JP7119064B2 - 粗一酸化炭素ガスから酸素を除去する方法、および一酸化炭素ガスの精製方法 - Google Patents
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Description
本発明は、粗一酸化炭素ガスから酸素を除去する方法に関する。本発明は、さらにそのような酸素除去方法を利用した一酸化炭素ガスの精製方法にも関する。
一酸化炭素は化学合成や金属精錬などの幅広い産業で使用されており、特に最近では、シリコン半導体製造工程のクリーニング・エッチング用のガスとして99.995モル%程度の高純度の一酸化炭素が使用されている。一酸化炭素の一般的な製造方法としては、鉱酸で修飾したゼオライト系触媒を用いて蟻酸の脱水反応(HCOOH→H2O+CO)を進行させ、一酸化炭素を得る方法が知られている(例えば特許文献1,2を参照)。前記反応で得られた粗一酸化炭素ガスは、水、水素、酸素、窒素、メタン、二酸化炭素、および未反応の蟻酸ミスト等を不純物として含んでいる。これらの不純物を除去することで高純度一酸化炭素(以下、「精製一酸化炭素ガス」と記すこともある)を得ている。
粗一酸化炭素ガスから高純度一酸化炭素を得るための精製方法としては、吸着、蒸留などの手段により不純物を除去する方法が知られている。しかしながら、不純物に酸素が含まれている場合、酸素の分子サイズが一酸化炭素の分子サイズに近く、分子篩吸着剤によって酸素と一酸化炭素とを吸着分離することは困難である。また、酸素と一酸化炭素の沸点は近いため、酸素と一酸化炭素とを蒸留分離することも困難であった。そこで、銅触媒や銅-亜鉛触媒に酸素が含まれている粗一酸化炭素ガスを接触させ、酸素を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素に変換してから除去する方法が提案されている(例えば特許文献3を参照)。
しかしながら、前記金属触媒を用い、酸素を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素に変換する方法では、金属触媒の一部が製品一酸化炭素ガス中に混入しうる。混入した金属は、製品一酸化炭素ガス中では金属カルボニル構造をとり、前記金属カルボニルは、極微量に存在するだけで半導体製造工程においては甚大な悪影響を及ぼすことが知られている。したがって、製品一酸化炭素ガスの製造において、金属成分の混入回避が強く望まれている。
本発明は、このような事情の下でなされたものであって、酸素を含む粗一酸化炭素ガスから、問題となる金属の混入を可能な限り回避しつつ、粗一酸化炭素ガスから酸素を除去する方法を提供することを主たる課題とする。
上記課題について本発明者らが鋭意検討した結果、酸素を含む粗一酸化炭素ガスを活性炭と接触させることにより、活性炭が酸素と一酸化炭素との反応の触媒として作用し、二酸化炭素が生成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の第1の側面によれば、酸素を含む粗一酸化炭素ガスを、金属を担持させていない活性炭と接触させることを特徴とする、粗一酸化炭素ガスから酸素を除去する方法が提供される。
好ましくは、前記粗一酸化炭素ガスと前記活性炭との接触は、前記活性炭を充填した触媒槽に前記粗一酸化炭素ガスを導入することにより行う。
好ましくは、前記粗一酸化炭素ガスにおける酸素濃度が0.1~1000モルppmである。
好ましくは、前記粗一酸化炭素ガスと前記活性炭との接触温度が20~80℃の範囲である。
好ましくは、前記粗一酸化炭素ガスと前記活性炭との接触温度が30~50℃の範囲である。
本発明の第2の側面によれば、本発明の第1の側面に係る酸素除去方法により粗一酸化炭素ガスから酸素を除去する工程と、前記酸素除去工程により得られる生成ガスをアルカリ水溶液で洗浄することにより二酸化炭素を除去する工程と、を含む、一酸化炭素の精製方法が提供される。
好ましくは、前記酸素除去工程と前記二酸化炭素除去工程とが、一酸化炭素が目的とする純度になるまで繰り返される。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態を具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の保護範囲を限定するものではない。
本実施形態に係る方法は、例えば図1に示すような一酸化炭素精製装置を用いて実施される。具体的には、一酸化炭素精製装置は、主として、活性炭1aが充填された触媒槽1と、アルカリ水溶液2aを収容したガス洗浄容器2と、を含んでいる。触媒槽1には、原料ガスしての粗一酸化炭素ガスがライン3を介して供給され、ライン3には、粗一酸化炭素ガスを所定の圧力まで加圧するためのコンプレッサ4が設けられている。触媒槽1では、粗一酸化炭素ガスに不純物として含まれる酸素の一部が一酸化炭素との反応により二酸化炭素に変換されて除去される。触媒槽1から排出される生成ガスはライン5を介してガス洗浄容器2に送られ、さらに導入管6を介してアルカリ水溶液2a中に導入される。この結果、酸性ガスである二酸化炭素はアルカリ水溶液2aに吸収されて除去され、精製された一酸化炭素ガスがライン7を介して取り出される。ライン7は、排出ライン7aと循環ライン7bとに接続されており、これらのライン7a,7bにはそれぞれ開閉弁8,9が設けられている。ライン7から排出される精製一酸化炭素ガスが目的とする純度に到達している場合には、開閉弁8が開状態とされ(開閉弁9は閉状態)、排出ライン7aを介して精製一酸化炭素ガスが取り出される。一方、ライン7から排出される精製一酸化炭素ガスが目的とする純度に到達していない場合には、開閉弁9が開状態とされ(開閉弁8は閉状態)、循環ライン7bを介して不十分な精製一酸化炭素ガスとして再び触媒槽1に送られ、追加の酸素除去が行われる。なお、加圧が必要でない場合は、コンプレッサ4をブロワで置換してもよい。
原料ガスしての粗一酸化炭素ガスは、主成分である一酸化炭素と、不純物としての酸素等とを含む。粗一酸化炭素ガスは、例えば鉱酸で修飾したゼオライト系触媒を用いた蟻酸の脱水反応(HCOOH→H2O+CO)後に、生成したH2Oと未反応のHCOOHを凝縮器で一酸化炭素ガスから分離することによって得られる。粗一酸化炭素ガスにおける主成分たる一酸化炭素の純度は、例えば99.9モル%以上、100モル%未満である。精製一酸化炭素ガスの純度を高くする観点からは、粗一酸化炭素ガスにおける一酸化炭素の純度は、好ましくは99.99モル%以上、100モル%未満である。また、該粗一酸化炭素ガス中の酸素の濃度は、好ましくは0.1~1000モルppmである。酸素濃度が1000モルppmを超える場合は酸素を除去しきれずに精製一酸化炭素ガス中に残存する恐れがある。酸素の除去効率の観点から、粗一酸化炭素ガス中の酸素濃度は、0.1~100モルppmであるのが更に好ましい。粗一酸化炭素ガスは、酸素以外の不純物として、例えば水素、窒素、二酸化炭素、メタンを含んでいてもよい。これら不純物の各々の濃度は、例えば0.1~10モルppm程度である。
触媒槽1に充填される活性炭1aは、ヤシ殻、木材等の植物系、石炭、石油等の鉱物系のいずれを用いてもよい。活性炭の形状としては、粉末状、破砕状、円柱状、球状、ハニカム状のいずれを使用してもよい。
触媒層1に充填される活性炭1aは、金属を担持しておらず、活性炭1a単体として触媒機能を発揮する。触媒槽1では、粗一酸化炭素ガスに含まれる酸素が一酸化炭素と反応し、二酸化炭素に変換される。ここで、触媒槽1での粗一酸化炭素ガスの処理量は、空間速度にして例えば0.01~70/minであり、酸化反応効率の観点から、好ましくは5~50/minである。
活性炭1aを充填した触媒槽1の温度(即ち、粗一酸化炭素ガスと活性炭との接触温度)は、好ましくは20~80℃の範囲であり、より好ましくは30~50℃である。
活性炭1aを充填した触媒槽1に導入する粗一酸化炭素ガスの圧力は、例えば0.1~10MPaである。反応効率の観点から、好ましくは9~10MPaである。
活性炭1aを充填した触媒槽1は、高圧ガスの通気時に槽の気密性を保持できればよく、その形状は円筒型、角型、球形の何れでもよい。
触媒槽1では上述のように、粗一酸化炭素ガスに含まれる酸素が一酸化炭素と反応し、二酸化炭素に変換される。当該変換により生じた二酸化炭素は、蒸留あるいはPSA装置などによる分離手法や、分子篩やアルカリ水溶液に通すことにより除去される。経済的な観点から、図1に示したように、アルカリ水溶液による洗浄(吸収)が好ましく、アルカリ水溶液2aとしては苛性ソーダ水溶液が好ましい。
アルカリ洗浄後得られる処理ガスを水洗してから水分をモレキュラーシーブで乾燥させることで、高純度一酸化炭素(製品一酸化炭素ガス)が得られる。
本実施形態に係る方法は、触媒として単体の活性炭1aを用いることで金属の混入を避けつつ、不純物として含まれる酸素の除去が可能であるから、半導体製造工程などの工業的用途に用いられる高純度一酸化炭素を製造するのに適している。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
〔実施例1〕
内径11cm、長さ120cmのSUS製の管に活性炭(粒状白鷺G2X、大阪ガスケミカル(株)製)を5.2kg充填し、触媒槽を調製した。9.8MPaに圧縮した粗一酸化炭素ガス(原料ガス)を、前記触媒槽の温度を20~25℃に保ちながら、空間速度にして36.6/minで前記触媒槽に連続で導入した。導入した粗一酸化炭素ガス中の酸素濃度は1.40モルppmであり、二酸化炭素は検出されなかった。酸素と二酸化炭素の濃度については、ガスクロマトグラフ(パルス放電型光イオン化検出器:PDD)で分析した。前記触媒槽への粗一酸化炭素ガスの導入開始から20分後、触媒槽出口から排出される一酸化炭素ガスの分析を行い、酸素と二酸化炭素の濃度を確認した。その結果、酸素濃度が1.35モルppm、二酸化炭素濃度が0.10モルppmであった。
内径11cm、長さ120cmのSUS製の管に活性炭(粒状白鷺G2X、大阪ガスケミカル(株)製)を5.2kg充填し、触媒槽を調製した。9.8MPaに圧縮した粗一酸化炭素ガス(原料ガス)を、前記触媒槽の温度を20~25℃に保ちながら、空間速度にして36.6/minで前記触媒槽に連続で導入した。導入した粗一酸化炭素ガス中の酸素濃度は1.40モルppmであり、二酸化炭素は検出されなかった。酸素と二酸化炭素の濃度については、ガスクロマトグラフ(パルス放電型光イオン化検出器:PDD)で分析した。前記触媒槽への粗一酸化炭素ガスの導入開始から20分後、触媒槽出口から排出される一酸化炭素ガスの分析を行い、酸素と二酸化炭素の濃度を確認した。その結果、酸素濃度が1.35モルppm、二酸化炭素濃度が0.10モルppmであった。
〔実施例2〕
触媒槽の温度を35~40℃に変更した以外は実施例1と同様にして実験を行った。触媒槽から排出される一酸化炭素ガスの分析を行ったところ、酸素濃度が1.00モルppm、二酸化炭素濃度が0.80モルppmであった。
触媒槽の温度を35~40℃に変更した以外は実施例1と同様にして実験を行った。触媒槽から排出される一酸化炭素ガスの分析を行ったところ、酸素濃度が1.00モルppm、二酸化炭素濃度が0.80モルppmであった。
〔実施例3〕
内径1cm、長さ30cmのSUS製の管に活性炭(粒状白鷺G2X、大阪ガスケミカル(株)製)を10.6g充填し、触媒槽を調製した。0.1MPaに圧縮した一酸化炭素ガス(原料ガス)を、前記触媒槽の温度を40~45℃に保ちながら、空間速度にして8.7/minで前記触媒槽に連続で導入した。導入した粗一酸化炭素ガス中の酸素濃度は25.0モルppmであり、二酸化炭素は検出されなかった。触媒槽出口から排出される一酸化炭素ガスの分析を行ったところ、1時間経過後には酸素濃度が23.2モルppm、二酸化炭素濃度が4.2モルppmであった。2時間経過後には酸素濃度が23.6モルppm、二酸化炭素濃度が4.7モルppmであった。2ヶ月経過後には、酸素濃度が23.4モルppm、二酸化炭素濃度が4.5モルppmであった。
内径1cm、長さ30cmのSUS製の管に活性炭(粒状白鷺G2X、大阪ガスケミカル(株)製)を10.6g充填し、触媒槽を調製した。0.1MPaに圧縮した一酸化炭素ガス(原料ガス)を、前記触媒槽の温度を40~45℃に保ちながら、空間速度にして8.7/minで前記触媒槽に連続で導入した。導入した粗一酸化炭素ガス中の酸素濃度は25.0モルppmであり、二酸化炭素は検出されなかった。触媒槽出口から排出される一酸化炭素ガスの分析を行ったところ、1時間経過後には酸素濃度が23.2モルppm、二酸化炭素濃度が4.2モルppmであった。2時間経過後には酸素濃度が23.6モルppm、二酸化炭素濃度が4.7モルppmであった。2ヶ月経過後には、酸素濃度が23.4モルppm、二酸化炭素濃度が4.5モルppmであった。
〔参考例1〕
実施例3における活性炭に代えてAl2O3(住友化学(株)製)を用いて、実施例3と同様の実験を行った。触媒槽出口から排出される一酸化炭素ガスの分析を行ったところ、1時間経過後には酸素濃度が24.5モルppm、二酸化炭素濃度が0モルppmであった。2時間後には酸素濃度が25モルppm、二酸化炭素濃度が0モルppmであった。
実施例3における活性炭に代えてAl2O3(住友化学(株)製)を用いて、実施例3と同様の実験を行った。触媒槽出口から排出される一酸化炭素ガスの分析を行ったところ、1時間経過後には酸素濃度が24.5モルppm、二酸化炭素濃度が0モルppmであった。2時間後には酸素濃度が25モルppm、二酸化炭素濃度が0モルppmであった。
〔評価〕
実施例1では、触媒槽で処理する前の粗一酸化炭素ガス中の酸素濃度は1.40モルppmであったものが、触媒槽から排出された生成ガスにおいては酸素濃度が1.35モルppmに減少して、0.10モルppmの二酸化炭素が生成されていた。このことより、触媒槽における活性炭が触媒として作用し、酸素と一酸化炭素を反応させて二酸化炭素を生成させているものと理解される。なお、酸素の反応割合が小さいのは、もともと酸素濃度が極めて低いからであり、粗一酸化炭素ガスにおける酸素濃度が低くなればなるほど、その反応割合低下傾向は強くなる。また、反応割合が低い場合でも、図1に基づいて説明したように、同じ酸素除去工程を繰り返すことで、目標とする一酸化炭素ガスの純度に到達することはできる。
実施例1では、触媒槽で処理する前の粗一酸化炭素ガス中の酸素濃度は1.40モルppmであったものが、触媒槽から排出された生成ガスにおいては酸素濃度が1.35モルppmに減少して、0.10モルppmの二酸化炭素が生成されていた。このことより、触媒槽における活性炭が触媒として作用し、酸素と一酸化炭素を反応させて二酸化炭素を生成させているものと理解される。なお、酸素の反応割合が小さいのは、もともと酸素濃度が極めて低いからであり、粗一酸化炭素ガスにおける酸素濃度が低くなればなるほど、その反応割合低下傾向は強くなる。また、反応割合が低い場合でも、図1に基づいて説明したように、同じ酸素除去工程を繰り返すことで、目標とする一酸化炭素ガスの純度に到達することはできる。
実施例2からは、反応温度を高めることで1回の工程で除去できる酸素の割合を高めることができることが理解できる。
実施例3によれば、触媒槽における反応圧力を大気圧まで低下させても、反応温度を40~45℃まで若干高めることで酸素を除去が可能であることが理解できる。また、活性炭の触媒活性は、反応を2ヶ月続けても低下しないことも分かり、酸素除去工程を目的とする一酸化炭素の純度が達成されるまで繰り返しても、何も問題ないことが了解される。さらに、参考例1を実施例3と対比すれば、活性炭と同じ反応条件ではAl2O3を用いても触媒作用を示すことはなく、活性炭単体による触媒作用が確認できる。
1:触媒槽
1a:活性炭
2:ガス洗浄容器
2a:アルカリ水溶液
4:コンプレッサ
7b:循環ライン
1a:活性炭
2:ガス洗浄容器
2a:アルカリ水溶液
4:コンプレッサ
7b:循環ライン
Claims (7)
- 酸素を含む粗一酸化炭素ガスを、金属を担持させていない活性炭と接触させることを特徴とする、粗一酸化炭素ガスから酸素を除去する方法。
- 前記粗一酸化炭素ガスと前記活性炭との接触は、前記活性炭を充填した触媒槽に前記粗一酸化炭素ガスを導入することにより行う、請求項1に記載の方法。
- 前記粗一酸化炭素ガスにおける酸素濃度が0.1~1000モルppmである、請求項1に記載の方法。
- 前記粗一酸化炭素ガスと前記活性炭との接触温度が20~80℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
- 前記粗一酸化炭素ガスと前記活性炭との接触温度が30~50℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の酸素除去方法により粗一酸化炭素ガスから酸素を除去する工程と、前記酸素除去工程により得られる生成ガスをアルカリ水溶液で洗浄することにより二酸化炭素を除去する工程と、を含む、一酸化炭素の精製方法。
- 前記酸素除去工程と前記二酸化炭素除去工程とが、一酸化炭素が目的とする純度になるまで繰り返される、請求項6に記載の方法。
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