JP7136104B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
一般的に摩擦によりトナー粒子が機械的、熱的なストレスを受けると、外添剤の埋没や遊離が起こり、初期の帯電量を維持できず、カブリが発生しやすくなる。特に規制ブレードとの摩擦によりトナーを帯電させる非磁性一成分現像装置に用いる場合は、これらの問題が大きな課題となっている。
以上のような背景から、帯電安定性に優れ、耐久性を有するトナーが求められており、トナーに用いる樹脂成分、帯電制御剤、外添剤などの改良が行われている。
特許文献2には、アルキルエーテルを介して、芳香環とサリチル酸構造とが結合する構造を有する帯電制御樹脂を含有するトナーが開示されている。当該トナーでは、プリントアウトを多数枚実施した場合の凝集性の上昇が抑制され、耐久性に優れる旨記載されている。
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、高温高湿環境下において印字耐久性に優れ、現像ローラ上の搬送量安定性にも優れる静電荷像現像用トナーを提供することである。
本発明の静電荷像現像用トナーは、前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が40~250ppmの範囲であることが好ましい。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、特定の帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を有する。
上述のように、近年の高性能な電子写真方式を用いたレーザープリンターや複写機においては、現像ローラ上へのトナーの搬送量安定性、印字耐久性を高いレベルで兼ね備えたトナーが求められている。
少量でトナーに大きな帯電量を付与することが可能なことから、搬送量を安定させる手段として、特許文献2に記載されているような極性が高い官能基を有する帯電制御樹脂が用いられてきた。
また、トナーの印字耐久性を向上させる手段としては、一般的に、着色樹脂粒子中の帯電制御樹脂を増加させる手段が用いられてきた。着色樹脂粒子中の帯電制御樹脂を増やすと着色樹脂粒子表面に偏在する帯電制御樹脂の層が厚くなることから、印字の際に受ける機械的ストレスによる表面状態の変化が抑制されて帯電量の変化が起こり難くなり、結果として、トナーの印字耐久性が向上すると推測される。
しかしながら、従来用いられてきた極性が高い官能基を有する帯電制御樹脂を用いた場合には、印字耐久性の向上を目的として着色樹脂粒子中の帯電制御樹脂量を増やすと、トナーの極性が高くなりすぎるため高温高湿環境下での印字耐久性が悪化するという問題が生じる。また、トナーの帯電量が大きくなりすぎることから、現像ローラ上へのトナーの搬送量も安定しなくなるため、印字耐久性を向上させる目的で、着色樹脂粒子中の帯電制御樹脂を増加させるには限界があった。
本発明では、極性が高い官能基を有する帯電制御樹脂の構成単量体単位の組成を検討し、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成にすることにより帯電制御樹脂の極性と着色樹脂粒子に付与する帯電量を最適化することで、近年のトナーに求められる高温高湿環境下での印字耐久性と現像ローラ上へのトナーの搬送量の安定性の要求レベルを兼ね備えたトナーを提供することが可能となった。
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに、乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
(A-1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤、さらに必要に応じて添加される定着助剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いて行う。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1~5質量部、好ましくは0.3~2質量部の割合で用いることが望ましい。
マクロモノマーは、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03~5質量部、さらに好ましくは0.05~1質量部用いる。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
本発明で使用する帯電制御樹脂では、前記ビニル系単量体単位として、メチルメタクリレート単量体単位、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を含有し、さらに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位を含有していてもよい。
本発明で使用する帯電制御樹脂が、メチルメタクリレート単量体単位を特定割合で含有することにより、本発明の効果を得られる理由は定かではないが、以下のように推測している。
メチルメタクリレート単量体はスチレンやn-ブチルアクリレートなどのビニル系単量体よりも極性が高いため、メチルメタクリレート単量体を上記の割合で含有する帯電制御樹脂は着色樹脂粒子表面に偏在し易くなる。また、メチルメタクリレート単量体は酸性または塩基性を示す官能基を有する単量体よりも水への親和性が高くないため、メチルメタクリレート単量体を上記の割合で含有する帯電制御樹脂を使用すると、着色樹脂粒子表面への水分の吸着が起こり難く、液架橋力によるトナー間の付着力が高くなり難い。
このような理由から、トナーの印字耐久性、特に、高温高湿環境下における印字耐久性を高くすることができるのではないかと推測している。
メチルメタクリレート単量体単位の含有割合は85.0~99.7質量%であることが好ましく、95.0~99.6質量%であることがより好ましい。
メチルメタクリレート単量体単位の含有割合上記範囲を超える場合、十分な帯電量が得られない場合がある。メチルメタクリレート単量体単位が上記範囲未満の場合、搬送量安定性が低下してしまう場合がある。
4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が上記範囲外である場合、帯電制御樹脂の帯電量を適正な範囲内への調整が困難となる。
上述した含有割合で前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を有する帯電制御樹脂であれば、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲であれば、本発明の効果を得ることができる。
前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合は0.1~10.0質量%であることが好ましく、0.5~8.0質量%であることがより好ましい。
前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が上記範囲を超える場合、印字耐久性が低下する。
ビニル芳香族炭化水素単量体の具体例としては、スチレン、ビニルトルエン、及びα-メチルスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;などが挙げられる。
(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、などのアクリル酸エステル(アクリレート)類;エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、などのメタクリル酸エステル(メタクリレート)類、エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールに炭素-炭素二重結合を有するカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物、などが挙げられる。
また、結着樹脂成分のTgと帯電制御樹脂のTgとの差が、0~55℃、好ましくは0~15℃であるものは、低温定着性と、保存性および流動性とのバランスが優れ、安定した印字品質を与えるので好ましい。
尚、本発明において、帯電制御樹脂のTgは示差熱計(DSC)によって測定される値とすることができる。また、後述する重合体のガラス転移温度の加成性を利用して得られる値としてもよい。
(1)メチルメタクリレートと、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体と、メチルメタクリレート単量体と4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体以外のビニル系単量体とを共重合することによって得る方法。
(2)(1)で得られた共重合体をパラトルエンスルホン酸やメタンスルホン酸等と反応させることによって得る方法。
(3)メチルメタクリレートと、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体と、メチルメタクリレート単量体と4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体以外のビニル系単量体とを共重合して得られた共重合体におけるジアルキルアミノアルキル基の窒素原子を4級化剤で4級化することによって得る方法。
本発明で使用する帯電制御樹脂を得るための重合法としては、乳化重合、分散重合、懸濁重合、溶液重合など、いずれの方法であってもよいが、目的とする重量平均分子量を得られることから溶液重合が特に好ましい。
重合温度および重合時間は、重合法や使用する重合開始剤の種類などにより任意に選択できるが、通常約50~200℃であり、重合時間は0.5~20時間程度である。更に、重合に際しては通常知られている添加剤、例えばアミンなどの重合助剤を併用することもできる。溶液重合後は、そのままトナー粒子を得るために使用してもよいし、重合溶液を貧溶剤に添加する、スチームで溶剤を除去する、減圧で溶剤を除去する等の操作を行って、共重合体を分離してから用いてもよい。
R1-COO-R2 式(1)
上記式(1)中、R1は炭素数15~21の直鎖アルキル基を示し、R2は炭素数16~22の直鎖アルキル基を示す。R1及びR2は同じ基であってもよいし、互いに異なる基であってもよい。式(1)に示すモノエステル化合物において、原料脂肪酸における炭素数(すなわちR1の炭素数に1を加えた炭素数)と、原料アルコールにおける炭素数(すなわちR2の炭素数)との差は、0~6であることが好ましく、4~6であることがより好ましい。
モノエステル化合物の融点は、63~72℃であることがより好ましく、65~70℃であることがさらに好ましい。
軟化剤の含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、より好ましくは12~22質量部であり、さらに好ましくは15~20質量部である。
上記モノエステル化合物は、上述した酸価及び水酸基価の条件をいずれも満たすことがより好ましい。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン-4-チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’-ジオクタデシル-N,N’-ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部の割合で用いることが望ましい。
本発明では、少なくとも重合性単量体、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(商品名:マイルダー、大平洋機工社製)、高速乳化分散機(商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型、プライミクス株式会社製)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
上記(A-2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60~95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1~20時間であり、更に好ましくは2~15時間である。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び軟化剤、さらに必要に応じて添加されるその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、FMミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。
得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
上述のように、ガラス転移温度を33~55℃とするために、スチレンの含有割合が55から75質量%、アルキル(メタ)アクリレートの含有割合が25~45質量%の範囲である共重合体であることが好ましい。
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96未満の場合、印字の細線再現性が悪くなるおそれがある。
本発明においては、上記着色樹脂粒子を、外添剤と共に混合攪拌して外添処理を行うことにより、着色樹脂粒子の表面に、外添剤を付着させて1成分トナー(現像剤)とする。なお、1成分トナーは、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分現像剤としてもよい。
なお、これらの外添剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用して用いることができる。中でも粒径の異なる2種以上のシリカを併用することが好ましい。
上記工程を経て得られる本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御樹脂は、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体であり、前記結着樹脂100質量部に対して、前記帯電制御樹脂を0.2~4.0質量部含有するという特徴を有する。
本発明のトナーが有する結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤に関しては、1.着色樹脂粒子の製造方法で詳細に説明したためここでは、記載を省略する。
結着樹脂のガラス転移温度の特定方法に特に制限はないが、例えば、重合体のガラス転移温度の加成性を利用することにより算出できる。
重合体のガラス転移温度は、絶対温度での加成性が成り立つことが知られている。
したがって、重合性単量体として、2種類以上のモノマーを用いた場合には、以下の計算式1及び計算式2により計算Tgを算出することができる。
計算式1:計算Tg(K)=(MA+MB+MC+・・・)/[(MA/TgA)+(MB/TgB)+(MC/TgC)+・・・]
計算式2:計算Tg(℃)=計算Tg(K)-273
(なお、上記式(I)中、MA、MB、MC、・・・は、各モノマーの添加量(質量部)を、TgA、TgB、TgC、・・・は、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を、それぞれ示す。)
静電荷像現像用トナーに含まれる、前記帯電制御樹脂の成分である前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有量は、40~250ppmであることが好ましく、50~230ppmであることがより好ましく、60~200ppmであることが更に好ましい。
静電荷像現像用トナーに含まれる4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が上記範囲を超える場合、印字濃度及び搬送量安定性が低下しやすくなる。4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が上記範囲未満の場合、かぶりが生じやすくなり、また、高温高湿下における印字耐久性が低下しやすくなる。
また、前記帯電制御樹脂が正帯電性の官能基である第4級アンモニウム塩基を含有するため、本発明の静電荷像現像用トナーは、正帯電性であることが好ましい。
所定のプリンターに印字用紙をセットし、当該プリンターにトナーを入れる。高温高湿(H/H)環境下で24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で所定枚数まで連続印字を行う。500枚毎にベタ印字(印字濃度100%)をして反射式画像濃度計でそのベタ印字部の印字濃度を測定する。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープに付着させ、それを印字用紙に貼り付ける。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B-A)をカブリ値とする。
このように得られた、印字濃度が所定の閾値以上で、且つカブリ値が所定の閾値以下の画質を維持できる連続印字枚数を印字耐久性の指標とすることができる。
搬送量安定性
(i)初期搬送量測定
上記印字耐久性試験中、500枚の試験が終了した後、特定の環境下にてプリンターを用いて、白ベタ印字を行い、次いで、2枚目の白ベタ印字を途中で停止させた後、現像ロール上に付着したトナーについて、吸引式帯電量測定装置を用いて吸引されたトナー質量、及び吸引面積を測定する。
吸引されたトナー質量、及び吸引面積に基づき、下記計算式3及び4から現像ロール上の初期搬送量(mg/cm2)を算出する。
計算式3:吸引面積(cm2)=(吸引痕の半径(cm))2×π×吸引痕の数
計算式4:現像ロール上のトナー搬送量(mg/cm2)=吸引されたトナー質量(mg)/吸引面積(cm2)
(i)と同様にして、印字耐久性試験の所定枚数での現像ロール上のトナー搬送量を算出し、これを末期搬送量(mg/cm2)とする。
(iii)搬送量安定性の算出
(i)及び(ii)の測定結果から、下記計算式5により、搬送量安定性を算出する。
計算式5:搬送量安定性=末期搬送量/初期搬送量
所定のプリンターを用いて、所定の温度におけるトナーの定着率を測定する。定着率は、当該プリンターにより試験用紙に印刷した黒ベタ領域の、所定のテープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算する。即ち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、下記計算式6から算出することができる。なお、画像濃度は、分光光度計(X-Rite社製、商品名:スペクトロアイ)等を用いて測定する。
計算式6:定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
この定着試験において、定着率が所定の閾値以上となる定着温度を、そのトナーの最低定着温度に決定する。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
[実施例1]
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート99.5部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド0.5部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=83℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂1を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
モノビニル単量体としてスチレン70部及びn-ブチルアクリレート30部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(商品名:#25B、三菱化学社製)7部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.7部、及び分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン1.0部、メディア型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行った後、帯電制御剤として(1)で得られた帯電制御樹脂1を1.5部、及び軟化剤としてステアリン酸ベヘニル(分子式:C17H35-COO-C22H45、融点:70℃、酸価:0.1mgKOH/g、水酸基価:0.3mgKOH/g)20部をさらに混合して、重合性単量体組成物を得た。
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート99.7部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド0.3部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=82℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂2を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂2を3.0部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例2の静電荷像現像用トナーを製造した。
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート86.0部、n-ブチルアクリレート8.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド6.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=65℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂3を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂3を0.3部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例3の静電荷像現像用トナーを製造した。
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート85.0部、スチレン13.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド2.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=84℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂4を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂4を0.6部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例4の静電荷像現像用トナーを製造した。
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート88.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド12.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=81℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂5を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂5を0.12部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例5の静電荷像現像用トナーを製造した。
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、スチレン90.0部、n-ブチルアクリレート8.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド2.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=82℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂6を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂6を1.6部添加した他は、実施例1と同様にして、比較例1の静電荷像現像用トナーを製造した。
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、スチレン95.0部、n-ブチルアクリレート4.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド1.0部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=68℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂7を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂7を3.0部添加した他は、実施例1と同様にして、比較例2の静電荷像現像用トナーを製造した。
(1)帯電制御樹脂の合成
反応容器内にメタノール60部、トルエン20部、メチルメタクリレート79.8部、スチレン15.0部、n-ブチルアクリレート5.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド0.2部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル0.2部を仕込み、攪拌しながら、60℃で12時間反応させた。次いで、減圧蒸留により溶剤を除去し、Tg=72℃の4級アンモニウム塩基含有共重合体からなる帯電制御樹脂8を得た。
(2)静電荷像現像用トナーの作製
上記(1)で得られた帯電制御樹脂8を15.0部添加した他は、実施例1と同様にして、比較例3の静電荷像現像用トナーを製造した。
ASTM D3418-82に準拠して、帯電制御樹脂1~8の最大吸熱ピークを示す温度(最大吸熱ピーク温度)を測定した。より具体的には、示差走査熱量計(商品名:SSC5200、セイコー電子工業社製)を用いて、共重合体試料を昇温速度10℃/分で昇温し、その過程で得られたDSC曲線の最大吸熱ピークを示す温度を測定し、当該温度をその共重合体のガラス転移温度(Tg)とした。
帯電制御樹脂1~8のTg測定結果を、各帯電制御樹脂の組成と併せて表1にまとめた。なお、下記表1中、「MMA」とはメチルメタアクリレートの添加量を、「ST」とはスチレンの添加量を、「BA」とはn-ブチルアクリレートの添加量を、それぞれ意味する。また、「4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート」とはメタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライドの添加量を意味する。
上記実施例1~5、及び比較例1~3のトナーについて、特性を調べた。詳細は以下の通りである。
(1)トナー中の結着樹脂のガラス転移温度(Tg)
結着樹脂中の重合性単量体の構成から、加成性を利用する上記計算式1及び計算式2を用いて、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)を算出した。
トナー10gを100mLのポリエチレン製の容器に入れて密閉した後、55~60℃の1℃刻みに設定した恒温水槽の中に該容器を沈め、8時間経過した後に取り出した。取り出した容器からトナーを42メッシュの篩の上にできるだけ振動を与えないように移し、粉体測定機(ホソカワミクロン社製、商品名:パウダテスタPT-R)にセットした。篩の振幅を1.0mmに設定して、30秒間、篩を振動させた後、篩上に残ったトナーの質量を測定し、これを凝集したトナーの質量とした。
この凝集したトナーの質量が0.5g以下になる最大の温度を、耐熱温度とした。
(a)トナーの定着温度測定
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(解像度600dpi、印刷速度28枚/分)の定着ロールの温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、定着試験を行った。定着試験は、改造プリンターの定着ロールの温度を変化させ、それぞれの温度でのトナーの定着率を測定した。
定着率は、改造プリンターで試験用紙に印刷した黒ベタ領域の、テープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)として、定着率は、上記計算式6から算出した。
ここで、テープ剥離操作とは、試験用紙の測定部分(黒ベタ領域)に粘着テープ(商品名:スコッチメンディングテープ810-3-18、住友スリーエム社製)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、分光光度計(商品名:スペクトロアイ、X-Rite社製)を用いて測定した。この定着試験において、定着率が80%以上になる最低定着ロール温度をトナーの最低定着温度とした。
上記プリンターに印字用紙をセットし、当該プリンターにトナーを入れた。温度32.5℃、湿度80%RHの高温高湿(H/H)環境下で24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で15,000枚まで連続印字を行った。500枚毎にベタ印字(印字濃度100%)をして反射式画像濃度計(商品名:RD918、マクベス社製)でそのベタ印字部の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(製品名:スコッチメンディングテープ810-3-18、住友スリーエム社製)に付着させ、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B-A)をカブリ値とした。この値が小さい方が、カブリが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が5以下の画質を維持できる連続印字枚数を調べた。
(i)初期搬送量測定
上記印字耐久性試験中、500枚の試験が終了した後、32.5℃、80%の環境下にてプリンター(印刷速度:40ppm)を用い、白ベタ印字を行い、次いで、2枚目の白ベタ印字を途中で停止させた後、現像ロール上に付着したトナーについて、吸引式帯電量測定装置(商品名:210HS-2A、トレックジャパン社製)を用いて、吸引されたトナー質量、及び吸引面積を測定した。
吸引されたトナー質量、及び吸引面積に基づき、上記計算式3及び4から現像ロール上の初期搬送量(mg/cm2)を算出した。
(i)と同様にして、印字耐久性試験の15,000枚終了後、又はカブリが発生した枚数での現像ロール上のトナー搬送量を算出し、これを末期搬送量(mg/cm2)とした。
(iii)搬送量安定性の算出
(i)及び(ii)の測定結果から、上記計算式5により、搬送量安定性を算出した。
尚、本試験において、末期の搬送量安定性が1.4以下であることが、トナーに求められる搬送量安定性である。
以下、表1及び表2を参照しながら、トナー評価について検討する。
まず、比較例1及び2のトナーについて検討する。表1より、比較例1及び2のトナーは、帯電制御樹脂として使用した樹脂6及び樹脂7が、メチルメタクリレート単量体単位を含有していない。
表2に示すとおり、このようにメチルメタクリレート単量体単位を含有していない帯電制御樹脂を含有する比較例1及び2のトナーでは、高温高湿環境下における印字耐久性評価枚数が8000枚以下と高温高湿環境下における印字耐久性が低かった。
また、搬送量安定性が1.66以上と高く、現像ローラ上の搬送量安定性が低かった。
次に、比較例3のトナーについて検討する。表1より、比較例3のトナーは、帯電制御樹脂として使用した樹脂8はメチルメタクリレート単量体単位の含有割合が79.8%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.2%である。
表2に示すとおり、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が79.8%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.2%である帯電制御樹脂8を含有する比較例3のトナーでは、高温高湿環境下における印字耐久性評価枚数が9000枚と高温高湿環境下における印字耐久性が低かった。
また、搬送量安定性が1.75と高く、現像ローラ上の搬送量安定性が低かった。
このようにメチルメタクリレート単量体単位を85%以上99.5%以下の範囲で、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を0.3%以上12.0%以下の範囲で含有する樹脂1~樹脂5を用いた実施例1~5のトナーでは、表2に示すとおり、高温高湿環境下における印字耐久性評価枚数が12000枚以上と、比較例1~比較例3のトナーと比較して高かった。
また、搬送量安定性も1.29以下と低く、比較例1~比較例3のトナーと比較して搬送量が安定していた。
なお、表2に示すとおり、実施例3のトナーで使用した樹脂3はメチルメタクリレート単量体単位及び4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位であるn-ブチルアクリレート単量体単位を8.0%含有し、実施例4のトナーで使用した樹脂4はメチルメタクリレート単量体単位及び4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位であるスチレン単量体単位を13%含有するが、メチルメタクリレート単量体単位及び4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位を含有しない樹脂1、樹脂2又は樹脂5を使用した実施例1、実施例2及び実施例5のトナーと比較して、トナーの耐熱保存性や印字評価が悪化することは無かった。
Claims (1)
- 少なくとも重合性単量体、着色剤、帯電制御樹脂、及び、軟化剤を含有する重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させることにより、重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を得る懸濁工程、並びに、当該懸濁液を用いて重合開始剤の存在下で懸濁重合を行うことにより着色樹脂粒子を得る工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記帯電制御樹脂は、メチルメタクリレート単量体単位の含有割合が85.0~99.7質量%、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有割合が0.3~15.0質量%、並びに、前記メチルメタクリレート単量体単位及び前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位以外のビニル系単量体単位の含有割合が0~14.7質量%の範囲である組成を有する共重合体であり、
前記懸濁工程における前記帯電制御樹脂の添加量が、前記重合性単量体100質量部に対して0.2~4質量部であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
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