以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明に係る半田付け装置の一例の斜視図である。図2は図1に示す半田付け装置のII-II線で切断した断面図である。図3は図1に示す半田付け装置に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。なお、図1では、筐体及び支持部1の一部を切断し、半田付け装置の内部を表示するようにしている。
図1に示すように半田付け装置Aは、上方から糸半田Wを供給し、下部に設けられた鏝先5を利用して、鏝先5の下方に配置される配線基板Bdと、電子部品Epとを半田付けする装置である。図1及び図2に示すように、半田付け装置Aは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4、鏝先5、半田送り機構6及びガス供給部7aを備えている。
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。なお、以下の説明では、便宜上、図1に示すように、壁体11に沿う水平方向をX方向、壁体11と垂直な水平方向をY方向、壁体11に沿う鉛直方向をZ方向とする。例えば、図1に示すように、壁体11はZX平面を有している。
半田付け装置Aは、治具Gjに取り付けられた配線基板Bdと、配線基板Bdに配置された電子部品Epの端子Ndとに溶融半田を供給し、接続固定を行う。半田付けを行うとき、治具GjをX方向及びY方向に移動させ配線基板BdのランドLdとの位置決めを行う。また、そして、半田付け装置AはZ方向に移動可能であり、位置決め後Z方向に移動することで、鏝先5の先端をランドLdに接触させることができる。
支持部1は、壁体11と、保持部12と、摺動ガイド13と、ヒーターユニット固定部14とを備える。壁体11は、鉛直方向に立設された平板状の壁体である。壁体11は、半田付け装置Aの支持部材としての役割を果たしている。保持部12は、壁体11のZ方向の下端部より上方にずれた位置に固定されている。保持部12は、駆動機構3の後述するエアシリンダー31を保持する。ヒーターユニット固定部14は、ヒーターユニット4の固定を行う部材であり、壁体11のZ方向の端部(下端部)に設けられている。
摺動ガイド13は、壁体11のZ方向の下端部の近傍に、固定されている。摺動ガイド13は、カッターユニット2の後述するカッター下刃22と共に、壁体11と固定されており、カッターユニット2の後述するカッター上刃21をX方向に摺動可能にガイドする。
摺動ガイド13は、Y方向に対向して対をなす部材である。摺動ガイド13は、一対の壁部131と、抜止部132とを有している。壁部131は、X方向に延びる平板状の部材である。一方の壁部131は、壁体11と接触して配されており、壁体11と反対側の面は、カッター下端22と接触している。また、他方の壁部131は、カッター下刃22の側面と接触している。つまり、一対の壁部131は、カッター下刃22をY方向の両側から挟んでいる。そして、一対の壁部131及びカッター下刃22は、ねじ等の締結具で壁体11に共締めされて、固定される。
抜止部132は、一対の壁部131のそれぞれに設けられている。一対の壁部131は、カッター下刃22のZ方向上面よりもZ方向に延びており、一対の壁部131のZ方向の上端部から、それぞれ、他方に向かって延びている。すなわち、摺動ガイド13は、一対の抜止部132を備えている。そして一対の抜止部132それぞれのY方向の先端は、接触しない、換言すると、摺動ガイド13には上部に開口を有している。カッター上刃21は、カッター下刃22の上面と、抜止部132との間に少なくとも一部は配される。これにより、カッター上刃21は、X方向にガイドされるとともに、Z方向に抜け止めされる。
カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する切断具である。カッターユニット2は、カッター上刃21と、カッター下刃22と、プッシャーピン23とを備えている。
上述のとおり、カッター下刃22は摺動ガイド13とともに壁体11に固定される。図2に示すように、カッター下刃22は、下刃孔221と、ガス流入孔222とを備えている。下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向に貫通する貫通孔であり、カッター上刃21の後述する上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とを用いて、糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する。切断された半田片Whは、自重によって又はプッシャーピン23に押されて、下刃孔221の内部を下方に落下する。下刃孔221は、ヒーターユニット4の後述する半田供給孔422を介して、鏝先5の後述する半田孔51と連通している。下刃孔221の内部を落下した半田片Whは、半田供給孔422に達した後、半田孔51に落下する。
ガス流入孔222は、カッター下刃22の外側面と下刃孔221とを連通する孔である。また、ガス流入孔222の外側には、ガスを供給するためのガス供給部7aが接続される。すなわち、ガス供給部7aから供給されるガスは、ガス流入孔222に流入する。そして、ガスは、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に到達する。なお、ガスとは、半田を加熱して溶融するときに半田の酸化を抑制するために用いられるものである。すなわち、溶融した半田と酸素との接触を抑制するためのガスである。ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素等を挙げることができる。本実施形態の半田付け装置Aでは、窒素ガスを供給するものとして説明する。
カッター上刃21は、上述したとおり、カッター下刃22のZ方向上面上に配される。カッター上刃21は、摺動ガイド13によって摺動時に摺動方向がX方向になるようガイドされるとともにZ方向に抜け止めされる。すなわち、カッター上刃21は、カッター下刃22のZ方向の上面上をX方向に摺動する。なお、カッター上刃21は、駆動機構3によって摺動される。
カッター上刃21は、上刃孔211と、ピン孔212とを備えている。上刃孔211は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である、上刃孔211には、半田送り機構6から送られた糸半田Wが挿入される。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。ピン孔212は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である。ピン孔212には、プッシャーピン23の後述するロッド部231が、摺動可能に挿入される。
プッシャーピン23は、ロッド部231と、ヘッド部232と、バネ233とを有する。ロッド部231は、円柱状の部材であり、ピン孔212に摺動可能に挿入される。また、プッシャーピン23がZ方向下に移動することで、ロッド部23の先端が、ピン孔212から突出する。ヘッド部232はロッド部231の軸方向の上端に連結される。ヘッド部232は、ピン孔212の内径よりも大きい外径を有する円板形状である。ヘッド部232は、ピン孔212に挿入されない。すなわち、ヘッド部232は、ロッド部231のピン孔212内への移動を制限する、いわゆる、ストッパーとしての役割を果たす。
バネ233は、ロッド部231の径方向外側を囲む圧縮コイルばねである。バネ233は、Z方向下端部がカッター上刃21の上面と接触し、Z方向上端部がヘッド部232の下面と接触する。すなわち、バネ233は、カッター上刃21の上面から反力を受け、ヘッド部232をZ方向上に押す。これにより、ヘッド部232と連結されたロッド部231は、Z方向上方に持ち上げられ、ロッド部231の下端が、ピン孔212の下端から突出しないように維持される。なお、ロッド部231のZ方向下端部には、ピン孔212からの抜けを抑制する抜け止め(不図示)が設けられている。
プッシャーピン23は、カッター上刃21とカッター下刃22で切断されて下刃孔221に残った半田片Whを下方に押す。そして、プッシャーピン23は、ばね233の弾性力によって、常に上方に、すなわち、カッター下刃22と反対側に押し上げられている。つまり、ロッド部231は、ヘッド部232が押されたときに、ピン孔212のZ方向下端部から下に突出する。そして、ヘッド部232は、駆動機構3の後述するカム部材33に押される。
カッター上刃21において、上刃孔211とピン孔212とはX方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、X方向に摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置、又は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置に移動する。なお、カッター上刃21は、一方の摺動端部まで摺動したときに上刃孔211と下刃孔221とが重なり、他方の摺動端部まで摺動したときにピン孔212と下刃孔221とが重なるように、摺動してもよい。
そして、上刃孔211と下刃孔221とがZ方向に重なっている状態で、半田送り機構6から糸半田Wが送られると、上刃孔211を通過した糸半田Wが、下刃孔221に挿入される。上述のとおり、上刃孔211の下端の辺縁部が切刃状に形成されているとともに、下刃孔221の上端の辺縁部も切刃状に形成されている。そして、カッター上刃21の下面は、カッター下刃22の上面と接触している。そのため、下刃孔221に糸半田Wが挿入されている状態で、カッター上刃21がX方向に摺動することで、上刃孔211および下刃孔221それぞれの切刃によって糸半田Wが切断される。
カッター上刃21は、カム部材33によってX方向に摺動される。そのため、カッター上刃21及びプッシャーピン23は、カム部材33と同期している。カム部材33は、ピン孔212が下刃孔221とZ方向に重なったときに、ヘッド部232を押す。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときには、プッシャーピン23のロッド部231の先端は、ピン孔212に収容されている。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときに、ロッド部231の先端とカッター下刃22の上面とが接触するのを抑制し、ロッド部231の先端及び(又は)カッター下刃22の変形、破損等が抑制される。
カッター上刃21がX方向に摺動することで、下刃孔211とピン孔212とがZ方向に重なる。ピン孔212が下刃孔211と重なっている状態で、ヘッド部232はカム部材33に押される。これにより、プッシャーピン23が、Z方向下に移動する。プッシャーピン23がピン孔212からZ方向下方に突出すると、プッシャーピン23の一部が下刃孔211に挿入される。下刃孔211の入り口に糸半田を切断した後述の半田片が残っている場合、プッシャーピン23の先端が半田片を押して、半田片は落下する。
図1、図2に示すように、駆動機構3は、エアシリンダー31と、ピストンロッド32と、カム部材33と、スライダー部34と、ガイド軸35とを有する。エアシリンダー31は保持部12に保持される。エアシリンダー31は、有底円筒状である。エアシリンダー31の内部には、ピストンロッド32が収容されており、外部から供給される空気の圧力でピストンロッド32を摺動駆動(伸縮)させる。エアシリンダー31とピストンロッド32とが駆動機構3のアクチュエーターを構成している。ピストンロッド32は、エアシリンダー31の内部に配されるとともに、一部が常にエアシリンダー31の軸方向の一方の端部(ここでは、Z方向の下端部)から、突出している。エアシリンダー31は、ピストンロッド32が突出する面がカッターユニット2に向くように、すなわち、Z方向下に向くように、保持部12に保持される。
ピストンロッド32は、保持部12に設けられた貫通孔(不図示)を貫通している。ピストンロッド32は、ガイド軸35と平行に設けられており、ガイド軸35に沿って直線的に往復動する。ピストンロッド32の先端部は、カム部材33に固定されており、ピストンロッド32の伸縮によって、カム部材33がZ方向に摺動する。カム部材33の摺動は、ガイド軸35によってガイドされている。
図2に示すように、ガイド軸35は、下端部がカッター下刃22に設けられた凹穴に嵌合されており、カッター下刃22にねじ351でねじ止め固定されている。また、ガイド軸35の上部は、保持部12に設けられた孔を貫通しており、ピン352によって移動が規制されている。つまり、ガイド軸35はねじ351によってカッター下刃22と、ピン352によって保持部12と固定されている。
なお、本実施形態において、ガイド軸35は、ねじ351及びピン352によって固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧入、溶接等の固定方法で固定されるものであってもよい。また、本実施形態において、ガイド軸35として円柱状の部材としているが、これに限定されるものではなく、断面多角形状や楕円等を利用してもよい。
図2、図3に示すように、カム部材33は、矩形状の部材であり、長辺の一部を矩形状に切り欠いた凹部330と、カム部材33に連結し、ガイド軸35が貫通する貫通孔を備えた円筒形状の支持部331とを備えている。凹部330には、スライダー部34が(X方向及びZ方向に)摺動可能に配置される。また、支持部331はガイド軸35と平行に延びる形状を有しており、カム部材33のがたつきを抑制するために設けられている。つまり、カム部材33がある程度厚みを有し、がたつきが発生しにくい構成の場合、円筒形状の部分を省略し、貫通孔だけで支持部331を構成してもよい。
そして、カム部材33は、凹部330の中間部分に設けられて中心軸がガイド軸35と直交する円柱状のピン332と、凹部330と隣接してプッシャーピン23を押すピン押し部333と、支持部331内部に配置された軸受334とを備えている。ピン332は、スライダー部34に設けられた後述するカム溝340に挿入される。また、軸受334は、ガイド軸35に外嵌し、カム部材33ががたつかないように、円滑に摺動させる部材である。
図2、図3に示すように、スライダー部34は、長方形状の板状の部材であり、カッター上刃21と一体的に形成されている。スライダー部34は、板厚方向に貫通するとともに長手方向に延びるカム溝340を備えている。カム溝340は、ガイド軸35と平行に延びる第1溝部341を上側に、同じくガイド軸35と平行に延びる第2溝部342を下側に設けている。そして、第1溝部341と第2溝部342とは、X方向にずれて設けられており、カム溝340は第1溝部341と第2溝部342とを接続する接続溝部343を備えている。
カム溝340には、カム部材33のピン332が挿入されており、カム部材33がガイド軸35に沿って移動することで、ピン332がカム溝340の内面を摺動する。ピン332がカム溝340の接続溝部343に位置するとき、接続溝部343の内面を押す。これにより、スライダー部34及びスライダー部34に一体的に形成されたカッター上刃21がカム部材33の摺動方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動(カッター下刃22に対して摺動)する。
なお、本実施形態では、カム部材33にピン332、スライド部34にカム溝340を備えた構成を挙げて説明しているが、実際には、カム部材にカム溝、スライド部にピンを備えた構成であってもよい。
本実施形態では、駆動機構3のアクチュエーターとして空気圧を用いるものとしているが、これに限定されるものではなく、空気以外の流体(例えば、作動油)を用いるもの(油圧)であってもよい。また、流体を用いるものに限定されるものではなく、モーターやソレノイド等の電力を用いるものであってもよい。本実施形態では、1つのアクチュエーターと、カム及びカム溝を用いて、カッター上刃21の摺動とプッシャーピン23の押下を行っているが、これに限定されない。例えば、カッター上刃21の摺動と、プッシャーピン23の押下とを行うように、アクチュエーターを複数個(2個)備えていてもよい。
図1、図2に示すように、半田送り機構6は、糸半田Wを供給する。半田送り機構6は、一対の送りローラ61と、ガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持壁11に回転可能に取り付けられている。一対の送りローラ61は、糸半田Wの側面を挟んで回転することで、糸半田を下方に送る。なお、一対の送りローラ61は、互いに他方に向かって付勢されており、その付勢力で糸半田Wを挟む。送りローラ61の回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田Wの長さが測定(決定)されている。
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端は、カッター上刃21の上刃孔211と連通するように設けられている。なお、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で過剰に引っ張られたり、突っ張ったりしない長さ、および、形状を有している。
ヒーターユニット4は、半田片Whを加熱し、溶融させるための加熱装置であり、図2に示すように、壁体22の下端部に設けられたヒーターユニット固定部14に固定されている。ヒーターユニット4は、ヒーター41と、ヒーターブロック42とを備える。ヒーター41は、通電により発熱する。ヒーター41は、ここでは、円筒形状のヒーターブロック42の外周面に巻き回された電熱線を有する。
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、軸方向の端部に鏝先5aを取り付けるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通した半田供給孔422とを備えている。ヒーターブロック42は、半田供給孔422と下刃孔221とが連通するように、カッター下刃22に接触して設けられている。ヒーターブロック42をこのように設けることで、半田片Whは、下刃孔221から半田供給孔422に移動する。
鏝先5aは、円筒形状の部材であり、中央部分に軸方向に延びる半田孔51を備えている。鏝先5aは、ヒーターブロック42の凹部421に挿入され、図示を省略した部材によって抜け止めがなされている。また、鏝先5の半田孔51は、ヒーターブロック42の半田供給孔421と連通しており、半田供給孔421から半田片Whが送られる。
鏝先5aは、ヒーター41からの熱が伝達されており、その熱で半田片Whを溶融させる。そのため、鏝先5aは、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属で形成されている。半田付け装置Aにおいて、鏝先5aは円筒形状のものとしているが、これに限定されるものではなく、断面多角形又は楕円形の筒形状のものを用いてもよい。半田付けを行う配線基板Bd及び(又は)電子部品Epの端子Ndの形状に合わせて異なる形状のものを用意するようにしてもよい。
鏝先5aは、半田孔51の投入された半田片Whが溶融する溶融領域510よりも上方、すなわち、窒素ガスが流れる方向の上流側に半田孔51と外周面とを連通するリリース孔53を備えている。リリース孔53は、後述するように半田付け装置Aを作動させた場合に、溶融した半田で半田孔51の下端開口がせき止められる場合があり、このような場合にガス供給部7aから供給される窒素ガスや気化したフラックスなどを鏝先5aの外に逃がす役割を果たす。なお、リリース孔53の内径は、半田孔51の内径よりも小さい。すなわち、リリース孔53は、半田孔51に比べて流路抵抗が大きい。
また鏝先5aは、溶融領域510よりも窒素ガス流動方向上流側に、半田孔51と外周面とを連通する圧力測定用孔54を備えている。圧力測定用孔54は、半田孔51内の圧力を測定するための孔であって、圧力測定用孔54の内径は、リリース孔53と同様に、半田孔51の内径よりも小さい。すなわち、圧力測定用孔54は、半田孔51に比べて流路抵抗が大きい。鏝先5aにおける圧力測定用孔54の軸線方向の位置は、リリース孔53と同じ位置であってもよいし異なる位置であってもよいが、リリース孔53よりも上流側に配置すると、後述するように、気化したフラックスによる圧力測定孔54の汚染を低減できる。
ガス供給部7aは、半田付け装置Aの外部に設けられたガス供給源GS1から供給されるガスを半田付け装置Aに供給する。ガスとして、上述した、不活性ガスを用いることで半田の酸化を防止することが可能である。図2に示すように、ガス供給部7aは、配管70aと、第1調整部71と、第1計測部72とを有する。配管70aは、ガス供給源GS1からの窒素ガスをガス流入孔222に流入させる配管である。なお、図2では、便宜上、配管70aを線図で示しているが、実際にはガスである窒素ガスが漏れない管体(例えば、樹脂管)である。
第1調整部71は、流量制御弁を含む構成であり、配管70aを流れる窒素ガスの流量を調整している。第1計測部72は配管70aを流れる窒素ガスの流量を計測する。すなわち、第1計測部72は、第1調整部71から吐出される窒素ガスの流量を計測している。そして、第1計測部72は、計測した窒素ガスの流量が予め決められた流量となるように、第1調整部71に対して、第1調整部71を制御する制御信号を送信している。すなわち、ガス供給部7aは、第1調整部71と第1計測部72を用いて、フィードバック制御を行っており、ガス供給源GS1から半田孔51に供給される窒素ガスの流量を一定に制御している。なお、第1計測部72の計測結果に基づいて、作業者が手動で第1調整部71を操作して窒素ガスの流量を調整してもよい。また、なんらかの異常により計測した流量が予め決めた基準値と異なる又は予め設定した範囲から外れる場合には、制御部Contは、異常が発生している旨の警報及び(又は)半田付け装置の運転の停止を行ってもよい。
鏝先5aに形成された圧力測定用孔54の外側開口には圧力測定用配管8の一方端が接続されている。そして圧力測定用配管8の他方端には圧力測定部75が接続されている。圧力測定部75は、半田孔51の内部の圧力を測定し、その測定結果を制御部Contに送信する。そして、制御部Contは、半田孔51の内部の圧力及び/又は圧力変化に基づいて鏝先の状態を判定する。すなわち、制御部Contは、鏝先の状態を判定する状態判定部としての役割を果たす。また、制御部Contは、判定した鏝先の状態に基づいて、半田付け装置Aの制御を行ってもよい。半田付け装置Aの制御としては、例えば、半田付け装置Aの基板Bdへの接近離間、糸半田Wの切断、鏝先5の加熱等を含む。
次に、鏝先5aの半田孔51内の圧力に基づいて鏝先の状態を判定する判定方法について説明する。なお、ガス供給部7aにおいて、ガス流入孔222に流入した窒素ガスは、すべて、鏝先5の半田孔51に流入するものとする。例えば、ガス流入孔222は、下刃孔221と連通しており、下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向上下に貫通している。窒素ガスが供給されている状態において、窒素ガスは、下刃案221のZ方向上端から抜けないように、密閉されるものとする。
なお、鏝先5aの半田孔51内を流れる窒素ガスは、ガス供給源GS1からのガスを第1調整部71で調整することで流量が調整される。第1調整部71に備えられている流量制御弁は、配管内部の圧力にかかわらず窒素ガスを設定した流量で流し続ける。すなわち、ガス供給部7aは、流量一定とする流量制御を行う。
半田付け装置Aにおいて、例えば、半田片Whが半田孔51に供給された場合、半田孔51の軸と直交する断面の一部を半田片Whが占める。そのため、半田孔51の窒素ガスが流れる部分の流路面積が小さくなり、窒素ガスが流れにくくなる、すなわち、流路抵抗が大きくなる。そして、半田孔51の流路抵抗が大きくなると半田孔51内の圧力P1が上昇する。つまり、鏝先の状態が変化することで半田孔51内の圧力P1が変動する。制御部Contは、この圧力P1、或いは、圧力P1の変化に基づいて、鏝先の状態を判定する。例えば、制御部Contは、圧力P1の変化とその変化の原因とを関連付けた情報を予め記憶している。制御部Contは、算出した圧力P1の変化に基づいて、その原因、すなわち、鏝先の状況を判定する。
以下に、鏝先の各状態における半田孔51内の圧力P1について、図面を参照して説明する。図4~図9は、半田付け装置の動作又は鏝先の状態を示す図である。また、図10は、半田付け装置で半田付け作業を1回行うときの半田孔51内の圧力P1の変化を示す図である。本実施形態では、基板Bdがスルーホール基板であり、スルーホールThに挿入された端子Ndを半田付けするものとして説明する。
本実施形態では、鏝先の状態として、(a)基準状態、(b)鏝先接触状態、(c)半田片投入状態、(d)半田片溶融状態、(e)半田片流出状態、(f)鏝先離間状態の6個の状態を挙げて説明する。半田付け装置Aでは、1回の半田付け時に、(a)~(f)の各状態に順に変化する。
(a)基準状態
図4は基準状態における半田付け装置の鏝先を示す図である。図4に示すように、半田付装置Aでは、半田付けを行う前段階(例えば、鏝先5aをプレヒートする、半田付けを行う基板Bdを変更する等)において、鏝先5aは、基板Bdから離している。本実施形態では、鏝先5aが基板Bdから離れている状態を基準状態とする。すなわち、半田孔51は、Z方向下端の開口が大気に解放されている。また、本実施形態では、半田付け装置Aが基準状態のときに、ヒーターユニット4を駆動して鏝先5aを加熱する。基準状態において、ガス供給源GS1から窒素ガスの供給が開始されると、ガス供給部7aに窒素ガスが供給される。上述のとおりガス供給部7aは、第1調整部71で窒素ガスを流量Q1に調整している。
図4に示すように、半田付け装置Aが基準状態において、鏝先5aの半田孔51の下端部はZ方向下端の開口が大気に解放されている。そのため、ガス供給部7aから半田孔51に窒素ガスが供給されても、半田孔51内の圧力P1は一定である。(a)基準状態における半田孔51内の圧力P1を圧力P1aとする。(a)基準状態において、鏝先5cは、半田孔51の下端が大気解放されているため、リリース孔53から外部に流れる窒素ガスは少量である。
(b)鏝先接触状態
図5は、鏝先接触状態における半田付け装置の鏝先を示す図である。半田付け装置Aでは、基準状態の後に半田付けを行うため、鏝先5aを基板BdのランドLdに接触させる。半田付け装置Aでは、鏝先5aをランドLdに接触させることで、ランドLdを半田付けに適切な温度に昇温させる(プレヒート)。
そして、鏝先5aをランドLdに接触させることで、鏝先5aの半田孔51がランドLdによって塞がれる。基板BdはスルーホールThに貫通させた端子Ndを半田付けするものであり、図5に示すように、電子部品の端子NdのZ方向の上端部が半田孔51に挿入される。また、半田孔51を通過した窒素ガスは、端子Ndが挿入されたスルーホールThから外部に流出する。
端子Ndが挿入されたスルーホールThの窒素ガスが抜ける部分が窒素ガスの流路であり、その流路面積は、半田孔51の軸と直交する面で切断した断面積よりも小さい。鏝先接触状態のとき、半田孔51の先端側に、流路抵抗が形成される、すなわち、半田孔51内の流路抵抗が基準状態よりも大きくなる。これにより、鏝先接触状態における半田孔51内の窒素ガスの圧力P1bは基準状態の圧力P1aよりも高くなる。
(c)半田片投入状態
図6は、半田片投入状態における半田付け装置の鏝先を示す図である。半田付け装置Aでは、鏝先5aをランドLdに接触させて、プレヒートを行い、ランドLdを適切な温度に昇温した後に、半田片Whを半田孔51に投入する。なお、ランドLdのプレヒートの制御は、温度センサーでランドLdの温度を直接検出し、その温度で制御してもよいし、鏝先5aとランドLdの接触時間で制御してもよい。
そして、プレヒートが終了したタイミングで、半田片Whを半田孔51に投入する。なお、半田片Whはカッター上刃21とカッター下刃22で糸半田Wを切断して形成する。自重又はプッシャーピン23で押されることで、半田片Whは落下し、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に投入される。半田片Whは、半田孔51に挿入されている端子Ndに接触して、半田孔51の内部で停止する。このように、半田片Whが半田孔51の途中で停止することで、半田孔51の窒素ガスが通過する流路面積は、小さくなる。これにより、半田片投入状態のときには、鏝先接触状態のときに比べて、半田孔51内の流路抵抗が大きくなる。そして、半田片投入状態のときの半田孔51内の圧力P1cは、鏝先接触状態の圧力P1bよりも高くなる。
(d)半田片溶融状態
図7は、半田片溶融状態における半田付け装置の鏝先を示す図である。半田付け装置Aでは、鏝先5aはヒーターユニット4によって加熱されており、半田孔51に投入された半田片Whは、鏝先5aによって加熱され溶融される。溶融した半田片Whは粘度の高い液体である。そして、半田孔51は、溶融した半田片によって塞がれる。これにより、半田孔51の下端開口から窒素ガスが外部に漏れない又は漏れにくくなり、半田孔51よりも内径の小さく流路抵抗の大きいリリース孔53から窒素ガスの多くが外に放出されることになる。
結果として、半田片Whが溶融することで、半田孔51内の窒素ガスの圧力P1dは半田片投入状態の圧力P1cよりも高くなる。
(e)半田片流出状態
図8は、半田片流出状態における半田付け装置の鏝先を示す図である。溶融した半田片Whが流出すると、半田孔51のZ方向下端部は、ランドLd及びスルーホールThを塞いだ溶融した半田によって塞がれる。これにより、半田孔51の下端開口から窒素ガスが外部に漏れない又は漏れにくくなる。そして、半田孔51よりも内径の小さく流路抵抗の大きいリリース孔53から窒素ガスの多くが外に放出されることになる。
結果として、半田孔51内の窒素ガスの圧力P1eは半田片溶融状態の圧力P1dと等しい又は略等しくなる。なお、鏝先5aは、常にヒーターユニット4によって加熱されているため、溶融した半田片Whは、すべて鏝先5aの外部、すなわち、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとに流出する。
(f)鏝先離間状態
図9は、鏝先離間状態における半田付け装置の鏝先を示す図である。半田付け装置Aでは、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付けが終了すると、鏝先5aをランドLdから離間させる。半田片流出状態において、溶融した半田片Whは全量又は略全量が半田孔51の外部に流出している。そのため、半田孔51は、半田付け前の状態、すなわち、基準状態と同じ状態に戻る。これにより、半田孔51内の窒素ガスの圧力P1fは基準状態と同じ圧力P1aと略同じとなる。
上述のとおり、半田孔51内の圧力P1a~P1d(P1e)は、各状態によって異なる値になる。制御部Contは、予め圧力P1a~P1d(P1e)の基準となる値をデータベースとして記憶しておき、圧力測定部75から取得した半田孔51内の圧力P1のデータと比較することで、現在の鏝先の状態を判定することができる。
また、(d)半田片溶融状態の半田孔51内の圧力P1dと(e)半田片流出状態の半田孔51内の圧力P1eとがほぼ同じであることから、半田孔51内の圧力から状態の判定が困難な場合もある。そこで、制御部Contは、半田孔51内の圧力P1の時間変化も考慮して、鏝先の状態を検出してもよい。例えば、第2計測部75が半田孔51内の圧力P1dを検出してから所定時間経過したことによって、制御部Contは、鏝先5aが半田片溶融状態から半田片流出状態に変化したと判断してもよい。
半田付け装置Aでは、鏝先の状態が(a)基準状態、(b)鏝先接触状態、(c)半田片投入状態、(d)半田片溶融状態、(e)半田片流出状態、(f)鏝先離間状態の順に変化する。そして、各状態での半田孔51内の圧力P1は、図10に示すグラフに示すとおりになる。図10は、半田付け装置Aが半田付けを1回行うときの半田孔51内の圧力P1の変化を示している。図10では、縦軸が圧力P1、横軸が時間である。なお、図10に示す圧力値P1a、P1b、P1c、P1d、P1e及びP1fは、基準値である。
図10に示すように、第1領域Ar1は、鏝先が(a)基準状態のときであり、第1領域Ar1において、半田孔51内の圧力が圧力P1aとなっている。第2領域Ar2は、鏝先が(b)鏝先接触状態であり、鏝先が(a)基準状態から(b)鏝先接触状態に変わると鏝先5のランドLdへの接触によって圧力P1aから圧力P1bに急激に変化する。すなわち、第1領域Ar1から第2領域Ar2への変化は急峻である。
また図10における、第3領域Ar3は、鏝先が(c)半田片投入状態を示しており、半田孔51への半田片Whの投入よって半田孔51の流路の一部が塞がれて流路抵抗が急に増加するため、圧力P1bから圧力P1cへは急激に変化する。すなわち、図10において、第2領域Ar2から第3領域Ar3への変化は急峻である。
図10における、第4領域Ar4は、鏝先が(d)半田片溶融状態を示しており、半田孔51は半田片Whの溶融によって塞がれるので、その流路抵抗は増加する。半田片の溶融は、まず、フラックスが比較的ゆっくり溶融し、その後半田は急激に溶融する。圧力P1cから圧力P1dへは、最初ゆっくり高くなり、一定の変化ののち急激に高くなる。すなわち、図10において、第3領域Ar3から第4領域Ar4への変化は最初ゆっくりで、その後急激に高くなる。
また、上述のとおり、(d)半田片溶融状態の圧力P1dと、(e)半田片流出状態の圧力P1eとは、同じまたはほぼ同じであり、一定時間、圧力P1dから変化が小さい。
以上のとおり、半田孔51内の圧力P1は、その値だけでなく、状態が変化するときの圧力P1の変化の割合(急激に変化する又はゆっくり変化する)にも特徴を有する。
半田付けの工程が正常に行われているかの判定は、次のように行われる。まず、予め各半田付け状態における半田孔51内の圧力P1の基準値の範囲を設定する。そして、各半田付け状態における基準値の範囲と計測された半田孔51内の圧力P1との比較によって判定を行う。例えば、(c)半田片投入状態における判定について説明する。まず、(c)半田片投入状態であるAr3の時間帯において基準値の上限値Px1、下限値Py1を設定する。上限値Px1、下限値Py1は、それぞれ、Px1=P1c+x1及びPy1=P1c-y1(x1、y1は正の数)で表される値である。そして、半田付け工程においてAr3の時間帯に計測された半田孔51内の圧力P1が上限値Px1から下限値Py1の間の範囲から逸脱したとき、制御部Contは、半田付け工程に異常があったとして警報あるいは運転の停止を行ってもよい。なお、x1、y1の一方が0であってもよい。
また、前述のx1やy1よりも小さな値であるx2やy2を用いて、第2上限値Px2=P1c+x2及び第2下限値値Py2=P1c-y2を設定し、Ar3の時間帯に計測された半田孔51内の圧力P1が第2上限値Px2から第2下限値Py2の範囲外に逸脱した場合に、制御部Contは、作業者に注意を報知することもできる。なお、x2、y2の一方が0であってもよい。以上の説明では、第1上限値及び第1下限値を用いて警報或いは運転の停止を行う1段階のもの又は第2上限値及び第2下限値をさらに用いて注意、基準値を用いて警報或いは運転の停止を行う2段階のものを挙げているが、これらは一例であり、さらに多くの基準値を用いて、注意或いは警報を2段階以上で行ってもよい。また、(c)半田片投入状態以外の状態のときにも同様に基準値の範囲が設けられており、基準値の範囲と測定された分岐流量とを比較することで、半田付けの工程が正常に行われているか判定する。
また、時間と圧力に関係なく、半田が溶融もしくは流出すれば半田孔51内の圧力P1は最大値まで増加する。制御部Contは、半田孔51内の圧力P1のピーク値(ここでは、圧力P1d)付近の値を検出したときに、半田の溶融が行われたと判定することもできる。
また、制御部Contは、予め圧力P1a~P1d(P1e)の基準となる値をデータベースとして記憶しておき、圧力測定部75から取得した半田孔51内の圧力P1のデータと比較することで、半田孔51の汚れ状態を判定することができる。あるいはまた、制御部Contは、鏝先5と基板Bdとは非接触状態、鏝先5と基板Bdとの接触、鏝先5への半田片Whの投入、加熱溶融、鏝先5からの溶融半田の流出、鏝先5の基板Bdからの離間といった一連の半田付け工程における半田孔51内の窒素ガスの圧力の基準となる経時変化をデータベースとしてて記憶しておき、圧力測定部75から取得した半田孔51内の圧力P1の経時変化と比較することで半田孔51の汚れ状態を判定することも可能である。
第3領域Ar3すなわち半田孔51への半田片Whの投入段階において半田孔51の汚れ状態を判定する場合を例に説明する。図11に、半田片Whが半田孔51へ投入された状態図を示す。図6に示すような半田孔51が汚れていない初期状態では半田孔51内の圧力はP1cである。一方、図11に示すような半田孔51やリリース孔53の内周壁にドロスなどの付着物が付着している状態では、半田孔51内の窒素ガスが通過する流路面積が小さくなっているところ、半田片Whが投入されることによって流路面積はさらに小さくなるため、半田孔51内の圧力は初期状態の圧力P1cよりも高い圧力P1c’となる(図10の一点鎖線)。制御部Contは、初期状態における圧力P1cを予め記憶しておき、測定された半田孔51内の圧力と圧力P1cとを比較して半田孔の汚れ状態を判定することが可能となる。
またさらに、鏝先5aの以上のような状態の変化の外、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付け状態を判定することも可能である。例えば図12(a)に示すように、ランドLdと端子Ndが正常に半田付けされた場合には半田は円錐形状となる。一方、予備加熱が不十分な場合などには図12(b)に示すように半田が盛り上がった状態となる(イモ半田)。
そこで、制御部Contが半田の溶融が行われたと判定した後、鏝先5aとランドLdとの接触が検知された初期位置から距離GだけランドLdから鏝先5aを離間させ、半田孔51内の圧力P1の変化によって半田付け状態を判定する。すなわち、鏝先5aをランドLdから距離Gだけ離間させ所定時間保持して半田孔51内の圧力P1を測定する。図12(a)に示すように半田付けが正常になされていた場合には、鏝先5aをランドLdから距離G離すことによって円錐状の半田と鏝先5の半田孔51内周面との間に隙間が生じ、その隙間から半田孔51内の窒素ガスが外部に流出するので、半田孔51内の圧力P1は急激に減少して圧力P1aと同じか略同じとなる。
これに対して図12(b)に示すようにイモ半田が形成されていた場合には、鏝先5aをランドLdから距離G離してもドーム状に盛り上がった半田と鏝先5aの半田孔51内周面とは依然として接触しているか、隙間があったとしても僅かであるため、半田孔51内の圧力P1は減少しないか、減少しても微量である。したがって、このような半田孔51内の圧力P1の変化を測定することによって半田付け状態が判断可能となる。
なお、鏝先5aとランドLdとの離間距離Gは、半田付けが正常な場合には半田と半田孔51の内周面とが接触せず、イモ半田が形成された場合には半田と半田孔51の内周面とが接触する距離であって、供給される半田片Whの容積や半田孔51の形状などを考慮し、また予備実験などに基づいて適宜決定すればよい。離間距離Gは通常0.2mm~2mmの範囲である。また、鏝先5aとランドLdとを距離Gまで離間させる際の鏝先5aの離間速度に特に限定はないが、圧力P1の測定精度などの観点からは0.1mm/sec~10mm/secの範囲が好ましい。より好ましくは0.2mm/sec~2mm/secの範囲である。また、鏝先5aを離間距離Gで保持する時間は0.1sec~2secの範囲が好ましい。
このような異常判定をも行うためには、制御部Contは、予め、図10に示すような、半田付け1回における分岐流量の時間変化を示すテーブルを記憶しておき、圧力測定部75からの分岐流量のデータを時系列に並べて、挙動及び値を比較することで鏝先の状態を判定するようにする。このような判定方法を用いることで、鏝先の状態をより正確に判定することができる。
(第1変形例)
上述した実施形態では、半田片Whの太さ及び長さが一定である場合で説明している。しかしながら、糸半田Wの送りには、ばらつきが生じる場合がある。また、半田付けを行う面積が大きい等によって、半田片Whの形、大きさを意図的に変更する場合もある。このような場合、制御部Contは、(b)鏝先接触状態の圧力P1bから圧力P1が変動したときの変動の大きさ、変動の挙動に基づいて、投入された半田片Whの形状、大きさ等を判定してもよい。なお、異なる大きさ、形状の半田片を投入する可能性がある場合、制御部Contは、各大きさ、形状の半田片Whごとに、各状態における半田孔51内の圧力P1の基準値及び(又は)その時間変化を示すテーブルをデータベースとして備えていることが好ましい。
(第2変形例)
本実施形態に係る半田付け装置の変形例について図面を参照して説明する。図13は、本実施形態に係る半田付け装置の変形例に用いられる鏝先の一例を示す断面図である。図13に示すように、第2変形例の半田付け装置に用いられる鏝先5bは、半田孔51bの内部に、半田片Whが端子Ndと接触する前に、半田片Whを停止させる半田片停止部511が設けられている。
図13に示すように、半田片停止部511は、Z方向下方に向かって内径が減少するテーパ形状となっている。半田片停止部511に半田片Whが到達すると、半田片511によって、半田孔51bの隙間が小さくなる。これにより、(c)半田片投入状態のときの半田孔51b内の流路抵抗が大きくなる。これにより、第2変形例において、(c)半田片投入状態のときの圧力P1が大きくなる。そして、(b)鏝先接触状態と、(c)半田片投入状態のそれぞれのときの圧力P1の差が大きくなるため、制御部Contは、(b)鏝先接触状態と、(c)半田片投入状態とを判別しやすくなる。また、半田片Whが、半田片停止部511に到達する前に、半田孔51bの内部で停止する場合がある。この場合、半田片による流路抵抗が、半田片Whが半田片停止部511に到達しているときに比べて小さくなる。このことを利用することで、制御部Contは、半田片Whが半田片停止部511に到達したこと、すなわち、半田片Whを確実に投入できたことを判定することができる。
本実施形態では、半田付け装置Aが半田付けを行うときにとり得る状態として、(a)基準状態、(b)鏝先接触状態、(c)半田片投入状態、(d)半田片溶融状態、(e)半田片流出状態、(f)鏝先離間状態の6つの状態を挙げているが、これ以外の状態を判定するようにしてもよい。
(第3変形例)
上述の実施形態では、鏝先5aが半田を溶融できる高温の状態にある場合で説明している。しかしながら、ヒーター41の故障等によって鏝先5aが半田を溶融するために設定された正常温度範囲内から外れる場合もあり得る。鏝先5aを通過する窒素ガスは、鏝先5aの温度によって、膨張する程度や粘度が異なるため、流路抵抗も増減し、その結果、窒素ガスの圧力も変化する。例えば、鏝先5aの温度が低下すると窒素ガスの体積は減少し、粘度も低くなるので半田孔51における窒素ガスの圧力は低下する。このことを利用して、制御部Contは、半田孔51を大気に開放している状態、すなわち、鏝先5aが(a)基準状態のときの圧力P1aを記憶しておき、記憶している圧力P1aと計測した圧力P1とに基づいて、鏝先5aの温度を判定することが可能である。
また、供給されるガスの種類が、窒素と空気或いは酸素との混合ガスのように変化した場合も、流路抵抗が変化するため、半田孔51内の圧力P1に差異が生じる。このことを利用して、制御部Contは、半田孔51を大気に開放している状態、すなわち、鏝先5aが(a)基準状態のときの圧力P1aを記憶しておき、記憶している圧力P1aと計測した圧力P1とに基づいて、供給されているガスが窒素ガス(供給されるべきガス)であるか否か判定できる。これにより、制御部Contは、例えば、ガス配管接続の誤りを検出することが可能である。
第1変形例、第2変形例及び第3変形例の動作は、例えば、一定の周期ごとに行うものとすることができる。一定の周期とは、例えば、時間で管理してもよいし、半田付け回数で管理してもよい。また、半田付け装置Aの電源投入直後及び工程終了時に行うようにしてもよい。また、ランダムなタイミングで行うようにしてもよい。
(第2実施形態)
本実施形態に係る半田付け装置の他の例について図面を参照して説明する。図14は、本発明に係る半田付け装置の他の例を示す図である。なお、図14に示す半田付け装置Cでは、鏝先5cの溶融領域510よりも下流側において半田孔51と外周面とを貫通するガスリリース部52を備えている。それ以外は、第1実施形態の半田付け装置Aと同じ構成を有している。そのため、鏝先5cにおいて半田付け装置Aの鏝先5aと実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
ガスリリース部52は、半田孔51の溶融領域510よりも下流側において半田孔51と外部とを連通する部分であって、本実施形態では、ガスリリース部52は鏝先5cの外周面と半田孔51とを連通する貫通孔形状のものとしているが、これに限定されるものではない。例えば、半田孔51の溶融領域510よりも下流側と鏝先5cのZ方向下端との間に半田孔51と鏝先5cの外周面とを連通するように形成されたスリット形状や切り欠き形状であってもよい。また、上述の貫通孔、スリット、切り欠き以外にもガスリリース部52として(b)鏝先接触状態及び(e)半田片流出状態のときに半田孔51の窒素ガスを鏝先5cの外部に流出させることができる形状を広く採用することができる。
このような半田付け装置Cを用いたときの、制御部Contによる鏝先の状態の判定について、図面を参照して説明する。図15は、鏝先接触状態における鏝先と窒素ガスの流れを示す図である。図16は、半田片投入状態における鏝先と窒素ガスの流れを示す図である。図17は、半田片溶融状態における鏝先と窒素ガスの流れを示す図である。図18は、半田片流出状態における鏝先と窒素ガスの流れを示す図である。
半田付け装置Cにおいて、1回の半田付けにおける鏝先の取り得る状態は、第1実施形態と同じ、つまり、(a)基準状態、(b)鏝先接触状態、(c)半田片投入状態、(d)半田片溶融状態、(e)半田片流出状態、(f)鏝先離間状態である。そして、(a)基準状態、(f)鏝先離間状態に関しては、第1実施形態の半田付け装置Aと実質的に同じである。また、鏝先5cは、ガスリリース部52を設けており、ガスリリース部52からガスが流出可能な状態のとき、すなわち、(b)鏝先接触状態、(c)半田片投入状態、(e)半田片流出状態、の各状態において、半田孔51内を流れる窒素ガスの圧力は、第1実施形態のときよりも少なくなる。そのため、半田孔51内の圧力を圧力P11として説明する。例えば、(b)基準状態のとき、半田孔51内の圧力を圧力P11bとする。他の状態のときも同様に、圧力P11c、P11eとする。
図15に示す(b)鏝先接触状態のとき、半田孔51内の窒素ガスは、スルーホールThから外部に流出するとともに、リリース孔53及びガスリリース部52からも外部に流出する。そのため、半田孔51内の圧力P11はガスリリース部52が無いとき(第1実施形態)よりも低くなる。すなわち、半田孔51内の圧力P11b(<P1b)となる。また、図16に示す(c)半田片投入状態のときも同様に、半田片Whによって流路抵抗は増える。一方で、ガスリリース部52から窒素ガスが流出するので、半田孔51内の圧力P11は、ガスリリース部52が無いとき(第1実施形態)よりも低くなる。すなわち、半田孔51内の圧力P11c(<P1c)となる。そして、(c)半田片投入状態のときの半田孔51内の圧力P11cは、(b)鏝先接触状態の半田孔51内の圧力P11bよりも高い。
図17に示す(d)半田片溶融状態のとき、半田孔51の溶融領域510は、溶融した半田片Whで塞がれる。そのため、窒素ガスの流れ方向において、溶融領域510よりも下流側であるガスリリース部52から窒素ガスは流出しない。そのため、(d)半田片溶融状態のときの半田孔51内の圧力P11dは第1実施形態(P1d)とほぼ等しくなる。
図18に示す(e)半田片流出状態のとき、半田孔51のZ方向下端は、ランドLdによって塞がれる。また、溶融した半田片WhがランドLdのスルーホールThを塞いでいるため、窒素ガスは、スルーホールThからは流出しない。一方で、半田片Whは溶融して溶融領域510から回路基板Bd側に流出しているため、半田孔51内の窒素ガスは、ガスリリース部52から外部へ流出する可能となる。つまり、ガスリリース部52から窒素ガスは流出するので、半田孔51内の圧力P11は、ガスリリース部52が無いとき(第1実施形態)よりも低くなる。すなわち、(e)半田片流出状態のときの半田孔51内の圧力は、圧力P11e(<P1e)である。また、(e)半田片流出状態のとき、半田孔51の窒素ガスがガスリリース部52から流出しているため、圧力P11eは、(d)半田片溶融状態のときの圧力P11dに比べて低い。
以上のとおり、鏝先5cにガスリリース部52を設けることで、(b)鏝先接触状態のときの半田孔51内の圧力P11bと、(c)半田片投入状態のときの半田孔51内の圧力P11cと、(e)半田片流出状態のときの半田孔51内の圧力P11eとを第1実施形態の半田付け装置Aの場合と異なる値とすることができる。
そして、各状態での圧力P11は図19に示すグラフに示すとおりになる。図19は、半田付け装置Cが半田付けを1回行うときの配管の圧力の変化を示している。図19では、縦軸が半田孔51内の圧力P11、横軸が時間である。なお、以下の説明では、図10と異なる挙動を示す部分についてのみ説明するものとする。
図19に示すように、ガスリリース部52を備えた鏝先5cを用いることで、(d)半田片溶融状態を示す第4領域Ar4(半田孔51内の圧力P11d)の後に、半田孔51内の圧力P11eの(e)半田片流出状態を示す第5領域Ar5が現れる。
このように、鏝先5dにガスリリース部52を設けることで、(d)半田片溶融状態における半田孔51内の圧力P11dと、(e)半田片流出状態おける半田孔51内の圧力P11eとを異なる値とすることができる。これにより、制御部Contは、(e)半田片流出状態、すなわち、電子部品Epの端子NdとランドLdとを半田付けが完了したことをより正確に検知することができる。
なお、本実施形態においても、制御部Contは、各状態における配管の圧力をデータベースとして記憶して、圧力測定部75からの半田孔51内の圧力のデータと比較することで鏝先の状態を判定してもよい。また、図19に示すような、半田孔51内の圧力の時間変化を示すテーブルを記憶しておき、圧力測定部75からの圧力のデータを時系列に並べて、挙動及び値を比較することで、鏝先の状態を判定してもよい。
また、時間と圧力の関係(図10または図19)のそれぞれの計測値を記憶しておき品質管理のデータベースを作成し、経時的な変化や雰囲気温度などの相関を統計処理によって算出することができる。
さらに、複数の半田付け箇所が存在する場合には、半田付け箇所によって各状態における流体の変化値が異なる場合があるので、各半田付け箇所毎に上記データベースを作成し、半田付け場所毎に異なった閾値を用いて判定を行うことも可能である。
(第3実施形態)
図20に本発明に係る半田付け装置の他の実施形態を示す。第1実施形態及び第2実施形態で示した半田付け装置A,Cでは、少なくとも半田片溶融状態では、溶融領域510において溶融半田によって半田孔51が塞がれる。このとき、半田孔51内の窒素ガスや気化したフラックスなどはリリース孔53から外に排出されるが、その一部は圧力測定用孔54内にも進入するおそれがある。気化したフラックスなどを含んだガスが圧力測定用孔54に進入すると、圧力測定用孔54及び圧力測定用配管8の内周面にドロスなどの汚れが付着し、圧力測定部75の測定精度が低下するおそれがある。
そこで、図20に示す半田付け装置Dでは、圧力測定用配管8に不活性ガスを供給して圧力測定用孔54及び圧力測定用配管8に気化したフラックスなどを含んだガスが進入しないようにした。
具体的には、圧力測定用配管8に形成されたガス供給孔81にガス供給源GS2から不活性ガスがガス供給部7bを介して供給される。ここで、ガス供給孔81の形成位置は、圧力測定用管8内に不活性ガスの滞留部が形成されないようにする観点からは、圧力測定用配管8の圧力測定部75が取り付けられた端部側であるのが望ましい。ガス供給部7bは、配管70bと、第2調整部73と、第2計測部74とを有する。配管70bは、ガス供給源GS2からの不活性ガスをガス供給孔81に流入させる配管である。なお、図20では、便宜上、配管70bを線図で示しているが、実際にはガスが漏れない管体(例えば、樹脂管)である。また、ガス供給源GS2から不活性ガスは、ここではガス供給源GS1から供給されるガスと同じ窒素ガスとする。
ガス供給源GS2から供給される窒素ガスは、第2調整部73によって流量が調整される。そして第2計測部74が、第2調整部73から吐出される窒素ガスの流量を計測し、計測した窒素ガスの流量が予め決められた流量となるように第2調整部73に対して第2調整部73を制御する制御信号を送信している。なお、ガス供給源GS2から圧力測定用配管8に供給される窒素ガスの流量Q2は、気化したフラックスなどが圧力測定用配管8内に進入するのを防止できればよいため、半田孔51内を流れる窒素ガスの流量Q1に比べて遥かに少ない流量に設定される。また、圧力測定用配管8内の窒素ガスの圧力は半田孔51内の窒素ガスの圧力よりも高く設定される。
このような構成によれば、気化したフラックスなどを含んだガスが圧力測定用孔54に進入することが効果的に抑制され、圧力測定用孔54及び圧力測定用配管8の内周面へのドロスなどの汚れ付着が抑えられる。これにより長期間にわたって圧力測定部75の測定精度を高い状態で維持できる。
(変形例)
図20の半田付け装置Dでは、圧力測定用配管8内を流動させる窒素ガスをガス供給源GS2から供給していたが、ガス供給源GS1から圧力測定用配管8に窒素ガスを供給するようにしてもよい。すなわち、ガス供給源GS1から半田孔51内及び圧力測定用配管8内に窒素ガスを供給するようにしてもよい。このような構成によってガス供給源を1つとすることができる。この場合にも、ガス供給源GS1と圧力測定用配管8との間にガス供給部7bを設け、第2調整部73によって流量を調整するとともに第2計測部74によって窒素ガスの流量を計測し、圧力測定用配管8内に供給される窒素ガスの流量が予め決められた流量となるように制御する。また、圧力測定用配管8内の窒素ガスの圧力が半田孔51内の窒素ガスの圧力よりも高くなるように制御する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。