JP5915992B2 - 振動低減構造物 - Google Patents
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Description
付加バネにより斜材を緊張させてプレストレスを導入することで、斜材の座屈を防止し、斜材の断面積や角度を調節することで振動低減部全体の固有振動数の設定を行うことができる。そして、振動低減部の固有振動数を本体梁の一次固有振動数に同調させることで、TMDを設置した場合と同じ振動低減効果をTMDの数百分の1以下の質量で発揮し、本体梁に大きな負荷がかかるのを防止している。
本発明の振動低減構造物は、下方に空間を確保する振動低減構造物であって、基体と、前記基体を下方から支持するとともに、水平面に平行な基準方向に互いに離間して配置された一対の振動低減部と、を備え、それぞれの前記振動低減部は、前記基体に接続された弾性部材と、前記弾性部材と前記弾性部材より下方に位置する支持部とにそれぞれ接続され、前記弾性部材の上下方向の振動により作動する回転慣性質量機構と、を有し、前記弾性部材と前記回転慣性質量機構とにより構成される付加振動系の固有振動数を、前記基体の固有振動数に同調させてなり、それぞれの前記振動低減部は、前記基体における前記基準方向のそれぞれの端部に配置され、前記基体および一対の前記振動低減部は、前記基準方向に平行に見たときに、水平面に直交する基準平面に対してそれぞれが対称となるように形成されていることを特徴としている。
また、上記の振動低減構造物において、前記振動低減部は、前記弾性部材における互いに離間した一対の被固定部位を前記基体にそれぞれ固定する固定部を有し、前記回転慣性質量機構は、前記弾性部材における一対の前記被固定部位の中間部に接続されていることがより好ましい。
図1に示すように、本実施形態の歩道橋1は、車道S1の上方に水平面に略平行に延びるように配置された桁部10と、桁部10の上面に互いに対向するように立設した一対の手摺部20と(一方の手摺部20は不図示。)、桁部10の端部にそれぞれ設けられた階段部30、支柱40、および振動低減部50とを備えている。なお、桁部10および一対の手摺部20で、基体6を構成する。
桁部10、手摺部20、階段部30、および支柱40は、公知の構成のものである。この例では、階段部30および支柱40の下端は歩道(支持部)S2に取り付けられている。
図2および図3に示すように、振動低減部50は、弾性を有する材料で長手方向Dに延びるように形成された板ばね(弾性部材)51と、板ばね51の長手方向Dの両端部(被固定部位)51aを桁部10にそれぞれ固定する固定部52と、板ばね51における両端部51aの中間部51bと歩道S2とにそれぞれ取り付けられた回転慣性質量機構53とを有している。
固定部52としては、高力ボルトや、溶接による接続部などを適宜選択して用いることができる。桁部10に板ばね51の端部51aを直接固定してもよいし、桁部10の底面に取り付けられた溝形鋼やH形鋼などの形鋼に板ばね51の端部51aを固定してもよい。
この例では、それぞれの振動低減部50の板ばね51は、長手方向Dに平行な基準線L上に配置されている。また、それぞれの振動低減部50の固定部52も、前述の基準線L上に配置されている。
ボールねじ56の外周面には、螺線状に溝部56aが形成されている。ボールねじ56の上端は、板ばね51の中間部51bに固定されている。
ボールナット57の内周面には、螺線状に溝部57aが形成されていて、溝部57aに配され内周面から突出する鋼球57bがボールねじ56の溝部56aに係合している。
ケーシング59は、ボールナット57およびフライホイール58が上下方向Eに移動するのを規制するとともに、これらを上下方向Eに平行な軸線周りに回転可能に支持している。ケーシング59の下端は歩道S2に取り付けられている。
さらに、板ばね51と回転慣性質量機構53とにより構成される付加振動系の固有振動数を、基体6の固有振動数に同調させている。
具体的には、回転慣性質量機構53の設置位置において、板ばね51の上下方向Eのばね定数をKとする。すなわち、図2のように、両端部51aを固定された板ばね51の中間部51bに下方に荷重Pが作用したときに、中間部51bの下方への変位をδとする。このとき、板ばね51のばね定数Kは、(1)式のように表される。
K=P/δ ・・(1)
このときに生じるフライホイール58の回転慣性質量をφ0とする。そして、(2)式のように振動低減部50の固有振動数f50を基体6の固有振動数f6に同調させる。
基体6の長手方向Dの長さを50mとし、基体6は鋼材で形成されているとした。基体6の長手方向Dに直交する面による断面積を0.108m2、断面2次モーメントを0.04035m4とした。
基体6の両端は、外径812.2mm、肉厚22mmの鋼管製の支柱40が剛接されることで支持されている。支柱40の下端は、歩道S2に固定されている。支柱40の上下方向Eの長さを4.5mとした。支柱40の上下方向Eに直交する断面積は0.05466m2、断面2次モーメントは0.02136m4とした。
基体6の長手方向Dの単位長さ当たりの質量を2000kg/mとした。
この解析モデルでは、回転慣性質量機構53に対して並列に減衰61を配置している。この減衰61は、回転慣性質量機構53とは別の専用の減衰機構を用いてもよいし、専用の減衰機構を用いずに、回転慣性質量機構53の構造減衰などを用いて減衰61としてもよい。
なお、応答倍率とは、基体6の長手方向Dの中央部における加振力に対する応答加速度の比のことを意味する。
比較例1として、歩道橋1の構成に対して振動低減部50を備えないようにした歩道橋の解析モデルを作成し、フーリエスペクトル比を同様に求めた。求めた結果を図8に示す。
歩道橋100では、基体6の長手方向Dの中央部にTMD110が取り付けられる。この解析モデルでは、主系(歩道橋1)の等価質量に対する付加系(TMD110)の質量の質量比を1%としていて、TMD110の質量を0.437t、剛性を90.36kN/m、減衰を0.762kNsec/mとした。なお、基体6および支柱40の仕様は、歩道橋1と同一である。
比較例2のフーリエスペクトル比を同様に求めた結果を図10に示す。
また、本実施形態の歩道橋1における、振動数に対するフーリエスペクトル振幅の変化を図15に示す。比較例として、前述の比較例1、比較例2の解析モデルでシミュレーションを行った場合の振動数に対するフーリエスペクトル振幅の変化を、図16、図17に示す。
本実施形態の歩道橋1は、図12から図14より、比較例1および比較例2に比べて、最大加速度が小さく抑えられるとともに、後揺れが急峻に小さくなることが分かった。具体的には、最大加速度は、本実施形態の歩道橋1が6.6gal(0.00066m/sec2、図12参照。)なのに対して、比較例1、比較例2では、それぞれ10.8gal(図13参照。)、7.7gal(図14参照。)となっている。
また、図15から図17より、本実施形態の歩道橋1は、比較例1および比較例2に比べてフーリエスペクトル振幅の最大値が小さく抑えられることが分かった。
一対の振動低減部50を長手方向Dに互いに離間するように配置することで、基体6の長手方向Dにおける中央部の下方であって一対の振動低減部50の間に空間を確保し、この空間に車両や歩行者を通すことができる。
振動低減部50を桁部10の長手方向Dの中央部に設けず端部に設けることで、振動を低減させるのに必要な付加質量は大きくなる。しかしながら、振動低減部50が前述した従来のTMDに比べて内蔵する錘(本発明におけるフライホイール58。)の質量を数百分の1以下に低減することができるので、振動低減部50を小型に構成することができる。
それぞれの振動低減部50は、桁部10の長手方向Dの端部に設けられている。したがって、振動低減部50間の長手方向Dの距離を長くし、振動低減部50間に空間をより広く確保することができる。
たとえば、前記実施形態では、それぞれの振動低減部50は桁部10の端部に設けられているとした。しかし、桁部10が長手方向Dに非常に長い場合などには、振動低減部50は桁部10の中間部に設けられていてもよい。
基体6の振動エネルギーが小さいと想定される場合などには、基体6および振動低減部50は基準平面Mに対して非対称となるように形成してもよい。
6 基体
50 振動低減部
51 板ばね(軸状部材)
51a 端部(被固定部位)
51b 中間部
52 固定部
53 回転慣性質量機構
D 長手方向(基準方向)
P 基準平面
S2 歩道(支持部)
Claims (3)
- 下方に空間を確保する振動低減構造物であって、
基体と、
前記基体を下方から支持するとともに、水平面に平行な基準方向に互いに離間して配置された一対の振動低減部と、
を備え、
それぞれの前記振動低減部は、
前記基体に接続された弾性部材と、
前記弾性部材と前記弾性部材より下方に位置する支持部とにそれぞれ接続され、前記弾性部材の上下方向の振動により作動する回転慣性質量機構と、
を有し、
前記弾性部材と前記回転慣性質量機構とにより構成される付加振動系の固有振動数を、前記基体の固有振動数に同調させてなり、
それぞれの前記振動低減部は、前記基体における前記基準方向のそれぞれの端部に配置され、
前記基体および一対の前記振動低減部は、前記基準方向に平行に見たときに、水平面に直交する基準平面に対してそれぞれが対称となるように形成されていることを特徴とする振動低減構造物。 - 前記回転慣性質量機構は、
上端が前記弾性部材に固定されたボールねじと、
前記ボールねじの外周面に嵌合するボールナットと、
前記ボールナットよりも下方に配置されるとともに、前記ボールナットに連結されたフライホイールと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の振動低減構造物。 - 前記振動低減部は、
前記弾性部材における互いに離間した一対の被固定部位を前記基体にそれぞれ固定する固定部を有し、
前記回転慣性質量機構は、前記弾性部材における一対の前記被固定部位の中間部に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の振動低減構造物。
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