JP7129835B2 - 車椅子 - Google Patents

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Description

本発明は、車椅子に関する。
車椅子は、手動車椅子および電動車椅子に大別されるが、いずれの車椅子においても、少なくともアームパイプ、フロントパイプ、レッグパイプ、シートパイプ、バックパイプ、ベースパイプおよびXフレームを備える主フレームを有する。特に折りたたみ可能な車椅子においては、折りたたみ式のXフレーム(折りたたみフレームともいう)が用いられる。
従来、主フレームの材料としては、例えば、アルミニウム合金、普通鋼、ステンレス、チタン合金、カーボンファイバなど様々な材料が用いられてきた。中でも、アルミニウム合金は、軽量であり、ある程度の強度を有していることから、主フレームの材料として多用されている。また、病院内での一次利用に限定される車椅子の場合には、使用頻度が少ないため、軽量であることよりも安価であることが求められることが多く、そのような車椅子の主フレームの材料には、アルミニウム合金よりも安価で丈夫な普通鋼をめっきした材料が用いられることがある。また、入浴用の車椅子などにおいては耐食性が必要であり、SUS304などのステンレスが主フレームの材料として用いられる。さらに、競技用の車椅子などにおいては、チタン合金、カーボンファイバなど軽量で、高強度の材料が主フレームの材料として用いられることがある。
例えば、特許文献1には、主フレームの材質として、「鉄、アルミニウム、ステンレス、カーボンの何れか」を用いることが開示されている。また、主フレームの材料として、特許文献2には、マルテンサイトを主相とする複相組織またはマルテンサイト単相組織のステンレス鋼を用いることが開示され、特許文献3には、フェライト-マルテンサイト複合組織のステンレス鋼を用いることが開示され、特許文献4~7には、SUS304などのステンレス鋼を用いることが開示されている。
特開2015-58071号公報 特開2005-344190号公報 特開2005-171377号公報 特開2012-70959号公報 特開2002-224169号公報 特開平11-244335号公報 特開平2-21863号公報
前述のように、例えば、特許文献1には主フレームの材質として「鉄、アルミニウム、ステンレス、カーボンの何れか」を用いることが記載されているように、主フレームの材質としては、その目的に応じて、いずれか一種が選ばれてきた。この点、特許文献2~7においては、ステンレス鋼のみを用いるケースが示されている。ここで、各種のパイプを主フレームの構成部材として用いる場合には、曲げ加工を行ったり、溶接を行ったりする必要があるが、例えば、アルミニウム合金パイプとステンレスパイプとでは、加工を行う専門業者が異なっている。また、異種金属接触腐食の問題が懸念される。このため、従来の車椅子の主フレームの材質としては、何れか一つの材料が選択されてきたものと考えられる。
ここで、ステンレス鋼は、アルミニウム合金に比べて強度が高いというメリットがあるが、アルミニウム合金よりも重いため、主フレームの材料にこれらの材料を用いると、車椅子の総重量が重く、高価になるという問題がある。一方、主フレームにアルミニウム合金を用いた車椅子は、軽量であり、ある程度の強度を有しているものの、負荷が大きく掛かる主フレーム箇所にてステンレス鋼を用いた車椅子に比べて耐久性が低く故障しやすいという問題がある。
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、優れた耐久性および安全性を備え、かつ十分に軽量な車椅子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するために、アルミニウム合金製の車椅子の故障の原因について調査したところ、一定の傾向があることが判明した。すなわち、故障が発生したアルミニウム合金製の車椅子の殆どが、Xフレームにて故障し、特に、交差するパイプないしフラットバー同士を接続するボルト近傍を起点として破損し、その結果、耐久性および安全性を劣化させていることが判明した。
そして、主フレームのうち、故障が発生しやすいXフレームのみを耐久性に優れるステンレス鋼に置き換えることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、下記の発明を要旨とする。
(1)少なくともアームパイプ、フロントパイプ、レッグパイプ、シートパイプ、バックパイプ、ベースパイプおよびXフレームを備える車椅子であって、
前記アームパイプ、前記フロントパイプ、前記レッグパイプ、前記シートパイプ、前記バックパイプ、および前記ベースパイプが、アルミニウム合金で構成され、
前記Xフレームがステンレス鋼で構成される、
車椅子。
(2)前記ステンレス鋼が、オーステナイト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼である、上記(1)の車椅子。
(3)前記ステンレス鋼が、質量%で、
C:0.06%以下、
Si:1.5%以下、
Mn:0.5~5.0%、
Cr:19.0~24.0%、
Ni:0.50~4.0%、
Cu:0.1~3.0%、
N:0.06~0.25%、
Mo:0~1.0%、
V:0~0.5%、
Ca:0~0.0100%、
Al:0~0.10%、
Co:0~0.5%、
Nb:0~0.2%、
Ti:0~0.2%、
W:0~0.2%、
B:0~0.0050%、
Sn:0~0.2%、
Sb:0~0.2%、
Zr:0~0.5%、
Ta:0~0.1%、
REM:0~0.10%、
残部Feおよび不純物である化学組成を有する二相ステンレス鋼である、
上記(1)の車椅子。
(4)質量%で、
Mn:2.0~4.0%、
Cr:19.0~23.0%、
Ni:1.0~2.5%である
上記(3)の車椅子。
(5)前記Xフレームが、
外径φ10~φ30mm、
肉厚0.5~3.0mmの二相ステンレス鋼のパイプで構成された、
上記(1)~(4)のいずれかの車椅子。
本発明によれば、優れた耐久性および安全性を備え、かつ十分に軽量な車椅子を提供することが可能となる。
図1は、車椅子の構成部材の側面を示す図である。 図2は、車椅子の構成部材の背面を示す図である。 図3は、Xフレームを示す斜視図である。 図4は、耐荷重試験および繰返し耐荷重試験の試験条件を示す図である。
1.車椅子の構成について
図1および図2に示すように、車椅子1は、主フレーム10として、少なくともアームパイプ11、フロントパイプ12、レッグパイプ13、シートパイプ14、バックパイプ15、ベースパイプ17およびXフレーム18を備える。主フレーム10には、バックレストパイプ16、主輪(後輪)21、駆動輪(前輪)22、シート23、バックレスト24、フットレスト25、アームレスト26、グリップ27などの各種の部品が取り付けられることがあり、例えばバックレストパイプ16、バックレスト24、グリップ27は介助者が車椅子を移動させるときに取り付けられることがある。また、ベースパイプ17の後端には、ティッイングレバー19を備え付けられる場合があり、これは、介助者が車椅子1の前輪22を上げるときに踏むためのレバーである。
上述したように、車椅子の故障の多くがXフレーム18に起因するものであるが、本発明者らが更に検討した結果、Xフレーム18が破損するのは、主に以下の原因によるものと考えられた。即ち、Xフレーム18は車椅子使用時に撓みが発生するが、アルミニウム合金は、ヤング率が低いため、撓み量が大きく、Xフレームのボルト部、溶接部などに大きな伸縮が発生する。また、アルミニウム合金は、硬度が低いため、磨耗しやすく乗り降り時や走行時の揺れにより、ボルト穴が伸縮する。その結果、ボルト穴は、ボルトと擦れることにより磨耗(穴が変形)する。これにより負荷バランスが崩れボルト近傍または溶接部などから破損する。また、アルミニウム合金は、耐磨耗性低いため、繰返し荷重(乗り降り)によってボルト近傍から破損するか、ボルト穴変形することにより負荷バランスが崩れ他の部位に応力集中して破損しやすい。
一方、本発明の車椅子は、アームパイプ11、フロントパイプ12、レッグパイプ13、シートパイプ14、バックパイプ15、およびベースパイプ17が、アルミニウム合金で構成され、Xフレーム18がステンレス鋼で構成される。ステンレス鋼はヤング率がアルミニウム合金の約3倍であり撓み量が少なく、表面硬度も高いため耐磨耗性にも優れており、上記の破損原因についてアルミニウム合金よりも高い耐久性を備えることができる。また、耐力以上の荷重が掛かった場合、耐力と引張強さの差が小さいアルミニウム合金は僅かな変形ですぐ破損に至ることが多いが、ステンレス鋼は耐力と引張強さの差が大きいため変形のみで破損に至ることが少ない。したがって、耐久性および安全性に優れた車椅子が得られる。また、主フレームを構成する多くの部材にアルミニウム合金を用いるため、軽量性にも優れる。
また、本発明の車椅子の付随的な効果として、乗り心地の改善が挙げられる。つまり、Xフレームは、車椅子の乗り心地に影響する重要箇所である。前述のように、アルミニウム合金は、ヤング率が低いため、撓み量が多く走行時の上下の揺れが大きくなりやすく、揺れが収まるまでの時間がかかる。その結果、乗り心地を悪化させる要因となっている。
これに対して、本発明の車椅子1は、Xフレーム18がステンレス鋼で構成されているので、アルミニウム合金を用いる場合に比べて、撓み小さくく、走行時の上下の揺れが小さいため揺れもすぐに収まる。その結果、本発明の車椅子1の乗り心地は、主フレームの全てをアルミニウム合金で構成した車椅子に比べて、格段に優れたものとなる。
図3に示すように、Xフレーム18は、一組の下パイプ31、一組の上パイプ32、二組のクロスパイプ33を備え、クロスパイプ33は、ボルトなどの係止具34で回転可能な状態で接続されている。Xフレーム18において、一組の下パイプ31を省略し、クロスパイプ33が、ベースパイプ17に直接取り付けられることがある。この場合、ステンレス鋼で構成される二組のクロスパイプ33が、アルミニウム合金で構成されるベースパイプ17に接触することになるため、異種金属接触腐食の問題が発生するおそれがある。このため、少なくともベースパイプ17としては、表面にアルマイト皮膜もしくは絶縁体を用いるのがよい。
なお、図3はXフレームの基本的な仕様を示すものであり、様々な形態があり得る。例えば、下パイプや上パイプを省略する場合や、パイプではなくフラットバーを用いることもあり得る。また、下パイプの一方をパイプ、もう一方をフラットバーにするなど、使用条件に応じて、適宜設計変更することができる。
Xフレーム18は、例えば、板幅10~100mm、板厚0.5~5.0mmの二相ステンレス鋼のフラットバー、もしくは、外径10~30mm、肉厚0.5~3.0mmの二相ステンレス鋼のパイプ、で構成されていることが好ましい。パイプで構成される場合、外径または肉厚が小さすぎる場合には、十分な強度が得られない。また、外径が大きすぎると、車椅子1内の限られたスペースでXフレーム18を組み込むのが困難となり、また、車椅子1の重量を過剰に増加させる。
なお、Xフレーム18は、断面形状が円形または楕円形の円筒状のパイプのほか、断面形状が四角形のような多角形の角筒状のパイプを用いることもできる。
2.Xフレームの化学組成について
Xフレーム18を構成するステンレス鋼としては、十分な機械的特性を備えるものが好ましく、例えば、0.2%耐力が205MPa以上、引張強さが520MPa以上であるステンレス鋼が挙げられる。ステンレス鋼の0.2%耐力は、400MPa以上であることが好ましく、500MPa以上であることがより好ましい。また、ステンレス鋼の引張強さは、600MPa以上であることが好ましく、700MPa以上であることがより好ましい。ステンレス鋼の引張強さと0.2%耐力の差が大きいほど変形能が高いため、この差は、100MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがより好ましく、200MPa以上であることがさらに好ましい。このようなステンレス鋼としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼が挙げられる。これは、一般的にフェライト系ステンレス鋼よりも強度、加工性、耐食性が優れるという理由による。特に、下記の化学組成を有するステンレス鋼を用いるのがよい。なお、以下の説明において、各元素の含有量についての「%」は「質量%」を意味する。
C:0.06%以下
Cは、フェライト相に固溶あるいはCr炭化物を形成して耐酸化性を阻害する。一方、Cは、炭化物を形成し、鋼の強化及びフェライト粒の微細化に有効な元素であり、オーステナイト組織の安定性を高めるために有効である。しかし、Cは、多量に添加されると加工性の劣化を招く。このような観点から、Cは、0.06%とするのがよい。ただし、Cを過度に低減することは製鋼段階でのコスト増加を招くため、その下限値は0.0005%とするのがよい。なお、安定的な製造性の観点からは0.0015%以上とすることが好ましい。
Si:1.5%以下
Siは、溶製時の脱酸元素として活用する場合や、耐酸化性の向上のために積極的に添加する場合がある。また、フェライト安定化元素でもある。ただし、多量の添加は材質硬質化による加工性の低下を招くことがあるため、上限は1.5%とするのがよい。加工性、安定製造性の観点からは0.30%以下とすることが好ましく、さらに0.20%以下とすることが好ましい。さらに加工性、安定製造性を確実にするために0.15%以下にすることが望ましい。ただし、脱酸の観点から、0.03%以上とすることが好ましい。極低Si化はコスト増加を招くためその下限を0.01%とすることが好ましい。
Mn:0.5~5.0%
Mnは、溶製時の脱酸剤として添加される元素であり、また、オーステナイト単相域を拡大し組織の安定化に寄与する。過度に添加すると、粗大介在物が生成して、加工性が劣化するので、上限を5.0%とするのがよい。下限は特に定めないが、オーステナイト相の確実な安定化と加工性の観点から、0.5%以上が好ましい。特に、オーステナイト相安定化と製造コスト抑制の観点からは、下限を2.0%とするのが好ましく、上限を4.0%とするのが好ましい。
Cr:19.0~24.0%
Crは、ステンレス鋼の基本元素であり、耐酸化性や耐食性確保のために必須な元素である。19.0%未満では、これらの効果は発現しないので、下限を19.0%以上とするのがよい。耐酸化性の観点からは20.5%以上にすることが望ましい。一方で、24.0%超ではオーステナイト単相域が縮小し、C、Nと化合物を形成して製造時の熱間加工性を損ねるため、上限を24.0%とするのがよい。好ましくは、23.0%以下である。
Ni:0.50~4.0%
Niは、Mnと同様にオーステナイト相を安定化させる元素であって、耐酸化性の面では、Mnよりも優れた効力を有する。よって、Ni含有量は0.50%以上とするのがよい。Niの含有量は、好ましくは、1.0%以上である。一方、過度なNiの添加は熱間加工性を低下させるために、4.0%以下とする。加工性を高める観点から、Niは3.0%以下とすることが好ましく、2.5%以下とすることがより好ましい。
Cu:0.1~3.0%
Cuは、オーステナイト安定化元素である。更に隙間腐食や孔食の進展抑制に効果があり、そのためには0.1%以上含有させるのがよい。ただし、過剰な添加は、熱間加工性を低下させるため、3.0%以下とするのがよい。好ましくは、2.0%以下である。
N:0.06~0.25%
Nは、オーステナイト相安定化元素であり、かつ、侵入型の有効な固溶強化元素である。添加効果を得るため、0.06%以上とするのがよい。ただし、過剰な添加は、窒化物の析出を招き、必要な強度、オーステナイト相の安定性がともに得られない。また、加工性の観点から、上限を0.25%とするのがよい。好ましくは、0.20%以下である。
Mo:0~1.0%
Moは耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。Moは原子半径が大きいために固溶強化能が強く、結果として鋼を硬くして加工性を悪くするので、過度な添加は好ましくない。そのため、Moの添加量の上限は、1.0%とするのがよい。Moの添加量の上限は、0.5%以下とすることが好ましい。Moの上記の効果は、0.01%以上で顕著となる。
V:0~0.5%、
Vは、耐食性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、硬質化を招くので、その含有量は、0.5%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.05%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.08%であり、好ましい上限は、0.12%である。
Ca:0~0.0100%、
Caは、脱酸元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、耐食性低下に繋がるので、その含有量は、0.0100%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.0003%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.0005%であり、好ましい上限は、0.0050%である。
Al:0~0.100%、
Alは、脱酸元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、表面疵や割れの問題に繋がるので、その含有量は、0.100%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.015%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.020%であり、好ましい上限は、0.050%である。
Co:0~0.50%、
Coは、耐食性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、熱間加工性の低下を招くので、その含有量は、0.50%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.05%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.08%であり、好ましい上限は、0.20%である。
Nb:0~0.20%、
Nbは、耐食性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、硬質化を招くので、その含有量は、0.20%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.01%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.05%であり、好ましい上限は、0.10%である。
Ti:0~0.200%、
Tiは、耐食性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、硬質化を招くので、その含有量は、0.200%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.005%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.010%であり、好ましい上限は、0.150%である。
W:0~0.200%、
Wは、耐食性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、硬質化を招くので、その含有量は、0.200%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.005%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.010%であり、好ましい上限は、0.150%である。
B:0~0.0050%、
Bは、熱間加工性を向上させる効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、かえって熱間加工性が劣化するので、その含有量は、0.0050%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.0002%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.0005%であり、好ましい上限は、0.0020%である。
Sn:0~0.200%、
Snは、耐食性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、熱間加工性低下に繋がるので、その含有量は、0.200%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.003%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.005%であり、好ましい上限は、0.150%である。
Sb:0~0.200%、
Sbは、耐食性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、熱間加工性低下に繋がるので、その含有量は、0.200%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.003%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.005%であり、好ましい上限は、0.150%である。
Zr:0~0.500%、
Zrは、耐食性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。0.5%程度の添加で効果は飽和し、それ以上の添加はコスト増加に繋がるので、その含有量は、0.500%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.005%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.010%であり、好ましい上限は、0.200%である。
Ta:0~0.100%、
Taは、耐食性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、常温での延性や靭性の低下を招くので、その含有量は、0.100%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.005%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.010%であり、好ましい上限は、0.050%である。
REM:0~0.100%
REMは、耐酸化性向上効果を有する元素であり、必要に応じて添加してもよい。過度な添加は、耐食性や穴拡げ性が劣化するので、その含有量は、0.100%以下とするのがよい。上記の効果を発揮させるには、その含有量を0.002%以上とするのが好ましい。好ましい下限は、0.010%であり、好ましい上限は、0.050%である。なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
Xフレーム18に用いられるステンレス鋼の化学組成は、上記の元素を含み、残部はFeおよび不純物である。なお、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分を意味する。不純物元素としては、例えば、下記のP、Sなどが挙げられる。それぞれ下記の範囲まで許容できる。
P:0.040%以下
Pは、原料である溶銑やフェロクロム等の主原料中に不純物として含まれる元素である。熱間加工性に対しては有害な元素であるため、0.040%以下とするのがよい。なお、好ましくは0.030%以下である。過度な低減は高純度原料の使用を必須にするなど、コストの増加に繋がるため0.010%以上とするのがよい。経済的に好ましくは、0.020%以上にすることが望ましい。
S:0.030%以下
Sは、硫化物系介在物を形成し、鋼材の一般的な耐食性(全面腐食や孔食)を劣化させるため、その含有量の上限は少ないほうが好ましく、0.030%とするのがよい。また、Sの含有量は少ないほど耐食性は良好となるが、低S化には脱硫負荷が増大し、製造コストが増大するので、その下限を0.0001%とするのが好ましい。なお、好ましい上限は0.0010%である。
(製造方法)
本発明におけるステンレス鋼の製造方法は特に限定されない。公知の手段(例えば電気炉)により溶製された鋼を連続鋳造機で150~250mm厚のスラブに鋳造し、必要に応じて表面を研削した後、熱間圧延機で熱間圧延を行って熱延鋼帯とする。熱延鋼帯を焼鈍・酸洗した後、引き続き冷間圧延と焼鈍を繰り返して所望厚みの鋼板とする。仕上げ焼鈍は焼鈍酸洗仕上げ(2B仕上げ)でも、無酸化雰囲気で焼鈍するBA仕上げでも構わない。また、熱間圧延や冷間圧延の温度や時間は、鋼種に応じて適宜設定すればよい。
得られた熱延鋼板または冷延鋼板から、所定の断面形状を有するパイプを製造する。パイプの製造方法も特に限定されるものではなく、例えば、製造した鋼板をパイプ形状に成形し、継目を溶接などで接合してパイプを製造する。溶接条件は、鋼種や溶接設備仕様に応じて溶加材の有無や溶接方法の種類(例えば、TIG溶接など)、電流値や溶接速度などを適宜決めればよい。また、フラットバーは、例えば、冷延鋼板の広幅を使用幅とし、スリット加工を実施し、その断面を手入れすることによって製造することができる。
本発明の効果を確認するために、各種試験を行った。試験対象として、表1に示すパイプを用いて、Xフレームを作製した。Xフレームの質量を表1に併記した。
Figure 0007129835000001
なお、アルミニウム合金としては、A7003-T5(質量%で、Zn:5.5%、Mg:0.75%、Si:0.1%、残部Alおよび不可避不純物)を用いた。二相ステンレス鋼としては、質量%で、C:0.02%、Si:0.4%、Mn:3.0%、Ni:2.0%、Cr:20.7%、Cu:1.1%、Mo:0.3%、N:0.18%、残部Feおよび不可避不純物の化学組成を持つ2B仕上げの冷延鋼板を用いた。表1に示すように、アルミニウム合金とステンレス鋼の質量差は数百グラムに抑えることができた。この程度の質量差であれば、車椅子の取扱いに支障が生じない。また、アルミニウム合金製車椅子の場合、設計上、補強材を要するが、Xフレームにステンレス鋼を用いることにより、そのような補強材を小型化または省略することが可能となるため、車椅子全体の質量はアルミニウム合金製車椅子と同等となる。
[繰返し耐荷重試験]
比較例1および本発明例1のXフレーム18について、図4に示すように、上パイプ32は、拘束ガイド41を被せて拘束し、下パイプ31は、拘束しない条件で、拘束ガイド41の上面にパット42を介して430kgfの荷重を繰返し負荷し、Xフレーム18の変形状況(高さ、破損までの繰返し数)を目視で観察した。その結果を表2に示す。
Figure 0007129835000002
表2に示すように、アルミニウム合金を用いた比較例1では、100回荷重を負荷したときに高さが4.5mm減少しており、330回荷重を負荷したときに、クロスパイプの接続部近傍が破損し、車椅子のフレーム機能を有さない状態にまで破損した。一方、二相ステンレス鋼を用いた本発明例1では、330回の繰返し荷重では破損せず、3000回の繰返し荷重にて若干変形は発生したが車椅子のフレーム機能(車椅子として走行可能であり、折りたたみ式の場合は折りたたみ可能な状態)を維持した状態であった。すなわち、本発明例1は、比較例1と同程度の質量でありながら、機械的特性において比較例1と比較して格段に優れた性能を有していた。
本発明によれば、優れた耐久性および安全性を備え、かつ十分に軽量な車椅子を提供することが可能となる。
1 椅子
10 主フレーム
11 アームパイプ
12 フロントパイプ
13 レッグパイプ
14 シートパイプ
15 バックパイプ
16 バックレストパイプ
17 ベースパイプ
18 Xフレーム
19 ティッイングレバー
21 主輪(後輪)
22 駆動輪(前輪)
23 シート
24 バックレスト
25 フットレスト
26 アームレスト
27 グリップ
31 下パイプ
32 上パイプ
33 クロスパイプ
34 係止具
41 拘束ガイド
42 パット

Claims (5)

  1. 少なくともアームパイプ、フロントパイプ、レッグパイプ、シートパイプ、バックパイプ、ベースパイプおよびXフレームを備える車椅子であって、
    前記アームパイプ、前記フロントパイプ、前記レッグパイプ、前記シートパイプ、前記バックパイプおよび前記ベースパイプが、アルミニウム合金で構成され、
    前記Xフレームがステンレス鋼で構成される、
    車椅子。
  2. 前記ステンレス鋼が、オーステナイト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼である、請求項1の車椅子。
  3. 前記ステンレス鋼が、質量%で、
    C:0.06%以下、
    Si:1.5%以下、
    Mn:0.5~5.0%、
    Cr:19.0~24.0%、
    Ni:0.50~4.0%、
    Cu:0.1~3.0%、
    N:0.06~0.25%、
    Mo:0~1.0%、
    V:0~0.5%、
    Ca:0~0.0100%、
    Al:0~0.10%、
    Co:0~0.5%、
    Nb:0~0.2%、
    Ti:0~0.2%、
    W:0~0.2%、
    B:0~0.0050%、
    Sn:0~0.2%、
    Sb:0~0.2%、
    Zr:0~0.5%、
    Ta:0~0.1%、
    REM:0~0.10%、
    残部Feおよび不純物である化学組成を有する二相ステンレス鋼である、
    請求項1に記載の車椅子。
  4. 質量%で、
    Mn:2.0~4.0%、
    Cr:19.0~23.0%、
    Ni:1.0~2.5%である
    請求項3に記載の車椅子。
  5. 前記Xフレームが、
    外径φ10~φ30mm、
    肉厚0.5~3.0mmの二相ステンレス鋼のパイプで構成された、
    請求項1から4までのいずれかに記載の車椅子。
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