以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、印刷装置の一例について図1ないし図4を参照して説明する。図1は同印刷装置からカセットを取り外した状態の外観斜視説明図、図2は同印刷装置にカセットを装着した状態の外観斜視説明図、図3は同印刷装置の機構部の全体構成を説明する斜視説明図、図4は同じく図3と異なる方向から見た斜視説明図である。
印刷装置1は、装置本体100内に、布地400を着脱自在に保持する保持部材であるカセット200を着脱可能に保持して進退移動する受け部材であるステージ111と、ステージ111で保持されたカセット200に保持されている布地400に印刷する印刷手段112とを備えている。
ここで、布地400としては、ハンカチ、タオルなどの一枚の布地で形成されるものだけではなく、Tシャツ、トレーナーなどの衣服として加工された布地、トートバック等の製品の一部となっている布地にも用いることができる。
ステージ111は、装置本体100に対して矢印Y方向(送り方向)に移動可能に保持された搬送構造体113上に設けられている。ここでは、装置本体100の底部筐体部114に矢印Y方向に沿って搬送ガイド部材115が配置され、搬送構造体113のスライダ部116が搬送ガイド部材115によって移動可能に保持されている。
印刷手段112は、ステージ111に対して矢印X方向(主走査方向)に移動するキャリッジ121と、キャリッジ121に搭載されたヘッド122とを備えている。キャリッジ121は、矢印X方向に沿って配置されたガイド部材123で移動可能に保持され、駆動モータ124によってタイミングベルト125などの走査機構部を介して矢印X方向に往復移動される。ヘッド122は液体吐出ヘッドを用いて、インクを布地表面に吐出して画像の形成を行っているが、これに限るものではない。
この印刷装置1においては、カセット200のプラテン部材300に布地400をセットした状態で、装置本体100内のステージ111にカセット200を装着して保持する。そして、ステージ111の矢印Y方向への移動とヘッド122の矢印X方向への往復移動を繰り返すことで、布地400に所要の画像を印刷する。
次に、カセットの概要について図5ないし図7も参照して説明する。図5は同カセットの斜視説明図、図6は同じくカセットの外周カバーを開いた状態の斜視説明図、図7は同じく図5の面S1における断面に相当するカセットの短手方向に沿う概略断面説明図である。
カセット200は、トレイベース部材であるカセットベース201と、布地400の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材300とを有している。
プラテン部材300は、プラテン構造体302と、布地400を平坦な状態で保持する面を構成する断熱部材301とで構成されている。断熱部材301は、加熱装置500による加熱に対して耐熱性を有する。
そして、カセットベース201には、外周カバー部材であるプラテン外周カバー202の一端部がヒンジ203で回転可能に取り付けられ、プラテン外周カバー202はカセットベース201に対して介して矢印方向に開閉可能に設けられている。
プラテン外周カバー202は、プラテン部材300に対応する部分に開口部202aを有する枠部202bを備え、枠部202bとプラテン部材300の外周部分のフランジ部300aとの間で布地400を押さえる。
また、カセットベース201には、装置本体100のステージ111に対する着脱方向と直交する方向の両端部に、ステージ111の両端部を抱え込んでステージ111の両端部に移動可能に嵌め込まれるガイドレール部211が設けられている。
プラテン部材300はカセットベース201に対して支持部311で支持して、プラテン部材300とカセットベース201との間には布地400の余剰部分400aを収容できる収容空間312を形成している。余剰部分400aは、例えばTシャツの前面に印刷を行う場合においては、両袖や襟口、すそ等が該当する。
ここで、プラテン部材300はカセットベース201から着脱可能であり交換可能に形成されている。これによりプラテン部材300を複数用意し、印刷動作中に別のプラテン部材300に衣類を巻き付けておくことができ、印刷、定着終了後にプラテン部材300を交換するだけで速やかに次の布地の印刷を開始することができる。
このカセット200に布地400をセットするときには、布地400をセットするユーザーは、図6に示すように、プラテン外周カバー202を開いて、プラテン部材300上に布地400をセット(保持)する。このとき、布地400の余分な部分(余剰部分)400aを図7に示すように、収容空間312内に収容した状態で、布地400をセットするユーザーは、図5に示すように、プラテン外周カバー202を閉じる。
そして、布地400に印刷するときには、カセット200をセットするユーザーは、布地400をセットしたカセット200を印刷装置1の装置本体100のステージ111上に装着する(セットする)。このとき、カセット200をステージ111の移動方向からステージ111に装着することができるので、カセット200をステージ111の直上からステージ111に装着する構成に比べて、ステージ111全体を装置本体100から外に露出させる必要がなく、装置の小型化を図れる。
このように、カセット200は装置本体100から全体を取り出した状態にして印刷対象である布地400をプラテン部材300上にセットすることができるので、プラテン部材300への布地400のセット作業が容易になる。
このようなカセット200は印刷装置1で印刷が完了した後、布地400を保持したまま、本発明に係る加熱装置にセットし(移して)、画像が印刷された布地400を加熱して定着することができる。
次に、本発明の第1実施形態に係る加熱装置について図8ないし図10を参照して説明する。図8は同加熱装置の前扉を閉じた状態でのカセット出し入れ方向に沿う模式的説明図、図9は同加熱装置の前扉を開いた状態でのカセット出し入れ方向に沿う模式的説明図である。図10は同加熱装置のカセット出し入れ方向と直交する方向に沿う模式的説明図である。
この加熱装置500は、本実施形態では布地を加熱する装置であり、装置本体501と、装置本体501の前面側に設けられ、保持部材であるカセット200を出し入れする装置本体501の開口部511を開閉する扉部材である前扉502を備えている。
前扉502は、図8に示す矢印方向に開閉可能であって、図9に示すように開いて倒すことが可能に設けられている。前扉502を開くことで、開口部511を通じて、加熱対象部材である布地400を保持した布地保持部材であるカセット200を、装置本体501に対して出し入れすることができる。
装置本体501の内部(装置本体内)には、加熱対象部材である布地400を着脱可能に保持する布地保持部材であるカセット200を出し入れ可能に保持する受け部材503と、カセット200に保持された布地400を加熱する加熱手段504とが配置されている。
受け部材503は、印刷装置1のステージ111と同様に、カセット200が着脱可能に装着されることで保持する部材、あるいは、カセット200を単に載置することで保持するテーブルなどで構成できる。
カセット200は、前述したように、布地400を保持したままで、布地400に画像を印刷する装置である印刷装置1に対しても着脱自在に装着可能である。
加熱手段504は、カセット200に保持されている布地400に対向するヒータ542と、ヒータ542による受け部材503側と反対側への熱を断熱する断熱部材543とを備えている。断熱部材543と装置本体501の内壁面との間には空間506が設けられている。
ヒータ542の受け部材503との対向面は、装置本体501内にセットされたカセット200に保持された布地400の露出した面に略平行に位置するよう構成されている。
なお、ヒータ542の受け部材503側には、例えばアルミなどの熱伝導性に優れた材料で形成した平面部材を設け、ヒータ542による発熱で面温度がほぼ均一になるように加熱する構成とすることもできる。このようにすれば、ヒータ542の加熱位置にかかわらず、面内でほぼ同じ温度で加熱することができる。
加熱手段504は、装置本体501の開口部511側では保持部材508で保持されている。本実施形態では、保持部材508の下方がカセット200を挿入する挿入開口部512となる。ただし、装置本体501の開口部511の上端が保持部材508の下端よりも下方に位置する構成としたときには、開口部511が挿入開口部512となる。
受け部材503は、相対的に移動させる手段である昇降手段507によって保持されて、加熱手段504に対して相対的に上下方向に移動可能(昇降可能)に配置され、昇降手段507により加熱対象部材となる布地400と加熱手段504とが非接触加熱位置をとりうるようにしている。
昇降手段507は、例えばパンタグラフ式昇降手段としてのパンタグラフ式ジャッキ571と、ジャッキ571を上下動させるモータ572とを備えている。
そして、装置本体501の前面側に設けたボタン570を操作することによって、昇降手段507が伸縮して受け部材503が所定量上昇又は下降して、受け部材503と加熱手段504のヒータ542との間隔を調整することができる。
また、受け部材503には加熱手段504のヒータ542との距離を測定する距離センサ573を設けて、布地400の厚さに応じて受け部材503の高さ位置を微調整できるようにしている。
このように構成したので、図9に示すように、前扉502を開いて、印刷された布地400を保持するカセット200を加熱装置500の装置本体501内の受け部材503上にセットする。
そして、図8に示すように、前扉502を閉じ、昇降手段507によって受け部材503を上昇させ、例えばカセット200の布地400とヒータ542との間が間隔Aになる位置で停止させる。
このとき、加熱手段504のヒータ542に給電して発熱させていることにより、カセット200に保持されている布地400を加熱し、印刷を行った液体を定着させることができる。
このように、加熱装置を印刷装置とは別の装置として設置することで、装置の小型化を図ることができる。
そして、加熱装置には、加熱対象部材である布地を着脱可能に保持する布地保持部材を出し入れ可能に保持する受け部材と、布地を加熱する加熱手段を備え、受け部材と加熱手段とが上下方向に相対移動し、布地と加熱手段とが非接触加熱位置をとりうる構成としている。ここでは、受け部材が加熱手段に対して非接触加熱位置まで上下方向に相対移動してする構成としている。
これにより、布地が布地保持部材に保持された状態で布地を加熱することができ、布地を加熱するときの作業性が向上し、更に布地に画像を付与するときの作業性を向上することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る加熱装置について図11を参照して説明する。図11は同加熱装置のカセット出し入れ方向に沿う模式的説明図である。
本実施形態では、受け部材503は、前扉502の開閉動作に連動して昇降する構成としている。
すうわち、図11に示すように、前扉502を開倒して装置本体501の開口部511を開放するとき、受け部材503はカセット200をセットする位置まで下降する。
この状態で、受け部材503に布地400を保持したカセット200をセットしたとき、布地400とヒータ542との間隔Bは、布地400をヒータ542で加熱するときの間隔A(図8)よりも広くなる(A<B)。
そして、前扉502を閉じることで、受け部材503が連動して上昇し、ヒータ542で布地400を非接触で加熱する図8の位置になる。
このように、受け部材503の昇降を前扉502の閉動作及び開動作に連動させることで、ユーザーによる操作を簡単にすることができ、作業性が向上する。
また、扉部材(前扉502)の開閉動作に受け部材503の昇降が連動していない場合、受け部材503が上昇位置で前扉502を開けて、カセット200を装着してしまうと、装置本体501の構造体やカバー等、周辺部材に印刷液が未定着状態のままの布地400の印刷面が接触することで、汚れや画像乱れに繋がるおそれがある。本実施形態のように構成することで、カセット挿入時は確実に受け部材503が下降している状態となるため、上記の不具合は発生しない。
次に、本発明の第3実施形態に係る加熱装置について図12を参照して説明する。図12は同加熱装置のカセット出し入れ方向に沿う模式的説明図である。
本実施形態では、前扉502を開いた(開位置にした)ときに、装置本体501内部側となる前扉502の内側面(裏面)502aの高さが、受け部材503のカセット200を受ける面(受け面)503aと同じ高さになる。
これにより、前扉502の内側面502aから受け部材503の受け面503aまでが連続し、前扉502の内側面502aに沿わせてカセット200を装置本体501の内部に挿入することができ、カセット200の受け部材503への装着を容易に行うことができる。
このとき、前扉502の内側面502aがカセット200を装置本体501の内部に挿入するときの受け面となり、装置本体501の手前からカセット200をヒータ542に対してほぼ水平に挿入することができる。
したがって、未定着の画像が形成されている布地400を保持するカセット200を装置本体501に挿入してセットするとき、ヒータ542や周辺部品に布地400が擦れて画像が乱れることを回避できる。
次に、本発明の第4実施形態に係る加熱装置について図13を参照して説明する。図13は同加熱装置のカセット出し入れ方向に沿う模式的説明図である。
本実施形態では、受け部材503の前扉502側の端部には傾斜面503bが形成されている。そして、前扉502を開いたときに、前扉502の内側面502aに傾斜面503bを介して受け部材503の受け面503aが連続する。
これにより、前扉502の内側面502aから受け部材503の受け面503aまで傾斜面503bを介して連続し、前扉502の内側面502aに沿わせてカセット200を装置本体501の内部に挿入することができ、カセット200の受け部材503への装着を容易に行うことができる。
したがって、未定着の画像が形成されている布地400を保持するカセット200を装置本体501に挿入してセットするとき、ヒータ542や周辺部品に布地400が擦れて画像が乱れることを回避できる。
次に、本発明の第5実施形態に係る加熱装置について図14を参照して説明する。図14は同加熱装置のカセット出し入れ方向に沿う模式的説明図である。
本実施形態では、少なくとも、カセット200に保持された布地400を加熱手段504で加熱するとき、布地400の表面が挿入開口部512の上端よりも高い位置まで受け部材503が上昇される。
ここでは、加熱手段504と装置本体501の開口部511との間に、加熱手段504を保持している保持部材508を設けて、保持部材508の下端面508aよりも下方を、カセット200を挿入する挿入開口部512としている。
この場合、挿入開口部512の上端はヒータ542から間隔Dだけ下方に位置しているので、布地400の表面とヒータ542の表面との間隔Aが、間隔Dより小さくなるまで布地400を上昇させる。
これにより、加熱手段504による加熱可能状態において、前扉502の開放によって操作者の手を加熱手段504の下方に挿入できなくすることができる。
次に、本発明の第6実施形態に係る加熱装置について図15を参照して説明する。図15は同加熱装置のカセット出し入れ方向に沿う模式的説明図である。
本実施形態では、昇降手段507は、受け部材503に装着されたカセット200に保持された布地400が加熱手段504のヒータ542に接触する接触加熱位置と、布地400が加熱手段504のヒータ542に隙間Aを置いて接触しない非接触加熱位置とに、受け部材503を選択的に上昇可能である。
昇降手段507の上昇位置の選択は、例えばレバーや装置本体501の前面側に設けたボタン570を操作することで行うこともできるし、あるいは、前記第1実施形態と同様に、昇降手段507を昇降させる駆動源を備えて、駆動量を可変することによって行うこともできる。
このように構成したので、布地400に印刷を行う前の前工程として、図15(a)に示すように、昇降手段507を介して受け部材503を、カセット200に保持された布地400が加熱手段504のヒータ542に接触する接触加熱位置まで上昇させる。そして、布地400を加熱手段504に押し付けた状態(加圧した状態)で加熱する。
このように布地400を加熱手段504に押し付けて加熱することで、布地400の皺を伸ばし、毛羽立ちを抑えて、布地400自体の平面性を向上して、印刷品質を向上することができる。
したがって、印刷後に布地を加熱して液体を布地に定着させる後工程と、印刷工程を行う前に布地表面の皺や毛羽立ちを除去するための予備加熱を同じ加熱装置で行うことができるようになる。
一方、布地400に印刷を行った後の後工程として、図15(b)に示すように、昇降手段507を介して受け部材503を、カセット200に保持された布地400が加熱手段504のヒータ542に接触しない非接触加熱位置まで上昇させる。そして、布地400を加熱手段504に非接触状態で加熱する。
これにより、布地400に印刷された画像が乱れることなく、印刷用の液体を布地400に定着することができる。
次に、本発明の第7実施形態に係る加熱装置について図16及び図17を参照して説明する。図16は同加熱装置の外観斜視説明図、図17は同加熱装置の加熱制御の説明に供するフロー図である。
本実施形態では、前扉502の上側に操作パネル520を配置し、操作パネル520にはスタートキー521a、非接触加熱位置を指定する定着キー521b、接触加熱位置を指定するプレスキー521cを配置している。
なお、加熱装置500の内部構成については、ボタン570を除いて、前記第1実施形態と同様に、昇降手段507がパンタグラフ式ジャッキ571とモータ572とを備えている。
そして、図17を参照して、加熱を行うユーザーは、カセット200を加熱装置500内の受け部材503にセットした後、定着を行う場合には定着キー521bを、プレス(皺取り)を行う場合にはプレスキー521cを押し下げる。
そこで、加熱装置500側では定着キー521bの押し下げによる非接触加熱かプレスキー521cの押し下げによる接触加熱であるかを判別する。
そして、定着キー521bの押し下げによる非接触加熱であるときには、昇降手段によって受け部材503を非接触加熱位置(前記図15(b)に相当する位置)まで上昇させる。
その後、高さ調整がOKであるか否かを例えば距離センサ573で確認して、高さ調整OKであれば、スタートキー521aが押されたか否か、つまり、加熱開始か否かを判別する。
ここで、スタートキー521aが押されたときには、加熱手段504を発熱して昇温し、任意に指定できる定着時間の加熱を行って定着する。
そして、所定時間が経過したときに加熱手段504の発熱を停止する。ユーザーは、冷却を待って、カセット200を加熱装置500から取出す。
また、プレスキー521cの押し下げによる接触加熱であるときには、昇降手段によって受け部材503を接触加熱位置(前記図15(a)に相当する位置)まで上昇させる。
そして、高さ調整の確認、スタートキー521aの押し下げ、昇温、所要時間のプレスを行い、ユーザーは、冷却を待って、カセット200を加熱装置500から取出す。
このように、受け部材503と加熱手段504とを相対移動可能に配置することで、装置の小型化と加熱作業性の向上を図れるようになる。
次に、本発明の第8実施形態に係る加熱装置について図18ないし図21を参照して説明する。図18は同加熱装置の外観斜視説明図、図19は同加熱装置の前扉を開いた状態の斜視説明図である。図20は同加熱装置のカセット出し入れ方向に沿う模式的断面説明図、図21は同加熱装置の使用形態の説明に供するカセット出し入れ方向に沿う模式的断面説明図である。
この加熱装置500の昇降手段507以外の構成は、前記第1実施形態と同様である。
この加熱装置500では、受け部材503は、相対的に移動する手段である位置切替機構としての昇降手段507によって保持されて、加熱手段504に対して、3段階で上下方向(相対距離が変化する方向)に相対移動可能に配置されている。
ここでも、受け部材503の加熱手段504に対する相対位置には、図20に示す待機位置(第1位置)と、図21(a)に示す非接触加熱位置(第2位置)と、図21(b)に示す接触加熱位置(第3位置)とがある。このとき、受け部材503と加熱手段504との相対距離は、待機位置が最も長く、非接触加熱位置は接触加熱位置よりも長く、接触加熱位置は最も短い(接触した状態にある)。
図20の待機位置は、カセット200を出し入れするときの位置である。図21(a)の非接触加熱位置は、布地400が加熱手段504に非接触で加熱される加熱位置である。図21(b)の接触加熱位置は、布地400が加熱手段504に接触されて加熱される加熱位置(プレス位置)である。
また、図18を参照して、操作パネル520には、予熱開始キー521dなどの各種指示を行うキーと、表示部などが設けられている。
次に、本実施形態における受け部材の昇降手段の一例について図22及び図23を参照して説明する。図22は同昇降手段の斜視説明図、図23は同昇降手段の内のカム機構部分の斜視説明図である。
受け部材503は、昇降手段507上に保持されている。
昇降手段507は、受け部材503を保持した保持テーブル556(図19参照)と、保持テーブル556を上下動させるカム機構部557を備えている。
カム機構部557は、装置本体501の底板部551に水平方向に回転可能に保持された位置切替レバー部材である操作レバー558を有している。操作レバー558には、高さの異なる第1傾斜カム部561と、第2傾斜カム部562とを備えている。なお、第1傾斜カム部561が第2傾斜カム部562よりも最上面の高さが低いものとする。
一方、保持テーブル556の底面には、第1傾斜カム部561を倣う第1コロ563と、第2傾斜カム部562を倣う第2コロ564とをそれぞれ回転可能に保持したコロ保持部材567、568が固定されている。保持テーブル556はこれらの第1コロ563及び第2コロ564を介してカム機構部557上に保持されている。
ここで、図22に示すように、操作レバー558を中央位置である待機位置から矢印HA方向に回転操作することで、保持テーブル556の第1コロ563が第1傾斜カム部561上に載り上げる。これにより、保持テーブル556が第1傾斜カム部561の高さまで上昇し、受け部材503は待機位置から非接触加熱位置まで上昇する。
また、同じく操作レバー558を中央位置である待機位置から矢印HB方向に回転操作することで、保持テーブル556の第2コロ564が第2傾斜カム部562上に載り上げる。これにより、保持テーブル556が第2傾斜カム部562の高さまで上昇し、受け部材503は待機位置から接触加熱位置まで上昇する。
このように、操作レバー558を操作することによって保持テーブル556が上下動し、保持テーブル556で保持された受け部材503上に載置されたカセット200の高さが変わり、布地400と加熱手段504とのギャップ(相対距離)ないし押し付け力を変更することができる。
また、図22に示すように、受け部材503が非接触加熱位置になるまで操作レバー558が矢印HA方向に回転操作されたときに、操作レバー558を検知する第1検知部591を備えている。また、受け部材503が接触加熱位置になるまで操作レバー558が矢印HB方向に回転操作されたときに、操作レバー558を検知する第2検知部592を備えている。
この加熱装置500は、予熱開始キー521dの指示を受けて加熱手段504に給電して予熱を開始し、加熱温度が目標温度に達したときに予熱完了を報知する。予熱完了は、例えば、予熱開始キー521dの点滅などで行うことができる。
ユーザーは、予熱完了後に、カセット200を加熱装置500の受け部材503にセットして、操作レバー558を所要の位置に回転操作する。
ここで、加熱装置500は、操作レバー558が回転操作されて、第1検知部591によって受け部材503が非接触加熱位置に移動したことが検知されたとき、あるいは、第2検知部592によって受け部材503が接触加熱位置に移動したことが検知されたときを加熱開始タイミングとして、加熱手段504による布地400に対する加熱制御を行うようにしている。
次に、本発明の第9実施形態に係る加熱装置について図24及び図25を参照して説明する。図24は同加熱装置の外観斜視説明図、図25は同加熱装置の前扉を開いた状態の概略斜視説明図である。
加熱装置500は、前記各実施形態と同様に、装置本体501と、装置本体501の前面側に設けられ、装置本体501内にカセット200を出し入れする開口部511を開閉する扉部材である開閉可能な前扉(前カバー)502を備えている。装置本体501には外装カバー560が取付けられている。
また、装置本体501の内部には、画像が付与される布地400を保持する布地保持部材であるカセット200を出し入れ可能に保持するカセット置台としての受け部材503が配置されている。
この受け部材503の上方には、受け部材503に対向してカセット200に保持された布地400を加熱する加熱手段504が配置されている。本実施形態では、受け部材503に対して、加熱手段504が上下方向に相対移動可能としている。
そこで、加熱装置500を使用するときには、例えば、印刷装置1によって画像を印刷する前に、布地400を保持するカセット200を受け部材503にセットし、加熱手段504を下降させて布地400に接触させ、加圧状態で加熱する前工程(プレス工程)を行う。
そして、印刷装置1で布地400に所要の画像を付与した後、カセット200を印刷装置1から取り出し、加熱装置500の受け部材503にセットし、加熱手段504を布地400に接触しない位置まで下降させて、布地400を非接触で加熱して画像を定着させることができる。
この加熱装置500の詳細について図26以降も参照して説明する。
まず、加熱装置の前扉(前カバー)の動きについて図26及び図27も参照して説明する。図26は同説明に供する前扉を閉じた状態の側面説明図、図27は同じく前扉を開いた状態の側面説明図である。なお、図26以降では外装カバーを取り外した状態で図示する。
加熱装置500の前扉502は、図25ないし図27にも示すように開閉可能であって、図27に矢印Aで示す方向に開いて、図25及び図26に示すように倒して開くことができるように設けられている。
前扉502は支点522を中心として装置本体501の開口部511に対して開閉可能としている。前扉502の側面内側にはアーム523の一端部が取り付けられており、アーム523は支点525を中心に回転可能である。アーム523の他端部にはリンク軸524が設けられている。
装置本体501は、構造体を構成する右側板510A、左側板510Bを有している(なお、右側板510Aと左側板510Bとを区別しないときは、単に「側板510」という。)。側板510には、長穴状のガイド穴510aがカセット出し入れ方向(以下、単に「出し入れ方向」という。)手前側に下がるように斜めに設けられている。このガイド穴510aにアーム523のリンク軸524が移動可能に嵌まっている。
図26に示すように前扉502が閉じた状態から図27に示すように前扉502を矢印A方向に開くとき、リンク軸524がガイド穴510aの斜め形状に沿って装置本体501の斜め下方向手前側に移動することでアーム523も移動する。
次に、同加熱装置の前扉と受け部材の連動構成について図28ないし図30も参照して説明する。図28は同説明に供する前扉を開いた状態の斜視説明図、図29は同じく前扉を閉じた状態の側面説明図、図30は同じく前扉を開いた状態の側面説明図である。
装置本体501の右側板510Aと左側板510Bとの間に、受け部材503が上下方向及び前後方向(出し入れ方向)に移動可能に配置されている。ここでは、受け部材503を斜め方向に移動可能とすることで、上下及び前後に移動可能としている。
前述した図25に示すように、受け部材503の両側のフランジ部503fの出し入れ方向手前側に、前扉502のアーム523のリンク軸524が連結されている。
また、装置本体501の側板510には、出し入れ方向後方側に長穴状のガイド穴510bが設けられている。ガイド穴510bは、出し入れ方向手前側に下がるように斜めに設けられている。
そして、受け部材503のフランジ部503fの後方側にはガイド軸503cが設けられ、ガイド軸503cはガイド穴510bに移動可能に嵌まっている。
これにより、前扉502の開閉に伴ってリンク軸524がガイド穴510aに沿って移動する。受け部材503はリンク軸524が連結されているので、リンク軸524及びガイド軸503cがガイド穴510a、510bに沿って移動することで、前扉502の開閉に連動して受け部材503が前後及び上下方向に移動する。
つまり、図29に示すように、前扉502を閉じたときには、受け部材503は、後方に移動しながら上方に移動した第1位置にある。また、図30に示すように、前扉502を開いたときには、受け部材503は、第1位置から矢印Bで示すように、前方に移動しながら下方に移動して、第1位置より下方の第2位置になる。
このように、加熱装置には、布地を保持するカセットを出し入れ可能に保持する受け部材と、布地を加熱する加熱手段を備え、受け部材が扉部材の開閉に連動して加熱手段に対して上下移動する構成とすることで、布地がカセットに保持された状態で加熱することができ、布地に画像を付与するときの作業性を向上することができる。
次に、同加熱装置に対するカセットのセット動作について図31及び図32を参照して説明する。図31は同説明に供する前扉を閉じた状態の側面説明図、図32は同説明に供する前扉を開いた状態の側面説明図である。
上述したように、前扉502の開閉に連動して受け部材503が第1位置と第2位置との間で移動する。
したがって、図32に示すように、前扉502を開いた状態にして受け部材503を下方の第2位置にし、布地400をセットしたカセット200を受け部材503上に載せ置いてセットする。
そして、図31に示すように、前扉502を閉じることで、受け部材503が第2位置から第1位置に移動し、カセット200が加熱手段504の加熱面530に近接した位置になる。これにより、加熱効率が向上する。
その後、前扉502を開くと、図32に示すように、カセット200は斜め下方手前側に動き、カセット200にセットした布地400が加熱手段504から十分に離間した位置になり、カセット200は装置本体501の手前方向に移動する。
このように、前扉502の開閉に受け部材503が連動することで、前扉502を閉じた時はカセット200の布地400を加熱可能な状態になり、前扉502を開いたときはカセット200を受け部材503に対して脱着可能な状態となる。
これにより、カセット200にセットした布地400の表面を擦ったりするおそれがなく、カセット200の脱着性が向上する。
次に、同加熱装置の加熱手段の上下動機構(昇降手段)について図33ないし図35も参照して説明する。図33は同説明に供する加熱手段が非接触位置にある状態の側面説明図、図34は同じく加熱手段が接触位置にある状態の側面説明図である。図35は同じく加熱手段が非接触位置にある状態の斜視説明図である。なお、加熱装置の外観斜視説明図である図24も参照する。
加熱装置500は、前扉502を閉じた状態で、加熱手段504を上下動させる相対的に移動させる手段として昇降手段580を備えている。
昇降手段580は、装置本体501の外装カバー560の外側で操作可能な操作レバー515と、加熱手段504を保持し、操作レバー515の移動に連動して上下動する連結部材517を備えている。
具体的には、装置本体501の左右の側板510には、それぞれ操作レバー515が支点(支軸)516を中心として回転可能に保持されている。
操作レバー515の手前側(出し入れ方向前側)の端部は装置本体501の外装カバー560よりも突出し、この外装カバー560よりも突出した端部に操作部としての取っ手515bが設けられている。
操作レバー515の取っ手515bは、出し入れ方向と直交する方向において前扉502より外側であって、出し入れ方向では外装カバー560から突き出した操作レバー515の部分に取り付けている。
したがって、前扉502を閉じた状態で、操作レバー515の取っ手515bを操作し、操作レバー515を操作することができる。
一方、装置本体501の左右の側板510にはT字形状の連結部材517がそれぞれ上下方向に移動可能に配置されている。ここでは、連結部材517は、上下方向に長穴形状の2つのガイド穴517aが設けられ、側板510に設けた軸518がガイド穴517aに移動可能に嵌まっている。
この連結部材517の上端部で加熱手段504の両側を保持している。加熱手段504と装置本体501の左右の側板510との間にはバネ541を配置している。
そして、操作レバー515には支点516よりも手前側に長穴状のガイド穴515aを設け、ガイド穴515aに連結部材517に設けた軸519を移動可能に嵌め込んでいる。
このように構成したので、図33に示すように、操作部である操作レバー515の取っ手515bを第1の操作位置に操作したとき、つまり、本実施形態では操作レバー515を押し下げていないときには、操作レバー515が上がっており、加熱手段504は加熱面530がカセット200に保持された布地400から離間した非接触位置に移動している。
これにより、カセット200に保持された布地400を非接触で加熱乾燥させることができる。このときの、布地400と加熱手段504の加熱面530との離間距離は、1~4mm程度とすることが乾燥効率上好ましい。
これに対し、図34に示すように、操作部である操作レバー515の取っ手515bを第2の操作位置に操作したとき、つまり、本実施形態では、取っ手515bを矢印C方向に押し下げると、操作レバー515が支点516を回転中心として矢印C方向に回転し、連結部材517が図35の矢印D方向に下降する。
これにより、加熱手段504が下降して、加熱手段504は加熱面530がカセット200に保持された布地400に接触する接触位置に移動している。
したがって、加熱手段504の加熱面530をカセット200に保持された布地400に押し付けて、加圧状態で加熱する(プレスする)ことができる。
これにより、印刷工程を行う前にカセット200に保持された布地400をプレスして皺を伸ばすことができる。なお、加熱手段504による加圧力を高めるために、レイアウト上は、加熱面530がカセット200のプラテン部材300に食い込む位置を第2位置とすることもできる。
また、操作レバー515の取っ手515bを押し下げた状態から押し下げを解除すると、バネ541の付勢力によって加熱手段504が持ち上げられ、加熱手段504はカセット200に保持された布地400に接触しない非接触位置に戻ることになる。
この加熱手段504の上昇に伴って操作レバー515も図33に示す非接触位置に戻る。したがって、前扉502を開けようとするときは、操作レバー515から手を離しているので、カセット200に保持された布地400が加熱手段504の加熱面530で擦られることがなくなる。
ここで、上述したように、前扉502を閉じた状態で操作レバー515の取っ手515bを操作することができるので、前扉502を閉じた状態で加熱手段504を接触位置と非接触位置との間で上下移動(昇降)させることができる。
このように、前扉を閉じた状態で内部の加熱手段を上下動させる操作手段(昇降手段)を備えることによって、加熱装置500によって布地を加熱するときの作業性が向上し、布地に画像を付与するときの作業性が向上する。
次に、操作レバーと前扉との関係について図36及び図37も参照して説明する。図36は同説明に供する操作レバーが上の位置にあるときの斜視説明図、図37は同じく操作レバーが下の位置にあるときの斜視説明図である。なお、取っ手の図示は省略している。
操作レバー515にはフランジ部515cが設けられている。一方、前扉502にもフランジ部502bが設けられている。これらのフランジ部515c、502bによって、加熱手段504が接触位置にあるときには、扉部材である前扉502の開位置への移動を規制する手段を構成している。
ここで、図36に示すように、操作レバー515が上がっている状態(加熱手段504が第1位置にある状態)では、操作レバー515のフランジ部515cは前扉502のフランジ部502bと干渉しない位置になる。したがって、前扉502を開くことができる。
一方、図37に示すように、操作レバー515が下がっている状態(加熱手段504が第2位置にある状態)では、操作レバー515のフランジ部515cは前扉502のフランジ部502bと干渉する位置になる。したがって、前扉502を開くことができなくなる。
つまり、加熱手段504を下げた状態(接触位置にした状態)では前扉502を開けることはできないということになる。
これにより、前扉502を開けるときには加熱手段504は非接触位置に移動していることになり、カセット200の出し入れするときに布地400の印字面を加熱手段504で擦ることが防止される。
次に、本発明の第10実施形態に係る画像付与装置(画像付与システム)について図38を参照して説明する。図38は同画像付与装置の使用形態の一例の示す斜視説明図である。
画像付与装置(画像付与システム)1000は、カセット200と、前述した印刷装置1と、本発明に係る加熱装置500とを備えている。
印刷装置1は、カセット200が着脱可能で、カセット200に保持された印刷対象(被印刷部材)でもある布地400に画像を印刷する。
加熱装置500は、前述した各実施形態で説明したように、カセット200を収容可能であり、布地400を保持したカセット200ごと収容して、布地400を加熱して画像を定着する。なお、加熱装置500として前記第8実施形態の加熱装置を備えているが、他の実施形態の加熱装置500を備えることもできる。
この画像付与装置1000の印刷装置1と加熱装置500とは別体であり、印刷装置1と加熱装置500を並べて配置する形態で使用することも、印刷装置1と加熱装置500とを積み重ねる形態で使用することもできる。なお、印刷装置1と加熱装置500とは離れた位置に配置することもできる。印刷装置1と加熱装置500とを積み重ねて設置することによって設置面積の効率化を図ることができる。
この画像付与装置1000によって布地400に画像を付与するときには、布地400を保持したカセット200を印刷装置1にセット(装着)し、印刷装置1によって布地400に画像を印刷する。
印刷装置1による布地400への画像の印刷が終了したときには、印刷装置1から布地400を保持したままのカセット200を取り出す。そして、加熱装置500の扉部材である前扉(前カバー、前ドア)502を開き、印刷された布地400を保持したままのカセット200を加熱装置500内に収容し、前扉502を閉じて、加熱装置500でカセット200ごと布地400を加熱する。布地400を加熱することによって布地400に印刷された画像が布地400に定着する。
つまり、画像が付与される布地400を布地保持部材であるカセット200に保持する工程と、布地保持部材であるカセット200に保持された状態で布地400に対して画像を印刷する工程と、布地400を保持した状態の布地保持部材であるカセット200を、本発明に係る加熱装置500の受け部材503(図9参照)に保持し、布地400を加熱する工程とを行って、布地400に画像を付与する。
このように、布地保持部材であるカセット200を印刷装置1と加熱装置500の両方で共用できる。これにより、印刷した布地400を印刷したときの状態のまま保持して加熱装置500にセットすることができ、布地400を持ち運んでも皺が寄ったり、一部が重なったりして印刷面が乱れることはなく、布地400に対する画像付与の作業性が向上する。
なお、本発明における「布地保持部材」とは、印刷装置、加熱装置に着脱できる構成を備えていれば形状等は上記実施形態のカセットのような箱状の形態に限られるものではない。具体的には、印刷装置、加熱装置に挿入可能に形成された一枚の板状のプラテン部材であってもよい。
また、より作業性を向上するために、このような布地保持部材に対し、印刷時に作業者が毎回布地(Tシャツ等)を布地保持部材にセットする工程をなくすために、布地(Tシャツ等)をセット済みの布地保持部材を利用することもできる。この場合、使用後の布地保持部材は回収され、再び布地がセットされた状態で供給される。
さらに、同様の効果を奏するために、布地保持部材に着脱可能に形成されたプラテン部材に布地(Tシャツ等)をセットした布地セット済みのプラテン部材を利用することもできる。使用する場合は、この布地セット済みのプラテン部材をそのまま布地保持部材に装着し、印刷、定着が完了したあとに、布地保持部材からプラテン部材を取り外し、次の布地セット済みのプラテン部材を布地保持部材に装着し、印刷、定着が行われる。この場合、使用後のプラテン部材は回収され、再び布地がセットされた状態で供給される。
このようにすることで、作業者が毎回布地(Tシャツ等)をセットする必要がなく、複数枚の連続処理が容易になり、複数枚の連続処理を自動化することも可能となる。
また、上記実施形態では、布地がTシャツなどである場合について説明しているが、例えば布地を含めて、印刷対象、加熱対象を媒体(メディア)とする場合にも本発明を同様に適用することができる。この場合には、前記実施形態における「布地」が媒体となる。