JP3753319B2 - 熱可塑性樹脂フィルムの表面処理方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂フィルムの表面処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性樹脂フィルムの表面に特定の酸化処理を行った後、特定の表面改質剤を塗布し、皮膜を形成せしめ、ついで少なくとも一方向に延伸を行うことにより、オフセット印刷適性や溶融熱転写プリンター適性が良好で、かつ印刷物の耐水性に優れた熱可塑性樹脂フィルムを得る方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、屋外宣伝用ステッカーや冷凍食品用容器に貼着されるラベルとしては、該ステッカーやラベル用紙であるコート紙の耐水性が乏しいので、それを補強するために、該コート紙の表面を更にポリエステルフィルムで被覆したコート紙が用いられていた。
近年、この様なラベル用紙として耐水性が良好な熱可塑性樹脂フィルム、なかでもポリオレフィン系合成紙が上記ポリエステルフィルム被覆コート紙に代替する有望な素材として注目されている。この様な樹脂フィルムは公知であり、その詳細については、例えば特公昭46−40794号、特公昭49−1782号、特開昭56−118437号、特開昭57−12642号および特開昭57−56224号の各公報等に記載されている。
【0003】
しかし、この様なポリオレフィン系合成紙は、その原料であるポリオレフィンが無極性であることから、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の印刷適性や溶融熱転写プリンターや昇華熱転写プリンター等のプリンター適性において必ずしも満足すべきものでない。そのため、適当な表面処理を施してから使用するのが普通である。
【0004】
この様な表面処理の一つとして、ポリオレフィン合成紙の製造時に延伸前のフィルム表面にコロナ放電処理酸化処理を施し、更に表面に塗被液を塗布した後延伸し、場合によりさらに表面にコロナ放電処理等の酸化処理を施す方法が知られている。例えば特開平7−266417号公報には、縦延伸したフィルムに30〜100w・分/m2のコロナ処理を行い、処理面にエチレン含量が20〜45モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体の塗液をコ―ティングし、乾燥後テンターで横方向に延伸し、さらに30〜100w・分/m2のコロナ処理を行うことを特徴とする積層樹脂フィルムの製造方法が開示されている。しかし、この方法により製造される積層樹脂フィルムは溶融熱転写適性およびオフセット印刷適性が不足しているため、改善が望まれていた。
【0005】
特開平11−323267号公報には、特定の範囲のエチレン含有量にあるエチレンと易接着性付与官能基含有エチレン性不飽和化合物との共重合体を含む接着層を重合体フィルム上に形成した凸版印刷適性に優れた易接着性フィルムが開示されている。しかし、この易接着性フィルムも、オフセット印刷への印刷適性および溶融熱転写適性がともに不足しおり、改善が望まれていた。
【0006】
本発明者らは、熱可塑性樹脂フィルム上に不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)を、非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤、カチオン性水溶性高分子からなる群から選ばれる少なくとも一種を分散剤(b)として用いて、水中に分散させた水性分散液であって、(a)/(b)の固形分あたりの重量の比率が100/1〜100/30であり、平均粒子径が5μm以下である樹脂水性分散液を塗工、乾燥されることで得られる熱転写用画像受容フィルムを提案した(特願2000−365265号明細書)。
しかし、この熱転写画像受容フィルムも、溶融熱転写適性は良好なものの、オフセット印刷適性、特にオフセット印刷物の耐水性に問題があり、改善の余地が残されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶融熱転写適性およびオフセット印刷適性に優れ、さらに印刷物の耐水性に優れた熱可塑性樹脂フィルムを提供することを課題とした。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂フィルムを表面酸化処理した後、特定の表面改質剤を塗布して延伸すれば優れた特性が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂フィルム(i)の表面を酸化処理した後、表面改質剤(A)を塗布し、次いで延伸する工程からなる熱可塑性樹脂フィルム(i)の表面処理方法において;前記表面改質剤(A)が、不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)を、非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤、カチオン性水溶性高分子からなる群から選ばれる少なくとも一種を分散剤(b)として用いて、水中に分散させた水性分散液であって、(a)/(b)の固形分あたりの重量の比率が100/1〜100/30であり、かつ、前記表面改質剤(A)に含まれる樹脂の平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする表面処理方法を提供するものである。
【0009】
好ましい前記熱可塑性樹脂フィルム(i)として、熱可塑性樹脂よりなる基材層(ii)を縦延伸した後、該基材層(ii)の少なくとも片面に熱可塑性樹脂よりなる表面層(iii)を積層した多層樹脂フィルムであって、前記延伸が横延伸であるものと、熱可塑性樹脂よりなる基材層(ii)の少なくとも片面に熱可塑性樹脂よりなる表面層(iii)を積層した多層樹脂フィルムであって、前記延伸が縦延伸であるものを挙げることができる。また、熱可塑性樹脂40〜100重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー60〜0重量%を含有する基材層(ii)と、熱可塑性樹脂25〜100重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー75〜0重量%を含有する表面層(iii)とからなる多層樹脂フィルムも好ましい。本発明の表面処理方法実施後の熱可塑性樹脂フィルム(i)の次式で示される空孔率は10〜60%であることが好ましい。
【数2】
Figure 0003753319
【0010】
本発明において、熱可塑性樹脂フィルム(i)はポリオレフィン系樹脂からなるものであることが好ましく、特にプロピレン系樹脂からなるものであることが好ましい。本発明における酸化処理は、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、およびオゾン処理より選ばれた少なくとも一種の処理であることが好ましい。特に、10〜200W・分/m2で行われるコロナ処理、または8,000〜200,000J/m2で行われるフレーム処理であることが好ましい。また、本発明で用いる分散剤(b)はカチオン性水溶性高分子であることが好ましい。さらに、表面改質剤(A)の乾燥後の塗工量は0.005g/m2以上であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において、熱可塑性樹脂フィルム(i)の表面を酸化処理した後、表面改質剤(A)を塗布し、次いで延伸を行う本発明の方法について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。
【0012】
[熱可塑性樹脂フィルム(i)]
本発明の方法を適用する熱可塑性樹脂フィルム(i)に使用される熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0013】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、本発明の効果をより一層発揮するためには非極性のポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。更にポリオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂が、耐薬品性、コストの面などから好ましい。かかるプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体でありアイソタクティックないしはシンジオタクティックおよび種々の程度の立体規則性を示すポリプロピレン、プロピレンを主成分とし、これと、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンとの共重合体が使用される。この共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
また、プロピレン単独重合体を用いる場合は、延伸性を良好とするためポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のプロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25重量%配合することが好ましい。
【0014】
熱可塑性樹脂フィルム(i)は、単層であっても、基材層(ii)と表面層(iii)の2層構造であっても、基材層(ii)の表裏面に表面層(iii)が存在する3層構造であっても、基材層(ii)と表面層(iii)間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造であっても良く、また、無機微細粉末や有機フィラーを含有していないもの、含有しているものでも良い。
【0015】
熱可塑性樹脂フィルム(i)がポリオレフィン系樹脂フィルムであり、(i)が単層であって、無機微細粉末および/または有機フィラーを含有する場合は、通常ポリオレフィン系樹脂40〜99.5重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー60〜0.5重量%を含有し、好ましくはポリオレフィン系樹脂50〜97重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー50〜3重量%を含有する。熱可塑性樹脂フィルム(i)が多層構造であって基材層(ii)および表面層(iii)が無機微細粉末および/または有機フィラーを含有する場合は、通常基材層(ii)がポリオレフィン系樹脂40〜100重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー60〜0重量%を含有し、表面層(iii)がポリオレフィン系樹脂25〜100重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー75〜0重量%を含有し、好ましくは基材層(ii)がポリオレフィン系樹脂50〜97重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー50〜3重量%を含有し、表面層(iii)がポリオレフィン系樹脂30〜97重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー70〜3重量%を含有する。
【0016】
単層構造、または多層構造の基材層(ii)に含有される無機微細粉末および/または有機フィラーが60重量%を超えると、縦延伸後に行う横延伸時に延伸樹脂フィルムが破断し易い傾向がある。表面層(iii)に含有される無機微細粉末および/または有機フィラーが75重量%を超えると、横延伸後の表面層の表面強度が低く紙剥けが起こりやすい傾向がある。
【0017】
無機微細粉末としては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ等が挙げられ、その平均粒径が好ましくは0.01〜15μm、より好ましくは0.2〜7μmのものが使用される。平均粒径が0.01μm未満では熱可塑性樹脂との混合時に分級や凝集等のトラブルが起こりやすく、15μmを超えると着色斑が生じやすい傾向がある。
【0018】
熱可塑性樹脂フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムである場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状オレフィンの重合体、環状オレフィンとエチレンの共重合体等のポリオレフィン樹脂の融点よりは高い融点(例えば、120〜300℃)ないしはガラス転移温度(例えば、120℃〜280℃)を有するものが使用される。
【0019】
更に必要により、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤等を配合してもよい。安定剤として、立体障害フェノール系やリン系、アミン系等を0.001〜1重量%、光安定剤として、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などを0.001〜1重量%、無機微細粉末の分散剤、例えば、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を0.01〜4重量%配合してもよい。
【0020】
[樹脂フィルムの成形]
熱可塑性樹脂フィルムの成形方法は特に限定されず、従来公知の種々の方法が使用できるが、具体例としてはスクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形、熱可塑性樹脂と有機溶媒やオイルとの混合物のキャスト成形またはカレンダー成形後の溶剤やオイルの除去、熱可塑性樹脂の溶液からの成形と溶媒除去などを挙げることができる。
延伸する場合には、公知の種々の方法が使用できるが、具体例としてはロールの周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸などを挙げることができる。
【0021】
[樹脂フィルム]
本発明の方法を適用する熱可塑性樹脂フィルム(i)は、熱可塑性樹脂を用い、延伸されたものでも、延伸されていないものでも良いが、表面処理の後に延伸することが可能なものであることが必要である。また、無機微細粉末や有機フィラーを含有していないものであっても、また含有しているものであっても良い。また、延伸された基層の少なくとも片面に延伸されていない樹脂層を設けてなるものであっても良い。
【0022】
熱可塑性樹脂フィルム(i)がポリオレフィン系樹脂フィルムであり、単層であって、無機微細粉末および/または有機フィラーを含有する場合は、例えばポリオレフィン系樹脂40〜99.5重量%と、無機微細粉末および/または有機フィラー60〜0.5重量%を含有する樹脂組成物よりなる樹脂フィルムを上記成分のポリオレフィン系樹脂の融点より低い温度、好ましくは3〜60℃低い温度で一軸方向、または二軸方向に延伸することにより、フィルム表面に微細な亀裂を有し、フィルム内部に微細な空孔(ボイド)を有する微多孔性の延伸樹脂フィルムが得られる。
【0023】
また、熱可塑性樹脂フィルム(i)が多層構造である場合は、例えばポリオレフィン系樹脂40〜100重量%と無機微細粉末および/または有機フィラー60〜0重量%を含有する樹脂組成物よりなる樹脂フィルムを当該ポリオレフィン系樹脂の融点より低い温度、好ましくは3〜60℃低い温度で縦方向に延伸して基材層(ii)とし、次いでポリオレフィン系樹脂25〜100重量%と、無機微細粉末および/または有機フィラー75〜0重量%を含有する樹脂組成物よりなる樹脂フィルムを表面層(iii)を基材層の(ii)の少なくとも片面に積層して表面処理に使用できる。
【0024】
上記フィルムの中でより好ましいのは、焼成クレイ、重質ないしは軽質の炭酸カルシウム、酸化チタンおよびタルク等の無機微細粉末を5〜60重量%含有するポリオレフィン樹脂フィルムを一軸延伸して、当該微細無機粉末粒子を中心として表面に無数の亀裂を生じさせて半透明或いは不透明化せしめたものや、その表面に更に上記微細粉末を含有する樹脂組成物を積層形成したフィルムや、特公平1−60411号、特開昭61−3748号の各公報等に記載されているような、表面層に無機微細粉末を実質的に含有しないポリオレフィン樹脂フィルム層を形成した積層体である合成紙の製造に用いられる延伸前の原反シートや逐次二軸延伸の縦延伸後シート等である。
【0025】
本発明に使用する前段の表面処理に使用する樹脂フィルムの肉厚は、延伸倍率と延伸後に必要とされるフィルムの厚さに併せて適宜選択することができ、一般に20〜4000μm、好ましくは100〜3000μmの範囲のものが用いられる。
【0026】
[表面酸化処理]
上記基材の表面酸化処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理より選ばれた少なくとも一種の処理方法を用いることが好ましい。より好ましくはコロナ処理、フレーム処理である。処理量はコロナ処理の場合、600〜12,000J/m2(10〜200W・分/m2)、好ましくは1,200〜9,000J/m2(20〜150W・分/m2)である。600J/m2(10W・分/m2)未満では、コロナ放電処理の効果が不十分で、その後の表面改質剤の塗工時にはじきが生じ、12,000J/m2(200W・分/m2)超では処理の効果が頭打ちとなるので12,000J/m2(200W・分/m2)以下で十分である。フレーム処理の場合、8,000〜200,000J/m2、好ましくは20,000〜100,000J/m2が用いられる。8,000J/m2未満では、フレーム処理の効果が不十分で、その後の表面改質剤の塗工時にはじきが生じ、200,000J/m2超では処理の効果が頭打ちとなるので200,000J/m2以下で十分である。
【0027】
[表面改質剤(A)]
本発明で使用する表面改質剤(A)は、不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)を、非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤、カチオン性水溶性高分子からなる群から選ばれる少なくとも一種を分散剤(b)として用いて、水中に分散させた水性分散液であって、(a)/(b)の固形分あたりの重量の比率が100/1〜100/30であり、表面改質剤(A)に含まれる樹脂の平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする。
【0028】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)が基材との密着性と溶融熱転写を付与すると考えられる。さらに、非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤、およびカチオン性水溶性高分子からなる群から選ばれる少なくとも一種からなる分散剤(b)がオフセット印刷適性を向上させると考えられる。
【0029】
表面改質剤(A)を構成する、不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)とは、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ(土類)金属塩、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸グラフト(メタ)アクリル酸エステル−エチレン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン−ブテン共重合体、無水マレイン酸グラフトエチレン−ブテン共重合体、無水マレイン酸グラフトプロピレン−ブテン共重合体等をいう。
【0030】
これらのなかで、融点または軟化点が130℃以下のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸グラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸グラフト(メタ)アクリル酸エステル−エチレン共重合体、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン−ブテン共重合体、無水マレイン酸グラフトエチレン−ブテン共重合体、無水マレイン酸グラフトプロピレン−ブテン共重合体がインクの受理性の点から特に好ましい。
【0031】
不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)における、不飽和カルボン酸またはその無水物の含量は、2〜40重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましく、4〜15重量%が特に好ましい。
【0032】
なお、不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体において、カルボン酸をさらにアンモニウム塩やアルキルアミン塩とすることによって水中への分散性を持たせた水性分散液(以下、自己乳化型水性分散液と略す)は、オフセット印刷適性が不十分であるため好ましくない。
【0033】
本発明では、上記不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体を水中に分散させる分散剤(b)として、非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤、およびカチオン性水溶性高分子からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いる必要がある。分散剤として通常広く使用されているポリスルホン酸系ナトリウム塩等のアニオン性界面活性剤はオフセット印刷性を低下させるおそれがあるため好ましくない。
【0034】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を例示することができる。
また、非イオン性水溶性高分子としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、およびそれらの変性物、ヒドロキシエチルセルローズ等を例示することができる。
【0035】
カチオン性界面活性剤としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロリド等を例示することができる。
更に、カチオン性水溶性高分子としては、四級アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するポリマー、窒素含有(メタ)アクリルポリマー、四級アンモニウム塩構造の窒素を有する(メタ)アクリル系ポリマーを例示することができる。
【0036】
これらのなかで、熱可塑性樹脂フィルムへの密着性およびオフセット印刷適性等の観点から、窒素含有(メタ)アクリルポリマー、あるいは、四級アンモニウム塩構造の窒素を有する(メタ)アクリル系ポリマー等のカチオン性水溶性高分子を用いることが特に好ましい。
【0037】
不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)を分散剤(b)を用いて水中に分散させるには、(a)/(b)の固形分あたりの重量の比率が100/1〜100/30である必要があり、好ましくは100/2〜100/20、より好ましくは100/5〜100/15である。100/1〜100/30の範囲を逸脱して分散剤の使用量が少なくなると、不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体を水中に分散させることができない。また逆に、分散剤の使用量が多くなると、高温高湿下における溶融熱転写インク密着不良の改善効果に悪影響を及ぼす。
【0038】
本発明における(A)成分中の樹脂粒子の平均粒子径は5μm以下であることが必要であり、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは1μm以下である。5μmを超えると、水性分散液の静置安定性が悪くなるばかりでなく、熱可塑性樹脂フィルムの支持体に対する密着性も悪くなる。
【0039】
分散剤(b)を用いて、不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)を水中に分散させるには、例えば、芳香族炭化水素系溶剤に該オレフィン系共重合体を加熱溶解し、分散剤(b)を混合攪拌し、引き続き水を添加しながら相転換せしめた後、芳香族炭化水素系溶剤を溜去して水性分散液を得る方法、あるいは、特公昭62−29447号公報に開示されているように、該オレフィン系共重合体を二軸押出機のホッパーに供給し、加熱溶融させた状態に分散剤(b)の水溶液を添加して溶融混練し、引き続き水を添加して分散液を得る方法等が挙げられる。これらのなかで、分散剤(b)が、窒素含有(メタ)アクリルポリマー、あるいは、四級アンモニウム塩構造の窒素を有する(メタ)アクリル系ポリマー等のカチオン性水溶性高分子である場合は、得られる水性分散液中の樹脂粒子の平均粒子径の観点から、二軸押出機を用いることが好ましい。
本発明の表面改質剤には、必要に応じて消泡剤、濡れ剤、アンチブロッキング剤等の助剤を溶融熱転写適性およびオフセット印刷適性を損なわない範囲で添加しても構わない。
【0040】
[表面改質層の形成]
上記表面改質剤の各成分は、そのままで、或いは水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の親水性溶剤に希釈溶解させてから用いるものであるが、中でも水溶液の形態で用いるのが好ましい。溶液濃度は通常0.05〜60重量%、好ましくは0.1〜40重量%程度である。0.05重量%未満では、水分の乾燥工程や乾燥時間の延長等の工夫が必要であり、60重量%を超えると塗工斑が生じやすくなる傾向がある。
【0041】
塗工方法は、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター等により行われ、必要によりスムージングを行ったり、乾燥工程を経て余分な水や親水性溶剤を除去したりする。
【0042】
塗工量は乾燥後の固形分として0.005〜10g/m2が好ましく、0.01〜1g/m2がより好ましく、0.01〜0.6g/m2が特に好ましい。0.005g/m2未満では改善効果が不十分であり、10g/m2を超えると効果が飽和する傾向がある。
【0043】
[延伸]
本発明では、熱可塑性樹脂フィルムを表面酸化処理した後、表面改質剤を塗工し、表面改質剤の乾燥と同時に樹脂フィルムの延伸を行う。いかなる理論にも拘泥するものではないが、表面処理剤の乾燥を延伸時に行うことにより、基材と表面改質剤が強固に固着され、結果として印字物の耐水性が上昇するものと考えられる。
【0044】
延伸には、従来公知の種々の方法が使用できるが、具体例としては、非結晶樹脂の場合は使用する熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上、結晶性樹脂の場合には非結晶部分のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の範囲で、それぞれの熱可塑性樹脂に好適な公知の温度域で行うことができ、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸などを行うことができる。
【0045】
延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度であり、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)のときは110〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)のときは110〜120℃、ポリエチレンテレフタレート(融点246〜252℃)のときは104〜115℃であり、延伸プロセスや条件により適宜選択される。
【0046】
延伸倍率は、特に限定されず、目的と使用する熱可塑性樹脂の特性により適宜選択される。例を挙げると、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用する時には一方向に延伸する場合は約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは10〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用する時には一方向に延伸する場合は1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。更に、必要に応じて高温での熱処理が施される。また、延伸速度は20〜350m/分が好ましい。
【0047】
熱可塑性樹脂フィルムが、無機微細粉末ないしは有機フィラーを含有する場合、フィルム表面に微細な亀裂が、フィルム内部には微細な空孔が生じる。
延伸後の熱可塑性樹脂フィルム(i)の肉厚は、20〜500μmが好ましく、35〜300μmがより好ましい。
また本発明ではフィルムの帯電防止等の目的で、延伸後のフィルムに対して再度上記表面酸化処理を行っても構わない。
【0048】
延伸後の熱可塑性樹脂フィルムは、例えば、基材部分の上式で示される空孔率が10〜60%、密度0.650〜1.20g/cm3、不透明度75%以上、ベック平滑度が50〜25,000秒である好ましい物性を有する。
【0049】
【実施例】
以下の製造例1〜4において熱可塑性樹脂シートと表面改質剤の製造例を示し、実施例1〜9と比較例1〜6においてこれらの材料を利用した種々の表面処理方法を示し、試験例1〜2においてこれらの表面処理後の評価を行った。実施例に用いた材料の詳細を表1に示す。
なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0050】
【表1】
Figure 0003753319
【0051】
<製造例1> 熱可塑性樹脂シート(P1)の製造
PP1を85重量%、無機微細粉末(a)を15重量%配合した組成物(c’)を、240℃に設定した押し出し機にて混練した後、シート状に押し出し、冷却装置にて冷却して無延伸シートを得た。尚、上記のシート状に押し出した組成物および以下の押出や積層に使用する組成物には、使用するプロピレン単独重合体と炭酸カルシウムの合計量100重量部に対して3−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール0.05重量部とフェノール系安定剤(チバガイキー社製、商品名:イルガノックス1010)0.05重量部、リン系安定剤(ボーグワーナー(株)製、商品名:ウエストン618)0.05重量部を配合した。このシートを140℃の温度に加熱して、縦方向に5倍延伸した。PP2を50重量%、無機微細粉末(a)を50重量%混合した組成物(a’)を250℃に設定した押し出し機により溶融混練したものと、PP2を55重量%、無機微細粉末(a)を45重量%混合した組成物(b’)を250℃に設定した別の押し出し機で溶融混練したものをダイ内で積層し、この積層物を(a’)が外側となるように上記にて得られた縦5倍延伸シートの両面に共押し出しして5層積層物(a’/b’/c’/b’/a’)である熱可塑性樹脂シート(P1)を得た。
【0052】
<製造例2> 熱可塑性樹脂シート(P2)の製造
横延伸前樹脂シートの製造例1におけるa’の組成中のPP2をPP3に変更した以外は、製造例1と同様にして5層積層物を得て、これを熱可塑性樹脂シート(P2)とした。
【0053】
<製造例3> 表面改質剤(A1)の製造
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート62.9重量部、ブチルメタクリレート71重量部、ラウリルメタクリレート25.4重量部およびイソプロピルアルコール200重量部を攪拌機、乾留冷却器、温度計、滴下ロートを装置した4つ口フラスコ内に仕込み、窒素ガス置換後、2,2’ーアゾビスイソブチロニトリル0.9重量部を重合開始剤として添加し、80℃にて4時間重合反応を行った。次いで、酢酸24重量部で中和した後、イソプロピルアルコールを溜去しながら水を添加し、最終的に固形分35%の粘調な分散剤の水溶液を得た。
【0054】
同方向かみ合い型二軸押出機(池貝社製、商品名:PCM45φ)に、エチレン−メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量10%、MFR35g/10分)を100重量部/時間の割合で連続的に供給した。また、同押出機の第一の注入口より上で調製した分散剤の水溶液を22.9重量部/時間(分散剤としての固形分としては8重量部/時間)の割合で連続的に供給し、また、押出機の第二の注入口から水を70重量部/時間の割合で連続的に供給しながら加熱温度(シリンダー温度)130℃で連続的に押出し、乳白色の樹脂水性分散液を得た。この樹脂水性分散液を250メッシュのステンレス製金網でろ過し、固形分が45%になるように水を追加してカチオン性水溶性(メタ)アクリル樹脂を含む表面改質剤(A1)を得た。
この樹脂水性分散液の平均粒子径を、レーザー式粒度分布測定装置(島津社製、SALDー2000)で測定したところ0.74μmであった。
【0055】
<製造例4> 表面改質剤(B1)の準備
エチレン−アクリル酸アンモニウム塩共重合体の自己乳化性水性液であるザイクセンA(住友精化(株)製、分散剤未使用品)を用意し、これを表面改質剤(B1)とした。
【0056】
<実施例1>
(1)酸化処理
熱可塑性樹脂シート(P1)の表の面にコロナ放電処理機(春日電気(株)製、HFS400F)を用いてコロナ放電処理を行った。このとき、アルミ電極とトリータロールにはシリコーン被覆ロールを用い、電極とロールとのギャップを2mmとし、ライン速度約30m/分、印加エネルギー密度100W・分/m2にて処理を行った。
(2)表面改質剤の塗布
上記のコロナ放電処理を行った表面に、表面改質剤(A)を乾燥時の塗工量が約0.15g/m2になるように塗布し、下記のテンターオーブンに導いた。
(3)延伸
上記の酸化処理と塗工を施した熱可塑性樹脂シートをテンターオーブンにて155℃に加熱した後、横方向に8.5倍の延伸を行って、厚さ110μmの5層積層フィルム(各層の厚さ6μm/23μm/52μm/23μm/6μm)を得た。
【0057】
<比較例1>
表面改質剤の塗工を行わないほかは、実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。
【0058】
<比較例2>
延伸前にコロナ放電処理を行わずに、表面改質剤(A1)を塗工した以外は、実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。表面改質剤(A1)の塗布時にはじきが発生した。均一な塗工面が得られなかったため評価を中止した。
【0059】
<比較例3>
表面改質剤(A1)を表面改質剤(B1)に変更した以外は、実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。
【0060】
<実施例2〜3>
塗工量を表2に示した量に変更した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。
【0061】
<実施例4〜5>
延伸前のコロナ処理量を表2に示した量に変更した以外は、実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。
【0062】
<比較例4>
延伸前のコロナ処理量を5W・分/m2に変更した以外は、実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。表面改質剤(A1)の塗布時にはじきが生じて均一な塗布面が得られなかったため評価を中止した。
【0063】
<実施例6>
延伸前の5層積層物(P1)の両表面を、ダイレクトフレームプラズマ処理機(フリンバーナー社(FLYNN BURNER社)製、フリンF3000)を用いて、燃焼ガスにプロパンを使用し、ライン速度40m/分、印加エネルギー37,700J/m2にてフレーム処理を行った点以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。
【0064】
<実施例7>
延伸前のフレーム処理の印加エネルギーを28000J/m2とした以外は、実施例6と同様の操作によりフィルムを作製した。
【0065】
<実施例8>
フレーム処理の印加エネルギーを60600J/m2、ライン速度70m/分とした以外は、実施例6と同様の操作によりフィルムを作製した。
【0066】
<実施例9>
熱可塑性樹脂シート(P2)を用いた以外は、実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。
【0067】
<比較例5>
熱可塑性樹脂シート(P1)を酸化処理および表面改質剤の塗布を行わずに実施例1と同様な方法で延伸処理を行い、その後に実施例1と同様な方法で酸化処理および表面改質剤(A)の塗布を行った。その後、乾燥温度60℃で乾燥を行って厚さ110μmの5層積層フィルム(各層の厚さ6μm/23μm/52μm/23μm/6μm)を作製した。
【0068】
<比較例6>
表面改質剤(A)の塗工後の乾燥温度を155℃に変更した以外は比較例5と同様な操作によりフィルムを作製した。乾燥後のフィルムの大部分に収縮が生じたため評価を中止した。
【0069】
<試験例1>
実施例1〜9および比較例1〜6で作製したフィルムの溶融熱転写適性を以下のようにして評価した。なお、印画にはバーコードプリンター((株)テック社製、商品名:B−30−S5)と溶融型樹脂性インクリボン((株)リコー社製、商品名:B110C)を用いた。
【0070】
〔インク転写性評価〕
フィルムの片面に、上記のプリンターおよびインクリボンを用いて、35℃、相対湿度85%の条件下でバーコードの印字を行い、インク転写性を下記の5段階で評価した。
5:良好(鮮明な画像が得られる)
4:可 (バーコード印字等に若干のかすれが見られるが、実用レベルを維持している。)
3:不可(バーコード印字等に線切れが生じる)
2:不可(印字文字の読み取りが困難)
1:不可(ほぼインクが転写されない)
【0071】
〔インク密着性評価〕
フィルムの片面に、上記のプリンターおよびインクリボンを用いて、23℃、相対湿度50%の条件下でバーコードの印字を行った。その印字物を35℃、相対湿度85%の条件下で2時間以上状態調節した後、その面にセロファンテープを貼り付け、十分密着させた後にゆっくりセロファンテープを剥離してインク密着性を下記の5段階で評価した。
5:良好(全くインクが剥離しない)
4:可 (僅かな部分のインクが剥離したが、実用レベルを維持している)
3:不可(剥離部分が25%未満であった)
2:不可(剥離部分が25%〜75%であった)
1:不可(剥離部分が75%超であった)
【0072】
<試験例2> オフセット印刷適性の試験
実施例1〜9および比較例1〜6で作製したフィルムのオフセット印刷適性を以下のようにして評価した。なお、評価には印刷機((株)明製作所社製、商品名:RI−III型印刷適性試験機)と印刷インク((株)T&K TOKA社製、商品名:ベストキュアー161(墨))を用いた。
【0073】
〔インク転移性〕
フィルムを23℃、相対湿度50%の雰囲気下で3日間保管した後、フィルムの塗布面に上記印刷機に上記インクを1.5g/m2の厚さとなるように印刷し、印刷面を光反射濃度計((株)コルモーゲン社製(米国)、商品名:マクベス濃度計)にてマクベス濃度を測定した。
【0074】
〔インク密着性〕
フィルムを23℃、相対湿度50%の雰囲気下で3日間保管した後、フィルムの塗布面に上記印刷機に上記インクを1.5g/m2の厚さとなるように印刷し、アイグラフィック(株)製メタルハライド灯(80W/cm)1灯の下で10cmのところを10m/分の速度で1回通過させて照射した後、密着強度測定機(熊谷理機工業(株)社製、商品名:インターナルボンドテスター)にて密着強度を測定した。
上記密着強度の測定原理は、印刷面にセロファンテープを貼った試料の上面にアルミアングルを貼り付け、下面も同じく所定のホルダーにセットし90度の角度よりハンマーを振り下ろし、そのアルミアングルに衝撃を加えその際の剥離エネルギーを測定するものである。密着強度が1.2Kg・cm以上を合格とする。
【0075】
〔耐水性〕
フィルムを23℃、相対湿度50%の雰囲気下で3日間保管した後、フィルムの塗布面に上記印刷機に上記インクを1.5g/m2の厚さとなるように印刷し、アイグラフィック(株)製メタルハライド灯(80W/cm)1灯の下で10cmのところを10m/分の速度で1回通過させて照射した後、その印刷物を23℃の水中に3時間漬け込んだ。その後、水中にて印刷面同士を折り曲げつつ印刷面同士を30秒間に30回擦り合わせることで印刷面の水中での擦過性を評価した。評価基準は以下の通りである。
5:良好(全くインクが剥離しない)
4:可 (僅かな部分のインクが剥離したが、実用レベルを維持している)
3:不可(剥離部分が25%未満であった)
2:不可(剥離部分が25%〜75%であった)
1:不可(剥離部分が75%超であった)
【0076】
フィルム作製時の処理条件と試験結果をまとめて表2〜3に示した。なお、表にはフィルムの空孔率も併せて示した。
【0077】
【表2】
Figure 0003753319
【0078】
【表3】
Figure 0003753319
【0079】
【発明の効果】
本発明により、溶融熱転写印刷において高温・高湿環境下におけるインクの転写性、密着性および耐水密着性に優れ、かつオフセット印刷においてインクの転移性、密着性および耐水性に優れた熱可塑性樹脂フィルムを提供することができた。

Claims (11)

  1. 熱可塑性樹脂フィルム(i)の表面を酸化処理した後、表面改質剤(A)を塗布し、次いで延伸する工程からなる熱可塑性樹脂フィルム(i)の表面処理方法において、
    前記表面改質剤(A)が、不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)を、非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤、およびカチオン性水溶性高分子からなる群から選ばれる少なくとも一種を分散剤(b)として用いて、水中に分散させた水性分散液であって、
    (a)/(b)の固形分あたりの重量の比率が100/1〜100/30であり、
    前記表面改質剤(A)に含まれる樹脂粒子の平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする表面処理方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂フィルム(i)が、熱可塑性樹脂よりなる基材層(ii)を縦延伸した後、該基材層(ii)の少なくとも片面に熱可塑性樹脂よりなる表面層(iii)を積層した多層樹脂フィルムであって、前記延伸が横延伸であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂フィルム(i)が、熱可塑性樹脂よりなる基材層(ii)の少なくとも片面に熱可塑性樹脂よりなる表面層(iii)を積層した多層樹脂フィルムであって、前記延伸が縦延伸であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂フィルム(i)が、熱可塑性樹脂40〜100重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー60〜0重量%を含有する基材層(ii)と、熱可塑性樹脂25〜100重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー75〜0重量%を含有する表面層(iii)とからなる多層樹脂フィルムであることを特徴とする請求項2または3に記載の表面処理方法。
  5. 前記表面処理方法実施後の前記熱可塑性樹脂フィルム(i)の次式で示される空孔率が10〜60%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理方法。
    Figure 0003753319
  6. 前記熱可塑性樹脂フィルム(i)が、ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理方法。
  7. 前記ポリオレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の表面処理方法。
  8. 前記酸化処理が、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、およびオゾン処理より選ばれた少なくとも一種の処理であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理方法。
  9. 前記酸化処理が、10〜200W・分/m2で行われるコロナ処理、または8,000〜200,000J/m2で行われるフレーム処理であることを特徴とする請求項8に記載の表面処理方法。
  10. 前記分散剤(b)がカチオン性水溶性高分子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の表面処理方法。
  11. 前記表面改質剤(A)の乾燥後の塗工量が0.005g/m2以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の表面処理方法。
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