添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、被加工物19の上面図である。被加工物19は、シリコン等の半導体材料から成る基板11を有する。
本実施形態の基板11は、円盤状に形成された、シリコンからなる半導体基板である。また、基板11の表面11a(図3(B)等を参照)側には、分割予定ライン(ストリート)15bによって区画される複数の領域の各々に、IC(Integrated Circuit)、LSI(large-scale integrated circuit)等を含むデバイス15aが形成されている。
なお、基板11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、シリコン以外のガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)などから成る他の半導体基板等を基板11として用いることもできる。同様に、デバイス15aの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
基板11の表面11a上には、機能層13が設けられている(図3(B)等を参照)。機能層13は、低誘電率材料(いわゆる、Low-k材料)で形成された層間絶縁膜等を含む。Low-k材料は、例えば、炭素含有酸化シリコン(SiOCH)、フッ素含有酸化シリコン(SiOF)、ボロン含有酸化シリコン(SiOB)等の無機系、又は、ポリイミド系、パリレン系等の有機系の材料から成る。
機能層13は、Low-k材料で形成された層間絶縁膜に加えて、各々金属から成る配線層、電極層、ポスト、ピラー、TEG(Test Element Group)を構成する導電膜等を更に含む。配線層及び電極層等は、基板11のデバイス15aの直上に配置され、デバイス15aの一部を形成している。
これに対して、ポスト、ピラー、TEG等の金属の構造物13aは、デバイス15aを区画する分割予定ライン15bと重なる領域に設けられている(図3(B)等を参照)。本実施形態の金属の構造物13aは、デバイス15aと重なることなく、分割予定ライン15bの幅内に設けられている。
次いで、図2から図11を用いて、第1実施形態に係る被加工物19の加工方法について説明する。図2は、保護部材貼り付けステップ(S10)で形成された被加工物ユニット25の斜視図である。なお、図2では、構造物13aを省略している。基板11の表面11aとは反対側に位置する基板11の裏面11b側には、保護部材21が設けられている。
樹脂等で形成されている保護部材21の周辺部には、金属で形成された環状のフレーム23が貼り付けられている。即ち、保護部材21は、環状のフレーム23の開口よりも大きな径を有しており、保護部材21の中央部は、フレーム23の開口で露出している。
保護部材21は、例えば、基材層と、当該基材層上の全面に設けられた粘着層とを有する。粘着層は、例えば、紫外線硬化型の樹脂層であり、フレーム23等に対して粘着力を発揮する。フレーム23の開口には保護部材21の粘着層が露出している。
保護部材貼り付けステップ(S10)では、基板11の裏面11bに保護部材21の粘着層を貼り付ける。例えば、フレーム23の開口内に基板11が位置し且つ基板11の裏面11bが露出する様に、フレーム23及び基板11を台上に配置した状態で、フレーム23及び基板11の裏面11bに保護部材21を貼り付ける。これにより、被加工物19、保護部材21及びフレーム23が一体化された被加工物ユニット25を形成する。
保護部材貼り付けステップ(S10)の後、機能層13の基板11とは反対側の面である被加工物19の表面19aを第1の保護膜31で被覆する(第1の被覆ステップ(S20))。図3(A)は、第1の被覆ステップ(S20)を示す図である。
第1の保護膜31は、例えばスピンコーター30を用いて形成される。スピンコーター30は、被加工物19を支持するスピンナテーブル32を備える。スピンナテーブル32の上面の一部は、保護部材21を介して被加工物19を吸引保持する保持面32aとなっている。
この保持面32aは、スピンナテーブル32の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。吸引源の負圧を保持面32aに作用させることで、被加工物19がスピンナテーブル32によって吸引保持される。
また、スピンコーター30は、環状のフレーム23を固定するクランプ34と、被加工物19に向かって水溶性の樹脂等でなる第1の保護膜31の材料を噴射するノズル36とを更に備える。
第1の被覆ステップ(S20)では、まず、スピンナテーブル32上に被加工物19を配置するとともにフレーム23をクランプ34により固定する。次に、保持面32aで被加工物19を吸引保持する。そして、被加工物19を吸引保持したスピンナテーブル32を鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転させつつ、スピンナテーブル32の上方に位置するノズル36から水溶性の樹脂36aを噴射する。
これにより、例えば、被加工物19の表面19aの中央部に付着した水溶性の樹脂36aが遠心力によって被加工物19の外周部まで流動し、被加工物19の表面19a側に水溶性の第1の保護膜31が形成される。水溶性の樹脂36aは、PVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)、PEO(酸化ポリエチレン)等である。図3(B)は、第1の被覆ステップ(S20)後の被加工物19の断面図である。
第1の被覆ステップ(S20)の後、第1のレーザー加工溝33を形成する(第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30))。図4(A)は、第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)を示す一部断面側面図である。
本実施形態では、レーザー加工装置40を用いて、分割予定ライン15bに沿って機能層13を除去することにより第1のレーザー加工溝33を形成する。レーザー加工装置40は、被加工物19を支持するチャックテーブル42と、フレーム23を固定するクランプ44とを備える。
また、レーザー加工装置40は、被加工物19の機能層13に対して吸収性を有する波長(即ち、機能層13に吸収される波長)のレーザービームLを照射するレーザー加工ヘッド46を更に備える。レーザービームLは、例えば、紫外線の波長を有するパルスレーザービームである。なお、レーザービームLは、基板11に対しても吸収性を有する波長(即ち、基板11に吸収される波長)であってよい。
第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)では、まず、チャックテーブル42上に被加工物19を配置するとともにフレーム23をクランプ44により固定する。次に、チャックテーブル42の保持面42aで被加工物19を吸引保持する。そして、レーザービームLを被加工物19の表面19a側から分割予定ライン15bに沿って照射しつつ、保持面42aで被加工物19を吸引保持したチャックテーブル42を所定の方向(いわゆる、加工送り方向)に移動させる。
これにより、分割予定ライン15bに各々位置する第1の保護膜31及び機能層13が、アブレーションされて除去される。更に、分割予定ライン15bに位置する基板11の表面11aから所定の深さまでの領域もアブレーションされて除去される。
図4(B)は、第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)後の被加工物19の断面図である。上述の様に、第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)では、分割予定ライン15bにおける基板11の一部が除去されるので、第1のレーザー加工溝33の底部35は、基板11の表面11aよりも深い位置(即ち、裏面11b側)に形成される。
第1のレーザー加工溝33は、分割予定ライン15bの延伸方向と直交する方向に幅W1を有する。幅W1は、構造物13aの幅よりも大きい。それゆえ、第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)では、分割予定ライン15bに位置する構造物13aは全て除去される。本実施形態では、分割予定ライン15bの幅を約30μmとし、第1のレーザー加工溝33の幅W1を20μmとした。
第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)でアブレーションされた金属の構造物13aは、金属片等の金属13bとなり飛散する。飛散した金属13bは、例えば、第1の保護膜31に付着して残留する。それゆえ、第1の保護膜31を残した状態で被加工物19に対してプラズマエッチングを行うと金属13bの影響でエッチングレートが不安定となり、基板11に対して適切なエッチングを行うことが困難になる。
そこで、第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)の後、構造物13aの金属13bが付着した被加工物19の表面19a側を洗浄し、第1の保護膜31とともに金属13bを被加工物19の表面19a側から除去する(第1の洗浄ステップ(S40))。図5(A)は、第1の洗浄ステップ(S40)を示す一部断面側面図である。
被加工物19の洗浄は、例えばスピンコーター30を用いて行われる。スピンコーター30は、上述のスピンナテーブル32、クランプ34及びノズル36に加えて、被加工物19に向かって洗浄液(例えば、純水)38aを噴射するノズル38を更に備える。
第1の洗浄ステップ(S40)では、スピンナテーブル32上に被加工物19を配置するとともにフレーム23をクランプ34により固定する。次に、保持面32aで被加工物19を吸引保持する。そして、被加工物19が吸引保持されたスピンナテーブル32を鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転させる。
そして、スピンナテーブル32の上方に位置するノズル38をスピンナテーブル32の径方向に揺動させながら、ノズル38から洗浄液38aを噴射することで、回転するスピンナテーブル32に固定された被加工物19の表面19a全体に洗浄液38aを噴射する。
これにより、被加工物19の表面19aに付着している第1の保護膜31が洗浄液38aに溶解し、洗浄液38aとともに遠心力によって被加工物19の外部へ飛ばされる。なお、第1の洗浄ステップ(S40)では、洗浄後の表面19aに乾燥エアを供給して、表面19aを乾燥させてもよい。
図5(B)は、第1の洗浄ステップ(S40)後の被加工物19の断面図である。第1の洗浄ステップ(S40)後に、第1の保護膜31は、金属13bと共に被加工物19の表面19a及び第1のレーザー加工溝33から完全に除去される。
なお、第1の洗浄ステップ(S40)では、第1の保護膜31に付着した金属13bに加えて、第1のレーザー加工溝33に付着した金属13bも除去される。それゆえ、第1のレーザー加工溝33に付着した金属13bが、経時的に膨張してデバイス不良を引き起こす異物になることを防ぐことができる。
第1の洗浄ステップ(S40)の後、被加工物19の表面19a及び第1のレーザー加工溝33を水溶性の第2の保護膜51で被覆する(第2の被覆ステップ(S50))。図6(A)は、第2の被覆ステップ(S50)を示す一部断面側面図である。
第2の保護膜51は、第1の保護膜31と同様に、例えばスピンコーター30を用いて形成される。第2の被覆ステップ(S50)では、第1の被覆ステップ(S20)と同様に、スピンナテーブル32上に被加工物19を配置すると共にフレーム23をクランプ34により固定する。
次に、保持面32aで被加工物19を吸引保持する。そして、保持面32aで被加工物19を吸引保持したスピンナテーブル32を鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転させつつ、スピンナテーブル32の上方に位置するノズル36から水溶性の樹脂36aを噴射する。
これにより、被加工物19の表面19aの中央部に付着した水溶性の樹脂36aが遠心力によって被加工物19の外周部まで流動し、被加工物19の表面19a側に水溶性の第2の保護膜51が形成される。第2の保護膜51は、第1のレーザー加工溝33も被覆する。図6(B)は、第2の被覆ステップ(S50)後の被加工物19の断面図である。
第2の被覆ステップ(S50)の後、第1のレーザー加工溝33の底部35の下方に、第1のレーザー加工溝33の幅W1よりも狭い幅W2を有する第2のレーザー加工溝53を形成する(第2のレーザー加工溝形成ステップ(S60))。
第2のレーザー加工溝形成ステップ(S60)では、第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)と同様に、レーザー加工装置40を用いて、被加工物19の基板11に対して吸収性を有する波長のレーザービームLを照射する。
第2のレーザー加工溝形成ステップ(S60)におけるレーザービームLは、第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)と同じ波長のパルスレーザービームであるが、S30に比べてレーザービームのスポット径を小さく調整する。
第2のレーザー加工溝形成ステップ(S60)でも、チャックテーブル42上に被加工物19を配置するとともにフレーム23をクランプ44により固定する。次に、チャックテーブル42の保持面42aで被加工物19を吸引保持する。そして、レーザービームLを被加工物19の表面19a側から第1のレーザー加工溝33に照射しつつ、保持面42aで被加工物19を吸引保持したチャックテーブル42を所定の方向(いわゆる、加工送り方向)に移動させる。
これにより、被加工物19を上面視した場合に第1のレーザー加工溝33の内側に位置する第2の保護膜51及び基板11の一部が、それぞれアブレーションされて除去される。それゆえ、第2のレーザー加工溝53の底部55では、基板11が露出する。つまり、第2のレーザー加工溝53を除いた被加工物19の表面19a側が、第2の保護膜51で被覆される。
より具体的には、被加工物19は、第2のレーザー加工溝53以外の被加工物19の表面19a(即ち、第2のレーザー加工溝53の底部55及び側部を除く被加工物19の表面19a)が、第2の保護膜51で被覆された状態となる。図7は、第2のレーザー加工溝形成ステップ(S60)後の被加工物19の断面図である。
本実施形態では、第2のレーザー加工溝53の幅W2を第1のレーザー加工溝33の幅W1よりも小さくした。幅W1と幅W2との差は、10μm以下であることが好ましい(W1-W2≦10μm)。本実施形態では、上述の様に第1のレーザー加工溝33の幅W1を20μmとしているので、第2のレーザー加工溝53の幅W2を10μm以上15μm以下とする。
本実施形態では、幅W2を幅W1よりも小さくすることにより、第1のレーザー加工溝33外に位置するデバイス15aの機能層13における配線層及び電極層等に対してアブレーションが行われることを防止できる。それゆえ、第2のレーザー加工溝形成ステップ(S60)で、配線層及び電極層等を構成する金属が第2の保護膜51上に付着することを防止できる。
また、幅W1に対して幅W2が余りに小さい場合には、第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)で第1のレーザー加工溝33に生じたダメージ(即ち、結晶の歪み等)が、後述するプラズマエッチングステップ(S70)で除去され難くなる。仮に、第1のレーザー加工溝33に生じたダメージをプラズマエッチングステップ(S70)で除去できたとしても、最終的に形成されるチップの外観が悪くなり、分割して形成されたチップの抗折強度が低下する。
そこで、幅W2を、例えば、幅W1の25%(本実施形態では、5μm)よりも大きくする。これにより、第1のレーザー加工溝形成ステップ(S30)で第1のレーザー加工溝33に生じたダメージを、プラズマエッチングステップ(S70)で確実に除去できる。また、最終的に形成されるチップの外観を良くできる。
第2のレーザー加工溝形成ステップ(S60)の後、プラズマエッチング装置60を用いて第2のレーザー加工溝53の底部55等に露出する基板11に対して第2の保護膜51をマスクとしてエッチングを行う(プラズマエッチングステップ(S70))。
図8は、プラズマエッチング装置60の構成例を示す断面模式図である。なお、図8では、構成要素の一部を線、ブロック、記号等により簡略化して示す。プラズマエッチング装置60は、処理空間62を形成するエッチングチャンバ64を備えている。エッチングチャンバ64は、底壁64aと、上壁64bと、第1側壁64cと、第2側壁64dと、第3側壁64eと、第4側壁(不図示)とを含む直方体状に形成されており、第2側壁64dには、被加工物19を搬入搬出するための開口66が設けられている。
開口66の外側には、開口66を開閉するゲート68が設けられている。このゲート68は、開閉機構70によって上下に移動する。開閉機構70は、エアシリンダ72と、ピストンロッド74とを含んでいる。エアシリンダ72はブラケット76を介してエッチングチャンバ64の底壁64aに固定されており、ピストンロッド74の先端はゲート68の下部に連結されている。
開閉機構70でゲート68を開くことにより、開口66を通じて被加工物19をエッチングチャンバ64の処理空間62に搬入でき、被加工物19をエッチングチャンバ64の処理空間62から搬出できる。エッチングチャンバ64の底壁64aには排気口78が形成されている。この排気口78は、真空ポンプ等の排気機構80と接続されている。
エッチングチャンバ64の処理空間62には、下部電極82と上部電極84とが対向するように配置されている。下部電極82は導電性の材料で形成されており、円盤状の保持部86と、保持部86の下面中央から下方に突出する円柱状の支持部88とを含む。
支持部88は、エッチングチャンバ64の底壁64aに形成された開口90に挿通されている。開口90内において、底壁64aと支持部88との間には環状の絶縁部材92が配置されており、エッチングチャンバ64と下部電極82とは絶縁されている。下部電極82は、エッチングチャンバ64の外部において高周波電源94と接続されている。
保持部86の上面には凹部が形成されており、この凹部には、被加工物19を吸引保持するためのテーブル96が設けられている。テーブル96には吸引路(不図示)が形成されており、この吸引路は、下部電極82の内部に形成された流路98を通じて吸引源100と接続されている。
また、保持部86の内部には、冷却流路102が形成されている。冷却流路102の一端は、支持部88に形成された冷媒導入路104を通じて冷媒循環機構106と接続されており、冷却流路102の他端は、支持部88に形成された冷媒排出路108を通じて冷媒循環機構106と接続されている。この冷媒循環機構106を作動させると、冷媒は、冷媒導入路104、冷却流路102、冷媒排出路108の順に流れ、下部電極82を冷却する。
上部電極84は、導電性の材料で形成されており、円盤状のガス噴出部110と、ガス噴出部110の上面中央から上方に突出する円柱状の支持部112とを含む。支持部112は、エッチングチャンバ64の上壁64bに形成された開口114に挿通されている。開口114内において、上壁64bと支持部112との間には環状の絶縁部材116が配置されており、エッチングチャンバ64と上部電極84とは絶縁されている。
上部電極84は、エッチングチャンバ64の外部において高周波電源118と接続されている。また、支持部112の上端部には、昇降機構120と連結された支持アーム122が取り付けられており、この昇降機構120及び支持アーム122によって、上部電極84は上下に移動する。
ガス噴出部110の下面には、複数の噴出口124が設けられている。この噴出口124は、ガス噴出部110に形成された流路126及び支持部112に形成された流路128を通じて、第1のガス供給源130及び第2のガス供給源132に接続されている。第1のガス供給源130、第2のガス供給源132、流路126及び流路128、並びに、噴出口124によって、エッチングチャンバ64内にガスを導入するガス導入部が構成される。
開閉機構70、排気機構80、高周波電源94、吸引源100、冷媒循環機構106、高周波電源118、昇降機構120、第1のガス供給源130、第2のガス供給源132等は、制御装置134に接続されている。
排気機構80から制御装置134には、処理空間62の圧力に関する情報が入力される。また、冷媒循環機構106から制御装置134には、冷媒の温度に関する情報(すなわち、下部電極82の温度に関する情報)が入力される。
さらに、制御装置134には、第1のガス供給源130、第2のガス供給源132から、各ガスの流量に関する情報が入力される。制御装置134は、これらの情報や、ユーザーから入力される他の情報等に基づいて、上述した各構成を制御する制御信号を出力する。
次に、プラズマエッチングステップ(S70)の手順について説明する。プラズマエッチングステップ(S70)では、まず、開閉機構70でプラズマエッチング装置60のゲート68を下降させる。
次に、開口66を通じて被加工物19をエッチングチャンバ64の処理空間62に搬入して、被加工物19の裏面側が下部電極82のテーブル96の上面に接する様に、被加工物19をテーブル96上に配置する。なお、被加工物19の搬入時には、昇降機構120で上部電極84を上昇させ、下部電極82と上部電極84との間隔を広げておくことが好ましい。
その後、吸引源100の負圧を作用させて、被加工物19をテーブル96上に固定する。また、開閉機構70でゲート68を上昇させて、処理空間62を密閉する。これにより、被加工物19は、エッチングチャンバ64に収容される。
さらに、上部電極84と下部電極82とがプラズマ加工に適した所定の位置関係となるように、昇降機構120で上部電極84の高さ位置を調節する。また、排気機構80を作動させて、処理空間62を所定の真空度とする。
なお、処理空間62の減圧後、吸引源100の負圧によって被加工物19を保持することが困難な場合は、被加工物19を電気的な力(代表的には静電引力)等によってテーブル96上に保持する。例えば、テーブル96の内部に電極を埋め込み、この電極に電力を供給することにより、テーブル96と被加工物19との間に電気的な力を作用させることができる。
この状態で、プラズマ加工用のガスを所定の流量で供給しつつ、下部電極82及び上部電極84に所定の高周波電力を供給する。本実施形態におけるエッチングステップ(S70)では、処理空間62内を所定の圧力(例えば、5Pa以上50Pa以下)に維持し、第1のガス供給源130からフッ素系のガス(例えば、パーフルオロシクロブタン(C4F8)又は六フッ化硫黄(SF6))を含有するガスを所定の流量で供給しながら下部電極82及び上部電極84の少なくとも一方に所定の高周波電力(例えば、1000W以上3000W以下)を付与する。
これにより、下部電極82と上部電極84との間にプラズマPが発生し、プラズマ化したガスは被加工物19の表面19a側に供給される。このプラズマ化したガスにより基板11を構成するシリコンがエッチングされて、第2のレーザー加工溝53に露出した基板11が部分的に除去される。
図9は、プラズマエッチングステップ(S70)を示す被加工物19の断面図である。なお、図9では、発生したプラズマPを被加工物19の上方に模式的に示す。本実施形態では、上述の第1の洗浄ステップ(S40)で第1の保護膜31に付着した金属は既に除去されており、第2の保護膜51上に金属は残留していない。それゆえ、第2の保護膜51上に金属が残留している場合に比べて、プラズマエッチングステップ(S70)における基板11のエッチングレートをより均一にできる。
なお、本実施形態では、平行平板型のプラズマエッチング装置60を用いたが、他のプラズマエッチング装置を用いてもよい。例えば、プラズマ加工用のガスをエッチングチャンバ64内でプラズマ状態にする代わりに、プラズマ状態にしたプラズマ加工用のガスをエッチングチャンバ64内に導入するリモートプラズマ方式のプラズマエッチング装置を用いてもよい。
また、本実施形態のプラズマエッチング装置60では、下部電極82と上部電極84とが容量結合しており、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)が生成される。ただし、上部電極84を渦巻き状の電極とし、この渦巻き状の上部電極84に高周波(例えば、13.56MHz)を印加することにより、磁場を時間的に変化させることにより電子を加速して誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を生成する誘導結合型のプラズマエッチング装置を用いてもよい。
プラズマエッチングステップ(S70)の後、第2の保護膜51を洗浄によって除去する(第2の洗浄ステップ(S80))。被加工物19の洗浄は、第1の洗浄ステップ(S40)と同様に、例えばスピンコーター30を用いて行う。
第2の洗浄ステップ(S80)では、第1の洗浄ステップ(S40)と同様に、スピンナテーブル32上に被加工物19を配置するとともにフレーム23をクランプ34により固定する。次に、保持面32aで被加工物19を吸引保持する。そして、被加工物19が吸引保持されたスピンナテーブル32を鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転させつつ、スピンナテーブル32の上方に位置するノズル38から被加工物19の表面19a全体に洗浄液38aを噴射する。
これにより、被加工物19の表面19aに付着している第2の保護膜51が洗浄液38aに溶解し、洗浄液38aとともに遠心力によって被加工物19の外部へ飛ばされる。なお、第2の洗浄ステップ(S80)でも、洗浄後の表面19aに乾燥エアを供給して、表面19aを乾燥させてもよい。
図10は、第2の洗浄ステップ(S80)後の被加工物19の断面図である。第2の保護膜51は、被加工物19の表面19a、第1のレーザー加工溝33、及び、第2のレーザー加工溝53から完全に除去されている。
本実施形態では、第2の洗浄ステップ(S80)の後、切削ブレード等を有する切削装置を用いて第2のレーザー加工溝53で基板11を分割する(分割ステップ(S90))。例えば、チャックテーブルに吸引保持された被加工物19と切削ブレードとを、複数の分割予定ライン15bに沿って相対的に移動させることにより、被加工物19を複数のチップに分割する。
本実施形態では、上述のS10からS90の工程の順で、分割予定ライン15bに沿って被加工物19を加工する。図11は、第1実施形態における被加工物19の加工方法を示すフロー図である。
次に、分割ステップ(S90)ではなく、プラズマエッチングステップ(S70)で基板11を分割する第2実施形態を説明する。図12は、第2実施形態におけるプラズマエッチングステップ(S70)で分割された被加工物19の断面図である。
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、プラズマエッチング装置60を用いて基板11をエッチングする。プラズマ加工用のガスの濃度を高くする、プラズマエッチング時間を長くする等の一以上の処理を施すことにより、第2のレーザー加工溝53の底部55で露出する基板11を裏面11bまでエッチングする。
これにより、第2のレーザー加工溝53直下の基板11は裏面11bに至るまで除去されて、被加工物19は、複数のチップに分割される。第2実施形態では、切削ブレードで基板11を分割する第1実施形態に比べて、基板11の裏面11b側に生じるチッピングを抑制でき、抗折強度も向上できる。なお、第2実施形態では、第2の洗浄ステップ(S80)後に加工工程が終了するので、第1実施形態に係る分割ステップ(S90)は省略される。
次に、プラズマエッチングステップ(S70)で、基板11の表面11aから基板11の仕上げ厚さCを超える深さまで第2のレーザー加工溝53をエッチングし、分割ステップ(S90)で、基板11の裏面11bを仕上げ厚さCまで研削することにより基板11を分割する第3実施形態を説明する。図13は、第3実施形態におけるプラズマエッチングステップ(S70)で仕上げ厚さCを超える深さまでエッチングされた被加工物19の断面図である。
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、プラズマエッチング装置60を用いて基板11をエッチングする。但し、第3実施形態では、プラズマ加工用のガスの濃度を高くする、プラズマエッチング時間を長くする等の一以上の処理を施すことにより、第2のレーザー加工溝53を第1実施形態に比べて更に深くエッチングする。
第3実施形態では、基板11の仕上げ厚さCを超え且つ基板11の裏面11bまでは至らない深さまで基板11をエッチングする。これにより、基板11の一部が除去されて第2のレーザー加工溝53よりも深い溝部57が形成される。溝部57の直下には、例えば、数十μm以上数百μm以下の厚さの基板11が残る。
このプラズマエッチングステップ(S70)の後、第1実施形態と同様に、第2の洗浄ステップ(S80)を行う。第2の洗浄ステップ(S80)後に、被加工物19を保護部材21から剥離して、基板11の表面11a側(即ち、被加工物19の表面19a)に保護テープ141を貼り付ける。
そして、基板11を裏面11bから研削することで、被加工物19を複数のチップに分割する(分割ステップ(S90))。図14は、第3実施形態における分割ステップ(S90)を示す図である。第3実施形態の分割ステップ(S90)は、基板11を研削する研削ステップである。研削ステップは、研削装置140を用いて行われる。
研削装置140は、基板11を吸引保持するチャックテーブル142を備えている。このチャックテーブル142は、モータ等の回転機構(不図示)と連結されており、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
チャックテーブル142の上面は、被加工物19の表面19a側を吸引保持する保持面142aとなっている。保持面142aには、チャックテーブル142の内部に形成された流路を通じて吸引源の負圧が作用し、被加工物19の表面19a側を吸引する吸引力が発生する。
チャックテーブル142の保持面142aに対向するように、チャックテーブル142の上方には研削機構が配置されている。研削機構は、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転するスピンドル144を備えている。このスピンドル144は、昇降機構(不図示)で昇降される。スピンドル144の下端側には、円盤状のホイールマウント146が固定されている。
ホイールマウント146の下面には、ホイールマウント146と略同径の研削ホイール148が装着されている。研削ホイール148は、アルミニウム又はステンレス鋼等の金属材料で形成された環状のホイール基台(環状基台)148aを備えている。
ホイール基台148aの上面側が、ホイールマウント146に固定されることで、ホイール基台148aはスピンドル144に装着されている。また、ホイール基台148aの下面には複数の研削砥石(砥石チップ)148bが設けられている。
各々の研削砥石148bは略直方体形状を有しており、ホイール基台148aの環状の下面の全周において、隣り合う研削砥石148b同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。
研削砥石148bは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、CBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒を混合して形成される。ただし、結合材や砥粒に制限はなく、研削砥石148bの仕様に応じて適宜選択できる。
第3実施形態に係る研削ステップでは、第2の洗浄ステップ(S80)後の被加工物19を保護部材21から剥離して、被加工物19の表面19a(即ち、基板11の表面11a側)に保護テープ141を貼り付ける。その後、保護テープ141を介して保持面142aで被加工物19の表面19a側を吸引保持する。
そして、チャックテーブル142とスピンドル144とを、それぞれ所定の方向に回転させつつ、スピンドル144を下降させ、基板11の裏面11b側に研削砥石148bを押し当てる。これにより、基板11を仕上げ厚さCまで研削加工する。これにより、被加工物19を複数のチップに分割する。
第3実施形態では、切削ブレードで基板11を分割する第1実施形態に比べて、基板11の裏面11b側に生じるチッピングを抑制でき、抗折強度も向上できる。以上、第1から第3実施形態について説明したが、その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。