これら及び他の処理工程を、工程1)~3)のそれぞれの文脈において、以下更に詳細に述べる。
工程1-1,1,1,3-テトラクロロプロパン原料を生じる短鎖重合
本発明のこの工程は、主要アルキル化領域で部分的又は完全に行われる、選択的な短鎖重合反応を含む。その反応では、四塩化炭素をエチレンと反応させて、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを生じる。そのような反応は本技術分野において知られているが、そのような方法の問題の一つは望ましくない不純物が生じることである。
反応の完了度を制御することによって、望ましくない不純物の製造を達成することができることが分かった。したがって、本発明の実施形態において、主要アルキル化領域から抽出される反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素のモル比が、主要アルキル化領域が連続的操作である場合に95以下:5であり、又は主要アルキル化領域がバッチ式操作である場合に99以下:1になる程度に、工程1-a)において、主要アルキル化領域の反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパンの濃度を維持する。
本発明の実施形態において、反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素のモル比は、工程1-a)において、特定の数値的に定義された限度内に制御される。当業者であれば、そのような実施形態において、方法の制御は、本明細書において四塩化炭素出発物質と1,1,1,3-テトラクロロプロパンとの間のモル比に関して特徴づけられるとともに、それは出発物質から生成物への転化率の制御として考えることができ-したがって、95:5の出発物質:生成物のモル比は5%の転化率に等しいことを認めるであろう。発明者らは、上記に概説したように出発物質の転化率を制限することで、望ましくない不純物の形成が最小化されることを見出した。更に、所定の値より大きい出発物質:生成物のモル比に言及する場合、これは出発物質から生成物への転化率がより大きいこと、すなわち、出発物質の割合が低減するとともに生成物の割合が増加することを意味する。
本発明の方法の工程1-a)において、アルケンと四塩化炭素とを接触させることによって、反応混合物が形成される。これは、主要アルキル化領域において、例えば、その領域に供給されるアルケン及び四塩化炭素によって起こってもよい。更に又は代替として、アルケンは、主要アルキル化領域の上流の領域で四塩化炭素と接触して、次に主要アルキル化領域へと供給されてもよい。
本発明の実施形態において、工程1-a)において、主要アルキル化領域の上流で第一のアルキル化領域を使用してもよい。四塩化炭素及びエチレンを第一のアルキル化領域に供給することによって反応混合物を形成して、次に反応混合物を主要アルキル化領域へと供給してもよい。そのような実施形態において、主要アルキル化領域に供給される反応混合物中に四塩化炭素に加えてアルカンが形成されて含まれるように、四塩化炭素から1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの部分的な転化が第一のアルキル化領域で起こってもよい。更なる又は代替の実施形態において、第一のアルキル化領域から主要アルキル化領域へと供給される反応混合物が四塩化炭素及び1,1,1,3-テトラクロロプロパンを含み、しかしながら含まれるエチレンは低濃度であるか又は実質的に含まれないように、第一のアルキル化領域に供給されるエチレンの量を制限して、第一のアルキル化領域における四塩化炭素の1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの転化を遅延させてもよい。
本発明の工程1-a)において使用されるエチレン及び四塩化炭素は、当業者に知られているあらゆる技術又は設備を用いて、例えば、分散装置、例えば一つ若しくは複数の浸漬管、一つ若しくは複数のノズル、エジェクタ、静的混合装置、及び/又は一つ若しくは複数の多孔分散管を介してその領域に供給することによって、領域(例えば、第一のアルキル化領域又は主要アルキル化領域)で接触させてもよい。このような実施形態では、エチレン及び/又は四塩化炭素の供給は連続的であってもよく、又は断続的であってもよい。反応混合物が形成される領域への供給として供給されるエチレンは、液体及び/又は気体の形態であってよい。同様に、四塩化炭素は、液体及び/又は気体の形態であってよい。
本発明の実施形態において、主要アルキル化領域(及び/又は使用されている任意の他のアルキル化領域)に存在する反応混合物(四塩化炭素と、1,1,1,3-テトラクロロプロパンと、触媒と、任意に未反応のエチレンとを含む。)は、均一、すなわち単一相、例えば液相又は気相であってもよい。これは、反応混合物の成分の一つが、他の成分とは異なる相の系に導入される場合であっても達成することができる。例えば、実施形態において、気体のエチレンを液体四塩化炭素と接触させてエチレンを溶解させ、このようにして液相の均一な反応混合物を形成してもよい。代替として、反応混合物は不均一であってもよい。
本発明の工程1-a)において使用される四塩化炭素及びエチレン出発物質は、高純度であってもよく、例えば、これらの材料のいずれか又は両方は、少なくとも約95%純度、少なくとも約97%純度、少なくとも約99%純度、少なくとも約99.5%純度、少なくとも約99.7%純度、又は少なくとも約99.9%純度であってもよい。
本発明の実施形態において、四塩化炭素出発物質は、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、又は約20ppm未満の臭化物又は臭素化有機化合物を含む。
更に又は代替として、四塩化炭素出発物質に含まれる水分量は、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、又は約35ppm以下であってもよい。
四塩化炭素の源は、本発明の方法を行う装置と同じ場所に位置してもよい。実施形態において、例えば、四塩化炭素の源は、四塩化炭素の製造に使用される高純度塩素を入手することができる膜電気分解プラントを有する塩素アルカリ施設に隣接していてもよい。その場所は、(例えばグリセロール原料から)エピクロルヒドリン、グリシドール、及び/若しくはエポキシ樹脂を生じるプラント、又はオキシ塩素化プラント(例えば、塩化ビニルモノマーVCMプラント、パークロロエチレンプラント等)を含んでもよく、又は(任意の関連の工程又は方法における副生成物として生じる)塩化水素気体もまた効果的に利用されるようなHCl電気分解プラントを有する場所であってもよい。したがって、塩素アルカリ施設を最も経済的に使用するためには、塩素反応、及び塩化水素の回収/再利用のためのプラントを有する一体化された施設が想定される。
本発明の工程1-a)で形成された反応混合物を、主要アルキル化領域(及び/又は用いる場合第一のアルキル化領域)から抽出してもよい。これは、連続的又は断続的な基準で行ってもよい。誤解を避けるため、本発明の方法の工程1-a)の文脈において、本発明の方法で使用される領域からの材料の連続的抽出について言及する場合、単純に文字通りの意味を当てるべきではない。当業者であれば、そのような実施形態において、問題の領域が作動条件にあるとき、及びその目的が定常状態反応(例えばアルキル化)を立ち上げることにある場合には、問題の領域内の反応混合物が必要な定常状態に達したら、材料を実質的に連続的な基準で除去してもよいことを認めるであろう。
本発明の利点の1つは、商業的に供給されるエチレンにおいて典型的に観察される特定の不純物(例えば、特定の有機不純物、例えばアルコール、エーテル、エステル、及びアルデヒド)の存在を許容することができる、及び/又は本明細書に概説される処理工程を用いて除去することができるということである。エチレン出発物質は、バイオエタノール、エタノール、又は粗製油から導かれてもよい。
本発明の方法の更なる利点は、i)クロロアルカンを連続的に製造できること、及びii)オフガス系にエチレンを漏出させることなく、エチレン出発物質を実質的に完全に利用することができるということである。
主要アルキル化領域を離れる反応混合物中の未反応エチレンの量は、0.6%未満、0.3%未満、0.2%未満、又は0.1%未満である。あらゆる未反応の気体のエチレンは、高圧で作動している一つ又は複数の反応領域へと直接リサイクルして戻される。代替として、冷たい液体四塩化炭素原料中にエチレンを吸収させることによって、未反応の気体エチレンは、高圧で作動している一つ又は複数の反応領域へとリサイクルされて戻される。有利にも、一つ又は複数の気体試剤は、リサイクルすることが必要である場合、高価なコンプレッサーシステムを使用せずに取り扱ってもよい。
本発明の工程1-a)の方法の利点の一つは、高い異性体選択性で1,1,1,3-テトラクロロプロパンを製造することができるということである。したがって、本発明の実施形態において、工程1-a)において、生じる1,1,1,3-テトラクロロプロパンの異性体選択性は、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、又は少なくとも約99.9%である。
本発明の方法の工程1-a)で行われる、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを生じるアルキル化反応は、触媒を用いることにより加速される。本明細書で用いる触媒という用語は、触媒効果を有する単一の化合物又は材料、例えば固体金属又は金属塩の使用だけでなく、触媒的材料、及び共触媒又は促進剤、例えば配位子を更に含むことがある触媒系もまた包含するものとして用いる。
四塩化炭素及びエチレンから1,1,1,3-テトラクロロプロパンを形成するのに有用であることが当業者に知られているあらゆる触媒を使用してもよい。
本発明の実施形態において、触媒は金属である。本発明のアルキル化反応の触媒として機能することができるあらゆる金属、限定されないが、例えば銅及び/又は鉄を使用してもよい。金属触媒は、その固体形態(例えば、銅又は鉄の場合、粒子形態(例えば粉末又はやすり屑(filings))、ワイヤ、及び/又はメッシュ等)、及び/又は金属が任意の酸化状態にあってもよい塩(例えば、第一銅の塩、例えば塩化第一銅、臭化第一銅、シアン化第一銅、硫酸第一銅、フェニル第一銅、並びに/又は第一鉄及び/若しくは第二鉄の塩、例えば塩化第一鉄、及び塩化第二鉄)で存在してもよい。
本発明の方法の触媒として金属塩を使用する場合、これらは一つ若しくは複数のアルキル化領域に加えてもよく、及び/又はインサイチュで形成してもよい。後者の場合、固体金属は一つ又は複数のアルキル化領域に加えてもよく、その中の条件によって塩が形成されてもよい。例えば、固体の鉄を塩素化反応混合物に加える場合、存在する塩素を鉄元素と組み合わせて、塩化第二鉄又は塩化第一鉄をインサイチュで形成してもよい。インサイチュで金属塩が形成されるが、それでもやはり反応混合物内の元素金属触媒の所定濃度を維持する(例えば、一つ若しくは複数の金属塩及び/又は配位子の濃度と比較して元素金属が過剰である)ことが望ましく、したがって、反応が進行するにつれて、更なる元素金属触媒を連続的又は断続的に添加してもよい。
上記のように、本発明の実施形態において、触媒は配位子、好ましくは金属触媒と錯体を形成してもよい有機配位子を含んでもよい。適切な配位子としては、アミン、亜硝酸塩、アミド、リン酸エステル、及び亜リン酸エステルが挙げられる。本発明の実施形態において、使用される配位子は、アルキルリン酸、例えばリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、及びリン酸トリフェニルである。
更なる金属触媒及び配位子は当業者に知られており、従来技術、例えば、米国特許第6187978号に開示されており、その内容は引用により含まれる。そのような触媒を、本発明の工程1-a)で使用してもよい。
使用される触媒系の成分は、一つ又は複数のアルキル化領域(例えば、主要アルキル化領域、及び/又は使用する場合第一のアルキル化領域)に、連続的及び/又は断続的に供給してもよい。更に又は代替として、それらは、工程1-a)のアルキル化反応を開始する前及び/又はその間に、一つ又は複数のアルキル化領域(例えば主要アルキル化領域、及び/又は使用する場合第一のアルキル化領域)に導入してもよい。
更に又は代替として、触媒(又は触媒の成分、例えば配位子)は、一つ又は複数のアルキル化領域(例えば主要アルキル化領域、又は使用する場合第一のアルキル化領域)に、反応混合物における他の成分とともに、例えば四塩化炭素及び/又はエチレンの供給中に、供給してもよい。
触媒が金属触媒及び配位子などの促進剤を含む本発明の実施形態において、主要アルキル化領域及び/又は使用する場合第一のアルキル化領域に存在する反応混合物中の促進剤:金属触媒のモル比は、1超:1、より好ましくは2超:1、5超:1、又は10超:1の比率に維持される。
固体金属触媒を反応混合物に添加する場合、これは使用する場合第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域に添加してもよい。本発明の実施形態において、固体金属触媒は、使用する場合第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域に、反応混合物中の約0.1~4質量%、約0.5~3質量%、又は約1~2質量%の濃度を維持する量で添加される。
更に又は代替として、金属触媒を使用する場合、これらは反応混合物中に溶解した金属含有量が、約0.1質量%以上、約0.15質量%以上、又は約0.2質量%以上、約1.0質量%以下、約0.5質量%以下、約0.3質量%以下となるように添加される。
使用される触媒系が金属触媒及び促進剤を含む本発明の実施形態において、金属触媒及び促進剤は、反応混合物へと、同時に、並びに/又は装置の同じ部分、例えば第一のアルキル化領域(使用する場合)及び/若しくは主要アルキル化領域に添加することができる。
代替として、金属触媒及び促進剤は、装置の異なる場所に、又は順番に若しくは別々に添加することができる。例えば、固体金属触媒は、リサイクルループから第一のアルキル化領域へと供給される促進剤とともにその領域へと添加することができ、リサイクルループに更なる新しい促進剤を添加してもよい。
本発明の実施形態において、工程1-a)において使用される第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域は、大気圧、又は大気圧を超える圧力で、すなわち約100kPa超、約200kPa超、約300kPa超、約400kPa超、約500kPa超、約600kPa超、約700kPa超、又は約800kPa超の圧力で作動する。典型的に、第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域の圧力は、約2000kPa以下、約1700kPa以下、約1500kPa以下、約1300kPa以下、約1200kPa以下、又は約1000kPa以下である。
更に又は代替として、本発明の実施形態において、工程1-a)において使用される第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域は、高温、すなわち約30℃以上、約40℃以上、約50℃以上、約60℃以上、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、又は約100℃以上の温度で作動する。典型的に、第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域は、約200℃以下、約180℃以下、約160℃以下、約140℃以下、約130℃以下、約120℃以下、又は約115℃以下の温度で作動する。
本発明の工程1-a)の他の構成と組み合わせて、これらの温度及び圧力の範囲を使用することは、問題がある副生成物の形成を最小化しつつ、1,1,1,3-テトラクロロプロパンの収率及び/又は選択性を有利にも最大化することが分かった。
本発明の処理において、工程1-a)において複数のアルキル化領域を使用してもよい。任意の数の、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はそれより多くのアルキル化領域を使用してもよい。実施形態において、複数の第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域が使用され、任意の数の、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はそれより多くの、第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域が存在してもよい。
誤解を避けるため、(第一の及び/又は主要な)アルキル化領域の特性、例えばその作動条件、作動方法、その特性等に言及する場合、複数の第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域を含む本発明の実施形態に関する限り、これらの領域の一つ、いくつか、又は全ては、当の一つ又は複数の特性を示してもよい。例えば、簡潔さのために、特定の操作温度を有する主要アルキル化領域について言及する場合、複数の主要アルキル化領域を含む実施形態に関する限り、これは、一つ、いくつか、又は全ての主要アルキル化領域が特定の温度で作動することの言及としてとるべきである。
複数の第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域が使用される配置において、これらのアルキル化領域は、並列及び/又は直列に作動してもよい。
本発明の工程1-a)において第一のアルキル化領域及び主要なアルキル化領域が使用される配置において、例えば、これが本質的ではないが、第一のアルキル化領域から抽出される及び/又は主要アルキル化領域へと供給される反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素のモル比が、85以下:15、90以下:10、93以下:7、又は95以下:5となるように、エチレンと四塩化炭素間との反応を制御して、第一のアルキル化領域の特定の完了度を越えて反応が進行することを防止してもよい。更に又は代替として、第一のアルキル化領域から抽出された及び/又は主要アルキル化領域に供給される反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素のモル比が50超:50、60超:40、70超:30、75超:25、又は80超:20になるように、反応を比較的完了段階へと進行させてもよい。
第一のアルキル化領域における、工程1-a)反応の進行の制御は、四塩化炭素の1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの完全転化に好ましくない反応条件を用いることにより達成してもよい。更に又は代替として、第一のアルキル化領域におけるアルキル化反応の進行の制御は、第一のアルキル化領域における反応混合物の滞留時間を、例えば約20~300分、約40~250分、約60~約200分、又は約90~約180分に厳選することで達成してもよい。本発明の実施形態において、本発明の工程1-a)で使用される第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域に供給されるエチレンの量を制限することによって、モル比を制御してもよい。例えば、第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域に供給される四塩化炭素:エチレンのモル比は、約50:50から、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、又は約90:10までの範囲であってよい。
工程1-a)において第一のアルキル化領域及び主要アルキル化領域を使用する実施形態において、第一のアルキル化領域において1,1,1,3-テトラクロロプロパンの大部分が生じてもよい。そのような実施形態において、主要反応領域において生じる1,1,1,3-テトラクロロプロパンの割合は、例えば、反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素のモル比が、1~10、2~8、又は3~5増加する程度に、著しく低くてもよい。
例えば、第一のアルキル化領域から抽出され主要アルキル化領域に供給される反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素のモル比が90:10である場合、そのモル比は、主要アルキル化領域において2、3、又は5増加して、主要アルキル化領域から抽出される混合物中に存在する1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素のモル比が92:8、93:7、又は95:5になってもよい。
しかしながら、本発明の工程1-a)の方法の実行可能性は、第一の反応領域で起こる四塩化炭素から1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの転化率に大部分が依存するものではない。したがって、別の実施形態では、四塩化炭素から1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの転化率は、第一のアルキル化領域と主要アルキル化領域との間で等しくてもよく、又は第一のアルキル化領域の転化率よりも主要アルキル化領域の転化率が高くてもよい。
次に第一のアルキル化領域から反応混合物を(連続的又は断続的に)取って、反応混合物中に存在する残存する四塩化炭素の一部を1,1,1,3-テトラクロロプロパンへと変換する主要アルキル化領域へと供給してもよい。そのような実施形態において、反応混合物中に存在するあらゆる未反応のエチレン出発物質を、有利にも完全に(又は少なくともほとんど完全に)利用してもよい。
本発明の方法の処理工程1-a)において、使用する場合第一のアルキル化領域及び主要アルキル化領域は、異なる条件で作動させてもよい。主要アルキル化領域は、一つ又は複数の第一のアルキル化領域よりも高い圧力、例えば、少なくとも約10kPa高い、少なくとも約20kPa高い、少なくとも約50kPa高い、少なくとも約100kPa高い、少なくとも約150kPa高い、少なくとも約200kPa高い、少なくとも約300kPa高い、又は少なくとも約500kPa高い圧力で作動させてもよい。
本発明の実施形態において、主要アルキル化領域にエチレンを供給しなくてもよく;それらの一つ又は複数の領域へのエチレンの唯一の源は、主要アルキル化領域に供給される反応混合物中にあってもよい。
さらに、四塩化炭素とエチレンとの間のアルキル化反応が金属触媒(任意に配位子を含む)によって触媒される実施形態において、金属触媒及び/又は配位子は、主要アルキル化領域内に供給されなくてもよい。そのような実施形態において、触媒の唯一の供給源は、主要アルキル化領域に供給される反応混合物であってもよい。更に又は代替として、主要アルキル化領域は触媒床とともに提供してもよい。
第一のアルキル化領域及び主要アルキル化領域を使用し、かつ第一のアルキル化領域の反応混合物内に固体金属触媒が(例えば直接それに添加することによって)存在する本発明の方法の工程1-a)において、第一のアルキル化領域から反応混合物が抽出されて主要アルキル化領域へと供給される場合、第一のアルキル化領域からの反応混合物の抽出は、反応混合物中に存在する固体金属触媒が、あるとしても非常に少量であるように、例えば、反応混合物1リットル当たりに固体金属触媒が約5mg未満、約2mg未満、約1mg未満、約0.5mg未満、約0.2mg未満、約0.1mg未満であるように、実施してもよい。
これは、当業者に知られているあらゆる技術及び/又は設備、例えば一つ若しくは複数の第一のアルキル化領域内へと適切な位置で延在する管であって、フィルタリングメッシュとともに提供され、及び/又は適切な直径を有する管を用いることにより達成してもよい。
使用する場合、第一のアルキル化領域及び主要アルキル化領域は、同じ又は異なる種類の反応器であってもよい同じ又は異なる反応器内にあってもよい。更に、複数の第一のアルキル化領域を使用する実施形態において、これらは同じ又は異なる反応器内にあってもよい。同様に、複数の主要アルキル化領域を使用する実施形態において、これらは同じ又は異なる反応器内にあってもよい。
当業者に知られているあらゆる種類の一つ又は複数の反応器を、本発明の方法の工程1-a)で使用してもよい。アルキル化領域を提供するために用いてもよい反応器の具体例は、カラム反応器(例えばカラム気-液反応器)、管状反応器、気泡塔反応、栓流反応器(例えば管状栓流反応器)、及び撹拌槽反応器(例えば連続撹拌槽反応器)である。
第一のアルキル化領域が連続撹拌槽反応器(CSTR)内に存在し、かつ主要アルキル化領域が栓流反応器内に存在する配置は、有利な結果を提供する。
本発明の方法の工程1-a)の利点の一つは、アルキル化領域(例えば第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域)を連続的に(定常状態で)作動させるか、又はバッチ式で作動させるかにかかわらず、望ましい結果が得られるということである。用語「連続的工程」及び「バッチ式工程」は当業者に理解されよう。
実施形態において、使用する場合第一のアルキル化領域は、連続的又はバッチ式工程で作動される。更に又は代替として、使用する場合、一つ又は複数の第二のアルキル化領域は、連続的又はバッチ式工程で作動される。
主要アルキル化領域が連続的操作である本発明の工程1-a)の実施形態において、主要アルキル化領域から抽出される反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素の比が約94以下:6、約92以下:8、又は約90以下:10であるように、1,1,1,3-テトラクロロプロパンの含有量を制御してもよい。
主要アルキル化領域がバッチ式操作である本発明の方法の工程1-a)の代替の実施形態において、主要アルキル化領域から抽出される反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素の比が約97以下:3、約95以下:5、又は約90以下:10となるように、1,1,1,3-テトラクロロプロパンの含有量を制御してもよい。
主要アルキル化領域が連続的工程であるか又はバッチ式工程であるかにかかわらず、主要アルキル化領域から抽出される反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素の比が約70以上:30、約80以上:20、約85以上:15、又は約90以上:10となるように、1,1,1,3-テトラクロロプロパンの含有量を制御してもよい。
驚くべきことに、四塩化炭素から1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの転化率を制御し、反応が完了まで進行することを防止することによって、不純物の形成が有利に低減されることが分かった。例えば、本発明の方法で使用されるエチレン原料がエチレンである実施形態において、ペンタンのような望ましくない副生成物の製造が最小化される(そうでなければ形成されるであろう。)。
したがって、本発明の実施形態において、工程1-a)において形成されて主要反応領域から抽出される反応混合物に含まれる一連の反応生成物、すなわち1,1,1,3-テトラクロロプロパンより多い炭素原子数を含む化合物は、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、又は約0.02%未満である。
1,1,1,3-テトラクロロプロパンの含有量の制御は、アルキル化工程の進行を遅延させることによって、及び/又は更なる四塩化炭素を主要アルキル化領域内に導入することによって達成してもよい。
アルキル化工程を遅延させることによって1,1,1,3-テトラクロロプロパンの含有量を制御する工程1-a)の実施形態において、これは、四塩化炭素から1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの完全な転化に好ましくない反応条件を用いることにより達成することができる。例えば、これは、反応混合物又は少なくともその一部を、アルキル化反応の進行を減速又は停止させる条件に暴露することによって達成することができる。そのような実施形態において、一つ又は複数のアルキル化領域(例えば一つ又は複数の主要アルキル化領域が使用される場合)で反応混合物が曝露される圧力は著しく、例えば、少なくとも約500kPa、少なくとも約700kPa、少なくとも約1000kPa低減することができる。
更に又は代替として、反応混合物が暴露される圧力は、大気圧まで又は大気圧より低い圧力まで低減することができる。圧力の低減は、一つ又は複数のアルキル化領域(例えば、使用する場合、1つ、いくつか、又は全部の主要アルキル化領域)で行うことができる。更に又は代替として、圧力の低減は、一つ又は複数のアルキル化領域から反応混合物を抽出した後に行うことができる。
更に又は代替として、アルキル化工程を遅延させることによって1,1,1,3-テトラクロロプロパンの含有量を制御する実施形態において、これは、本発明の方法の工程1-a)において形成される反応混合物中に存在するエチレン濃度を制限することによって達成することができる。
本発明の実施形態において、一つ又は複数のアルキル化領域におけるアルキル化反応の進行の制御は、一つ又は複数のアルキル化領域における反応混合物の滞留時間を厳選することにより達成してもよい。例えば、一つ又は複数の主要アルキル化領域を使用する実施形態において、一つ又は複数のそれらの領域における反応混合物の滞留時間は、例えば、約1~120分、約5~100分、約15~約60分、又は約20~約40分であってよい。
アルキル化工程を遅延させることによって1,1,1,3-テトラクロロプロパンの含有量を制御する実施形態において、これは、主要アルキル化領域の作動温度を、例えば、約5℃以上、約10℃以上、約20℃以上、約50℃以上、又は約100℃以上低下させることによって達成することができる。更に又は代替として、主要な転化領域の作動温度は、約20℃まで、約10℃まで、又は約0℃まで低下させることができる。
更に又は代替として、反応混合物中に存在する触媒の量を制限することによって、又は主要アルキル化領域から触媒床(存在する場合)を除去することによって、アルキル化工程を遅延させることができる。
主要アルキル化領域の扇動(agitation)又は撹拌(stirring)速度を低減して、アルキル化工程を遅延させることもできる。
上記のように、主要アルキル化領域から抽出される反応混合物は、四塩化炭素、触媒、及び1,1,1,3-テトラクロロプロパンを含む。しかしながら、本発明の実施形態において、使用される条件及び設備に応じて、主要アルキル化領域から抽出される反応混合物は、未反応のエチレン出発物質及び/又は不純物(例えばクロロアルカン不純物、塩素化アルケン不純物、及び/又は酸素化有機化合物)をさらに含んでもよい。
1,1,1,3-テトラクロロプロパンとともに未反応エチレンが存在することは、本発明の工程2)において問題になる可能性があることを考慮して、実施形態において、主要アルキル化領域から抽出される反応混合物に(工程1-bの一部として)脱アルケン工程を行い、反応混合物中のエチレンの質量で少なくとも約50質量%以上がそこから抽出され、抽出されたエチレンの少なくとも約50%は、主要アルキル化領域内に提供される反応混合物へと供給し戻してもよい。
そのような実施形態は、本発明の方法で使用されるエチレン供給を完全ではないとしても実質的に完全に利用することを可能にするので、特に有利である。
本発明の実施形態において、主要アルキル化領域から抽出される反応混合物中に存在するエチレンの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、又は少なくとも約99%は、脱アルケン工程の間に除去される。
反応混合物から未反応のエチレンを除去することは、当業者に知られているあらゆる技術を使用して達成することができる。本発明の実施形態において、反応混合物からのエチレンの抽出は、得られるエチレンに富む流れにつながる蒸留技術、例えばフラッシュ蒸発を用いて達成することができ、これらは、エチレン(-103.7℃)に対して、四塩化炭素(76.6℃)、及び1,1,1,3-テトラクロロプロパン(159℃)の例のように、エチレンの沸点が反応混合物中に存在する他の化合物の沸点よりも実質的に低い実施形態において便宜に配備してもよい。
本発明の方法における工程1-b)の反応混合物の脱アルケンは、選択的であってもよい。言い換えれば、反応混合物から他の化合物を実質的に除去することなく、エチレンが選択的に抽出される。そのような実施形態において、反応混合物から抽出されるエチレンに含まれるエチレン出発物質以外の化合物は、約10%未満、約5%未満、約2%未満、又は約1%未満であってよい。
本発明の方法の工程1-b)において、反応混合物の蒸留は、当業者に知られているあらゆる技術又は設備を使用して達成することができる。例えば、従来の蒸留装置、例えば蒸留塔を使用してもよい。更に又は代替として、反応混合物が抽出される主要アルキル化領域における圧力が大気圧を超える本発明の実施形態において、反応混合物からのエチレンの蒸発は、反応混合物を主要アルキル化領域から抽出した後、大気圧を超える圧力に維持すること、及び反応混合物からのエチレンの蒸発が起こる蒸発領域内へとそれを供給することによって達成してもよい。
本発明の実施形態において、工程1-b)における蒸発領域内の反応混合物からのエチレンの蒸発は、減圧によって、例えば、反応混合物が曝される圧力を著しく低減する、例えば少なくとも約500kPa、少なくとも約700kPa、少なくとも約1000kPa低減する、及び/又は大気圧若しくは大気圧より低い圧力に低減することによって達成することができる。便宜にも、減圧を一部又は全部のいずれかに用いて、四塩化炭素の1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの転化を減速又は停止させ、エチレンを反応混合物から分離する実施形態において、これらの目的は単一の減圧工程で同時に達成することができる。
蒸発領域は、反応混合物中に存在するエチレンの蒸発を達成することができるあらゆる装置、例えば、フラッシュ蒸発装置、例えばフラッシュドラム内にあってもよい。
工程1-b)の反応混合物から、例えばフラッシュ蒸発によって蒸留されて除かれるエチレンは、好ましくは液体又は気体の形態で、蒸留装置から抽出される。
本発明の方法において、蒸発領域から抽出されるエチレンの少なくとも約50質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%、少なくとも約97質量%、又は少なくとも約99質量%は、第一のアルキル化領域及び/又は主要アルキル化領域へと供給されて戻される(すなわちリサイクルされる)。
誤解を避けるため、本発明の実施形態において、方法の工程1-b)で得られる蒸留して得たエチレンは、気体の形態である場合、主要アルキル化領域に提供される反応混合物中に供給される前に、液体へ変換してもよく、又は変換しなくてもよい。例えば、気体エチレンから液体エチレンへの転化は、コンデンサを通過させること、及び/又は一つ若しくは複数のアルキル化領域へと供給することができる液体(好ましくは冷却された)四塩化炭素の流れの中にトラップすることによって達成してもよい。当業者に知られているあらゆる技術又は設備(例えば吸収カラム)を使用して、四塩化炭素の液体流中に、気体エチレンをトラップしてもよい。この配置は、アルキル化工程で使用される化合物の完全な工業的利用を補助するので有利である。
上記のように、本発明の方法の工程1-a)で形成されて一つ又は複数のアルキル化領域から抽出された反応混合物は、触媒を含む。触媒の存在が工程2)で問題になることがあることを考慮して、反応混合物から触媒を除去することが好ましいことがある。工程1-b)は、そのような除去工程を含んでもよい。
さらに、コストがかかる触媒及び/又は促進剤、例えば前述のアルキルリン酸及びアルキル亜リン酸配位子を使用する触媒系にとって、再使用可能な触媒系及び/又はその成分を回収して、用いなければならない多量の新しい触媒を最小にして、それによって作動上のコストを低減することもまた好ましい。
本発明の方法で使用される種類の触媒を反応混合物から除去するという課題が過去に解決されたが、そうする(激しい条件を使用する蒸留を典型的に含む)ために使用される技術及び条件は、触媒系に悪影響を与える可能性があり、それらの触媒能力を低減する可能性がある。これは、システムが、促進剤として特定の有機配位子、例えばアルキルリン酸、及びアルキル亜リン酸を含む場合のように、触媒系が温度に敏感である場合に特に当てはまる。
したがって、本発明の実施形態において、工程1-b)は、一つ又は複数のアルキル化領域から抽出された反応混合物に水性処理工程を行うことを含んでもよく、水性処理工程では、反応混合物を水性処理領域内の水性媒体と接触させ、二相混合物が形成され、触媒を含む有機相を二相混合物から抽出する。
工程1-a)において形成された反応混合物が工程1-b)において水性処理工程を受ける本発明の実施形態において、反応混合物は未反応の四塩化炭素及び1,1,1,3-テトラクロロプロパンを含んでもよい。さらに、反応混合物は、触媒(例えば金属触媒と触媒配位子の錯体又は無触媒配位子)及び/又は未反応のエチレン出発物質を含む。
本発明の方法の工程1-b)の水性処理工程を用いることにより、従来技術に記載の損傷を与える条件(例えば、高温、高触媒濃度、及び/又は無水物形態の鉄化合物の存在)を回避することができ、このことは、回収された触媒及び/又はその成分(例えば配位子又は促進剤)を、あらゆる触媒能力を実質的に低下させることなく再利用することができる(例えば、一つ又は複数のアルキル化領域内に提供される反応混合物へリサイクルすることができる)ことを意味する。本発明の実施形態において、100℃を上回るボイラー温度を回避することができ、大気圧を使用することができるので、二相水性処理された混合物の水蒸気蒸留が好ましい。
本発明の方法の工程1-b)の水性処理工程の更なる利点は、反応混合物からの不純物の除去、例えば、存在する場合、酸素化有機生成物の除去につながることである。有利にも、反応混合物中のそのような材料の濃度は、水性処理工程によって、除去されないとしても許容できる濃度にまで著しく低減される。
工程1-b)において水性処理工程を行う本発明の実施形態において、水性処理領域に提供される反応混合物は、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(例えば約50%以上の量)、触媒、任意の四塩化炭素、及び/又は不純物、例えば有機酸素化化合物、クロロアルカン化合物(1,1,1,3-テトラクロロプロパン以外)、及び/又は塩化アルケン化合物を含んでもよい。
工程1-b)におけるこの触媒回収方法は、反応混合物を水性処理領域内の水性媒体と接触させる水性処理工程を受けている反応混合物を含む。実施形態において、水性媒体は水(液体及び/又は蒸気)である。さらに、水性媒体は、他の化合物(例えば酸)を更に含んでもよい。無機酸、例えば塩酸、硫酸、及び/又はリン酸を使用してもよい。
水性処理領域に供給される水性媒体の一部又は全部が液体形態である場合、液体水性媒体が反応混合物に接触するとすぐに二相混合物が形成される。
代替として、水性媒体が気体の形態、例えば水蒸気である場合、二相混合物は直ちに形成されないことがあるが、しかしながら、気体の水性媒体が凝縮したときのみ形成される。水性処理工程において使用される装置は、二相混合物が形成される水性媒体の凝縮が水性処理領域内で及び/又は水性処理領域から離れたところで起こるように構成されていてもよい。
本発明の実施形態において、1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、水性処理領域で形成される混合物から抽出されてもよい。水性処理領域に供給される反応混合物中に存在する1,1,1,3-テトラクロロプロパンの大半(例えば少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%)は、当業者に知られているあらゆる技術又は設備を用いて、水性処理領域で形成される混合物から抽出してもよい。
本発明の実施形態において、蒸留を用いて、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを水性処理領域で形成される混合物から抽出する。蒸留は、得られる1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む流れにつながることがある。
この明細書の全体にわたって用いられる、特定の化合物「に富む流れ(a stream rich in)」という用語(又は対応する記載)は、その流れがその特定の化合物を少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%含むことを意味するよう用いる。更に、用語「流れ」は、狭く解釈すべきでなく、あらゆる手段を介して混合物から抽出される組成物(画分を含む)を含む。
例えば、1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び水蒸気を含む気体の混合物から、例えば、そのアルカンを蒸留して除いてもよい。1,1,1,3-テトラクロロプロパンを蒸留して除いて、1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む流れにしてもよい。これを工程2-a)の原料として使用してもよい。水性媒体の一部又は全部が液体形態である本発明の実施形態において、1,1,1,3-テトラクロロプロパンの蒸留は、混合物を沸騰させて1,1,1,3-テトラクロロプロパンを蒸発させ、気体の1,1,1,3-テトラクロロプロパン/水蒸気混合物を生じ、そこから1,1,1,3-テトラクロロプロパンを、例えば水蒸気蒸留技術を使用して蒸留することによって達成してもよい。
更に又は代替として、水性媒体の一部又は全部が気体の形態で提供される場合、これは1,1,1,3-テトラクロロプロパンを蒸発させ、そのアルカン及び水蒸気を含む気体の混合物を形成し、次に任意に蒸留、例えば水蒸気蒸留を行って、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを除去することができる。1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、その化合物に冨む流れで得られてもよい。
1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び水蒸気の気体混合物から1,1,1,3-テトラクロロプロパンを蒸留する実施形態において、気体のクロロアルカン/水蒸気混合物が水性処理領域から蒸留装置へと直接通過することができるように、蒸留装置が水性処理領域に連結されてもよい。代替として、まず気体混合物が水性処理領域から抽出され、次に蒸留装置へと運搬されるように、蒸留装置は水性処理領域から離れて位置してもよい。いずれの配置においても、1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、その化合物に富む流れで得られてもよい。
代替の実施形態において、水性媒体及び反応混合物が液体形態である場合、当業者に知られている従来の蒸留技術を使用して、その液体混合物から1,1,1,3-テトラクロロプロパンを抽出してもよい。1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、その化合物に冨む流れで得られてもよい。この流れを、本発明の方法の工程2-a)の原料として使用してもよい。
二相混合物は、工程1-b)において、水性処理領域内又は水性処理領域から離れたところで形成されてもよい。二相混合物は、水相(水性処理領域に水性媒体を添加した結果として)と、有機相(1,1,1,3-テトラクロロプロパン、任意の未反応の四塩化炭素、及び重要なことに触媒を含む)とを含む。
有機相の体積を最大にし、したがって二相混合物からのその相の抽出を促進するために、ハロアルカン抽出剤(例えば、四塩化炭素、及び/又は1,1,1,3-テトラクロロプロパン)を、当業者に知られている技術及び設備を用いて、二相混合物に(例えば水性処理領域に連続的又は断続的に供給することによって)添加してもよい。
当業者に知られているあらゆる技術、例えばデカンテーションを使用して、二相残渣から有機相を抽出することができる。例えば、有機相の抽出は、水性処理領域又はそれが含まれる容器からの逐次的相抽出によって行うことができる。代替として、二相混合物は、水性処理領域から抽出することができ、水性処理領域とは離れて相分離工程を行うことができる。
本発明の実施形態において、二相混合物及び/又は抽出された有機相を濾過することができる。実施形態において、これは、鉄の源として任意に全部又は部分的に使用することのできる、得られる濾過ケーキにつながるであろう。
水性処理工程の間に形成される混合物からの1,1,1,3-テトラクロロプロパンの抽出は、そこから有機相を抽出する前に行ってもよく、及び/又は有機相をその混合物から抽出した後に行ってもよい。水性処理工程の間に形成される混合物から1,1,1,3-テトラクロロプロパンが抽出されるいくつかの例示的な実施形態は、上記で概説した。
さらなる例として、二相混合物を加熱して気体混合物を形成し、そこから、例えば蒸留を介して、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを(任意に工程2-aの原料として用いてもよい1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む流れとして)抽出することができてもよい。次に、1,1,1,3-テトラクロロプロパンの割合が低減された有機相を、二相混合物から抽出してもよい。
更に又は代替として、上記のように二相混合物から有機相を抽出してもよい。次にその相から、例えば蒸留を介して、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを(任意に工程2-aの原料として使用してもよい1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む流れとして)抽出してもよい。有機相が触媒を含むそのような実施形態において、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを抽出するよう選択される蒸留条件は、触媒系の失活を最小にするよう穏和であり、例えば、約100℃以下、約95℃以下、約90℃以下、約85℃以下、若しくは約80℃以下の温度、及び/又は約1~10kPaの圧力である。より低い圧力を更に又は代替として使用することができる。
抽出された有機相は、四塩化炭素及び/又は1,1,1,3-テトラクロロプロパンを含んでもよい。さらに、有機相は、触媒(例えば金属触媒及び触媒配位子の錯体、又は遊離配位子)及び/又は未反応のエチレン出発物質を含んでもよい。1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む流れ(本発明の方法の工程2-aの原料として使用してもよい)を、水性処理工程で形成される混合物から(直接、又はそこから有機相を抽出した後に)抽出すると、その相の1,1,1,3-テトラクロロプロパンの含有量は、反応混合物における含有量よりも低いであろう。
本発明の配置、特に有機相が四塩化炭素及び/又は触媒を含む配置において、有機相は、例えば液体形態で、一つ又は複数のアルキル化領域へと供給して戻してもよい。そのような配置において、エチレン出発物質(例えば気体の形態)は、一つ又は複数のアルキル化領域に供給される有機相の流れの中にトラップしてもよい。
本発明の実施形態において、工程1-b)において、上述したものに加えて一つ又は複数の蒸留工程を行い、特定の生成物に富む一つ又は複数の流れを任意に得てもよい。例えば、反応混合物は、水性処理工程の前に、行う場合、蒸留工程を受けることができる。反応混合物が温度に敏感な触媒系、例えば促進剤としての有機配位子を含む実施形態において、蒸留工程は、典型的には、触媒の失活を回避する条件、例えば約100℃以下、約95℃以下、約90℃以下、約85℃以下、又は約80℃以下の温度、及び/又は約1~10kPaの圧力で行われる。より低い圧力を更に又は代替として使用することができる。
さらに、反応混合物を過剰に蒸留しないことによって、温度に敏感な触媒系の不活化を回避することができることが分かった。したがって、触媒系を含む反応混合物が工程1-b)において蒸留される本発明の実施形態において、蒸留は、処理液体中の触媒系の濃度が、主要アルキル化領域に提供される反応混合物中に存在する触媒系の濃度の約2倍、約5倍、又は約10倍高くなる程度に蒸留装置内の処理液体の体積が低減しないようにしてもよい。
水性処理工程(行う場合)の前に工程1-b)で行われる蒸留工程は、当業者に知られている技術及び設備、例えば、減圧蒸留塔と連通した蒸留ボイラー(バッチ式又は連続的)を使用して、実施することができる。そのような実施形態において、蒸留される反応混合物は、約50質量%を超える1,1,1,3-テトラクロロプロパン、触媒、及び任意の四塩化炭素、及び/又は不純物、例えば有機酸素化化合物、クロロアルカン化合物(1,1,1,3-テトラクロロプロパン以外)及び/又は塩化エチレン化合物を含んでもよい。
蒸留工程は、典型的に、反応混合物からのクロロアルカン蒸留物の一つ又は複数の流れの除去、例えば未反応の四塩化炭素、1,1,1,3-テトラクロロプロパン、及び/又は塩化有機不純物(すなわち、1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び四塩化炭素以外の塩化有機化合物)の(及び任意に富む)、一つ若しくは複数の流れの除去につながる。四塩化炭素は、一つ又は複数のアルキル化領域へリサイクルして戻してもよい。そのような工程からの、多量の1,1,1,3-テトラクロロプロパン、四塩化炭素、及び/又は触媒を典型的に含む残渣は、更なる処理工程、例えば水性処理工程及び/又は更なる一つ若しくは複数の蒸留工程を受けてもよい。
水性処理工程(行う場合)の前に工程1-b)の一部として反応混合物が蒸留工程を受ける本発明の実施形態において、関心のある1,1,1,3-テトラクロロプロパンの少なくとも約30質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、又は少なくとも約70質量%から、多くとも約95質量%、多くとも約90質量%、多くとも約85質量%、又は多くとも約80質量%は、その蒸留工程において反応混合物から除去される。
水性処理工程(行う場合)の後、工程1-b)において、一つ又は複数の蒸留工程を更に又は代替として行ってもよい。例えば、水性処理領域に供給される反応混合物から抽出される1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、1,1,1,3-テトラクロロプロパン、ハロアルカン抽出剤、及び塩化有機不純物(すなわち1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び四塩化炭素以外の塩化有機化合物)を主成分として含む混合物の形態で存在してもよい。その混合物に一つ又は複数の蒸留工程を行い、塩化有機不純物を除去してもよく、1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む流れを得てもよく、及び/又はハロアルカン抽出剤を除去してもよい。また、そのような蒸留工程において、当業者に知られているあらゆる設備又は条件、例えば、減圧機蒸留塔に連通した蒸留ボイラー(バッチ式又は連続的)を使用してもよい。
そのような蒸留工程において、水性処理領域に提供される反応混合物から抽出される1,1,1,3-テトラクロロプロパンを蒸留して、関心のある1,1,1,3-テトラクロロプロパンをクロロアルカン不純物から分離してもよい。例えば、水性処理領域に提供される反応混合物から抽出される1,1,1,3-テトラクロロプロパンを精製する蒸留工程は、特にクロロペンタン/クロロペンテン不純物を除去するのに効果的であることが分かった。
本発明の方法の任意の段階で行われる蒸留工程における1,1,1,3-テトラクロロプロパンを含む混合物から分離される塩化有機不純物を回収して、四塩化炭素の製造に再利用してもよい。これは、塩化有機不純物に高温塩素化分解処理を行うことによって達成してもよい。そのような方法において、存在する任意の塩化有機化合物は再処理されて、高収率で純粋なテトラクロロメタンへと主に戻る。したがって、本発明の方法において塩素化分解工程を使用することは、廃棄物の製造を最小化しつつ、目標とするクロロアルカンの合成の総収率及び純度を最大化するのに有用である。
本発明の実施形態において、用いる場合水性処理工程の後に、「重量物」の残渣が蒸留ボイラー内に成形されていてもよい。「重量物」の残渣は、典型的に系から抽出され、例えば、好ましくはクロロメタンの製造につながる高温塩素化分解処理に扱われる。
本発明の方法の工程1)は、当業者によく知られている単純で直接的な技術及び設備を使用して、高純度1,1,1,3-テトラクロロプロパン原料を製造することが可能であるので、特に有利である。
明らかなように、上記で概説した本発明の方法の工程1)を行って、高純度1,1,1,3-テトラクロロプロパン原料を提供することができる。本発明の実施形態において、本発明の方法の工程1-b)で得られる原料は:
・約99.0%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、約99.9%以上の1,1,1,3-テトラクロロプロパン、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満のクロロアルカン不純物(すなわち関心のある塩化C3~6アルカン以外のクロロアルカン化合物)、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩化アルケン化合物、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の酸素化有機化合物、
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、又は約20ppm未満の金属触媒、
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、又は約20ppm未満の触媒促進剤、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の臭化物又は臭素化有機化合物、
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、又は約20ppm未満の水、並びに/又は
・約500ppm以下、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、又は約10ppm以下の、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1-クロロブタン、1,1,1-トリクロロプロパン、テトラクロロエタン、1,1,3-トリクロロプロプ-1-エン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、ヘキサクロロエタン、1,1,1,5-テトラクロロペンタン、1,3,3,5-テトラクロロペンタン、リン酸トリブチル、塩化アルカノール、及び塩化アルカノイル化合物の一つ若しくは複数
を含む。
工程2-1,1,3-トリクロロプロペンを製造する、1,1,1,3-テトラクロロプロパンの脱塩化水素化
本発明のこの工程は、脱塩化水素反応領域で行われる、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを脱塩化水素化して1,1,3-トリクロロプロペンを製造することを含む。
予想外にも、1,1,3-トリクロロプロペン対1,1,1,3-テトラクロロプロパン出発物質のモル比が50以下:50であるように、その生成物の濃度を制御することによって、望ましくなく問題のある不純物、例えば触媒性能に悪影響を与える可能性のある塩化オリゴマーの形成が有利に防止されることが分かった。そうすることで、収率及び触媒活性もまた改善される。有利に、本発明の方法は高選択的でもある。したがって、実施形態において、本発明の方法の工程2-a)において、1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比が1:99~50:50となるように、脱塩化水素反応領域に存在する反応混合物中の1,1,3-トリクロロプロペンの濃度を制御してもよい。
本発明の方法の工程2-a)で形成された反応混合物中の1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比は、数値的に定義された限度内に制御される。当業者であれば認めるように、そのような実施形態において、本明細書において、方法の制御は、1,1,1,3-テトラクロロプロパンと1,1,3-トリクロロプロペンとの間のモル比に関して特徴付けられるが、しかしながら、それは出発物質から生成物への転化率の制御として考えることもでき-したがって、20:80の1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比は20%の転化率に等しい。発明者らは、上記に概説した1,1,1,3-テトラクロロプロパン転化率を制限することは、望ましくない不純物の形成を最小にし、かつより良好な触媒寿命を可能にすることを見出した。さらに、所定の値より大きい1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比に言及する場合、1,1,1,3-テトラクロロプロパンから1,1,3-トリクロロプロペンへの転化率が大きいこと、すなわち、1,1,3-トリクロロプロペンの割合が増加しつつ1,1,1,3-テトラクロロプロパンの割合が低減することを意味する。さらに、発明者らは、驚くべきことに、1,1,1,3-テトラクロロプロパンの転化率を著しく制限することによってだけでなく、有利なことに、生成された1,1,3-トリクロロプロペンをそのような反応混合物から効果的に即時に抽出することによっても、反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン生成物と1,1,3-トリクロロプロペン出発物質との間の必要なモル比を制御することができることを見出した。
本発明の実施形態において、工程2-a)の方法は連続的である。
本発明の方法の工程2-a)は、1,1,3-トリクロロプロペンの形成につながる。当業者が認識するように、1,1,3-トリクロロプロパンは反応性であり、酸素化有機化合物、例えばこの種の脱塩化水素反応では、塩化アルカノール又は塩化アルカノイル化合物を形成する可能性がある。本方法の発明者らによって、本発明の方法の工程2-a)及び2-b)におけるそのような化合物を最小化することの重要性が認識された。装置から空気を除くことは、酸素化化合物の形成を低減することができるが、しかしながら、そうすることは、特に大気圧より低い圧力環境を使用する場合、典型的に、より技術的及び経済的な要求が多い。
そのような副生物のインサイチュ形成は、本発明の方法の工程2)を用いることにより防止することができ、これは特に連続的工程において有利である。本明細書に記載されている反応条件は、望ましくない酸素化化合物が製造されるリスクを最小化するように、1,1,3-トリクロロプロペンを選択的に製造し、反応混合物から抽出することを可能にする。
更に又は代替として、本発明の方法において、酸素化化合物、例えばアルカノール又はカルボニル化合物が成形される場合、これらは、更に詳細に後述する本発明の方法の工程2-b)における水性処理工程を用いることにより除去することができる。
反応混合物中の1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比が、40以下:60、30以下:70、25以下:75、20以下:80、又は15以下:85になるように、本発明の工程2-a)の反応混合物中の1,1,3-トリクロロプロペンの含有量を制御した場合にも、有利な結果が達成された。更に又は代替として、本発明の実施形態において、反応混合物中の1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比は、2超:98、5超:95、又は10超:90であってもよい。
当業者は、あらゆる技術又は設備を用いて、工程2-a)の反応混合物の組成を決定してもよい。例えば、分析のために反応混合物のサンプルを抽出することができるポートを反応領域に提供することによって、及び/又は脱塩化水素反応領域からその反応混合物を抽出するときに、例えば反応領域の出口又はその近くに位置するポートを経て反応混合物のサンプルを取ることによって、組成を直接決定することができる。更に又は代替として、一定の圧力において温度は組成に相関するので、例えば、温度調節によって、組成を間接的に決定することができる。
工程2-a)の反応混合物中の1,1,3-トリクロロプロペンの濃度は、以下の方法の一つ又は複数によって制御してもよい:i)脱塩化水素反応領域から1,1,3-トリクロロプロペンを除去すること(直接、又はまず反応混合物を脱塩化水素反応領域から抽出し、次にそこから1,1,3-トリクロロプロペンを抽出することのいずれか)、ii)より高濃度の1,1,3-トリクロロプロペンを形成するのに好ましくない脱塩化水素反応領域の操作条件(例えば温度、圧力、撹拌速度等)、並びに/又はiii)脱塩化水素反応領域に存在する1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び/若しくは触媒の量の制御。
1,1,3-トリクロロプロペンは、連続的又はバッチ式に基づいて反応混合物から抽出してもよい。
工程2-b)において、当業者に知られているあらゆる技術を使用して、本発明の工程2-a)で形成される反応混合物から1,1,3-トリクロロプロペンを抽出してもよい。工程2-b)の実施形態において、1,1,3-トリクロロプロペンは、蒸留を介して反応混合物から抽出される。反応混合物からの1,1,3-トリクロロプロペンの抽出がどのように実施されるかにかかわらず、1,1,3-トリクロロプロペンは、1,1,3-トリクロロプロペンに富む流れとして得てもよい。この流れを、本発明の方法の工程3-a)の原料として使用することができる。
この明細書の全体にわたって用いられる、特定の化合物「に富む流れ(a stream rich in)」という用語(又は対応する記載)は、その流れがその特定の化合物を少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%含むことを意味するよう用いる。更に、用語「流れ」は、狭く解釈すべきでなく、あらゆる手段を介して混合物から抽出される組成物(画分を含む)を含む。
誤解を避けるため、脱塩化水素反応領域における反応混合物、又は脱塩化水素反応領域からの反応混合物の「連続的抽出」に言及する場合、文字通りの厳密な解釈を意図するものではなく;当業者であれば、その用語は、脱塩化水素反応領域が目標とする作動条件に達し、反応混合物が定常状態に達したときに、抽出が実質的に連続的な基準で行われることを意味するよう用いられることを認めるであろう。
1,1,3-トリクロロプロペンは、脱塩化水素反応領域の反応混合物から(例えば工程2-bの一部としての直接蒸留を介して)直接抽出することができ、又はまず工程2-a)で形成される反応混合物の一部を脱塩化水素反応領域から抽出して、脱塩化水素反応領域から離れて、その混合物から1,1,3-トリクロロプロペンを(連続的又はバッチ式基準で)抽出することができる。
本発明の実施形態において、工程2-b)において、反応混合物に更なる処理工程、例えば、一つ又は複数の蒸留工程及び/又は水性処理工程(以下更に詳細に述べる)を行ってもよい。そのような更なる処理工程は、反応混合物から1,1,3-トリクロロプロペンを抽出する前及び/又は抽出した後に実施してもよい。当業者であれば、1,1,3-トリクロロプロペンの抽出後にそのような更なる処理工程を行う場合、混合物中の1,1,3-トリクロロプロペン含有量は、脱塩化水素反応領域で形成される反応混合物における含有量よりも低いことを認めるであろう。
本発明の実施形態において、工程2-b)において、1,1,3-トリクロロプロペンは、蒸留によって反応混合物から除去してもよい。当業者に知られているあらゆる技術及び装置を使用して、このようにして反応混合物から1,1,3-トリクロロプロペンを抽出してもよい。本発明の実施形態において、蒸留塔、例えば精留塔を用いてもよい。塔頂から液体蒸留物として除去される1,1,3-トリクロロプロペンとともに、反応混合物は、塔底を通過してもよく、又は塔底に供給してもよい。
例えば、脱塩化水素反応領域の作動温度によって反応混合物の全部又は一部が気体である実施形態において、装置は、脱塩化水素反応領域が蒸留を行うための装置に流体連結するよう構成されていてもよい。そのような実施形態において、蒸留装置は、脱塩化水素反応領域に連結されていてもよい。便宜にも、これは、気体の1,1,3-トリクロロプロペンを含有する混合物が、脱塩化水素反応領域から蒸留装置内へと直接通過する(又は通過させる)ことを可能にする。代替として、蒸留装置は脱塩化水素反応領域から離れて位置してもよく、このことは、脱塩化水素反応領域から気体混合物を抽出して、蒸留装置へと通過させなければならないことを意味する。
更に又は代替として、反応混合物の一部又は全部が液体形態で脱塩化水素反応領域に存在する場合、脱塩化水素反応領域から液体反応混合物の一部を抽出して、蒸留装置へと通過させてもよい。そのような実施形態において、工程2-b)において、反応混合物は、蒸留の前及び/又は後であってもよい一つ又は複数の処理工程(例えば以下に述べる水性処理工程)を受けてもよい。
工程2-b)の反応混合物からの1,1,3-トリクロロプロペンの抽出を、脱塩化水素反応領域とは離れた装置で行う実施形態において、未反応の1,1,1,3-テトラクロロプロパン出発物質と、(存在するとすれば)低減された濃度の1,1,3-トリクロロプロペンとを含む得られる混合物を、脱塩化水素反応領域へと供給して戻してもよい。
工程2-a)で形成される反応混合物から1,1,3-トリクロロプロペンを抽出する実施形態において、反応混合物中に存在する1,1,3-トリクロロプロペンの少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90質量%がその混合物から抽出される。
工程2-b)において、反応混合物からの1,1,3-トリクロロプロペンの蒸留は、連続的に、反連続的に、又はバッチ式で実施することができる。
本発明の利点は、脱塩化水素反応が、慣例の技術を使用して、例えば蒸留装置の塔頂蒸気の凝縮によって回収してもよい反応混合物から、高純度の気体塩化水素を生じるということである。
したがって、脱塩化水素反応(工程2-a)の間に塩化水素が生じる本発明の実施形態において、塩化水素を抽出してもよい。これは、そのようにするために当業者に知られているあらゆる設備及び/又は技術を用いて達成することができる。例えば、反応混合物を蒸留する場合、蒸留装置をコンデンサ(例えば分縮器)とともに提供してもよく、又はコンデンサ(例えば分縮器)を蒸留装置の下流に提供して、塩化水素気体を除去可能にしてもよい。
冷却装置(例えば、第二のコンデンサ)を、例えば第一のコンデンサの下流に、更に使用してもよい。このように装置を配置することは、第一のコンデンサを用いて存在する1,1,3-トリクロロプロペンの大部分を凝縮し、第二のコンデンサを用いて痕跡量の1,1,3-トリクロロプロペンを凝縮することによって気体を精製することができるので、有利である。回収された1,1,3-トリクロロプロペンは、塩化水素のように高純度である(そして、本発明の方法の工程3-aにおける原料として使用してもよい)。
更に又は代替として、吸収カラムを使用して塩化水素気体を吸収し、塩酸溶液を生じてもよい。
脱塩化水素反応領域から、又はそこから抽出された反応混合物から塩化水素気体を抽出する本発明の実施形態において、これは、深冷処理、すなわち反応混合物から気体を抽出して、これを約0℃以下、-10℃以下、又は-20℃以下の温度に冷却する深冷処理を用いることによって達成してもよい。得られた凝縮物は、脱塩化水素反応領域へとリサイクルして戻してもよく、又は他の関連する反応領域(例えばグリセロールのヒドロクロリン化)において任意に使用してもよい。
有利にも、これらの方法で抽出される塩化水素は高純度であり、したがって、同じ工業プラントの上流又は下流の反応における反応剤として用いることができる。下流での使用例は、モノクロロヒドリン又はジクロロヒドリンを製造して、その後エピクロルヒドリン、グリシドール、及びエポキシに至る、グリセロールのヒドロクロリン化である。
上記のように、本発明の方法の工程2-a)において、反応速度(及びしたがって、1,1,1,3-テトラクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比)は、脱塩化水素反応領域における作動温度を変更することによって制御することができる。本発明の実施形態において、脱塩化水素化反応は、液相で、すなわち反応混合物が液体形態である液相で行うことができる。そのような実施形態において、脱塩化水素反応領域は、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約100℃、約120℃、又は約130℃から、約160℃、約170℃、約200℃、約250℃、又は約300℃までの温度で作動させてもよい。
工程2-a)において、反応(1,1,1,3-テトラクロロプロパンから1,1,3-トリクロロプロペンへの転化)を必要な完了度まで進ませるのに充分な時間、反応混合物を脱塩化水素反応領域に維持する。脱塩化水素化を液相中で行う本発明の実施形態において、脱塩化水素反応領域における反応混合物の滞留時間は、約0.1時間、約0.2時間、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、又は約3時間から、約5時間、約7時間、約9時間、又は約10時間までであってよい。
工程2-a)において、脱塩化水素反応領域は、大気圧より低い圧力、大気圧、又は大気圧を超える圧力で作動させてもよい。本発明の実施形態において、脱塩化水素反応領域は、大気圧、又は約10kPa~約400kPa、約40kPa~約200kPa、又は約70kPa~約150kPaの圧力で作動される。
本発明の方法の工程2-a)において、脱塩化水素反応の速度を上げるあらゆる触媒を使用してもよい。実施形態において、触媒は金属を含む。そのような実施形態において、金属は、固体形態(例えば、触媒が鉄である場合、粒状鉄(例えば鉄やすり屑又は鉄粉末)、鉄メッシュ、鉄ワイヤ、充填剤(構造化された又はランダム)、固定床、流動床、液体中の分散体等、又はそのようなあらゆる態様で形成された鉄を含む合金、例えば炭素鋼として存在してもよい)、及び/又は塩(例えば、触媒が鉄である場合、塩化第二鉄、塩化第一鉄等として存在してもよい)で存在してもよい。更に又は代替として、本発明の方法を行う装置に、一部又は全部が触媒材料で形成された部品、例えばカラム内容物を提供してもよい。
金属が反応混合物中に塩として存在する本発明の実施形態において、金属は塩の形態で反応混合物に加えてもよく、及び/又は固体金属を反応混合物に加えて反応混合物中に溶解させ、インサイチュで塩を形成してもよい。塩の形態で存在する場合、触媒は、非晶質形態、結晶形態、無水物形態、及び/又は水和形態(例えば塩化第二鉄六水和物)で加えてもよい。液体形態の触媒を使用してもよい。
代替の実施形態において、工程2-a)の脱塩化水素反応は、気相で、すなわち1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び1,1,3-トリクロロプロペンの両方が気体の形態である気相で実施される。そのような実施形態において、脱塩化水素反応領域は、約300℃~約500℃、約325℃~約425℃、又は約350℃~約400℃の温度で作動させてもよい。
脱塩化水素反応を気相中で行う本発明の実施形態において、脱塩化水素化領域における反応混合物の滞留時間は、約0.5~約10秒であってよい。
驚くべきことに、工程2-a)における脱塩化水素反応が気相中で行われる本発明の実施形態において、高収率及び選択性を達成するために、反応は適切に触媒されなければならないことが分かった。したがって、本発明の方法において、金属触媒、例えば50質量%以上の濃度で鉄を含む金属触媒を使用してもよい。
したがって、本発明の実施形態において、1,1,3-トリクロロプロペンを調製する方法が提供され、方法は、工程2-aにおいて、脱塩化水素反応領域において、気相中の1,1,1,3-テトラクロロプロパンを、鉄含有量50%以上の触媒に接触させて、1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び1,1,3-トリクロロプロペンを含む気相反応混合物を生じることを含む。
本発明の方法の工程2-a)において使用してもよい触媒の例としては、ステンレス鋼、例えば、フェライト及び/又はオーステナイト鋼が挙げられる。本発明の方法で使用される触媒の鉄含有量は、好ましくは、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、又は少なくとも約95質量%である。触媒として純鉄を使用してもよい。
触媒は、工程2-a)において任意の形態で、例えば流動床の配置、及び/又は固定床の配置で使用してもよい。更に又は代替として、触媒を含む脱塩化水素反応領域の部品を使用することができる。例えば、脱塩化水素反応領域が管型反応器である実施形態において、反応器の管(又は少なくとも1,1,1,3-テトラクロロプロパンと接触するそれらの管の表面)は、(一部又は全部を)触媒で形成することができ、又は触媒で形成された触媒領域とともに提供することができる。
本発明における、気相での脱塩化水素反応(工程2-a)の作動の間、触媒は非活性化されることがある。したがって、そのような実施形態において、本発明の方法は触媒回収工程を含む。この工程は、当業者に知られているあらゆる技術及び/又は設備を用いて、例えば、脱塩化水素反応領域への酸素リッチな空気及び/又は酸素などの酸化剤の注入によって、達成することができる。そのような工程の前に、脱塩化水素反応領域を通る反応剤の流れを止めてもよく、及び/又は脱塩化水素反応領域を(例えば窒素気体で)パージしてもよい。行う場合、触媒回収工程が終了したら、脱塩化水素反応領域を(例えば窒素気体で)再びパージしてもよく、及び/又は脱塩化水素反応領域への反応剤の流れを再開することができる。
脱塩化水素化工程(工程2-a)を気相で行う実施形態において、脱塩化水素化領域から抽出される反応混合物は、典型的に気相である。それらの熱い生成物気体を、当業者に知られているあらゆる技術及び/又は設備を用いて凝縮して、液体形態の塩化有機化合物を得てもよい。例えば、熱い反応混合物は、間接冷却、クエンチ(例えば、スプレーノズルを使用して)、直接冷却法等によって冷却することができる。
気体を冷却して反応混合物から塩化有機化合物を凝縮したら、任意に上流又は下流プロセスで使用することができる塩化水素気体を抽出してもよい。下流での使用例は、モノクロロヒドリン又はジクロロヒドリンを製造してその後エピクロルヒドリン及びエポキシに至る、グリセロールのヒドロクロリン化である。
脱塩化水素化工程2-a)を気相で行うか、又は液相で行うかに関わらず、1,1,3-トリクロロプロペン及び未反応の1,1,1,3-テトラクロロプロパン、並びに不純物を含む塩化有機物の混合物に、本明細書に述べる一つ又は複数の後脱塩化水素化処理工程(2-b)(一つ又は複数の蒸留及び/又は水性処理工程を含む)を行って、本発明の方法の工程3-a)の原料として使用してもよい純粋な1,1,3-トリクロロプロペンを得てもよい。
当業者に知られているあらゆる種類の反応器を使用して、本発明の方法の工程2-a)の脱塩化水素化領域を提供してもよい。脱塩化水素化領域を提供するために用いてもよい反応器の具体例は、カラム反応器、管状反応器、気泡塔反応器、栓流反応器、及び連続撹拌槽反応器である。
本発明の方法の工程2-a)は、単一の脱塩化水素化領域、又は複数の脱塩化水素反応領域で実施してもよい。複数の脱塩化水素反応領域を使用する場合、これらは順番に作動(すなわち、反応混合物が複数の脱塩化水素反応領域に沿って通過するように)してもよく、及び/又は並列して作動してもよい。
工程2-a)において任意にカスケード型式で複数の脱塩化水素反応領域を使用する本発明の実施形態において、これらは、同じ又は異なる反応器であってもよい。例えば、複数(例えば1、2、3、4、5、又はそれより多く)の脱塩化水素反応領域を使用する場合、これらは、それぞれ最適化された作動条件、例えば温度、滞留時間を有するよう最適化された複数(例えば1、2、3、4、5、又はそれより多く)の反応器(例えば連続撹拌槽反応器)で提供してもよい。
一実施形態において、本発明の方法の工程2-a)において使用してもよい蒸留塔内に、複数の脱塩化水素反応領域が存在してもよい。そのような実施形態において、脱塩化水素化は、例えば、脱塩化水素反応が蒸留塔内トレイ上、及び/又は塔内に提供される充填物上で実施される反応蒸留によって達成してもよい。反応蒸留を行う実施形態において、蒸留塔は、1,1,1,3-テトラクロロプロパンから1,1,3-トリクロロプロペンを分離するストリッピング領域を好ましくは含む。このストリッピング領域は、液体供給の下に位置してもよい。
本発明の方法の工程2-a)で行われる脱塩化水素反応から得られる反応混合物の成分(例えば1,1,3-トリクロロプロペン、塩化水素、及び/又は出発物質)は、特定の材料と好ましくなく相互作用することが分かった。したがって、本発明の実施形態において、工程2-a)において、使用中に反応混合物と接触する脱塩化水素反応領域内のそれらの部分の鉄含有量は、約20%以下、約10%以下、又は約5%以下であってよく、並びに/又は非金属材料、例えばエナメル、ガラス、含浸黒鉛(例えばフェノール樹脂で含浸した)、炭化ケイ素、及び/若しくはプラスチック材料、例えばポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシ、及び/若しくはポリフッ化ビニリデンから形成されていてもよい。更に又は代替として、使用中に反応混合物と接触する脱塩化水素化領域の少なくともいくつかの部分は、ニッケルベース合金、例えばハステロイで成形されていてもよい。
本発明の実施形態において、本発明の方法で使用される、1,1,3-トリクロロプロペンが接触する全ての設備の部分は、適切な材料、例えば上記で識別したものから形成される。1つの可能性ある例外は、本発明の方法で使用される装置の表面の一つ又は複数の領域が、触媒として機能するよう選択された金属材料で成形されている場合である。
発明者らは、特定の作動条件の下で、本発明の方法で使用される反応剤、並びにそれらの処理で形成される化合物を、酸素源、並びに/又は空気、水蒸気、及び/若しくは水を含む水分に曝露することは、望ましくない不純物の形成につながる可能性があることもまた見出した。したがって、本発明の実施形態において、脱塩化水素化及び/又は蒸留は、不活性雰囲気、例えば無酸素で行ってもよい。
本発明の方法の工程2-a)において、当業者に知られているあらゆる技術を使用して、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを脱塩化水素化領域に供給してもよい。
本発明の方法の工程2-a)で使用される1,1,1,3-テトラクロロプロパン原料の純度レベルは、好ましくは、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約98.5%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%である。
実施形態において、1,1,1,3-テトラクロロプロパン原料は、約1000ppm以下、約500ppm以下、250ppm以下、又は約100ppm以下の塩化アルカン不純物、例えば、1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び/若しくは1,1,3-トリクロロプロペンの沸点以上の沸点を有するアルカン、並びに/又は、反応条件において脱塩化水素化されて塩化アルケン不純物を生じる不純物、例えば1,1,3-トリクロロプロペンの10℃以内の沸点を有するアルケン、1,1,1,3-テトラクロロプロパン以上の沸点を有するアルケン、及び/若しくは1,1,3-トリクロロプロペンの異性体であるアルケンを含む。
更なる又は代替の実施形態において、1,1,1,3-テトラクロロプロパン原料は、約1000ppm以下、約500ppm以下、250ppm以下、又は約100ppm以下の塩化アルケン不純物、例えば、1,1,3-トリクロロプロペンの10℃以内の沸点を有するアルケン、1,1,1,3-テトラクロロプロパン若しくは1,1,3-トリクロロプロペン以上の沸点を有するアルケン、及び/又は1,1,3-トリクロロプロペンの異性体であるアルケンを含む。
更に又は代替として、1,1,1,3-テトラクロロプロパン原料は、約1000ppm以下、約500ppm以下、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、又は約10ppm以下のテトラクロロエテン、ヘキサクロロエタン、及び/又はテトラクロロペンタンを含む。
本発明の方法の工程2-a)の利点の1つは、高異性体選択性で1,1,3-トリクロロプロペンを製造できることである。したがって、本発明の実施形態において、1,1,3-トリクロロプロペンは、工程2-a)において、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、又は少なくとも約99.9%の異性体選択性で製造される。
1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び/又は触媒の脱塩化水素化領域への供給は、反応混合物の抽出のように、連続的又は断続的であってよい。
本発明の方法の工程2-a)の更なる利点は、脱塩化水素化領域を連続的工程で行うか又はバッチ式工程で行うかに関わらず、望ましい結果が得られることである。用語「連続的工程」及び「バッチ式工程」は当業者であれば理解するであろう。
本発明の方法の工程2-a)の更なる利点は、アルカリ水酸化物を用いずに、高純度の1,1,3-トリクロロプロペンを製造することができることである。したがって、実施形態又は本発明において、工程2-a)の脱塩化水素化領域にアルカリ水酸化物を加えず、及び/又は工程2-a)の脱塩化水素化領域に存在する反応媒体は、アルカリ水酸化物を含まない。
上記のように、本発明の実施形態において、1,1,1,3-テトラクロロプロパン1,1,3-トリクロロプロペン、及び触媒を含む反応混合物を、脱塩化水素化領域から抽出してもよい。これは、工程2-b)において更なる処理工程を受けてもよい。
そのような実施形態において、そのような処理工程は、抽出した混合物を任意に濾過して次に水性処理領域へと供給する、水性洗浄工程であってもよい。この工程は、混合物から1,1,3-トリクロロプロペを抽出する前又は後に行ってもよい。
混合物を、水性処理領域で水性媒体と接触させ、これは触媒を非活性化するのに役立つ。混合物は、水性処理領域で酸、例えば無機酸、例えば硫酸、リン酸、及び/又は塩酸と接触させてもよい。酸は、純粋であっても、又は希釈されていてもよい。希釈された酸を使用する場合、これは水性媒体を提供してもよい。水性媒体のpH値は、二相混合物の有効な分離を可能にする程度に十分に低くすべきである。
工程2-b)に含まれる水性処理工程は、混合物、特に酸素化不純物から特定の分類の、そうでなければ問題のある不純物を除去するという有利な効果を有する。
そのような実施形態において、触媒失活は、必要な低温の水と短時間、例えば約5分、約10分、約20分、又は約30分接触させるだけで達成することができる。塩化、酸素化不純物の加水分解及び抽出のため、水との接触時間は長く、例えば、約1時間以下、約2時間以下、約5時間以下、若しくは約10時間以下であってよく、及び/又は温度は約50℃以下、約40℃以下、若しくは30℃以下であってよい。
したがって、本発明の実施形態において、本発明の方法の工程2-b)は、1,1,3-トリクロロプロペン、酸素化有機不純物、並びに任意に触媒及び/又は1,1,1,3-テトラクロロプロパンを含む混合物から、酸素化有機不純物を除去する工程であって、混合物を水性媒体に接触させて二相混合物を形成し、その二相混合物から有機相を抽出することを含む、工程を含んでもよい。本発明の実施形態において、本発明のこの側面の混合物は、工程2-a)で用いられる脱塩化水素化領域から抽出される混合物であるか、又は含む。
そのような工程において希酸を用いる場合、これは、混合物と接触する水性媒体を更に提供してもよい。更に又は代替として、水性媒体は、水性処理領域へと別々に加えてもよい水(任意の形態、例えば水蒸気)を含んでもよい。
水性処理領域に酸を加える実施形態において、これは水性処理領域に存在する混合物のpHを、好ましくは約6以下、約5以下、約4以下、約2以下、又は約1以下に低減する。
ある割合(例えば、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%)の、未反応の1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び/又は1,1,3-トリクロロプロペンを、当業者に知られているあらゆる技術又は設備を用いて、水性処理領域に形成される混合物から抽出してもよい。
例えば水性処理領における作動温度のため、及び/又は水性媒体として水蒸気を添加することをとおして、混合物の一部又は全部が気体形態である実施形態において、工程2-b)において、気体混合物を蒸留してもよい。そのような実施形態において、蒸留装置は、水性処理領域と流体連結されて(任意にその領域へと連結されて)いてもよく、又は水性処理領域と離れていてもよい。
更に又は代替として、混合物の一部又は全部が液体形態である場合、工程2-b)において、その混合物は水性処理領域から抽出され、蒸留を受けてもよい。
工程2-b)でそのような蒸留工程を行う実施形態において、1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び/又は1,1,3-トリクロロプロペンを含む(及び任意に富む)流れを得てもよい。1,1,3-トリクロロプロペンに富む流れを、本発明の方法の工程3-a)の原料として使用してもよい。
水性処理領域へと供給された混合物から抽出した1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び/又は1,1,3-トリクロロプロペンを、脱塩化水素化領域へと出発物質としてリサイクルして戻してもよい。
水性媒体及び主要な有機混合物の両方が存在する結果、工程2-b)の水性処理領域に(又は特定の実施形態において水性処理領域から離れて)、水相及び有機相を含む二相混合物が成形されてもよい。
本発明の方法の工程2-b)で二相混合物が成形されるそのような実施形態において、相分離技術及び/又は当業者に知られている設備を使用して、二相混合物から有機相を抽出してもよい。水性処理領域で二相混合物が成形される場合、水性処理領域から相を逐次的に抽出することによって、水相から有機相を分離することができる。混合物から除去された不純物を含む水相は、更に処理することができる。
相分離効率を最大にして、それによって二相混合物からのその相の抽出を促進するために、ハロアルカン抽出剤及び/又は相分離強化剤(例えば、1,1,1,3-テトラクロロプロパン、並びに/又は様々なアルコール及び/若しくはケトン)を、水性処理領域へと、当業者に知られている技術及び/又は設備を用いて断続的又は連続的に加えてもよい。1,1,1,3-テトラクロロプロパンの使用は、この化合物が方法の一部であり、したがって特定の分離工程を用いて除去する必要がないので、好ましい。
任意に、相分離強化剤、例えば1,1,3-トリクロロプロペン及び1,1,1,3-テトラクロロプロパンと充分に異なる沸点を有する極性アルコール及び/又はケトンを使用してもよい。沸点の違いは、少なくとも20℃、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、又は少なくとも約60℃であるべきである。使用してもよい相分離強化剤の例としては、脂肪族ケトン、例えばアセトン及び脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、一つ又は複数のプロパノール、一つ又は複数のブタノールが挙げられる。
本発明の実施形態において、抽出された有機相は、次に工程2-b)において、1,1,3-トリクロロプロペン及び/又は未反応の1,1,1,3-テトラクロロプロパンの(及び任意に豊かな)流れが蒸留され除かれる蒸留工程を受けてもよい。そのような工程は、水性処理の前に反応混合物から1,1,3-トリクロロプロペンを抽出したか否かにかかわらず、行ってもよい。未反応の1,1,1,3-テトラクロロプロパンの流れを、脱塩化水素化領域へとリサイクルしてもよい。1,1,3-トリクロロプロペンに富む流れを、本発明の方法の工程3-a)の原料として使用してもよい。重い最終物の残渣を蒸留装置から抽出し、任意に濾過及び焼却し、並びに/又は高温塩素化分解してもよい。
1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び/又は1,1,3-トリクロロプロペン、並びにハロアルカン抽出剤及び/又は相分離強化剤を含む有機相を、脱塩化水素化領域へと供給して戻してもよい。そのような実施形態において、有機相の(使われる場合)相分離強化剤又は他の成分を除去する蒸留工程を行ってもよい。
塩化アルケンの含水量を低減することは、下流の用途、例えば塩素化にそのようなアルケンを使用することが分かった。したがって、本発明の実施形態において、得られる一つ又は複数の塩化アルケン生成物に含まれる水が、約500ppm未満、約200ppm以下、約100ppm以下、又は約50ppm以下であるように、方法条件を制御する。
本発明の工程2)は、当業者によく知られている単純で直接的な技術及び設備を使用して、高純度な1,1,3-トリクロロプロペンを製造することができるので有利である。
本発明の方法の工程2)は、方法の工程3-a)に使用するための1,1,3-トリクロロプロペン原料の製造につながる。その原料は、好ましくは以下を含む:
・約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.2%以上、約99.5%以上、又は約99.7%以上の1,1,3-トリクロロプロペン、
・約50000ppm未満、約20000ppm未満、約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の1,1,1,3-テトラクロロプロパン、
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩化C5~6アルカン不純物
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩化アルケン不純物(すなわち1,1,3-トリクロロプロペン以外の塩化アルケン)、
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、又は約5ppm未満の金属、
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約250ppm未満、又は約100ppm未満の酸素化有機化合物、及び/又は
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、又は約50ppm以下の水。
工程3-1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを製造する1,1,3-トリクロロプロペンの塩素化
本発明のこの工程の方法は、すでに塩化されたアルケン(1,1,3-トリクロロプロペン)を塩素化して、高純度の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを製造することを含む。方法は高選択的である。
1,1,3-トリクロロプロペン出発物質から1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン生成物への転化率を制御することが、望ましくない不純物の形成を有利にも最小化することが分かった。したがって、本発明の実施形態において、方法の工程3-a)において、反応領域から抽出される反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比は95以下:5である。
反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比は、数値的に定義された限度内に制御される。当業者であれば認めるように、そのような実施形態において、方法の制御は、本明細書において、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンと1,1,3-トリクロロプロペンとのモル比について特徴付けられるが、しかしながら、1,1,3-トリクロロプロペンから1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンへの転化率の制御もまた考慮され-したがって、95:5の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比は95%の転化率に等しい。発明者は、本発明の方法の工程3-a)において、上記に概説した出発物質の転化率を制限することは、望ましくない不純物の形成を最小化することを見出した。さらに、所定の値より大きい1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比に言及する場合、これは、1,1,3-トリクロロプロペンから1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンへの転化率がより大きいこと、すなわち1,1,3-トリクロロプロペンの割合が低減するとともに1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの割合が増加することを意味する。
本発明の実施形態において、反応領域は第一の反応領域であってもよい。
本発明の方法の工程3-a)の利点の1つは、高異性体選択性で1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを製造できることである。したがって、本発明の実施形態において、工程3-a)で製造される1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンは、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、又は少なくとも約99.9%の異性体選択性を有する。
高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンは、保存及び輸送の間、分解しにくいことが分かった。これは、そうでなければ1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの分解を誘発する不純物が存在しない(又は痕跡量のみ存在する)ことに起因すると考えられる。したがって、安定剤の使用を有利にも回避することができる。
本発明の方法の工程3-a)の更なる利点は、出発物質の生成物への転化率を制御することにより、そうでなければ問題のある一連の生成物の形成が最小化されることである。したがって、本発明の実施形態において、第一の反応領域から抽出した反応混合物、及び/又は主要な反応領域から抽出した1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む材料に含まれる、一連の反応生成物、すなわち、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンより多い数の塩素及び/又は炭素原子を含む化合物の濃度は低く、例えば約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、又は約0.02%未満である。
本発明の実施形態において、方法は連続的でもよい。
工程3-a)の第一の反応領域で形成される反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの濃度を注意深く制御することで、不純物の製造が最小化され、及び/又は1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの高い選択性が達成されることが予想外にも分かった。反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの濃度は、例えば、i)一つ又は複数の第一の反応領域から1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを除去することによって(あるいは具体的には、反応混合物の抽出によって)、ii)第一の反応領域の反応条件(例えば温度、光に対する曝露、及び/又は圧力)を制御することによって、並びに/又はiii)第一の反応領域に存在する1,1,3-トリクロロプロペン及び/若しくは塩素の量を制御することによって、制御してもよい。
例えば、本発明の方法の工程3-a)で形成される反応混合物中に存在する塩素の量は、一つ若しくは複数の第一の及び/又は主要な反応領域内の反応混合物中にモル過剰な塩素が存在しないように、制御することができる。
工程3-a)で使用される第一の反応領域において、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの形成につながるあらゆる条件を使用してもよい。しかしながら、本発明の実施形態において、第一の反応領域の作動温度は比較的低い程度、例えば100℃以下、約90℃以下、又は約80℃以下に維持される。第一の反応領域の作動温度は、約-30℃、約-20℃、約-10℃、又は約0℃から、約20℃、約40℃、又は約75度までであってもよい。第一の反応領域においてそのような温度を使用することは、予想外にも、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの異性体及び過塩化化合物の形成を減少し、それでもなお必要な生成物を選択的に高収率で与えることにつながるので、有利であることがわかった。これらの温度で反応速度を上げるために、光(可視及び/又は紫外)を任意に用いて、これらの低温での塩素の付加を促進してもよい。
工程3-a)において、第一の反応領域の作動温度は、当業者に知られているあらゆる温度制御手段、例えば、加熱/冷却ジャケット、反応器内又は外のいずれかの加熱/冷却ループ、熱交換器等によって制御してもよい。更に又は代替として、反応混合物に加えられる一つ又は複数の材料の温度を制御し、それによって反応混合物の温度を制御することによって、温度を制御してもよい。反応混合物は、第一の反応領域内に、反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの必要な濃度を達成するのに十分な条件にしばらく維持される。
本発明の実施形態において、工程3-a)で使用される第一の反応領域は、光、例えば可視光及び/又は紫外線光に曝露してもよい。反応混合物を光に曝露することは低温で作動させたときの反応を促進し、このことは、より高温を使用することを回避すべき場合に有利である。
誤解を避けるため、本発明の実施形態において、工程3-a)の第一の転化工程は、同じ又は異なる圧力、温度、及び/又は光条件で作動してもよい複数の第一の反応領域(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれより多くの第一の反応領域)で行ってもよい。
工程3-a)において、本発明の方法のうち、第一の反応領域における反応混合物の滞留時間は、約30分~約300分、約40分~約120分、又は約60分~約90分の範囲であってよい。
第一の反応領域から抽出される反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比が50以下:50の濃度になるように、第一の反応領域に存在する反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの濃度を維持した場合、最適な結果が観察された。本発明の実施形態において、第一の反応領域の反応混合物中に存在する1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの濃度は、低濃度に、例えば、第一の反応領域から抽出される反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比が、75以下:25、50以下:50、40以下:60、又は30以下:70になるように維持してもよい。更に又は代替として、第一の反応領域から抽出される反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比が、5以上:95、10以上:90、15以上:85、20以上:80、30以上:70、40以上:60、又は50以上:50となる濃度に、一つ又は複数の第一の反応領域に存在する反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの濃度を維持する。
1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比を決定することを可能にする反応混合物の組成は、第一の反応領域から反応混合物を抽出した後、実行可能になったらすぐに決定してもよい。例えば、反応混合物のサンプルは、第一の反応領域の出口に隣接する点、又はわずかに下流で抽出してもよい。本発明の実施形態において、出口は、第一の反応領域の上端に位置してもよい。
本発明の方法の工程3-a)で形成される1,1,3-トリクロロプロペン及び1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを含む反応混合物を、第一の及び/又は主要な反応領域から抽出してもよい。これは、連続的又は断続的に行ってもよい。
当業者であれば、反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物がそれぞれの反応領域から抽出される実施形態において、問題の領域が作動条件にあるとき、及び定常状態反応(例えば塩素化)を立ち上げることが目的である場合、その中の反応混合物が必要な定常状態に達したら、材料を実質的に連続的な基準で除去してもよいことを認識するであろう。
本発明の実施形態において、第一の反応領域で行われる工程3-a)の反応は、液相であり、すなわち、そこに存在する反応混合物は過半又は全てが液体である。反応混合物は、当業者に知られているあらゆる技術、例えばクロマトグラフィを使用して分析してもよい。
本発明の方法の工程3-a)で使用される1,1,3-トリクロロプロペン原料は、好ましくは高純度である。本発明の実施形態において、1,1,3-トリクロロプロペン原料の純度は、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%である。
更に又は代替として、本発明の方法の工程3-a)で使用される1,1,3-トリクロロプロペン原料に含まれる塩化アルケン及び/又は塩化アルカン不純物は、約2質量%未満、約1質量%未満、約0.1質量%未満、約0.01質量%未満、又は約0.001質量%未満であってよい。例えば、1,1,3-トリクロロプロペン原料に含まれる塩化アルケン不純物、例えばペルクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロエチレン、異性体トリクロロプロペン、テトラクロロプロペン、及び/又は塩化アルカン不純物、例えば1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、約2質量%未満、約1質量%未満、約0.1質量%未満、約0.01質量%未満、又は約0.001質量%未満である。
本発明の方法の工程3-a)で使用される一つ若しくは複数の第一の反応領域及び/又は一つ若しくは複数の主要な反応領域への、塩素及び/又は1,1,3-トリクロロプロペンの供給は、連続的又は断続的であってよい。
塩素は、本発明の方法の工程3-a)で使用される一つ又は複数の反応領域内に、液体及び/又は気体の形態で、連続的又は断続的のいずれかで供給してもよい。例えば、第一の反応領域に、一つ又は複数の塩素の供給を供給してもよい。更に又は代替として、第一の反応領域の下流の一つ又は複数の反応領域(例えば主要な転化領域)に、一つ又は複数の塩素の供給を供給してもよい。本発明の実施形態において、塩素を供給する唯一の反応領域は第一の反応領域である。
一つ又は複数の反応領域における反応混合物が液体である場合、塩素は、一つ又は複数の反応領域に気体として供給して、反応領域で溶解させてもよい。実施形態において、塩素は、分散装置、例えば、ノズル、多孔質プレート、管、エジェクタ等を介して、一つ又は複数の反応領域へと供給される。塩素は、本発明の実施形態において、液体反応混合物内に直接供給してもよい。更に又は代替として、塩素は、一つ又は複数の反応領域の上流の他の反応剤の液体供給内に供給してもよい。
さらに、激しく撹拌して、良好な混合及び/又は液体反応混合物中への塩素の溶解を確実にしてもよい。
本発明の方法の工程3-a)で出発物質として使用する塩素は、好ましくは高純度である。本発明の実施形態において、好ましくは本発明の任意の段階で使用される一つ又は複数の反応領域へと供給される塩素の純度は、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、又は少なくとも約99.9%である。
更に又は代替として、本発明の方法の工程3-a)で使用される塩素に含まれる臭素又は臭化物は、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、約10ppm以下であってもよい。
少量の酸素(例えば約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、又は約10ppm以下)を含む塩素気体を使用することもまた想定される。しかしながら、本発明の実施形態において、本発明の方法の生成物が容認できないほど高濃度の酸素化不純物を含むことなく、より低グレードの塩素(例えば1000ppm以上の濃度の酸素を含む)を、工程3-a)において有利に使用することができる。
上記のように、本発明の実施形態において、第一の反応領域の工程3-a)で生じる反応混合物は液体であろうと考えられる。しかしながら、反応混合物が気体である代替の実施形態が想定される。そのような実施形態において、第一の反応領域は、約150℃~約200℃の温度で操作してもよい。そのような実施形態において、気相反応器、例えば、一つ又は複数の管型気相反応器を使用してもよい。
本発明の方法の工程3)の文脈で用いられる用語「高純度」は、95%以上の純度、約99.5%以上の純度、約99.7%以上の純度、約99.8%以上の純度、約99.9%以上の純度、又は約99.95%以上の純度を意味する。特に明記しない限り、本明細書に割合として提供する値は、質量に基づく。
第一の反応領域からの反応混合物の抽出は、当業者に知られているあらゆる技術を使用して達成することができる。典型的に、第一の反応領域から抽出される反応混合物は、未反応の1,1,3-トリクロロプロペン、未反応の塩素、及び1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを含むであろう。代替として、第一の反応領域に供給される塩素の量を制御する(すなわち制限する)ことによって1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの形成の制御が達成される場合、第一の反応領域から抽出される反応混合物に含まれる塩素の濃度は、非常に低く、例えば約1%以下、約0.5%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.01%以下である。
未反応の1,1,3-トリクロロプロペンを含む反応混合物が第一の反応領域から抽出される本発明の実施形態において、第一の反応領域から抽出された反応混合物中に存在する、過半の相当な割合であるが全部ではない未反応の1,1,3-トリクロロプロペンが1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに変換される主要な転化工程を工程3-a)で行ってもよく、このようにして、主要な反応領域から抽出される1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を生じる。1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物は、未反応の1,1,3-トリクロロプロペン出発物質、及び1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン生成物を含んでもよい。
そのような実施形態において、反応混合物は塩素をさらに含んでもよい。更に又は代替として、塩素を主要な反応領域に供給して、塩素化反応が進行することを可能にしてもよい。
主要な反応領域から抽出される1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物中に存在する1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比が、約95以下:5、約93以下:7、約91以下:9、約90以下:10、又は約87.5以下:12.5であるように、1,1,3-トリクロロプロペンから1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンへの転化率を制御する。
更に又は代替として、主要な反応領域から抽出される1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物中に存在する1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比が、約70超:30、約75超:25、約80超:20、又は約85超:15であるように、1,1,3-トリクロロプロペンから1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンへの転化率を制御する。
主要な反応工程を行う本発明の方法の工程3-a)の特定の実施形態において、主要な反応領域から抽出される1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物中に存在する1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比は、第一の反応領域から抽出される反応混合物におけるモル比より大きい。言い換えれば、出発物質から生成物への転化率は、第一の反応領域から抽出される反応混合物への転化率よりも、主要な反応領域から抽出される生成物への転化率の方が高い。
1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物が使用され又は生じる本発明の方法の工程3-a)において、上記で概説した1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンの比率を有してもよい。
主要な反応領域の1,1,3-トリクロロプロペンの転化率を注意深く制御することで、本発明の方法の工程3-a)における不純物の製造が最小化されることが予想外にも分かった。反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの濃度は、例えば、i)主要な反応領域から、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを除去することによって(あるいは具体的には、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を抽出することによって)、ii)主要な反応領域の反応条件(例えば温度、光への曝露、及び/又は圧力)を制御することによって、及び/又はiii)主要な反応領域に存在する1,1,3-トリクロロプロペン及び/又は塩素の量を制御することによって、制御してもよい。
主要な反応領域に存在する(例えば直接そこに供給される、及び/又は反応混合物中の成分として存在する)塩素の量を制御することによって、工程3-a)における1,1,3-トリクロロプロペンから1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンへの転化率を制御する(すなわち制限する)本発明の実施形態において、得られる1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物中の塩素含量は非常に低く、例えば約1%以下、約0.5%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、又は約0.01%以下である。
この主要な転化工程は、典型的には、第一の反応領域の下流の一つ又は複数の主要な反応領域で起こる。あらゆる数の反応領域、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれより多い主要な反応領域を、本発明の方法で使用してもよい。
1,1,3-トリクロロプロペンから1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンへの転化につながるあらゆる条件を、本発明の方法の工程3-a)の主要な転化工程で使用してもよい。本発明の実施形態において、主要な転化工程は、低温転化工程を含んでもよい。そのような工程を行う場合、抽出された反応混合物の温度の低減は、低減された温度(例えば約-30℃~約30℃、約-25℃~約10℃、又はより好ましくは-20℃~-10℃)で作動する主要な反応領域内に反応混合物を供給して、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を主要な転化率領域から抽出することによって、好ましくは達成される。
工程3-a)において、1,1,3-トリクロロプロペン、塩素、及び1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを含む反応混合物を低い温度に維持することは、望ましくない不純物の製造を最小化し、選択性及び/又は収率を改善しつつ、1,1,3-トリクロロプロペンから1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンへの転化につながることが予想外に分かった。
したがって、本発明の方法の工程3-a)において、1,1,3-トリクロロプロペン及び1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを含む反応混合物を、約-30℃~約30℃、約-25℃~約10℃、又はより好ましくは約-20℃~約-10℃の温度で作動する主要な反応領域へと供給する低温転化工程を行い、次に1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を主要な反応領域から抽出してもよい。
工程3-a)のある実施形態において、主要な反応領域内の反応混合物を光(例えば紫外線光)に曝露することは、低温で良好に反応を行う際に有用である。
本発明の側面において、工程3-a)で主要な反応領域へと供給される反応混合物中に存在する1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンの比率は、70以下:30、60以下:40、50以下:50、40以下:60、又は30以下:70、及び/又は5以上:95、10以上:90、20以上:80、又は40以上:60である。
本発明の実施形態において、工程3-a)において、主要な反応領域の作動温度は、単一の冷却作用、又は一つ若しくは複数の主要な反応領域を連続して低温で作動させる一連の冷却作用で達成してもよい。一つ又は複数の主要な反応領域を低減された温度で作動させることは、当業者に知られているあらゆる技術を使用して達成することができる。
工程3-a)の低温転化工程は、好ましくは、第一の反応領域の下流の一つ又は複数の主要な反応領域で行われる。例えば、低温転化工程が単一の冷却作用を必要とする場合、低温転化工程は単一の主要な反応領域内で行ってもよい。低温転化工程が一連の冷却作用を必要とする場合、低温転化工程は単一の主要な反応領域内で、又は複数の主要な反応領域内で達成されてもよい。
本発明の実施形態において、工程3-a)において、反応混合物は、主要な反応領域内に、反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの必要な濃度を達成するのに十分な条件でしばらく維持される。
一つ又は複数の主要な反応領域は、大気圧より低い、大気圧の、又は大気圧を超える圧力の下で作動させてもよい。更に又は代替として、一つ又は複数の第一の及び/又は主要な反応領域は、光、例えば、可視光及び/又は紫外線光に暴露してもよい。
本発明の実施形態において、工程3-a)において、主要な反応領域での反応混合物の滞留時間は、約30分~300分、約40分~約120分、又は約60分~約90分である。
本発明の実施形態において、主要な反応領域で行われる反応は液相であり、すなわち、そこに存在する反応混合物は主に又は完全に液体である。
本発明の実施形態において、工程3-a)において、第一の反応領域から抽出される反応混合物は、主要な転化工程を直接受ける。代替の実施形態において、抽出された反応混合物は、主要な転化工程を受ける前に、一つ又は複数の前処理工程を受ける。
本発明の実施形態において、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの所望の濃度を達成するために、主要な転化工程は、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を、高温、例えば、約20℃以上、約30℃以上、約40℃以上、約50℃以上、又は約60℃以上に加熱することを含んでもよい。
このようにして1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を加熱することは、単一の加熱工程で達成してもよい。代替として、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物は、連続的な高温での一連の加熱工程を受けてもよい。
上記のように、本発明の方法の工程3-a)において、異なる反応領域を、異なる温度、圧力で、並びに/又は異なる種類及び/若しくは強度の光に曝露して、作動させてもよい。例えば、一つ又は複数の第一の反応領域から抽出した反応混合物を、低温転化工程を行う第一の主要な反応領域内へ通過させることができる。得られる1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物は、第一の主要な反応領域の下流の第二の主要な反応領域へと通過させて、そこで熱処理又はUV曝露工程を行い、存在する残存する未反応の1,1,3-トリクロロプロペンの大部分を1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンへと変換することができる。代替として、低温転化工程、並びに加熱及び/又はUV曝露工程の全てを、主要な反応領域内で行うことができる。
したがって、本発明の方法の工程3-a)において、複数の主要な反応領域を順番に使用してもよい。理解し易いように、これらは、上流の主要な反応領域及び下流の主要な反応領域として特徴付けてもよく、これらの領域が順番に作動する場合、上流の主要な反応領域は下流の主要な反応領域の上流にある。
そのような実施形態において、あらゆる数の上流の主要な反応領域及び/又は下流の主要な反応領域、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10、又はこれより多い上流の主要な反応領域及び/又は下流の主要な反応領域があってもよい。
そのような配置を使用する場合、熱処理及び/又は光(例えば紫外線光)への曝露は、上流及び/又は下流の主要な反応領域の一部若しくは全部で行ってもよい。光曝露の強度は、下流の主要な反応領域においてより高くてもよい。更に又は代替として、下流の主要な反応領域で反応混合物が暴露される光の波長は、上流の主要な反応領域の波長より低くてもよい。
本発明の特定の実施形態において、加熱処理及び/又は光曝露工程は、下流の主要な反応領域のみで行ってもよい。
本発明の方法の工程3-a)の一つの利点は、第一の及び/又は主要な反応領域が連続的工程で作動させるか、又はバッチ式工程で作動させるかに関わらず、所望の結果が得られるということである。用語「連続的工程」及び「バッチ式工程」は当業者であれば理解するであろう。
当業者に知られているあらゆる種類の反応器を、本発明の方法の工程3-a)で使用してもよい。一つ又は複数の第一の反応領域及び/又は一つ又は複数の主要な反応領域を提供するために用いてもよい反応器の具体例は、カラム反応器(例えばカラム気液反応器)、管反応器(例えば管型気相反応器)、気泡塔反応、栓流反応器、及び撹拌槽反応器、例えば連続撹拌槽反応器である。
本発明の工程3-a)で使用される反応器は、それぞれ異なる流動パターン及び/又は異なる作動温度/圧力を有する異なる領域に分割されてもよい。例えば、複数の主要な反応領域を含む反応器で、主要な転化工程を行ってもよい。それらの領域は、異なる温度及び/又は圧力で作動してもよい。例えば、主要な転化工程が低温転化工程である実施形態において、主要な反応領域は、連続的に低温で作動してもよい。
更に又は代替として、本発明の方法の工程3-a)で使用される反応器に、外部循環ループを提供してもよい。外部循環ループに、冷却手段及び/又は加熱手段を任意に提供してもよい。
当業者であれば認識するように、工程3-1)において、反応領域は、冷却/加熱部材、例えば冷却チューブ、冷却ジャケット、冷却スパイラル、熱交換器、加熱ファン、加熱ジャケット等を用いることにより、異なる温度に維持することができる。
本発明の方法の工程3-a)において使用される第一の及び/又は主要な反応領域の一部又は全部は、(天然又は人工的に発生させた)可視光、紫外線光に暴露してもよく、及び/又は暗闇で作動させてもよい。
溶液、液体及び/又は気体のいずれかの形態の塩素を、一つ又は複数の主要な反応領域へと供給してもよい。1,1,3-トリクロロプロペンもまた、必要であれば、更に又は代替的に、一つ又は複数の主要な反応領域へと供給してもよい。
当業者であれば、特定の実施形態において、本発明の方法の任意の段階で利用される反応領域は、撹拌手段、例えば攪拌、従動部、流れ誘導(flow channeling)手段等を必要とすることがあり、本発明の方法の第一の及び/又は主要な反応領域においてそのような手段を使用することが想定されることを認めるであろう。第一の及び/又は主要な反応領域は、反応混合物の異なる種類の流れで作動してもよい。
本発明の方法の工程3-a)で使用される第一の及び/又は主要な反応領域は、単一又は複数の反応器内に位置してもよい。したがって、例えば、本発明の実施形態において、第一の反応領域の全ては、単一の反応器、例えばカラム液気反応器内の異なる反応領域であってよい。
代替として、第一の反応領域は、異なる反応器(例えば、一連の連続撹拌槽反応器)内であることができ、又は更には異なる種類の反応器内であることができる(例えば、一つ又は複数の第一の反応領域は、連続撹拌槽反応器内にあることができ、かつ更なる一つ又は複数の第一の反応領域は、管型反応器内にあることができる)。
本発明の方法の工程3-a)で使用される反応領域は、異なる圧力及び/若しくは温度で作動させてもよく、並びに/又はその中の反応混合物の流れが異なってもよい(例えば流れの強度/方向が異なってもよい)。
本発明の方法の工程3-a)で使用される反応領域は、順番に(例えば反応混合物が、最初の上流の反応領域から任意に中間反応領域を介して最後の下流の反応領域へと通過して)作動させてもよく、及び/又は並列で作動させてもよい。
工程3-a)において、反応領域を、順番に異なる温度及び/又は圧力で作動させる実施形態において、反応領域の一部若しくは全部の温度及び/又は圧力は、連続的に増加又は低減してもよい。
本発明の方法の工程3-a)で使用される反応領域の一つ、いくつか、又は全ては、大気圧より低い、大気圧の、又は大気圧を超える圧力で作動させてもよい。
本発明の方法の工程3)を作動させるために使用される装置(又は少なくとも、反応混合物及び/又は生成物の流れと接触するそれらの部分)が特定の材料を含まない場合、塩化アルカン分解生成物の形成を最小化することができることが予想外にも分かった。
したがって、本発明の方法の工程3)において、工程を行うための装置は、装置に使用される1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン及び/又は1,1,3-トリクロロプロペンと接触する装置のそれらの部分に含まれる鉄が、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、又は約1%未満であるように構成される。
本発明の方法の工程3)のそのような実施形態において、方法を行うための装置は、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン及び/又は1,1,3-トリクロロプロペンと接触する装置のそれらの部分が、フルオロポリマー、フルオロクロロポリマー、ガラス、エナメル、フェノール樹脂含浸黒鉛、炭化ケイ素、及び/又はフルオロポリマー含浸黒鉛から製造されるように構成される。ガラス、PVDF、ETFE、及びハステロイの組合せを使用して、例えば、反応混合物に提供すべき可視光又は紫外光の必要条件を提供しつつ、例えば腐食及び温度などの他の問題を制御することを保証するという、効果の組合せを達成してもよい。
本発明の方法の工程3-a)において、主要な反応領域は栓流反応器内にある。そのような装置を使用する利点は、逆流混合を最小化又は防止するよう反応器を構成することができるということである。
上記で概説した処理工程は、不純物、特に1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンから除去することが困難なそれらの不純物の形成を最小にする。
第一の反応領域から抽出される反応混合物、又は主要な反応領域から得られる1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物の純度を最大にするために、本発明の方法の工程3-b)において、更なる精製工程を実施してもよい。例えば、一つ又は複数の蒸留工程を行ってもよい。そのような蒸留工程は、低温/減圧条件で行ってもよい。
更に又は代替として、本発明の方法の工程3-b)において、一つ又は複数の加水分解工程を行ってもよい。反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物(典型的には、1,1,3-トリクロロプロペンと、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンと、酸素化有機化合物を含む不純物とを含む混合物)が加水分解工程を受ける実施形態において、これは、第一の反応領域から抽出される反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を、加水分解領域内で水性媒体に接触させることを典型的に含む。加水分解工程で使用してもよい水性媒体の例としては、水、水蒸気、及び水性酸が挙げられる。
加水分解は、あるとすれば一つ又は複数の加水分解反応が進行することができるような適切な条件で行われる。
工程3-b)で加水分解工程を行うことは、反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物中に存在する酸素化有機化合物の含有量を低減するので好ましい。酸素化有機化合物の例としては、塩化アルカノール、塩素化酸塩化物、塩素化酸、又は塩素化ケトンが挙げられる。
加水分解工程を行う本発明の実施形態において、そのような工程を受けた反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物に含まれる酸素化有機化合物は、約500ppm以下、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、又は約10ppm以下であってよい。
したがって、本発明の実施形態において、工程3-b)は、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、1,1,3-トリクロロプロペン、及び酸素化有機化合物を含む(任意の上流処理から獲得できる)混合物から、酸素化有機化合物を除去することを含み、該除去することは、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を水性処理領域へと供給することと、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を水性媒体と接触させて混合物を生じることと、i)その混合物から有機相を、又はii)その混合物から1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの流れを抽出することを含み、有機相/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの流れに含まれる酸素化有機化合物の濃度は、水性処理領域に供給された1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物と比較して低減されている。
工程3-b)で加水分解工程を行う本発明の方法において、水性処理領域に供給される反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物に含まれる塩素は少なく、例えば、約0.8%以下、約0.5%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、又は約0.01%以下であってよい。誤解を避けるため、この文脈において塩素に言及する場合、これは遊離塩素、未反応の塩素、及び溶解した塩素を包含する。塩素以外の原子に結合している塩素は考慮すべきでない。
本発明の実施形態において、加水分解領域は洗浄槽内にある。そのような実施形態において、反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を、水及び/又は水蒸気で洗浄してもよい。
工程3-b)において、加水分解領域で反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を水性媒体と接触させて混合物が形成されたら、その混合物は、一つ又は複数の処理工程を受けてもよい。例えば、反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物の成分(例えば、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、及び/又は未反応の1,1,3-トリクロロプロペン)は、例えば、好ましくは減圧及び/又は低温下の蒸留を介して水性処理領域で形成される混合物から抽出することができる。そのような工程は、混合物が水性処理領域に存在する間に達成することができる。更に又は代替として、混合物は、まず水性処理領域から抽出され、その領域から離れて抽出工程を受けてもよい。
更に又は代替として、本発明の実施形態において、工程3-b)における水性処理領域内で二相混合物が成形されてもよい。そのような実施形態において、反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物からの1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを少なくとも含む有機相を水性廃棄相から分離する相分離工程を行ってもよい。これは、水性処理領域から相を逐次的に抽出することによって達成してもよい。代替として、水性処理領域から二相混合物を抽出して、水性処理領域から離して相分離工程を行い、有機相を抽出することができる。
有機相を任意に濾過した後に蒸留して、精製された1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン及び/又は1,1,3-トリクロロプロペンを含む流れを得てもよい。1,1,3-トリクロロプロペンは、一つ又は複数の第一の及び/又は主要な反応領域へとリサイクルしてもよい。精製された1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンは、高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン生成物であってもよい。
更に又は代替として、本発明の方法の工程3-b)で上記に概説したように、有機相は、更なる加水分解工程を受けることができる。加水分解工程は、必要であれば、例えば、1回、2回、3回、又はそれより多く繰り返すことができる。
本発明の実施形態において、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを含む混合物(例えば第一の反応領域から得られる反応混合物、主要な反応領域から得られる1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物、水性処理領域において形成される混合物、及び/又は二相混合物から抽出した有機相)は、工程3-b)において、好ましくは約100℃以下、約90℃以下、又は約80℃以下の温度で行われる蒸留工程を受けることができる。
そのような蒸留工程は減圧下で行ってもよい。減圧蒸留を行う場合、減圧条件は、蒸留を低温で行うよう、及び/又はより高分子量のクロロアルカンの抽出を促進するように選択してもよい。
本発明の実施形態において、工程3-b)において、本発明の方法で行われるあらゆる蒸留工程は、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、又は少なくとも約99.9%のi)1,1,3-トリクロロプロペン、及び/又はii)1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを含む流れにつながってもよい。本明細書で用いる用語「流れ」は、使用する装置又は得られる組成物の形態に関わらず、あらゆる蒸留工程から得られる組成物を包含するよう広く解釈すべきである。高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの流れは、工程3-b)の高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン生成物であってもよい。
当業者に知られているあらゆる蒸留設備、例えば蒸留ボイラー/カラムの配置を、本発明の方法の工程3-b)で使用することができる。しかしながら、特定の材料で形成された蒸留装置を回避すると、塩化アルカン分解生成物の形成を最小にすることができることが予想外にも分かった。
したがって、本発明の実施形態において、工程3-b)は、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を(それを得た方法に関係なく)蒸留する工程を含み、該工程では蒸留装置を使用し、蒸留装置は、蒸留装置の使用中にプロセス流体(液体又は蒸留物を含む)と接触する部品であって、鉄を約20%以上、約10%以上、約5%以上、約2%以上、又は約1%以上含む部品を含まない。
工程3-b)で一つ又は複数の蒸留工程を行う本発明の実施形態において、蒸留装置は、蒸留装置の使用中に蒸留物又は処理流体と接触する部品の全てが、フルオロポリマー、フルオロクロロポリマー、ガラス、エナメル、フェノール樹脂含浸黒鉛、炭化ケイ素、及び/又はフルオロポリマー含浸黒鉛から製造されるように構成されていてもよい。
本発明の方法の工程3-b)の一部として蒸留工程を行う場合、そのような工程で得られる1,1,3-トリクロロプロペンを含む流れを、一つ又は複数の第一の及び/又は主要な反応領域へとリサイクルして供給してもよい。
本発明の方法は、当業者によく知られている単純で直接的な技術及び設備を使用して、高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを製造することができるので、特に有利である。
本発明の実施形態において、本発明の工程3)の方法を用いて、以下を含む高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを生じることができる:
・少なくとも約95%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、少なくとも約99.9%、又は少なくとも約99.95%の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、並びに以下の一つ又は複数:
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、若しくは約10ppm以下の酸素化有機化合物、
・約500ppm未満若しくは以下、約250ppm以下、若しくは約100ppm以下の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの異性体、
・約500ppm未満、約250ppm以下、若しくは約100ppm以下の非異性体アルカン不純物、
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、若しくは約50ppm以下の塩化アルケン、
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、若しくは約50ppm以下の水、
・約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、若しくは約10ppm以下の塩素の無機化合物、
・約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、若しくは約10ppm以下の臭素化有機化合物、及び/又は
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、若しくは約5ppm未満の鉄。
誤解を避けるため、用語「塩素の無機化合物」は、塩素(Cl2)、塩化水素、及びホスゲンなどの塩素を含む非有機的化合物を包含する。
本発明の実施形態において、組成物に含まれる1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン以外の有機化合物は、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満であってよい。更に又は代替として、組成物に含まれる1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン以外の有機化合物の合計は、約0.5%未満、約0.3%未満、約0.1%未満であってよい。
ここに提供される本開示から分かるように、本発明の工程1)、2)、及び3)の創意的工程は、任意に他の方法と組み合わせて、完全に連続的な型式の統合処理で行われる。本発明の処理工程は、高純度中間体に変換される出発化合物を使用してもよく、高純度中間体はそれ自身が必要な目標の塩化化合物へと更に処理される。それらの化合物は、様々な下流プロセス、例えば他の(高純度)塩化アルケン(例えばテトラクロロプロペン)の製造、又はヒドロフルオロ転化のための原料として使用するのに必要な純度を有する。
従来技術は、そのような高純度及び高収率を有し、選択的な反応でクロロアルカンを生じる方法を開示も教示もしていない。したがって、本発明の更なる態様によれば、上記で提示した高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン組成物が提供される。
さらに、本発明の方法の工程3)の生成物に対応する不純物プロフィールを有する組成物は、フルオロアルカン若しくはフルオロアルケンの合成、及び/又はクロロフルオロアルケン若しくはさらには塩化アルケンの合成の出発物質として使用するのに特によく適している。したがって、本発明のさらに別の側面において、上記に特定したフルオロアルカン/フルオロアルケン及び/又はクロロフルオロアルケン若しくはクロロアルケンの合成の原料としての、本明細書で概説される高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン組成物の使用が提供される。本発明のこの側面の一実施形態において、組成物を用いて、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を製造してもよい。本発明のこの側面の他の実施形態において、組成物を用いて、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233xf)を製造してもよい。本発明のこの側面のさらに別の実施形態において、組成物を用いて、1,1,2,3-テトラクロロプロペン(HFO-1230xa)を製造してもよい。
本発明の方法の好ましい実施形態の主要な利点は、以下に掲げることができる:
-含まれる全体的な不純物が非常に少なく保たれた単一の高品位中間体及び最終製品が得られるような、反応プロセスの制御の程度;
-全ての処理反応工程は極めて異性体選択的であり、高い出発物質利用率、並びに非常に純粋な中間体及び最終製品の両方につながる;
-中間体及び最終製品の質を更に精製する処理工程、特に問題のある酸素化化合物に関する処理工程;
-生成される中間体及び最終製品は有利にも高品質であり、保存又は輸送のための特別な安定化を必要としない;
-方法は、工業的環境で連続的に操作可能である;
-高品位の所望の中間体及び生成物の総収率が高い。
ここで以下の例で本発明を更に示す。誤解を避けるため、本明細書において圧力の単位(kPa)に言及する場合、それは識別される絶対値である。本明細書において値を割合として示す場合、それらは別途記述しない限り質量による割合である。本明細書において、組成物又は材料の純度を割合又はppmで示す場合、別途記述しない限り、これは質量による割合/ppmである。
明確にするため、例1~7は、本発明の方法の工程1)の短鎖重合反応(及びその後の処理工程)を例示する、又は関連するものである。例8~12は、本発明の方法の工程2)の脱塩化水素反応(及びその後の処理工程)を例示する、又は関連するものである。例13~19は、本発明の方法の工程3)の塩素化反応(及びその後の処理工程)を例示する、又は関連するものである。
使用する略語:
TeCPa=1,1,1,3-テトラクロロプロパン
TCPe=1,1,3-トリクロロプロペン
PCPa=1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン
TeCM:テトラクロロメタン
TeCPna:テトラクロロペンタン
HCE=ヘキサクロロエタン
DCPC=ジクロロプロパノイルクロリド
Bu3PO4:リン酸トリブチル
例1-水性処理を使用して回収した触媒の触媒能力の実証
i)従来の蒸留技術を用いて反応混合物から回収した触媒、又はii)本明細書に記載の触媒のための本発明の水性処理工程を用いて反応混合物から回収した触媒のいずれかの存在下、エチレン及び四塩化炭素を反応させて、1,1,1,3-テトラクロロプロパンを製造した。反応混合物は、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(再循環流中に存在)、及びテトラクロロペンタン(四塩化炭素とエチレンとの間の短鎖重合反応の存在下、副生成物として一般に形成される塩化アルカン不純物)をさらに含むものであった。
これらの試験例は、水性処理工程を用いて回収された触媒は従来の蒸留技術を使用して回収された触媒と比較して触媒の性能が著しくより高いことを示した。
ガスクロマトグラフィーを用いて反応の進行を監視した。
バッチ配置
攪拌機、温度測定のためのサーモウェル、及びサンプリング管(弁を有する)を備えた、体積405mLのステンレス鋼オートクレーブに、以下に記載する反応混合物を充填して閉じた。磁気(加熱)攪拌機の上に置いた油浴によって加熱した。計量秤上に置いた10Lのシリンダーから銅キャピラリー管によってエチレンを供給した。オートクレーブ内の気体の雰囲気を、エチレンのフラッシングで置換した。エチレンで5barに加圧した後、オートクレーブを105℃に加熱し、オートクレーブへのエチレン供給源を開いた。エチレン供給源は、最初の10分間手動で制御して(反応温度を112℃に維持し)、その後9barの一定圧力に維持した。反応を、所定時間反応させた。反応器を冷やし、減圧した反応器を開いた後、反応混合物を引き出した。
比較例1-1、及び1-3、及び例1-2、1-4、及び1-5
第一の例において、リサイクルされた触媒として蒸留残渣を直接用いた(比較例1-1)。第二の例において、蒸留残渣を5%の塩酸で抽出し、濾過した有機画分を触媒として用いた(例1-2)。
比較例1-1
63.7%のTeCPa、22.8%のTeCPna、及び7.49%のBu3PO4を含む90.1gの蒸留残渣を、400gのTeCMと混合した。次に、混合物を、5.0gの鉄を加えたオートクレーブ内に導入した。エチレンでフラッシングした後に、混合物をオートクレーブ内で110℃まで加熱した。この温度及び圧力9barのエチレンにて、反応混合物を4.5時間反応させた。3時間後に第一のサンプルを取った。実験終了後に残留したTeCM濃度は、19.7%(3時間後33.0%)であった。
例1-2
63.7%のTeCPa、22.8%のTeCPna、及び7.49%のBu3PO4を含む90.1gの蒸留残渣を、370gの5%のHClで抽出した。底の有機層を濾過し、400gのTeCMと混合した。次に、混合物を、5.0gの鉄を加えたオートクレーブ内に導入した。エチレンでフラッシングした後に、混合物をオートクレーブ内で110℃まで加熱した。この温度及び圧力9barのエチレンにて、反応混合物を4.5時間反応させた。3時間後に第一のサンプルを取った。実験終了後に残留したTeCM濃度は、5.5%(3時間後24.6%)であった。
比較例1-3
テトラクロロメタン及びリン酸トリブチルの濃度が異なることを除いて、比較例1-1で使用したものと同じ条件を使用して、比較例1-3を行った。
例1-4、及び1-5
テトラクロロメタン及びリン酸トリブチルの濃度が異なることを除いて、例1-2で使用したものと同じ条件を使用して、例1-4及び1-5を行った。
比較例1-1、及び例1-2、及び比較例1-3、及び例1-4、及び例1-5の結果を以下の表に示す。認められるように、例1-2、1-4、及び1-5における1,1,1,3-テトラクロロプロパンに変換されたテトラクロロメタンの割合は、比較例1-1及び1-3における割合よりも著しくより高く、このことは、触媒を回収することがシステムに重大な好影響を有するときの水性処理工程の性能を実証した。これは、蒸留物残渣から回収された触媒の高い生存度に起因し、また、そうでなければ反応を遅延させることのある不純物(例えば酸素化不純物)を反応混合物から除去したことにも潜在的に起因する。
連続的配置:
上記のバッチ実験と同じステンレス鋼オートクレーブを、撹拌流連続反応器として使用した。まず、反応器に約455gの反応混合物を充填した。エテンで5barに加圧した後、オートクレーブを105度まで加熱し、原料の連続的供給及び反応混合物の連続的引き出しを始めるとともに、オートクレーブへのエチレン供給源を開いた。
溶解した触媒を含む原料溶液を、ステンレス鋼タンクからオートクレーブへ供給した。タンクは反応器の上に置いてあり、したがって、反応器を供給するためにポンプを用いなかった。反応器及びタンクは、反応の開始を防止するよう選択されたシリンダー内の条件を有するシリンダーからの銅キャピラリーによって分布させたエテン雰囲気下にあった。サンプリング管によって5分毎に反応混合物のサンプリングを行った。反応過程を監視するために、原料及び溶解した触媒を有する容器、エテンのシリンダー、及び引き出された反応混合物を計量した。反応混合物は常に1時間集め、その後収集容器を交換した。
比較例1-6及び1-8、並びに例1-7及び1-9
連続的実験を、水性処理工程とともに、及び水性処理工程なしで行い、リサイクルした触媒(すなわち、蒸留残渣)の活性を比較した。前者の場合では、リサイクルされた触媒として蒸留残渣を直接用いた(比較例1-6)。後者の場合では、蒸留残渣を5%のHClで水性処理した後の反応混合物を、リサイクルされた触媒を含む原料として使用した(例1-4及び1-5)。
比較例1-6
63.7%のTeCPa、22.8%のTeCPna、及び7.49%のBu3PO4を含む587.5gの蒸留残渣を、2200gのTeCMと混合した。この混合物は、78.7%のTeCM、11.8%のTeCPa、5.8%のTeCPnaを含み、連続的配置のための供給流として用いた。反応容器を構成するオートクレーブに、反応混合物及び8gの新しい鉄を充填した。反応は、圧力9barのエチレンを用いて110℃で行った。滞留時間は、2.7時間であった。反応の間に反応したTeCMの量は75~76%であった。
例1-7
63.7%のTeCPa、22.8%のTeCPna、7.49%のBu3PO4を含む蒸留残渣587.5gを、1001.5gの沸騰している5%のHClに、1.5時間以上滴下して加えた。次にこの混合物をストリッピングした。頂部の生成物から有機相を集め、水相を還流として戻した。蒸留残渣の全てを加えた1時間後に蒸留を終了した。ストリッピング後、残渣を200gのTeCMで希釈し、次に分液ロートで分離した。底部の有機相を濾過し、共に蒸留した残渣を2000gのTeCMと混合した。この混合物は、81.2%のTeCM、10.8%のTeCPa、及び5.3%のTeCPnaを含むものであった。それを実験の連続的配置のための供給流として使用した。反応容器(オートクレーブ)に、古い反応混合物、及び8gの新しい鉄を充填した。反応は、110℃、圧力9barのエテンで行った。滞留時間は2.7時間/流速であった。反応時間内で反応したTeCMの量は83~85%であった。
比較例1-8
テトラクロロメタン及びリン酸トリブチルの濃度が異なること以外は、比較例1-6で使用したものと同じ条件を使用して比較例1-8を行った。
例1-9
テトラクロロメタン及びリン酸トリブチルの濃度が異なること以外は、例1-7で使用したものと同じ条件を使用して例1-9を行った。
例2-高純度1,1,1,3-テトラクロロプロパンの調製
アルキル化工程(図1)、第一の蒸留工程(図2)、水性触媒回収工程(図3)、及び第二の蒸留工程(図4)を含む本発明の方法の工程1)に従い、高純度1,1,1,3-テトラクロロプロパンを得てもよい。しかしながら、本発明の方法の工程1)に従って高純度C3~6アルカンを得るのに、これらの全て工程が必要であるわけではないことを理解されたい。
図1に示すアルキル化工程では、エテン及び粒状鉄がライン1及び2を介して連続撹拌槽反応器3へと供給される。エテンは、ノズルとともに提供される浸漬管を介して、気体の形態で、連続撹拌槽反応器3に導入される。粒状鉄の制御された供給は、連続撹拌槽反応器3に供給される。
粒状鉄は、制御された供給を用いて、連続撹拌槽反応器3に断続的に供給される。アルキル化反応が進行すると、粒状鉄が溶けて反応混合物に溶解するので、粒状鉄は継続的添加される。この例では、第一のアルキル化領域に反応混合物の1~2質量%添加して、反応混合物内の粒状鉄の存在を維持することによって、最適な結果が得られることが分かった。これは、第一のアルキル化領域から抽出された反応混合物であって、溶解した鉄の含有量が反応混合物の0.2~0.3質量%である反応混合物につながる。
四塩化炭素は、ライン12を介して、液体形態で連続撹拌槽反応器3に供給される。図示の実施形態では、四塩化炭素の流れを用いて、反応混合物から抽出される気体のエテンをトラップしている。しかしながら、このような四塩化炭素の使用は、本発明において本質的ではなく;四塩化炭素の唯一又は主要な源として、新しい四塩化炭素の供給を、反応器3に供給することができる。
また、リン酸トリブチル/塩化第二鉄触媒は、ライン12を介して連続撹拌槽反応器3に供給される。その流れの中に存在するリン酸トリブチルは、図3に示す(そして、更に詳細に後述する)水性処理工程から部分的に得られ、残部は、システムに加えられる新しいリン酸トリブチルとして提供される。ライン12の流れは、ハロアルカン抽出剤をさらに含む。
図示した実施形態では、連続撹拌槽反応器3内に位置する単一の第一のアルキル化領域が使用されている。当然、必要であれば、複数の第一のアルキル化領域は、例えば、並列及び/又は直列して作動することができる一つ又は複数の連続撹拌槽反応器で行うことができる。
第一のアルキル化領域は、大気圧を超える圧力(5~8barゲージ圧)、及び高温(105℃~110℃)の下、100~120分の滞留時間で作動される。これらの条件は、アルキル化反応で四塩化炭素及びエテンから1,1,1,3-テトラクロロプロパンを形成するように選択される。しかしながら、四塩化炭素から1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの完全な転化は、望ましくない不純物の形成につながるので、望ましくないことが分かった。したがって、四塩化炭素から関心のある塩化C3~6アルカンへの転化率の程度を制御し、本発明のこの実施例においては95%を越えて進行させない。アルキル化反応の進行の制御は、連続撹拌槽反応器内の反応混合物の滞留時間を制御することで、四塩化炭素から1,1,1,3-テトラクロロプロパンへの完全な転化に好ましくない反応条件を用いることによって、部分的に達成される。
i)未反応の四塩化炭素及びエテンと、ii)1,1,1,3-テトラクロロプロパン(本実施例において関心のある塩化C3~6アルカン)と、iii)リン酸トリブチル/塩化鉄触媒とを含む反応混合物を、第一のアルキル化領域(連続撹拌槽反応器3)から抽出して、栓流反応器4(主要なアルキル化領域が位置する)に供給した。
第一のアルキル化領域3に存在する粒状鉄の触媒が抽出されず、したがって、反応混合物が粒状材料を実質的に含まないように、反応混合物を抽出する。更に、図示する実施形態において、栓流反応器4に触媒床を提供してもよいが、更なる触媒を栓流反応器4に加えない。さらに、更なるエテンを栓流反応器4に加えない。
図示する実施形態では、主要なアルキル化領域4の作動圧力は、第一のアルキル化領域3の作動圧力と同じである。反応混合物の滞留時間は約30分であり、これは、図示する実施形態において、存在するエテンの実質的に全てを反応において使い果たすのに十分であった。当然、異なる反応器の種類及び作動条件にとって、異なる滞留時間が最適であってもよいことが理解されよう。
主要なアルキル化領域内の反応混合物が所定の最適な滞留時間に達したとき、ライン5を介して反応混合物をそこから抽出し、高圧及び高温に維持しつつ、フラッシュ蒸発容器6へと供給される。この容器において、抽出された反応混合物は大気圧へと減圧される。この圧力低下は、反応混合物中に存在するエテンの蒸発を引き起こす。このときエテンが実質的に存在しない1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む混合物を、ライン7を介してフラッシュ容器から抽出し、図2に示し及び更に以下詳細に述べる蒸留工程を行う。
蒸発したエテンは、ライン8を介してフラッシュ容器6から抽出され、コンデンサ9を通して供給される。次に、エテンはライン10を介して吸収塔11に供給され、そこでエテンを四塩化炭素及びリン酸トリブチル/塩化鉄触媒の流れと接触して、以下更に詳細に述べる図3に示す水性処理工程の反応混合物から回収される。回収された触媒/四塩化炭素の流れ13は冷却器14を通過し、次にライン15を介して吸収塔11に供給される。
吸収塔11を通る冷却された四塩化炭素/触媒の流れは、エテンをその中にトラップする効果を有する。得られる四塩化炭素/触媒/エテンの液流は、次に連続撹拌槽反応器3に供給され戻される。
図1から明らかなように、図示する実施形態は、いくつかの理由により有利なエテンリサイクルループを含む。第一に、エテンのほぼ完全な利用が達成され、したがって、システムから失われるエテンの量が非常に少ない。更に、エテンリサイクルシステムの部品に必要なエネルギー量もまた少ない。更に、システムから失われるエテンの量が非常に少ないことは、環境的負担が低減されることを意味する。
ここで図2に戻って、図1において符号7で示すフラッシュ容器から抽出された1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む混合物は、ライン101を介して、減圧蒸留塔104と連通して作動するバッチ蒸留ボイラー102へと供給される。蒸留ボイラーは、90℃~95℃の温度で作動している。ボイラー102に供給される混合物中に存在するクロロアルカンを、蒸留塔104(及び下流のコンデンサ106及び還流分割機108)を用いて蒸発させ、軽い最終物の流れ110.1と、四塩化炭素の流れ110.2と、テトラクロロエテンの流れ110.3と、精製された1,1,1,3-テトラクロロプロパン生成物の流れ110.4とに分離する。
軽い最終物及びテトラクロロエテンの流れ110.1及び110.3を四塩化炭素の製造に使用して、有利に廃棄生成物の製造を最小化してもよい。これは、高温塩素化分解処理を用いることにより達成することができる。
四塩化炭素の流れ110.2は、図1において符号3で示す連続撹拌槽反応器内へとリサイクルして戻される。精製された1,1,1,3-テトラクロロプロパン生成物の流れ110.4をシステムから抽出して、輸送のために保存してもよく、又は出発物質として純粋な1,1,1,3-テトラクロロプロパンを必要とする下流プロセスで使用してもよい。
1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富み触媒も含む混合物は、ライン103を介してボイラー102から残渣として抽出され、図3に示す触媒回収工程を受ける。
その工程では、ライン201を介した弱(1~5%)塩化水素酸溶液とともに、1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む混合物を、ライン202を介してバッチ蒸留ボイラー204に供給する。
有利にも、酸溶液中に存在する水は触媒系を非活性化し、それを熱的なダメージから保護する。これは、触媒系を1,1,1,3-テトラクロロプロパンに富む混合物から回収することを可能にし、触媒的活性を著しく低下させることなく、容易に再活性化し、後回収し、アルキル化工程に再利用することができる。
バッチ蒸留ボイラーを約100℃の温度で作動させて、1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び水蒸気を含む気体混合物を作製する。
ボイラー204で生じる気体混合物は、ボイラー204に連結されたカラム210で粗製1,1,1,3-テトラクロロプロパンの水蒸気蒸留(又は水蒸気ストリッピング)を受ける。粗製1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、ライン211を介して蒸留塔210から抽出され、コンデンサ212で凝縮され、還流液-液分離器214へとライン213を介して供給される。気体混合物からの水は、ライン215を介して蒸留塔210に供給されて戻り、一部は、図4において更に詳細に示され以下更に詳細に述べる更なる蒸留工程のために、ライン216を介して除去される。
ボイラー204の作動温度を低下させて水蒸気蒸留を止め、そこに存在する水蒸気の凝縮につながる。これは、水相と、水蒸気蒸留を受けていない触媒系を含む有機相とを含む、二相混合物の形成につながる。有機相の抽出を促進するために、ハロアルカン抽出剤(この場合、1,1,1,3-テトラクロロプロパン)を、ライン203を介してボイラー204へと加えて、その相の体積を増加させる。
二相混合物からの有機相の抽出は、ライン205を介してボイラー204から相を逐次的に抽出することによって達成される。有機相は、ライン205を介してボイラー204から抽出され、濾過される206。濾過ケーキは、ライン207を介してフィルター206から除去される。有機相はライン208を介して抽出され、この実施形態において、図1に示すように、具体的には図1のライン13を介して、第一のアルキル化領域へと供給され戻される。水相はライン205を介して抽出されて、フィルター206を通り、ライン209を介して廃棄される。
除去された粗製1,1,1,3-テトラクロロプロパン生成物は、図4に示す更なる蒸留工程を受ける。その工程において、粗製生成物は、ライン301を介して蒸留ボイラー302に供給される。ボイラー302は、蒸留塔304と連通している。粗製1,1,1,3-テトラクロロプロパン中に存在する蒸発した塩化有機化合物は、蒸留塔304(及び関連する下流の装置、コンデンサ306及び還流分割機308)において、精製された1,1,1,3-テトラクロロプロパン生成物の流れ310.1と、塩化ペンタン/ペンテンの流れ310.2とに分離される。
塩化ペンタン/ペンテンの流れ310.2を四塩化炭素の製造に使用して、有利に廃棄物生成物の製造を最小化してもよい。これは、高温塩素化分解処理を用いることにより達成することができる。
精製された1,1,1,3-テトラクロロプロパン生成物の流れ310.1をシステムから抽出して、主要な生成物の流れ(図2において符号110.4で識別される)と組み合わせてもよい。生成物は、輸送のために保存してもよく、又は出発物質として純粋な1,1,1,3-テトラクロロプロパンを必要とする下流プロセスで使用してもよい。
ライン303を介してボイラー302から抽出される重い最終物の残渣は廃棄されるか、又は更に処理されるかのいずれかである。
上記で概説した装置及び処理条件を使用して、2635kgの四塩化炭素(CTC、純度99.97%)を平均毎時供給78.2kg/hで連続的に処理して、1,1,1,3-テトラクロロプロペン(1113TeCPa)を製造した。例2に従って実施した、開示した方法の基本的パラメータは以下のとおりであった。
上述の実施形態の精製された生成物の完全な不純物プロフィールを以下の表に示す。数値は、図2のライン110.4、及び図4のライン310.1で得られた生成物についてのプロフィールの加重平均として与えられる点に留意されたい。
例3:反応混合物中の出発物質:生成物のモル比の選択性に対する影響
これらの例は、別途述べない限り、例1の「連続的配置」における上記に概説した設備及び技術を用いて実施した。反応混合物中の塩化C3~6アルカン生成物(この場合、1,1,1,3-テトラクロロプロパン):四塩化炭素のモル比を、主にアルキル化領域における反応混合物の滞留時間によって、異なるレベルに制御した。温度は110℃に維持し、圧力は9barに維持した。関心のある生成物への選択性を、以下の表に報告する。
この例から分かるように、方法を連続的に行い、生成物:出発物質のモル比が95超:5である場合、関心のある生成物への選択性が顕著に減少した。
例4:反応混合物中の出発物質:生成物のモル比の選択性に対する影響
これらの例は、別途述べない限り、上記の例2に伴う記載に関して図1に図示するような設備及び技術を使用して行った。反応混合物中の塩化C3~6アルカン生成物(この場合、1,1,1,3-テトラクロロプロパン):四塩化炭素のモル比を、主にエチレン出発物質の流速を制御することによって異なるレベルに制御した。温度は、常に110℃であった。関心のある生成物への選択性を以下の表に報告する。
この例から分かるように、方法を連続的に行い、生成物:出発物質のモル比が95超:5である場合、関心のある生成物への選択性が顕著に減少した。
例5:原料純度の効果
これらの例は、別途述べない限り、上記の例2に伴う記載に関して図2に図示するような設備及び技術を使用して行った。試験5-1は、図2の流れ110.4から得られた流れである。試験5-2~5-5は、同じ装置及び技術を使用したが、しかしながら異なる純度の原料を使用して得られた代替の例である。以下のデータは、試験5-2~5-5において低純度の原料を使用したにも関わらず、本発明の方法の工程1)から得られた場合、有利にも生成物純度に著しい影響を与えないことを実証する。
例6:CTSR及び押出し流れの組合せ
これらの例は、別途述べない限り、上記の例2に伴う記載に関して図1に図示するような設備及び技術を使用して行った。第二の押出し流れ反応器(図1の符号4)における反応の効率を評価した。2つの試験は、主要なCSTR反応器(図1の符号3)と同じ温度110℃で作動する押出し流れ反応器の入口において量が異なる溶解したエチレンを用いて行った。結果を以下の表に示す。
この例から分かるように、押出し流れ反応器において、エチレンの転化率は75~93%であった。したがって、押出し流れ反応器を使用する場合、反応区画においてより効率的にエチレンが利用される。一連の押出し流れ反応器は、錯体及び不経済なエチレン回収方法を必要とせずに、CSTR反応器を最適な圧力で作動することを可能にする。したがって、一連の押出し反応器は、効率的な閉じたループでエチレンの使用を制御する。
例7:従来の蒸留の間の触媒配位子の問題ある分解
コンデンサ、温度計、加熱浴、及び減圧ポンプシステムを備える、2リットルのガラス蒸留四口フラスコからなる分留設備を組み立てた。まず、蒸留フラスコに、図1に示し上記例2に伴う記載で説明した装置及び技術を用いて得た反応混合物を1976グラム充填した。
蒸留の間、圧力は、初期圧力100mmHgから最終圧力6mmHgまで次第に低減させた。この間、1792グラムの蒸留物を(異なる画分で)抽出した。蒸留の間、目視できるHCl気体の形成があり、さらにクロロブタン(リン酸トリブチル配位子から分解した生成物)もまた、著しい量、すなわち蒸留物画分の1~19%で成形された。これらが観察されるとすぐに蒸留を中断し、蒸留残渣を計量及び分析したところ、16%のテトラクロロプロパンを含むことがわかった。リン酸トリブチル配位子を著しく分解することなく蒸留を続けることはもはやできなかった。
例8-1,1,1,3-テトラクロロプロパンから1,1,3-トリクロロプロペンの製造
図5は、本発明の工程2)の方法を行うために用いることができるシステムの模式図を示す。1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び塩化第二鉄は、ライン401及び402を介して、連続撹拌槽反応器403に加えられる。塩化第二鉄の添加は、制御された供給を使用して行う。連続撹拌槽反応器は、140℃~145℃の温度及び大気圧で操作される。
1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、連続撹拌槽反応器403内で1,1,3-トリクロロプロペンに変換され、それは脱塩化水素化領域の役割を果たす。1,1,1,3-テトラクロロプロパンから1,1,3-トリクロロプロペンへの過剰な転化を防止するために、反応器403における反応混合物の滞留時間を制限し、したがって、1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比は50以下:50である。
1,1,3-トリクロロプロペンの一部は、蒸留塔408を用いることにより反応混合物から抽出される。反応混合物は蒸留塔408の底部に供給され、1,1,3-トリクロロプロペンに富む流れがライン409を介して頂部蒸気として引き出される。分縮器410は、1,1,3-トリクロロプロペンに富む流れから、ライン411を介して気体の塩化水素を抽出するよう機能する。1,1,3-トリクロロプロペンに富む流れは、次にライン412を介して還流分割機413へと供給され、精製された1,1,3-トリクロロプロペンの流れがライン415を介して取り除かれる。1,1,3-トリクロロプロペンに富む流れの一部は、ライン414を介して蒸留塔408へと還流として供給され戻される。
触媒、未反応の1,1,1,3-テトラクロロプロパン、及び限定量の1,1,3-トリクロロプロペンを含む混合物は、反応器403からライン404を介してフィルター405へと抽出される。得られる濾過ケーキはライン406を介して抽出され、濾液は、図6に示すような水性処理ためにライン407を介して通過する。
図6において、図5の反応器からの混合物は、ライン502を介して、ストリッピングボイラーを含む洗浄タンク505へと供給される。より良好な液相分離効率のために、1,1,1,3-テトラクロロプロパン又は他のハロアルカン抽出剤が、ライン503を介して洗浄槽に供給される。水性塩酸はライン501を介して洗浄槽505に供給される。
二相混合物が槽505に成形され、有機相は槽505からライン506を介して抽出され、濾過され507、図7に示すような更なる処理のためにライン509を介して取られる。残留する水相は、更なる処理のためにライン510を介して抽出される。濾過ケーキは抽出される(508)。
洗浄槽505に存在する水性層に溶解した1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び1,1,3-トリクロロプロペンは、水蒸気蒸留塔511によってそこから抽出される。除去されたクロロアルカンは、蒸留塔511からライン512を介してコンデンサ513へ、次にライン514を介して還流液-液分離器515へと通過し、そこで二層が形成される。除去された1,1,1,3-テトラクロロプロパンは、次にライン517を介して有機相として取り除かれ、水相はライン516を介して蒸留塔へと還流され戻される。
図7を参照すれば、有機相はライン601を介して蒸留ボイラー602へと供給される。1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び1,1,3-トリクロロプロペンは、成形された混合物から、蒸留塔607、コンデンサ609、及び還流分割機611を使用して抽出され、1,1,3-トリクロロプロペン613.1、及び1,1,1,3-テトラクロロプロパン613.2の画分を生じる。1,1,1,3-テトラクロロプロパンの画分は、脱塩化水素化領域へとリサイクルされて戻り、1,1,3-トリクロロプロペンの画分は、その塩化アルケンを出発物質として使用する下流の反応に使用するために保存又は輸送される。
重い最終物の残渣は、ライン603を介してボイラー602から抽出されて濾過される604。得られる濾過ケーキ及び液体残渣は、それぞれライン605及び606を介して抽出され、リサイクル又は処理される。
上記で概説した装置及び処理条件を使用して、3563kgの1,1,1,3-テトラクロロプロパン(1113TeCPa、純度99.925%)を平均毎時供給63.1kg/hで連続的に処理して、1,1,3-トリクロロプロペン(113TCPe)を生じる。例8に従って実施した、開示された方法の基本的パラメータは以下のとおりであった。
上述の実施形態の精製された生成物の完全な不純物プロフィールを以下の表に示す。数値は、図5のライン415及び図7のライン613.1で得られた生成物に関するプロフィールの加重平均として与えられる。
認められるように、本発明の方法の工程2)は、高純度塩化アルケン材料を生じるよう作動させることができる。
例9-1,1,1,3-テトラクロロプロパンから1,1,3-トリクロロプロパンの製造
この例は、別途述べない限り、上記の例8で使用した装置及び技術を使用して行った。連続撹拌槽反応器は、温度149℃、及び大気圧で作動させた。反応器における1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比を、30以下:70に制御した。上記の例8で概説した装置及び処理条件を使用して、1543.8kgの1,1,1,3-テトラクロロプロパン(1113TeCPa、純度99.901%)を平均毎時供給47.5kg/hで連続的に処理して、1,1,3-トリクロロプロペン(113TCPe)を生じた。触媒をFeCl3水溶液の形態で加え、原料1113TeCPaに基づいて66ppmの触媒含有量を提供した。例8に従って実施した、開示された方法の基本的パラメータは以下のとおりであった。
上述の実施形態の生成物の完全な不純物プロフィールを以下の表に示す。数値は、図5のライン415及び図7のライン613.1で得られた生成物に関するプロフィールの加重平均として与えられる。
認められるように、1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比が30以下:70であるように脱塩化水素反応を制御すると、本発明の工程2の方法は、非常に高選択性かつ高収率で高純度塩化アルケン材料を生じるよう作動させることができる。形成された3,3,3-トリクロロプロペンはほんの痕跡量であったことに留意されたい。3,3,3-トリクロロプロペンは、遊離誘起(活性化)二重結合を有する非常に反応性のあるオレフィン混入物であり、非常に問題になる酸素化不純物の前駆体になるおそれがあるので、このことは特に有利である。
例10-反応混合物中のアルケン:アルカン比率
これらの例は、別途述べない限り、上記の例8で使用した装置及び技術を使用して行った。これらのそれぞれの試験において、それぞれの試験の反応器(403、図5)に存在する反応混合物、反応混合物(407、図5)の1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンの比率が異なるように、反応の進行を制御した。添加された触媒FeCl3の量を制御して、反応転化率を約90%に維持した。反応混合物中の113TCPe濃度の違いが重いオリゴマー形成及び触媒失活に及ぼす影響を、以下の表に示す。
この例から分かるように、特定の装置及び技術を使用すると、本発明の方法の工程2)の出発物質に対する生成物のモル比が増加(反応混合物中の生成物の量が増加)し、これは、重いオリゴマーの形成の増加に対応する。さらに、1,1,3-トリクロロプロペン濃度が高い場合、触媒失活もまた観察された。
例11-生成物流体の様々な材料との適合性
エルレンマイアーガラスフラスコに、純度99%超の純粋な蒸留した1,1,3-トリクロロプロペンを充填した。試験構造材料サンプルをこの液体に浸漬し、系をプラスチック栓で閉じた。
トリクロロプロペンのサンプルを、フラスコから定期的に取った。構造材料サンプルを、追跡の前後で計量した。液体の温度は、25℃付近の実験室環境の条件であった。
トリクロロプロペンの質の主な変化を、純度の%変化として以下の表に示す。
第二の試験の設定において、制御された温度の後部冷却器及び油加熱浴を備えるエルレンマイアーガラスフラスコに、純度99%超の純粋な蒸留した1,1,3-トリクロロプロペンを充填した。試験材料サンプルをその液体に浸漬し、系をプラスチック栓で部分的に閉じた。トリクロロプロペンのサンプルを、フラスコから定期的に取った。材料サンプルを、追跡の前後で計量した。液体の温度を100℃に制御した。液体トリクロロプロペンの主な変化を、以下の表に示す。
この例から分かるように、炭素鋼は1,1,3-トリクロロプロペンからなる処理流体と適合しないので、炭素鋼の使用は困難なようである。また、ステンレス鋼及びチタンは性能が低く、著しい量のオリゴマーの形成につながる。試験した金属材料のなかでも、Ni合金ハステロイC-276は優れた結果を有した。ガラス(又はエナメル)、及び他の非金属材料、例えばフェノール樹脂含浸黒鉛もまたより適切であることを認めることができる。
例12-問題のある塩化アルケン不純物
塩化アルケンが出発物質として用いられる多くの下流の反応において、酸素化有機不純物の存在は問題になる。この例は、特定の不純物がそのような化合物を形成する驚くべき傾向を有することを実証する。
攪拌機、温度計、後部冷却器、供給及び排出首、並びに冷却浴を備える四首ガラスフラスコに水を充填し、塩素気体は水中に泡立てて、次亜塩素酸の弱溶液を生じた。適切な量の塩素を水に導入したら、純度98.9%の1,1,3-トリクロロプロペンを含む例8の方法から得られた原料を、用意した次亜塩素酸の溶液中に90分間ゆっくり滴下し、冷却した。圧力は大気圧であり、作動温度は約20℃であった。同じ手順を、純度68.1%の3,3,3-トリクロロプロペンで繰り返した。反応完了後、系は二相混合物を形成した。有機相(生成物)を抽出し、次にガスクロマトグラフィーで分析した。結果を以下の表に示す。
この例から分かるように、1,1,3-トリクロロプロペンが水中で塩素と反応して1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを生じ、3,3,3-トリクロロプロペンは著しく反応して、対応するテトラクロロヒドリン、特に1,1,1,3-テトラクロロプロパン-2-オルを生じる。
言い換えれば、1,1,3-トリクロロプロペンは、反応して商業的に関心のある生成物を生じ、3,3,3-トリクロロプロペンは、反応して1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンから容易に除去することができない酸素化不純物を生じる。上記の例8及び9から明らかなように、本発明の工程2)の方法を有利に使用して、1,1,3-トリクロロプロペンを生じることができ、その結果、形成される3,3,3-トリクロロプロペンはほんの痕跡量である。
例13-1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの連続的製造
本発明の方法の工程3-a)の第一の転化工程及び主要な転化工程を行うために用いる設備の模式図を図8に提供する。1,1,3-トリクロロプロペンの液体流は、ライン706を介して、カラム気-液反応器702へと接続された外部循環ループ703、705、707へと供給される。気体の塩素は、ライン701を介して反応器702に供給される。反応器702は、単一の第一の反応領域、すなわち、循環ループ703、705、707、及び反応器低部702を含む。循環ループ703、705、707に外部冷却器704を提供して、反応混合物の温度を制御する。1,1,3-トリクロロプロペン及び塩素の完全な混合は、第一の反応領域内で達成される。第一の転化工程は、一つ以上の他の種類の反応器、例えば一つ又は複数の連続撹拌槽反応器で同様に行うことができる。
第一の反応領域内の作動温度は、0℃~20℃である。この範囲内で反応器を作動することは、目的の製品、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンから分離することが困難なペンタクロロプロパン異性体の形成を最小化することが分かった。反応混合物の完全な混合、及び穏やかな温度、さらに反応混合物中に存在する1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの割合を制御することは、1,1,3-トリクロロプロペンの一連の反応、及び1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(これは1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンから分離するのが困難である)の形成を最小化することが分かった。低温での反応速度を上げるために、反応混合物を可視光に暴露する。
次に反応混合物は、低温転化工程として行われる主要な転化工程のために、反応器702を通過する。反応混合物の冷却は、冷却チューブを使用して達成され、反応混合物は、一連の上流及び下流の主要な反応領域(図示せず)を通過し、1,1,3-トリクロロプロペンのゾーン状塩素化(zonal chlorination)につながる。反応を完了へ向かって駆動するために、下流の主要な反応領域における反応混合物を紫外線光に暴露する。有利にも、これは、最下流の主要な反応領域から抽出される得られる反応混合物中に溶解した塩素の濃度が非常に低くなるように、塩素出発物質を完全に利用する。
そのような温度で主要な反応領域を作動することは、望ましくなく問題のある不純物、例えばヘキサクロロプロパンの形成につながる1,1,3-トリクロロプロペンの一連の反応を最小化することが分かった。
1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む流れは、反応器702からライン708を介して抽出される。オフガスは、反応器702からライン711を介して抽出される。1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む流れは、生成物冷却器709を用いて冷却され、加水分解工程のためにライン710を介して通過する。この工程を行うために用いる設備を示す模式図を図9に示す。
その設備において、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む流れは、ライン802を介して洗浄槽803に供給される。水がライン801を介して洗浄槽に供給され、二相混合物を形成する。有機相(1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を含む)は、ライン804を介してそれらの相を逐次的に除去することによって、水相から容易に分離することができる。抽出された相は濾過され805、濾過ケーキは除去される806。1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物は、次に更なる処理のためライン807を介して供給され、廃水はライン808を介して除去される。
加水分解工程は、本発明の方法において上流の工程で形成されることのある酸素化有機化合物、例えば塩化プロピオニルクロリド、及びそれらの対応する酸及びアルコールを除去する点で特に効果的である。合成の上流の段階に存在する酸素を除去することによって、そのような化合物の形成を回避することができるが、しかしながら、そうすることは製造コストを増加させる。したがって、加水分解工程は、経済的に役立ち、また、そうでなければ(例えば蒸留によってそれらを除去することが困難であるために)問題のあるそのような不純物を直接除去することに役立つ。
得られる1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの純度を最大化するために、図10に示す装置、すなわち、蒸留ボイラー902及び減圧蒸留塔907を使用して、減圧機蒸留工程を行った。有利にも、処理液体及び蒸留物と接触する蒸留装置の部品は、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの分解生成物の形成を防止する非金属材料で成形されている。
減圧蒸留塔907から液体側流の抜き出しを行って、ボイラーで成形されることのある生成物流に低分子量化合物が混入することを防止することができる。
図9に示す装置からの1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物は、ライン901を介してボイラー902に供給される。残渣は、ライン903を介して蒸留ボイラー902から抽出され、フィルター904を用いて濾過される。濾過ケーキはシステム905から抽出され、重量物の流れはライン906を介して抽出されて、更に処理される。
蒸留物は、蒸留塔907からライン908を介して取られ、コンデンサ909、中間ライン910、液体分割機911を介して供給され、i)第一の反応領域にリサイクルされるライン913.1を介して1,1,3-トリクロロプロペンの流れ、ii)ライン913.2を介して1,1,1,3-テトラクロロプロパンの流れ、及びライン913.3を介して精製された1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの流れが得られる。分割機911からの還流912は、減圧蒸留塔907へと供給されて戻される。
上記で概説した装置及び処理条件を使用して、3062kgの1,1,3-トリクロロプロペン(113TCPe、純度97.577%)を、平均毎時供給44.9kg/hで連続的に処理して、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(11123PCPa)を生じた。方法の基本的パラメータは、以下のとおりである。
上述の実施形態の図10のライン913.3で得られた精製された生成物の完全な不純物プロフィールを、以下の表に示す。
例14-非常に純粋な組成物1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(PCPA)
例13の方法を4回繰り返し、図10に示す装置を用いて蒸留した後、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンのサンプルを得た。蒸留は、約15mbarの圧力、及び105℃の最大ボイラー温度で行った。以下の表から分かるように、本発明の工程3)の方法は、含まれる不純物の濃度が非常に低い高純度PCPA、特に1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンから蒸留を使用して分離するのが非常に困難な1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパンを得ることができる。この表の数値は組成物の質量による割合として提供されることに留意されたい。
例15-水処理の効果
粗製1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン組成物は、図8に示されかつ上記の例13に記載されている装置を用いて、例えば図8のライン710から得られた。一方の流れ(試験15-1)は加水分解工程を行わず、他方(試験15-2)は、図9に示しかつ上記の例13に記載されている装置を使用して加水分解工程を行った。得られた粗製組成物を蒸留した。蒸留前後のサンプルの純度、及びその酸素化化合物含有量を、以下の表に示す。
明らかなように、洗浄工程をうまく使用して、関心のあるクロロアルカンに富む組成物中の酸素化有機不純物の含有量を最小化することができる。
例16-塩化アルケン:クロロアルカンのモル比が不純物形成に及ぼす影響
攪拌機、温度計、後部冷却器、供給及び排出首、並びに冷却浴を備える四首ガラスフラスコからなるバッチ式反応器を組み立てた。原料は、商業的に供給される供給源に観察される量のパークロロエチレン及び酸素化不純物を含む1,1,3-トリクロロプロペンからなるものであった。
軽微な量のHClガスが形成され、これらを痕跡量の塩素とともに後部冷却器/コンデンサによって冷却し、次に苛性ソーダスクラバーに吸収させた。塩素を、浸漬パイプを介して液体反応混合物へと90分間様々な量で導入した。反応温度は、26~31℃に維持した。圧力は大気圧であった。塩素は、反応の間に全て消費された。反応混合物をサンプリングしてガスクロマトグラフィーで分析し、分析結果を以下の表に示す。
認められるように、塩化アルケン出発物質から関心のある塩化アルカン生成物への転化率を増加させることは、反応混合物中の不純物形成の増加につながる。出発物質から生成物への転化率が完全転化に近づくにつれて、これらの不利な結果が生じる。
例17-塩化アルケン:クロロアルカンのモル比が異性体選択性に及ぼす影響
この例は、上記の例16に記載されているように行った。1,1,3-トリクロロプロペン(不純物として1,1,1,3-テトラクロロプロパンの5%を含む、純度94.6%)を原料として使用した。
異なる反応温度の4つの試験を行った。添加した塩素の化学量論量(原料の113TCPeに基づく)の80%、90%、95%、及び100%で反応混合物のサンプルを取って、ガスクロマトグラフィーで分析した。この分析結果を、以下の表で示す。
これらの結果は、塩化アルケン出発物質から関心のある塩化アルカン生成物への転化率を増加させることは、関心のある塩化アルカン異性体への反応の選択性の減少につながることを実証する。出発物質から生成物への転化率が完全転化に近づくにつれて、これらの不利な結果が生じる。
例18-塩化アルケン:クロロアルカンのモル比が不純物形成に及ぼす影響
この塩素化工程は、上記の例16に記載されているように行った。1,1,3-トリクロロプロペン(純度99.4%)を原料として使用した。
塩素を、原料1,1,3-トリクロロプロペンの化学量論量の120%で液体反応混合物に90分間導入し、反応の間に全て消費した。反応温度は80℃、反応器圧力は大気圧であった。添加した塩素の化学量論量の80%、95%、110%、及び120%で反応混合物のサンプルを取り、ガスクロマトグラフィーで分析した。生成物1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに対する、主要な不純物(1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,1,1,2,3,3-ヘキサクロロプロパン、1,1,1,2,2,3-ヘキサクロロプロパン)の合計の比率として、反応選択性を下表に示す。
これらの結果は、塩化アルケン出発物質から関心のある塩化アルカン生成物への転化率を増加することは、望ましくない不純物の形成の増加につながることを実証する。出発物質から生成物への転化率が完全転化に近づくにつれて、これらの不利な結果が生じる。認められるように、転化率(及びしたがって不純物の形成)は、塩化アルケン出発物質に対して塩素がモル過剰にならないように反応領域への塩素の量を制御することによって、有利に及び便宜に達成することができる。
例19-加水分解による酸素化不純物の除去
本発明の工程3-b)の加水分解工程の、関心のある塩化アルカン生成物から酸素化化合物を除去する効果を実証するために、粗製反応混合物のサンプルを、図8に示され上記の例13に記載されている装置を用いて、例えば図8のライン710から得た。下流の反応で問題があることが知られている特定の酸素化化合物の含有を分析した(供給)。図9に示され上記例13に記載された装置を用いて、サンプルに加水分解工程を行い、有機相、例えば図9のライン807から得られた組成物を分析した(処理後)。結果を以下の表に示す。
この例から分かるように、この特定の酸素化不純物の除去効率は約97.5%であった。
以下の項目[1]~[35]に、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン生成物を調製する方法であって、方法は:
1-a)エチレン、四塩化炭素、及び触媒を含む反応混合物を主要アルキル化領域に提供して、前記反応混合物中に1,1,1,3-テトラクロロプロパンを生じることと、
1-b)工程1-a)で得た前記反応混合物を処理して、1,1,1,3-テトラクロロプロパン原料を得ることと;
2-a)前記1,1,1,3-テトラクロロプロパン原料を、脱塩化水素反応領域で触媒と接触させて、1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び1,1,3-トリクロロプロペンを含む反応混合物を生じることと、
2-b)工程2-a)で得た前記反応混合物を処理して、1,1,3-トリクロロプロペン原料を得ることと;
3-a)前記1,1,3-トリクロロプロペン原料を、反応領域で塩素と接触させて、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン及び1,1,3-トリクロロプロペンを含む反応混合物を生じることであって、前記反応領域は前記脱塩化水素反応領域とは異なる、ことと、
3-b)工程3-a)で得た前記反応混合物を処理して、高純度1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン生成物を得ることと
を含む、方法。
[2]
処理工程1-b)、2-b)、及び/又は3-b)は蒸留工程を含む、項目1に記載の方法。
[3]
処理工程1-b)、2-b)、及び/又は3-b)は、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(工程1-bの場合)、1,1,3-トリクロロプロペン(工程2-bの場合)、及び/又は1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(工程3-bの場合)を含む組成物を、水性媒体に接触させることを含む、項目1又は2に記載の方法。
[4]
工程1-b)で生じ、工程2-a)で使用される前記原料は:
・約99.0%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、若しくは約99.9%以上の1,1,1,3-テトラクロロプロパン、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩化アルカン不純物(すなわち1,1,1,3-テトラクロロプロパン以外の塩化アルカン化合物)、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩化アルケン化合物、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の酸素化有機化合物、
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の金属触媒、
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の触媒促進剤、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の臭化物若しくは臭素化有機化合物、
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の水、並びに/又は
・約500ppm以下、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、若しくは約10ppm以下の、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1-クロロブタン、1,1,1-トリクロロプロパン、テトラクロロエタン、1,1,3-トリクロロプロプ-1-エン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、ヘキサクロロエタン、1,1,1,5-テトラクロロペンタン、1,3,3,5-テトラクロロペンタン、リン酸トリブチル、塩化アルカノール、及び塩化アルカノイル化合物の一つ若しくは複数
を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[5]
工程2-b)で生じ、工程3-a)で使用される前記原料は:
・約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.2%以上、約99.5%以上、若しくは約99.7%以上の1,1,3-トリクロロプロペン、
・約50000ppm未満、約20000ppm未満、約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の1,1,1,3-テトラクロロプロパン、
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩化アルカン不純物(すなわち1,1,1,3-テトラクロロプロパン以外の塩化アルカン化合物)、
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩化アルケン不純物(すなわち1,1,3-トリクロロプロペン以外の塩化アルケン)、
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、若しくは約50ppm以下の水、
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、若しくは約5ppm未満の金属、並びに/又は
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約250ppm未満、若しくは約100ppm未満の酸素化有機化合物
を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[6]
工程1-a)において、前記反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素のモル比が、
・前記主要なアルキル化領域が連続的操作である場合、95以下:5、又は
・前記主要なアルキル化領域がバッチ式操作である場合、99以下:1
となる濃度に、前記主要なアルキル化領域における前記反応混合物中の1,1,1,3-テトラクロロプロパンの濃度を維持する、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[7]
工程1-a)で生じた前記反応混合物を前記主要なアルキル化領域から抽出して、工程1-b)で水性処理工程を行い、前記水性処理工程では、前記反応混合物を前記水性処理領域で水性媒体と接触させて二相混合物を形成し、触媒を含む有機相を前記二相混合物から抽出する、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[8]
工程1-a)で使用される前記触媒は、任意に有機配位子を更に含む金属触媒である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
[9]
前記有機配位子がアルキルリン酸、例えばリン酸トリエチル、及び/又はリン酸トリブチルである、項目8に記載の方法。
[10]
工程1-a)で生じた前記反応混合物を前記第一のアルキル化領域から抽出して前記主要なアルキル化領域へと供給し、前記主要なアルキル化領域から抽出される前記反応混合物中に存在する1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素の比率は、前記第一のアルキル化領域から取った前記反応混合物中に存在する1,1,1,3-テトラクロロプロパン:四塩化炭素の比率よりも大きい、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
[11]
前記主要なアルキル化領域を離れる前記反応混合物中の未反応のエチレンの量が0.6%未満、0.3%未満、0.2%未満、又は0.1%未満である、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
[12]
あらゆる未反応の気体エチレンを、高圧で作動している一つ又は複数の前記反応領域へと直接リサイクルして戻す、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
[13]
冷たい液体四塩化炭素原料中にエチレンを吸収させることによって、あらゆる未反応の気体エチレンを、高圧で作動している一つ又は複数の前記反応領域へとリサイクルして戻す、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
[14]
1,1,3-トリクロロプロペン:1,1,1,3-テトラクロロプロパンのモル比が1:99~50:50となるように、脱塩化水素化領域内に工程2-a)で生じる前記反応混合物中の前記1,1,3-トリクロロプロペンの濃度を制御する、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
[15]
工程2-b)は、1,1,3-トリクロロプロペン、触媒、及び1,1,1,3-テトラクロロプロパンを含む混合物を、水性処理領域で水性媒体と接触させることを含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
[16]
前記水性処理領域で二相混合物が成形され、1,1,1,3-テトラクロロプロパン及び1,1,3-トリクロロプロペンを含む有機相を前記二相混合物から抽出する、項目15に記載の方法。
[17]
工程2-a)で前記反応混合物と接触する脱塩化水素化領域の全ての部品に含まれる鉄は、約20%以下、約10%以下、若しくは約5%以下であり、並びに/又は非金属材料、例えばエナメル、ガラス、含浸黒鉛(例えばフェノール樹脂で含浸したもの)、炭化ケイ素、及び/若しくはプラスチック材料、例えばポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシ、及び/若しくはポリフッ化ビニリデンから形成されている、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
[18]
工程2-a)で前記反応混合物と接触する脱塩化水素化領域の少なくともいくつかの部品は、ニッケル-ベース合金、例えばハステロイで成形されている、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
[19]
工程3-a)において、工程3-a)で生じる前記反応混合物中の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン:1,1,3-トリクロロプロペンのモル比が95以下:5である、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
[20]
工程3-a)で生じる前記反応混合物が前記第一の反応領域から抽出され、次に主要な反応領域で主要な転化工程を受けて1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を生じ、前記生成物が前記主要な反応領域から抽出される、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
[21]
工程3-a)において、前記主要な転化工程は低温転化工程を含み、前記低温転化工程では、前記第一の反応領域から抽出される前記反応混合物が、低減された温度で作動する前記主要な反応領域に供給され、前記1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物が前記主要な反応領域から抽出される、項目20に記載の方法。
[22]
前記第一及び/又は主要な反応領域を可視光及び/又は紫外線光に暴露する、項目20又は21に記載の方法。
[23]
工程3-a)で生じる前記反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物は、水性処理及び/又は加水分解工程を受ける、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
[24]
前記水性処理及び/又は加水分解工程は、前記反応混合物/1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンに富む生成物を、水性処理領域で水性媒体と接触させることを含む、項目23に記載の方法。
[25]
工程3-b)が、工程3-a)で生じた反応混合物及び/若しくはクロロアルカンに富む生成物に対して、並びに/又は項目21に記載の前記水性処理領域内に形成された混合物から抽出された有機相に対して、一つ又は複数の蒸留工程を行うことを含む、項目1~24のいずれか一項に記載の方法。
[26]
項目1~25のいずれか一項に記載の方法から得られる、組成物。
[27]
項目23に記載の組成物であって:
・少なくとも約95%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、少なくとも約99.9%、若しくは少なくとも約99.95%の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、並びに以下の一つ若しくは複数:
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、若しくは約10ppm以下の酸素化有機化合物、
・約500ppm未満、約250ppm以下、若しくは約100ppm以下の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの異性体、
・約500ppm以下若しくは未満、約250ppm以下、若しくは約100ppm以下の非異性体アルカン不純物、
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、若しくは約50ppm以下の塩化アルケン、
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、若しくは約50ppm以下の水、
・約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、若しくは約10ppm以下の塩素の無機化合物、
・約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、若しくは約10ppm以下の臭素化有機化合物、並びに/又は
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、若しくは約5ppm未満の鉄
を含む、組成物。
[28]
少なくとも約95%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、少なくとも約99.9%、若しくは少なくとも約99.95%の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、並びに以下の一つ若しくは複数:
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、若しくは約10ppm以下の酸素化有機化合物、
・約500ppm未満、約250ppm以下、若しくは約100ppm以下の1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンの異性体、
・約500ppm未満、約250ppm以下、若しくは約100ppm以下の非異性体アルカン不純物、
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、若しくは約50ppm以下の塩化アルケン、
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、若しくは約50ppm以下の水、
・約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、若しくは約10ppm以下の塩素の無機化合物、
・約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、若しくは約10ppm以下の臭素化有機化合物、並びに/又は
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、若しくは約5ppm未満の鉄
を含む、組成物。
[29]
前記組成物に含まれる、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン以外の有機化合物が、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満である、項目26~28のいずれか一項に記載の組成物。
[30]
前記組成物に含まれる、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1、1、1、2、3、3-ヘキサクロロプロパン、及び/又は1,1,1,2,2,3-ヘキサクロロプロパンが、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満である、項目26~29のいずれか一項に記載の組成物。
[31]
前記組成物が安定剤を含まない、項目26~30のいずれか一項に記載の組成物。
[32]
フッ化アルカン若しくはフッ化アルケン、又はクロロフルオロアルケン若しくは塩化アルケンの合成に使用するための原料としての、項目26~31のいずれか一項に記載の組成物の、使用。
[33]
前記フッ化アルケンが2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである、項目32に記載の使用。
[34]
前記クロロフルオロアルケンが2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである、項目32に記載の使用。
[35]
前記塩化アルケンが1,1,2,3-テトラクロロプロペンである、項目32に記載の使用。