JP7135718B2 - 基板保持機構、成膜装置および多結晶膜の成膜方法 - Google Patents
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本発明の基板保持機構は、保持部と、カバーと、ノズルとを備える。これらの構成を備えることで、基板と保持部との固着を防止することができる。図1に、本発明の基板保持機構の一例を概略図として示す。図1(a)は、基板保持機構100の側面図であり、基板ホルダー10と、カバー20と、ノズル30を備えている。図1(b)は、カバー20の内部が見えるよう切断した基板保持機構100の一部の断面図である。図1(c)は、図1(a)のAA線で切断したAA断面図である。また、図1(d)は、カバー20およびノズル30を用いずに化学蒸着によって多結晶膜300を成膜した後の保持部40および基板200の断面図である。
基板ホルダー10は、後述する保持部40を備え、保持部40によって母材となる基板200を保持するものであり、原料ガスやキャリアガスが導入される成膜装置のチャンバー内に設置されるものである。基板ホルダー10は、鉛直方向と平行な2つの柱11を備えている。2つの柱11は、上部と下部で連結されていてもよい。
基板ホルダー10が備える保持部40は、母材となる基板を保持するものであり、カバー20によって覆われている。例えば、保持部40は基板ホルダー10の柱11に備えられ、0.3mm~5mm程度の基板200を上下より把持して締結することができるよう、上座金41aと下座金41bからなる一対の座金41を有し、また、上座金41aの上部および下座金41bの下部に位置し、座金41による基板200の締結状態を調節可能とする上ナット42aと下ナット42bからなる一対のナット42を有している。これらの座金41とナット42が保持部40となって、基板200を上下より把持している。1つの柱11において、保持部40を複数備えることができ、これにより、基板200を複数把持することができる。また、柱11、座金41、ナット42は、化学蒸着によって多結晶膜を成膜する条件において安定な、1300℃~1600℃程度の温度に対して耐熱性を有するものを使用することができ、具体的には、カーボン製、炭化珪素製、またはこれらの複合材料を加工したものを使用することができる。
カバー20は、保持部40および保持部40に保持された基板200の一部を覆うものである。基板200の全てをカバー20で覆ってしまうと、基板200に多結晶膜を成膜することができないため、保持部40周辺のみをカバー20で覆い、基板200をカバー20の外部へ露出させるためのスリット21を備えることが好ましい。また、ノズル30から導入されたガスを内部22に導入できるよう、開口部23を備える。例えば、カバー20は、断面がコの字形状の箱の態様をとることができる。
ノズル30は、カバー20の内部22にガスを導入するものである。外部よりノズル30の内部31へ送り込まれたガスを開口部32より内部22へ導入することができる。例えば、ノズル30の開口部32が、カバー20の開口部23よりも内部22側にあることで、ガスを無駄なく内部22へ導入することができる。
本発明の基板保持機構は、保持部、カバーおよびノズル以外にも、他の構成を備えることができる。例えば、前述した基板ホルダー10の他、基板ホルダー10、カバー20、ノズル30等を固定する固定部材等を備えることができる。
本発明の成膜装置は、上記した本発明の基板保持機構を備える。この成膜装置を用いれば、母材となる基板と保持部との固着を防止しつつ、多結晶膜を成膜することができる。
本発明の多結晶膜の成膜方法は、上記した本発明の成膜装置1000を用いた、基板200に多結晶膜300を成膜する方法であり、保持工程と、成膜工程と、不活性ガス導入工程と、を含む。
多結晶膜300を成膜する対象となる基板200(母材)としては、特に限定されないが、例えばSi基板またはカーボン基板を挙げることができる。
基板200に成膜する多結晶膜300としては、特に限定されないが、例えば炭化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、炭化チタンまたはダイヤモンドライクカーボンの膜を挙げることができる。
保持工程は、保持部に基板200を保持する工程である。保持部として保持部40を用いる場合には、座金41とナット42により、基板200を上下より把持する工程が挙げられる。また、保持部として載置部45を用いる場合には、基板200を載置部45に載置する工程が挙げられる。
成膜工程は、保持工程後、化学蒸着によって基板200に多結晶膜300を成膜する工程である。化学蒸着の具体例としては、加熱した基板200上に、多結晶膜300の成分を含む原料ガスやキャリアガス等を供給し、基板200の表面や気相での化学反応により、多結晶膜を堆積する方法が挙げられる。
多結晶膜300を成膜することができれば、特に限定されず、一般的に使用される原料ガスを用いることができる。例えば、炭化珪素の多結晶膜を形成する場合には、SiCl4ガス、SiCl3CH3ガス、CH4ガス、C3H8ガス等を用いることができる。窒化チタンの多結晶膜300を形成する場合には、TiCl4ガス、N2ガス等を用いることができる。窒化アルミニウムの多結晶膜300を形成する場合には、AlCl3ガス、NH3ガス等を用いることができる。炭化チタンの多結晶膜300を形成する場合には、TiCl4ガス、CH4ガス等を用いることができる。ダイヤモンドライクカーボンの多結晶膜300を形成する場合には、アセチレン等の炭化水素ガスを用いることができる。
多結晶膜300の成膜を阻害することなく、原料ガスを基板へ展開することができれば、一般的に使用されるキャリアガスを用いることができる。例えば、H2ガス等をキャリアガスとして用いることができる。
不活性ガス導入工程は、ノズル30よりカバー20の内部22に不活性ガスを導入する工程である。本工程により、カバー20の内部22において不活性ガスが充満して多結晶膜300が基板200に成膜することができないため、基板200と保持部40(または載置部45)が多結晶膜300によって固着してしまうことを防止することができる。
導入する不活性ガスとしては、カバー20の内部22において基板200へ多結晶膜300が成膜することを防ぎ、上記の固着を防止できるガスであれば特に限定されない。例えば、希ガスや窒素ガスを用いることができ、ドーパントのおそれがない希ガスを用いることが好ましく、安価で汎用的なアルゴンガスを用いることができる。
本発明の成膜方法は、保持工程、成膜工程および不活性ガス導入工程以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、保持工程と成膜工程との間に基板を所定温度に加熱する加熱工程や、化学蒸着前の基板に、成膜を阻害するような何らかの反応が生じないよう、基板を不活性雰囲気下とするべく、希ガスや窒素ガス等の不活性ガスを流通させる工程等が挙げられる。
図1(a)に示す基板ホルダー10、カバー20、ノズル30と、保持部40を備える基板保持機構100を備える、図4に示す成膜装置1000を使用した。保持部40に基板200(4インチで厚み0.5mmのカーボン基板)を保持し(保持工程)、ノズル30よりカバー20の内部22へアルゴンガスを0.5m/sの流速にて導入した(不活性ガス導入工程)。そして、カバー20の外部の基板200のおもて面とうら面の両面に、多結晶膜300として厚み0.3mmの炭化珪素膜を成膜した(成膜工程)。成膜条件は、成膜室1010内の圧力を25kPa、温度を1350度とし、原料ガスとしてSiCl4ガスとCH4ガスを各800sccm、キャリアガスとして水素ガスを5000sccmで導入し、10時間の成膜を実施した。成膜工程終了後、不活性ガス導入工程を終了し、多結晶膜300が成膜した基板200を冷却後に成膜装置1000から取り出し、保持部40における基板200と多結晶膜300の固着の有無を確認した。結果を表1に示す。
不活性ガス導入工程において、アルゴンガスの流速を1.0m/sとすること以外は、実施例1と同様の条件で多結晶膜300を基板200へ成膜した。
カバー20の内部22へアルゴンガスを導入しないこと以外は、実施例1と同様の条件で多結晶膜300を基板200へ成膜した。
カバー20を備えない基板保持機構100を使用したこと以外は、実施例1と同様の条件で多結晶膜300を基板200へ成膜した。
実施例1、2では、カバー20を備える基板保持機構100を使用し、カバー20の内部22へアルゴンガスを0.5m/s~1.0m/sの条件で導入する不活性ガス導入工程を行うことにより、カバー20の内部22へ原料ガスおよびキャリアガスが侵入することを防止することができた。その結果として、カバー20の外部においては基板200へ多結晶膜300が均一に成膜し、その一方で、カバー20の内部においては、図1(d)に示すような多結晶膜300による基板200と保持部40との固着は認められず、基板200を保持部40から無理なく取り外すことができた。
上記の実施例の結果から、本発明によれば、カーボン基板に炭化珪素膜を成膜する際に生じていた基板と保持部との固着を防ぐことができ、その結果、多結晶膜の応力や固着による基板の破損を抑制することができる効果が得られたことは明らかである。実施例では、その一例として、カーボン基板に炭化珪素の多結晶膜を成膜する場合について紹介したが、本発明の効果は、この場合のみならず、カーボン基板やSi基板等に対し、炭化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、炭化チタンまたはダイヤモンドライクカーボン等の多結晶膜を成膜する場合においても、得られるものである。
11 柱
20 カバー
21 スリット
22 内部
23 開口部
30 ノズル
31 内部
32 開口部
40 保持部
41 座金
41a 上座金
41b 下座金
42 ナット
42a 上ナット
42b 下ナット
45 載置部
100 基板保持機構
110 基板保持機構
200 基板
300 多結晶膜
1000 成膜装置
1010 成膜室
1020 導入口
1030 排気口
1040 排出ガス導入室
1050 ボックス
1060 ヒーター
1100 筐体
d1 ノズルの内径
d2 柱の断面の直径
d3 下座金の外径
d4 カバーの水平方向の内寸幅
d5 カバーの垂直方向の内寸幅
G1 矢印
G2 矢印
Claims (7)
- 基板を保持する保持部と、
前記保持部および前記保持部に保持された基板の一部を覆うカバーと、
前記カバーの内部にガスを導入するノズルと
を備える基板保持機構であって、
前記保持部は前記基板を載置する円環状の載置部を有し、
前記基板保持機構は前記保持部を有する円柱状のロッドを備え、
前記ノズルの内径と前記ロッドの断面の直径が略同一であり、
前記載置部の外径は前記ロッドの断面の直径の3倍以内であり、
前記載置部の外径方向における前記カバーの内寸幅は、前記載置部の外径の1.5倍以内である、基板保持機構。 - 請求項1に記載の基板保持機構を備える、成膜装置。
- 請求項2に記載の成膜装置を用いた、基板に多結晶膜を成膜する方法であって、
前記保持部に前記基板を保持する保持工程と、
前記保持工程後、化学蒸着によって前記基板に前記多結晶膜を成膜する成膜工程と、
前記ノズルより前記カバーの内部に不活性ガスを導入する不活性ガス導入工程と、を含む、多結晶膜の成膜方法。 - 前記不活性ガスの流速は、前記多結晶膜の原料ガスおよびキャリアガスの混合ガスの流速以上である、請求項3に記載の多結晶膜の成膜方法。
- 前記不活性ガスの流速が0.5m/s~1.0m/sである、請求項3または4に記載の多結晶膜の成膜方法。
- 前記基板がSi基板またはカーボン基板である、請求項3~5のいずれか1項に記載の多結晶膜の成膜方法。
- 前記多結晶膜は、炭化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、炭化チタンまたはダイヤモンドライクカーボンの膜である、請求項3~6のいずれか1項に記載の多結晶膜の成膜方法。
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