタイプ3の差は、B点以降の直線の傾きとなる。
以上、本発明に係る可変剛性装置及び制振構造物の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態では、可変慣性質量装置が回転力を利用する回転慣性質量装置であるものとして説明を行ったが、本発明に係る可変慣性質量装置は必ずしも回転量を利用して慣性質量効果を得る装置に限定する必要はない。
また、本実施形態では、回転慣性質量装置4として図7から図10の第一例と図16の第二例を示したが、例えば、特開2013−213579号公報の可変慣性質量フライホイールのような電流の変化によって磁性流体の粘度を変化させることで2つのフライホイールの結合状態を任意に変化させ、回転慣性質量を可変にするものを適用してもよい。
この場合には、変位センサーの値に応じて電流を制御し、変位に依存する回転慣性質量の値を任意に設定できるため、本発明が必要としている回転慣性要素の復元力特性が実現可能である。
また、回転慣性質量装置4として、特許第4366215号公報の可変リード転動体ねじ装置と特開2010−19347号公報の慣性質量ダンパーを組み合わせて適用してもよい。
1 制振構造物
2 変位依存型調節機構
3 強非線形剛性要素(可変剛性装置)
4 非線形回転慣性要素(可変慣性質量装置)
5 回転慣性質量機構
6 非線形特性調節機構
7 ねじ軸
8 第1回転錘
9 連結部材
10 第1ねじ溝
11 第2ねじ溝
12 ケーシング
13 ベアリング
14 第2回転錘
15 直線運動変換機構(立体カム機構)
16 可変回転慣性質量機構
20 円筒カム
21 従動体
22 リニアスライダー
23 ラックピニオン
24 ラック
25 回転軸
26 ピニオン
27 可変慣性質量体
28 カム溝
30 可変回転慣性質量機構
31 押付け機構
31a バネ
31b ボール
32 付加回転慣性質量体
33 摩擦部材
35 剛性調節機構
36 硬化型剛性機構
37 ねじ軸
38 第1回転体
39 第2回転体
40 連結部材
41 第1ねじ溝
42 第2ねじ溝
43 ケーシング
44 ベアリング
45 一方の非線形特性調節機構(立体カム機構)
46 他方の非線形特性調節機構(立体カム機構)
47 円筒カム
48 従動体
50 皿バネ
51 押圧治具
52 第一群の皿バネ体(第1バネ体)
53 第二群の皿バネ体(第2バネ体)
55 たわみ制限治具(変位制限治具)
O1 軸線
O2 軸線

Claims (2)

  1. 直線運動を回転運動に変換する立体カム機構を備え、該立体カム機構によって変位と弾性係数の関係が非線形性を有する可変剛性装置であって、
    剛性調節機構と、硬化型剛性機構と、を備え、
    前記剛性調節機構は、
    中心軸線を装置の軸線と同軸上に配して設けられたねじ軸と、該ねじ軸の一端側に螺着して配設された第1回転体と、
    前記ねじ軸の他端側に螺着して配設された第2回転体と、を備え、
    振動エネルギーが作用することによって生じる構造物の変位に応じて前記ねじ軸が軸線方向に進退移動すると、該ねじ軸の進退に応じて前記第1回転体および前記第2回転体が軸線周りに回転可能に構成され、
    前記剛性調節機構は、
    前記第1回転体の回転運動を軸線方向に沿う直線運動に変換する一方の非線形特性調節機構と、前記第2回転体の回転運動を軸線方向に沿う直線運動に変換する他方の非線形特性調節機構と、を備え、
    前記一方の非線形特性調節機構および前記他方の非線形特性調節機構は、前記立体カム機構であり、円筒カムおよび従動体を備え、
    前記第1回転体および前記第2回転体は、それぞれ前記円筒カムを兼ねており、前記第1回転体および前記第2回転体の外周面にカム溝が形成され、
    前記従動体は、
    略円筒状に形成され、リニアスライダーによって軸線方向に沿って進退自在に支持され、前記円筒カムを内包するようにして同軸上に設けられ、かつ、前記円筒カムの前記カム溝に係合され、
    前記従動体は、前記第1回転体および前記第2回転体が軸線周りに回転すると前記軸線方向に進退可能に構成され、
    前記硬化型剛性機構は、複数の皿バネを積層配置して構成され、
    前記ねじ軸の一端側と他端側の間の中央部に円盤状の押圧治具が設けられ、
    前記押圧治具と前記一方の非線形特性調節機構の前記従動体との間に、第一群の皿バネ体が設けられ、
    前記押圧治具と前記他方の非線形特性調節機構の前記従動体との間に、第二群の皿バネ体が設けられ、
    前記ねじ軸が軸線方向に進退移動すると、前記ねじ軸と一体化した前記押圧治具も軸線方向に動き、移動した方向の皿バネ体を圧縮することで反力を得るように構成され、
    前記押圧治具と前記従動体との間隔が、前記ねじ軸の軸線方向の変位量に応じて変化することで剛性が変化するように構成されていることを特徴とする可変剛性装置。
  2. 請求項1記載の可変剛性装置を備えた制振構造物であって
    前記制振構造物の剛性は、主構造の剛性と具備された前記可変剛性装置の剛性との和であり、前記制振構造物の変位に応じて生じるねじ軸の変位により前記可変剛性装置の剛性が変わることで変化するように構成されていることを特徴とする制振構造物。
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