JP7104559B2 - 被加工物の加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基板の裏面に膜を有した被加工物の加工方法に関する。
表面にストリート(分割予定ライン)として設定される幅を縮小してウェーハ毎のチップの数を増やすため、及び加工時間を短縮するために、プラズマエッチングを利用して被加工物であるウェーハを分割する所謂プラズマダイシング(例えば、特許文献1参照)が従来から用いられている。
しかし、基板の裏面に電極となる金属膜が成膜されたウェーハや、基板の裏面にDAF等の樹脂からなる膜が形成されたウェーハにおいては、膜がエッチングされない、又は非常にエッチングがされにくく、プラズマダイシングによる分割が困難であるという問題がある。
そこで、プラズマダイシング後にウェーハの裏面側(膜側)から二酸化炭素粒子等を噴射して、ダイシングが施された分割予定ラインに対応する領域の膜を除去する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
特開2006-210401号公報 特開2016-103622号公報
しかし、特許文献2に記載されているように、被加工物の基板の裏面にテープを貼着して表面を露出させ、表面側から基板をプラズマダイシングして分割した後、基板の表面にテープを貼着して裏面のテープを除去する転写作業を実施するのは非常に手間がかかると共にテープコストも嵩むため、改善が切望されている。また、転写作業中にプラズマダイシングで分割され形成されたチップ同士が接触して損傷してしまうおそれもある。
よって、基板の裏面に膜を有した被加工物を分割する場合には、テープの転写作業等を行わずにチップの損傷を防止するとともに作業性を高めて生産性を向上するという課題が
ある。
上記課題を解決するための本発明は、基板と、該基板の裏面に形成された膜と、を備え、表面に交差する複数の分割予定ラインが設定された被加工物の加工方法であって、被加工物の該裏面に、基材と糊層とを備えたテープを貼着するテープ貼着ステップと、該テープ貼着ステップを実施した後、被加工物の該表面側からプラズマエッチングを施して該分割予定ラインに沿って溝を該基板に形成することで該基板を複数のチップへ分割するエッチングステップと、該エッチングステップを実施した後、超音波振動子で超音波振動を付与した水中に被加工物を水没させて該膜に該チップの外周縁に沿って亀裂を生成する、又は該膜を該チップの外周縁に沿って破断する水没ステップと、該水没ステップを実施した後、該テープから該チップをピックアップすることで裏面に膜を有するチップを形成するピックアップステップと、を備え、該水没ステップでは、該超音波振動子と被加工物の該溝が形成された表面とが対面する向きに被加工物を水没させる加工方法である。
本発明に係る被加工物の加工方法は、被加工物の裏面に、基材と糊層とを備えたテープを貼着するテープ貼着ステップと、テープ貼着ステップを実施した後、被加工物の表面側からプラズマエッチングを施して分割予定ラインに沿って溝を基板に形成することで基板を複数のチップへ分割するエッチングステップを行い、エッチングステップを実施した後、超音波振動子で超音波振動を付与した水中に被加工物を水没させて膜にチップの外周縁に沿って亀裂を生成する、又は膜をチップの外周縁に沿って破断する水没ステップと、水没ステップを実施した後、テープからチップをピックアップすることで裏面に膜を有するチップを形成するピックアップステップと、を備えることで、テープの貼り替えが不要となるため、作業性が向上し、生産性が向上する。また、テープの転写作業を行わないため、転写作業中に起こり得る隣接するチップ同士の接触による損傷も発生しない。
水没ステップでは、超音波振動子と被加工物の表面とが対面する向きに被加工物を水没させることで、超音波振動を付与した水中に水没させた被加工物の膜にチップの外周縁に沿ってより亀裂を生成しやすくすることができる、又は膜をチップの外周縁に沿ってより破断しやすくすることができる。
被加工物の一例を示す斜視図である。 裏面にテープが貼着され環状フレームで支持された被加工物を示す斜視図である。 スピンコータを用いて被加工物の表面に保護膜層を形成している状態を示す断面図である。 分割予定ラインに沿って被加工物の保護膜層にレーザビームを照射して、保護膜層を除去して被加工物の表面にマスクを形成している状態を示す断面図である。 被加工物にプラズマエッチングを施すプラズマエッチング装置の一例を示す断面図である。 プラズマエッチングが施された被加工物の一部を示す断面図である。 超音波振動子を備える水槽の一例を示す断面図である。 超音波振動を付与した水中に被加工物を水没させて膜にチップの外周縁に沿って亀裂を生成する、又は膜をチップの外周縁に沿って破断する状態を説明する断面図である。 テープからチップをピックアップすることで裏面に膜を有するチップを形成している状態を説明する断面図である。
以下に、本発明に係る加工方法を実施して図1に示す被加工物WをデバイスDを備えるチップへと分割する場合の、加工方法の各ステップについて説明していく。
図1に示す被加工物Wは、例えば、シリコンからなる基板W1を備える円形の半導体ウェーハであり、基板W1の表面、即ち、被加工物Wの表面W1aには複数の分割予定ラインSがそれぞれ直交差するように設定されている。分割予定ラインSによって区画された格子状の領域には、デバイスDがそれぞれ形成されている。図1において-Z方向側に向いている基板W1の裏面W1bには、銅及びニッケル等の金属からなる一様な厚さ(例えば、0.5μm~30μm程度)の導電性の膜W2が形成されており、膜W2の露出面は、被加工物Wの裏面W2bとなる。なお、被加工物Wの構成は本実施形態の例に限定されるものではない。例えば、基板W1はシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよく、また、膜W2は、金属膜ではなく、例えばDAF(Die Attach Film)やDBF(Die Backside Film)等の厚さ5μm~30μm程度の樹脂を母材とする膜であってもよい。
(1)テープ貼着ステップ
被加工物Wは、図2に示すように裏面W2bにテープTが貼着される。テープTは、例えば、被加工物Wよりも大径の円形のテープであり、図3において拡大して示す例えばポリオレフィン系樹脂等からなる基材Tdと、基材Td上の粘着力のある糊層Tcとからなる。糊層Tcには、例えば、紫外線を照射すると硬化して粘着力が低下するUV硬化糊が用いられていてもよい。
例えば、図示しない貼り付けテーブル上に載置された被加工物Wの中心と図2に示す環状フレームFの開口の中心とが略合致するように、被加工物Wに対して環状フレームFが位置付けられる。そして、貼り付けテーブル上でプレスローラー等により被加工物Wの裏面W2bにテープTの糊層Tcが押し付けられて貼着される。同時に、テープTの糊層Tcの外周部を環状フレームFにも貼着することで、被加工物Wは、テープTを介して環状フレームFに支持され、環状フレームFを介したハンドリングが可能な状態になる。なお、被加工物Wだけに先にテープTをプレスローラー等で貼着した後、環状フレームFに対して被加工物Wを適切に位置付けて、環状フレームFにテープTを貼着してもよい。
例えば、環状フレームF及びテープTは、後のエッチングステップで使用されるエッチングガス(例えば、SFガスやCガス)に対する耐性を備えているものを用いると好ましい。即ち、例えば、環状フレームFはSUSで形成されており、テープTはポリオレフィン等で形成されていると好ましい。
なお、テープ貼着ステップは、本実施形態のように最初に実施されていなくてもよく、少なくとも、後述するエッチングステップを実施する前段階までに実施されていればよい。これは、プラズマエッチング後における被加工物Wのハンドリングを、環状フレームFを用いて容易に行えるようにするためである。
(2)保護膜層の形成
環状フレームFによるハンドリングが可能となった被加工物Wは、例えば、図3に示すスピンコータ4に搬送される。スピンコータ4は、例えば、被加工物Wを保持する保持テーブル40と、保持テーブル40を回転させる回転手段42と、上端側に円形の開口を備え保持テーブル40を収容する有底円筒状のケーシング44とを備えている。
保持テーブル40は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材等からなり図示
しない吸引源に連通する保持面40aを備えている。保持テーブル40の周囲には、環状フレームFを固定する固定クランプ401が周方向に所定間隔を空けて均等に配設されている。保持テーブル40は、被加工物Wが載置される際には上昇して搬入・搬出高さ位置に位置付けられ、また、吸引保持した被加工物Wに液状の保護膜剤が塗布される際には、ケーシング44内における塗布高さ位置まで下降する。
保持テーブル40は、下方に配設された回転手段42によりZ軸方向の軸心周りに回転可能となっている。
ケーシング44は、保持テーブル40を囲繞する側壁440と、側壁440の下部に連接し中央に回転手段42の回転軸が挿通される開口を有する底板441と、底板441の開口の内周縁から立設する内側壁442とから構成され、底板441に一端が固定された脚部443により支持されている。保持テーブル40の下面とケーシング44の内側壁442の上端面との間には、回転手段42の回転軸に挿嵌され該回転軸と底板441の開口との隙間に異物を入り込ませないようにするカバー部材444が配設されている。
ケーシング44内には、保持面40aで吸引保持された被加工物Wに保護膜剤を滴下するノズル45が配設されている。ノズル45は、底板441から立設しており、側面視略L字状の外形を備え、Z軸方向の軸心周りに旋回可能である。ノズル45の先端部分に形成された供給口450は、保持テーブル40の保持面40aに向かって開口している。
ノズル45は、保護膜剤を蓄えた保護膜剤供給源47に配管47a及び図示しないロータリージョイントを介して連通している。保護膜剤供給源47に蓄えられた保護膜剤は、例えば、水溶性樹脂(ポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコール等)からなる水溶性の保護膜剤であるが、レジスト液等であってもよい。
被加工物Wが、テープT側を下にして保持テーブル40の保持面40a上に載置され、保持テーブル40により被加工物Wが吸引保持される。また、各固定クランプ401により環状フレームFが固定される。次いで、被加工物Wを保持した保持テーブル40がケーシング44内の塗布高さ位置まで下降する。また、ノズル45が旋回し、供給口450が被加工物Wの中央上方に位置付けられる。
次いで、保護膜剤供給源47が保護膜剤をノズル45に供給し、供給口450から被加工物Wの表面W1aに所定量の保護膜剤が滴下される。そして、保持テーブル40が低速で回転することで、滴下された保護膜剤が遠心力により表面W1aの中心側から外周側に向けて流れて全面にいきわたり、ほぼ一様な厚さの保護膜層Jが形成される。その後、回転を継続して保護膜層Jを回転乾燥させる。なお、保護膜層Jの乾燥は、保持テーブル40の上方にヒータやキセノンフラッシュランプを位置付けて、ヒータやキセノンフラッシュランプによって保護膜層Jを加熱して行ってもよい。
(3)マスクの形成
表面W1aに保護膜層Jが形成された被加工物Wは、例えば、図4に示すレーザ加工装置1に搬送される。レーザ加工装置1は、被加工物Wを吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの保護膜層Jに対して吸収性を有する波長のレーザビームを照射するレーザビーム照射手段11とを少なくとも備えている。
チャックテーブル10は、Z軸方向の軸心周りに回転可能であるとともに、図示しない移動手段によってX軸方向及びY軸方向に往復移動可能となっている。チャックテーブル10は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材からなり被加工物Wを吸着する保持部100と、保持部100を支持する枠体101とを備える。保持部100は、真空発生装置等の吸引源109に吸引路109a及び吸引路109a上に配設されたソレノイ
ドバルブ109bを介して連通する。ソレノイドバルブ109bが開かれた状態で吸引源109が作動することで、吸引源109が生み出す吸引力が保持部100の露出面であり枠体101の上面と面一に形成されている保持面100aに伝達され、チャックテーブル10は保持面100a上で被加工物Wを吸引保持する。チャックテーブル10の周囲には、環状フレームFを固定する固定クランプ103が周方向に所定間隔を空けて均等に配設されている。
レーザビーム照射手段11は、レーザビーム発振器119から発振されたレーザビームを、伝送光学系を介して集光器111の内部の集光レンズ111aに入光させることで、チャックテーブル10で保持された被加工物Wの保護膜層Jにレーザビームを正確に集光して照射できる。レーザビームの集光点位置は、図示しない集光点位置調整手段によりZ軸方向に調整可能となっている。
まず、被加工物Wが、テープT側を下にしてチャックテーブル10の保持面100a上で吸引保持され、環状フレームFが固定クランプ103で挟持固定される。そして、レーザビームを被加工物Wに照射するための基準となる分割予定ラインSの位置が図示しないアライメント手段によって検出される。図示しないアライメント手段は、被加工物Wを表面W1a側から撮像した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理を行い、被加工物Wの分割予定ラインSの座標位置を検出する。
分割予定ラインSが検出されるのに伴って、チャックテーブル10がY軸方向に移動し、分割予定ラインSとレーザビーム照射手段11の集光器111との位置合わせがなされる。次いで、集光レンズ111aによって集光されるレーザビームの集光点位置が保護膜層Jの高さ位置に合わせられる。そして、レーザビーム発振器119が保護膜層Jに吸収性を有する波長のレーザビームを発振し、レーザビームを保護膜層Jに集光し照射する。また、被加工物Wが往方向である-X方向(紙面奥側)に所定の加工送り速度で送られ、レーザビームが分割予定ラインSに沿って保護膜層Jに照射されていくことで、保護膜層Jが溶融・蒸発することで除去されて、分割予定ラインSに対応する基板W1の表面W1aが露出する。
分割予定ラインSに沿ってレーザビームを照射し終える所定の位置まで被加工物Wが-X方向に進行すると、レーザビームの照射を停止するとともチャックテーブル10がY軸方向に移動され、-X方向での加工送りにおいて基準となった分割予定ラインSに隣接する分割予定ラインSと集光器111とのY軸方向における位置合わせが行われる。被加工物Wが復方向である+X方向(紙面手前側)へ加工送りされ、往方向でのレーザビームの照射と同様に、保護膜層Jが除去され分割予定ラインSに対応する基板W1の表面W1aが露出する。順次同様のレーザビームの照射をX軸方向に延びる全ての分割予定ラインSに沿って行った後、チャックテーブル10を90度回転させてから同様のレーザビームの照射を行うと、被加工物Wの表面W1aの分割予定ラインSに対応する領域以外の領域に図5に示すマスクJ1が形成された状態になる。
なお、(2)保護膜層の形成、及び(3)マスクの形成は図1に示す被加工物Wの状態によっては実施しなくてもよい。即ち、一般的には、図1に示す被加工物WのデバイスDを形成する際に、デバイスDが形成された表面W1a側の全域には、外部からの汚染や不純物等の進入からデバイスDを保護する役割を有するパシベーション膜(例えば、二酸化ケイ素膜)がプラズマCVD法等で積層されるが、デバイスDの最表層となるパシベーション膜を分割予定ラインSに対応した領域を抜いておくように形成して、デバイスDを個々に保護する該パシベーション膜をプラズマエッチング用のマスクにしてもよい。
(4)エッチングステップ
上記マスクの形成を実施した後、例えば、図5に示すプラズマエッチング装置9を用いて、マスクJ1を介して被加工物Wに表面W1a側からプラズマエッチングを施して分割予定ラインSに沿ったエッチング溝を形成する。
図5に示すプラズマエッチング装置9は、被加工物Wを保持する保持手段90と、ガスを噴出するガス噴出ヘッド91と、保持手段90及びガス噴出ヘッド91を内部に収容したチャンバ92とを備えている。
なお、プラズマエッチング装置は、誘電コイルにプラズマ発生用の高周波電力を印加し、誘電コイルに形成された磁場との相互作用によりエッチングガスをプラズマ化する誘導結合型プラズマ方式のエッチング装置であってもよい。
例えば、保持手段90は、静電チャックであり、セラミック又は酸化チタン等の誘電体で形成されており、支持部材900により下方から支持されている。保持手段90の内部には、電圧の印加により電荷を発生する円板状の電極901が保持手段90の保持面90aと平行に配設されており、この電極901は、整合器94a及びバイアス高周波電源95aに接続されている。例えば、保持手段90の内部には、図示しない通水路が形成されており、該通水路を循環する冷却水により保持手段90が内部から所定温度に冷却される。また、保持面90aと保持面90aで保持された被加工物Wとの間には、冷却水による被加工物Wに対する吸熱効率を向上させるために、Heガスなどの熱伝達ガスが所定の圧力で流れるようになっている。
なお、例えば、保持手段90は、本実施形態のような単極型の静電チャックに限定されるものではなく、いわゆる双極型の静電チャックであってもよい。
チャンバ92の上部に軸受け919を介して昇降自在に配設されたガス噴出ヘッド91の内部には、ガス拡散空間910が設けられており、ガス拡散空間910の上部にはガス導入口911が連通し、ガス拡散空間910の下部にはガス吐出口912が複数連通している。各ガス吐出口912の下端は保持手段90の保持面90aに向かって開口している。
ガス導入口911に接続されたガス供給部93には、例えばSF、CF、C、C等のフッ素系ガスがエッチングガスとして蓄えられている。
ガス噴出ヘッド91には、整合器94を介して高周波電源95が接続されている。高周波電源95から整合器94を介してガス噴出ヘッド91に高周波電力を供給することにより、ガス吐出口912から吐出されたエッチングガスをプラズマ化することができる。
プラズマエッチング装置9は、図示しない制御部を備えており、制御部による制御の下で、ガスの吐出量や時間、高周波電力等の条件がコントロールされる。
チャンバ92の底には排気口96が形成されており、この排気口96には排気装置97が接続されている。排気装置97を作動させることで、チャンバ92の内部を所定の真空度まで減圧することができる。チャンバ92の側部には、搬入出口920と、この搬入出口920を開閉するゲートバルブ921とが設けられている。
チャンバ92の内部には、プラズマエッチング実施中の環状フレームFの加熱を防ぐためのフレーム加熱防止ガード98が配設されている。フレーム加熱防止ガード98は、例えば、エッチングガスに対する耐性を備えるSUS等を環状の平板状に形成したものであり、チャンバ92の内側壁に径方向内側に延出するように配設されている。
本実施形態における基板W1に対するエッチング溝の形成は、例えば、SFガスによるプラズマエッチングとCによる溝側壁等に対する保護膜堆積(デポジション)とを交互に繰り返すボッシュ法により行われる。なお、SFガス単体によるプラズマエッチングで基板W1に溝を形成してもよい。
エッチングステップにおいては、まず、搬入出口920から被加工物Wをチャンバ92内に搬入し、マスクJ1側を上側に向けて被加工物Wを保持手段90の保持面90a上に載置する。そして、ゲートバルブ921を閉じ、排気装置97によってチャンバ92内の空気を排気し、チャンバ92内を真空雰囲気とする。また、被加工物Wを支持する環状フレームFの上方は、フレーム加熱防止ガード98により覆われた状態になる。
ガス噴出ヘッド91をチャンバ92内の所定の高さ位置まで下降させてから、例えばSFを主体とするエッチングガスをガス吐出口912から下方に噴出させる。また、高周波電源95からガス噴出ヘッド91に高周波電力を印加して、ガス噴出ヘッド91と保持手段90との間に高周波電界を生じさせ、エッチングガスをプラズマ化させる。これに並行して、電極901にバイアス高周波電源95aから電圧を印加して、保持手段90の保持面90aと被加工物Wとの間の電荷の分極により生じる静電吸着力によって被加工物Wを保持面90a上でテープTを介して吸着保持する。
プラズマ化したエッチングガスは、被加工物Wの表面W1aのマスクJ1が形成されている領域はほとんどエッチングせず、基板W1の分割予定ラインSに対応する領域を等方性エッチングしていく。プラズマ化したエッチングガスによる環状フレームFに対する熱影響は、フレーム加熱防止ガード98によって抑えられる。
次に、ガス供給部93からCガスをガス拡散空間910に供給し、ガス吐出口912から下方に噴出させる。また、高周波電源95からガス噴出ヘッド91に高周波電力を印加し、さらに、電極901にバイアス高周波電源95aから高周波電力を印加して、Cガス中に放電を起こしてCガスをプラズマ化させ、等方性エッチングで形成されたエッチング溝の側壁と底とに保護膜であるフルオロカーボン膜を堆積させる。再び、SFガスをチャンバ92内に供給しプラズマ化させ、エッチング溝の底の保護膜のみを除去する異方性エッチングを行い、次いで、エッチング溝の底に露出した基板W1の等方性エッチングを再び行う。このような等方性エッチングと保護膜堆積と異方性エッチングとを1サイクルとし、例えば数十サイクル実施することで、基板W1の垂直な深掘りを高速かつ高アスペクト比で実現し、図6に示す分割予定ラインSに沿った格子状の溝Mを基板W1に形成していく。
フッ素系のエッチングガスは、金属からなる膜W2をエッチングしない。そのため、図6に示すように、溝Mの底が膜W2内に至らず、かつ、溝Mの底に膜W2の上面が露出するまでプラズマエッチングを行った後、プラズマエッチングを終了させる。即ち、図5に示すチャンバ92内へのエッチングガス等の導入及びガス噴出ヘッド91への高周波電力の供給を停止し、また、チャンバ92内のエッチングガスを排気口96から排気装置97に排気し、チャンバ92内部にエッチングガスが存在しない状態とする。その結果、図6に示すように、分割予定ラインSに沿った溝M(フルカット溝)が基板W1に形成された状態になり、基板W1が複数のチップCへと分割される。
なお、マスクJ1が水溶性樹脂からなるものでない場合(例えば、レジスト膜である場合)には、次の水没ステップを行う前又は行った後に、例えば、プラズマエッチング装置9によるアッシング等によってマスクJ1がチップから除去されるものとしてもよい。
(5)水没ステップ
次いで、図6に示す溝Mが形成された被加工物Wを図7に示す水槽5に搬入する。
例えば、環状フレームFによって支持された被加工物W全体を水没させることができる有底円筒型の水槽5は、側壁51と、側壁51の下部に一体的に連接する底板50とから構成され、水(例えば、純水)が溜められている。水槽5の底板50の上面には、例えば
、板状に形成されており複数の圧電素子等から構成される超音波振動子53が配設されている。超音波振動子53には、図示しない端子が接続されており、この端子及び配線54を介して交流電圧を印加して高周波電力を超音波振動子53に供給する高周波電源55が接続されている。なお、超音波振動子53の形状及び配設箇所等は、図7に示す例に限定されるものではない。
例えば、底板50の上面の超音波振動子53が配設されている領域よりもさらに外側の領域には、環状フレームFを載置するフレーム載置台52が周方向に所定間隔を空けて均等に配設されている。なお、フレーム載置台52は、環状に一体に形成されているものでもよいし、また、環状フレームFを挟持固定する固定クランプを備えていてもよい。
本実施形態における水没ステップにおいては、例えば、図8に示すように、超音波振動子53と被加工物Wの表面W1aとが対面する向きに被加工物Wを水没させる。即ち、被加工物Wの表面W1aを下側に向けた状態で、フレーム載置台52の上面に環状フレームFが載置される。なお、超音波振動子53の配置位置を、水槽5に水没させた被加工物Wよりも上方となる位置としている場合には、被加工物Wを表面W1a側を上側に向けた状態で水槽5に水没させるものとしてもよい。
高周波電源55から超音波振動子53に対して、例えば、出力200Wで高周波電力が供給されて、超音波振動子53が高周波電力を主に上下方向の機械振動に変換することで所定の振動周波数(例えば、28kHz)の超音波を発振する。そして、発振された超音波が水を介して被加工物Wに伝播し、被加工物Wが振動して溝Mに対応する膜W2に鉛直方向のせん断応力が生じ、膜W2にチップCの外周縁に沿って亀裂が生成される、又は膜W2がチップCの外周縁に沿って破断される。なお、高周波電源55の出力は、200W~1000Wであると好ましく、超音波の振動周波数は25kHz~120kHzであると好ましい。
本実施形態における水没ステップでは、超音波振動子53と被加工物Wの表面W1aとが対面する向きに被加工物Wを水没させているため、被加工物Wの膜W2にチップCの外周縁に沿ってより亀裂を生成しやすくすることができる、又は膜W2をチップCの外周縁に沿ってより破断しやすくすることができる。このような効果が得られる理由の1つは、超音波振動で水中に発生した気泡(キャビテーション気泡)が、被加工物Wの溝M内を上昇して膜W2に当たって壊れるときの衝撃波が、膜W2に直に加わるためである。
チップCのマスクJ1は、例えば、水槽5内で除去されるものとしてもよいし、水槽5とは別の洗浄装置によってチップCから洗浄除去されるものとしてもよい。水槽5内でチップCのマスクJ1を除去する場合には、水溶性樹脂からなるマスクJ1が超音波洗浄によって溶解・除去される。水槽5は、例えば、図示しない排水機構及び給水機構を備えており、水槽5内のマスクJ1が溶解した古くなった水は、該排水機構により排水され、さらに、給水機構から新しい水が水槽5内に給水される。
(6)ピックアップステップ
膜W2にチップCの外周縁に沿って亀裂が生成された、又は膜W2がチップCの外周縁に沿って破断された被加工物Wは、水槽5内から引き上げられて、自然乾燥やブロー乾燥、又はスピン乾燥等された後、図9に示すピックアップ装置6に搬送される。なお、テープTの糊層TcにUV硬化糊が用いられている場合には、ピックアップ装置6においてチップCのピックアップを行う前に、テープTに紫外線を照射して糊層Tcを硬化させ粘着力を低下させてもよい。
ピックアップ装置6では、図示しないクランプ等で環状フレームFが固定され、チップCが吸引パッド61で吸引保持されて例えば上方に持ち上げられることで、チップCのピ
ックアップが行われる。ここで、膜W2にチップCの外周縁に沿って亀裂が生成されている箇所は、ピックアップによって膜W2がチップCの外周縁に沿って破断される。なお、ピックアップ時においては、例えば、Z軸方向に昇降可能な図示しないニードルで、チップCを下側からテープTを介して突き上げてもよい。
その結果、図9に示すように、基板W1の裏面W1bに膜W2を有するチップCを形成することができる。
本発明に係る被加工物Wの加工方法は、被加工物Wの裏面W2bに、基材Tdと糊層Tcとを備えたテープTを貼着するテープ貼着ステップと、テープ貼着ステップを実施した後、被加工物Wの表面W1a側からプラズマエッチングを施して分割予定ラインSに沿って溝Mを基板W1に形成することで基板W1を複数のチップCへ分割するエッチングステップを行い、エッチングステップを実施した後、超音波振動子53で超音波振動を付与した水中に被加工物Wを水没させて膜W2にチップCの外周縁に沿って亀裂を生成する、又は膜W2をチップCの外周縁に沿って破断する水没ステップと、水没ステップを実施した後、テープTからチップCをピックアップすることで裏面W2bに膜W2を有するチップCを形成するピックアップステップと、を備えることで、テープTの貼り替えが不要となるため、作業性が向上し、生産性が向上する。また、テープTの転写作業を行わないため、転写作業中に起こり得る隣接するチップC同士の接触による損傷も発生しない。
W:被加工物 W1:基板 W1a:被加工物の表面 S:分割予定ライン D:デバイス W2:膜 W2b:被加工物の裏面 T:テープ Td:基材 Tc:糊層
F:環状フレーム
4:スピンコータ 40:保持テーブル 401:固定クランプ 42:回転手段
44:ケーシング 45:ノズル 47:保護膜剤供給源 J:保護膜層
1:レーザ加工装置 10:チャックテーブル 11:レーザビーム照射手段 111:集光器 119:レーザビーム発振器 J1:マスク
9:プラズマエッチング装置
90:保持手段 900:支持部材 901:電極 91:ガス噴出ヘッド 910:ガス拡散空間 911:ガス導入口 912:ガス吐出口 92:チャンバ 920:搬入出口 921:ゲートバルブ 93:ガス供給部 94、94a:整合器 95、95a:高周波電源、バイアス高周波電源 96:排気口 97:排気装置 98:フレーム加熱防止ガード
5:水槽 51:側壁 50:底板 52:フレーム載置台 53:超音波振動子
54:配線 55:高周波電源
6:ピックアップ装置 61:吸引パッド

Claims (1)

  1. 基板と、該基板の裏面に形成された膜と、を備え、表面に交差する複数の分割予定ラインが設定された被加工物の加工方法であって、
    被加工物の該裏面に、基材と糊層とを備えたテープを貼着するテープ貼着ステップと、
    該テープ貼着ステップを実施した後、被加工物の該表面側からプラズマエッチングを施して該分割予定ラインに沿って溝を該基板に形成することで該基板を複数のチップへ分割するエッチングステップと、
    該エッチングステップを実施した後、超音波振動子で超音波振動を付与した水中に被加工物を水没させて該膜に該チップの外周縁に沿って亀裂を生成する、又は該膜を該チップの外周縁に沿って破断する水没ステップと、
    該水没ステップを実施した後、該テープから該チップをピックアップすることで裏面に膜を有するチップを形成するピックアップステップと、を備え
    該水没ステップでは、該超音波振動子と被加工物の該溝が形成された表面とが対面する向きに被加工物を水没させる
    加工方法。
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