JP5648821B2 - 制振機構 - Google Patents
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Description
また、床や梁の上下振動対策を目的とするものではないが、特許文献2には免震対象物の水平振動を歯車列からなる伝達機構を介して回転質量体(回転錘)の回転運動に変換し、それにより生じる回転慣性質量を利用してTMDとして機能する免震装置についての開示がある。
また、特許文献2に示されるような回転慣性質量を利用する免震装置を上下制振装置として適用することも考えられ、その場合には回転質量体の所要質量は軽減できるが、従来のこの種の免震装置は複雑な歯車列による伝達機構を備えるものであるので装置全体が複雑に過ぎ、必然的に高価なものにならざるを得ず、広く普及するに至っていない。
本発明においては、前記他方の構造体に対する前記板材の両端部の接続点の位置を可変としておいて、両接続点間の距離の調整により該板材の剛性を可変とすることが好適である。また、前記板材に減衰要素としての粘弾性体を一体に積層することが好適である。
特に、構造体に対する板材の両端部の接続点間の距離を調節する構成とすることにより、板材の剛性を容易に調整可能であってTMDとして機能させるための同調を容易にかつ高精度で行うことができる。
また、ばね要素としての板材に粘弾性体を一体に積層することにより、その板材に自ずと振動減衰性能を持たせることができる。
なお、本実施形態におけるスペーサ6としては高剛性の溝形鋼が使用されていて、その要所には補強リブ13が溶接されており、その溝形鋼の上部フランジが上階の床1に対してアンカーにより固定され、下部フランジに上記の厚板12を介して板材4の両端部がボルト締結により接続されている。
したがって、この制振機構Aを構成している回転慣性質量ダンパー3と板材4とによる付加振動系の固有振動数を床1の固有振動数(あるいは制御対象振動数)に同調させることにより、この制振機構AがTMDとして機能し、しかもフライホイール10により生じる回転慣性質量はフライホイール10の実際の質量に対して格段に大きなものとなるから、フライホイール10が小形軽量のものであっても、大質量の錘による通常のTMDと同等ないしそれ以上の制振効果が得られる。
制御対象の上階の床1の有効質量M=50t、上下の床1,2から構成される構造体の剛性K=50tf/cm、その1次固有振動数5Hz(1次固有角振動数ω0=31.4rad/sec)とする。なお、ω0 2=K/Mである。
フライホイール10としてPL36-97φを使用してその質量を2kgとした場合、回転慣性はIr=25.3kgcm2、ボールねじ8のリードをL=1cmとすると上下方向の見かけの慣性質量はm=25.3×4π2=1tとなり、したがって質量比はm/M=0.02である。
制振機構Aにおける板材4の剛性k=1tf/cm、したがって剛性比k/K=0.02とする。減衰要素14としてのダッシュポットの減衰係数c=5.8kgf/kineとし、ダンパー減衰h=c/(2mω0)=0.09とする。
この場合、図3に示す解析結果から、制振機構Aのない場合には1次固有角振動数ω0における応答倍率は50倍にもなっているのに対し、上記の制振機構Aの設置により応答倍率を10倍以下にまで激減(低減率84%)させることができる。
すなわち、上記実施形態のように板材4をスペーサ6を介して床1に対して接続する場合、スペーサ6の下部に対する板材4の両端部の接続点を厚板12により挟持して両接続点間の距離を明確に規定しておき、そのうえで両側の厚板12を互いに離接する方向(板材4の長さ方向)に移動させて両接続点間の距離を調整することによっても板材の剛性kを調整することができる(当然に両接続点の距離を大きくするほど剛性kは小さくなり、両接続点の距離を小さくするほど剛性kは大きくなる)。
したがって、板材4の素材や板厚をそのつど厳密に設定するという面倒な調整が不要であり、単にスペーサ6に対する板材4の接続点の位置を調整するという極めて単純かつ簡単な操作のみでその剛性kを最適に設定することができ、したがってTMDとしての同調作業を容易にかつ高精度で行うことができるし、必要に応じてその変更や再設定も容易に行い得る。
なお、板材4の素材として制振鋼板を利用することによっても、板材4それ自体に減衰機能を持たせて同様の振動減衰効果が得られる。
たとえば、上記実施形態では回転慣性質量ダンパー3を下階の床2に対して接続し、板材4を上階の床1に対して接続したが、全体の天地を逆にして、回転慣性質量ダンパー3を上階の床1に対して接続し、板材4を下階の床に対して接続しても同様である。
また、本発明は上記実施形態のように建物の床や梁等を対象としてその上下振動を低減させる目的で設置することが最適ではあるが、それに限定されるものでもなく、様々な構造物や構造体の様々な方向の振動を低減させる目的で広く適用可能である。たとえば、上記実施形態の制振機構をそのまま横向きにして両側の壁体間に設置すればそれら壁体の水平方向の相対振動を低減させることが可能である。また、本発明の制振機構を免震装置として適用して、上部構造体の全体を水平方向や上下方向の地震動に対して免震支持することも可能である。
たとえば回転慣性質量ダンパー3としては上記実施形態のようにボールねじ機構によるものが好適ではあるもののそれに限定されるものではなく、所望の回転慣性質量効果が得られるものであれば適宜の形式のものを任意に採用可能である。また、上記実施形態のように回転慣性質量ダンパー3をサポート5を介して設置することに限らず、たとえばサポート3を省略して回転慣性質量ダンパー3を構造体に対して直接接続することも考えられる。
板材4についても、制振機構A全体をTMDとして機能させるために所望の剛性を有する板ばねとして機能するものであれば良く、その限りにおいて板材4の形状や素材は任意であるし、板材4の中央部と両端部とをそれぞれ回転慣性質量ダンパー3と構造体に対して接続する構成とする限りにおいてそのための細部の具体的な構成は様々に変更可能であることは言うまでもない。たとえば上記実施形態では板材4の両端部をスペーサ6としての溝形鋼を介して構造体に対して接続したが、スペーサ6としての部材やその形態は所望の剛性を有するものであれば溝形鋼に限らず任意であるし、場合によってはスペーサ6も省略して板材4自体を構造体に対して直接接続するような形状とすることも考えられる。また、板材4の剛性を可変とするために様々な機構を付加することも考えられる。
1,2 床(構造体)
3 回転慣性質量ダンパー
4 板材(ばね要素)
5 サポート
6 スペーサ
7 受具
8 ボールねじ
9 ボールナット
10 フライホイール
11 治具プレート
12 厚板
13 補強リブ
14 減衰要素
15 取付プレート
Claims (3)
- 互いに離接する方向に相対振動する2つの構造体間に介装されて、それら構造体間に生じる離接方向の相対振動を低減させるための同調型の制振機構であって、
前記2つの構造体のうちのいずれか一方の構造体に対して接続されて前記相対振動により作動する回転慣性質量ダンパーと、該回転慣性質量ダンパーに対して直列に接続されて前記2つの構造体のうちのいずれか他方の構造体に対して接続されているばね要素とにより構成されているとともに、前記回転慣性質量ダンパーと前記ばね要素からなる付加振動系がTMDとして機能する同調型の制振機構として構成され、
前記ばね要素は板材により構成されてその中央部が前記回転慣性質量ダンパーに対して接続されているとともに、該板材の両端部が前記他方の構造体に対して接続されてなることを特徴とする制振機構。 - 請求項1記載の制振機構であって、
前記他方の構造体に対する前記板材の両端部の接続点の位置が可変とされていて、両接続点間の距離の調整により該板材の剛性が可変とされてなることを特徴とする制振機構。 - 請求項1または2記載の制振機構であって、
前記板材に減衰要素としての粘弾性体が一体に積層されてなることを特徴とする制振機構。
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