以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下、図1~図17を参照して、打込み工具の一例として、釘打ち機1について説明する。釘打ち機1は、釘101を直線状に打ち出すことで、被加工物(例えば、木材)100)に釘101を打込む釘打ち作業を行うことが可能な工具である。
まず、図1を参照して、釘打ち機1の概略構成について説明する。図1に示すように、釘打ち機1の外郭は、主に、工具本体10と、ハンドル14と、マガジン17とを主体として形成されている。
工具本体10は、本体ハウジング11とノーズ部12とを含む。
本体ハウジング11には、モータ2、ドライバ3、ドライバ駆動機構400、戻し機構(図示せず)等が収容されている。ドライバ3は、所定の動作線Lに沿って延在するドライバ通路300内を移動可能に配置されている。ドライバ駆動機構400は、動作線Lに沿ってドライバ3を移動させることで、釘101を釘打ち機1からドライバ3に釘101を打ち出させる機構である。戻し機構は、釘101を打ち出した後のドライバ3を元の位置に復帰させるように構成されている。
ノーズ部12は、動作線Lの延在方向(以下、単に動作線L方向という)における本体ハウジング11の一端に連結されている。ノーズ部12は、本体ハウジング11とは反対側の端部に、釘101が打ち出される射出口123を有する。射出口123は、ドライバ通路300の終端として釘打ち機1の外部に開口している。また、ノーズ部12には、動作線L方向に進退可能なコンタクトアーム13が配置されている。本体ハウジング11内には、常時にはオフ状態で維持され、コンタクトアーム13の押込みに応じてオン状態とされるコンタクトアームスイッチ(図示せず)が配置されている。
ハンドル14は、動作線L方向において本体ハウジング11の中央部から動作線Lと交差する方向に突出している。ハンドル14は、作業者によって把持される部位である。ハンドル14の基端部(本体ハウジング11に接続された端部)には、作業者によって引き操作されるトリガ140が設けられている。ハンドル14内には、常時にはオフ状態で維持され、トリガ140の引き操作に応じてオン状態とされるトリガスイッチ141が配置されている。また、ハンドル14の先端部(基端部とは反対側の端部)には、端子等を備えたバッテリ装着部15が設けられている。バッテリ装着部15には、充電式のバッテリ19が取り外し可能に装着されている。ハンドル14先端部の内部には、釘打ち機1の動作を制御するためのコントローラ18等が配置されている。コントローラ18には、前述のコンタクトアームスイッチ、トリガスイッチ141、後述のモータ2、ソレノイド715等が電気的に接続されている。
マガジン17は、複数の釘101を充填可能に構成されており、ノーズ部12に装着されている。マガジン17に充填された釘101は、釘送り機構(図示せず)によって、ドライバ通路300に一本ずつ供給される。なお、マガジン17の構成は周知であるため、その説明は省略する。
以下、釘打ち機1の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、動作線L方向(図1の左右方向)を釘打ち機1の前後方向と規定し、射出口123が設けられている側(図1の右側)を釘打ち機1の前側、反対側(図1の左側)を後側と規定する。また、動作線L方向に直交し、ハンドル14の延在方向に対応する方向(図1の上下方向)を釘打ち機1の上下方向と規定し、ハンドル14の基端部側(図1の上側)を上側、ハンドル14の先端部側(図1の下側)を下側と規定する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と規定する。
まず、ノーズ部12に保持されたコンタクトアーム13について説明する。図2~図4に示すように、コンタクトアーム13は、ノーズ部12の上側に配置されている。より詳細には、コンタクトアーム13は、ノーズ部12の上面に沿って前後方向に摺動可能に配置されている。コンタクトアーム13は、全体としては前後方向に延在する長尺状部材として形成されており、前端部132と、中央部133と、後端部134とを含む。前端部132は、コンタクトアーム13の先端部を構成する部分であって、射出口123の近傍に配置される。中央部133は、薄板状に形成され、ノーズ部12の上面に摺動可能に配置される。後端部134は、中央部133の左後端から上方に突出して後方に延び、更に左方へ屈曲している。なお、コンタクトアーム13のうち、後端部134は、前端部132および中央部133に比べて、ノーズ部12の上面から大幅に上方に突出している。コンタクトアーム13の後端部134には、スイッチ作動ロッド136が連結されている。より詳細には、スイッチ作動ロッド136は、棒状部材として構成されており、後端部134に連結されて、後方に延在している。なお、スイッチ作動ロッド136は、工具本体10の左右方向の中心線よりも左側に配置されている。
コンタクトアーム13は、圧縮コイルバネ137によって、常時前方に付勢されている。圧縮コイルバネ137は、スイッチ作動ロッド136に外装され、本体ハウジング11内に設けられたバネ受け部114(図4参照)に後端が当接するように配置されている。これにより、コンタクトアーム13に前方から外力が付与されていない状態では、コンタクトアーム13は、前端部132が射出口123よりも前方に突出する突出位置に保持される。コンタクトアーム13は、前端部132が被加工物100(図1参照)に押し付けられると、圧縮コイルバネ137の付勢力に抗して、スイッチ作動ロッド136と一体的に後方へ移動する。図示は省略するが、本体ハウジング11の左上端部内において、スイッチ作動ロッド136の後側には、コンタクトアームスイッチが配置されている。コンタクトアーム13が突出位置に配置されている場合、コンタクトアームスイッチはオフ状態で維持される。一方、被加工物100による押圧に応じて、コンタクトアーム13が突出位置よりも後方の所定位置(以下、後退位置という)まで移動すると、コンタクトスイッチがスイッチ作動ロッド136の後端部に押圧されてオン状態に切り替えられる。
本体ハウジング11の上前端部の左端には、釘101の打込み深さ調整用の調整ダイアル138が設けられている。詳細な図示は省略するが、コンタクトアーム13とスイッチ作動ロッド136は、螺合部を介して連結されている。そして、調整ダイアル138は、使用者による回転操作に応じて螺合部を回転させることで、コンタクトアーム13をスイッチ作動ロッド136に対して前後方向に移動させるように構成されている。これにより、調整ダイアル138は、コンタクトアーム13が突出位置に配置されたときの、射出口123に対する前端部132の位置(コンタクトアーム13の突出位置ともいえる)を変更可能とされている。なお、射出口123に対する前端部132の位置は、被加工物100に対する釘101の打込み深さに対応する。
また、図2~図4に示すように、工具本体10には、コンタクトアーム13の一部を覆うように構成されたコンタクトアームカバー9が設けられている。コンタクトアームカバー9については、後で詳述する。なお、本実施形態では、コンタクトアームカバー9は、コンタクトアーム13が不測の外力によって後方へ押圧されないようにコンタクトアーム13を保護するためのカバー部材としての機能と、ドライバ通路300(図1参照)を開閉するための通路開閉部材としての機能を具備するように構成されている。
次に、本体ハウジング11の内部に収容されたモータ2、ドライバ3、およびドライバ駆動機構400について順に説明する。
まず、モータ2について説明する。図5に示すように、ドライバ3の駆動源としてのモータ2は、本体ハウジング11の後下部に収容されている。また、モータ2は、出力シャフト(図示せず)の回転軸が動作線Lに直交して左右方向に延在するように配置されている。本実施形態では、モータ2として、小型で高出力であることから、ブラシレスDCモータが採用されている。モータ2の出力シャフトには、出力シャフトと一体的に回転するプーリ21が連結されている。なお、本実施形態では、コンタクトアーム13(図1参照)が被加工物100に押し付けられ、コンタクトアームスイッチがオン状態とされると、コントローラ18がバッテリ19からモータ2に対して電流を供給し、モータ2の駆動を開始する。
ドライバ3について説明する。図6に示すように、ドライバ3は、長尺状の部材であって、長軸に関して左右対称形状に形成されている。ドライバ3は、全体として概ね矩形薄板状に形成された本体部30と、本体部30よりも左右方向の幅が細く形成され、本体部30の前端から前方に延在する打撃部31と、本体部30の後部から左右に突出する一対のアーム部35とを含む。
本体部30は、後述する押圧ローラ83(図5参照)によって押圧されてリング部材5(図5参照)に摩擦係合する部位である。本体部30は、一対のローラ当接部301と、レバー当接部305と、一対のリング係合部306とを有する。以下、これらの部分について順に説明する。
一対のローラ当接部301は、本体部30の上面から上方へ突出し、本体部30の左右の端に沿って前後方向に延在するように、本体部30に一体的に形成されている。ローラ当接部301の突出端(上端)に形成された面部は、押圧ローラ83の外周面に当接する当接面として形成されている。また、ローラ当接部301の前端部は、後方に向けて高さ(上下方向の厚み)が漸増する傾斜部302として形成されている。一方、ローラ当接部301のうち傾斜部302の後側部分は、一定の高さを有する。レバー当接部305は、本体部30の上面から上方へ突出するように設けられ、本体部30の後部において左右のローラ当接部301をつなぐように、左右方向に延在する。レバー当接部305は、後述する押出しレバー711が後方から当接する部位である。
一対のリング係合部306は、本体部30の下面から下方へ突出し、本体部30の左右の端部に沿って前後方向に延在するように、本体部30に一体的に形成されている。リング係合部306の前端部は、後方に向けて高さ(上下方向の厚み)が漸増する傾斜部307として形成されている。一対のリング係合部306には、夫々、後述する2つのリング部材5の外周係合部51に係合可能な係合溝308が形成されている。各係合溝308は、リング係合部306の突出端から上方へ凹むように形成され、リング係合部306の全長に亘って前後方向に延在する。また、係合溝308は、左右方向の幅が上方に向けて狭くなるように(言い換えると、係合溝308を規定するリング係合部306の左右方向の壁面が上方へ向けて近づくように)形成されている(図9参照)。なお、ドライバ3とリング部材5との係合態様については後で詳述する。
本体部30の後端32は、ドライバ3の後端を規定する。後端32は、本体ハウジング11の後端部内に固定された後方ストッパ部118(図1参照)に当接することで、ドライバ3がそれ以上後方へ移動するのを規制する部位である。打撃部31の前端310は、ドライバの前端を規定する。前端310は、釘101(図1参照)の頭部を打撃し、釘101を前方へ打出して被加工物100に打ち込む部位である。
一対のアーム部35は、本体部30の左右に突出している。アーム部35は、本体ハウジング11前端部の内部に固定された一対の前方ストッパ部117(図1参照)に当接することで、ドライバ3がそれ以上前方へ移動するのを規制する部位である。なお、詳細説明および図示は省略するが、アーム部35は、接続部材によって、戻し機構に接続されている。本実施形態の釘打ち機1では、戻し機構として、いかなる公知の構成が採用されてもよい。例えば、打込み位置まで前方へ移動されたドライバ3を、接続部材を介して弾性部材(例えば、圧縮コイルバネや捩りコイルバネ)の弾性力で動作線Lに沿って初期位置へ引き戻すように構成された戻し機構を採用することができる。
以上のように構成されたドライバ3は、その長軸が動作線Lに沿って釘打ち機1の前後方向に延在するように配置される。また、ドライバ3は、動作線Lに沿って(釘打ち機1の前後方向に、またはドライバ3の長軸方向にとも言い換えられる)延在するドライバ通路300(図1参照)内を移動可能に保持されている。なお、本実施形態では、ドライバ通路300は、ドライバ3が通過可能な空間部として規定されている。ドライバ通路300は、その外周の一部が工具本体10の一部または内部機構の一部によって規定されている。つまり、本実施形態では、ドライバ通路300は、全長に亘ってその外周が何らかの物理的要素によって取り囲まれているわけではない。
ここで、図1および図7を参照して、ドライバ3の初期位置および打込み位置について説明する。初期位置とは、ドライバ駆動機構400が作動していない状態(以下、初期状態という)でドライバ3が保持される位置である。本実施形態では、図1に示すように、ドライバ3の初期位置は、ドライバ3の後端32が、後方ストッパ部118に当接する位置に設定されている。打込み位置とは、ドライバ駆動機構400によって前方へ移動されたドライバ3が釘101を被加工物に打ち込む位置である。本実施形態では、図7に示すように、ドライバ3の打込み位置は、ドライバ3の前端310が射出口123から僅かに突出した位置に設定されている。打込み位置は、一対のアーム部35の前端が、一対の前方ストッパ部117に後方から当接する位置でもある。上記の配置から、本実施形態では、初期位置と打込み位置は、ドライバ3の移動可能範囲の両端を規定する最後方位置と最前方位置であると言い換えることもできる。
ドライバ駆動機構400の詳細な構成について説明する。図5に示すように、本実施形態では、ドライバ駆動機構400は、フライホイール4と、2つのリング部材5と、保持機構6と、作動機構7と、押圧機構8とを含む。以下、これらの構成の詳細について順に説明する。なお、以下で参照する図1および図5では、説明の便宜上、後述するリング部材5の一部が破断された状態で図示されている。
まず、フライホイール4について説明する。図5に示すように、円筒状に形成されたフライホイール4は、本体ハウジング11内のモータ2の前側で、回転可能に支持されている。フライホイール4は、モータ2によって回転軸A1周りに回転駆動される。回転軸A1は、モータ2の回転軸と平行に、ドライバ3の動作線Lに直交する左右方向に延在する。フライホイール4の支持シャフトには、支持シャフトおよびフライホイール4と一体的に回転するプーリ41が連結されている。プーリ21とプーリ41にはベルト25が架け渡されている。よって、モータ2が駆動されると、モータ2の回転がベルト25を介してフライホイール4に伝達され、フライホイール4は図5の時計回り方向に回転する。
図8および図9に示すように、フライホイール4の外周45には、フライホイール4の全周に亘って延在する一対の係合溝47が形成されている。係合溝47には、リング部材5が係合可能である。係合溝47は、左右方向の幅が径方向内側に向けて狭くなるように形成されている。
リング部材5について説明する。図5に示すように、各リング部材5は、フライホイール4よりも大径のリング状に形成されている。本実施形態では、リング部材5の内径は、フライホイール4の外径(厳密には、フライホイール4の回転軸A1から係合溝47の底部までの径)よりも大きく設定されている。図8に示すように、2つのリング部材5は、夫々、フライホイール4の外周45に設けられた一対の係合溝47に対して径方向外側に配置されている。本実施形態では、2つのリング部材5は、後述する保持機構6によって、フライホイール4の外周45(より詳細には係合溝47)から離間した離間位置と、外周45(係合溝47)に一部が接触する接触位置との間で移動可能に保持されている。
各リング部材5は、フライホイール4の回転エネルギをドライバ3に伝達するための伝達部材であって、ドライバ3およびフライホイール4と摩擦係合可能に構成されている。具体的には、図9に示すように、リング部材5の外周側部分および内周側部分には、夫々、ドライバ3の係合溝308およびフライホイール4の係合溝47に係合可能な外周係合部51および内周係合部53が設けられている。外周係合部51は、リング部材5の径方向外側へ向けて突出する凸部として形成される一方、内周係合部53は、リング部材5の径方向内側へ向けて突出する凸部として形成されている。なお、リング部材5の径方向の断面形状は、概ね六角形状に形成されており、外周係合部51は、リング部材5の径方向外側へ向けて厚みが小さくなるように形成される一方、内周係合部53は、リング部材5の径方向内側へ向けて軸方向の厚みが小さくなるように形成されている。つまり、外周係合部51および内周係合部53は、いずれも先端に向けて断面が先細り形状に形成されている。なお、リング部材5と、ドライバ3およびフライホイール4との係合態様については後で詳述する。
保持機構6について説明する。保持機構6は、リング部材5を、フライホイール4の外周45(係合溝47)から離間した離間位置と、外周45(係合溝47)に接触する接触位置との間で移動可能に保持するように構成されている。図5および図8に示すように、本実施形態の保持機構6は、一対のリング付勢部60と、一対のストッパ66とで構成されている。一対のリング付勢部60は、リング部材5に対して斜め前下方と斜め後ろ下方に配置され、リング部材5を板バネによって下側から上方へ付勢した状態で回転可能に支持している。一対のストッパ66は、夫々、ドライバ3の下方、且つ、リング部材5に対して斜め前上方と斜め後ろ上方に配置され、リング部材5の回転を許容しつつ、リング部材5の上方への移動を規制するように構成されている。
ここで、保持機構6によるリング部材5の保持態様について説明する。図8に示すように、初期状態においては、リング付勢部60は下方からリング部材5に当接し、リング部材5を上方へ付勢する一方、ストッパ66はリング部材5に対して上方から当接し、リング部材5がそれ以上上方へ移動することを規制する。これにより、図9に示すように、リング部材5は、フライホイール4の全周に亘って、外周45(係合溝47)から離間した離間位置で保持される。なお、フライホイール4の上端部のみが図示されているが、フライホイール4の全周に亘って、同様に、リング部材5はフライホイール4の外周45(より詳細には係合溝47)から離間している。一方、詳細は後述するが、作動機構7によってドライバ3が前方へ移動されるのに伴って、リング部材5がドライバ3によって下方へ押圧されると、リング付勢部60の付勢力に抗してリング部材5が下方へ移動し、フライホイール4の上部において、外周45(係合溝47)に接触する接触位置で保持されることになる(図16参照)。
作動機構7について説明する。図5に示すように、作動機構7は、本体ハウジング11内において、ドライバ3よりも上方、且つ、フライホイール4よりも後方に配置されている。作動機構7は、初期位置に配置されたドライバ3を、後述する伝達位置に移動させるように構成された機構である。本実施形態では、作動機構7は、トリガスイッチ141(図1参照)がオン状態とされた場合にコントローラ18(図1参照)によって作動されるソレノイド715と、ソレノイド715によって回動される押出しレバー711とを主体として構成されている。初期状態では、押出しレバー711の先端部は、ドライバ3のレバー当接部305に対して斜め上後方に配置されている。ソレノイド715が作動されると、押出しレバー711が回動され、その先端部がレバー当接部305を後方から前方へ押圧することで、ドライバ3を前方へ移動させる(図15参照)。なお、ドライバ3およびドライバ駆動機構400の動作の詳細については後述する。
押圧機構8について説明する。図5に示すように、押圧機構8は、本体ハウジング11内で、フライホイール4とドライバ3との対向方向において、フライホイール4とは反対側でドライバ3と対向するように配置されている。つまり、押圧機構8は、ドライバ3に上方から対向するように配置されている。押圧機構8は、ドライバ3が初期位置から前方へ移動する過程で、リング部材5に向けて(つまり、フライホイール4に近づく方向に)ドライバ3を押圧することで、リング部材5を介したフライホイール4からドライバ3への回転エネルギの伝達を可能とするように構成されている。図5および図9に示すように、本実施形態では、押圧機構8は、ローラ支持部材81と、ローラ支持部材81に回転可能に支持された押圧ローラ83と、本体ハウジング11に支持されたホルダ85と、ローラ支持部材81とホルダ85の間に介在状に配置された弾性部材87とを含む。以下、これらの構成部材の詳細について順に説明する。
ローラ支持部材81は、バネ保持部811と、バネ受け部813と、ローラ支持部815とを含む。バネ保持部811は、上下方向を軸方向とする円柱状に形成された、ローラ支持部材81の上部を構成する部分である。バネ受け部813は、バネ保持部811の下端部から径方向外側に突出するフランジ状の部分である。ローラ支持部815は、バネ受け部813から下方に突出する、ローラ支持部材81の下部を構成する部分である。ローラ支持部815は、左右方向に延在するローラシャフト84を介して、左右一対の押圧ローラ83を回転可能に支持している。
ホルダ85は、ローラ支持部材81を上下方向に相対移動可能に保持している。また、ホルダ85は、本体ハウジング11に回動可能に支持され、通常は、コンタクトアームカバー9(詳細には、係止レバー91)によって係止されている。本実施形態では、ホルダ85は、収容部851と、バネ受け部853と、ストッパ部854と、支持部855と、係止受け部857とを含む。
収容部851は、概ね円筒状に形成されており、内部にローラ支持部材81の一部と弾性部材87を収容可能な収容空間852を有する(図9参照)。バネ受け部853は、収容部851の上部を覆う上壁部によって構成されている。バネ受け部853の中央部には、ローラ支持部材81の円柱状のバネ保持部811と概ね同径の貫通孔が形成されている。バネ保持部811は、この貫通孔内で上下方向に移動可能である。ストッパ部854は、収容部851の下端部から径方向内側に突出する部分である。図5に示すように、支持部855は、収容部851の前下端部から前方へ向けて斜め下方に延在している。ホルダ85は、支持部855に左右方向に挿通された回動シャフト856を中心として回動可能に本体ハウジング11に支持されている。係止受け部857は、収容部851の後下端部から後方へ屈曲して延在する板状部である。係止受け部857のうち、後方に延在する部分の上面は、後述する係止レバー91による係止の受け面858として機能する。
弾性部材87は、ローラ支持部材81とホルダ85の間に介在状に配置されている。本実施形態では、弾性部材87は、ローラ支持部材81のバネ保持部811の外周に直列状に配置された4つの皿バネで構成されている。ローラ支持部材81は、バネ保持部811に弾性部材87が外装された状態で、ホルダ85の収容部851(収容空間852)内に配置されている。弾性部材87は、ホルダ85のバネ受け部853とローラ支持部材81のバネ受け部813との間に、僅かに圧縮された状態で配置されている。これにより、押圧ローラ83を介してローラ支持部材81を上方に押し上げる外力が付与されていない場合、バネ受け部813は、弾性部材87の弾性力によって下方へ付勢され、ストッパ部854に上方から当接した状態で保持される。つまり、ストッパ部854によって、ローラ支持部材81および押圧ローラ83は、下方への移動が規制され、最下方位置で保持される。
以下、コンタクトアームカバー9の詳細な構成について説明する。
図3~図4に示すように、コンタクトアームカバー9は、全体としては長尺状に構成されている。コンタクトアームカバー9は、その長軸方向における一端部において、回動シャフト90を中心として回動可能に本体ハウジング11に支持されている。コンタクトアームカバー9の他端部は自由端部とされている。本体ハウジング11の前端部の左右方向中央部には、開口113が形成されている。回動シャフト90は、ホルダ85の係止受け部857の上方で、開口113内を左右方向に延在するように配置されている。コンタクトアームカバー9の回動可能範囲は、図3に示す閉位置と、図4に示す開位置との間の90度程度に設定されている。閉位置とは、コンタクトアームカバー9が、その自由端部が回動シャフト90に対して前側に配置された状態で概ね前後方向に延在し、コンタクトアーム13の一部(詳細には、後端部134)を覆う位置である。このとき、コンタクトアームカバー9の上端部は、本体ハウジング11の上面よりも下方に位置する。開位置とは、コンタクトアームカバー9が、その自由端部が回動シャフト90に対して上側に配置された状態で概ね上下方向に延在し、コンタクトアーム13を外部に露出させる位置である。
また、本実施形態では、コンタクトアームカバー9は、金属製の係止レバー91と、樹脂製のアウタカバー96とを含む。以下、これらの詳細構成について順に説明する。
図4、図11、図12に示すように、係止レバー91は、全体としては長尺状に形成されており、長軸方向の一端部に形成された貫通孔を介して、回動シャフト90に回動可能に支持される。以下、この端部を支持端部911という。支持端部911は、ホルダ85の係止受け部857の上方に配置される端部であって、ホルダ係止部912と、回動許容部913とを含む。ホルダ係止部912は、支持端部911のうち、コンタクトアームカバー9(係止レバー91)が閉位置に配置されたときに下側(つまり、受け面858に対向する側)に配置される部分である。回動許容部913は、支持端部911のうち、コンタクトアームカバー9(係止レバー91)が開位置に配置されたときに下側に配置される部分である。図11に示すように、コンタクトアームカバー9(係止レバー91)の回動軸A3(回動シャフト90の軸)とホルダ係止部912との間の距離は、回動軸A3と回動許容部913との間の距離よりも長く設定されている。また、係止レバー91は、支持端部911から回動軸A3に概ね直交する方向に帯状に延在するアーム部915を含む。アーム部915は、使用者によってテコ状に回動操作されるコンタクトアームカバー9の強度を高めるための補強部として設けられている。
図4、図10~図12に示すように、アウタカバー96は、全体としては概ね直線状に延在する長尺部材として形成されるとともに、概ねU字状の断面形状を有する。本実施形態では、アウタカバー96の内側に係止レバー91が嵌めこまれて両者が一体化されることで、単一部品としてのコンタクトアームカバー9が形成されている。以下、アウタカバー96の長軸方向の2つの端部のうち、係止レバー91の支持端部911が嵌めこまれ、回動シャフト90に回動可能に支持される方の端部を、支持端部961といい、他端部を自由端部962という。支持端部961と自由端部962の間で直線状に延在する部分を中央部963という。なお、図10および図11に示すように、コンタクトアームカバー9では、アウタカバー96の支持端部961からホルダ係止部912と回動許容部913が突出している。図12に示すように、係止レバー91のアーム部915は、アウタカバー96の中央部963の左右方向の中心線に沿って延在し、緩やかに屈曲して、自由端部962の右側部に沿って自由端部962の先端まで延びている。
アウタカバー96は、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されたときにコンタクトアームカバー9の外部に露出する部分である。言い換えると、アウタカバー96は、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されたときにコンタクトアームカバー9の外表面を形成する部分である。このため、アウタカバー96は、強度を必要とする係止レバー91が金属製であるのに対し、使用者の操作時の感触や、使用時に周囲の壁等を傷つける可能性の低減を考慮して、樹脂製とされている。
図2および図3に示すように、アウタカバー96は、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されたときに、コンタクトアーム13の後端部134(図4参照)を覆うように構成されている。このため、図3、図10および図12に示すように、後端部134を覆う自由端部962は、後端部134の形状に対応して、他の部分(支持端部961および中央部963)に比べて左方に張り出すように形成されるとともに、他の部分に比べて左右の側面部の突出量が大きく設定されている。また、図3に示すように、後端部134の後方に配置された調整ダイアル138は、自由端部962の後側、且つ、中央部963の左側で上方に露出している。つまり、アウタカバー96は、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されたときに、調整ダイアル138を操作可能に外部に露出させるように構成されている。これにより、使用者は、コンタクトアームカバー9を閉位置に配置したままの状態で、調整ダイアル138を操作して、釘101の打込み深さを適宜変更することができる。
更に、図2および図3に示すように、自由端部962と中央部963の境界領域の右側部には、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されたときに下方に突出する当接部965が設けられている。当接部965は、右側面視矩形状に形成されており、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されると、当接部965がノーズ部12の上面に当接した状態で保持される。当接部965の前側では、自由端部962とノーズ部12の上面との間には、隙間が形成される。使用者は、この隙間を利用して自由端部962に下から指を掛けてコンタクトアームカバー9を上方へ回動させることができる。また、当接部965の後側では、中央部963とノーズ部12の上面との間に隙間が形成される。使用者は、中央部963の上方に手を配置し、中央部963の左右両側から複数の指を掛けて上方へ持ち上げ、回動させることができる。つまり、自由端部962の下部と、当接部965の後側の中央部963の左右端部は、夫々、使用者が指を掛けることが可能な指掛け部として機能する。
このように、本実施形態では、コンタクトアームカバー9に指掛け部が複数設けられることで、コンタクトアームカバー9の操作性が高められている。また、テコ状に回動操作される長尺状のコンタクトアームカバー9は、操作位置が自由端部962側に近づくほど、回動に要する力が少なくてすむ。このため、本実施形態では、複数の指掛け部のうち、自由端部962の指掛け部は、指1本で操作可能に構成されているのに対し、支持端部961により近い指掛け部(当接部965の後側の中央部963の左右端部)は、複数の指を掛けることが可能に構成されている。
更に、図2、図10および図12に示すように、アウタカバー96の自由端部962の外表面のうち、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されたときの上面および左側面は、夫々、後方に向かって上方および左方へ傾斜するテーパ面として形成されている。言い換えると、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されたときに外部に露出する外表面のうち、最前端に配置される自由端部962の外表面は、後方に向かってドライバ通路300から離れる方向に傾斜するテーパ面を含む。これらのテーパ面によって、コンタクトアームカバー9に対して前方からの不測の外力が加えられた場合、コンタクトアームカバー9への影響を効果的に低減することができる。また、射出口123の周辺領域の視認性を高めることができる。
以下、コンタクトアームカバー9が閉位置および開位置に配置された場合の、係止レバー91の動作について説明する。なお、以下で参照する図13および図14では、係止レバー91を含むコンタクトアームカバー9は、右側面視での外形で模式的に図示されている。
図13に示すように、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されると、当接部965がノーズ部12の上面に当接する。また、ホルダ係止部912がホルダ85の係止受け部857の受け面858に上方から当接してホルダ85を係止する。押圧ローラ83は、ドライバ3に上方から当接した状態で保持される。これにより、コンタクトアームカバー9は、ドライバ通路300を閉じた状態となる。なお、詳細は後述するが、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置され、係止レバー91がホルダ85を係止している場合、ドライバ3が初期位置から前方へ移動する過程で、ドライバ3が押圧ローラ83によってリング部材5に押し付けられることで、リング部材5を介してフライホイール4の回転エネルギがドライバ3に伝達される。つまり、コンタクトアームカバー9は、閉位置に配置された場合、押圧ローラ83がドライバ3を押圧可能な状態(ドライバ3への回転エネルギの伝達を可能とする状態)で、ホルダ85を係止した状態にある。以下、この状態を、ロック状態という。
一方、図14に示すように、コンタクトアームカバー9が開位置に配置されると、ホルダ係止部912は係止受け部857の受け面858から離間する。受け面858の上方には回動許容部913が配置されるが、その位置は、コンタクトアームカバー9が閉位置に配置されたときのホルダ係止部912の位置(図13参照)よりも上方となる。これにより、ホルダ85は、回動シャフト856を中心として、回動許容部913に当接する位置まで、ドライバ3から離れる方向(つまり上方向)に回動可能となる。押圧ローラ83は、ドライバ通路300から離れる方向(上方)へ退避可能な状態となる。つまり、コンタクトアームカバー9は、ドライバ通路300を開放した状態となる。なお、この状態では、押圧ローラ83は、ドライバ3の上面に接触しても、ドライバ3を押圧することはできない。つまり、係止レバー91は、コンタクトアームカバー9が開位置に配置された場合、ロック状態が解除された状態となる。
なお、コンタクトアームカバー9(係止レバー91)は、釘101の打込み動作が行われる場合には閉位置(図13参照)に配置されている必要がある。しかし、何らかの要因でドライバ3が移動経路の途中で移動不能となった場合には、使用者は、コンタクトアームカバー9を開位置(図14参照)まで回動することで、ドライバ3を初期位置に復帰させることができる。この点については後述する。
以下、上述のように構成された釘打ち機1の動作について説明する。
上述の通り、初期状態では、ドライバ3は、図1および図5に示す初期位置に配置されている。また、コンタクトアームカバー9は閉位置に配置され、係止レバー91がホルダ85を係止している。このとき、図9に示すように、リング部材5は、保持機構6によって、フライホイール4の外周45(より詳細には係合溝47)から径方向外側に僅かに離間した離間位置に保持されている。このとき、押圧ローラ83は最下方位置で保持され、ドライバ3の本体部30の前端部に上方から滑り状態で接触しているが、ドライバ3を下方へ押圧している状態ではない。この状態では、リング部材5は、ドライバ3からも離間した位置に保持されている。より詳細には、リング部材5は、外周係合部51がドライバ3の係合溝308に対して僅かに下方へ離間した位置で保持されている。
ドライバ3が初期位置に配置された状態で、コンタクトアーム13が被加工物100に押し付けられ、コンタクトアームスイッチ(図示せず)がオン状態とされると、モータ2が駆動され、フライホイール4の回転が開始される。しかしながら、この段階では、リング部材5は離間位置に配置されているため、フライホイール4の回転エネルギをドライバ3に伝達不能な状態にある。よって、フライホイール4が回転しても、リング部材5およびドライバ3は動作しない。
その後、作業者によってトリガ140が引き操作され、トリガスイッチ141がオン状態とされることで、ソレノイド715が作動する。これにより、押出しレバー711が回動し、押出しレバー711の後端部がドライバ3のレバー当接部305を後方から前方へ押圧する。ドライバ3は、初期位置から打込み位置へ向かって、動作線Lに沿って前方へ移動を開始する。ドライバ3は、離間位置に保持されているリング部材5に対しても相対的に移動する。
押圧ローラ83は、後方へ向けて厚みが漸増する傾斜部302の当接面に前方から当接する。傾斜部302が押圧ローラ83に押圧されつつ前方へ移動するのに伴って、リング部材5の外周係合部51の一部がドライバ3の係合溝308(図9参照)に進入して、係合溝308の開口端に当接する。なお、リング係合部306の前端部に傾斜部307が形成されていること、また、係合溝308の左右方向の幅は、開口端側の方が広いことから、外周係合部51は、係合溝308にスムーズに進入することができる。押圧ローラ83が傾斜部302の当接面に当接し、外周係合部51の一部が係合溝308の開口端に当接した状態で、ドライバ3が更に前方へ移動すると、傾斜部302はカムとして機能し、また、くさび効果を発揮する。このため、離間位置に保持されていたリング部材5がリング付勢部60の板バネの付勢力に抗して下方へ押し下げられると共に、最下方位置に保持されていた押圧ローラ83が弾性部材87の弾性力に抗して上方へ押し上げられる。
ドライバ3が更に前方へ移動し、図15に示す伝達位置に達すると、図16に示すように、下方へ移動されたリング部材5の内周係合部53の一部がフライホイール4の係合溝47に進入して、係合溝47の開口端に当接し、リング部材5は、それ以上下方への移動が禁止された状態となる。このとき、リング部材5は、ストッパ66から離間した状態でリング付勢部60によって最下方位置で回転可能に支持されており、内周係合部53の一部のみがフライホイール4の上部に当接している。つまり、リング部材5は、保持機構6によって接触位置に保持されている。また、傾斜部302によって押圧ローラ83が押し上げられることで圧縮された弾性部材87の弾性力により、リング部材5は、ドライバ3を介してフライホイール4に対して押し付けられている。このため、ドライバ3の係合溝308の開口端において、ドライバ3とリング部材5の外周係合部51の一部が摩擦係合状態に置かれるとともに、フライホイール4の係合溝47の開口端において、フライホイール4とリング部材5の内周係合部53の一部が摩擦係合状態に置かれる。
このように、リング部材5がドライバ3およびフライホイール4と摩擦係合状態に置かれることで、リング部材5は、フライホイール4の回転エネルギをドライバ3に伝達可能となる。なお、「摩擦係合状態」とは、2つの部材が互いに摩擦力によって係合した状態(滑り状態を含む)をいう。リング部材5は、リング部材5の内周係合部53のうち、ドライバ3によってフライホイール4に押し付けられた部分のみがフライホイール4と摩擦係合した状態で、フライホイール4によって回転軸A2周りに回転される。なお、本実施形態では、図15に示すように、リング部材5はフライホイール4よりも大径に形成されており、リング部材5の内径はフライホイール4の外径(厳密には、フライホイール4の回転軸A1から係合溝47の底部までの径)よりも大きい。このため、リング部材5の回転軸A2は、フライホイール4の回転軸A1とは異なっており、回転軸A1よりも下方(ドライバ3から離れる方向)に位置する。なお、回転軸A2は、回転軸A1に対して平行に延在する。リング部材5は、リング部材5と摩擦係合した状態のドライバ3を、図15に示す伝達位置から前方へ向けて押し出す。
ドライバ3が伝達位置から前方へ押し出され、図17に示すように、押圧ローラ83が、ローラ当接部301のうち傾斜部302の後側部分の当接面に当接すると、押圧ローラ83は最上方位置まで押し上げられ、弾性部材87の弾性力により、リング部材5は、ドライバ3を介してフライホイール4に対して更に押し付けられる。よって、ドライバ3と外周係合部51の一部、および、フライホイール4と内周係合部53の一部は、より強固に摩擦係合した状態となる。これにより、リング部材5は、より効率的にフライホイール4の回転エネルギをドライバ3に伝達することができる。なお、図17は、ドライバ3が釘101(図1参照)を打撃する打撃位置に配置された状態を示している。
ドライバ3は、打撃位置に達して釘101を打撃し、更に、図7に示す打込み位置まで移動して、釘101を被加工物100に打ち込む。ドライバ3のアーム部35の前端が前方ストッパ部117に後方から当接することで、ドライバ3の移動が停止される。コントローラ18は、トリガスイッチ141がオン状態とされてからドライバ3が打撃位置に到達するまでに必要な所定時間が経過すると、ソレノイド715への電流供給を停止することで、押出しレバー711を初期位置に戻す。この状態で作業者がコンタクトアーム13の被加工物100への押し付けを解除し、コンタクトアームスイッチ(図示せず)がオフ状態とされると、コントローラ18は、モータ2の駆動を停止する。これに伴い、フライホイール4の回転が停止すると共に、戻し機構(図示せず)が作動し、ドライバ3を初期位置に復帰させる。
以上のようなドライバ3による釘101の打込み動作の過程で、例えば釘101がドライバ通路300に詰まってしまった場合、ドライバ3がドライバ通路300内で停止してしまう可能性がある。例えば、ドライバ3が図17に示す打撃位置付近で停止してしまった場合、弾性部材87の弾性力によって押圧ローラ83がドライバ3とリング部材5をフライホイール4に強く押圧しているため、モータ2が停止されても、戻し機構(図示せず)によってドライバ3を初期位置に戻すことができない。つまり、ドライバ3がドライバ通路300内に詰まってしまう。このような場合、図14に示すように、使用者は、コンタクトアームカバー9を開位置まで回動し、ドライバ通路300を開放すればよい。これにより、弾性部材87の圧縮が解除されるのとともにホルダ85が上方へ回動し、ドライバ3に対する押圧ローラ83の押圧が解除される。その結果、戻し機構(図示せず)がドライバ3を初期位置(図1参照)まで復帰させることが可能となる。
以上に説明したように、本実施形態の釘打ち機1では、工具本体10に支持され、コンタクトアーム13の後端部134を覆うように構成されたコンタクトアームカバー9は、ドライバ3が通過するドライバ通路300を開閉する通路開閉部材を兼用している。よって、使用者は、釘打ち作業時にはコンタクトアームカバー9を閉位置に配置しておくことで、コンタクトアームカバー9によって後端部134を覆って保護し、被加工物100に対する押し付け以外の不測の外力によってコンタクトアーム13が押圧されてしまう可能性を低減することができる。また、木片、粉塵等の異物の侵入を抑制することができる。一方、何らかの要因でドライバ通路300でドライバ3が詰まってしまった場合、コンタクトアームカバー9を開位置へ移動させることで打込み通路を開放し、ドライバ3の詰まりを解消することができる。
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る打込み工具は、例示された釘打ち機1の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示す釘打ち機1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
例えば、コンタクトアーム13のうち、コンタクトアームカバー9が覆う部分は、変更されてもよい。上記実施形態では、コンタクトアームカバー9は、閉位置に配置されたとき、コンタクトアーム13のうち後端部134のみを覆うように構成されている。これは、次の理由による。コンタクトアーム13のうち、前端部132は、被加工物100に押し付けられる部分であるため、外部に露出している必要がある。中央部133は薄板状に形成されて、ノーズ部12の上面を摺動可能に配置されているため、後端部134に比べれば不測の外力の影響を受けにくい。そこで、上記実施形態では、コンタクトアームカバー9は、コンパクト化を考慮して、中央部133を覆わない構成とされている。しかしながら、コンタクトアームカバー9は、中央部133も覆う(つまり、前端部132よりも後側の部分を覆う)ように構成されてもよい。また、コンタクトアーム13とは異なる形状のコンタクトアームが採用される場合には、その形状に応じてコンタクトアームカバー9も変更されればよい。この場合も、コンタクトアームカバーは、閉位置に配置されたときに、コンタクトアームのうち、ノーズ部12の外表面からの突出量が比較的大きい部分を覆うように構成されていることが好ましい。
上記実施形態では、コンタクトアームカバー9は、金属製の係止レバー91が樹脂製96のアウタカバー96に嵌め込まれることで形成されているが、係止レバー91とアウタカバー96が一体成形されることで形成されてもよい。また、コンタクトアームカバー9は、全体が金属で形成されてもよいし、樹脂で形成されてもよい。
コンタクトアームカバー9の形状は、適宜変更されてよい。例えば、指掛け部の位置や数が変更されてもよいし、係止レバー91の形状が変更されてよい。また、例えば、アウタカバー96のテーパ面は上記実施形態で例示されたのとは異なる部分にあってもよいし、テーパ面の数も限定されるものではない。なお、釘打ち作業時にコンタクトアームカバー9が周囲の壁等に当たる可能性を低減し、且つ、射出口123の周辺領域の視認性を高めるという観点からは、側面視で、コンタクトアーム13の前端と本体ハウジング11の最上部を結ぶ線よりも上側に突出する部分がある場合は、その部分にテーパ面を設けることが好ましい。同様に、平面視で、コンタクトアーム13の前端と本体ハウジング11の左側部を結ぶ線よりも左側に突出する部分やコンタクトアーム13の前端と本体ハウジング11の右側部を結ぶ線よりも右側に突出する部分がある場合は、その部分にテーパ面を設けることが好ましい。また、これらの線から突出するアウタカバー96の部分をできるだけ小さくすることが更に好ましい。
コンタクトアームカバー9によるドライバ通路300の開閉態様は、上記実施形態の例示に限られるものではない。例えば、コンタクトアームカバー9は、釘101詰まり時にドライバ通路300を開放可能に構成されてもよい。具体的には、例えば、ノーズ部12の上面を形成する上壁部に、コンタクトアームカバー9に連動して開閉可能なカバー部を設けてもよい。そして、コンタクトアームカバー9を、閉位置に配置された場合にはコンタクトアーム13の少なくとも一部を覆い、且つ、このカバー部を閉じる一方、開位置に配置された場合にはコンタクトアーム13を露出させ、且つ、このカバー部を開放するように構成してもよい。この場合、使用者は、コンタクトアームカバー9を開位置に配置することでドライバ通路300を開放し、釘101の詰まりを解消する措置を講じることができる。
打ち込み工具は、釘101以外の打込み材を打出す工具であってもよい。例えば、鋲、ピン、ステープル等を打出すタッカ、ステープルガンとして具現化されてもよい。また、フライホイール4の駆動源は、特にモータ2に限定されない。例えば、直流モータに代えて交流モータが採用されてもよい。
ドライバ3の形状や、ドライバ3を駆動するドライバ駆動機構400の構成は、適宜、変更可能である。例えば、ドライバ3のローラ当接部301において、傾斜部302は、側面視で全体が直線状に形成されていてもよいし、少なくとも一部が緩やかな円弧状に形成されていてもよい。つまり、傾斜部302の上面(押圧ローラ83との当接面)は、全体が平面であってもよいし、全体が湾曲面であってもよいし、一部が平面で一部が湾曲面であってもよい。また、傾斜部302の傾斜度合いは途中で変化していてもよい。傾斜部302はより長く設けられてもよいし、ローラ当接部301は、後方に向けて厚みが漸増する傾斜部を複数含んでいてもよい。
また、ドライバ駆動機構400に代えて、ドライバ3をフライホイール4に摩擦係合させることで、リング部材43を介することなく、フライホイール4からドライバ3に直接回転エネルギを伝達するように構成された駆動機構が採用されてもよい。あるいは、モータの駆動、ガス等の燃料の燃焼、または圧縮空気の供給によって、シリンダ内に配置されたピストンを往復駆動し、空気バネの作用によってドライバ3を移動させるように構成された駆動機構が採用されてもよい。
リング部材5と、ドライバ3およびフライホイール4との係合態様は、上記実施形態で例示された態様には限られない。例えば、リング部材5の数と、リング部材5に対応するドライバ3の係合溝308およびフライホイール4の係合溝47の数は、1であってもよいし、3以上であってもよい。また、例えば、外周係合部51および内周係合部53、並びに対応する係合溝308および係合溝47の形状、配置、数、係合位置等は、適宜変更が可能である。保持機構6のリング付勢部60およびストッパ66の構成は、何れも適宜変更可能である。
更に、本発明および上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の構成(態様)が構築される。以下の構成のうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示す釘打ち機1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記カバー部材は、長軸方向における一端部に設けられた支点を中心として回動可能な長尺状のレバーとして構成され、
前記複数の指掛け部は、前記長軸方向において異なる位置に設けられ、
前記複数の指掛け部のうち、前記支点により近い位置に設けられた指掛け部は、複数の指を掛けることか可能に構成されていてもよい。
[態様2]
前記フライホイールの前記回転エネルギを前記ドライバに伝達可能に構成されたリング部材と、
前記ドライバを、初期位置から、前記リング部材が前記ドライバに前記回転エネルギを伝達可能となる伝達位置へ、前記リング部材に対して前方へ相対移動させるように構成されたドライバ移動機構とを更に備え、
前記ドライバが前記初期位置に配置されている場合、前記リング部材は前記フライホイールの前記外周に対して遊嵌状に配置されており、
前記ドライバ移動機構によって前記ドライバが前記伝達位置に移動された場合、前記ドライバは、前記押圧ローラによって前記リング部材に対して押圧され、これにより、前記リング部材は、前記ドライバおよび前記フライホイールと摩擦係合し、前記フライホイールの回転軸とは異なる回転軸周りに前記フライホイールによって回転され、前記回転エネルギを前記ドライバに伝達することを特徴とする打込み工具。
なお、リング部材5は、本態様における「リング部材」に対応する構成例である。作動機構7は、本態様における「ドライバ移動機構」に対応する構成例である。
[態様3]
前記打込み工具は、前記リング部材を、前記フライホイールの前記外周から離間した離間位置と、前記外周に一部が接触する接触位置の間で移動可能に保持する保持機構を更に備え、
前記保持機構は、
前記ドライバが前記初期位置に配置されている場合には、前記リング部材を前記離間位置で保持し、且つ、
前記ドライバ移動機構によって前記ドライバが前記伝達位置に移動された場合に、前記ドライバの移動に応じて移動された前記リング部材を前記接触位置で保持してもよい。
なお、保持機構6は、本態様における「保持機構」に対応する構成例である。