以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における内燃機関失火検出装置につき、詳細に説明する。
<内燃機関失火検出装置の構成>
まず、図1を参照して、本実施形態における内燃機関失火検出装置の構成につき、詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態における内燃機関の気筒の模式的な平面図であり、図1(b)は、本発明の実施形態における内燃機関失火検出装置の構成を示すブロック図である。
本実施形態における内燃機関失火検出装置1が適用される内燃機関は、図示を省略する二輪自動車等の車両に搭載される単一の気筒100を有する単気筒の内燃機関又は2つ以上の気筒100を有する2気筒以上の内燃機関であり、典型的にはV型2気筒の内燃機関である。なお、気筒100の配置は、V型に限らず水平対向型又は直列型等の任意の配置にすることができる。
かかる内燃機関は、気筒100を有する図示しないシリンダブロックを備えている。シリンダブロックの上部には、図示しないシリンダヘッドが組み付けられている。
気筒100は、図1(a)に示すように、内部に配置されるピストン101を有している。シリンダブロックの内壁面と、ピストン101の上面、及びシリンダヘッドの内壁面は、協働して図示しない燃焼室を画成している。また、気筒100は、燃焼室といずれも図示を省略する4つの吸気通路との各々対応する接続部位に設けられる4つの吸気バルブ102a、吸気バルブ102b、吸気バルブ102c及び吸気バルブ102dと、燃焼室内の燃料及び空気から成る混合気に点火するメイン点火プラグ103と、燃焼室内の燃料及び空気から成る混合気に点火するサブ点火プラグ104と、クランクシャフトとカムシャフトとを連係して駆動させるためのカムチェーンを配置するカムチェーンスリット105と、燃焼室と図示を省略する排気通路との対応する接続部位に設けられる排気出口106と、を有している。
メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104は、ピストン101の中心から径方向(図1(a)において紙面に対して平行な方向)において距離が異なる位置に各々配置されている。具体的には、メイン点火プラグ103は、図1(a)に示すように、平面視で円形のピストン101の中心に配置されている。サブ点火プラグ104は、図1(a)に示すように、平面視でピストン101と重なる位置であってメイン点火プラグ103よりもピストン101の外周側に配置されている。
ピストン101は、いずれも図示を省略するコンロッドを介してクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトには、それと共に同軸に回転する図示しないリラクタが設けられている。
なお、2気筒以上を備える内燃機関における各気筒は、図1(a)に示す気筒100の構成を各々有している。
本実施形態における内燃機関失火検出装置1は、図1(b)に示すように、ECU(Electronic Control Unit)等の電子制御装置によって構成されている。図示しないスロットルバルブ及び吸気圧力センサ21は、単気筒を備える内燃機関の場合には気筒100の上流側に1つ備えられていると共に、複数の気筒を備える内燃機関の場合にはそれぞれの気筒100の上流側にそれぞれ1つずつ備えられている。
内燃機関失火検出装置1は、クランク角速度算出部2、失火判定閾値検索部3、判定パラメータ算出部4、燃焼不良判定閾値検索部5、燃焼不良監視部6及び燃焼不良・失火判定部7を備えている。燃焼不良監視部6及び燃焼不良・失火判定部7は、燃焼状態判定部を構成している。
クランク角速度算出部2は、クランクセンサ22から入力される内燃機関のクランク角度(図示を省略するクランク軸の回転角度)に応じた電気信号に基づいて、所定のクランク角度毎にクランク軸の角速度(以下、「クランク角速度」と記載する)を算出する。クランク角速度算出部2は、このように算出したクランク角速度に応じた電気信号を失火判定閾値検索部3、判定パラメータ算出部4及び燃焼不良判定閾値検索部5に出力する。
失火判定閾値検索部3は、クランク角速度算出部2から入力されるクランク角速度に応じた電気信号、及び吸気圧力センサ21から入力される図示しないスロットルバルブと内燃機関との間の吸気圧力に応じた電気信号に基づいて、失火判定閾値を算出して設定する。
具体的には、失火判定閾値検索部3は、クランク角速度より内燃機関の回転数(エンジン回転数)を算出し、算出した内燃機関の回転数と吸気圧力とに基づいて内燃機関の負荷状態を算出すると共に、算出した内燃機関の負荷状態が高いほど大きな失火判定閾値を設定する。なお、内燃機関の負荷状態は、上記の内燃機関の回転数と吸気圧力とにより求める場合に限らず、内燃機関の回転数とスロットルバルブの開度とから求めてもよい。
失火判定閾値検索部3は、内燃機関が複数の気筒100を備える場合には気筒100毎に失火判定閾値を算出して設定する。なお、失火判定閾値検索部3は、内燃機関が複数の気筒100を備える場合に、全ての気筒100において同一の失火判定閾値を設定してもよい。
失火判定閾値検索部3は、このように算出して設定した失火判定閾値に応じた電気信号を燃焼不良・失火判定部7に出力する。
判定パラメータ算出部4は、クランク角速度算出部2から入力されるクランク角速度に応じた電気信号に含まれる高周波成分を除去する図示しないフィルタを備えている。かかるフィルタは、典型的には移動平均フィルタ等のデジタルフィルタである。
判定パラメータ算出部4は、後述する判定パラメータ算出処理を実行して、内燃機関の燃焼状態を判定するための判定パラメータを算出する。ここで、内燃機関の燃焼状態は、メイン点火プラグ103若しくはサブ点火プラグ104の燃焼不良、又は失火である。
具体的には、判定パラメータ算出部4は、吸気圧力センサ21から入力されるスロットルバルブと内燃機関との間の吸気圧力に応じた電気信号、及びクランクセンサ22から入力される内燃機関のクランク角度に応じた電気信号に基づいて、気筒100の圧縮行程終了時(以下、「圧縮TDCステージ」と記載する)を検出する。判定パラメータ算出部4は、クランクセンサ22から入力される内燃機関のクランク角度に応じた電気信号に基づいて、気筒100の積算区間終了時(以下、「積算終了ステージ」と記載する)を検出する。
また、判定パラメータ算出部4は、フィルタにより高周波成分を除去した電気信号の示すクランク角速度のうちの圧縮TDCステージのクランク角速度を、基準角速度として保持する。
更に、判定パラメータ算出部4は、圧縮TDCステージから積算終了ステージまでにおいて、フィルタにより高周波成分を除去した電気信号の示すクランク角速度から、保持した基準角速度を減じて、クランク角速度に関する回転速度パラメータとしての相対クランク角速度を算出する。判定パラメータ算出部4は、圧縮TDCステージから積算終了ステージまでの積算区間毎に、算出した相対クランク角速度を積算して判定パラメータとしての積算値を求める。
判定パラメータ算出部4は、複数の気筒100を備える内燃機関の場合には、気筒100毎に判定パラメータを算出する。
判定パラメータ算出部4は、このように算出した判定パラメータに応じた電気信号を、燃焼不良監視部6及び燃焼不良・失火判定部7に出力する。
燃焼不良判定閾値検索部5は、クランク角速度算出部2から入力されるクランク角速度に応じた電気信号、及び吸気圧力センサ21から入力されるスロットルバルブと内燃機関との間の吸気圧力に応じた電気信号に基づいて、内燃機関の負荷状態に応じた燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値を算出して設定する。ここで、燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値は、失火判定閾値よりも正常値側に設定される。また、正常値側とは、失火判定閾値よりも大きな値となる側を言う。
具体的には、燃焼不良判定閾値検索部5は、クランク角速度より内燃機関の回転数を算出し、算出した内燃機関の回転数と吸気圧力とに基づいて内燃機関の負荷状態を算出すると共に、算出した内燃機関の負荷状態が高いほど大きな燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値を設定する。なお、内燃機関の負荷状態は、上記の内燃機関の回転数と吸気圧力とにより求められる場合に限らず、内燃機関の回転数とスロットルバルブの開度とから求められてもよい。
燃焼不良判定閾値検索部5により設定されるメイン点火プラグ103の燃焼不良を判定するための燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値と、サブ点火プラグ104の燃焼不良を判定するための燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値と、は各々異なる値となる。なお、メイン点火プラグ103の燃焼不良を判定するための燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値と、サブ点火プラグ104の燃焼不良を判定するための燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値と、は各々同一でもよい。
ここで、判定パラメータは、気筒100内の圧力等の内燃機関の燃焼指標と良好な線形の相関を有し、メイン点火プラグ103の点火停止時且つサブ点火プラグ104の点火時と、メイン点火プラグ103の点火時且つサブ点火プラグ104の点火停止時と、失火時と、において各々略異なる範囲の値となる。これより、メイン点火プラグ103の燃焼不良を判定するための燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値と、サブ点火プラグ104の燃焼不良を判定するための燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値と、を各々設定することにより、メイン点火プラグ103又はサブ点火プラグ104の燃焼不良を判定することが可能である。
燃焼不良判定閾値検索部5は、複数の気筒100を備える内燃機関の場合には、気筒100毎に異なる燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値を設定する。なお、燃焼不良判定閾値検索部5は、複数の気筒100を備える内燃機関の場合に、全ての気筒100において同一の燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値を各々設定してもよい。
燃焼不良判定閾値検索部5は、このように算出して設定した燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値に応じた電気信号を燃焼不良監視部6に出力する。
燃焼不良監視部6は、後述の燃焼不良監視処理を実行して、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の一方のみが点火していない燃焼不良を判定する。具体的には、燃焼不良監視部6は、判定パラメータ算出部4から入力される電気信号の示す判定パラメータと、燃焼不良判定閾値検索部5から入力される電気信号の示す燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値と、を比較して燃焼不良を判定する。
燃焼不良監視部6は、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の一方のみが燃焼不良と判定した際に、燃焼不良と判定しないメイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の他方の点火を停止する。
燃焼不良監視部6は、複数の気筒100を備える内燃機関の場合には、気筒100毎の判定パラメータと燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値と、を比較して気筒100毎に燃焼不良を判定すると共に、気筒100毎に燃焼不良と判定しないメイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の他方の点火を停止する。
燃焼不良監視部6は、点火を停止したメイン点火プラグ103又はサブ点火プラグ104を示す電気信号を燃焼不良・失火判定部7に出力する。
燃焼不良・失火判定部7は、後述する燃焼不良・失火判定処理を実行して失火の発生又はメイン点火プラグ103若しくはサブ点火プラグ104の異常を判定する。
具体的には、燃焼不良・失火判定部7は、判定パラメータ算出部4から入力される電気信号の示す積算値と、失火判定閾値検索部3から入力される電気信号の示す失火判定閾値と、を比較する。燃焼不良・失火判定部7は、比較の結果と、燃焼不良監視部6から入力される点火を停止したメイン点火プラグ103又はサブ点火プラグ104を示す電気信号と、に基づいて、失火の発生又はメイン点火プラグ103若しくはサブ点火プラグ104の異常を判定する。
燃焼不良・失火判定部7は、複数の気筒100を備える内燃機関の場合には、失火の発生又はメイン点火プラグ103若しくはサブ点火プラグ104の異常を気筒100毎に判定する。
燃焼不良・失火判定部7は、メイン点火プラグ103若しくはサブ点火プラグ104の異常、又は失火の発生と判定した場合に、表示装置24に表示して報知する。
以上のような構成を有する内燃機関失火検出装置1は、以下に示す判定パラメータ算出処理、燃焼不良監視処理及び燃焼不良・失火判定処理を実行する。以下、更に図2から図4をも参照して、各処理について、詳細に説明する。
<判定パラメータ算出処理>
上記構成を有する内燃機関失火検出装置1では、内燃機関の燃焼状態を判定するための判定パラメータを算出する判定パラメータ算出処理を実行する。以下、図2を参照して、本実施形態における判定パラメータ算出処理の具体的な流れについて詳しく説明する。
図2(a)は、本発明の実施形態における判定パラメータ算出処理の流れを示すフロー図である。図2(b)は、本発明の実施形態におけるクランク角度とクランク軸の角速度との関係を示す図である。
図2(a)及び図2(b)では、#1気筒及び#2気筒の2気筒を備えると共に気筒間の点火間隔が異なる内燃機関としての不等間隔燃焼エンジンについて判定パラメータ算出処理を実行する場合を例に説明する。かかる不等間隔燃焼エンジンは、クランク軸が2回転(720度回転)する毎に、クランク軸が0度のとき又は0度から720度まで回転したときに#1気筒で点火し、クランク軸が0度からX(X<720且つX≠360)度まで回転したときに#2気筒で点火する不等間隔燃焼を繰り返す。また、図2(a)及び図2(b)では、判定パラメータとして相対クランク角速度の積算値を用いる場合を例に説明する。
図2(a)に示すフロー図は、鞍乗型車両等の車両が起動されて内燃機関失火検出装置1が稼働したタイミングで開始となり、判定パラメータ算出処理はステップS1の処理に進む。かかる判定パラメータ算出処理は、車両が起動されて内燃機関失火検出装置1が稼働している間、繰り返し実行される。
ここで、判定パラメータ算出部4は、ステップS1の処理を開始する前に、圧縮TDCステージのクランク角速度を基準角速度として保持する。
ステップS1の処理では、判定パラメータ算出部4が、#1気筒のスロットルバルブとエンジンとの間の吸気圧力を検出するための吸気圧力センサ21から入力される電気信号、及びクランクセンサ22から入力される電気信号に基づいて、#1気筒の圧縮TDCステージか否かを判定する。判定の結果、#1気筒の圧縮TDCステージではない場合には、判定パラメータ算出部4は、判定パラメータ算出処理をステップS2の処理に進める。一方、#1気筒の圧縮TDCステージである場合には、判定パラメータ算出部4は、判定パラメータ算出処理をステップS8の処理に進める。
具体的には、判定パラメータ算出部4は、#1気筒の吸気圧力センサ21から入力される電気信号の示す吸気圧力が負圧である場合において、クランクセンサ22から入力される電気信号の示すクランク角度より、#1気筒において360度回転する前に上死点に達したことを検出した場合に、#1気筒の圧縮TDCステージであると判定し、それ以外であれば#1気筒の圧縮TDCステージではないと判定する。
ステップS2の処理では、判定パラメータ算出部4が、#2気筒のスロットルバルブとエンジンとの間の吸気圧力を検出するための吸気圧力センサ21から入力される電気信号、及びクランクセンサ22から入力される電気信号に基づいて、#2気筒の圧縮TDCステージか否かを判定する。判定の結果、#2気筒の圧縮TDCステージではない場合には、判定パラメータ算出部4は、判定パラメータ算出処理をステップS3の処理に進める。一方、#2気筒の圧縮TDCステージである場合には、判定パラメータ算出部4は、判定パラメータ算出処理をステップS8の処理に進める。
具体的には、判定パラメータ算出部4は、#2気筒の吸気圧力センサ21から入力される電気信号の示す吸気圧力が負圧である場合において、クランクセンサ22から入力される電気信号の示すクランク角度より、#2気筒において360度回転する前に上死点に達したことを検出した場合に、#2気筒の圧縮TDCステージであると判定し、それ以外であれば#2気筒の圧縮TDCステージではないと判定する。
ステップS3の処理では、判定パラメータ算出部4が、クランク角速度算出部2から入力されるクランク角速度を示す電気信号に含まれている高周波成分をフィルタにより除去し、高周波成分を除去した電気信号の示す今回角速度としてのクランク角速度から、基準角速度を減じて相対クランク角速度(相対クランク角速度=今回角速度-基準角速度)を算出すると共に、前回までに積算した相対クランク角速度の積算値である判定パラメータ前回値に対して、今回算出した相対クランク角速度を加算して積算することにより判定パラメータとしての積算値(判定パラメータ=判定パラメータ前回値+相対クランク角速度)を算出する。これにより、ステップS3の処理は完了し、判定パラメータ算出処理はステップS4の処理に進む。
ステップS4の処理では、判定パラメータ算出部4が、クランクセンサ22から入力される電気信号に基づいて、#1気筒の積算終了ステージか否かを判定する。判定の結果、#1気筒の積算終了ステージの場合には、判定パラメータ算出部4は、判定パラメータ算出処理をステップS5の処理に進める。一方、#1気筒の積算終了ステージではない場合には、判定パラメータ算出部4は、判定パラメータ算出処理をステップS6の処理に進める。
具体的には、判定パラメータ算出部4は、クランクセンサ22から入力される電気信号の示すクランク角度より、#1気筒が圧縮TDCステージからX度回転したことを検出した場合に#1気筒の積算終了ステージであると判定し、それ以外は#1気筒の積算終了ステージではないと判定する。
ステップS5の処理では、判定パラメータ算出部4が、算出した#1気筒の相対クランク角速度の積算値を燃焼不良・失火判定部7に出力する。これにより、ステップS5の処理は完了し、判定パラメータ算出処理は終了する。
ステップS6の処理では、判定パラメータ算出部4が、クランクセンサ22から入力される電気信号に基づいて、#2気筒の積算終了ステージか否かを判定する。判定の結果、#2気筒の積算終了ステージの場合には、判定パラメータ算出部4は、判定パラメータ算出処理をステップS7の処理に進める。一方、#2気筒の積算終了ステージではない場合には、判定パラメータ算出部4は、判定パラメータ算出処理を終了する。
具体的には、判定パラメータ算出部4は、クランクセンサ22から入力される電気信号の示すクランク角度より、#2気筒が圧縮TDCステージから(720-X)度回転したことを検出した場合に#2気筒の積算終了ステージであると判定し、それ以外は#2気筒の積算終了ステージではないと判定する。
ステップS7の処理では、判定パラメータ算出部4が、算出した#2気筒の相対クランク角速度の積算値を燃焼不良・失火判定部7に出力する。これにより、ステップS7の処理は完了し、判定パラメータ算出処理は終了する。
ステップS8の処理では、判定パラメータ算出部4が、判定パラメータとしての積算値をリセットして「0」にする。これにより、ステップS8の処理は完了し、判定パラメータ算出処理は終了する。
なお、複数の気筒を備える不等間隔燃焼エンジンの積算区間は、各気筒100別に異なる長さに設定されていてもよいし、全ての気筒100において同一の長さに設定されていてもよい。また、不等間隔燃焼エンジンについて判定パラメータを算出する場合に限らず、気筒間の点火間隔が全て同一である等間隔燃焼エンジンについて判定パラメータを算出してもよい。
ここで、図2(b)は、#1気筒の圧縮TDCステージから#2気筒の圧縮TDCステージまでにおけるクランク角度とクランク角速度との関係を示している。図2(b)において、L1は、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の両方が点火した場合を示し、L2は、メイン点火プラグ103が点火及びサブ点火プラグ104が点火停止した場合を示し、L3は、メイン点火プラグ103が点火停止及びサブ点火プラグ104が点火した場合を示し、L4は、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の両方が点火停止した場合を示している。クランク角速度算出部2により算出される#1気筒のクランク角速度は、図2(b)に示すように、圧縮TDCステージを除く各々のクランク角度において、L1の場合が最も大きな値を示し、続いてL2の場合、L3の場合、L4の場合の順番に値が徐々に小さくなる。なお、#2気筒のクランク角速度についても、図2(b)と同様の傾向を示す。
<燃焼不良監視処理>
上記構成を有する内燃機関失火検出装置1では、内燃機関の燃焼不良を判定する燃焼不良監視処理を実行する。以下、図3を参照して、本実施形態における燃焼不良監視処理の具体的な流れについて詳しく説明する。
図3は、本発明の実施形態における燃焼不良監視処理の流れを示すフロー図である。
図3では、#1気筒及び#2気筒の2気筒を備える内燃機関としてのエンジンについて燃焼不良監視処理を実行する場合を例に説明する。また、図3では、判定パラメータとして相対クランク角速度の積算値を用いる場合を例に説明する。なお、図3では、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の一方を#1プラグと記載し、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の他方を#2プラグと記載する。
図3に示すフロー図は、鞍乗型車両等の車両が起動されて内燃機関失火検出装置1が稼働したタイミングで開始となり、燃焼不良監視処理はステップS11の処理に進む。かかる燃焼不良監視処理は、車両が起動されて内燃機関失火検出装置1が稼働している間、繰り返し実行される。
ステップS11の処理では、燃焼不良監視部6が、#1気筒の積算終了ステージか否かを判定する。ここで、燃焼不良監視部6は、判定パラメータ算出部4から#1気筒の判定パラメータに応じた電気信号が入力した場合に#1気筒の積算終了ステージであると判定し、判定パラメータ算出部4から#1気筒の判定パラメータに応じた電気信号が入力しない場合に#1気筒の積算終了ステージではないと判定する。判定の結果、#1気筒の積算終了ステージである場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS12の処理に進める。一方、#1気筒の積算終了ステージではない場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS27の処理に進める。
ステップS12の処理では、燃焼不良監視部6が、図示しない#1気筒判定回数カウンタのカウント値をインクリメントする。これにより、ステップS12の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS13の処理に進む。
ステップS13の処理では、燃焼不良監視部6が、#1気筒判定回数カウンタのカウント値に基づいて、#1気筒の判定回数が規定数に到達したか否かを判定する。判定の結果、#1気筒の判定回数が規定数に到達した場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS14の処理に進める。一方、#1気筒の判定回数が規定数に到達していない場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS15の処理に進める。
ステップS14の処理では、燃焼不良監視部6が、#1気筒判定回数カウンタのカウント値をリセットして「0」にする。これにより、ステップS14の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS15の処理に進む。
ステップS15の処理では、燃焼不良監視部6が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#1気筒の判定パラメータが燃焼不良判定閾値検索部5から入力された電気信号の示す燃焼不良上限閾値としての#1気筒#1プラグ異常判定閾値High以下であるか否かを判定する。判定の結果、#1気筒の判定パラメータが#1気筒#1プラグ異常判定閾値High以下である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS16の処理に進める。一方、#1気筒の判定パラメータが#1気筒#1プラグ異常判定閾値Highより大きい場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS21の処理に進める。
ステップS16の処理では、燃焼不良監視部6が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#1気筒の判定パラメータが燃焼不良判定閾値検索部5から入力された電気信号の示す燃焼不良下限閾値としての#1気筒#1プラグ異常判定閾値Low以上であるか否かを判定する。判定の結果、#1気筒の判定パラメータが#1気筒#1プラグ異常判定閾値Low以上である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS17の処理に進める。一方、#1気筒の判定パラメータが#1気筒#1プラグ異常判定閾値Low未満の場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS21の処理に進める。
ステップS17の処理では、燃焼不良監視部6が、図示しない#1気筒#1プラグ異常監視カウンタのカウント値をインクリメントする。このように、燃焼不良監視部6は、#1気筒の#1プラグの判定パラメータが#1気筒#1プラグ異常判定閾値High以下且つ#1気筒#1プラグ異常判定閾値Low以上の範囲にある場合に、#1気筒#1プラグ異常監視カウンタのカウント値をインクリメントする。これにより、ステップS17の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS18の処理に進む。
ステップS18の処理では、燃焼不良監視部6が、#1気筒#1プラグ異常監視カウンタのカウント値を#1気筒の判定回数で除算して除算値F11を算出する。これにより、ステップS18の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS19の処理に進む。
ステップS19の処理では、燃焼不良監視部6が、除算値F11が#1気筒#1プラグ異常検知実施閾値以上であるか否かを判定する。判定の結果、除算値F11が#1気筒#1プラグ異常検知実施閾値以上である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS20の処理に進める。一方、除算値F11が#1気筒#1プラグ異常検知実施閾値未満である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS20の処理では、燃焼不良監視部6が、#1気筒の#2プラグの点火をオフにする処理を実行する。このように、燃焼不良監視部6は、除算値F11が#1気筒#1プラグ異常検知実施閾値以上である場合に、#1気筒の#1プラグが異常であると推定して、正常であると推定される#1気筒の#2プラグの点火を停止させる。これにより、ステップS20の処理は完了し、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS21の処理では、燃焼不良監視部6が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#1気筒の判定パラメータが燃焼不良判定閾値検索部5から入力された電気信号の示す燃焼不良上限閾値としての#1気筒#2プラグ異常判定閾値High以下であるか否かを判定する。判定の結果、#1気筒の判定パラメータが#1気筒#2プラグ異常判定閾値High以下である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS22の処理に進める。一方、#1気筒の判定パラメータが#1気筒#2プラグ異常判定閾値Highより大きい場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS22の処理では、燃焼不良監視部6が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#1気筒の判定パラメータが燃焼不良判定閾値検索部5から入力された電気信号の示す燃焼不良下限閾値としての#1気筒#2プラグ異常判定閾値Low以上であるか否かを判定する。判定の結果、#1気筒の判定パラメータが#1気筒#2プラグ異常判定閾値Low以上である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS23の処理に進める。一方、#1気筒の判定パラメータが#1気筒#2プラグ異常判定閾値Low未満の場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS23の処理では、燃焼不良監視部6が、図示しない#1気筒#2プラグ異常監視カウンタのカウント値をインクリメントする。このように、燃焼不良監視部6は、#1気筒の#1プラグの判定パラメータが#1気筒#2プラグ異常判定閾値High以下且つ#1気筒#2プラグ異常判定閾値Low以上の範囲にある場合に、#1気筒#2プラグ異常監視カウンタのカウント値をインクリメントする。これにより、ステップS23の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS24の処理に進む。
ステップS24の処理では、燃焼不良監視部6が、#1気筒#2プラグ異常監視カウンタのカウント値を#1気筒の判定回数で除算して除算値F12を算出する。これにより、ステップS24の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS25の処理に進む。
ステップS25の処理では、燃焼不良監視部6が、除算値F12が#1気筒#2プラグ異常検知実施閾値以上であるか否かを判定する。判定の結果、除算値F12が#1気筒#2プラグ異常検知実施閾値以上である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS26の処理に進める。一方、除算値F12が#1気筒#2プラグ異常検知実施閾値未満である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS26の処理では、燃焼不良監視部6が、#1気筒の#1プラグの点火をオフにする処理を実行する。このように、燃焼不良監視部6は、除算値F12が#1気筒#2プラグ異常検知実施閾値以上である場合に、#1気筒の#2プラグが異常であると推定して、正常であると推定される#1気筒の#1プラグの点火を停止させる。これにより、ステップS26の処理は完了し、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS27の処理では、燃焼不良監視部6が、#2気筒の積算終了ステージか否かを判定する。ここで、燃焼不良監視部6は、判定パラメータ算出部4から#2気筒の判定パラメータに応じた電気信号が入力した場合に#2気筒の積算終了ステージであると判定し、判定パラメータ算出部4から#2気筒の判定パラメータに応じた電気信号が入力しない場合に#2気筒の積算終了ステージではないと判定する。判定の結果、#2気筒の積算終了ステージである場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS28の処理に進める。一方、#2気筒の積算終了ステージではない場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS28の処理では、燃焼不良監視部6が、図示しない#2気筒判定回数カウンタのカウント値をインクリメントする。これにより、ステップS28の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS29の処理に進む。
ステップS29の処理では、燃焼不良監視部6が、#2気筒判定回数カウンタのカウント値に基づいて、#2気筒の判定回数が規定数に到達したか否かを判定する。判定の結果、#2気筒の判定回数が規定数に到達した場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS30の処理に進める。一方、#2気筒の判定回数が規定数に到達していない場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS31の処理に進める。
ステップS30の処理では、燃焼不良監視部6が、#2気筒判定回数カウンタのカウント値をリセットして「0」にする。これにより、ステップS30の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS31の処理に進む。
ステップS31の処理では、燃焼不良監視部6が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#2気筒の判定パラメータが燃焼不良判定閾値検索部5から入力された電気信号の示す燃焼不良上限閾値としての#2気筒#1プラグ異常判定閾値High以下であるか否かを判定する。判定の結果、#2気筒の判定パラメータが#2気筒#1プラグ異常判定閾値High以下である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS32の処理に進める。一方、#2気筒の判定パラメータが#2気筒#1プラグ異常判定閾値Highより大きい場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS37の処理に進める。
ステップS32の処理では、燃焼不良監視部6が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#2気筒の判定パラメータが燃焼不良判定閾値検索部5から入力された電気信号の示す燃焼不良下限閾値としての#2気筒#1プラグ異常判定閾値Low以上であるか否かを判定する。判定の結果、#2気筒の判定パラメータが#2気筒#1プラグ異常判定閾値Low以上である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS33の処理に進める。一方、#2気筒の判定パラメータが#2気筒#1プラグ異常判定閾値Low未満の場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS37の処理に進める。
ステップS33の処理では、燃焼不良監視部6が、図示しない#2気筒#1プラグ異常監視カウンタのカウント値をインクリメントする。このように、燃焼不良監視部6は、#2気筒の#1プラグの判定パラメータが#2気筒#1プラグ異常判定閾値High以下且つ#2気筒#1プラグ異常判定閾値Low以上の範囲にある場合に、#2気筒#1プラグ異常監視カウンタのカウント値をインクリメントする。これにより、ステップS33の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS34の処理に進む。
ステップS34の処理では、燃焼不良監視部6が、#2気筒#1プラグ異常監視カウンタのカウント値を#2気筒の判定回数で除算して除算値F21を算出する。これにより、ステップS34の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS35の処理に進む。
ステップS35の処理では、燃焼不良監視部6が、除算値F21が#2気筒#1プラグ異常検知実施閾値以上であるか否かを判定する。判定の結果、除算値F21が#2気筒#1プラグ異常検知実施閾値以上である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS36の処理に進める。一方、除算値F21が#2気筒#1プラグ異常検知実施閾値未満である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS36の処理では、燃焼不良監視部6が、#2気筒の#2プラグの点火をオフにする処理を実行する。このように、燃焼不良監視部6は、除算値F21が#2気筒#1プラグ異常検知実施閾値以上である場合に、#2気筒の#1プラグが異常であると推定して、正常であると推定される#2気筒の#2プラグの点火を停止させる。これにより、ステップS36の処理は完了し、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS37の処理では、燃焼不良監視部6が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#2気筒の判定パラメータが燃焼不良判定閾値検索部5から入力された電気信号の示す燃焼不良上限閾値としての#2気筒#2プラグ異常判定閾値High以下であるか否かを判定する。判定の結果、#2気筒の判定パラメータが#2気筒#2プラグ異常判定閾値High以下である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS38の処理に進める。一方、#2気筒の判定パラメータが#2気筒#2プラグ異常判定閾値Highより大きい場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS38の処理では、燃焼不良監視部6が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#2気筒の判定パラメータが燃焼不良判定閾値検索部5から入力された電気信号の示す燃焼不良下限閾値としての#2気筒#2プラグ異常判定閾値Low以上であるか否かを判定する。判定の結果、#2気筒の判定パラメータが#2気筒#2プラグ異常判定閾値Low以上である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS39の処理に進める。一方、#2気筒の判定パラメータが#2気筒#2プラグ異常判定閾値Low未満の場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS39の処理では、燃焼不良監視部6が、図示しない#2気筒#2プラグ異常監視カウンタのカウント値をインクリメントする。このように、燃焼不良監視部6は、#2気筒の#2プラグの判定パラメータが#2気筒#2プラグ異常判定閾値High以下且つ#2気筒#2プラグ異常判定閾値Low以上の範囲にある場合に、#2気筒#2プラグ異常監視カウンタのカウント値をインクリメントする。これにより、ステップS39の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS40の処理に進む。
ステップS40の処理では、燃焼不良監視部6が、#2気筒#2プラグ異常監視カウンタのカウント値を#2気筒の判定回数で除算して除算値F22を算出する。これにより、ステップS40の処理は完了し、燃焼不良監視処理はステップS41の処理に進む。
ステップS41の処理では、燃焼不良監視部6が、除算値F22が#2気筒#2プラグ異常検知実施閾値以上であるか否かを判定する。判定の結果、除算値F22が#2気筒#2プラグ異常検知実施閾値以上である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理をステップS42の処理に進める。一方、除算値F22が#2気筒#2プラグ異常検知実施閾値未満である場合には、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
ステップS42の処理では、燃焼不良監視部6が、#2気筒の#1プラグの点火をオフにする処理を実行する。このように、燃焼不良監視部6は、除算値F22が#2気筒#2プラグ異常検知実施閾値以上である場合に、#2気筒の#2プラグが異常であると推定して、正常であると推定される#2気筒の#1プラグの点火を停止させる。これにより、ステップS42の処理は完了し、燃焼不良監視部6は、燃焼不良監視処理を終了する。
<燃焼不良・失火判定処理>
上記構成を有する内燃機関失火検出装置1では、内燃機関の燃焼不良及び失火を判定する燃焼不良・失火判定処理を実行する。以下、図4を参照して、本実施形態における燃焼不良・失火判定処理の具体的な流れについて詳しく説明する。
図4は、本発明の実施形態における燃焼不良・失火判定処理の流れを示すフロー図である。
図4では、#1気筒及び#2気筒の2気筒を備える内燃機関としてのエンジンについて、燃焼不良・失火判定処理を実行する場合を例に説明する。また、図4では、判定パラメータとして相対クランク角速度の積算値を用いる場合を例に説明する。なお、図4では、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の一方を#1プラグと記載し、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の他方を#2プラグと記載する。
図4に示すフロー図は、鞍乗型車両等の車両が起動されて内燃機関失火検出装置1が稼働したタイミングで開始となり、燃焼不良・失火判定処理はステップS51の処理に進む。かかる燃焼不良・失火判定処理は、車両が起動されて内燃機関失火検出装置1が稼働している間、繰り返し実行される。
ステップS51の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、#1気筒の積算終了ステージであるか否かを判定する。具体的には、燃焼不良・失火判定部5は、#1気筒の相対クランク角速度の積算値に応じた電気信号が判定パラメータ算出部4から入力したか否かにより判定する。判定の結果、#1気筒の積算終了ステージである場合には、燃焼不良・失火判定部5は、失火判定処理をステップS52の処理に進める。一方、#1気筒の積算終了ステージではない場合には、燃焼不良・失火判定部5は、燃焼不良・失火判定処理をステップS62の処理に進める。
ステップS52の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#1気筒の相対クランク角速度の積算値が判定閾値検索部3から入力された電気信号の示す#1気筒の失火判定閾値以下であるか否かを判定する。この際、#1気筒の失火判定閾値は、エンジンの負荷状態が高いほど大きな値が設定される。これにより、エンジンの負荷状態が高い場合には正常燃焼時に比べてエンジンによる生成トルクが相対的に大きくなり、エンジンによる生成トルクと相関関係にある相対クランク角速度の積算値も大きくなるため、エンジンの負荷状態が高いほど#1気筒の失火判定閾値を大きく設定することにより、精度良く燃焼不良又は失火を検出することができる。
判定の結果、#1気筒の判定パラメータとしての積算値が#1気筒の失火判定閾値以下である場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS53の処理に進める。一方、#1気筒の判定パラメータとしての積算値が#1気筒の失火判定閾値より大きい場合には、失火判定部5は、燃焼不良・失火判定処理をステップS56の処理に進める。
ステップS53の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、燃焼不良監視部6から入力される#1気筒の点火を停止したメイン点火プラグ103又はサブ点火プラグ104を示す電気信号に基づいて、#1気筒の#1プラグの点火が停止(OFF実行)されたか否かを判定する。判定の結果、#1気筒の#1プラグの点火が停止されていない場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS54の処理に進める。一方、#1気筒の#1プラグの点火が停止された場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS60の処理に進める。
ステップS54の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、燃焼不良監視部6から入力される#1気筒の点火を停止したメイン点火プラグ103又はサブ点火プラグ104を示す電気信号に基づいて、#1気筒の#2プラグの点火が停止(OFF実行)されたか否かを判定する。判定の結果、#1気筒の#2プラグの点火が停止されていない場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS55の処理に進める。一方、#1気筒の#2プラグの点火が停止された場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS59の処理に進める。
ステップS55の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、#1気筒の失火発生と判断する。これにより、ステップS55の処理は完了し、失火判定処理はステップS56の処理に進む。
ステップS56の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、メイン点火プラグ103の異常判定、サブ点火プラグ104の異常判定又は失火判定を検出した回数をカウントする報知判断処理を実行する。これにより、ステップS56の処理は完了し、燃焼不良・失火判定処理はステップS57の処理に進む。
ステップS57の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、ステップS56の処理でカウントしたメイン点火プラグ103の異常判定、サブ点火プラグ104の異常判定又は失火判定が行われた回数が、報知必要と判定する所定の回数以上か否かの判定結果に基づいて、報知が必要か否かを判定する。判定の結果、ステップS56の処理でカウントした回数が所定の回数以上となって報知が必要な場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS58の処理に進める。一方、ステップS56の処理でカウントした回数が所定の回数未満で報知が不要な場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS61の処理に進める。
ステップS58の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、表示装置24をONにしてメイン点火プラグ103若しくはサブ点火プラグ104の異常又は失火発生を報知する。これにより、ステップS58の処理は完了し、燃焼不良・失火判定処理は終了する。
ステップS59の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、#1気筒の#1プラグの異常と判定する。これにより、ステップS59の処理は完了し、燃焼不良・失火判定処理はステップS56の処理に進む。
ステップS60の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、#1気筒の#2プラグの異常と判定する。これにより、ステップS60の処理は完了し、燃焼不良・失火判定処理はステップS56の処理に進む。
ステップS61の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、表示装置24をOFFにして報知を行わない。これにより、ステップS61の処理は完了し、燃焼不良・失火判定処理は終了する。
ステップS62の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、#2気筒の積算終了ステージであるか否かを判定する。具体的には、燃焼不良・失火判定部5は、#2気筒の相対クランク角速度の積算値に応じた電気信号が判定パラメータ算出部4から入力したか否かにより判定する。判定の結果、#2気筒の積算終了ステージである場合には、燃焼不良・失火判定部5は、失火判定処理をステップS63の処理に進める。一方、#2気筒の積算終了ステージではない場合には、燃焼不良・失火判定部5は、燃焼不良・失火判定処理をステップS56の処理に進める。
ステップS63の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、判定パラメータ算出部4から入力された電気信号の示す#2気筒の相対クランク角速度の積算値が判定閾値検索部3から入力された電気信号の示す#2気筒の失火判定閾値以下であるか否かを判定する。この際、#2気筒の失火判定閾値は、エンジンの負荷状態が高いほど大きな値が設定される。これにより、エンジンの負荷状態が高い場合には正常燃焼時に比べてエンジンによる生成トルクが相対的に大きくなり、エンジンによる生成トルクと相関関係にある相対クランク角速度の積算値も大きくなるため、エンジンの負荷状態が高いほど#2気筒の失火判定閾値を大きく設定することにより、精度良く失火を検出することができる。
判定の結果、#2気筒の判定パラメータとしての積算値が#2気筒の失火判定閾値以下である場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS64の処理に進める。一方、#2気筒の判定パラメータとしての積算値が#2気筒の失火判定閾値より大きい場合には、失火判定部5は、燃焼不良・失火判定処理をステップS56の処理に進める。
ステップS64の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、燃焼不良監視部6から入力される#2気筒の点火を停止したメイン点火プラグ103又はサブ点火プラグ104を示す電気信号に基づいて、#2気筒の#1プラグの点火が停止(OFF実行)されたか否かを判定する。判定の結果、#2気筒の#1プラグの点火が停止されていない場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS65の処理に進める。一方、#2気筒の#1プラグの点火が停止された場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS68の処理に進める。
ステップS65の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、燃焼不良監視部6から入力される#2気筒の点火を停止したメイン点火プラグ103又はサブ点火プラグ104を示す電気信号に基づいて、#2気筒の#2プラグの点火が停止(OFF実行)されたか否かを判定する。判定の結果、#2気筒の#2プラグの点火が停止されていない場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS66の処理に進める。一方、#2気筒の#2プラグの点火が停止された場合には、燃焼不良・失火判定部7は、燃焼不良・失火判定処理をステップS67の処理に進める。
ステップS66の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、#2気筒の失火発生と判断する。これにより、ステップS66の処理は完了し、失火判定処理はステップS56の処理に進む。
ステップS67の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、#2気筒の#1プラグの異常と判定する。これにより、ステップS67の処理は完了し、燃焼不良・失火判定処理はステップS56の処理に進む。
ステップS68の処理では、燃焼不良・失火判定部7が、#2気筒の#2プラグの異常と判定する。これにより、ステップS68の処理は完了し、燃焼不良・失火判定処理はステップS56の処理に進む。
以上の本実施形態における内燃機関失火検出装置では、1つの気筒100に対してメイン点火プラグ103とサブ点火プラグ104とを備える内燃機関の失火を検出する内燃機関失火検出装置1において、内燃機関の燃焼状態を判定するための判定パラメータが失火判定閾値よりも正常値側に設定された燃焼不良上限閾値以下且つ燃焼不良下限閾値以上である場合に、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の一方のみが点火していない燃焼不良と判定するものであるため、1つの気筒に対して2つの点火プラグを備える内燃機関において一方の点火プラグのみが点火しない燃焼不良を検出することができる。
また、本実施形態における内燃機関失火検出装置では、燃焼不良上限閾値及び前記燃焼不良下限閾値は、内燃機関の負荷状態に応じて設定されるため、燃焼不良を確実に検出することができる。
また、本実施形態における内燃機関失火検出装置では、燃焼不良と判定した際に、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の他方の点火を停止し、他方の点火を停止した後に判定パラメータが失火判定閾値を超えた場合に一方の異常と判定するものであるため、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の一方の異常を検出することができる。
また、本実施形態における内燃機関失火検出装置では、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104が、気筒100に設けられたピストン101の中心から径方向において距離が異なる位置に各々配置され、燃焼不良上限閾値及び燃焼不良下限閾値は、メイン点火プラグ103の燃焼不良を判定する場合とサブ点火プラグ104の燃焼不良を判定する場合とで異なる値が設定されるものであるため、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の燃焼不良を確実に検出することができる。
また、本実施形態における内燃機関失火検出装置では、判定パラメータがメイン点火プラグ103の燃焼不良上限閾値以下且つ燃焼不良下限閾値以上の場合にサブ点火プラグ104の点火を停止し、サブ点火プラグ104を停止した後に判定パラメータが失火判定閾値を超えた際にメイン点火プラグ103の異常と判定し、判定パラメータがサブ点火プラグ104の燃焼不良上限閾値以下且つ燃焼不良下限閾値以上の場合にメイン点火プラグ103の点火を停止し、メイン点火プラグ103を停止した後に判定パラメータが失火判定閾値を超えた際にサブ点火プラグ104の異常と判定するものであるため、メイン点火プラグ103及びサブ点火プラグ104の異常を確実に検出することができる。
また、本実施形態における内燃機関失火検出装置では、判定パラメータが、クランク角速度に関する回転速度パラメータを所定期間において積算した積算値であるため、判定パラメータを精度よく算出することができる。
本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
具体的には、上記実施形態において、2気筒を備える内燃機関について判定パラメータ算出処理、燃焼不良監視処理及び燃焼不良・失火判定処理を行った場合について説明したが、単気筒又は3気筒以上を備える内燃機関について判定パラメータ算出処理、燃焼不良監視処理及び燃焼不良・失火判定処理を行ってもよい。単気筒を備えるエンジンについての判定パラメータ算出処理では、判定パラメータ算出部4が、圧縮TDCステージから積算区間終了ステージまでの相対クランク角速度の積算値を求め、求めた積算値に応じた電気信号を燃焼不良・失火判定部7に出力する。単気筒を備えるエンジンの積算区間終了ステージは、典型的には排気行程の終了時である。
また、上記実施形態において、失火発生等を検出した際に表示装置に表示して報知したが、音声、音又は光により失火発生等を報知してもよいし、報知することに加えて又は代えて、失火発生等を検出した際に内燃機関の運転状態を変更する制御を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態において、失火判定閾値と比較する積算値を算出する際に、クランク角速度を用いたが、これに限らずクランク角速度と相関のある任意のパラメータを用いることができる。
また、上記実施形態において、回転速度パラメータとしての相対クランク角速度を積算して積算値を算出したが、回転速度パラメータとしてのクランク角速度を積算して積算値を算出してもよい。
また、上記実施形態において、2つの点火プラグを、1つの気筒100に設けられたピストン101の中心から径方向において距離が異なる位置に設けたが、1つの気筒100に設けられたピストン101の中心から径方向において同一の距離となる位置に設けてもよい。
また、上記実施形態において、1つの気筒100に3つ以上の点火プラグを設けると共に、1つの気筒100に設けられた3つ以上の点火プラグのうち2つの点火プラグを燃焼不良の検出対象としてもよい。