JP3396372B2 - 高温強度と溶接性に優れた低Crフェライト鋼 - Google Patents

高温強度と溶接性に優れた低Crフェライト鋼

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JP3396372B2 JP16279096A JP16279096A JP3396372B2 JP 3396372 B2 JP3396372 B2 JP 3396372B2 JP 16279096 A JP16279096 A JP 16279096A JP 16279096 A JP16279096 A JP 16279096A JP 3396372 B2 JP3396372 B2 JP 3396372B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高温強度が高く、溶
接性、耐酸化性及び高温耐食性に優れ、ボイラ、原子
力、化学工業などの分野で、450℃以上の高温環境下
で使用される部材として好適な低Crフェライト鋼及び
鋳造用材料として好適な低Crフェライト鋳鋼に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ボイラ、化学工業、原子力用などの高温
耐熱耐圧部材としては、オーステナイト系ステンレス
鋼、Cr含有量が9〜12%の高Crフェライト鋼、2
・1/4Cr−1Mo鋼及び1Cr−0.5Mo鋼に代
表される低Crフェライト鋼、炭素鋼などがある(本明
細書において合金成分の含有量はすべて重量%であ
る)。これらは対象部材の使用温度、圧力、使用環境な
どに応じ、かつ経済性を考慮して選択されている。一般
的にCr量が多いほど耐食性及び耐酸化性に優れてお
り、また同時に高温強度に優れた材料が多い。上記の理
由で耐食性はそれほど要求されない箇所においても、高
温強度の点からCr含有量の多い高価な材料が使用され
ている場合がある。また、高温強度に優れている一方、
溶接性に劣っている高温耐熱材料が多い。低Crフェラ
イト鋼は高Crフェライト鋼に比べ、Cr含有量が少な
いため安価であり、高温強度が高Crフェライト鋼と同
等以上であれば、耐食性が特に問題とされない箇所での
使用が望まれている。
【0003】鋳鋼を鍛鋼と比較すると、鍛造工程は不必
要で、複雑な形状のものを容易に成形でき、そのため加
工費も安くなる利点がある。近年の鋳造技術の進歩によ
り、従来危惧されていた鋳鋼の信頼性は著しく向上して
いるが、同量のCrを含有するほぼ同化学成分の鋳鋼と
鍛鋼の高温強度を比較すると、一般的に鍛鋼の方が強度
が高い。そのため、コスト的には不利である鍛鋼が用い
られる場合が多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術
における問題点に鑑み、450℃以上の温度における高
温クリープ強度を大幅に改善すると共に、靱性、加工
性、溶接性においても既存の低合金鋼と同等以上の性能
を有し、高Crフェライト鋼に代替できる低Crフェラ
イト鋼を提供すること、さらに高温クリープ強度を従来
の鋳鋼に比べ大幅に改善すると共に、靱性、溶接性にお
いても鍛鋼と同等以上の性能を有する低Crフェライト
鋳鋼を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明はVとNbによる
析出効果と、W、Mo、Reによる固溶強化及び微細炭
化物による析出効果を考え、また、溶接性の観点から
C、Mn及びBの添加量を考慮し、高温強度と溶接性に
ついて多数の調査を繰返した結果、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は従来添元素として用い
られていなかったRe元素を添加した低Crフェライト
鋼及び低Crフェライト鋳鋼であって、次の(1)〜
(3)の構成を有するものである。 (1)重量%でC:0.03〜0.12%、Si:0.
05〜0.7%、Mn:0.05〜1%、P:0.00
2〜0.025%、S:0.001〜0.015%、C
r:0.8〜3%、Ni:0.01〜1%、Mo:0.
05〜3%、V:0.01〜0.5%、W:0.1〜3
%、Nb:0.01〜0.2%、Re:0.1〜1.5
%、Al:0.003〜0.05%、B:0.0001
〜0.01%、N:0.003〜0.03%を含み残部
はFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする高
温強度と溶接性に優れた低Crフェライト鋼。
【0007】(2)重量%でC:0.03〜0.12
%、Si:0.05〜0.7%、Mn:0.05〜1
%、P:0.002〜0.025%、S:0.001〜
0.015%、Cr:0.3〜1.5%、Ni:0.0
1〜1%、Mo:0.05〜3%、V:0.01〜0.
5%、W:0.1〜3%、Nb:0.01〜0.2%、
Re:0.02〜1.5%、Al:0.003〜0.0
5%、B:0.0001〜0.01%、N:0.003
〜0.03%を含み残部はFe及び不可避的不純物から
なることを特徴とする高温強度と溶接性に優れた低Cr
フェライト鋼。
【0008】(3)重量%でC:0.03〜0.12
%、Si:0.05〜0.7%、Mn:0.05〜1
%、P:0.002〜0.025%、S:0.001〜
0.015%、Cr:0.8〜3%、Ni:0.01〜
1%、Mo:0.05〜3%、V:0.01〜0.5
%、W:0.1〜3%、Nb:0.01〜0.2%、R
e:0.02〜1.5%、Al:0.003〜0.05
%、B:0.0001〜0.01%、N:0.003〜
0.03%を含み残部はFe及び不可避的不純物からな
ることを特徴とする高温強度と溶接性に優れた低Crフ
ェライト鋳鋼。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明の低Crフェライト
鋼及び低Crフェライト鋳鋼における各成分の作用とそ
の組成範囲の選定理由を説明する。CはCr、Fe、
W、V、Nb、Mo及びReと結合して炭化物を形成
し、高温強度に寄与するとともに、それ自身がオーステ
ナイト安定化元素として組織を安定化する。0.03重
量%未満では炭化物析出が不十分で、十分な高温強度が
得られず、また、0.12重量%を越える場合は、炭化
物が過剰析出して鋼が著しく硬化し、加工性が悪くな
る。また、C量が高い場合、溶接性も悪くするため、C
の適正含有量は0.03〜0.12重量%である。
【0010】Siは脱酸剤として働き、また耐水蒸気酸
化特性を高める元素であるが、0.7重量%を越えると
靱性が著しく低下し、クリープ強度に対しても有害であ
る。特に厚肉材料では焼戻し脆化を助長するので、Si
の含有量は0.05〜0.7重量%とする。また、鋳鋼
の場合には鋳造時の湯流れ性も考慮してこの範囲が好ま
しい。
【0011】Mnは脱硫及び脱酸の効果があり、鋼の熱
間加工性を改善し、組織の安定化に有効である。0.0
5重量%未満では十分な効果が得られず、1重量%を越
えると鋼を硬化させ加工性を損なうとともに、Siと同
様に焼戻し脆化感受性を高める。また、Sが特に低い場
合はMn添加量を少なくすることができる。よってMn
の含有量は0.05〜1重量%とする。
【0012】P、Sはいずれも靱性、加工性に有害な元
素で、Sが極微量であっても粒界やCr2 3 スケール
皮膜を不安定にし、強度、靱性、加工性劣化の原因とな
るので、できるだけ少ない方がよい。不可避な含有量と
して、Pは0,002〜0.025重量%、Sは0.0
01〜0.015重量%とした。
【0013】Crは低合金鋼の耐酸化性、高温腐食性の
点から不可欠な元素であり、500℃以上の高温下で使
用する場合には、その含有量が0.8重量%未満では十
分な耐酸化性、耐高温腐食性が得られない。一方、3重
量%を越えて添加すると耐酸化性及び耐高温腐食性はさ
らに向上するが、強度と靱性がが低下し、また経済的観
点からCr添加量は最小限とし、上限を3重量%とし
た。なお、使用温度が450〜600℃の比較的低温の
場合には、Cr含有量はさらに少なくてもよく、低Cr
フェライト鋼の安価であるという利点を最大限に発揮さ
せるため、Crの含有量は0.3〜1.5重量%の範囲
とすることができる。
【0014】Niはオーステナイト安定化元素であり、
かつ靱性改善に寄与するが、その含有量が1重量%を越
えると高温クリープ強度を損なう。また、経済性の観点
からも大量添加は不利である。従ってNiの含有量は
0.01〜1重量%とする。
【0015】MoはWと同様にクリープ強度の向上に有
効であり、Wと複合添加された場合は強度向上の効果が
あり、かつ少量であれば靱性改善にも有効である。Mo
の含有量が0.05重量%未満では上記の効果が得られ
ず、3重量%を越えると高温で金属間化合物が析出し、
靱性が低下するだけでなく、強度に対しても効果がなく
なる。したがって、Moを添加する場合は、その含有量
は0.05〜3重量%の範囲とする。
【0016】VはC、Nと結合してV(C、N)等の微
細析出物を形成する。この析出物は高温での長時間クリ
ープ強度の向上に大きく寄与するが、0.01重量%未
満では十分な効果が得られず、0.5重量%を越える場
合にはV(C、N)の析出量が過剰となり、かえってク
リープ強度および靱性を損なう。よって、Vの適正含有
量は0.01〜0.5重量%である。
【0017】Wは固溶強化及び微細炭化物析出強化元素
としてクリープ強度の向上に有効である。Moも同様の
効果があるが、Fe中での拡散速度の遅いWの方がクリ
ープ強度に寄与する微細炭化物の高温安定化性に優れて
いる。また、Moと複合添加された場合は、単独添加以
上に強度が向上し、特に高温クリープ強度が改善され
る。0.1%重量未満では効果がなく、3重量%を越え
ると鋼を硬化させて加工性を損なうため0.1〜3重量
%の範囲とする。
【0018】NbはVと同様C、Nと結合してNb
(C、N)を形成しクリープ強度に寄与する。特に60
0℃以下の比較的低温では著しい強度改善効果を示す。
0.01重量%未満では上記の効果が得られず、また、
0.2重量%を越える場合は未固溶Nb(C,N)が増
え、鋼を著しく硬化させ、靱性、加工性、溶接性を損な
う。したがってNb含有量は0.01%〜0.2重量%
の範囲が適当である。
【0019】Reは添加量に比例してクリープ強度を高
めるが、経済性を考え0.02〜1.5重量%とする。
ここで、比較的高温で使用される低Crフェライト鋼で
は高クリープ強度が要求されるため、下限値を0.1重
量%とする。Cr量が比較的低い低Crフェライト鋼
(Cr量:0.3〜1.5重量%)では耐酸化限界よ
り、それほど高温で使用されることがないため、比較的
クリープ強度は要求されないので、下限値を0.02重
量%とする。また、低Crフェライト鋳鋼においても鋼
に比べてクリープ強度に対する要求が弱いため下限値は
0.02重量%とする。
【0020】Alは脱酸素元素として必須であり、含有
量として0.003重量%以下では効果がなく、0.0
5重量%を越える場合はクリープ強度と加工性を損なう
ため、Alの含有量は0.001〜0.05重量%とす
る。
【0021】Bは極微量の添加により炭化物を分散、安
定化させる効果があり、長時間クリープ強度の改善に寄
与する。0.0001重量%未満ではその効果が小さ
く、0.01重量%を越えると加工性を損なうので、B
の添加はその含有量を0.0001〜0.01重量%の
範囲にするのがよい。この範囲においてもBの添加は焼
入れ性向上にも効果があるため、組織制御の観点から必
要に応じて添加量を調整する必要がある。
【0022】NはV、Nbとの炭窒化物形成に必要で、
0.003重量%未満ではその効果がない。しかしなが
らN量が高くなると固溶状態のNが増加し、また窒化物
が粗大化するため、クリープ強度と靱性、加工性を損
う。よってNの含有量は0.03重量%以下とし、0.
003〜0.03重量%とする。
【0023】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説
明する。 (実施例1)表1に示す化学成分の鋼50kgを真空溶
解炉で溶解し、インゴットを1150℃〜950℃で鍛
造して厚さ20mmの板とした。表1においてNo.1
及び2は既存の代表的な低Crフェライト鋼であり、そ
れぞれSTBA22及びSTBA24に相当する成分を
有するものである。No.3〜5はNo.1及び2の鋼
にV、Nbを添加した比較鋼である。No.6〜17が
本発明の低Crフェライト鋼である。
【0024】No.1及び2の鋼は通常の熱処理として
920℃×1h・ACの焼きならし後、740℃×1h
・ACの焼き戻しを行った。No.3〜17の鋼は10
50℃×1h・ACの焼きならし後、770℃×1h・
ACの焼き戻しを行った。
【0025】
【表1】
【0026】機械的性質を比較するため、表1に記載し
た比較鋼及び本発明鋼に対して、引張試験、シャルピー
衝撃試験、クリープ破断試験を行った。引張試験及びク
リープ破断試験は、板の長手方向に直径6mm×標点間
距離30mmの試験片を採取し、引張試験は常温と60
0℃にて、クリープ破断試験は500℃、550℃、6
00℃、650℃において最長104 h程度の長時間ク
リープ破断試験を行い、内挿により600℃×105
クリープ破断強度を求めた。シャルピー衝撃試験はJI
S Z2202に準拠して、4号試験片を板の長手方向
に採取し、延性−脆性破面遷移温度を求めた。
【0027】また、溶接性について評価するため、試験
板の厚さを20mm、予熱温度を20℃、50℃、10
0℃、150℃、200℃としてJIS Z3158の
y型溶接割れ試験を行った。断面割れ率が0%となる温
度を割れ防止温度とし、溶接性を評価した。
【0028】表2に試験結果を示す。本発明鋼は引張強
さ及び0.2%耐力において、比較鋼と比べ、同等以上
の強さを示しており、600℃の高温引張試験結果にお
いても同様の傾向である。高温強度を示す600℃での
クリープ破断強度は既存鋼を大きく上回る強度を有して
いることがわかる。
【0029】溶接性については、y型溶接割れ試験か
ら、比較鋼はすべて150℃以上の予熱を要するのに対
し、本発明鋼は20〜100℃の余熱により割れが防止
でき、C量が低いものほど、割れ防止温度が低いことが
わかる。
【0030】
【表2】
【0031】実施例1の結果から、本発明鋼は従来の鋼
を大幅に上回る高温強度と優れた溶接性を有し、耐酸化
性能に優れており、耐熱部の薄肉化と溶接に伴う予熱を
低減できる極めて経済性に優れた材料であることがわか
る。
【0032】(実施例2)表3及び表4に示す化学成分
の鋼50kgを真空溶解炉で溶解し、インゴットを11
50℃〜950℃で鍛造して厚さ20mmの板とした。
No.18の鋼は炭素鋼、No.19〜21の鋼は既存
の代表的な低Crフェライト鋼であり、それぞれJIS
のSTBA13、STBA20、STBA22及びST
BA24に相当する成分を有するものである。No.2
2〜33の鋼は合金成分を本発明範囲外に変化させた比
較鋼である。そして、表4に示すNo.34〜46の鋼
が本発明の低Crフェライト鋼である。
【0033】No.18、19の鋼は通常の熱処理とし
て920℃×1h・ACの焼きならし後、740℃×1
h・ACの焼き戻しを行った。No.20〜33鋼及び
本発明鋼は1050℃×1h・ACの焼きならし後、7
70℃×1h・ACの焼き戻しを行った。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】機械的性質を比較するため、表3及び4に
記載した比較鋼及び本発明鋼に対して、引張試験、クリ
ープ破断試験、溶接熱影響部のシャルピー衝撃試験を行
った。また、溶接性について評価するため、y型溶接割
れ試験を行った。引張試験及びクリープ破断試験は、板
の長手方向に直径6mm×標点間距離30mmの試験片
を採取して行った。引張試験は常温と600℃にて、ク
リープ破断試験は500℃、550℃、600℃、65
0℃において最長10000h程度の長時間破断試験を
行い、600℃×10000hクリープ破断強度を求め
た。シャルピー衝撃試験はJIS Z2202に準拠し
て、4号試験片にて、ノッチ位置を溶接熱影響部中央と
し、0℃での衝撃値を測定した。
【0037】また、y型溶接割れ試験では板厚を20m
m、予熱温度を20℃、50℃、100℃、150℃、
200℃としてJIS Z3158に準拠して行い、縦
断面割れ率が0%となる温度を割れ防止温度とし、溶接
性を評価した。
【0038】表5及び表6に試験結果を示す。本発明鋼
は引張強さ及び0.2%耐力において、比較鋼と比べ、
同等以上の強さを示しており、600℃の高温引張試験
結果においても同様の傾向である。高温強度を示す60
0℃×10000hでのクリープ破断強度は既存鋼を含
む比較鋼は最大でも9.7kgf/mm2 であるのに対
し、本発明鋼では最も弱いものでも13.7kgf/m
2 以上となり、高温でのクリープ破断強度が大幅に向
上している。
【0039】溶接性については、y型溶接割れ試験か
ら、割れ発生防止のためには比較鋼は50℃以上の予熱
を要するのに対し、本発明鋼は20℃でも割れの発生が
ないことから、溶接性に優れていることがわかる。これ
は、予熱なしでの、室温での溶接の可能性を示すもので
ある。また、0℃における溶接熱影響部の衝撃値はすべ
て比較鋼を上回り、溶接熱影響部の衝撃性にも優れてい
ることがわかる。
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】実施例2の結果から、本発明鋼は従来の鋼
を大幅に上回る高温強度と優れた溶接性を有しているこ
とから、耐熱部の薄肉化と溶接に伴う予熱を低減できる
材料であることがわかる。
【0043】(実施例3)表7及び表8に示す化学成分
の鋼30kgを真空溶解炉で溶解し、Y型試験片の形状
に鋳込みを行い、その後徐冷した。No.47、48の
鋼は既存の代表的な鋳鋼材であり、それぞれJISのS
CPH21、SCPH32に相当する。No.49、5
0の鋼はボイラ等で使用される小径管用耐熱鋼の化学成
分に準じたものである。No.51〜62の鋼は合金成
分を本発明範囲外に変化させた比較鋳鋼である。そし
て、表8に示すNo.63〜75の鋼が本発明の低Cr
フェライト鋳鋼である。
【0044】No.47〜50の鋼は通常の熱処理とし
て950℃×2h・ACの焼きならし後、730℃×2
h・ACの焼き戻しを行った。No.63〜75の本発
明鋳鋼は1050℃×2h・ACの焼きならし後、77
0℃×1.5h・ACの焼き戻しを行った。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】機械的性質を比較するため、表7及び8に
記載した比較鋳鋼及び本発明鋳鋼に対して、常温引張試
験、シャルピー衝撃試験、クリープ破断試験を行った。
また、溶接性について評価するため、y型溶接割れ試験
を行った。常温引張試験及びクリープ破断試験は、Y型
試験片の底部より凝固方向に対して垂直に直径6mm×
標点間距離30mmの試験片を採取して行った。引張試
験は室温にて、クリープ破断試験は500℃、550
℃、600℃、650℃において最長10000h程度
の長時間破断試験を行い、600℃×10000hクリ
ープ破断強度を求めた。シャルピー衝撃試験はJIS
Z2202に準拠して、4号試験片を用い、ノッチ方向
を凝固方向と垂直として、0℃で各3回ずつ試験を行
い、衝撃値の平均値を求めた。
【0048】また、y型溶接割れ試験では板厚を20m
m、予熱温度を20℃、50℃、100℃、150℃、
200℃としてJIS Z3158に準拠して行い、縦
断面割れ率が0%となる温度を割れ防止温度とし、溶接
性を評価した。
【0049】表9及び表10に試験結果を示す。本発明
鋳鋼は600℃の高温引張試験において、引張強さ及び
0.2%耐力ともに比較鋳鋼と比べ、同等以上の強さを
示している。高温強度を示す600℃×10000hク
リープ破断強度は既存鋳鋼を含む比較鋳鋼は最大でも
9.5kgf/mm2 であるのに対し、本発明鋳鋼では
13.3kgf/mm2 以上となり、高温でのクリープ
破断強度が大幅に向上している。
【0050】比較鋳鋼のうち、No.61、62は、本
発明鋳鋼の成分元素の全てを含むものであるが、それぞ
れCr及びW添加量が本発明の範囲を越えて添加されて
おり、比較的高いクリープ破断強度を有しているが、本
発明鋳鋼に比較すると劣っている。
【0051】衝撃値は比較鋳鋼が146J/cm2 以下
であるのに対し、本発明鋳鋼は全て191J/cm2
上を示しており、低温での靱性に富んでいるといえる。
【0052】溶接性については、y型溶接割れ試験か
ら、割れ発生防止のためには比較鋳鋼は全て50℃以上
の予熱を要するのに対し、本発明鋳鋼は20℃でも割れ
の発生がないことから、溶接性に優れており、溶接時の
予熱を省略できることがわかる。
【0053】
【表9】
【0054】
【表10】
【0055】実施例3から、本発明鋳鋼は従来の鋼を大
幅に上回る高温強度と優れた衝撃特性及び溶接性を有す
る鋳鋼であることがわかる。
【0056】
【発明の効果】本発明の低Crフェライト鋼は、従来の
低合金鋼の高温強度を大幅に改善し、高Crフェライト
鋼と同等以上の高温強度と優れた溶接性を有するもので
ある。本発明の低Crフェライト鋼は高温強度に優れて
いることから、高Crフェライト鋼の代替材としての用
途が期待でき、また、溶接性に優れていることから、溶
接時の予熱を省略できる可能性があり、フェライト鋼の
長所である靱性、加工性、経済性を兼ね備えた材料とし
て、ボイラ、化学工業、原子力などの産業分野で使用さ
れる耐熱耐圧部材として管、板、その他さまざまな形状
の鍛造品などに広く適用できるものである。
【0057】また、本発明の低Crフェライト鋳鋼は、
従来の低合金鋳鋼の高温強度を大幅に改善し、衝撃特性
及び溶接性を兼ね備えた材料である。よって、従来は鍛
鋼が使用されていた箇所に代替して使用することが可能
であり、より安価な材料である。本発明鋳鋼はボイラ、
化学工業、原子力などの産業分野で使用される耐熱耐圧
部材として管、板、その他さまざまな形状の鋳造品など
に広く適用できるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−62848(JP,A) 特開 平6−306550(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%でC:0.03〜0.12%、S
    i:0.05〜0.7%、Mn:0.05〜1%、P:
    0.002〜0.025%、S:0.001〜0.01
    5%、Cr:0.8〜3%、Ni:0.01〜1%、M
    o:0.05〜3%、V:0.01〜0.5%、W:
    0.1〜3%、Nb:0.01〜0.2%、Re:0.
    1〜1.5%、Al:0.003〜0.05%、B:
    0.0001〜0.01%、N:0.003〜0.03
    %を含み残部はFe及び不可避的不純物からなることを
    特徴とする高温強度と溶接性に優れた低Crフェライト
    鋼。
  2. 【請求項2】 重量%でC:0.03〜0.12%、S
    i:0.05〜0.7%、Mn:0.05〜1%、P:
    0.002〜0.025%、S:0.001〜0.01
    5%、Cr:0.3〜1.5%、Ni:0.01〜1
    %、Mo:0.05〜3%、V:0.01〜0.5%、
    W:0.1〜3%、Nb:0.01〜0.2%、Re:
    0.02〜1.5%、Al:0.003〜0.05%、
    B:0.0001〜0.01%、N:0.003〜0.
    03%を含み残部はFe及び不可避的不純物からなるこ
    とを特徴とする高温強度と溶接性に優れた低Crフェラ
    イト鋼。
  3. 【請求項3】 重量%でC:0.03〜0.12%、S
    i:0.05〜0.7%、Mn:0.05〜1%、P:
    0.002〜0.025%、S:0.001〜0.01
    5%、Cr:0.8〜3%、Ni:0.01〜1%、M
    o:0.05〜3%、V:0.01〜0.5%、W:
    0.1〜3%、Nb:0.01〜0.2%、Re:0.
    02〜1.5%、Al:0.003〜0.05%、B:
    0.0001〜0.01%、N:0.003〜0.03
    %を含み残部はFe及び不可避的不純物からなることを
    特徴とする高温強度と溶接性に優れた低Crフェライト
    鋳鋼。
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