JP7116461B2 - バインダ溶液および塗液ならびに蓄電素子電極の製造方法 - Google Patents

バインダ溶液および塗液ならびに蓄電素子電極の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池(LiB)、リチウムイオンキャパシタ(LiC)等蓄電素子の活物質層形成用のバインダ溶液および塗液、ならびに蓄電素子電極の製造方法に関する。
ノート型パソコン、携帯電話、電気自動車などの急速な市場拡大に伴い、高エネルギー密度であり、かつ、サイクル特性が良好なLiB、LiC等の蓄電素子が求められている。サイクル特性を高めるために結着力に優れた耐熱性の樹脂を蓄電素子電極活物質層のバインダとして用いる方法が提案されている。
例えば、特許文献1~11には、特定の化学構造を有するポリイミド系高分子を、特定の溶媒に溶解させた溶液をバインダ溶液として用いて電極活物質層を形成させる方法が提案されている。
また、特許文献12には特定の架橋剤で架橋させたポリアミドイミド(PAI)をバインダとして用いる方法が提案されている。
特許4240240号公報 特許4161237号公報 特許4124694号公報 特許3589321号公報 特許3422392号公報 特許3422391号公報 特許3422390号公報 特許3422389号公報 特許3422388号公報 再表2012/132153号公報 特開2016-27561号公報 再表2012/165609号公報
しかしながら、従来知られているバインダ樹脂を用いて得られる電極活物質層は、活物質のリチウムの吸蔵および放出による体積変化に伴う応力や歪みを充分に緩和することができないことや活物質層内部の気孔分布が不均一であること等に起因して、充放電サイクルに伴う放電容量の低下を充分に抑制することは困難であった。
そこで本発明は、上記課題を解決するものであって、サイクル特性が改良された蓄電素子電極活物質層形成用のバインダ溶液および塗液ならびに蓄電素子電極の製造方法の提供を目的とする。
LiB電極用のバインダ溶液の構成を特定のものとすることにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は下記を趣旨とするものである。
<1> バインダ樹脂としてのポリアミドイミドと溶媒とからなる蓄電素子活物質層形成用のバインダ溶液であって、前記溶媒は、前記バインダ樹脂に対する良溶媒および貧溶媒を含み、前記良溶媒がアミド系溶媒であって、かつ前記貧溶媒が、前記良溶媒よりも20℃以上沸点が高いエーテル系溶媒であり、活物質層形成の際、前記バインダ樹脂を多孔質化する作用を有するものであることを特徴とする蓄電素子活物質層形成用バインダ溶液。
<2> 前記バインダ溶液に、蓄電素子電極の活物質を配合してなる蓄電素子電極形成用 塗液。
<3> 前記塗液を電極集電体に塗布し、乾燥することを特徴とする蓄電素子電極の製造方法。
本発明のバインダ溶液から形成される電極を有する蓄電素子は、サイクル特性に優れる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明は、蓄電素子電極用のバインダ溶液に関する。LiBやLiC等蓄電素子電極とは、蓄電素子を構成する電極であって、正極活物質層が正極集電体に接合された正極、もしくは、負極活物質層が負極集電体に接合された負極をいう。電極活物質層は、正極活物質層と負極活物質層の総称である。
集電体としては、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔、アルミ箔等の金属箔を使用することができる。正極にはアルミ箔が、負極には銅箔が好ましく用いられる。これらの金属箔の厚みは5~50μmが好ましく、9~18μmがより好ましい。これらの金属箔の表面は、活物質層との接着性を向上させるための粗面化処理や防錆処理がされていてもよい。
正極活物質層は、正極活物質粒子をバインダ樹脂で結着して得られる層である。LiBの正極活物質粒子として用いられる材料としては、リチウムイオンを吸蔵および放出できるものが好ましく、LiBの正極活物質として一般に用いられるものを挙げることができる。例えば、酸化物系(LiCoO、LiNiO、LiMn等)、複合酸化物系、リン酸鉄系(LiFePO、LiFePOF等)、高分子化合物系(ポリアニリン、ポリチオフェン等)等の活物質粒子を挙げることができる。この中でも、LiCoO、LiNiO、LiFePOが好ましい。正極活物質層には、その内部抵抗を低下させるため、カーボン(黒鉛、カーボンブラック等)粒子や金属(銀、銅、ニッケル等)粒子等の導電助剤が、1~30質量%程度配合されていてもよい。また、LiCの正極活物質粒子としては、アニオン(電解質に含まれるアニオン)を吸着および脱離できるものが好ましく、例えば、活性炭を用いることができる。
負極活物質層は、負極活物質粒子をバインダ樹脂で結着して得られる層である。LiBやLiCの負極活物質粒子として用いられる材料としては、リチウムイオンを吸蔵および放出できるものが好ましく、LiBやLiCの負極活物質として一般に用いられるものを挙げることができる。例えば、グラファイト、アモルファスカーボン、シリコン系、錫系等の活物質粒子を挙げることができる。この中でもグラファイト粒子、シリコン系粒子が好ましい。シリコン系粒子としては、例えば、シリコン単体、シリコン合金、シリコン・二酸化珪素複合体等の粒子を挙げることができる。これらシリコン系粒子の中でも、シリコン単体の粒子が好ましい。シリコン単体とは、純度が95質量%以上の結晶質もしくは非晶質のシリコンをいう。負極活物質層には、その内部抵抗を低下させるため、カーボン(黒鉛、カーボンブラック等)粒子や金属(銀、銅、ニッケル等)粒子等の導電助剤が、1~30質量%程度配合されていてもよい。
活物質粒子や導電助剤の平均粒径は、正極、負極いずれも50μm以下が好ましく、10μm以下がさらに好ましい。粒子径は、反対に小さすぎてもバインダ樹脂による結着が難しくなるので、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上である。ここで、平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定により得られるD50(50%累積径)である。
電極活物質層の気孔率は、正極、負極いずれも5~50体積%が好ましく、10~40体積%がより好ましい。
電極活物質層の層厚は、通常20~200μm程度である。
本発明のバインダ溶液を構成するバインダ樹脂の種類に制限はないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ビニリデンフロライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等を挙げることができる。これらの中で、PI、PAIが好ましい。
本発明のバインダ溶液を構成する溶媒は、バインダ樹脂に対する貧溶媒を含み、かつその貧溶媒が、活物質層形成の際、バインダ樹脂を多孔質化する作用を有するものであることが必要である。ここで貧溶媒とは、バインダ樹脂に対する溶解度が25℃で1質量%未満の溶媒をいう。このような溶媒をバインダ樹脂に対する良溶媒と混合して用いることにより、バインダ樹脂の多孔質化を図ることができる。ここで、良溶媒とは、バインダ樹脂に対する溶解度が25℃で1質量%以上の溶媒をいう。
以下、バインダ樹脂として、好ましいバインダ樹脂の一つであるPAIを用いた例について詳しく説明するが、本願の技術思想を、前記した他のバインダ樹脂についても、PAIと同様に適用することができる。
PAIは、主鎖にイミド結合とアミド結合の両方を有する耐熱性高分子であり、例えば、原料であるトリカルボン酸成分とジアミン成分との重縮合反応を行うことにより得ることができる。 PAIのトリカルボン酸成分は、1分子あたり3個のカルボキシル基(その誘導体を含む)を有する有機化合物であって、当該3個のカルボキシル基のうち、少なくとも2個のカルボキシル基が酸無水物形態を形成し得る位置に配置されたものである。トリカルボン酸成分としては、芳香族トリカルボン酸成分、脂環族トリカルボン酸成分、脂肪族トリカルボン酸成分等が用いられ、芳香族トリカルボン酸成分または脂環族トリカルボン酸成分が好ましい。
芳香族トリカルボン酸成分の具体例として、例えば、ベンゼントリカルボン酸成分、ナフタレントリカルボン酸成分が挙げられる。 ベンゼントリカルボン酸成分の具体例として、例えば、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ならびにこれらの無水物およびそのモノクロライドが挙げられる。 ナフタレントリカルボン酸成分の具体例として、例えば、1,2,3‐ナフタレントリカルボン酸、1,6,7-ナフタレントリカルボン酸、1,4,5-ナフタレントリカルボン酸、ならびにこれらの無水物およびそのモノクロライドが挙げられる。 脂環族トリカルボン酸成分の具体例として、例えば、1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸、1,2,3-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-デカヒドロナフタレントリカルボン酸、1,2,5-デカヒドロナフタレントリカルボン酸ならびにこれらの無水物およびそのモノクロライドが挙げられる。 トリカルボン酸成分の中では、芳香族トリカルボン酸成分が好ましい。芳香族トリカルボン酸成分の中では、トリメリット酸および無水トリメリット酸クロライド(TAC)が好ましい。
トリカルボン酸成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。トリカルボン酸成分は、その一部がピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、またはビフェニルテトラカルボン酸等の成分で置換されたものを用いてもよい。
PAIのジアミン成分は、1分子あたり2個の1級アミノ基(その誘導体を含む)を有する有機化合物である。ジアミン成分としては、芳香族ジアミン成分、脂環族ジアミン成分、脂肪族成分等が用いられ、芳香族ジアミン成分または脂環族ジアミン成分が好ましい。
芳香族ジアミン成分の具体例として、例えば、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、m-フェニレンジアミン(MDA)、p-フェニレンジアミン、4,4′-ジフェニルメタンジアミン(DMA)、4,4′-ジフェニルエーテルジアミン、ジフェニルスルホン-4,4′-ジアミン、ジフェニルー4,4′-ジアミン、o-トリジン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン、ならびにこれらのジイソシアネート誘導体が挙げられる。
脂環族ジアミン成分の具体例として、例えば、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ならびにこれらのジイソシアネート誘導体が挙げられる。ジアミン成分の中では、芳香族ジアミン成分が好ましい。 芳香族ジアミン成分の中では、DADE、MDAおよびDMAが好ましい。ジアミン成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
PAIは、通常、200℃以上のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、DSC(示差熱分析)により測定された値を用いている。
PAIは、ポリカルボジイミド、ビスオキサゾリン等の架橋剤やシランカップラ等で化学的に変性されたものであってもよい。
バインダ樹脂としてPAIを用いる場合は、良溶媒をアミド系溶媒、貧溶媒をエーテル系溶媒とすることが好ましい。
アミド系溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP 沸点:202℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc 沸点:166℃)が挙げられる。これらの中でも、NMPおよびDMAcが好ましく用いられ、NMPが特に好ましい。
エーテル系溶媒としては、PAIに対する貧溶媒であれば制限はないが、前記アミド系溶媒よりも沸点が高いものが好ましい。また、その沸点差は、5℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。これらのエーテル系溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGM 沸点:162℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TRGM 沸点:216℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGM 沸点:275℃)、ジエチレングリコール(DEG 沸点:244℃)、トリエチレングリコール(TEG 沸点:287℃)、トリプロピレングリコール(TPG 沸点:273℃)等の溶媒が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、TRGMおよびTEGMが好ましく用いられ、TEGMが特に好ましい。
PAIからなるバインダ溶液は、前記混合溶媒の5~95質量%を貧溶媒とすることが好ましく、10~90質量%とすることがより好ましい。ここで、貧溶媒の好ましい配合量は、貧溶媒種類に依存するので、貧溶媒の種類に応じて適宜設定すればよい。これにより、このバインダ溶液を、LiB電極活物質結着用のバインダ溶液として用いた際、活物質層中に多孔質構造のPAIを形成させることができる。PAIが多孔質構造を形成しているかどうかは、活物質層断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を倍率5000~20000倍で取得することにより確認することができる。なお、混合溶媒は、必要に応じて、他の溶媒を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
PAIからなるバインダ溶液は、例えば、以下のような製造方法で製造することが好ましい。すなわち、固体状のPAIを前記混合溶媒に溶解せしめてバインダ溶液とする。固体状のPAIとしては、例えば、市販のPAI粉体(例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製トーロン4000Tシリーズ、トーロン4000TF、トーロンAI-10シリーズ等)を利用することができる。固体状のPAIを用いることにより、本発明の組成としたバインダ溶液を容易に得ることができる。
PAIからなるバインダ溶液を得るには、前記したような固体状のPAIを用いて製造する方法が好ましいが、原料である前記トリカルボン酸成分および前記ジアミン成分(各種ジアミンもしくはそのジイソシアネート誘導体)を略等モルで配合し、それを前記混合溶媒中で重合反応させて得られる溶液も用いることができる。また、良溶媒中のみで重合反応して均一溶液を得た後、これにエーテル系溶媒を加える方法や、エーテル系溶媒中のみで重合反応して懸濁液を得た後、これに良溶媒を加える方法で、バインダ溶液を得ることもできるが、前記したような固体状のPAIを用いて製造する方法が好ましい。
本発明のバインダ溶液には、必要に応じて、各種界面活性剤や有機シランカップリング剤のような公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。また、必要に応じて、バインダ溶液に、PAI以外の他のポリマーを、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。なお、本発明のバインダ溶液に関連したPAI溶液については、国際公開2015/108114号明細書を参照することもできる。
本発明のバインダ溶液を用いて、例えば以下のようにして電極活物質層を形成させることができる。すなわち、前記電極活物質(必要に応じて導電剤を含む)と、本発明のバインダ溶液とを混合して、均一な塗液を調製し、これを前記電極集電体上に塗布し、乾燥することにより、電極集電体上に電極活物質層を形成することができる。得られた電極は、ロールプレス等の方法により圧縮して、適当な密度に調整することができる。このプロセスにおける乾燥の際に、貧溶媒の作用によりバインダ樹脂の相分離が起こり、多孔質構造が形成される。
バインダ樹脂の電極活物質層に対する配合量は、1質量%以上、30質量%以下とすることが好ましく、3質量%以上、25質量%以下とすることがさらに好ましい。このようにすることにより、充分な結着効果と、良好なサイクル特性とを得ることができる。
電極スラリの塗布方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法、ディップコーティング法等が公知の方法が挙げられる。
本発明の電極は、その活物質層を形成するバインダ成分が、多孔質構造を有しているので、そのクッション効果により、活物質のリチウムの吸蔵放出による体積変化に伴う応力や歪みを充分に緩和することができる。また、バインダ成分の多孔質構造に起因して電解液が均一に電極活物質層内に分布する。その結果、本発明の電極を用いたLiBのサイクル特性が向上する。
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
<実施例1>
TACと、DADEおよびMDAとを共重合(共重合モル比:DADE/MDA=7/3)して得られるPAI粉体(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製トーロン4000T-HV、ガラス転移温度280℃)15gを、NMP25.5gとTEGM59.5gとからなる混合溶媒に、30℃で溶解して、PAIの固形分濃度が対PAI溶液比で15質量%であり、TEGMの含有比率が混合溶媒に対し70質量%の均一なPAI溶液(A-1)を得た。
<実施例2>
TEGMの含有比率を混合溶媒に対し60質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、均一なPAI溶液(A-2)を得た。
<実施例3>
TEGMの含有比率を混合溶媒に対し75質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、均一なPAI溶液(A-3)を得た。
<実施例4>
TEGMの含有比率を混合溶媒に対し50質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、均一なPAI溶液(A-4)を得た。
<実施例5>
混合溶媒として、NMP76.5gとTPG8.5gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、TPGの含有比率が混合溶媒に対し10質量%の均一なPAI溶液(A-5)を得た。
<比較例1>
TEGMを用いずに、NMPのみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、均一なPAI溶液(B-1)を得た。
<比較例2>
NMPを用いずに、TEGMのみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、均一なPAI溶液(B-2)を得ようとしたが、均一な溶液を得ることはできなかった。
<実施例6>
実施例1で得られたPAI溶液(A-1)に、平均粒径が3.5μmであるシリコン粒子(純度:99質量%)、平均粒径が5μmである黒鉛粒子、および希釈用の混合溶媒(NMP/TEGMの質量比は3/7)を加え、均一に分散するようにビーズミルで粉砕しつつ均一混合を行うことにより、電極活物質層形成用スラリ(固形分濃度約25質量%でシリコン粒子と黒鉛粒子の質量比は8/2)を得た。このスラリを厚み18μmの電解銅箔の表面に、均一に塗布した後、150℃で20分間乾燥し、集電体(電解銅箔)上に、厚みが40μmの活物質層が形成された電極(P-1)を得た。 この電極を用いて、試験セルを下記のようにして作成した。すなわち、 この電極を、10mm×40mmの矩形状に裁断し、10mm×10mmの活物質面積を残して融着フィルムで被覆した。対極として、厚み1mmのリチウム板を、30mm×40mmの矩形状に裁断し、厚み0.5mmのニッケルリード(5mm×50mm)に二つ折りにして圧着した。電極のみを、袋状のセパレータ(30mm×20mm)に入れた後、対極と向き合わせ、電極群を得た。セパレータには、矩形状のポリプロピレン樹脂製多孔質フィルム(厚み25μm)を用いた。この電極群を二枚一組の矩形状のアルミラミネートフィルム(50mm×40mm)で覆い、その三辺をシールした後、袋状アルミラミネートフィルム内に電解液1mLを注入した。電解液には、ECと、DECと、EMCとを、体積比1:1:1で混合した混合溶媒にLiPFを1モル/Lの濃度で溶解したものを用いた。その後、残りの一辺をシールして、袋状アルミラミネートフィルム内を密封した。また、袋状アルミラミネートフィルム内の密封の際には、電極およびニッケルリードの一端を外側に延出し、端子とした。このようにして、試験セルを得た。これらの操作のすべてを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。得られた試験セルを用い、測定温度:30℃、電圧範囲:0.01~2V、充電電流および放電電流:500mA/g-電極活物質層の充放電条件で繰り返しの充放電を行い、20回目放電容量の2回目放電容量に対する比率(放電容量維持率)を求めた所、95%以上であり、良好なサイクル特性が確認された。なお、PAI部分が、多孔質化されていることは、活物質層断面のSEM像で確認した。
<実施例7>
実施例2で得られたPAI溶液(A-2)を用い、希釈用の混合溶媒であるNMP/TEGMの質量比を4/6としたこと以外は、実施例6と同様にして電極スラリ(固形分濃度約25質量%でシリコン粒子と黒鉛粒子の質量比は8/2)を作成し、実施例6と同様にして、電極(P-2)を得た後、試験セルを作成してサイクル特性の評価を行った。その結果、放電容量維持率は95%以上であり、良好なサイクル特性が確認された。なお、電極(P-2)のPAI部分が、多孔質化されていることは、活物質層断面のSEM像で確認した。
<実施例8>
実施例3で得られたPAI溶液(A-3)を用い、希釈用の混合溶媒であるNMP/TEGMの質量比を2.5/7.5としたこと以外は、実施例6と同様にして電極スラリ(固形分濃度約25質量%でシリコン粒子と黒鉛粒子の質量比は8/2)を作成し、実施例6と同様にして、電極(P-3)を得た後、試験セルを作成してサイクル特性の評価を行った。その結果、放電容量維持率は95%以上であり、良好なサイクル特性が確認された。なお、電極(P-3)のPAI部分が、多孔質化されていることは、活物質層断面のSEM像で確認した。
<実施例9>
実施例4で得られたPAI溶液(A-4)を用い、希釈用の混合溶媒として、質量比を5/5としたNMP/TPGの混合溶媒を用いたこと以外は、実施例6と同様にして電極スラリ(固形分濃度約25質量%でシリコン粒子と黒鉛粒子の質量比は8/2)を作成し、実施例6と同様にして、電極(P-4)を得た後、試験セルを作成してサイクル特性の評価を行った。その結果、放電容量維持率は95%以上であり、良好なサイクル特性が確認された。なお、電極(P-4)のPAI部分が、多孔質化されていることは、活物質層断面のSEM像で確認した。
<実施例10>
実施例5で得られたPAI溶液(A-5)を用い、希釈用の混合溶媒として、質量比を9/1としたNMP/TPGの混合溶媒を用いたこと以外は、実施例6と同様にして電極スラリ(固形分濃度約25質量%でシリコン粒子と黒鉛粒子の質量比は8/2)を作成し、実施例6と同様にして、電極(P-5)を得た後、試験セルを作成してサイクル特性の評価を行った。その結果、放電容量維持率は95%以上であり、良好なサイクル特性が確認された。なお、電極(P-5)のPAI部分が、多孔質化されていることは、活物質層断面のSEM像で確認した。
<比較例3>
比較例1で得られたPAI溶液(B-1)を用い、希釈用の混合溶媒(NMP/TEGM)に代えてNMPで希釈したこと以外は、実施例6と同様にして電極スラリ(固形分濃度約25質量%でシリコン粒子と黒鉛粒子の質量比は8/2)を作成し、実施例6と同様にして電極(R-2)を得た後、試験セルを作成してサイクル特性の評価を行った。その結果、放電容量維持率は81%であった。なお、なお、電極(R-1)のPAI部分の多孔質化は確認できなかった。
以上のように、本発明の実施例のバインダ溶液を用いた電極活物質層は、PAI部分が多孔質化されているので、充放電サイクル特性に優れる。

Claims (3)

  1. バインダ樹脂としてのポリアミドイミドと溶媒とからなる蓄電素子電極活物質層形成用のバインダ溶液であって、前記溶媒は、前記バインダ樹脂に対する良溶媒および貧溶媒を含み、前記良溶媒がアミド系溶媒であって、かつ前記貧溶媒が、前記良溶媒よりも20℃以上沸点が高いエーテル系溶媒であり、活物質層形成の際、前記バインダ樹脂を多孔質化する作用を有するものであることを特徴とする蓄電素子電極活物質層形成用バインダ溶液。
  2. 請求項1記載のバインダ溶液に、蓄電素子活物質を配合してなる蓄電素子電極活物質層形成用塗液。
  3. 請求項2記載の塗液を電極集電体に塗布し、乾燥することを特徴とする蓄電素子電極の製造方法。
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