JP7139130B2 - 印刷用紙 - Google Patents
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Description
このようなシミは印刷物の汚れとして、その商品価値を下げるおそれがあった。
[1]熱可塑性樹脂フィルムからなる中間層と、その少なくとも一面に積層される多孔質熱可塑性樹脂フィルムとから構成され、
前記多孔質熱可塑性樹脂フィルムが、SiO2/Al2O3モル比が5以上のゼオライトを含むことを特徴とする印刷用紙。
本発明に係る第一の印刷用紙は、熱可塑性樹脂フィルムからなる中間層と、その少なくとも一面に積層される多孔質熱可塑性樹脂フィルムとから構成され、多孔質熱可塑性樹脂フィルムが、SiO2/Al2O3モル比が5以上のゼオライトを含むことを特徴とする。また、本発明に係る第二の印刷用紙は、熱可塑性樹脂フィルムからなる中間層と、その少なくとも一面に積層される多孔質熱可塑性樹脂フィルムとから構成され、多孔質熱可塑性樹脂フィルムが、ゼオライトと炭酸カルシウムとを含むことを特徴とする。
多孔質熱可塑性樹脂フィルム(I)は、SiO2/Al2O3モル比が5以上のゼオライトを含む。つまり、多孔質熱可塑性樹脂フィルム(I)では、種々の無機微細粉末の中から特定組成のゼオライトが選択され、多孔質熱可塑性樹脂フィルム(I)に配合されている。
また、多孔質熱可塑性樹脂フィルム(II)は、ゼオライトと炭酸カルシウムとを含む。つまり、多孔質熱可塑性樹脂フィルム(II)では、種々の無機微細粉末の中からゼオライトと炭酸カルシウムとが選択され、これらが併用され、多孔質熱可塑性樹脂フィルム(II)に配合されている。
ゼオライトは、主にケイ素元素(Si)、アルミニウム元素(Al)、及び酸素元素(O)から構成される骨格を有する多孔質材料である。また、ゼオライトは当該骨格中の一部又は全部のアルミニウム元素(Al)を、鉄元素(Fe)、ホウ素元素(B)、ガリウム元素(Ga)等の3価の金属元素;亜鉛元素(Zn)等の2価の金属元素に置き換えたものであってもよい。
なお、ゼオライトの平均粒子径とは、多孔質熱可塑性樹脂フィルムの厚み方向の切断面を電子顕微鏡により観察し、観察領域より無作為に抽出した100個のゼオライトの粒子径を測定し、これに基づいて算出した平均値である。ゼオライトの粒子径は、粒子の輪郭上の2点間の距離の最大値(最大径)から決定する。
SiO2/Al2O3モル比が5以上のゼオライトを含む多孔質熱可塑性フィルム(I)を構成層とする印刷用紙に、油性インキによる印刷加工を施すと、インキの蒸発乾燥型成分や浸透乾燥型成分に含まれる有機溶剤、及び、インキの酸化重合型成分、蒸発乾燥型成分や浸透乾燥型成分に由来する分解物(例えば、酸化分解ガス及び溶剤ガス)がゼオライトに優先的に吸着される。その結果、溶剤アタックが抑制され、パルプ紙と同じインキを用いて印刷加工を施すことが可能となる。また、片面印刷加工を施す場合には、印刷面とは反対側の面における酸化分解ガス及び溶剤ガスによるシミの発生を抑制することができる。さらに、両面印刷加工を施す場合には、グロスゴーストの発生を抑制することができる。
本発明における多孔質熱可塑性樹脂フィルムは、通常、ゼオライト以外の無機微細粉末(以下、単に「無機微細粉末」と記載することがある)を含んでいる。ゼオライト以外の無機微細粉末としては、例えば、炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、二酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、白土、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバー、中空ガラスビーズ、及びこれらの混合物等が挙げられるが、本発明におけるゼオライトを用いる場合、特に炭酸カルシウムが好ましい。
また、本発明者らは、上記疎水性ゼオライトを配合した多孔質熱可塑性樹脂フィルム(I)を構成層として含む印刷用紙を用いるほか、上記の無機微細粉末の中から炭酸カルシウムを選択し、ゼオライトと併用して配合した多孔質熱可塑性樹脂フィルム(II)を構成層として含む印刷用紙を用いることで、有機溶剤による溶剤アタック、酸化分解ガス及び溶剤ガスによるシミ及びグロスゴーストを抑制する効果が顕著に奏効されることを見出した。このような効果が顕著に得られる作用機構は明らかではないが、ゼオライトが炭酸カルシウムと併用されると、ミキサーや混練機における原料混合時に炭酸カルシウム粒子がゼオライト粒子の解砕を助け、多孔質熱可塑性樹脂フィルム(II)全体へのゼオライトの分散性が向上することや、空孔形成性能の高い炭酸カルシウム粒子が多孔質熱可塑性樹脂フィルムの多孔性を高め、同フィルム内部にガスの通り道となる空孔を形成して、ゼオライトによるガス吸着がより効率的に行われたことが理由として推測される。
熱可塑性樹脂の種類は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で限定されない。例えば、熱可塑性樹脂としては、エチレン単独重合体や、エチレンと他の共重合成分とを共重合させたエチレン系共重合体等のポリエチレン系樹脂(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等)、プロピレン単独重合体、プロピレンブロック共重合体、プロピレンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン、シクロペンタジエン-αオレフィン共重合体、エチレン-環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、脂肪族ポリエステル(ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等)等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート等のポリカーボネート樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン(AS)共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリビニルアルコール;塩素化ポリエチレン;塩素化ポリプロピレン;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン;ポリフェニレンスルフィド;等を用いることができる。
多孔質熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、有機フィラー等を添加することができる。
例えば、熱安定剤を添加する場合は、通常、多孔質熱可塑性樹脂フィルムの固形分総量100質量部に対して、0.001~1質量部の範囲内で添加する。熱安定剤としては、例えば、立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の熱安定剤を使用することができる。
また、光安定剤を使用する場合は、通常、多孔質熱可塑性樹脂フィルムの固形分総量100質量部に対して、0.001~1質量部の範囲内で使用する。光安定剤としては、例えば、立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤等を使用することができる。
分散剤や滑剤は、例えば無機微細粉末を分散させる目的で使用する。分散剤や滑剤を添加する場合は、多孔質熱可塑性樹脂フィルムの固形分総量100質量部に対して、通常0.01~4質量部の範囲で使用する。分散剤としては、例えば、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を使用することができる。
また、有機フィラーは、多孔質熱可塑性樹脂フィルムの主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を用いれば、特に限定されない。
中間層は、多孔質熱可塑性樹脂フィルムを支持する層である。中間層は印刷用紙の芯材として機能し、印刷用紙に安定した延伸成形性を付与することができる。
また、中間層は無延伸の層であっても、延伸された層であっても構わない。
製造コストを低減し、より平坦な表面及び界面を得る観点からは、中間層はゼオライトを含まず、単層構造であり、一軸延伸又は二軸延伸の層であることが好ましい。
本実施形態に係る印刷用紙は、中間層と、中間層の少なくとも一面に積層される多孔質熱可塑性樹脂フィルムとから構成される。つまり、中間層と多孔質熱可塑性樹脂フィルムとが少なくともこの順に積層された多層構造を有する。ここで、本明細書において「この順に積層された」とは、これらがこの順に配列していることを意味し、中間層と多孔質熱可塑性樹脂フィルムとの間に、接着剤層等の任意の層が介在している態様をも包含する趣旨である。なお、多孔質熱可塑性樹脂フィルム及び/又は中間層が多層構造の場合にも、各層の間に任意の層が介在していてもよい。
本実施形態に係る印刷用紙の成形方法は、公知の方法を適宜適用することができ、その種類は特に限定されない。例えば、スクリュー型押出機に接続された単層又は複層のTダイやIダイを利用して、溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、スクリュー型押出機に接続されたOダイを利用して、溶融樹脂を筒状に押し出すインフレーション成形、カレンダー成形、圧延成形、熱可塑性樹脂と有機溶媒やオイルとの混合物をキャスト成形又はカレンダー成形した後に溶媒やオイルを除去する方法等を用いて成形することができる。
本実施形態に係る印刷用紙の積層方法は、公知の方法を適宜適用することができ、その種類は特に限定されない。積層方法としては、例えば、フィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式と、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等を適用することができる。また、多層ダイス方式と押出しラミネーション方式を組み合わせて使用することもできる。その他に接着剤を用いたドライラミネートやウェットラミネート、ホットメルトラミネート等、公知のいかなる積層法も用いることができる。
また、本実施形態に係る印刷用紙は、少なくとも一軸方向以上に延伸されたものであることが好ましい。つまり、印刷用紙の構成層である多孔質熱可塑性樹脂フィルム及び中間層は延伸フィルムであることが好ましい。延伸することによって印刷用紙として各種印刷適性に優れる厚み寸法やコシ(stiffness)が得られ易く、また、印刷用紙の総厚み寸法のバラツキが緩和されて均一厚みが得られ易く、さらには平坦な表面や層間界面が得られ易い傾向にある。
本実施形態に係る印刷用紙の厚み寸法(総厚み寸法)は、用途や要求性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。印刷用紙の総厚み寸法とは、印刷用紙を構成する各層の厚み寸法の総和を意味する。印刷用紙の総厚み寸法は、通常51μm以上、好ましくは63μm以上、より好ましくは75μm以上であり、通常550μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下である。総厚み寸法が上記範囲の印刷用紙であれば、オフセット印刷する場合に不具合が生じ難く、印刷用紙としての利用価値が高くなる傾向にある。
本実施形態に係る印刷用紙において、多孔質熱可塑性樹脂フィルム表面の光沢度(JIS P-8142)は、好ましくは70~110%、より好ましくは80~108%、さらに好ましくは85~105%である。光沢度が70%以上であることにより、印刷用紙における多孔質熱可塑性樹脂フィルムに印刷を施した際に、高光沢で明るい印刷物の質感や軽快な雰囲気が得られ易い傾向にある。なお、光沢度は、例えば印刷用紙の各層の材料の選択や製造時の延伸条件(温度、倍率等)等により、調整可能である。
印刷用紙の不透明度は、ポスターやパンフレット等の商業印刷用の原紙、包装紙用の原紙等の裏地として用いる際に、裏側が透けて見えないことが好ましい観点から、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは95%以上である。不透明度の測定方法は、後述する実施例に記載のとおりである。
なお、不透明度は、印刷用紙の各層に含まれるゼオライト、無機微細粉末や有機フィラーの濃度、印刷用紙の延伸倍率、延伸温度等により、調整可能である。
印刷用紙の密度は、JIS K7130:1999に記載されている方法に従い、印刷用紙の厚み寸法と、試料を10cm×10cmサイズに打ち抜いて質量を測定して得られた秤量の値とから、下記の計算式によって算出できる。
ρ=Wf/Tf
ただし、ρ、Wf及びTfのそれぞれは下記を示す。
ρ :印刷用紙の密度(g/cm3)
Wf:印刷用紙の坪量(g/cm2)
Tf:印刷用紙の厚み寸法(cm)
印刷用紙の空孔率は、不透明化や軽量化の観点から、好ましくは1%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。一方、油性インキによる溶剤アタック(ぼこつき)を防止する観点から、印刷用紙の空孔率は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。
空孔率の測定方法は、後述する実施例に記載のとおりである。
なお、印刷用紙を構成する各層の空孔率も、同様の方法により測定することができる。また、空孔率は、印刷用紙の各層に含まれるゼオライト、無機微細粉末や有機フィラーの濃度、印刷用紙の延伸倍率、延伸温度等により、調整可能である。
印刷用紙の白色度は、印刷内容の視認性を向上させる観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
白色度の測定方法は、後述する実施例に記載のとおりである。
なお、白色度は、印刷用紙の各層に含まれるゼオライト、無機微細粉末や有機フィラーの濃度、印刷用紙の延伸倍率、延伸温度等により、調整可能である。
(13a)酸化処理
本実施形態に係る印刷用紙は、その表面、特に多孔質熱可塑性樹脂フィルムの表面を酸化処理することが好ましい。このように多孔質熱可塑性樹脂フィルムの表面に酸化処理を施すことにより、極性基の存在割合を調整でき、印刷用紙の多孔質熱可塑性樹脂フィルムの表面の酸素原子数濃度を調整することができる。そして、印刷用紙の表面が酸化処理され、印刷用紙の多孔質熱可塑性樹脂フィルム表面の酸素原子数濃度が調整されることにより、インキ成分との化学的な結合力が得られ易く、その結果、印刷用紙と油性インキとの密着性が向上される傾向にある。
本明細書において、印刷用紙の(多孔質熱可塑性樹脂フィルム)表面の酸素原子数濃度は、上記の酸化処理後1週間以内に、X線光電子分光装置((株)島津製作所製、商品名ESCA-3200型)を用いて、1×106Torr以下の真空度下、MgのKd線(1254.0eV)をX線源とし、光電子放出角90°の条件で測定した値とする。ここで測定する酸素原子のピークとしては、O1sピーク(533eV)を用いる。
酸化処理を行うことによるインキとの良好な密着性の向上効果は、処理後、経時的に減衰する傾向がある。そのため、より安定したインキとの密着性を付与するために、アンカー剤を酸化処理後の多孔質熱可塑性樹脂フィルムの表面に塗布することが好ましい。かかるアンカー剤としては、当業界で公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、ポリイミン系重合体又はポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物を単独或いは混合したもの、又はこれらにさらに架橋剤を加えたもの等が挙げられるが、これらに特に限定されない。ポリイミン系重合体又はポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物としては、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン-尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、又はこれらのアルキル変性体、シクロアルキル変性体、アリール変性体、アリル変性体、アラルキル変性体、アルキラル変性体、ベンジル変性体、シクロペンチル変性体、若しくは脂肪族環状炭化水素変性体、これらの水酸化物、これら前述のものを数種類複合させたもの等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前述アンカー剤に、ポリマー型帯電防止剤をさらに加えることにより、静電気による印刷用紙への埃の付着や、重送等印刷時の印刷機上トラブルを軽減することができる。ポリマー型帯電防止剤としては、カチオン型、アニオン型、両性型、ノニオン型等が知られており、いずれも使用可能である。具体的には、カチオン型としては、アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するもの等が挙げられるが、これらに特に限定されない。アニオン型としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸等のアルカリ金属塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)構造を分子構造中に有するもの等が挙げられるが、これらに特に限定されない。両性型としては、前述のカチオン型とアニオン型の両方の構造を同一分子中に含有するもの、具体的にはベタイン型が挙げられる。ノニオン型としては、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体や、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。その他、ホウ素を分子構造中に有するポリマー型帯電防止剤も例として挙げることができる。これらの中でも、カチオン型のポリマー型帯電防止剤が好ましく、より好ましくは窒素含有ポリマー型帯電防止剤である。その例としては、例えば第三級窒素又は第四級窒素(アンモニウム塩構造)含有アクリル系ポリマーが挙げられる。
上述したアンカー剤及び帯電防止剤を併用する場合、これらの量比は要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、個々の成分の性能を十分に発揮させる観点から、固形分比率でアンカー剤100質量部に対し、帯電防止剤0~400質量部が好ましく、より好ましくは20~300質量部、さらに好ましくは30~150質量部である。
前述したアンカー剤は、水或いはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等の溶媒に溶解させ、溶液状態で用いることが一般的である。中でも、水溶液の形態で用いるのが好ましい。塗布時の取扱性等の観点から、アンカー剤溶液濃度は、0.5~40%程度が好ましく、より好ましくは1~20%程度である。
アンカー剤の印刷用紙への塗布量は、特に限定されないが、生産コストやベタつきの抑制、インキの密着性の改善効果等の観点から、固形分換算で0.01~3g/m2が好ましく、より好ましくは0.01~1g/m2、さらに好ましくは0.02~0.5g/m2である。
アンカー剤の印刷用紙への塗布装置としては、当業界で公知の各種塗布装置を用いることができ、特に限定されない。例えば、ダイコーター、バーコーター、リップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター等の塗布装置を使用することができる。
(14a)インキの種類
本実施形態に係る印刷用紙は、従来から汎用されている酸化重合型成分、蒸発乾燥型成分や浸透乾燥型成分等を含むパルプ紙用の油性インキに対して優れた印刷適性を有するため、パルプ紙から本実施形態に係る印刷用紙に入れ替えても、インキを入れ替える必要がない。また、本実施形態に係る印刷用紙は、蒸発乾燥型成分や浸透乾燥型成分の少ない合成紙用の油性インキや、紫外線硬化型インキに対しても優れた印刷適性を有する。
以上詳述したとおり、本実施形態に係る印刷用紙は、オフセット印刷は勿論のこと、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等、種々の印刷方式に対応可能である。
本実施形態に係る印刷用紙は、前述のような各種印刷を行うことにより、高光沢で耐候性に優れる印刷物を得ることができる。そのため、例えば、ポスター、パンフレット、カタログ、看板やメニュー等の商業印刷物、本、地図、ブックカバーやしおり等の出版物、包装紙等として有用である。これらの用途の中でも、本実施形態に係る印刷用紙は、その基本性能の高さから、例えば日光や雨水の影響を受ける屋外使用を前提とした用途(例えば選挙用ポスターや看板用ポスターなど)や、サウナや大衆浴場、浴室等の水に晒される用途(ポスターなど)や、飲食店等のメニュー等の水に接触するおそれのある用途において殊に有用である。しかも、パルプ紙用の油性インキ及び合成紙用の油性インキの双方に対応可能であるため、インキの入れ替えを必要とせず、印刷加工の作業性を向上させることができるものである。
(I)ポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)80質量部、炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製、平均粒子径:1.25μm)19.5質量部、および二酸化チタン(商品名:タイペークCR-60、石原産業社製、平均粒子径:0.21μm)0.5質量部を混合した樹脂組成物(5)を、270℃に設定した押出機で溶融混練した。その後、これをシート状に押し出し、さらにこれを冷却ロールにより冷却して、無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを150℃にまで再度加熱させた後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向に4.8倍の延伸を行って縦延伸樹脂フィルムを得た。
塗布剤成分としてカチオン系メタクリル酸エステル共重合体を以下の手順で合成した。これは主に帯電防止剤として用いる。次いでこれを水で希釈して塗布剤を調製した。
環流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管、及び攪拌装置を取り付けた四つ口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート35質量部、エチルメタクリレート20質量部、シクロヘキシルメタクリレート20質量部、ステアリルメタクリレート25質量部、エチルアルコール150質量と、アゾビスイソブチロニトリル1質量部とを添加し、窒素気流下に80℃で6時間重合反応を行った。次いで、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルアンモニウムクロリドの60質量%エチルアルコール溶液70質量部を加え、さらに80℃で15時間反応させて、下記の化学式で表される第4級アンモニウム塩構造を側鎖に有するメタクリル酸エステル共重合体を得た。
次いで、これに水を滴下しながらエチルアルコールを留去して、最終的に固形分濃度が3%の水溶液を得て、これを塗布剤とした。
上述の実施例1の樹脂組成物(1)に代えて、表1に記載の樹脂組成物(2)又は樹脂組成物(3)を用いた以外は、実施例1と同様の手順を行って、実施例2及び比較例1の印刷用紙を得た。得られた各印刷用紙について、詳細後述する方法により、空孔率、不透明度、白色度、および外観(シート成形性)を評価し、また油性オフセット印刷を行った際の溶剤アタック及びグロスゴーストの評価を行った。評価結果を、表2にまとめて示す。
上述の実施例1の樹脂組成物(1)に代えて、表1に記載の樹脂組成物(3)を用い、実施例1の樹脂組成物(4)に代えて、表1に記載の樹脂組成物(1)を用いた以外は、実施例1と同様の手順を行って、実施例3の印刷用紙を得た。この印刷用紙は、図4に示す実施形態に係る印刷用紙である。つまり、実施例4の印刷用紙の積層構成〔(3)/(1)/(5)/(1)/(3)〕は、図4に示す積層構成〔(B42)/(B41)/(A41)/(B41)/(B42)〕に対応している。なお、この印刷用紙の最外層(B42)は、ゼオライトを含まない多孔質熱可塑性樹脂フィルムである。
(1)空孔率
印刷用紙の空孔率は、電子顕微鏡で観察した印刷用紙の断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めた。具体的には、測定対象の印刷用紙の任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて測定対象の印刷用紙の面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付けた。観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍~3000倍の拡大倍率)において印刷用紙の空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込んだ。得られた画像データは画像解析装置にて画像処理を行い、印刷用紙の一定領域における空孔部分の面積率(%)を求めて、空孔率(%)とした。この場合、任意の10箇所以上の観察における測定値を平均して、空孔率とした。
印刷用紙の不透明度は、JIS P8149:2000に準拠し、測定背面に、黒色および白色標準板を当て、光の反射率の比(黒色板/白色板)を百分率で示した値として求めた。
印刷用紙の白色度は、JIS L1015:1999に規定される方法に準拠し、カラーメーターを用いて測定される値である。カラーメーターとして、スガ試験機社製のタッチパネル式カラーコンピューター SM-Tを用いた。
印刷用紙の成形時の、水分発泡に起因する表面欠陥が目視確認できる度合いを、以下の基準で評価した。
◎:確認できない(実用レベル)
○:若干確認できるが、あまり目立たない(実用レベル)
△:確認でき、やや目立つ(実用レベル)
×:非常に数多く確認でき、目立つ(不可レベル)
各実施例、比較例から得られた各印刷用紙を、縦100mm×横100mmサイズの正方形に切り出し、評価用サンプルとした。
次いで、RI印刷適性試験機、および油性オフセットインキ(商品名:Fusion-G MK墨、DIC社製)を用いて、同評価用サンプルの片面に3.5g/m2のインキ量で印刷を行い、印刷終了後、1日間室内に放置してインキを自然乾燥させた。なお、この油性オフセットインキは、パルプ紙用のインキとして市販されているものである。
次いで、同印刷サンプルを縦50mm×横50mmサイズの正方形に切り出し、印刷面を下に向けて平坦な台の上に乗せ、サンプルの四隅と台との距離を測定し、その平均値を求めてカール高さを算出した。同カール高さが好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下である場合は、溶剤アタックが抑制されていると評価することができる。
得られた印刷用紙の両表面に、以下の方法で油性オフセット印刷を施して、得られた印刷物を以下の方法、及び判定基準で評価した。
菊四截寸延び4色オフセット印刷機(機器名:Ryobi524GX、リョービMHIグラフィックテクノロジー社製)、および油性オフセットインキ(商品名:Fusion-G MK墨,藍,紅,透明黄、DIC社製)を用いて、各実施例、比較例から得られた各印刷用紙に油性オフセット印刷を行った。この油性オフセットインキは、パルプ紙用のインキとして市販されているものである。
また、印刷条件として、印刷室内の温度を20~25℃に、相対湿度を40~60%に調整し、印刷する絵柄は先刷り用として文字、図形、写真画像および空白部を含む絵柄を用い、後刷り用としてベタ画像および平網画像を含む絵柄を用い、色順を墨、藍、紅、黄の順とし、印刷速度は8000枚/hrとした。
得られた印刷物を、下記の手順で観察し、下記の基準で評価した。
先ず後刷り印刷の1日後(24時間後)に、後刷り印刷面における単色墨ベタ部において、先刷り面の印刷部(絵柄)に対応する箇所と、先刷り面の非印刷部に対応する箇所との、見た目の色(光沢)の違いが目視確認できる度合いを、以下の基準で評価した。
◎:確認できない(実用レベル)
○:一部に確認できるが、あまり目立たない(実用レベル)
△:一部に確認でき、やや目立つ(不可レベル)
×:明瞭に確認でき、目立つ(不可レベル)
実施例1~3の印刷用紙の評価結果から、本願発明に係る印刷用紙は、パルプ紙に使用される油性オフセットインキを用いて印刷加工を施すことができ、酸化分解ガス及び溶剤ガスによるシミやグロスゴーストの発生を抑制することができるという、優れた品質を具備するものであった。つまり、本願発明に係る印刷用紙は、油性オフセットインキによる両面印刷に適している。
A11,A21,A31,A32,A41,A51,A52 中間層
B11,B21,B31,B41,B42,B51,B52 多孔質熱可塑性樹脂フィルム
Claims (9)
- 熱可塑性樹脂フィルムからなる中間層と、その少なくとも一面に積層される多孔質熱可塑性樹脂フィルムとから構成され、
前記多孔質熱可塑性樹脂フィルムが、SiO2/Al2O3モル比が5以上のゼオライトを含むことを特徴とする印刷用紙。 - 前記多孔質熱可塑性樹脂フィルムにおける前記ゼオライトの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し5~50質量部である、請求項1に記載の印刷用紙。
- 前記多孔質熱可塑性樹脂フィルムが、前記ゼオライト以外の無機微細粉末を含む、請求項1又は2に記載の印刷用紙。
- 前記ゼオライトと前記無機微細粉末の合計含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し50~195質量部である請求項3に記載の印刷用紙。
- 前記ゼオライトの含有量が、前記無機微細粉末100質量部に対し5~80質量部である請求項3又は4に記載の印刷用紙。
- 前記無機微細粉末が炭酸カルシウムである、請求項3~5の何れか一項に記載の印刷用紙。
- 前記多孔質熱可塑性樹脂フィルムが延伸フィルムである、請求項1~6の何れか一項に記載の印刷用紙。
- 前記多孔質熱可塑性樹脂フィルムが最外層に積層される請求項1~7の何れか一項に記載の印刷用紙。
- 前記多孔質熱可塑性樹脂フィルムの前記中間層が積層される面とは反対側の一面に、前記ゼオライトを含まない多孔質熱可塑性樹脂フィルムを備える、請求項1~7の何れか一項に記載の印刷用紙。
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