JP3041445B2 - 高純度一酸化炭素の製造方法 - Google Patents

高純度一酸化炭素の製造方法

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JP3041445B2
JP3041445B2 JP5195422A JP19542293A JP3041445B2 JP 3041445 B2 JP3041445 B2 JP 3041445B2 JP 5195422 A JP5195422 A JP 5195422A JP 19542293 A JP19542293 A JP 19542293A JP 3041445 B2 JP3041445 B2 JP 3041445B2
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健児 濱田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高純度一酸化炭素の製造
方法に関する。さらに詳しくは、集積回路等の半導体製
造分野で用いられる99.99%以上の純度を有する高
純度一酸化炭素の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、高純度一酸化炭素の製造方法とし
ては天然ガスを水蒸気改質して高濃度の一酸化炭素を発
生させ、それをさらに分離精製する方法、または蟻酸を
硫酸あるいは固体触媒を用いて分離、脱水し精製する方
法等が知られている。精製工程を考慮すると蟻酸分解法
の方が一酸化炭素を高い選択率で得られるために有利で
あるが、硫酸を用いて脱水反応を行った場合、反応で生
成した水が硫酸濃度を下げるので、反応速度を維持する
には多量の硫酸が必要となり、また硫酸を含む廃水の処
理の面からも工業的には好ましい方法とはいえない。一
方、固体触媒を用いて蟻酸を分解する方法は、前記の問
題点は生じないものの、一酸化炭素の生成反応以外に水
素と二酸化炭素を生成する副反応が起こる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】固体触媒を用いる方法
において用いることができる触媒としては、一般にイオ
ン交換樹脂、アルミナ、アルミナ/五酸化燐、燐酸カル
シウム、硼燐酸カルシウム、クリプチノライト、H−Z
SM−5/アルミナ等が知られている。
【0004】しかしながら、イオン交換樹脂は使用でき
る温度が100〜130℃程度に制限され、この温度で
の蟻酸の転化率は高くない。アルミナは300℃以上で
高い転化率が得られるが、一酸化炭素の選択率は99.
7%以下でありかなりの量の水素が不純物として含まれ
てくる。アルミナ/五酸化燐、燐酸カルシウム、硼燐酸
カルシウム、クリプチノライトもアルミナの場合と同様
の傾向を示す。一方、H−ZSM−5/アルミナは反応
温度250℃の反応で転化率99.5%、選択率100
%で一酸化炭素を与え、水素を一切発生しないとされて
いる(Bull.Soc.Belg., 92,225(1983)) 。しかし、本発
明者らの追試によると、H−ZSM−5/アルミナ触媒
のロングラン・テストでは反応温度250℃で反応初期
より0.5vol%の水素が発生する。従って、H−Z
SM−5/アルミナも高純度一酸化炭素の製造のために
は優れた触媒とはいい難い。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述のように、いずれの
触媒においても高転化率、高選択率を同時に達成するこ
とは困難であり、さらに触媒の単位体積あたりの一酸化
炭素の生産能力が低いことが問題点である。また、H−
ZSM−5/アルミナ触媒は、転化率の点ではほぼ満足
できるものの経時的に選択率が低下するので工業的には
決して好ましい触媒とはいい難い。そこで、本発明者ら
は高純度の一酸化炭素を効率よく工業的に有利に得る方
法を開発すべく、蟻酸を高転化率、高選択率で一酸化炭
素と水に分解する方法を探索した。その結果、ゼオライ
ト系触媒を用い蟻酸と一緒に鉱酸を加えて反応を行うと
反応速度が速くなり、しかも反応の選択率が著しく向上
することを見い出し本発明に到達した。
【0006】即ち、本発明の要旨は、蟻酸を加熱分解し
て一酸化炭素を製造する方法において、ゼオライト系触
媒を用い、鉱酸の存在下に上記反応を行うことを特徴と
する高純度一酸化炭素の製造方法に関する。
【0007】本発明における反応は蟻酸を気化器に通し
て気化させ、反応器に導くことにより反応を行わせる
が、この時、鉱酸を蟻酸と混合して同時に気化器に通し
てもよいし、鉱酸を別途、連続的に反応器に添加しても
よい。本発明で用いることのできる鉱酸としては、塩
酸、硫酸、燐酸、硼酸等を挙げることができ、なかでも
塩酸と硫酸は価格と廃水処理の容易さの点から好適に用
いることができる。塩酸の場合には塩化水素の形でガス
状で反応器に添加することもできるし、水溶液として反
応器に添加してもよい。硫酸の場合も蟻酸に混ぜて気化
器に導いてもよいし、直接反応器に加えてもよい。鉱酸
の濃度は特に限定されるものではないが、蟻酸に対して
通常0.05〜5wt%、好適には0.3〜3wt%で
加えればよい。0.05wt%より酸濃度が低いと副反
応を抑制する効果が小さくなり水素の発生量が増えてく
る。一方、酸濃度が5wt%より高くてもさしたるメリ
ットがない。
【0008】本発明の方法は上記した公知の触媒につき
応用可能であるが、特にゼオライト系触媒に好適に用い
ることができる。ゼオライト系触媒の一例としてはH−
モルデナイト、H−ZSM−5、クリノプチロライト等
を挙げることができ、なかでもH−モルデナイトおよび
H−ZSM−5は耐酸性に優れているので本発明の目的
に適した触媒である。本発明で用いるH−モルデナイト
触媒としては、Si/Al原子比が5〜30であれば特に限
定されず、天然モルデナイト、合成モルデナイトのいず
れもが使用可能である。例えば、Si/Al 原子比は天然物
で5、合成品で約5 〜約30程度であり、いずれの比率で
も触媒として用いることができる。Si/Al 原子比が5よ
り小さいと、触媒活性が低下するため好ましくなく、3
0より大きいと触媒調製が繁雑となり経済的でない。ま
た、ゼオライト系触媒をその使用に先だって鉱酸で含浸
処理すると効果的な場合も多い。
【0009】本発明で用いる蟻酸の濃度は特に限定され
るものではないが、40〜100%純度の蟻酸を用いる
と効率的に反応を行うことができる。純度が40%未満
となると、蟻酸以外の残りの部分は水であるため、加熱
にエネルギーを要するので得策ではない。
【0010】本発明における反応は気化した蟻酸を前記
の触媒と接触させることにより行う。反応器としては反
応釜や触媒を充填した塔が用いられる。触媒と蟻酸と鉱
酸を反応釜に仕込み、加熱することにより一酸化炭素を
発生させてもよいが、反応効率を考慮すると触媒を充填
した塔に鉱酸と蟻酸の蒸気を通気する方が好ましい。こ
の場合、1塔式の反応器に蟻酸を通してもよいし、多管
式の反応器を用いてもよい。特に、多管式の反応器では
ガス通の片流れが防止でき、さらに加熱のための伝熱面
積を確保できるので好ましい。
【0011】本触媒を用いる反応は比較的低温で進み、
反応温度は通常150〜350℃である。反応温度が1
50℃未満になると反応が進み難くなり、転化率が低く
なるので好ましくなく、350℃を越えると副反応が顕
著になり、一酸化炭素中の水素濃度が高くなるので好ま
しくない。また、H−モルデナイトおよびH−ZSM−
5を触媒として用いた場合、3ヶ月以上の期間にわたっ
て高転化率、高選択率を保持して反応を継続することが
できる。
【0012】本反応で得られた一酸化炭素中には不純物
として水および極微量の水素、二酸化炭素および鉱酸が
含まれている。このガスにさらに精製工程を加えて高純
度の一酸化炭素を得る方法としては、公知の組み合わせ
を用いることが可能である。その一例としては、薄い苛
性ソーダで洗浄して、微量に残存する未反応の蟻酸と二
酸化炭素を取り除いた後、乾燥して水を取り除くと高純
度の一酸化炭素を得ることができる。このようにして得
られる一酸化炭素の純度は99.99%以上であり、半
導体製造分野のみならず種々の用途に利用可能である。
本発明で用いる反応器の材質としては、蟻酸および一酸
化炭素で腐食を受けず、かつ、反応に影響を及ぼさない
ものが求められるが、その要件を満たすものとしてアル
ミニウム、チタン、ジルコニウム、炭素等を好適に用い
ることができる。
【0013】
【実施例】以下に実施例および比較例を挙げて本発明を
さらに詳しく説明するが、本発明はここに示す実施例等
により何等制限をうけるものではない。
【0014】実施例1 内径2.5cm、長さ60cmのカラムにH−モルデナ
イト(Si/Al 原子比7.6 )を11cmの長さに充填し
た。用いた触媒は50mlである。このカラムの前段に
蟻酸の気化器を設けた。35%塩酸水を市販の88%純
度の蟻酸に対して2wt%加えたものを原料として用
い、気化器を通して130℃の蒸気として45g/hの
速度で反応器上部に送り込んだ。反応は外部を加熱して
250℃にて行った。反応器下部より反応ガスを取り出
して分析を行い、反応の転化率、選択率を決定した。蟻
酸の転化率は未反応の蟻酸を定量することにより求め、
一酸化炭素への選択率は生成する水素の量をガスクロマ
トグラフ質量分析計(GC−MS)で定量することによ
り求めた。その結果、蟻酸の転化率99.9%、一酸化
炭素への選択率99.99%以上で反応が進んでいた。
得られた反応ガスを10%苛性ソーダ水溶液で洗浄して
微量に含まれる二酸化炭素を除去し、さらに水で洗浄し
た。このガスをゼオライトに通して乾燥した。この結果
99.99%以上の高純度の一酸化炭素が得られた。こ
のガス中には不純物として水素が3.4ppm含まれて
いた。
【0015】実施例2 35%塩酸水に替えて96%硫酸を蟻酸に対し0.5w
t%加えた以外は、実施例1と同様に反応を行った。そ
の結果、蟻酸の転化率99.9%、一酸化炭素への選択
率99.99%以上で反応が進んでいた。実施例1と同
様に精製の処理を行った結果、99.99%以上の高純
度の一酸化炭素が得られ、その中には水素が1.6pp
m含まれていた。
【0016】実施例3 35%塩酸水に替えて96%硫酸を蟻酸に対し1.0w
t%加えた以外は、実施例1と同様に反応を行った。そ
の結果、蟻酸の転化率99.9%、一酸化炭素への選択
率99.99%以上で反応が進んでいた。実施例1と同
様に精製の処理を行った結果、99.99%以上の高純
度の一酸化炭素が得られ、その中には水素が0.9pp
m含まれていた。
【0017】実施例4 反応温度を225℃とした以外は、実施例2と同様に行
った。その結果、蟻酸の転化率99.9%、一酸化炭素
への選択率99.99%以上で反応が進んでいた。実施
例1と同様に精製の処理を行った結果、99.99%以
上の高純度の一酸化炭素が得られ、その中には水素が
0.4ppm含まれていた。
【0018】実施例5 反応温度を300℃とし、充填長を5cmとした以外
は、実施例2と同様に行った。その結果、蟻酸の転化率
99.9%、一酸化炭素への選択率99.99%以上で
反応が進んでいた。実施例1と同様に精製の処理を行っ
た結果、99.99%以上の高純度の一酸化炭素が得ら
れ、その中には水素が14.7ppm含まれていた。
【0019】実施例6 触媒としてH−ZSM−5を用いた以外は、実施例2と
同様に行った。その結果、蟻酸の転化率99.9%、一
酸化炭素への選択率99.99%以上で反応が進んでい
た。実施例1と同様に精製の処理を行った結果、99.
99%以上の高純度の一酸化炭素が得られ、その中には
水素が4.1ppm含まれていた。
【0020】実施例7 実施例1に引き続き同条件で反応を70日間(1680時
間)継続した。70日後の蟻酸の転化率は99.9%、
一酸化炭素への選択率は99.99%であり、触媒の経
時的な劣化は特に認められなかった。実施例1と同様に
精製の処理を行った結果、99.99%以上の高純度の
一酸化炭素が連続して得られ、その中には水素が3.7
ppm含まれていた。
【0021】比較例1 内径2.5cm、長さ60cmのカラムにH−モルデナ
イト(Si/Al 原子比7.6 )を11cmの長さに充填し
た。用いた触媒は50mlである。このカラムの前段に
蟻酸の気化器を設けた。市販の88%純度の蟻酸を原料
として用い、気化器を通して130℃の蒸気として45
g/hの速度で反応器上部に送り込んだ。反応は外部を
加熱して250℃にて行った。反応器下部より反応ガス
を取り出して分析を行い、反応の転化率、選択率を決定
した。蟻酸の転化率は未反応の蟻酸を定量することによ
り求め、一酸化炭素への選択率は生成する水素の量をガ
スクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)で定量する
ことにより求めた。その結果、蟻酸の転化率99.9
%、一酸化炭素への選択率99.99%以上で反応が進
んでいた。得られた反応ガスを10%苛性ソーダ水溶液
で洗浄して微量に含まれる二酸化炭素を除去し、さらに
水で洗浄した。このガスをゼオライトに通して乾燥し
た。この結果99.99%以上の高純度の一酸化炭素が
得られた。このガス中には不純物として水素が50pp
m含まれていた。
【0022】比較例2 反応温度を225℃とした以外は、比較例1と同様に行
った。その結果、蟻酸の転化率63.2%、一酸化炭素
への選択率99.99%以上で反応が進んでいた。実施
例1と同様に精製の処理を行った結果、99.99%以
上の高純度の一酸化炭素が得られ、その中には水素が1
7ppm含まれていた。
【0023】
【発明の効果】蟻酸をゼオライト系触媒で触媒的に分解
して一酸化炭素を得るに際し、蟻酸に鉱酸を加えて反応
を行うことにより、反応速度が向上し、しかも高い選択
率で反応が進むため、水素含量の低い高純度の一酸化炭
素を工業的に有利に得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 畑 啓之 兵庫県加古郡播磨町宮西346番地の1 住友精化株式会社製造所別府工場内 (56)参考文献 Bull.Soc.Chim.Bel g.92[3](1983)p225−227 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 31/18 B01J 29/18 B01J 29/40 CA(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蟻酸を加熱分解して一酸化炭素を製造す
    る方法において、ゼオライト系触媒を用い、鉱酸の存在
    下に上記反応を行うことを特徴とする高純度一酸化炭素
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 ゼオライト系触媒がH−ZSM−5また
    はH−モルデナイトである請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 鉱酸が塩酸または硫酸である請求項1記
    載の製造方法。
  4. 【請求項4】 鉱酸の濃度が蟻酸に対して0.05〜5
    wt%である請求項1記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 加熱分解温度が150〜350℃である
    請求項1記載の製造方法。
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