以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、半田付け装置A1によって配線基板Bdに電子部品Epを半田付けする場合の斜視図である。治具Gjに固定された配線基板Bdには4つのスルーホールThが形成されており、各スルーホールThの内周面及び周縁にはランドLdが形成されている。そして、この4つのスルーホールの各々には、配線基板Bdの裏面側に配置された電子部品Epから延出した4つの端子Ndが下から上方向に挿通され、配線基板Bdの上面から端子Ndの先端が突出した状態となっている。
一方、多関節アームAmを有するマニピュレーターMLの先端に半田付け装置A1が取り付けられている。マニピュレーターMLは基台Bs上に設置され、多関節アームAmは複数の関節部の各々において回転可能とされている。これにより、半田付け装置A1は多関節アームAmによってX方向、Y方向、Z方向の所望位置に移動可能とされる。半田付けを行うとき、半田付け装置A1は、移動手段としてのマニピュレーターMLによってX方向及びY方向に移動されて配線基板BdのランドLdとの位置決めが行われる。そして、半田付け装置A1がZ方向に移動されることで、鏝先5aの先端がランドLdに接触する。以下説明する実施形態ではこの半田付け装置A1を用いて、配線基板Bdの上面から突出した端子Ndを半田付け装置A1の鏝先5aの半田孔51(図3に図示)内に位置させ、鏝先5aの半田孔51に供給される半田片Whを溶融させて端子NdとランドLdとを半田付けする。なお、本実施形態では、半田付け装置A1を移動させているが、半田付け装置A1を固定し配線基板Bdを移動させる、あるいは半田付け装置A1と配線基板Bdの両者を移動させるようにしても構わない。
図2に半田付け装置A1の斜視図を示し、図3に図2に示す半田付け装置の垂直断面図、図4は図2に示す半田付け装置に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。なお、図2では、筐体の一部を切断し、半田付け装置A1の内部を表示するようにしている。
図2に示すように、半田付け装置A1は、装置ユニットUと、装置ユニットUをZ方向の所定距離範囲で移動可能に支持する支持部材SPと、装置ユニットUと支持部材SPを覆うカバーC(図2の波線)とを有する。
支持部材SPは、四角形状のYZ平面を有しX方向に所定の厚みを有する板状の基部Mfと、基部MfのX方向一方側面のY方向中央部にY方向に所定幅を有しX方向に突出しZ方向に連続するガイドレールMgと、ガイドレールMgにZ方向に移動可能に取り付けられたブロックMbとを備える。
基部MfのZ方向上端部はマニピュレーターMLの多関節アームAmの先端に取り付けられる。ブロックMbには装置ユニットUの壁体11がZ方向の略全域にわたって取り付けられている。すなわち、装置ユニットUはブロックMbに固定され、ブロックMbと一体となってZ方向に移動可能とされている。また、ブロックMbのY方向の一方側面の下端部には移動規制ピン91が側面から外方に向かって垂直に突出して設けられている。
一方、基部MfのX方向一方側面のZ方向下部のY方向端部位置には、直方体形状の上ストッパー部93と下ストッパー部94とがZ方向に所定距離隔てて対向するように設けられている。
ブロックMbの一方側面に設けられた移動規制ピン91は、基部Mfの上ストッパー部93と下ストッパー部94との間の領域に位置し、初期状態のときすなわち鏝先5aが配線基板Bdに当接していない状態のときは、装置ユニットU及びブロックMbの自重によって移動規制ピン91は下ストッパー部94に当接した状態となっている。換言すると、移動規制ピン91が下ストッパー部94に当接することで、装置ユニットUのZ方向下方への移動が規制される。他方、鏝先5aが配線基板Bdに当接して装置ユニットUがZ方向上方に移動した場合には、移動規制ピン91が上トッパーに当接することで、装置ユニットUのZ方向上方向への移動が規制される。
装置ユニットUは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4、鏝先5a、半田送り機構6及びガス供給部7a(図3に図示)を備えている。
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。なお、以下の説明では、便宜上、図2に示すように、壁体11に沿う水平方向をX方向、壁体11と垂直な水平方向をY方向、壁体11に沿う鉛直方向をZ方向とする。例えば、図2に示すように、壁体11はZX平面を有している。
支持部1は、壁体11と、保持部12と、摺動ガイド13と、ヒーターユニット固定部14とを備える。壁体11は、鉛直方向に立設された平板状の壁体である。壁体11は、半田付け装置A1の支持部材としての役割を果たしている。保持部12は、壁体11のZ方向の下端部より上方にずれた位置に固定されている。保持部12は、駆動機構3の後述するエアシリンダー31を保持する。ヒーターユニット固定部14は、ヒーターユニット4の固定を行う部材であり、壁体11のZ方向の端部(下端部)に設けられている。
摺動ガイド13は、壁体11のZ方向の下端部の近傍に、固定されている。摺動ガイド13は、カッターユニット2の後述するカッター下刃22と共に、壁体11と固定されており、カッターユニット2の後述するカッター上刃21をX方向に摺動可能にガイドする。
摺動ガイド13は、Y方向に対向して対をなす部材である。摺動ガイド13は、一対の壁部131と、抜止部132とを有している。壁部131は、X方向に延びる平板状の部材である。一方の壁部131は、壁体11と接触して配されており、壁体11と反対側の面は、カッター下端22と接触している。また、他方の壁部131は、カッター下刃22の側面と接触している。つまり、一対の壁部131は、カッター下刃22をY方向の両側から挟んでいる。そして、一対の壁部131及びカッター下刃22は、ねじ等の締結具で壁体11に共締めされて、固定される。
抜止部132は、一対の壁部131のそれぞれに設けられている。一対の壁部131は、カッター下刃22のZ方向上面よりもZ方向に延びており、一対の壁部131のZ方向の上端部から、それぞれ、他方に向かって延びている。すなわち、摺動ガイド13は、一対の抜止部132を備えている。そして一対の抜止部132それぞれのY方向の先端は、接触しない、換言すると、摺動ガイド13には上部に開口を有している。カッター上刃21は、カッター下刃22の上面と、抜止部132との間に少なくとも一部は配される。これにより、カッター上刃21は、X方向にガイドされるとともに、Z方向に抜け止めされる。
カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する切断具である。カッターユニット2は、カッター上刃21と、カッター下刃22と、プッシャーピン23とを備えている。
上述のとおり、カッター下刃22は摺動ガイド13とともに壁体11に固定される。図3に示すように、カッター下刃22は、下刃孔221と、ガス流入孔222とを備えている。下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向に貫通する貫通孔であり、カッター上刃21の後述する上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とを用いて、糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する。切断された半田片Whは、自重によって又はプッシャーピン23に押されて、下刃孔221の内部を下方に落下する。下刃孔221は、ヒーターユニット4の後述する半田供給孔422を介して、鏝先5aの後述する半田孔51と連通している。下刃孔221の内部を落下した半田片Whは、半田供給孔422に達した後、半田孔51に落下する。
ガス流入孔222は、カッター下刃22の外側面と下刃孔221とを連通する孔である。ガス供給源GS1から供給されるガスはガス流入孔222に流入する。そして、ガスは、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に到達する。なお、ガスとは、半田を加熱して溶融するときに半田の酸化を抑制するために用いられるものである。すなわち、溶融した半田と酸素との接触を抑制するためのガスである。ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素等を挙げることができる。本実施形態の半田付け装置A1では、窒素ガスを供給するものとして説明する。
カッター上刃21は、上述したとおり、カッター下刃22のZ方向上面上に配される。カッター上刃21は、摺動ガイド13によって摺動時に摺動方向がX方向になるようガイドされるとともにZ方向に抜け止めされる。すなわち、カッター上刃21は、カッター下刃22のZ方向の上面上をX方向に摺動する。なお、カッター上刃21は、駆動機構3によって摺動される。
カッター上刃21は、上刃孔211と、ピン孔212とを備えている。上刃孔211は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である、上刃孔211には、半田送り機構6から送られた糸半田Wが挿入される。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。ピン孔212は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である。ピン孔212には、プッシャーピン23の後述するロッド部231が、摺動可能に挿入される。
プッシャーピン23は、ロッド部231と、ヘッド部232と、バネ233とを有する。ロッド部231は、円柱状の部材であり、ピン孔212に摺動可能に挿入される。また、プッシャーピン23がZ方向下に移動することで、ロッド部23の先端が、ピン孔212から突出する。ヘッド部232はロッド部231の軸方向の上端に連結される。ヘッド部232は、ピン孔212の内径よりも大きい外径を有する円板形状である。ヘッド部232は、ピン孔212に挿入されない。すなわち、ヘッド部232は、ロッド部231のピン孔212内への移動を制限する、いわゆる、ストッパーとしての役割を果たす。
バネ233は、ロッド部231の径方向外側を囲む圧縮コイルばねである。バネ233は、Z方向下端部がカッター上刃21の上面と接触し、Z方向上端部がヘッド部232の下面と接触する。すなわち、バネ233は、カッター上刃21の上面から反力を受け、ヘッド部232をZ方向上に押す。これにより、ヘッド部232と連結されたロッド部231は、Z方向上方に持ち上げられ、ロッド部231の下端が、ピン孔212の下端から突出しないように維持される。なお、ロッド部231のZ方向下端部には、ピン孔212からの抜けを抑制する抜け止め(不図示)が設けられている。
プッシャーピン23は、カッター上刃21とカッター下刃22で切断されて下刃孔221に残った半田片Whを下方に押す。そして、プッシャーピン23は、ばね233の弾性力によって、常に上方に、すなわち、カッター下刃22と反対側に押し上げられている。つまり、ロッド部231は、ヘッド部232が押されたときに、ピン孔212のZ方向下端部から下に突出する。そして、ヘッド部232は、駆動機構3の後述するカム部材33に押される。
カッター上刃21において、上刃孔211とピン孔212とはX方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、X方向に摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置、又は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置に移動する。なお、カッター上刃21は、一方の摺動端部まで摺動したときに上刃孔211と下刃孔221とが重なり、他方の摺動端部まで摺動したときにピン孔212と下刃孔221とが重なるように、摺動してもよい。
そして、上刃孔211と下刃孔221とがZ方向に重なっている状態で、半田送り機構6から糸半田Wが送られると、上刃孔211を通過した糸半田Wが、下刃孔221に挿入される。上述のとおり、上刃孔211の下端の辺縁部が切刃状に形成されているとともに、下刃孔221の上端の辺縁部も切刃状に形成されている。そして、カッター上刃21の下面は、カッター下刃22の上面と接触している。そのため、下刃孔221に糸半田Wが挿入されている状態で、カッター上刃21がX方向に摺動することで、上刃孔211および下刃孔221それぞれの切刃によって糸半田Wが切断される。
カッター上刃21は、カム部材33によってX方向に摺動される。そのため、カッター上刃21及びプッシャーピン23は、カム部材33と同期している。カム部材33は、ピン孔212が下刃孔221とZ方向に重なったときに、ヘッド部232を押す。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときには、プッシャーピン23のロッド部231の先端は、ピン孔212に収容されている。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときに、ロッド部231の先端とカッター下刃22の上面とが接触するのを抑制し、ロッド部231の先端及び(又は)カッター下刃22の変形、破損等が抑制される。
カッター上刃21がX方向に摺動することで、下刃孔211とピン孔212とがZ方向に重なる。ピン孔212が下刃孔211と重なっている状態で、ヘッド部232はカム部材33に押される。これにより、プッシャーピン23が、Z方向下に移動する。プッシャーピン23がピン孔212からZ方向下方に突出すると、プッシャーピン23の一部が下刃孔211に挿入される。下刃孔211の入り口に糸半田を切断した後述の半田片が残っている場合、プッシャーピン23の先端が半田片を押して、半田片は落下する。
図2、図3に示すように、駆動機構3は、エアシリンダー31と、ピストンロッド32と、カム部材33と、スライダー部34と、ガイド軸35とを有する。エアシリンダー31は保持部12に保持される。エアシリンダー31は、有底円筒状である。エアシリンダー31の内部には、ピストンロッド32が収容されており、外部から供給される空気の圧力でピストンロッド32を摺動駆動(伸縮)させる。エアシリンダー31とピストンロッド32とが駆動機構3のアクチュエーターを構成している。ピストンロッド32は、エアシリンダー31の内部に配されるとともに、一部が常にエアシリンダー31の軸方向の一方の端部(ここでは、Z方向の下端部)から、突出している。エアシリンダー31は、ピストンロッド32が突出する面がカッターユニット2に向くように、すなわち、Z方向下に向くように、保持部12に保持される。
ピストンロッド32は、保持部12に設けられた貫通孔(不図示)を貫通している。ピストンロッド32は、ガイド軸35と平行に設けられており、ガイド軸35に沿って直線的に往復動する。ピストンロッド32の先端部は、カム部材33に固定されており、ピストンロッド32の伸縮によって、カム部材33がZ方向に摺動する。カム部材33の摺動は、ガイド軸35によってガイドされている。
図3に示すように、ガイド軸35は、下端部がカッター下刃22に設けられた凹穴に嵌合されており、カッター下刃22にねじ351でねじ止め固定されている。また、ガイド軸35の上部は、保持部12に設けられた孔を貫通しており、ピン352によって移動が規制されている。つまり、ガイド軸35はねじ351によってカッター下刃22と、ピン352によって保持部12と固定されている。
なお、本実施形態において、ガイド軸35は、ねじ351及びピン352によって固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧入、溶接等の固定方法で固定されるものであってもよい。また、本実施形態において、ガイド軸35として円柱状の部材としているが、これに限定されるものではなく、断面多角形状や楕円等を利用してもよい。
図3、図4に示すように、カム部材33は、矩形状の部材であり、長辺の一部を矩形状に切り欠いた凹部330と、カム部材33に連結し、ガイド軸35が貫通する貫通孔を備えた円筒形状の支持部331とを備えている。凹部330には、スライダー部34が(X方向及びZ方向に)摺動可能に配置される。また、支持部331はガイド軸35と平行に延びる形状を有しており、カム部材33のがたつきを抑制するために設けられている。つまり、カム部材33がある程度厚みを有し、がたつきが発生しにくい構成の場合、円筒形状の部分を省略し、貫通孔だけで支持部331を構成してもよい。
そして、カム部材33は、凹部330の中間部分に設けられて中心軸がガイド軸35と直交する円柱状のピン332と、凹部330と隣接してプッシャーピン23を押すピン押し部333と、支持部331内部に配置された軸受334とを備えている。ピン332は、スライダー部34に設けられた後述するカム溝340に挿入される。また、軸受334は、ガイド軸35に外嵌し、カム部材33ががたつかないように、円滑に摺動させる部材である。
図3、図4に示すように、スライダー部34は、長方形状の板状の部材であり、カッター上刃21と一体的に形成されている。スライダー部34は、板厚方向に貫通するとともに長手方向に延びるカム溝340を備えている。カム溝340は、ガイド軸35と平行に延びる第1溝部341を上側に、同じくガイド軸35と平行に延びる第2溝部342を下側に設けている。そして、第1溝部341と第2溝部342とは、X方向にずれて設けられており、カム溝340は第1溝部341と第2溝部342とを接続する接続溝部343を備えている。
カム溝340には、カム部材33のピン332が挿入されており、カム部材33がガイド軸35に沿って移動することで、ピン332がカム溝340の内面を摺動する。ピン332がカム溝340の接続溝部343に位置するとき、接続溝部343の内面を押す。これにより、スライダー部34及びスライダー部34に一体的に形成されたカッター上刃21がカム部材33の摺動方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動(カッター下刃22に対して摺動)する。
なお、本実施形態では、カム部材33にピン332、スライド部34にカム溝340を備えた構成を挙げて説明しているが、実際には、カム部材にカム溝、スライド部にピンを備えた構成であってもよい。
本実施形態では、駆動機構3のアクチュエーターとして空気圧を用いるものとしているが、これに限定されるものではなく、空気以外の流体(例えば、作動油)を用いるもの(油圧)であってもよい。また、流体を用いるものに限定されるものではなく、モーターやソレノイド等の電力を用いるものであってもよい。本実施形態では、1つのアクチュエーターと、カム及びカム溝を用いて、カッター上刃21の摺動とプッシャーピン23の押下を行っているが、これに限定されない。例えば、カッター上刃21の摺動と、プッシャーピン23の押下とを行うように、アクチュエーターを複数個(2個)備えていてもよい。
図2、図3に示すように、半田送り機構6は、糸半田Wを供給する。半田送り機構6は、一対の送りローラ61と、ガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持壁11に回転可能に取り付けられている。一対の送りローラ61は、糸半田Wの側面を挟んで回転することで、糸半田を下方に送る。なお、一対の送りローラ61は、互いに他方に向かって付勢されており、その付勢力で糸半田Wを挟む。送りローラ61の回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田Wの長さが測定(決定)されている。
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端は、カッター上刃21の上刃孔211と連通するように設けられている。なお、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で過剰に引っ張られたり、突っ張ったりしない長さ、および、形状を有している。
ヒーターユニット4は、半田片Whを加熱し、溶融させるための加熱装置であり、図3に示すように、壁体22の下端部に設けられたヒーターユニット固定部14に固定されている。ヒーターユニット4は、ヒーター41と、ヒーターブロック42とを備える。ヒーター41は、通電により発熱する。ヒーター41は、ここでは、円筒形状のヒーターブロック42の外周面に巻き回された電熱線を有する。
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、軸方向の端部に鏝先5aを取り付けるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通した半田供給孔422とを備えている。ヒーターブロック42は、半田供給孔422と下刃孔221とが連通するように、カッター下刃22に接触して設けられている。ヒーターブロック42をこのように設けることで、半田片Whは、下刃孔221から半田供給孔422に移動する。
鏝先5aは、円筒形状の部材であり、中央部分に軸方向に延びる半田孔51を備えている。鏝先5aは、ヒーターブロック42の凹部421に挿入され、図示を省略した部材によって抜け止めがなされている。また、鏝先5aの半田孔51は、ヒーターブロック42の半田供給孔422と連通しており、半田供給孔422から半田片Whが送られる。
鏝先5aは、ヒーター41からの熱が伝達されており、その熱で半田片Whを溶融させる。そのため、鏝先5aは、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属で形成されている。半田付け装置A1において、鏝先5aは円筒形状のものとしているが、これに限定されるものではなく、断面多角形又は楕円形の筒形状のものを用いてもよい。半田付けを行う配線基板Bd及び(又は)電子部品Epの端子Ndの形状に合わせて異なる形状のものを用意するようにしてもよい。
鏝先5aは、半田孔51の投入された半田片Whが溶融する溶融領域510よりも上方、すなわち、窒素ガスが流れる方向の上流側に半田孔51と外周面とを連通するリリース孔53を備えている。リリース孔53は、後述するように半田付け装置Aを作動させた場合に、溶融した半田で半田孔51の下端開口がせき止められる場合があり、このような場合にガス供給部7aから供給される窒素ガスや気化したフラックスなどを鏝先5aの外に逃がす役割を果たす。なお、リリース孔53の内径は、半田孔51の内径よりも小さい。すなわち、リリース孔53は、半田孔51に比べて流路抵抗が大きい。
また鏝先5aは、溶融領域510よりも窒素ガス流動方向上流側に、半田孔51と外周面とを連通する圧力測定用孔54を備えている。圧力測定用孔54は、半田孔51内の圧力を測定するための孔であって、圧力測定用孔54の内径は、リリース孔53と同様に、半田孔51の内径よりも小さい。すなわち、圧力測定用孔54は、半田孔51に比べて流路抵抗が大きい。鏝先5aにおける圧力測定用孔54の軸線方向の位置は、リリース孔53と同じ位置であってもよいし異なる位置であってもよいが、リリース孔53よりも上流側に配置すると、後述するように、気化したフラックスによる圧力測定孔54の汚染を低減できる。
ガス供給部7aは、半田付け装置A1の外部に設けられたガス供給源GS1から供給されるガスを半田付け装置A1に供給する。ガスとして、上述した、窒素ガス(不活性ガス)を用いることで半田の酸化を防止することが可能である。図3に示すように、ガス供給部7aは、配管70aと、第1調整部71と、第1計測部72とを有する。なお、図3では、便宜上、配管70aを線図で示しているが、実際にはガスである窒素ガスが漏れない管体(例えば、樹脂管)である。
第1調整部71は、流量制御弁を含む構成であり、配管70aを流れる窒素ガスの流量を調整している。第1計測部72は配管70aを流れる窒素ガスの流量を計測する。すなわち、第1計測部72は、第1調整部71から吐出される窒素ガスの流量を計測している。そして、第1計測部72は、計測した窒素ガスの流量が予め決められた流量となるように、第1調整部71に対して、第1調整部71を制御する制御信号を送信している。すなわち、ガス供給部7aは、第1調整部71と第1計測部72を用いて、フィードバック制御を行っており、ガス供給源GS1から半田孔51に供給される窒素ガスの流量を一定に制御している。なお、第1計測部72の計測結果に基づいて、作業者が手動で第1調整部71を操作して窒素ガスの流量を調整してもよい。また、何らか異常により計測した流量が予め決めた基準値と異なる又は予め設定した範囲から外れる場合には、制御部Contは、異常が発生している旨の警報及び(又は)半田付け装置の運転の停止を行ってもよい。
鏝先5aに形成された圧力測定用孔54の外側開口には圧力測定用配管8aの一方端が接続されている。そして圧力測定用配管8aの他方端には圧力測定部75aが接続されている。圧力測定部75aは、半田孔51の内部の圧力を測定し、その測定結果を制御部Contに送信する。そして、制御部Contは、半田孔51の内部の圧力及び/又は圧力変化に基づいて鏝先5aの状態を判定する。すなわち、制御部Contは、鏝先5aの状態を判定する状態判定部としての役割を果たす。また、制御部Contは、判定した鏝先5aの状態に基づいて、半田付け装置A1の動作制御を行ってもよい。半田付け装置A1の制御としては、例えば、半田付け装置Aの基板Bdへの接近離間、糸半田Whの切断、鏝先5aの加熱等を含む。
次に、鏝先5aの半田孔51内の圧力に基づいて鏝先5aの状態を判定する判定方法について説明する。なお、ガス供給部7aにおいて、ガス流入孔222に流入した窒素ガスは、すべて、鏝先5aの半田孔51に流入するものとする。例えば、ガス流入孔222は、下刃孔221と連通しており、下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向上下に貫通している。窒素ガスが供給されている状態において、窒素ガスは、下刃案221のZ方向上端から大量に抜けないようにすることが好ましい。
なお、鏝先5aの半田孔51内を流れる窒素ガスは、ガス供給源GS1からのガスを第1調整部71で調整することで流量が調整される。第1調整部71に備えられている流量制御弁は、配管内部の圧力にかかわらず窒素ガスを設定した流量で流し続ける。すなわち、ガス供給部7aは、流量一定とする流量制御を行う。なお、半田孔51内の圧力変化が極めて大きい場合、ガス供給部7aの制御性能によって流量値が多少変動することがあっても再現性があれば問題ない。
半田付け装置A1において、例えば、半田片Whが半田孔51に供給された場合、半田孔51の軸と直交する断面の一部を半田片Whが占める。そのため、半田孔51の窒素ガスが流れる部分の流路面積が小さくなり、窒素ガスが流れにくくなる、すなわち、流路抵抗が大きくなる。そして、半田孔51の流路抵抗が大きくなると半田孔51内の圧力P1が上昇する。つまり、鏝先5aの状態が変化することで半田孔51内の圧力P1が変動する。制御部Contは、この圧力P1、或いは、圧力P1の変化に基づいて、鏝先5aの状態を判定する。例えば、制御部Contは、圧力P1の変化とその変化の原因とを関連付けた情報を予め記憶している。制御部Contは、算出した圧力P1の変化に基づいて、その原因、すなわち、鏝先5aの状況を判定する。
以下に、鏝先5aの各状態における半田孔51内の圧力P1について、図面を参照して説明する。図5~図10は、半田付け装置の動作又は鏝先の状態を示す図である。また、図11は、半田付け装置で半田付け作業を1回行うときの半田孔51内の圧力P1の経時変化を示す図である。そして、図12は、図11において円で囲った部分、すなわち鏝先5aが基板BdのランドLdに接触する前後の半田孔51内の圧力P1の経時変化の拡大図である。なお、この図に示す半田孔51内の圧力P1の経時変化は本発明者が行った実測値であって、実線は鏝先5aがランドLdに接近する際の圧力変化であり、破線は鏝先5aがランドLdから離間する際の圧力変化である。本実施形態では、基板Bdがスルーホール基板であり、スルーホールThに挿入された端子Ndを半田付けするものとして説明する。
本実施形態では、鏝先の状態として、初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の6個の状態を挙げて説明する。半田付け装置A1では、1回の半田付け時に上記の各状態に順に変化する。
(a)初期状態、
図5は初期状態における半田付け装置A1の鏝先5aを示す図である。図5に示すように、半田付装置A1では、半田付けを行う前段階(例えば、鏝先5aをプレヒートする、半田付けを行う基板Bdを変更する等)において、鏝先5aは、基板Bdから離している。本実施形態では、鏝先5aが基板Bdから離れている状態を初期状態とする。すなわち、半田孔51は、Z方向下端の開口が大気に解放されている。また、本実施形態では、半田付け装置Aが初期状態のときに、ヒーターユニット4を駆動して鏝先5aを加熱する。初期状態において、ガス供給源GS1から窒素ガスの供給が開始されると、ガス供給部7aに窒素ガスが供給される。上述のとおりガス供給部7aは、第1調整部71で窒素ガスを流量Q1に調整している。
図5に示すように、半田付け装置A1が初期状態において、鏝先5aの半田孔51の下端部はZ方向下端の開口が大気に解放されている。そのため、ガス供給部7aから半田孔51に窒素ガスが供給されても、半田孔51内の圧力P1は一定である。初期状態における半田孔51内の圧力P1を圧力P1aとする。初期状態において、鏝先5aは、半田孔51の下端が大気解放されているため、リリース孔53から外部に流れる窒素ガスは少量である。
図12に示すように、鏝先5aがランドLdに近づいていくと鏝先5aとランドLdとの間隔が狭くなり、これに伴って半田孔51内の圧力P1が徐々に上昇する。そして、鏝先5aがランドLdに接触すると、半田孔51内の圧力P1は初期状態の圧力P1aよりも高い圧力P1bとなってほぼ一定となる。鏝先5aとランドLdとの間の隙間と半田孔51内の圧力P1とのこのような相関関係に基づき、本実施形態では、圧力測定部75aによって半田孔51内の圧力P1がPstと測定されると、制御部Contは鏝先5aの下端とランドLdとの間に所定間隔の隙間が形成されたと判定しこの位置を基準位置として記憶する。そして、移動手段はこの基準位置を基準として鏝先5aを移動させる。これにより基板Bdが上方向あるいは下方向に反っていた場合であっても、鏝先5aの下端と基板BdのランドLdとの間隔を精度よく制御することができ、鏝先5aの状態や半田付けの状態の判定がより確実に行えるようになる。
なお、圧力測定部75aによって鏝先5a内の圧力P1がP1bと測定され、制御部Contが鏝先5aの下端とランドLdとが接触したと判定した位置を、移動手段による鏝先5aの移動の基準位置としても構わない。ただし、図12に示すように、鏝先5aとランドLdとが接触する直前付近は鏝先5aとランドLdとの距離変化に対する半田孔51内の圧力P1の傾きが緩やかになる。換言すると、半田孔51内の圧力P1の変化に対する鏝先5aとランドLdとの距離の変化が大きくなる。このため鏝先5aとランドLdとの距離を精度よく判定するには圧力測定に高い精度が求められる。一方、図12において鏝先5aとランドLdとの距離がおおよそ-0.4mmから-0.1mmの範囲では、鏝先5aとランドLdとの距離変化に対する半田孔51内の圧力P1の傾きが急峻であるので、それほど圧力測定が高い精度でなくても実使用上問題のない程度に鏝先とランドとの距離判定が可能となる。したがって、このような範囲に基準位置に対応する圧力Pstを設定することが推奨される。
(b)鏝先接触状態
図6は、鏝先接触状態における半田付け装置A1の鏝先5aを示す図である。前述のように、鏝先5aの下端とランドLdとの間に所定間隔の隙間が形成され、半田孔51内の圧力P1がPstとなった鏝先5aの位置を基準位置として移動手段は鏝先5aをさらに下方に移動させて鏝先5aを基板BdのランドLdに接触させる。このとき、鏝先5aの基準位置からの移動距離は基準位置とランドLdとの距離であればよいが、ランドLdを半田付けに適切な温度に昇温させるプレヒートをより効率的に行うためには、鏝先5aとランドLdとの接触位置からさらに鏝先5aをランドLdの方向に所定距離移動させてもよい。
鏝先5aをランドLdに接触させることで、鏝先5aの半田孔51がランドLdによって塞がれる。基板BdはスルーホールThに貫通させた端子Ndを半田付けするものであり、図6に示すように、電子部品の端子NdのZ方向の上端部が半田孔51に挿入される。また、半田孔51を通過した窒素ガスは、端子Ndが挿入されたスルーホールThから外部に流出する。
端子Ndが挿入されたスルーホールThの窒素ガスが抜ける部分が窒素ガスの流路であり、その流路面積は、半田孔51の軸と直交する面で切断した断面積よりも小さい。鏝先接触状態のとき、半田孔51の先端側に、流路抵抗が形成される、すなわち、半田孔51内の流路抵抗が初期状態よりも大きくなる。これにより、鏝先接触状態における半田孔51内の窒素ガスの圧力P1bは初期状態の圧力P1aよりも高くなる。
(c)半田片投入状態
図7は、半田片投入状態における半田付け装置A1の鏝先5aを示す図である。半田付け装置A1では、鏝先5aをランドLdに接触させて、プレヒートを行い、ランドLdを適切な温度に昇温した後に、半田片Whを半田孔51に投入する。なお、ランドLdのプレヒートの制御は、温度センサーでランドLdの温度を直接検出し、その温度で制御してもよいし、鏝先5aとランドLdの接触時間で制御してもよい。
そして、プレヒートが終了したタイミングで、半田片Whを半田孔51に投入する。なお、半田片Whはカッター上刃21とカッター下刃22で糸半田Wを切断して形成する。自重又はプッシャーピン23で押されることで、半田片Whは落下し、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に投入される。半田片Whは、半田孔51に挿入されている端子Ndに接触して、半田孔51の内部で停止する。このように、半田片Whが半田孔51の途中で停止することで、半田孔51の窒素ガスが通過する流路面積は、小さくなる。これにより、半田片投入状態のときには、鏝先接触状態のときに比べて、半田孔51内の流路抵抗が大きくなる。そして、半田片投入状態のときの半田孔51内の圧力P1cは、鏝先接触状態の圧力P1bよりも高くなる。
(d)半田片溶融状態
図8は、半田片溶融状態における半田付け装置A1の鏝先5aを示す図である。半田付け装置A1では、鏝先5aはヒーターユニット4によって加熱されており、半田孔51に投入された半田片Whは、鏝先5aによって加熱され溶融される。溶融した半田片Whは粘度の高い液体である。そして、半田孔51は、溶融した半田片によって塞がれる。これにより、半田孔51の下端開口から窒素ガスが外部に漏れない又は漏れにくくなり、半田孔51よりも内径の小さく流路抵抗の大きいリリース孔53から窒素ガスの多くが外に放出されることになる。
結果として、半田片Whが溶融することで、半田孔51内の窒素ガスの圧力P1dは半田片投入状態の圧力P1cよりも高くなる。
(e)半田片流出状態
図9は、半田片流出状態における半田付け装置A1の鏝先5aを示す図である。溶融した半田片Whが流出すると、半田孔51のZ方向下端部は、ランドLd及びスルーホールThを塞いだ溶融した半田によって塞がれる。これにより、半田孔51の下端開口から窒素ガスが外部に漏れない又は漏れにくくなる。そして、半田孔51よりも内径の小さく流路抵抗の大きいリリース孔53から窒素ガスの多くが外に放出されることになる。
結果として、半田孔51内の窒素ガスの圧力P1eは半田片溶融状態の圧力P1dと等しい又は略等しくなる。なお、鏝先5aは、常にヒーターユニット4によって加熱されているため、溶融した半田片Whは、すべて鏝先5aの外部、すなわち、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとに通常は流出する。
(f)鏝先離間状態
図10は、鏝先離間状態における半田付け装置A1の鏝先5aを示す図である。半田付け装置A1では、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付けが終了すると、鏝先5aをランドLdから離間させる。半田片流出状態において、溶融した半田片Whは全量又は略全量が半田孔51の外部に流出している。そのため、半田孔51は、半田付け前の状態、すなわち、初期状態と同じ状態に戻る。これにより、半田孔51内の窒素ガスの圧力P1fは初期状態と同じ圧力P1aと略同じとなる。
上述のとおり、半田孔51内の圧力P1a~P1d(P1e)は、各状態によって異なる値になる。制御部Contは、予め圧力P1a~P1d(P1e)の基準となる値をデータベースとして記憶しておき、圧力測定部75aから取得した半田孔51内の圧力P1のデータと比較することで、現在の鏝先の状態を判定することができる。
また、半田片溶融状態の半田孔51内の圧力P1dと半田片流出状態の半田孔51内の圧力P1eとがほぼ同じであることから、半田孔51内の圧力から状態の判定が困難な場合もある。そこで、制御部Contは、半田孔51内の圧力P1の時間変化も考慮して、鏝先の状態を検出してもよい。例えば、第2計測部75が半田孔51内の圧力P1dを検出してから所定時間経過したことによって、制御部Contは、鏝先5aが半田片溶融状態から半田片流出状態に変化したと判断してもよい。
半田付け装置A1では、鏝先の状態が初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の順に変化する。そして、各状態での半田孔51内の圧力P1は、図11に示すグラフに示すとおりになる。図11は、半田付け装置A1が半田付けを1回行うときの半田孔51内の圧力P1の変化を示している。図11では、縦軸が圧力P1、横軸が時間である。なお、図11に示す圧力値P1a、P1b、P1c、P1d、P1e及びP1fは、基準値である。
図11に示すように、第1領域Ar1は、鏝先5aが初期状態のときであり、第1領域Ar1において、半田孔51内の圧力が圧力P1aとなっている。第2領域Ar2は、鏝先5aが鏝先接触状態であり、鏝先5aが初期状態から鏝先接触状態に変わると鏝先5aのランドLdへの接触によって圧力P1aから圧力P1bに急激に変化する。すなわち、第1領域Ar1から第2領域Ar2への変化は急峻である。
また図11における、第3領域Ar3は、鏝先5aが半田片投入状態を示しており、半田孔51への半田片Whの投入よって半田孔51の流路の一部が塞がれて流路抵抗が急に増加するため、圧力P1bから圧力P1cへは急激に変化する。すなわち、図11において、第2領域Ar2から第3領域Ar3への変化は急峻である。
図11における、第4領域Ar4は、鏝先5aが半田片溶融状態を示しており、半田孔51は半田片Whの溶融によって塞がれるので、その流路抵抗は増加する。半田片の溶融は、まず、フラックスが比較的ゆっくり溶融し、その後半田は急激に溶融する。圧力P1cから圧力P1dへは、最初ゆっくり高くなり、一定の変化ののち急激に高くなる。すなわち、図11において、第3領域Ar3から第4領域Ar4への変化は最初ゆっくりで、その後急激に高くなる。
また、上述のとおり、半田片溶融状態の圧力P1dと、半田片流出状態の圧力P1eとは、同じまたはほぼ同じであり、一定時間、圧力P1dから変化が小さい。
以上のとおり、半田孔51内の圧力P1は、その値だけでなく、状態が変化するときの圧力P1の変化の割合(急激に変化する又はゆっくり変化する)にも特徴を有する。
半田付けの工程が正常に行われているかの判定は、次のように行われる。まず、予め各半田付け状態における半田孔51内の圧力P1の基準値の範囲を設定する。そして、各半田付け状態における基準値の範囲と計測された半田孔51内の圧力P1との比較によって判定を行う。例えば、半田片投入状態における判定について説明する。まず、半田片投入状態であるAr3の時間帯において基準値の上限値Px1、下限値Py1を設定する。上限値Px1、下限値Py1は、それぞれ、Px1=P1c+x1及びPy1=P1c-y1(x1、y1は正の数)で表される値である。そして、半田付け工程においてAr3の時間帯に計測された半田孔51内の圧力P1が上限値Px1から下限値Py1の間の範囲から逸脱したとき、制御部Contは、半田付け工程に異常があったとして警報あるいは運転の停止を行ってもよい。なお、x1、y1の一方が0であってもよい。
また、前述のx1やy1よりも小さな値であるx2やy2を用いて、第2上限値Px2=P1c+x2及び第2下限値値Py2=P1c-y2を設定し、Ar3の時間帯に計測された半田孔51内の圧力P1が第2上限値Px2から第2下限値Py2の範囲外に逸脱した場合に、制御部Contは、作業者に注意を報知することもできる。なお、x2、y2の一方が0であってもよい。以上の説明では、第1上限値及び第1下限値を用いて警報或いは運転の停止を行う1段階のもの又は第2上限値及び第2下限値をさらに用いて注意、基準値を用いて警報或いは運転の停止を行う2段階のものを挙げているが、これらは一例であり、さらに多くの基準値を用いて、注意或いは警報を2段階以上で行ってもよい。また、半田片投入状態以外の状態のときにも同様に基準値の範囲が設けられており、基準値の範囲と測定された分岐流量とを比較することで、半田付けの工程が正常に行われているか判定する。
また、時間と圧力に関係なく、半田片Whが溶融もしくは流出すれば半田孔51内の圧力P1は最大値まで増加する。制御部Contは、半田孔51内の圧力P1のピーク値(ここでは、圧力P1d)付近の値を検出したときに、半田片Whの溶融が行われたと判定することもできる。
また、制御部Contは、予め圧力P1a~P1d(P1e)の基準となる値をデータベースとして記憶しておき、圧力測定部75aから取得した半田孔51内の圧力P1のデータと比較することで、半田孔51の汚れ状態を判定することができる。あるいはまた、制御部Contは、鏝先5aと基板Bdとは非接触状態、鏝先5aと基板Bdとの接触、鏝先5aへの半田片Whの投入、加熱溶融、鏝先5aからの溶融半田の流出、鏝先5aの基板Bdからの離間といった一連の半田付け工程における半田孔51内の窒素ガスの圧力の基準となる経時変化をデータベースとして記憶しておき、圧力測定部75aから取得した半田孔51内の圧力P1の経時変化と比較することで半田孔51の汚れ状態を判定することも可能である。
第3領域Ar3すなわち半田孔51への半田片Whの投入段階において半田孔51の汚れ状態を判定する場合を例に説明する。図13に、半田片Whが半田孔51へ投入された状態図を示す。図7に示すような半田孔51が汚れていない初期状態では半田孔51内の圧力はP1cである。一方、図13に示すような半田孔51やリリース孔53の内周壁にドロスなどの付着物が付着している状態では、半田孔51内の窒素ガスが通過する流路面積が小さくなっているところ、半田片Whが投入されることによって流路面積はさらに小さくなるため、半田孔51内の圧力は初期状態の圧力P1cよりも高い圧力P1c’となる(図11の一点鎖線)。制御部Contは、初期状態における圧力P1cを予め記憶しておき、測定された半田孔51内の圧力と圧力P1cとを比較して半田孔の汚れ状態を判定することが可能となる。なお、図5に示すような初期状態のときの圧力P1aのレベルによって半田孔51の汚れ状態を判定することもできる。あるいはまた鏝先5aの下端と配線基板Bdとの間に所定間隔の隙間が形成された基準位置において圧力を計測することにより、鏝先5aの先端部底面に付着した付着物を検出することもできる。このとき配線基板Bdを取り付ける治具Gjの支柱Su(図1に図示)の上面の位置に鏝先Saを移動させて基準位置を設定してもよい。その際に感度を向上させるために、窒素ガスの流量を大きくしてもよい。また圧力値が変動する場合には、平均化の処理を行って判別することもできる。
またさらに、鏝先5aの以上のような状態の変化の外、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付け状態を判定することも可能である。例えば図14(a)に示すように、ランドLdと端子Ndが正常に半田付けされた場合には半田は、2つの円錐の底面同士が接触した形状となる。一方、予備加熱が不十分な場合などには図14(b)に示すように半田が盛り上がった状態となる(イモ半田)。
そこで、制御部Contが半田の溶融が行われたと判定した後、移動手段は前述の基準位置を基準として鏝先5aとランドLdとの間が距離Gの隙間が形成されるようにランドLdから鏝先5aを離間させる。そして、半田孔51内の圧力P1の変化によって半田付け状態を判定する。すなわち、鏝先5aをランドLdから距離Gだけ離間させ所定時間保持して半田孔51内の圧力P1を測定する。図14(a)に示すように半田付けが正常になされていた場合には、鏝先5aをランドLdから距離G離すことによって円錐状の半田と鏝先5aの半田孔51内周面との間に隙間が生じ、その隙間から半田孔51内の窒素ガスが外部に流出するので、半田孔51内の圧力P1は急激に減少して圧力P1aと同じか略同じとなる。この場合は半田付けが完了したと判断して、鏝先5aを継続してランドLddから離間させてもよい。
これに対して図14(b)に示すようにイモ半田が形成されていた場合には、鏝先5aをランドLdから距離G離してもドーム状に盛り上がった半田と鏝先5aの半田孔51内周面とは依然として接触しているか、隙間があったとしても僅かであるため、半田孔51内の圧力P1は減少しないか、減少しても微量である。以上のように、半田孔51内の圧力P1の変化を測定することによって半田付け状態をも判断可能となる。
なお、鏝先5aとランドLdとの離間距離Gは、半田付けが正常な場合には半田と半田孔51の内周面とが接触せず、イモ半田が形成された場合には半田と半田孔51の内周面とが接触する距離であって、供給される半田片Whの容積や半田孔51の形状などを考慮し、また予備実験などに基づいて適宜決定すればよい。離間距離Gは通常0.2mm~2mmの範囲である。また、鏝先5aとランドLdとを距離Gまで離間させる際の鏝先5aの離間速度に特に限定はないが、圧力P1の測定精度などの観点からは0.1mm/sec~10mm/secの範囲が好ましい。より好ましくは0.2mm/sec~2mm/secの範囲である。また、鏝先5aを離間距離Gで保持する時間は0.1sec~2secの範囲が好ましい。なお、半田が溶融しているにもかかわらず半田の流出が不十分とされた場合には、窒素ガスの供給を増加させたり、パルス的に圧力を上昇させて、溶融した半田を流出させることができる。
このような異常判定をも行うためには、制御部Contは、予め、図11に示すような、半田付け工程1回における半田孔51内の窒素ガスの圧力の時間変化を示すテーブルを記憶しておき、圧力測定部75aからの半田孔51内の圧力データを時系列に並べて、挙動及び値を比較することで鏝先5aの状態を判定するようにする。このような判定方法を用いることで、鏝先5aの状態をより正確に判定することができる。
(第1変形例)
上述した実施形態では、半田片Whの太さ及び長さが一定である場合で説明している。しかしながら、糸半田Wの送りには、ばらつきが生じる場合がある。また、半田付けを行う面積が大きい等によって、半田片Whの形、大きさを意図的に変更する場合もある。このような場合、制御部Contは、鏝先接触状態の圧力P1bから圧力P1が変動したときの変動の大きさ、変動の挙動に基づいて、投入された半田片Whの形状、大きさ等を判定してもよい。なお、異なる大きさ、形状の半田片を投入する可能性がある場合、制御部Contは、各大きさ、形状の半田片Whごとに、各状態における半田孔51内の圧力P1の基準値及び(又は)その時間変化を示すテーブルをデータベースとして備えていることが好ましい。
(第2変形例)
本実施形態に係る半田付け装置の変形例について図面を参照して説明する。図15は、本実施形態に係る半田付け装置の変形例に用いられる鏝先の一例を示す断面図である。図15に示すように、第2変形例の半田付け装置に用いられる鏝先5bは、半田孔51bの内部に、半田片Whが端子Ndと接触する前に、半田片Whを停止させる半田片停止部511が設けられている。
図15に示すように、半田片停止部511は、Z方向下方に向かって内径が減少するテーパ形状となっている。半田片停止部511に半田片Whが到達すると、半田片Whによって、半田孔51bの隙間が小さくなる。これにより、半田片投入状態のときの半田孔51b内の流路抵抗が大きくなる。これにより、第2変形例において、半田片投入状態のときの圧力P1が大きくなる。そして、鏝先接触状態と、半田片投入状態のそれぞれのときの圧力P1の差が大きくなるため、制御部Contは、鏝先接触状態と、半田片投入状態とを判別しやすくなる。また、半田片Whが、半田片停止部511に到達する前に、半田孔51bの内部で停止する場合がある。この場合、半田片による流路抵抗が、半田片Whが半田片停止部511に到達しているときに比べて小さくなる。このことを利用することで、制御部Contは、半田片Whが半田片停止部511に到達したこと、すなわち、半田片Whを確実に投入できたことを判定することができる。
本実施形態では、半田付け装置A1が半田付けを行うときにとり得る状態として、初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の6つの状態を挙げているが、これ以外の状態を判定するようにしてもよい。
(第3変形例)
上述の実施形態では、鏝先5aが半田を溶融できる高温の状態にある場合で説明している。しかしながら、ヒーター41の故障等によって鏝先5aが半田を溶融するために設定された正常温度範囲内から外れる場合もあり得る。鏝先5aを通過する窒素ガスは、鏝先5aの温度によって、膨張する程度や粘度が異なるため、流路抵抗も増減し、その結果、窒素ガスの圧力も変化する。例えば、鏝先5aの温度が低下すると窒素ガスの体積は減少し、粘度も低くなるので半田孔51における窒素ガスの圧力は低下する。このことを利用して、制御部Contは、半田孔51を大気に開放している状態、すなわち、鏝先5aが初期状態のときの圧力P1aを記憶しておき、記憶している圧力P1aと計測した圧力P1とに基づいて、鏝先5aの温度を判定することが可能である。
また、供給されるガスの種類が、窒素と空気或いは酸素との混合ガスのように変化した場合も、流路抵抗が変化するため、半田孔51内の圧力P1に差異が生じる。このことを利用して、制御部Contは、半田孔51を大気に開放している状態、すなわち、鏝先5aが初期状態のときの圧力P1aを記憶しておき、記憶している圧力P1aと計測した圧力P1とに基づいて、供給されているガスが窒素ガス(供給されるべきガス)であるか否か判定できる。これにより、制御部Contは、例えば、ガス配管接続の誤りを検出することが可能である。
第1変形例、第2変形例及び第3変形例の動作は、例えば、一定の周期ごとに行うものとすることができる。一定の周期とは、例えば、時間で管理してもよいし、半田付け回数で管理してもよい。また、半田付け装置A1の電源投入直後及び工程終了時に行うようにしてもよい。また、ランダムなタイミングで行うようにしてもよい。
(第2実施形態)
本実施形態に係る半田付け装置の他の例について図面を参照して説明する。図16は、本発明に係る半田付け装置の他の例を示す図である。なお、図16に示す半田付け装置Cでは、鏝先5cの溶融領域510よりも下流側において半田孔51と外周面とを貫通するガスリリース部52を備えている。それ以外は、第1実施形態の半田付け装置A1と同じ構成を有している。そのため、鏝先5cにおいて半田付け装置A1の鏝先5aと実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
ガスリリース部52は、半田孔51の溶融領域510よりも下流側において半田孔51と外部とを連通する部分であって、本実施形態では、ガスリリース部52は鏝先5cの外周面と半田孔51とを連通する貫通孔形状のものとしているが、これに限定されるものではない。例えば、半田孔51の溶融領域510よりも下流側と鏝先5cのZ方向下端との間に半田孔51と鏝先5cの外周面とを連通するように形成されたスリット形状や切り欠き形状であってもよい。また、上述の貫通孔、スリット、切り欠き以外にもガスリリース部52として鏝先接触状態及び半田片流出状態のときに半田孔51の窒素ガスを鏝先5cの外部に流出させることができる形状を広く採用することができる。
このような半田付け装置Cを用いたときの、制御部Contによる鏝先の状態の判定について、図面を参照して説明する。図17は、鏝先接触状態における鏝先5cと窒素ガスの流れを示す図である。図18は、半田片投入状態における鏝先5cと窒素ガスの流れを示す図である。図19は、半田片溶融状態における鏝先5cと窒素ガスの流れを示す図である。図20は、半田片流出状態における鏝先5cと窒素ガスの流れを示す図である。
半田付け装置Cにおいて、1回の半田付けにおける鏝先5cの取り得る状態は、第1実施形態と同じ、つまり初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態である。そして、初期状態、鏝先離間状態に関しては、第1実施形態の半田付け装置A1と実質的に同じである。また、鏝先5cは、ガスリリース部52を設けており、ガスリリース部52からガスが流出可能な状態のとき、すなわち、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片流出状態の各状態において、半田孔51内を流れる窒素ガスの圧力は、第1実施形態のときよりも少なくなる。そのため、半田孔51内の圧力を圧力P11として説明する。例えば、初期状態のとき、半田孔51内の圧力を圧力P11bとする。他の状態のときも同様に、圧力P11c、P11eとする。
図17に示す鏝先接触状態のとき、半田孔51内の窒素ガスは、スルーホールThから外部に流出するとともに、リリース孔53及びガスリリース部52からも外部に流出する。そのため、半田孔51内の圧力P11はガスリリース部52が無いとき(第1実施形態)よりも低くなる。すなわち、半田孔51内の圧力P11b(<P1b)となる。また、図18に示す半田片投入状態のときも同様に、半田片Whによって流路抵抗は増える。一方で、ガスリリース部52から窒素ガスが流出するので、半田孔51内の圧力P11は、ガスリリース部52が無いとき(第1実施形態)よりも低くなる。すなわち、半田孔51内の圧力P11c(<P1c)となる。そして半田片投入状態のときの半田孔51内の圧力P11cは、鏝先接触状態の半田孔51内の圧力P11bよりも高い。
図19に示す半田片溶融状態のとき、半田孔51の溶融領域510は、溶融した半田片Whで塞がれる。そのため、窒素ガスの流れ方向において、溶融領域510よりも下流側であるガスリリース部52から窒素ガスは流出しない。このため、半田片溶融状態のときの半田孔51内の圧力P11dは第1実施形態(P1d)とほぼ等しくなる。
図20に示す半田片流出状態のとき、半田孔51のZ方向下端は、ランドLdによって塞がれる。また、溶融した半田片WhがランドLdのスルーホールThを塞いでいるため、窒素ガスは、スルーホールThからは流出しない。一方で、半田片Whは溶融して溶融領域510から回路基板Bd側に流出しているため、半田孔51内の窒素ガスは、ガスリリース部52から外部へ流出する可能となる。つまり、ガスリリース部52から窒素ガスは流出するので、半田孔51内の圧力P11は、ガスリリース部52が無いとき(第1実施形態)よりも低くなる。すなわち、半田片流出状態のときの半田孔51内の圧力は、圧力P11e(<P1e)である。また、半田片流出状態のとき、半田孔51の窒素ガスがガスリリース部52から流出しているため、圧力P11eは、半田片溶融状態のときの圧力P11dに比べて低い。
以上のとおり、鏝先5cにガスリリース部52を設けることで、鏝先接触状態のときの半田孔51内の圧力P11bと、半田片投入状態のときの半田孔51内の圧力P11cと、半田片流出状態のときの半田孔51内の圧力P11eとを第1実施形態の半田付け装置A1の場合と異なる値とすることができる。
そして、各状態での圧力P11は図21に示すグラフに示すとおりになる。図21は、半田付け装置Cが半田付けを1回行うときの配管の圧力の変化を示している。図21では、縦軸が半田孔51内の圧力P11、横軸が時間である。なお、以下の説明では、図11と異なる挙動を示す部分についてのみ説明するものとする。
図21に示すように、ガスリリース部52を備えた鏝先5cを用いることで、半田片溶融状態を示す第4領域Ar4(半田孔51内の圧力P11d)の後に、半田孔51内の圧力P11eの半田片流出状態を示す第5領域Ar5が現れる。
このように、鏝先5cにガスリリース部52を設けることで、半田片溶融状態における半田孔51内の圧力P11dと、半田片流出状態おける半田孔51内の圧力P11eとを異なる値とすることができる。これにより、制御部Contは、半田片流出状態、すなわち、電子部品Epの端子NdとランドLdとを半田付けが完了したことをより正確に検知することができる。
なお、本実施形態においても、制御部Contは、各状態における半田孔51内の圧力をデータベースとして記憶して、圧力測定部75aからの半田孔51内の圧力のデータと比較することで鏝先の状態を判定してもよい。また、図21に示すような、半田孔51内の圧力の時間変化を示すテーブルを記憶しておき、圧力測定部75aからの圧力のデータを時系列に並べて、挙動及び値を比較することで、鏝先5cの状態を判定してもよい。
また、時間と圧力の関係(図11または図21)のそれぞれの計測値を記憶しておき品質管理のデータベースを作成し、経時的な変化や雰囲気温度などの相関を統計処理によって算出することができる。
さらに、複数の半田付け箇所が存在する場合には、半田付け箇所によって各状態における流体の変化値が異なる場合があるので、各半田付け箇所毎に上記データベースを作成し、半田付け場所毎に異なった閾値を用いて判定を行うことも可能である。
そしてまた、第1実施形態と同様に、制御部Contが、鏝先5aの下端とランドLdとの間に所定間隔の隙間が形成されたと判定した位置あるいは鏝先5aの下端とランドLdとが接触したと判定した位置を基準位置として移動手段は鏝先5aを移動させる。
(第3実施形態)
図22に本発明に係る半田付け装置の他の実施形態を示す。第1実施形態及び第2実施形態で示した半田付け装置A1,Cでは、少なくとも半田片溶融状態では、溶融領域510において溶融半田によって半田孔51が塞がれる。このとき、半田孔51内の窒素ガスや気化したフラックスなどはリリース孔53から外に排出されるが、その一部は圧力測定用孔54内にも進入するおそれがある。気化したフラックスなどを含んだガスが圧力測定用孔54に進入すると、圧力測定用孔54及び圧力測定用配管8aの内周面にドロスなどの汚れが付着し、圧力測定部75aの測定精度が低下するおそれがある。
そこで、図22に示す半田付け装置Dでは、圧力測定用配管8aに不活性ガスを供給して圧力測定用孔54及び圧力測定用配管8aに気化したフラックスなどを含んだガスが進入しないようにした。
具体的には、圧力測定用配管8aに形成されたガス供給孔81にガス供給源GS2から不活性ガスがガス供給部7bを介して供給される。ここで、ガス供給孔81の形成位置は、圧力測定用管8内に不活性ガスの滞留部が形成されないようにする観点からは、圧力測定用配管8aの圧力測定部75aが取り付けられた端部側であるのが望ましい。ガス供給部7bは、配管70bと、第2調整部73aと、第2計測部74aとを有する。配管70bは、ガス供給源GS2からの不活性ガスをガス供給孔81に流入させる配管である。なお、図22では、便宜上、配管70bを線図で示しているが、実際にはガスが漏れない管体(例えば、樹脂管)である。また、ガス供給源GS2から不活性ガスは、ここではガス供給源GS1から供給されるガスと同じ窒素ガスとする。
ガス供給源GS2から供給される窒素ガスは、第2調整部73aによって流量が調整される。そして第2計測部74aが、第2調整部73aから吐出される窒素ガスの流量を計測し、計測した窒素ガスの流量が予め決められた流量となるように第2調整部73aに対して第2調整部73aを制御する制御信号を送信している。なお、ガス供給源GS2から圧力測定用配管8aに供給される窒素ガスの流量Q2は、気化したフラックスなどが圧力測定用配管8a内に進入するのを防止できればよいため、半田孔51内を流れる窒素ガスの流量Q1に比べて遥かに少ない流量に設定される。また、圧力測定用配管8a内の窒素ガスの圧力は半田孔51内の窒素ガスの圧力よりも高く設定される。
このような構成によれば、気化したフラックスなどを含んだガスが圧力測定用孔54に進入することが効果的に抑制され、圧力測定用孔54及び圧力測定用配管8aの内周面へのドロスなどの汚れ付着が抑えられる。これにより長期間にわたって圧力測定部75aの測定精度を高い状態で維持できる。
(変形例)
図22の半田付け装置Dでは、圧力測定用配管8a内を流動させる窒素ガスをガス供給源GS2から供給していたが、ガス供給源GS1から圧力測定用配管8aに窒素ガスを供給するようにしてもよい。すなわち、ガス供給源GS1から半田孔51内及び圧力測定用配管8a内に窒素ガスを供給するようにしてもよい。このような構成によってガス供給源を1つとすることができる。この場合にも、ガス供給源GS1と圧力測定用配管8aとの間にガス供給部7bを設け、第2調整部73aによって流量を調整するとともに第2計測部74aによって窒素ガスの流量を計測し、圧力測定用配管8a内に供給される窒素ガスの流量が予め決められた流量となるように制御する。また、圧力測定用配管8a内の窒素ガスの圧力が半田孔51内の窒素ガスの圧力よりも高くなるように制御する。
(第4実施形態)
図23に本発明に係る半田付け装置の他の実施形態を示す。第1実施形態から第3実施形態で示した半田付け装置A1,C,Dでは半田孔51内の圧力を測定していたが、本発明に係る半田付け装置Eでは、ガス供給源GS1と半田孔51とを連通しガス供給源GS1からガスを半田孔51に供給するガス供給部における圧力を測定してもよい。図23に示す半田付け装置Eでは配管70aに圧力測定部75aが設けられている。圧力測定部75aが配管70aに設けられた場合も第1実施形態と同様の圧力変化を測定することができ、配管70a内を流れるガスの測定圧力に基づいて制御部Contは鏝先の状態を判定可能となる。以上の各実施形態において、圧力測定部75aは、半田孔5およびガス供給部を構成する配管70a、ガス流入孔222、半田供給孔422のいずれに設けても構わない。
(第5実施形態)
図24に本発明に係る半田付け装置の他の実施形態を示す。図24に示す半田付け装置が、図3に示した第1実施形態と異なる点は、ガスリリース孔53及び圧力測定用孔54を有しない鏝先5dを用いる点とガス供給源GS1からのガス供給路が分岐している点である。それ以外は、第1実施形態の半田付け装置A1と同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
ガス供給部7cは、半田付け装置Fの外部に設けられたガス供給源GS1から供給されるガスを半田付け装置Fに供給する。図24に示すように、ガス供給部7cは、配管70と、第1調整部71と、第1計測部72と、第2調整部73と、第2計測部74とを有する。
配管70は、主配管701と、分岐配管702と、流入配管703とを有する。主配管701は、ガス供給源GS1から窒素ガスが流入する配管である。主配管701の下流側の分岐部で、流入配管703と分岐配管702とに分岐する。そして、流入配管703は、主配管701の分岐部とガス流入孔222とを連通している。すなわち、主配管701を流れた窒素ガスは、流入配管703を通って、ガス流入孔222に流入する。
一方、分岐配管702は、主配管701を流れるガスの一部を外部に流すための配管である。半田付け装置Fにおいて、ガス流入孔222は、下刃孔221、半田供給孔422及び半田孔51に連通しており、半田孔51は、外部に開口している。例えば、半田付け装置A1を作動させた場合、溶融した半田で半田孔51がせき止められる場合がある。この場合、ガス供給源GSから供給されるガスが流れ出る場所がなくなり、配管を損傷する原因になり得る。そこで、配管70には、分岐配管702を設けて、行き場のなくなった窒素ガスを外部に放出している。また、分岐配管702には、配管70内部での窒素ガスの圧力の上昇を抑制する働きもある。
第1調整部71は、主配管701に設けられている。第1調整部71は、流量制御弁を含む構成であり、主配管701を流れる窒素ガスの流量を調整している。なお、第1調整部71は、主配管701から分岐配管702が分岐する分岐点よりもガス供給源GS1側に設けられる。すなわち、第1調整部71は、ガス供給源GSからガス供給部7cに供給される全窒素ガスの流量を調整している。
第1計測部72は、主配管701の第1調整部71と分岐点との間に配されて、主配管701を流れる窒素ガスの流量を計測する。すなわち、第1計測部72は、第1調整部71から吐出される窒素ガスの流量を計測している。そして、第1計測部72は、計測した窒素ガスの流量が予め決められた流量となるように、第1調整部71に対して、第1調整部71を制御する制御信号を送信している。すなわち、ガス供給部7cは、第1調整部71と第1計測部72を用いて、フィードバック制御を行っており、ガス供給源GSから供給される窒素ガスの流量を一定に制御している。なお、第1計測部72の計測結果に基づいて、作業者が手動で第1調整部71を操作して窒素ガスの流量を調整してもよい。また、何らかの異常により計測した流量が予め決めた基準値と異なる又は予め設定した範囲から外れる場合には、制御部Contは、異常が発生している旨の警報及び(又は)半田付け装置の運転の停止を行ってもよい。
第2調整部73は、分岐配管702に配されている。第2調整部73は、分岐配管702を流れる窒素ガスの流量を絞る絞り弁を含む。第2調整部73を調整することで、分岐配管702に流れる窒素ガスの流量が調整される。第1調整部71で調整されたガスは、分岐点でガス流入孔222と分岐配管702に分かれて流れる。すなわち、第1調整部71で調整されて主配管701を流れる窒素ガスの流量をQ1、第2調整部73で調整されて分岐配管702を流れる窒素ガスの流量を分岐流量Q2、流入配管703を流れる窒素ガスの流量を供給流量Q3とすると、Q1=Q2+Q3の関係が成り立つ。
ガス供給部7cは、半田付け時の半田の酸化を抑制するために窒素ガスを供給するものであるため、分岐配管702よりも流入配管703へより多くの窒素ガスが流れるようにすることが好ましい。そのため、第2調整部73では、しぼり弁で分岐配管702を絞り、流量Q2をなるべく小さくしている。なお、第2調整部73では絞り弁を用いて、絞り量を調整できるようにしているが、例えば、オリフィス等の流路抵抗が固定のものを用いてもよい。第2調整部73は一定の絞り量のものを用いており、流入側の圧力が変動すると流量が変動する。
第2計測部74は、分岐部と第2調整部73の間に配されて、分岐部で分岐したガスの流量(すなわち、流量Q2)を計測する。第2計測部74は、制御部Contに接続されており、流量Q2は、制御部Contに送信される。制御部Contは、流量Q2に基づいて、鏝先5dの状態を判定する。すなわち、制御部Contは、鏝先5dの状態を判定する状態判定部としての役割を果たす。また、制御部Contは、判定した鏝先5dの状態に基づいて、半田付け装置Fの制御を行ってもよい。半田付け装置Fの制御としては、例えば、半田付け装置Fの基板Bdへの接近離間、糸半田Wの切断、鏝先5dの加熱等を含む。
次に、分岐配管702の流量に基づいて鏝先5dの状態を判定する判定方法について説明する。なお、ガス供給部7cにおいて、ガス流入孔222に流入した窒素ガスは、すべて、鏝先5dの半田孔51に流入するものとする。例えば、ガス流入孔222は、下刃孔221と連通しており、下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向上下に貫通している。窒素ガスが供給されている状態において、窒素ガスは、下刃案221のZ方向上端から抜けないように、密閉されるものとする。
なお、主配管701を流れる窒素ガスは、ガス供給源GS1からのガスを第1調整部71で調整することで流量が調整される。主配管701を流れる窒素ガスの流量は、ガス供給部7cに供給される窒素ガスの全流量でもある。すなわち、ガス供給部7cに流れる窒素ガスの全流量はQ1である。
第1調整部71に備えられている流量制御弁は、配管内部の圧力にかかわらず、窒素ガスを設定した流量で流し続ける。すなわち、ガス供給部7cは、全流量Q1を一定とする流量制御が行われている。そして、第2調整部73には、絞り弁が採用されている。第2調整部73では、分岐配管702の流路面積を絞っているだけであり、配管上流の圧力が上昇すると流量は変動する。すなわち、分岐流量Q2は、圧力によって変動する。
半田付け装置Fにおいて、例えば、半田片Whが半田孔51に供給された場合、半田孔51の軸と直交する断面の一部を半田片Whが占める。そのため、半田孔51の窒素ガスが流れる部分の流路面積が小さくなり、窒素ガスが流れにくくなる、すなわち、流路抵抗が大きくなる。そして、半田孔51の流路抵抗が大きくなると、供給流量Q3が減少する。つまり、鏝先の状態が変化することで、供給流量Q3は変動する。制御部Contは、供給流量Q3、或いは、供給流量Q3の変化に基づいて、鏝先5dの状態を判定する。例えば、制御部Contは、供給流量Q3の変化とその変化の原因とを関連付けた情報を予め記憶している。制御部Contは、算出した供給流量Q3の変化に基づいて、その原因、すなわち、鏝先5dの状況を判定する。
全流量Q1を一定に制御しているため、供給流量Q3と分岐流量Q2とは、一対一で変化する。実際には、制御部Contは、分岐流量Q2に基づいて、鏝先5dの状態を判定している。例えば、供給流量Q3が減少すれば、主配管701の全流量Q1が略一定であるので、分岐流量Q2が増加する。
以下に、鏝先5dの各状態における分岐流量Q2について、図面を参照して説明する。図25~図30は、半田付け装置Fの動作又は鏝先の状態を示す図である。また、図31は、半田付け装置Fで半田付け作業を1回行うときの分岐流量Q2の変化を示す図である。そして、図32は、図31において円で囲った部分、すなわち鏝先5dが基板BdのランドLdに接触する前後の半田孔51内の分岐流量Q2の経時変化の拡大図である。本実施形態では、基板Bdがスルーホール基板であり、スルーホールThに挿入された端子Ndを半田付けするものとして説明する。
本実施形態では、鏝先5dの状態として、初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の6個の状態を挙げて説明する。半田付け装置Fでは、1回の半田付け時の各状態を順に変化する。
(a)初期状態
図25は初期状態における半田付け装置Fの鏝先5dの周囲及びガス供給部7cを示す図である。図25に示すように、半田付装置Fでは、半田付けを行う前段階(例えば、鏝先5dをプレヒートする、半田付けを行う基板Bdを変更する等)において、鏝先5dは、基板Bdから離している。本実施形態では、鏝先5dが基板Bdから離れている状態を初期状態とする。すなわち、半田孔51は、Z方向下端の開口が大気に解放されている。また、本実施形態では、半田付け装置Fが初期状態のときに、ヒーターユニット4を駆動して鏝先5dを加熱する。初期状態において、ガス供給源GS1から窒素ガスの供給が開始されると、ガス供給部7cに窒素ガスが供給される。上述のとおりガス供給部7cは、第1調整部71で窒素ガスを全流量Q1に調整している。
図25に示すように、半田付け装置Fが初期状態において、鏝先5dの半田孔51の下端部は、外部に開口している。半田孔51の流路抵抗は低い。一方、分岐配管702は、第2調整部73によって、流路が絞られているので流路抵抗が高い。そのため、主配管701を流れる窒素ガスの流量Q1(全流量Q1)の多くは供給配管703に供給流量Q3aとして流れる。制御部Contは、第2計測部73からの流量を取得しており、初期状態において、分岐配管702には、分岐流量Q2aが流れる。分岐流量Q2aは、供給流量Q3aに比べて少ない。
図32に示すように、鏝先5dがランドLdに近づいていくと鏝先5dとランドLdとの間隔が狭くなり、これに伴って半田孔51の先端側に形成される流路抵抗、すなわち供給配管703の流路抵抗が初期状態から徐々に大きくなる。これにより、供給配管703に流れる供給流量Q3は初期状態よりも徐々に少なくなる一方、分岐配管702に流れる分岐流量Q2は初期状態よりも徐々に多くなる。そして、鏝先5dがランドLdに接触すると、分岐配管702に流れる分岐流量Q2は初期状態の流量Q2aよりも多い流量Q2bとなってほぼ一定となる。本実施形態では、第2計測部74によって取得される分岐配管702の分岐流量Q2が、設定された基準流量Qstに達すると、制御部Contは鏝先5dの下端とランドLdとの間に所定間隔の隙間が形成されたと判定しこの位置を基準位置として記憶する。そして、移動手段はこの基準位置を基準として鏝先5dを移動させる。これにより、第1実施形態と同様に、基板Bdが上方向あるいは下方向に反っていた場合であっても、鏝先5dの下端と基板BdのランドLdとの間隔を精度よく制御することができ、鏝先5dの状態や半田付けの状態の判定がより確実に行えるようになる。
なお、第2計測部74によって取得された分岐配管702の分岐流量Q2がQ2bで、制御部Contが鏝先5dの下端とランドLdとが接触したと判定した位置を、移動手段による鏝先5dの移動の基準位置としても構わない。ただし、図32に示すように、鏝先5dとランドLdとが接触する直前付近は鏝先5dとランドLdとの距離変化に対する分岐流量Q2の傾きが緩やかになる。換言すると、分岐配管702内の分岐流量Q2の変化に対する鏝先5dとランドLdとの距離の変化が大きくなる。このため鏝先5dとランドLdとの距離を精度よく判定するには流量測定に高い精度が求められる。一方、図32において鏝先5dとランドLdとが接触する前の所定間隔を有している間では、鏝先5dとランドLdとの距離変化に対する分岐流量Q2の傾きが急峻であるので、それほど流量測定が高い精度でなくても実使用上問題のない程度に鏝先5dとランドLdとの距離判定が可能となる。したがって、このような範囲に基準位置に対応する分岐流量Qstを設定することが推奨される。
(b)鏝先接触状態
図26は、鏝先接触状態における半田付け装置Fの鏝先5dを示す図である。前述のように、鏝先5dの下端とランドLdとの間に所定間隔の隙間が形成され、分岐配管702内の分岐流量Q2がQstとなった鏝先5dの位置を基準位置として移動手段は鏝先5dをさらに下方に移動させて鏝先5dを基板BdのランドLdに接触させる。このとき、鏝先5dの基準位置からの移動距離は基準位置とランドLdとの距離であればよいが、ランドLdを半田付けに適切な温度に昇温させるプレヒートをより効率的に行うためには、鏝先5dとランドLdとの接触位置からさらに鏝先5dをランドLdの方向に所定距離移動させてもよい。
端子Ndが挿入されたスルーホールThの窒素ガスが抜ける部分が窒素ガスの流路であり、その流路面積は、半田孔51の軸と直交する面で切断した断面積よりも小さい。鏝先接触状態のとき、半田孔51の先端側に、流路抵抗が形成される、すなわち、供給配管703の流路抵抗が、初期状態よりも大きくなる。これにより、供給流量Q3bは初期状態のときよりも少なくなる。結果として、分岐配管702に初期状態よりも多くの窒素ガスが流入する。このとき、分岐配管702には、分岐流量Q2bが流れる。分岐流量Q2bは、分岐流量Q2aよりも多い。
(c)半田片投入状態
図27は、半田片投入状態における半田付け装置Fの鏝先5dの周囲及びガス供給部7cを示す図である。前述のように、半田付け装置Fでは鏝先5dをランドLdに接触させてプレヒートを行い、ランドLdを適切な温度に昇温した後に、半田片Whを半田孔51に投入する。なお、ランドLdのプレヒートの制御は、温度センサーでランドLdの温度を直接検出し、その温度で制御してもよいし、鏝先5dとランドLdの接触時間で制御してもよい。
そして、プレヒートが終了したタイミングで、半田片Whを半田孔51に投入する。なお、半田片Whはカッター上刃21とカッター下刃22で糸半田Wを切断して形成する。自重又はプッシャーピン23で押されることで、半田片Whは落下し、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に投入される。半田片Whは、半田孔51に挿入されている端子Ndに接触して、半田孔51の内部で停止する。このように、半田片Whが半田孔51の途中で停止することで、半田孔51の窒素ガスが通過する流路面積は、小さくなる。これにより、半田片投入状態のときには、鏝先接触状態のときに比べて、供給配管703の流路抵抗が大きくなる。半田片投入状態のときの供給流量Q3cは、鏝先接触状態に比べて少なくなる。
結果として、分岐配管702に鏝先接触状態よりも多くの窒素ガスが流入する。このとき、分岐配管702には、分岐流量Q2cが流れる。分岐流量Q2cは、分岐流量Q2bよりも多い。
(d)半田片溶融状態
図28は、半田片溶融状態における半田付け装置の鏝先5dの周囲及びガス供給部7cを示す図である。半田付け装置Fでは、鏝先5dはヒーターユニット4によって加熱されており、半田孔51に投入された半田片Whは、鏝先5dによって加熱され溶融される。溶融した半田片Whは粘度の高い液体である。そして、半田孔51は、溶融した半田片Whによって塞がれる。これにより、半田孔51から窒素ガスが外部に漏れない又は漏れにくくなる。
すなわち、半田片Whが溶融することで、供給配管703の窒素ガスの流量、すなわち、供給流量Q3dは半田片投入状態に比べて少なくなる。結果として、分岐配管702には、半田片投入状態よりも多くの窒素ガスが流入する。このとき、分岐配管702には、分岐流量Q2dの窒素ガスが流れる。分岐流量Q2dは、分岐流量Q2cよりも多い。
(e)半田片流出状態
図29は、半田片流出状態における半田付け装置Fの鏝先5dの周囲及びガス供給部7cを示す図である。溶融した半田片Whが流出すると、溶融した半田片WhはスルーホールThを塞ぐ。そして、鏝先5dは、ランドLdと接触している。これにより、半田孔51に流入した窒素ガスは、半田孔51から外部に漏れない又は漏れにくい。すなわち、半田片流出状態では、供給配管703の窒素ガスの流量、すなわち、供給流量Q3eは、半田片溶融状態と同程度に少ない。結果として、分岐配管702には、半田片溶融状態と同じか略同じ量の窒素ガスが流入する。このとき、分岐配管702には、分岐流量Q2eが流れる。分岐流量Q2eは、分岐流量Q2dと同じか略同じである。なお、鏝先5dは、常にヒーターユニット4によって加熱されているため、溶融した半田片Whは、すべて鏝先5dの外部、すなわち、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとに流出する。
(f)鏝先離間状態
図30は、鏝先離間状態における半田付け装置Fの鏝先5dの周囲及びガス供給部7cを示す図である。半田付け装置Fでは、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付けが終了すると、鏝先5dをランドLdから離間させる。半田片流出状態において、溶融した半田片Whは全量又は略全量が半田孔51の外部に流出している。そのため、半田孔51は、半田付け前の状態、すなわち、初期状態と同じ状態に戻る。鏝先5dをランドLdから離間させたとき、分岐配管702に分岐流量Q2fが流れているとすると、分岐流量Q2fは、分岐流量Q2eよりも少なく、分岐流量Q2aと同じか略同じである。
上述のとおり、分岐流量Q2a~Q2d(Q2e)は、各状態によって異なる値になる。制御部Contは、予め分岐流量Q2a~Q2d(Q2e)の基準となる値をデータベースとして記憶しておき、第2測定部73から取得した分岐流量Q2のデータと比較することで、現在の鏝先の状態を判定することができる。
また、半田片溶融状態の分岐流量Q2dと半田片流出状態の分岐流量Q2eとがほぼ同じであることから、分岐流量Q2から状態の判定が困難な場合もある。そこで、制御部Contは、分岐流量Q2の時間変化も考慮して、鏝先5dの状態を検出してもよい。例えば、第2計測部74が分岐流量Q2dを検出してから所定時間経過したことによって、制御部Contは、鏝先5dが半田片溶融状態から半田片流出状態に変化したと判断してもよい。
半田付け装置Fでは、鏝先の状態が初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の順に変化する。そして、各状態での分岐流量Q2は、図31に示すグラフに示すとおりになる。図31は、半田付け装置Fが半田付けを1回行うときの分岐流量Q2の変化を示している。図31では、縦軸が分岐流量Q2、横軸が時間である。なお、図31に示す流量値Q2a、Q2b、Q2c、Q2d、Q2e及びQ2fは、基準値である。
図31に示すように、第1領域Ar1は、鏝先が初期状態のときである。第1領域Ar1において、分岐流量Q2aとなっている。図31における、第2領域Ar2は、鏝先が鏝先接触状態である。鏝先が初期状態から鏝先接触状態に変わると分岐流量Q2aが分岐流量Q2bに変化する。分岐流量Q2は、鏝先のランドLdへの接触によって変化するため分岐流量Q2aから分岐流量Q2bには、急激に変化する。すなわち、図31において、第1領域Ar1から第2領域Ar2への変化は急峻である。
また、図31における、第3領域Ar3は、鏝先5dが半田片投入状態である。半田孔51に半田片Whが投入されると、分岐流量Q2bが分岐流量Q2cに変化する。半田孔51への半田片Whの投入よって流路面積が急に変化するため、分岐流量Q2bから分岐流量Q2cへは急激に変化する。すなわち、図31において、第2領域Ar2から第3領域Ar3への変化は急峻である。
図31における、第4領域Ar4は、鏝先5dが半田片溶融状態のときである。半田孔51に半田片Whが溶融されると、分岐流量Q2cが分岐流量Q2dに変化する。半田孔51における半田片Whの溶融によって流路面積が変化する。半田片Whの溶融は、まず、フラックスが溶融した後に、半田が溶融する。フラックスはゆっくり溶融し、半田は急激に溶融する。分岐流量Q2cから分岐流量Q2dへは、最初ゆっくり変化し、一定の変化ののち急激に変化する。すなわち、図31において、第3領域Ar3から第4領域Ar4への変化は最初ゆっくりで、その後急激に変化する。
また、上述のとおり、半田片溶融状態の分岐流量Q2dと、半田片流出状態の分岐流量Q2eとは、同じまたはほぼ同じである。そのため、一定時間、分岐流量Q2dから変化しない。
以上のとおり、鏝先5dの分岐配管702の窒素ガスの流量である分岐流量Q2は、その値だけでなく、状態が変化するときの分岐流量Q2の変化の割合(急激に変化する又はゆっくり変化する)にも特徴を有する。
半田付けの工程が正常に行われているかの判定、鏝先に異物の付着や混入の判定、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付け状態を判定については、半田孔51内の圧力P1に換えて分岐配管702の分岐流量Q2を指標とすること以外は実施形態1の判定方法と同様にして行うことができる。
そしてまた本実施形態においても、制御部Contは、第1実施形態の「第1変形例」と同様の操作が可能である。また、第1実施形態の「第2変形例」に示すような、半田片停止部を備えた鏝先を用いることで、第1実施形態の「第2変形例」と同様の操作が可能である。
このような異常判定をも行うためには、制御部Contは、予め、図31に示すような、半田付け1回における分岐流量の時間変化を示すテーブルを記憶しておき、第2測定部74からの分岐流量のデータを時系列に並べて、挙動及び値を比較することで鏝先の状態を判定するようにする。このような判定方法を用いることで、鏝先の状態をより正確に判定することができる。
なお、制御部Contは、第1計測部72が計測した主配管701を流れる窒素ガスの全流量(計測全流量とする)を取得してもよい。そして、制御部Contは、計測全流量が予め決められた全流量と異なる場合において、その差が一定範囲内の場合には、全流量Q1を計測全流量に補正するとともに、各状態を判定するときの分岐流量(ここでは、Q2a、Q2b、Q2c、Q2d等)を計測全流量に基づいて補正し、その補正値を用いて各状態の判定を行ってもよい。さらには、計測全流量と予め想定している全流量との差が、一定範囲を超える場合には、制御部Contは、状態の判定を中止するとともに、異常が発生している旨の警報及び(又は)運転の停止を行ってもよい。
以上示した第5実施形態では、分岐流路702に流量計測を行う第2計測部74を設けて分岐流路の流量の変化に基づいて鏝先5dの状態を判定するようにしたが、供給流路703に第2計測部74を設けて供給流路703を流れる窒素ガスの流量(供給流量)を直接計測し、供給流量の流量変化に基づいて鏝先5dの状態の判定を行ってもよい。この場合各状態における流量の変化は、上述した分岐流量と逆方向の挙動を示す。すなわち、供給流量と時間との関係は、図31に示すテーブルとは上下逆転した挙動を示す。供給流量は、初期状態のときに最大流量となり、半田片溶融状態のときに最小流量となる。
(第6実施形態)
本実施形態に係る半田付け装置の他の例について図面を参照して説明する。図33は、本発明に係る半田付け装置Gの鏝先5e及びガス供給部7cを示す図である。なお、図33に示す半田付け装置Gでは、鏝先5eに半田孔51と外周面とを貫通するガスリリース部52を備えている。それ以外は、第5実施形態の半田付け装置Fと同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
図33に示すように、半田付けを行うとき、鏝先5eの半田孔51には、電子部品Epの端子Ndが挿入される。そして、カッターユニット2で糸半田Wから切断された半田片Whは、端子Ndと接触した状態で、鏝先5eに加熱されて溶融する。このとき、半田孔51の半田片Whが溶融する部分を溶融領域510とすると、ガスリリース部52は、半田孔51の溶融領域510と鏝先5eのZ方向下端との間の部分と外周面とを連通している。
なお、本実施形態において、ガスリリース部52は、鏝先5eの外周面と半田孔51とを連通する貫通孔形状のものとしているが、これに限定されるものではない。例えば、半田孔51の溶融領域510と鏝先5eのZ方向下端との間に半田孔51と鏝先5eの外周面とを連通するように形成された切欠き形状であってもよい。また、上述の貫通孔、スリット以外にも、ガスリリース部52として、鏝先接触状態及び半田片流出状態のときに半田孔51の窒素ガスを鏝先5eの外部に流出させることができる形状を広く採用することができる。
このような半田付け装置Gを用いたときの、制御部Contによる鏝先の状態の判定について、図面を参照して説明する。図34は、鏝先接触状態における鏝先5e及びガス供給部7cを示す図である。図35は、半田片投入状態における鏝先5e及びガス供給部7cを示す図である。図36は、半田片溶融状態における鏝先5e及びガス供給部7cを示す図である。図37は、半田片流出状態における鏝先5e及びガス供給部7cを示す図である。
半田付け装置Gにおいて、1回の半田付けにおける鏝先の取り得る状態は、第5実施形態と同じ、つまり、初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態である。そして、初期状態、鏝先離間状態に関しては、第5実施形態の半田付け装置Fと実質的に同じである。なお、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片流出状態、の各状態において、分岐配管702を流れる窒素ガスの流量は、第5実施形態のときよりも少なくなる。そのため、分岐流量Q2を分岐流量Q22として説明する。例えば、鏝先接触状態のとき、分岐配管702を流れる窒素ガスの流量を分岐流量Q22bとする。各状態でも同様に、半田片投入状態及び半田片流出状態のそれぞれの分岐流量を、分岐流量Q22c、Q22eとする。
第6実施形態と第5実施形態との相違点は、半田片溶融状態及び半田片流出状態のそれぞれの分岐流量Q2d及びQ22eの変化にある。半田片溶融状態(図36)では第5実施形態と同様に溶融した半田片Whによって半田孔51が塞がれるため、分岐流量Q2dは第5実施形態のときと同等の大きさとなる。次の工程の半田片流出状態(図37)ではスルーホールThを塞ぐ一方でガスリリース部52より窒素ガスが流出するので、供給配管703の流量Q3eが増加し、分岐配管702の流量Q22eが減少する。第5実施形態では半田溶融状態から半田片流出状態への状態変化時の分岐流量の変化が小さい(或いはほとんどない)のに対し第6実施形態では前述の状態変化時の流量変化が大きくなり、状態変化の判定を容易に行うことができる。
また、鏝先接触状態のときスルーホールThとガスリリース部52とから窒素ガスが流れるため、第5実施形態と比較して分岐配管702の流量Q22bは小さくなる。そして、半田溶融状態のとき半田孔51が塞がれるため、第5実施形態と同一の分岐流量Q2dになる。このため、鏝先接触状態での分岐流量Q22bと半田溶融状態での分岐流量Q2dとの差が、第5実施形態の(b)鏝先接触状態での分岐流量Q2bと(d)半田溶融状態での分岐流量Q2dとの差よりも大きい。これにより、半田片投入状態と半田片溶融状態の判別を容易に行うことができる。
なお、ガスリリース部52の大きさを変更することにより鏝先接触状態と半田片流出状態におけるそれぞれの分岐流量Q22bとQ2eの流量値を変更することができる。また、ガスリリース部52を設けることにより、溶融した半田がスルーホールTh内に流入した後、半田孔51内の圧力が低下するので、スルーホールTh内の溶融半田を押し出すことを防止できる。
そして、各状態での分岐流量Q2は、図38に示すグラフに示すとおりになる。図38は、半田付け装置が半田付けを1回行うときの分岐流量の変化を示している。図38では、縦軸が分岐流量Q2、横軸が時間である。なお、以下の説明では、図31と異なる挙動を示す部分についてのみ説明するものとする。
図38に示すように、ガスリリース部52を備えた鏝先5eを用いることで、半田孔溶融状態を示す第4領域Ar4(分岐流量Q2d)の後に、分岐流量Q22eの半田片流出状態を示す第5領域Ar5が現れる。
このように、鏝先5eにガスリリース部52を設けることで、半田孔溶融状態における分岐配管702での窒素ガスの流量である分岐流量Q2dと、半田片流出状態おける分岐配管702での窒素ガスの流量である分岐流量Q22eとを異なる値とすることができる。これにより、制御部Contは、半田片流出状態、すなわち、電子部品Epの端子NdとランドLdとを半田付けが完了したことをより正確に検知することができる。
なお、本実施形態においても、制御部Contは、各状態における分岐流量をデータベースとして記憶して、第2測定部74からの分岐流量のデータと比較することで鏝先の状態を判定してもよい。また、図38に示すような、分岐流量の時間変化を示すテーブルを記憶しておき、第2測定部74からの分岐流量のデータを時系列に並べて、挙動及び値を比較することで、鏝先の状態を判定してもよい。
また本実施形態においても、鏝先5eの以上のような状態の変化の外、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付け状態を判定することも可能であり、制御部Contが半田の溶融が行われたと判定した後、鏝先5eとランドLdとの接触位置から距離GだけランドLdから鏝先5eを離間させ、分岐配管702に流れる分岐流量Q2の変化によって半田付け状態を判定するようにしてもよい。
さらに本実施形態においても、半田付けの工程が正常に行われているかの判定、鏝先に異物の付着や混入の判定、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付け状態を判定については、半田孔51内の圧力P1に換えて分岐配管702の分岐流量Q2を指標とすること以外は実施形態1の判定方法と同様にして行うことができる。
そしてまた本実施形態においても、制御部Contは、第1実施形態の「第1変形例」と同様の操作が可能である。また、第1実施形態の「第2変形例」に示すような、半田片停止部を備えた鏝先を用いることで、第1実施形態の「第2変形例」と同様の操作が可能である。
(第7実施形態)
以上説明した第1実施形態から第6実施形態の半田付け装置では、ガス供給部内を流れるガスの総流量を一定としてガス供給部内を流れるガスの流量や圧力などの物理量を測定して鏝先の状態を判定していたが、本実施形態以降の実施形態の半田付け装置では、ガス供給部内を流れるガスの供給圧力を一定としてガス供給部内を流れるガスの物理量を測定して鏝先の状態を判定する。図39は、本発明に係る半田付け装置Hの鏝先及びガス供給部を示す図である。
ガス供給部7eは、半田付け装置Hの外部に設けられたガス供給源GS1から供給されるガスを半田付け装置Hに供給する。ガスとして、上述した、不活性ガスを用いることで半田の酸化を防止することが可能である。図39に示すように、ガス供給部7eは、配管70と、第1調整部76と、ガスの流量や圧力を計測して電気信号を出力する計測部としての第1計測部77と、第2計測部78とを有する。なお、図39では、便宜上、配管70を線図で示しているが、実際にはガスである窒素ガスが漏れない管体(例えば、銅管や樹脂管)である。
配管70はガス供給源GS1とを接続し、ガス供給源GS1からの窒素ガスをガス流入孔222に流入させる配管である。配管70は、主配管704と、流入配管705とを有する。主配管704は、ガス供給源GS1から窒素ガスが流入する配管であり、流入配管705は、主配管704とガス流入孔222とを連通している。すなわち、主配管704を流れた窒素ガスは、流入配管705を通って、ガス流入孔222に流入する。
半田付け装置Hにおいて、ガス流入孔222は、下刃孔221、半田供給孔422及び半田孔51に連通しており、半田孔51は、外部に開口しているが、半田付け装置Hを作動させた場合、溶融した半田で半田孔51がせき止められる場合がある。
第1調整部76は、主配管704に設けられている。第1調整部76は、圧力制御弁を含む構成であり、主配管704を流れる窒素ガスの圧力を調整している。第1調整部76は、ガス供給源GS1からガス供給部7eに供給される窒素ガスの圧力を調整している。第2計測部78は主配管76を流れる窒素ガスの流量を計測する流量計である。
第1計測部77は、主配管704の第1調整部76の下流に配されて、主配管704を流れる窒素ガスの圧力を計測する。すなわち、第1計測部77は、第1調整部76から吐出される窒素ガスの圧力を計測している。そして、第1計測部77は、計測した窒素ガスの圧力が予め決められた圧力となるように、第1調整部76を制御する制御信号を送信している。すなわち、ガス供給部7eは、第1調整部76と第1計測部77を用いて、フィードバック制御を行っており、ガス供給源GS1から供給される窒素ガスの圧力を一定に制御している。なお、第1計測部77の計測結果に基づいて、作業者が手動で第1調整部76を操作して窒素ガスの圧力を調整してもよい。また、何らかの異常により計測した圧力又は流量が予め決めた基準値と異なる又は予め設定した範囲から外れる場合には、状態判定部Contは、異常が発生している旨の警報及び(又は)半田付け装置の運転の停止を行ってもよい。状態判定部Contは、判定した鏝先の状態に基づいて、半田付け装置Hの制御を行ってもよい。半田付け装置Hの制御としては、例えば、半田付け装置Hの基板Bdへの接近離間、糸半田Wの切断、鏝先5dの加熱等を含む。
次に、圧力Pを一定で主配管704の流量に基づいて鏝先の状態を判定する判定方法について説明する。なお、ガス供給部7eにおいて、ガス流入孔222に流入した窒素ガスは、すべて、鏝先5dの半田孔51に流入するものとする。例えば、ガス流入孔222は、下刃孔221と連通しており、下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向上下に貫通している。窒素ガスが供給されている状態において、窒素ガスは、下刃案221のZ方向上端から抜けないように、密閉されるものとする。ただし、ガス流入孔222に流入した窒素ガスが、鏝先5dの半田孔51以外に分流しても同様の作用を行わせることが可能である。
なお、主配管704を流れる窒素ガスは、ガス供給源GS1からのガスを第1調整部76で調整することで圧力が調整される。主配管704を流れる窒素ガスの流量は、ガス供給部7eに供給される窒素ガスの流量でもある。すなわち、ガス供給部7eに流れる窒素ガスの流量はQ1である。
第1調整部76に備えられている圧力制御弁は、配管内部の圧力にかかわらず、窒素ガスを設定した圧力で流し続ける。すなわち、ガス供給部7eは、圧力Pを一定とする圧力制御が行われている。
半田付け装置Hにおいて、例えば、半田片Whが半田孔51に供給された場合、半田孔51の軸と直交する断面の一部を半田片Whが占める。そのため、半田孔51の窒素ガスが流れる部分の流路面積が小さくなり、窒素ガスが流れにくくなる、すなわち、流路抵抗が大きくなる。そして、半田孔51の流路抵抗が大きくなると、流量Q1が減少する。つまり、鏝先5dの状態が変化することで、流量Q1は変動する。制御部Contは、流量Q1、或いは、流量Q1の変化に基づいて、鏝先5dの状態を判定する。例えば、状態判定部Contは、流量Q1の変化とその変化の原因とを関連付けた情報を予め記憶している。状態判定部Contは、算出した流量Q1の変化に基づいて、その原因、すなわち、鏝先5dの状況を判定する。
圧力Pを一定に制御しているため、流量Q1は下流の流体抵抗の増減に伴って変化する。制御部Contは、流量Q1に基づいて、鏝先5dの状態を判定している。例えば、半田孔51内の流体抵抗が増加すれば、主配管704の圧力P1が略一定であるので、流量Q2が減少する。
以下に、鏝先5dの各状態における流量Q1について、図面を参照して説明する。図40~図45は、半田付け装置Hの動作又は鏝先5dの状態を示す図である。また、図46は、半田付け装置で半田付け作業を1回行うときの流量Q1の変化を示す図である。図47は、図46において円で囲った部分、すなわち鏝先5dが基板BdのランドLdに接触する前後の主配管704の流量Q1の経時変化の拡大図である。本実施形態では、基板Bdがスルーホール基板であり、スルーホールThに挿入された端子Ndを半田付けするものとして説明する。
本実施形態では、鏝先の状態として、初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の6個の状態を挙げて説明する。半田付け装置Hでは、1回の半田付け時に上記の各状態に順に変化する。
(a)初期状態
図40は初期状態における半田付け装置の鏝先の周囲及びガス供給部を示す図である。図40に示すように、半田付け装置Hでは、半田付けを行う前段階(例えば、鏝先5dをプレヒートする、半田付けを行う基板Bdを変更する等)において、鏝先5dは、基板Bdから離している。本実施形態では、鏝先5dが基板Bdから離れている状態を初期状態とする。すなわち、半田孔51は、Z方向下端の開口が大気に開放されている。また、本実施形態では、半田付け装置Hが初期状態のときに、ヒーターユニット4を駆動して鏝先5dを加熱する。初期状態において、ガス供給源GSから窒素ガスの供給が開始されると、ガス供給部7eに窒素ガスが供給される。上述のとおりガス供給部7eは、第1調整部76で窒素ガスを圧力Pに調整している。
図40に示すように、半田付け装置Hが初期状態において、鏝先5dの半田孔51の下端部は、外部に開口している。半田孔51の流路抵抗は低い。一方、そのため、主配管704を流れる窒素ガスの流量Q1は多い。制御部Contは、第2計測部78からの流量を取得しており、初期状態において、流量Q1aが流れる。
(b)鏝先接触状態
図41は、鏝先接触状態における半田付け装置の鏝先の周囲及びガス供給部を示す図である。半田付け装置Hでは、初期状態の後に半田付けを行うため、鏝先5dを基板BdのランドLdに接触させる。半田付け装置Hでは、鏝先5dをランドLdに接触させることで、ランドLdを半田付けに適切な温度に昇温させる(プレヒート)。
そして、鏝先5dをランドLdに接触させることで、鏝先5dの半田孔51がランドLdによって塞がれる。基板BdはスルーホールThに貫通させた端子Ndを半田付けするものであり、図41に示すように、電子部品の端子NdのZ方向の上端部が半田孔51に挿入される。また、半田孔51を通過した窒素ガスは、端子Ndが挿入されたスルーホールThから外部に流出する。
端子Ndが挿入されたスルーホールThの窒素ガスが抜ける部分が窒素ガスの流路であり、その流路面積は、半田孔51の軸と直交する面で切断した断面積よりも小さい。鏝先接触状態のとき、半田孔51の先端側に流路抵抗が形成される、すなわち、主配管704の流路抵抗が、初期状態よりも大きくなる。これにより、供給流量Q1bは初期状態のときよりも少なくなる。
図47に示すように、本実施形態では、第2計測部78によって取得される主配管704の流量Q1が、設定された基準流量Qstに達すると、制御部Contは鏝先5dの下端とランドLdとの間に所定間隔の隙間が形成されたと判定しこの位置を基準位置として記憶する。そして、移動手段はこの基準位置を基準として鏝先5dを移動させる。これにより、第1実施形態と同様に、基板Bdが上方向あるいは下方向に反っていた場合であっても、鏝先5dの下端と基板BdのランドLdとの間隔を精度よく制御することができ、鏝先5dの状態や半田付けの状態の判定がより確実に行えるようになる。
なお、第2計測部78によって取得された主配管704の流量Q1がQ1bで、制御部Contが鏝先5dの下端とランドLdとが接触したと判定した位置を、移動手段による鏝先5dの移動の基準位置としても構わない。ただし、図47に示すように、鏝先5dとランドLdとが接触する直前付近は鏝先5dとランドLdとの距離変化に対する流量Q1の傾きが緩やかになる。換言すると、主配管704内の流量Q1の変化に対する鏝先5dとランドLdとの距離の変化が大きくなる。このため鏝先5dとランドLdとの距離を精度よく判定するには流量測定に高い精度が求められる。一方、図47において鏝先5dとランドLdとが接触する前の所定間隔を有している間では、鏝先5dとランドLdとの距離変化に対する流量Q1の傾きが急峻であるので、それほど流量測定が高い精度でなくても実使用上問題のない程度に鏝先5dとランドLdとの距離判定が可能となる。したがって、このような範囲に基準位置に対応する分岐流量Qstを設定することが推奨される。
前述のように、鏝先5dの下端とランドLdとの間に所定間隔の隙間が形成され、主配管704内の流量Q1がQstとなった鏝先5dの位置を基準位置として移動手段は鏝先5dをさらに下方に移動させて鏝先5dを基板BdのランドLdに接触させる。このとき、鏝先5dの基準位置からの移動距離は基準位置とランドLdとの距離であればよいが、ランドLdを半田付けに適切な温度に昇温させるプレヒートをより効率的に行うためには、鏝先5dとランドLdとの接触位置からさらに鏝先5dをランドLdの方向に所定距離移動させてもよい。
(c)半田片投入状態
図42は、半田片投入状態における半田付け装置Hの鏝先5dの周囲及びガス供給部を示す図である。半田付け装置Hでは、鏝先5dをランドLdに接触させて、プレヒートを行い、ランドLdを適切な温度に昇温した後に、半田片Whを半田孔51に投入する。なお、ランドLdのプレヒートの制御は、温度センサーでランドLdの温度を直接検出し、その温度で制御してもよいし、鏝先5dとランドLdの接触時間で制御してもよい。
そして、プレヒートが終了したタイミングで、半田片Whを半田孔51に投入する。なお、半田片Whはカッター上刃21とカッター下刃22で糸半田Wを切断して形成する(図39参照)。自重又はプッシャーピン23で押されることで、半田片Whは落下し、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に投入される。半田片Whは、半田孔51に挿入されている端子Ndに接触して、半田孔51の内部で停止する。このように、半田片Whが半田孔51の途中で停止することで、半田孔51の窒素ガスが通過する流路面積は、小さくなる。これにより、半田片投入状態のときには、鏝先接触状態のときに比べて、主配管704の流路抵抗が大きくなる。半田片投入状態のときの流量Q1cは、鏝先接触状態に比べて少なくなる。
なお、半田片Whの直径や長さあるいはその形状によって流量Q1cの値は異なるので、半田片Whに応じて流量Q1cの判定基準を変更しても良い。
(d)半田片溶融状態
図43は、半田片溶融状態における半田付け装置の鏝先の周囲及びガス供給部を示す図である。半田付け装置Hでは、鏝先5dはヒーターユニット4によって加熱されており、半田孔51に投入された半田片Whは、鏝先5dによって加熱され溶融される。溶融した半田片Whは粘度の高い液体である。そして、半田孔51は、溶融した半田片によって塞がれる。これにより、半田孔51から窒素ガスが外部に漏れない又は漏れにくくなる。すなわち、半田片Whが溶融することで、主配管704の窒素ガスの流量、つまり、供給流量Q1dは半田片投入状態に比べて少なくなる。
(e)半田片流出状態
図44は、半田片流出状態における半田付け装置の鏝先の周囲及びガス供給部を示す図である。溶融した半田片Whが流出すると、溶融した半田片WhはスルーホールThを塞ぐ。そして、鏝先5dは、ランドLdと接触している。これにより、半田孔51に流入した窒素ガスは、半田孔51から外部に漏れない又は漏れにくい。すなわち、半田片流出状態では、主配管704の窒素ガスの流量、すなわち、流量Q1eは、半田片溶融状態と同程度に少ない。なお、鏝先5dは、常にヒーターユニット4によって加熱されているため、溶融した半田片Whは、すべて鏝先5dの外部、すなわち、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとに流出する。
(f)鏝先離間状態
図45は、鏝先離間状態における半田付け装置の鏝先の周囲及びガス供給部を示す図である。半田付け装置Hでは、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付けが終了すると、鏝先5dをランドLdから離間させる。半田片流出状態において、溶融した半田片Whは全量又は略全量が半田孔51の外部に流出している。そのため、半田孔51は、半田付け前の状態、すなわち、初期状態と同じ状態に戻る。鏝先5dをランドLdから離間させたとき、主配管704に流量Q1fが流れているとすると、流量Q1fは、流量Q1aと同じか略同じである。
上述のとおり、流量Q1a(Q1f)~Q1d(Q1e)は、各状態によって異なる値になる。制御部Contは、予め流量Q1a(Q1f)~Q1d(Q1e)の基準となる値をデータベースとして記憶しておき、第2測定部78から取得した流量Q1のデータと比較することで、現在の鏝先5dの状態を判定することができる。
また、半田片溶融状態の流量Q1dと半田片流出状態の流量Q1eとがほぼ同じであることから、流量Q1から状態の判定が困難な場合もある。そこで、制御部Contは、流量Q1の時間変化も考慮して、鏝先5dの状態を検出してもよい。例えば、第2計測部78が流量Q1dを検出してから所定時間経過したことによって、制御部Contは、鏝先5dが半田片溶融状態から半田片流出状態に変化したと判断してもよい。
半田付け装置Hでは、鏝先の状態が初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の順に変化する。そして、各状態での流量Q1は、図46に示すグラフに示すとおりになる。図46は、半田付け装置Hが半田付けを1回行うときの流量Q1の変化を示しており、縦軸が流量Q1、横軸が時間である。なお、図46に示す流量値Q1a、Q1b、Q1c、Q1d、Q1e及びQ1fは、上記の各状態ときの流量値である。
図46に示すように、第1領域Ar1は、鏝先5dが初期状態のときである。第1領域Ar1において、流量Q1aとなっている。図46における、第2領域Ar2は、鏝先5dが鏝先接触状態である。鏝先5dが初期状態から鏝先接触状態に変わると流量Q1aが流量Q1bに変化する。流量Q1は、鏝先5dのランドLdへの接触によって変化するため流量Q1aから流量Q1bには、急激に変化する。すなわち、図46において、第1領域Ar1から第2領域Ar2への変化は急峻である。
また、図46における、第3領域Ar3は、鏝先5dが半田片投入状態である。半田孔51に半田片Whが投入されると流量Q1bが流量Q1cに変化する。半田孔51への半田片Whの投入よって流路面積が急に変化するため、流量Q1bから流量Q1cへは急激に変化する。すなわち、図46において、第2領域Ar2から第3領域Ar3への変化は急峻である。
図46における、第4領域Ar4は、鏝先5dが半田片溶融状態のときである。半田孔51に半田片Whが溶融されると、流量Q1cが流量Q1dに変化する。半田孔51における半田片Whの溶融によって流路面積が変化する。半田片の溶融は、まず、フラックスが溶融した後に、半田が溶融する。フラックスはゆっくり溶融し、半田は急激に溶融する。流量Q1cから流量Q1dへは、最初ゆっくり変化し、一定の変化ののち急激に変化する。すなわち、図46において、第3領域Ar3から第4領域Ar4への変化は最初ゆっくりで、その後急激に変化する。
また、上述のとおり、半田片溶融状態の流量Q1dと、半田片流出状態の流量Q1eとは、同じまたはほぼ同じである。そのため、一定時間、流量Q1dから変化しない。
以上のとおり、鏝先5dの主配管704の窒素ガスの流量である流量Q1は、その値だけでなく、状態が変化するときの流量Q1の変化の割合(急激に変化する又はゆっくり変化する)にも特徴を有する。
半田付けの工程が正常に行われているかの判定は、次のように行われる。まず、予め半田付け状態における流量の基準値の範囲を設定する。そして、各半田付け状態における基準値の範囲と計測された流量との比較によって判定を行う。例えば、半田投入状態における判定について説明する。まず、半田投入状態であるAr3の時間帯において基準値の上限値Qx1、下限値Qy1を設定する。上限値Qx1、下限値Qy1は、それぞれ、Qx1=Q2c+x1及びQy1=Q2c-y1(x1、y1は正の数)で表される値である。そして、半田付け工程においてAr3の時間帯に計測された流量Q1が上限値Qx1から下限値Qy1の間の範囲から逸脱したとき、制御部Contは、半田付け工程に異常があったとして警報あるいは運転の停止を行ってもよい。なお、x1、y1の一方が0であってもよい。
また、前述のx1やy1よりも小さな値であるx2やy2を用いて、第2上限値Qx2=Q2c+x2及び第2下限値y2=Q2c-y2を設定し、Ar3の時間帯に計測された流量Q1が第2上限値Qx2から第2下限値Qy2の範囲外に逸脱した場合に、制御部Contは、作業者に注意を報知することもできる。なお、x2、y2の一方が0であってもよい。以上の説明では、第1上限値及び下限値を用いて警報或いは運転の停止を行う1段階のもの又は第2上限値及び下限値をさらに用いて注意、基準値を用いて警報或いは運転の停止を行う2段階のものを挙げているが、これらは一例であり、さらに多くの基準値を用いて、注意或いは警報を2段階以上で行ってもよい。また、半田投入状態以外の状態のときにも同様に基準値の範囲が設けられており、基準値の範囲と測定された流量とを比較することで、半田付けの工程が正常に行われているか判定する。
また、時間と流量に関係なく、半田が溶融もしくは流出すれば流量Q1は最大値まで増加する。制御部Contは、流量のピーク値(ここでは、流量Q1d)付近の値を検出したときに、半田の溶融が行われたと判定することもできる。
さらに、鏝先の以上のような状態の変化の外、鏝先に異物の付着や混入など何らかの異常が発生したことも判定することが可能である。例えば、第2計測部78から制御部Contに対して送られる流量Q1が、流量Q1aから流量Q1bにゆっくり変化したとする。図46に示すように、通常では、初期状態から鏝先接触状態へは、流量Q1は急激に変化する。そうすると、通常とは異なって現在の流量Q1がゆっくり変化しているため、鏝先が初期状態から鏝先接触状態に変化しているのではなく、異物の付着や混入等など何らかの異常が発生していると判定することが可能となる。なお、半田付け装置が何らかの異常と判定した場合には、制御部Contは、異常があった旨の警報及び(又は)運転の停止を行ってもよい。
このような異常判定を行うためには、制御部Contは、予め、図46に示すような、半田付け1回における流量の時間変化を示すテーブルを記憶しておき、第2測定部78からの流量のデータを時系列に並べて、挙動及び値を比較することで鏝先の状態を判定するようにする。また所定回数毎に流量データを記憶しておき、経時的な変化を判定することも可能である。このような判定方法を用いることで、鏝先の状態をより正確に判定することができる。
なお、制御部Contは、第1計測部77が計測した主配管704を流れる窒素ガスの圧力を取得してもよい。そして、制御部Contは、計測圧力が予め決められた圧力と異なる場合において、その差が一定範囲内の場合には、各状態を判定するときの流量(ここでは、Q1a、Q1b、Q1c、Q1d等)を圧力に基づいて補正し、その補正値を用いて各状態の判定を行ってもよい。さらには、計測圧力と予め想定している圧力との差が、一定範囲を超える場合には、制御部Contは、状態の判定を中止するとともに、異常が発生している旨の警報及び(又は)運転の停止を行ってもよい。
また本実施形態においても、鏝先の以上のような状態の変化の外、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付け状態を判定することも可能であり、制御部Contが半田の溶融が行われたと判定した後、移動手段は基準位置を基準として鏝先5dを上方に移動させて、鏝先5dの下端とランドLdとの間が距離Gとなるよう離間させ、主配管704の窒素ガスの流量Q1の変化によって半田付け状態を判定するようにしてもよい。すなわち、鏝先5dをランドLdから距離Gだけ離間させたときに、主配管704を流れる流量Q1が大きく増加すれば正常な半田付け状態と判定し、流量Q1が増加しないか、増加が僅かであればイモ半田が形成されていると判定する。
(第1変形例)
上述した実施形態では、半田片Whの太さ及び長さが一定である場合で説明している。しかしながら、糸半田Wの送りには、ばらつきが生じる場合がある。また、半田付けを行う面積が大きい等によって、半田片Whの形、大きさを意図的に変更する場合もある。このような場合、制御部Contは、鏝先接触状態の流量Q1bから流量Q1が変動したときの変動の大きさ、変動の挙動に基づいて、投入された半田片Whの形状、大きさ等を判定してもよい。なお、異なる大きさ、形状の半田片を投入する可能性がある場合、制御部Contは、各大きさ、形状の半田片Whごとに、各状態における流量の基準値及び(又は)その時間変化を示すテーブルをデータベースとして備えていることが好ましい。
(第2変形例)
上述の実施形態では、鏝先5dが半田を溶融できる高温の状態にある場合で説明している。しかしながら、ヒーター41の故障等によって鏝先5dが半田を溶融するために設定された正常温度範囲内から外れる場合もあり得る。鏝先5dを通過する窒素ガスは、鏝先5dの温度によって、膨張する程度や粘度が異なるため、流路抵抗も増減し、その結果、窒素ガスの流量も変化する。例えば、鏝先5dの温度が低下すると窒素ガスの体積は減少し、粘度も低くなるので半田孔51における窒素ガスの流量は増加する。このことを利用して、制御部Contは、半田孔51を大気に開放している状態、すなわち、鏝先5dが初期状態のときの流量Q1aを記憶しておき、記憶している流量Q1aと計測した流量Q1とに基づいて、鏝先5dの温度を判定することが可能である。
また、供給されるガスの種類が、窒素と空気或いは酸素との混合ガスのように変化した場合も、流路抵抗が変化するため、流量Q1に差異が生じる。このことを利用して、制御部Contは、半田孔51を大気に開放している状態、すなわち、鏝先5dが初期状態のときの流量Q1aを記憶しておき、記憶している流量Q1aと計測した流量Q1とに基づいて、供給されているガスが窒素ガス(供給されるべきガス)であるか否か判定できる。これにより、制御部Contは、例えば、ガス配管接続の誤りを検出することが可能である。
第1変形例、第2変形例の動作は、例えば、一定の周期ごとに行うものとすることができる。一定の周期とは、例えば、時間で管理してもよいし、半田付け回数で管理してもよい。また、半田付け装置Hの電源投入直後及び工程終了時に行うようにしてもよい。また、ランダムなタイミングで行うようにしてもよい。
次に制御動作について説明する。図48と図49は半田付け装置Hが半田付けを1回行うときのフローチャートを示すものである。以下、図面に基づいて説明する。S1でガス供給源GS1から主配管704に窒素ガスの供給を開始し、S2でこのときの圧力を第1計測部77で圧力を計測し、設定圧力とを比較しS3で圧力値を比較し、正常値になるまで第1調整部76によりS4で圧力の調整を行う。
圧力が正常に達すると、S5で第2計測部78により流量計測を行う。この流量と設定値とをS6で比較する。このときの流量値Q1が、設定値と所定以上異なっている場合には、半田孔51の形状や大きさが異なっていることを判断する。この場合、鏝先5dの部品が間違っていたり、取付が誤っていたり、あるいは付着物によって半田孔51内部の形状が変化している場合が考えられるので、鏝形状異常としてS7で運転の停止や警報等の報知を行う。
鏝形状が正常と判断されれば、S8で供給している気体の種類を判断する。半田付けにおいて不活性ガスとして主として使用する窒素ガスは、空気を窒素と酸素とに分離して製造することができ、半田付け工程に応じて供給するガスを変更することが行われる。例えば、高圧の気体で異物を除去する場合には高圧空気を使用し、半田鏝の付着物を焼却する場合には酸素ガスを使用するので、配管を誤って接続することがある。供給される気体の種類によって圧力損失が異なるので、供給圧力が一定であれば気体によって流量値が異なり、この流量値によってS8で、窒素ガスが接続されているかを判断することができ、S9で供給気体の異常であることを判定する。同様に空気あるいは酸素ガスであることも判断できる。
次に、S10で鏝先5dをヒーター41で加熱を開始し、ヒーター温度を温度検出器(図示せず)で計測し、その値をS11で設定値と比較し、所定温度に達した段階で、S12で第2計測部78により流量計測を行う。このときの流量値Q1aは気体温度が上昇しその温度に伴って体積が膨張しているので、流量値Q1aより窒素ガスの温度を算出することができ、S13で鏝温度を算出する。そしてS14で鏝温度の算出値が適切な範囲内になければ、鏝温度異常と判定する。ヒーター温度が正常であるのに鏝温度が異常な場合として、鏝先5dへの熱伝達が十分行われていないことが考えられ、S15で鏝温度異常と判定する。
次に、S16で鏝先5dが下方向(Z方向)に移動し、配線基板Bdに接触して予熱を行い、この状態でS17で流量計測を行い、その流量値Q1が設定値Q1b(図46参照)の近似範囲内であるか否かをS18で判定し、流量値Q1が設定値Q1bと近似範囲外であるとき、鏝先5dが回路基板Bdに接触していないと判断して、S19で鏝移動異常と判定する。
S18の判定が正常であれば、S20で切断された半田片Whを供給し、そのときの流量計測をS21で行い、そのときの流量値Q1が設定された流量値Q1c(図46参照)の近似範囲内であるか否かをS22で判断して、流量値Q1が設定値1cの近似範囲外であるとき、半田片Whが供給されていないと判断し、S23で半田片供給異常と判断する。
S22の判定が正常であれば、S24の時間遅延後にS25(図49)で流量計測を行い、そのときの流量値Q1が設定された流量値Q1d(図46参照)の近似範囲内であるか否かをS26で判断して、流量値Q1が設定値Q1dの近似範囲外であるとき、半田片Whが溶融されていないと判断し、S27で半田片溶融異常と判断する。
S26の判定が正常であれば、S28の時間遅延を設け、溶融した半田片Whが完全に溶融しスルーホールTh内に流出した後に、S33で鏝先5dを上方向(Z方向)に移動させて回路基板Bdから離脱させ、S34で流量計測を行う。フローチャートFA内のS29~S32の動作については後述する。そのときの流量値Q1が設定された流量値Q1f(図46参照)の近似範囲内であるか否かをS35で判断して、流量値Q1が設定値1fの近似範囲外であるとき、鏝先5dが回路基板Bdから離脱されていない、あるいは半田片Whが半田孔51内に残留していると判断し、S36で鏝離脱異常または半田片残留異常と判断する。
S35の判定が正常であれば、S37で半田付け正常と判断する。そしてS38で第1計測部77で圧力を計測し、S39で設定圧力とを初期の圧力計測値Q1aとを比較し、初期値の近似範囲外であれば、S40の圧力変動異常として判断し、前記の計測値Q1a~Q1dを破棄し、さらに判断結果も破棄する。また、各ステップでの流量値を保存しておき、半田完了時にまとめてS6、S8、S11、S14、S18、S22等の全部又は一部の判定を行ってもよい。このときS38の初期値の範囲外であるとき、その圧力値でQ1a~Q1dの値を補正しても良い。
(第8実施形態)
本実施形態に係る半田付け装置の他の例について図面を参照して説明する。図50は、本発明に係る半田付け装置の他の例の鏝先及びガス供給部を示す図である。なお、図50に示す半田付け装置Iでは、鏝先5eに半田孔51と外周面とを貫通するガスリリース部52を備えている。それ以外は、第7実施形態の半田付け装置Hと同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
図51に示すように、半田付けを行うとき、鏝先5eの半田孔51には、電子部品Epの端子Ndが挿入される。そして、カッターユニット2(図39参照)で糸半田Wから切断された半田片Whは、図52に示すように端子Ndと接触した状態で、鏝先5eに加熱されて溶融する。このとき、半田孔51の半田片Whが溶融する部分を溶融領域510とすると、ガスリリース部52は、半田孔51の溶融領域510と鏝先5eのZ方向下端との間の部分と外周面とを連通している。
なお、本実施形態において、ガスリリース部52は、鏝先5eの外周面と半田孔51とを連通する貫通孔形状のものとしているが、これに限定されるものではない。例えば、半田孔51の溶融領域510と鏝先5eのZ方向下端との間に半田孔51と鏝先5eの外周面とを連通するように形成された切欠き形状であってもよい。また、上述の貫通孔、スリット以外にも、ガスリリース部52として、鏝先接触状態及び半田片流出状態のときに半田孔51の窒素ガスを鏝先5eの外部に流出させることができる形状を広く採用することができる。
このような半田付け装置Iを用いたときの、制御部Contによる鏝先5eの状態の判定について、図面を参照して説明する。
半田付け装置Iにおいて、1回の半田付けにおける鏝先5eの取り得る状態は、第7実施形態と同じ、つまり、図50に示す初期状態、図51に示す鏝先接触状態、図52に示す半田片投入状態、図53に示す半田片溶融状態、図54に示す半田片流出状態と図55に示す鏝先離間状態である。そして、初期状態、鏝先離間状態に関しては、第7実施形態の半田付け装置Hと実質的に同じである。なお、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片流出状態の各状態において、主配管704を流れる窒素ガスの流量は、第7実施形態のときよりも少なくなる。そのため、主配管704の流量を流量Q2として説明する。例えば、鏝先接触状態のとき、主配管704を流れる窒素ガスの流量を流量Q2bとする。各状態でも同様に、半田片投入状態及び半田片流出状態のそれぞれの流量を、流量Q2c、Q2eとする。
第8実施形態と第7実施形態との主な相違点は、半田片溶融状態及び半田片流出状態のそれぞれの流量Q1d及びQ2eの変化にある。半田片溶融状態(図53)では第7実施形態と同様に溶融した半田片Whによって半田孔51が塞がれるため、流量Q1dは第7実施形態のときと同等の大きさとなる。次の工程の半田片流出状態(図54)ではスルーホールThを塞ぐ一方でガスリリース部52より窒素ガスが流出するので、主配管704の流量Q2eが減少する。第7実施形態では半田溶融状態から半田片流出状態への状態変化時の流量の変化が小さい(或いはほとんどない)のに対し第8実施形態では前述の状態変化時の流量変化が大きくなり、状態変化の判定を容易に行うことができる。
また、鏝先接触状態のときスルーホールThとガスリリース部52とから窒素ガスが流れるため、第7実施形態と比較して主配管704の流量Q2bは小さくなる。そして、半田溶融状態のとき半田孔51が塞がれるため、第7実施形態と同一の流量Q1dになる。このため、鏝先接触状態での流量Q2bと半田溶融状態での流量Q1dとの差が、第7実施形態の鏝先接触状態での流量Q1bと半田溶融状態での流量Q1dとの差よりも大きい。これにより、半田片投入状態と半田片溶融状態の判別を容易に行うことができる。
なお、ガスリリース部52の大きさを変更することにより鏝先接触状態と半田片流出状態におけるそれぞれの流量Q2bとQ2eの流量値を変更することができる。また、ガスリリース部52を設けることにより、溶融した半田がスルーホールTh内に流入した後、半田孔51内の圧力が低下するので、スルーホールTh内の溶融半田を押し出すことを防止できる。
そして、各状態での流量Q2は、図56に示すグラフに示すとおりになる。図56は、半田付け装置が半田付けを1回行うときの流量の変化を示しており、縦軸が流量Q2、横軸が時間である。なお、以下の説明では、図46と異なる挙動を示す部分についてのみ説明するものとする。
ガスリリース部52を備えた鏝先5eを用いることで、半田孔溶融状態を示す第4領域Ar4(流量Q2d)の後に、流量Q2eの半田片流出状態を示す第5領域Ar5が現れる。
このように、鏝先5eにガスリリース部52を設けることで、半田孔溶融状態における主配管704での窒素ガスの流量である流量Q1dと、半田片流出状態おける流量Q2eとを異なる値とすることができる。これにより、制御部Contは、半田片流出状態、すなわち、電子部品Epの端子NdとランドLdとを半田付けが完了したことをより正確に検知することができる。
図49のフローチャートのブロックFA内に半田片流出状態のフローを示す。S29で流量計測を行い、S30でその流量値をQ2eと比較し、Q2eの近似範囲外のときS31で基板への半田流出異常とし、範囲内であればS32で時間の遅延を行って半田が凝固後S33で鏝先5eを基板Bdから離脱させる。
なお、本実施形態においても、制御部Contは、各状態における流量をデータベースとして記憶して、第2測定部78からの流量のデータと比較することで鏝先の状態を判定してもよい。また、図56に示すような、流量の時間変化を示すテーブルを記憶しておき、第2測定部78からの流量のデータを時系列に並べて、挙動及び値を比較することで、鏝先5eの状態を判定してもよい。
また本実施形態においても、鏝先の以上のような状態の変化の外、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付け状態を判定することも可能であり、制御部Contが半田の溶融が行われたと判定した後、移動手段が基準位置を基準としてランドLdから鏝先5eを距離Gだけ離間させ、主配管704に流れる流量Q2の変化によって半田付け状態を判定するようにしてもよい。
本実施形態においても、制御部Contは、第7実施形態の「第1変形例」又は「第2変形例」同様の操作が可能である。
(第9実施形態)
本発明に係る半田付け装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図57は、本発明に係る半田付け装置を示す図である。図57に示す半田付け装置Jでは、鏝先5cが異なる以外、第8実施形態の半田付け装置Iと実質上同じ構成を有している。そのため、半田付け装置Jにおいて、半田付け装置Iと実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
図57に示すように半田付け装置Jの鏝先5cは、半田孔51の投入された半田片Whが溶融する溶融領域510よりも上方、すなわち、窒素ガスが流れる方向において上流側と、外周面とを連通するリリース孔53を備えている。リリース孔53は、半田孔51の窒素ガスと共に半田片の溶融時に気化したフラックスを逃がす孔である。リリース孔53の内径は、半田孔51の内径よりも小さい。すなわち、リリース孔53は、半田孔51に比べて流路抵抗が大きい。
以下に、制御部Contによる鏝先の状態の判定について図面を参照して説明する。なお、本実施形態において、半田付け装置Jが1回の半田付けを行うときの鏝先5cの取り得る状態は、第8実施形態と同じである。すなわち、初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態である。
以下に、鏝先5cの各状態における主配管704の窒素ガスの流量Q3について、第8実施形態と異なる部分を図面を参照して説明する。図57と図58は、上述の初期状態と半田片溶融状態における鏝先を示す図である。また、図59は、半田付け装置で半田付け作業を1回行うときの流量の変化を示す図である。本実施形態では、基板Bdがスルーホール基板であり、スルーホールThに挿入された端子Ndを半田付けするものとして説明する。
半田付け装置Jでは、1回の半田付け時に上記の各状態に順に変化する。図57は初期状態における鏝先を示す図である。図57に示すように、初期状態では、半田孔51は、Z方向下端の開口が大気に開放されている。図58は半田片溶融状態における鏝先5cを示す図であり、半田片Whは、鏝先5cによって加熱され、半田孔51のZ方向下端部は溶融した半田片Whによって塞がれる。半田片溶融状態のときには、半田孔51の流路抵抗が大きくなり流量Q3は減少する。しかしながらリリース孔53が開放されているので、流量Q3はゼロになることがなく流量値Q3dになる。第1調整部76は圧力Pを一定に保つ制御を行っているが、流量値がほぼゼロの状態に比べて、本実施形態のように流量Q3が少量でも流れている方が、第11調整部76による圧力制御が容易にできる。
半田付け装置Jでは、鏝先の状態が、初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の順に変化する。そして、各状態での主配管704の流量Q3は、図59に示すグラフに示すとおりになる。図59は、半田付け装置Jが半田付けを1回行うときの主配管704の流量の変化を示しており、縦軸が流量Q3、横軸が時間である。
図59に示すように、第1領域Ar1は、鏝先が初期状態のときであり、第1領域Ar1において、主配管の流量がQ3aとなっている。
第4領域Ar4は、鏝先が半田片溶融状態を示しており、半田孔51は半田片Whの溶融によって塞がれるので、その流路抵抗は増加するが、前述のようにリリース孔53の開放によって流量Q3dになる。
なお、本実施形態において、半田孔51が塞がれたとき、リリース孔53を介して、半田孔51に溜まった窒素ガスを排出している。しかしながら、これに限定されない。例えば、第2計測部78の分岐配管706に内部のガスを外部に逃がすリリース孔を設けたり、あるいは分岐配管706を分岐させ、分岐した配管を窒素ガスを逃がすための配管としてもよい。
(第10実施形態)
本実施形態に係る半田付け装置の他の例について図面を参照して説明する。図60と図61は、本発明に係る半田付け装置の他の例を示す図であり、第9実施形態との相違点は、主配管704の圧力を計測する第1計測部77の下流配管に流体抵抗を調節できる絞りからなる流路抵抗体79を設け、流路抵抗体79の下流側に圧力を計測する第3計測部83を設けた点にある。図60と図61は、それぞれ初期状態と半田片溶融状態における鏝先を示す図である。
図60の初期状態において第3計測部83の計測する圧力Pmは、流路抵抗体79の流体抵抗と、半田孔51等からなる半田付け装置Kの流体抵抗との分圧された値になる。第1計測部77の圧力は第1調整部76により一定値Pに制御されているので、初期状態では半田付け装置Kの流体抵抗は比較的小さく、圧力Pmは大気圧に近い小さな値となる。
図61の半田片溶融状態においては、半田孔51の大部分が塞がれて半田付け装置Kの流体抵抗は大きくなり、圧力Pmは制御された圧力Pに近い値となる。
半田付け装置Kでは、鏝先の状態が初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の順に変化する。図62は、半田付け装置Kが半田付けを1回行うときの圧力Pmの変化を示しており、縦軸が圧力Pm、横軸が時間である。
第1領域Ar1は初期状態のときであり、上述のように圧力Pmは低圧になり、圧力P4aになる。第2領域Ar2の鏝先接触状態、第3領域のAr3の半田片投入状態になるに従い、半田孔51の流体抵抗が増加するため、圧力PmはP4bからP4cへと高まり、第4領域Ar4の半田片溶融状態において最高の圧力値P4dとなる。その後第5領域Ar5の半田片流出状態において、半田孔51の流体抵抗が減少して圧力PmはP4eに降下して、第6領域Ar6の鏝先離間状態にでは圧力PmはP4fとなって、第1領域Ar1の初期状態の圧力P4aに戻る。
なお、第1計測部77と第3計測部83はそれぞれ圧力計測器であり、計測する配管部分を切り換えて、1台の圧力計測器によって計測を行わせてもよい。
圧力計測器は、一般的に流量計測器より安価で計測範囲が広く応答速度も速いので、実用的な効果がある。
(第1変形例)
上述の第10実施形態においては、流体絞りを流路抵抗体79を用いていたが、その代わりに流量を計測する第4計測部84を設けることができる。図63はこのときの初期状態における鏝先と窒素ガスの流れを示す図である。第4計測部84の流量計は流量を計測するために所定の流路抵抗を有するので、その流路抵抗を流路抵抗体として使用する。第4計測部84は第7実施形態(図40)で用いられた第2計測部78の流量計を用いることができる。
(その他の実施形態)
鏝先として図15に示す鏝先5bを用いることができる。図15に示す鏝先5bの半田孔51bには係止部511を設けられており、半田片Whはこの係止部511で当接して半田孔51bの大部分を塞ぐ。このためこの部分の流路抵抗が大きくなり、半田片Whの供給前後での差が大きくなり、半田片Whの供給時の判定が容易になる。また、半田片Whが系止部511に確実に接触し、鏝先5bからの熱伝導により半田片Whの溶融を迅速に行うことができる。本実施形態は第7実施形態から第10実施形態にも適用することができる。
図64に示すように、主配管704と流入配管705の接続部において分岐配管706を分岐させることができる。この分岐配管706により主配管704を流れる窒素ガスの一部を外部に放出させ、半田孔51が全閉状態にあっても、主配管704の最低流量を確保し、第1計測部77の制御性能を高めることができる。また、この分岐配管706に可変絞り体85を設けることにより、鏝先の状態変化に対する第7実施形態から第10実施形態までの流量や圧力の変化割合(感度調節)を行うことができる。
時間と流量値の関係(図46または図56)または時間と圧力の関係(図59または図62)のそれぞれの計測値を記憶しておき品質管理のデータベースを作成し、経時的な変化や雰囲気温度などの相関を統計処理によって算出することができる。
さらに、複数の半田付け箇所が存在する場合には、半田付け箇所によって各状態における流体の変化値が異なる場合があるので、各半田付け箇所毎に上記データベースを作成し、半田付け場所毎に異なった閾値を用いて判定を行うことも可能である。
本実施形態では、半田付け装置Kが半田付けを行うときにとり得る状態として、初期状態、鏝先接触状態、半田片投入状態、半田片溶融状態、半田片流出状態、鏝先離間状態の6つの状態を挙げているが、これ以外の状態を判定するようにしてもよい。
また本実施形態でも、鏝先の以上のような状態の変化の外、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付け状態を判定することも可能であり、制御部Contが半田の溶融が行われたと判定した後、移動手段が基準位置を基準としてランドLdから鏝先5cを距離Gだけ離間させ、主配管704を流れる窒素ガスの圧力Pmが大きく減少すれば正常な半田付け状態と判定し、圧力Pmが減少しないか、減少が僅かであればイモ半田が形成されていると判定する。
なお、本発明は、ガス供給部のガスの総流量や供給圧力を一定とした状態で、鏝先の流路抵抗の変化によって鏝先の状態を判定するものであるが、半田付け動作中に鏝先の流路抵抗が大きく変化してガス供給部のガスの総流量や供給圧力が変動する場合がある。この場合、ガスの流量や圧力を検出して第1調整部71又は第1調整部76にフィードバックし制御することでガス供給部のガスの総流量や供給圧力を一定にすることができる。
また、鏝先の初期状態でガス供給部のガスの総流量や供給圧力を一定に保ち、半田付けの動作中である鏝先の接触状態から鏝先離間状態までの間、流路抵抗が変化してガス供給部のガスの総流量や供給圧力が変動しても、第1調節部71や第1調整部76の操作せずにガス供給部の計測を行って鏝先の状態を判別することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。例えば、ガス圧力やガス流量の変化度合いを基にして、鏝先の温度や予熱時間あるいは半田付け時間を自動的に変更して、最適な半田付け条件を自動調整することも可能である。
また半田付け装置において制御部から出力される鏝先の移動開始・停止の信号や糸半田の切断信号などの動作信号出力時を基準として所定時間内に、前記ガス供給部内又は前記半田孔内を流れるガスの圧力や流量などの物理量が変化したかどうかによって鏝先の状態を判定することも可能である。