JP7103648B2 - 収縮低減剤及び水硬性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、水硬性組成物に用いる収縮低減剤及びこの収縮低減剤が添加された水硬性組成物に関する。更に詳細には、本発明は、水硬性組成物に使用したとき、その硬化体の収縮を低減するだけではなく、硬化後の空気残存率を大きくすることが可能であり、セメント組成物などに好適に用いることができる収縮低減剤及びこの収縮低減剤が添加された水硬性組成物に関する。
水硬性組成物は、セメントペースト、モルタル、コンクリートなどのセメント組成物として広く用いられている。近年、この水硬性組成物の硬化体の高耐久性化が要求されるようになっている。
硬化体の耐久性を低下させる原因としては、(1)乾燥収縮による硬化体のひび割れ、(2)硬化後の空気残存率の減少による寒冷地における凍結融解作用による劣化や破壊が知られており、水硬性組成物を硬化させた硬化体の耐久性を向上させるためには、上記のような硬化体の耐久性を低下させる原因が生じることを抑制する必要がある。
乾燥収縮による硬化体のひび割れを防ぐ手段としては、収縮低減剤(つまり、水硬性組成物用収縮低減剤)が重要視されている。そして、水硬性組成物用収縮低減剤としては、炭素原子数1~4のアルコールのアルキレンオキシド付加物(特許文献1参照)、オリゴマー領域のポリプロピレングリコール(特許文献2参照)、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物(特許文献3参照)などが開示されている。
特公昭56-51148号公報 特開昭59-152253号公報 特公平5-40714号公報
しかしながら、特許文献1~3の水硬性組成物用収縮低減剤を用いた場合には、得られる水硬性組成物の硬化体の強度に悪影響を及ぼすことなく、硬化体の収縮を低減することができず、また硬化後の硬化体の空気残存率が小さくなり、凍結融解抵抗性が低下するという問題については未だ十分に解決されていない。そのため、寒冷地では、特許文献1~3の水硬性組成物用収縮低減剤の使用が制限されるという問題が生じている。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、水硬性組成物に使用したとき、その硬化体の収縮を低減するだけでなく、硬化後の硬化体の空気残存率を大きなものとすることができる収縮低減剤及び水硬性組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく研究した結果、特定の化合物を有する収縮低減剤を用いるのが正しく好適であることを見出した。本発明によれば、以下の収縮低減剤及び水硬性組成物が提供される。
[1] 下記のA成分と、下記のB成分とを含有する収縮低減剤。
A成分:下記の式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物:
Figure 0007103648000001
(式(1)中、Rは炭素数6~25の芳香族炭化水素基及びフェノール性の2個の水酸基を有する化合物から前記2個の水酸基を除いた残基を表し、X、Yはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~22のアルキル基を表し、OR、ROはそれぞれ独立に、炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、a1、a2は1~299の整数であって、かつa1+a2=60~300を満足する整数を表す。)
B成分:下記の式(2)で示されるポリオキシアルキレン化合物:
Figure 0007103648000002
(式(2)中、Rは炭素数2~8のアルキル基又はアルケニル基を表し、ROは炭素数2~4のオキシアルキレン基の一種又は二種以上を表し、a3は1~10の整数を表し、Rは水素原子又は炭素数2~8のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。)
[2] 前記式(1)において、Rが下記の式(3)で示されるビス(4-ヒドロキシフェニル)骨格を有する基である、[1]に記載の収縮低減剤。
Figure 0007103648000003
(式(3)中、Zは、炭素数1~13の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又はスルホニル基を表す。)
[3] 前記A成分と前記B成分の質量比率がA成分/B成分=10/90~90/10である[1]又は[2]に記載の収縮低減剤。
[4] 前記A成分と前記B成分の質量比率がA成分/B成分=20/80~80/20である[1]又は[2]に記載の収縮低減剤。
[5] 前記式(1)において、Rが2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、又はビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンから2個の水酸基を除いた残基である[1]~[4]のいずれかに記載の収縮低減剤。
[6] 前記式(1)において、a1、a2はa1+a2=80~220を満足する整数を表す[1]~[5]のいずれかに記載の収縮低減剤。
[7] 前記式(2)において、a3は1~6の整数を表す[1]~[6]のいずれかに記載の収縮低減剤。
[8] 前記式(2)において、Rは炭素数2~5のアルキル基又はアルケニル基を表す[1]~[7]のいずれかに記載の収縮低減剤。
[9] 前記式(2)において、Rは水素原子である[1]~[8]のいずれかに記載の収縮低減剤。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の収縮低減剤を含有する水硬性組成物。
[11] 結合材を含有する[10]に記載の水硬性組成物。
本発明の収縮低減剤によれば、水硬性組成物に使用したとき、その硬化体の収縮を低減するだけでなく、硬化後の硬化体の空気残存率を大きなものとすることができるという効果がある。
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
本実施形態の収縮低減剤は、化合物Aと、化合物Bとを含有する収縮低減剤である。
本実施形態の収縮低減剤に供する化合物Aは、下記の式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物である。
Figure 0007103648000004
式(1)において、Rは、炭素数6~25の芳香族炭化水素及びフェノール性の2個の水酸基を有する化合物から2個の水酸基を除いた残基である。X、Yは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~22のアルキル基である。OR、ROは、それぞれ独立に、炭素数2~4のオキシアルキレン基である。a1、a2は、1~299の整数であって、且つa1+a2=60~300を満足する整数である。
式(1)において、Rとしては、例えば、ハイドロキノン、カテコール、ビナフトール、4,4’-ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、5,5’-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1’-(ビスフェニル)-2-オール]プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから、水酸基を除いた残基などが挙げられる。Rとしては、下記式(3)で示されるビス(4-ヒドロキシフェニル)骨格を有する基(残基)とすることでもよい。これらの中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンから、2個の水酸基を除いた残基であることが好ましい。これらの残基であると、収縮低減効果が良好に発揮されることに加え、優れた凍結融解抵抗性を発揮する。
Figure 0007103648000005
式(3)において、Zは、炭素数1~13の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は、スルホニル基である。
式(1)におけるXとしては、水素原子又は炭素数1~22のアルキル基が挙げられる。炭素数1~22のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、2-メチル-ペンチル基、2-エチル-ヘキシル基、2-プロピル-ヘプチル基、2-ブチル-オクチル基、2-ペンチル-ノニル基、2-ヘキシル-デシル基、2-ヘプチル-ウンデシル基、2-オクチル-ドデシル基、2-ノニル-トリデシル基等が挙げられる。なかでもXとしては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
また、式(1)におけるYについては、Xと同様のものを挙げることができる。
ここで、X及びYが水素原子であると、該化合物の合成の容易さ、原料入手、経済性の面から好ましい。
式(1)においてORは、炭素数2~4のオキシアルキレン基を示す。ORが複数存在する場合には、2種類以上のオキシアルキレン基を使用してもよい。ORとしては、具体的には、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が含まれることが好ましく、より好ましくはオキシエチレン基を50モル%以上含有し、更に好ましくはオキシエチレン基を90モル%以上含有するものである。なお、2種類以上のオキシアルキレン基が付加した場合、結合の順には特に制限はなく、ランダム結合でも良いし、ブロック結合でもよい。
また、式(1)におけるROについても、ORについて述べたことと同様である。
OR及びROにおいて、ORとROを合計した全オキシアルキレン基中の90モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましい。収縮低減効果が良好に発揮されることに加え、硬化後の空気残存率を大きいものとすることが可能となる。
式(1)において、a1、a2は、ポリオキシアルキレン基の付加モル数を示し、a1+a2はポリオキシアルキレン基の総付加モル数を示す。a1及びa2はそれぞれ1~299の整数であり、好ましくは1~219の整数である。また、a1+a2は、60≦a1+a2≦300であり、好ましくは80≦a1+a2≦220である。a1+a2が60より小さいと、凍結融解抵抗性が著しく低下し、a1+a2が大きすぎても製造コストがかかり現実的ではない。
式(1)におけるX及び/又はYが水素原子であるポリオキシアルキレン化合物の製造方法としては、特に限定されず、各種の製造方法で製造することができる。
例えば、Rにフェノール性の2つの水酸基を有する化合物にアルキレンオキシドを付加することで得られる。アルキレンオキシドを付加する際には、触媒を用いることができる。アルキレンオキシドを付加重合する際の触媒としては、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属又はこれらの水酸化物、アルコラート等のアルカリ触媒若しくはルイス酸触媒、複合金属触媒を用いることができ、好ましくはアルカリ触媒である。
アルカリ触媒としては、例えば、ナトリウム、カリウム、ナトリウムカリウムアマルガム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムハイドライド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド等を挙げることができる。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムブトキシドである。
ルイス酸触媒としては、例えば、四塩化錫、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn-ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体等の三フッ化ホウ素化合物などが挙げられる。
本発明の収縮低減剤における化合物Bは、下記の式(2)で示されるポリオキシアルキレン化合物である。
Figure 0007103648000006
式(2)中、Rは炭素数2~8のアルキル基又はアルケニル基を表し、ROは炭素数2~4のオキシアルキレン基の一種又は二種以上を表し、a3は1~10の整数を表し、Rは水素原子又は炭素数2~8のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
式(2)において、Rの具体例としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数2~8のアルキル基が挙げられ、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の炭素数2~8のアルケニル基が挙げられる。これらの中でも、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等の炭素数2~5のアルキル基又はエテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等の炭素数2~5のアルケニル基が好ましい。
式(2)においてROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基を示す。ROが複数存在する場合には、2種類以上のオキシアルキレン基を使用してもよい。ROとしては、具体的には、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が含まれることが好ましく、より好ましくはオキシエチレン基を50モル%以上含有し、更に好ましくはオキシエチレン基を90モル%以上含有するものである。なお、2種類以上のオキシアルキレン基が付加した場合、結合の順には特に制限はなく、ランダム結合でもよいし、ブロック結合でもよい。
式(2)において、a3は、ポリオキシアルキレン基の付加モル数を示し、1~10の整数であり、好ましくは1~6の整数である。
式(2)において、Rの具体例としては、水素原子又はエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等の炭素数2~8のアルキル基が挙げられ、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の炭素数2~8のアルケニル基が挙げられる。なかでも、Rとしては、水素原子が好ましい。
式(2)で示されるポリオキシアルキレン化合物の製造方法としては、特に限定されず、上述した式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物と同様な製造方法で製造することができる。
本発明の収縮低減剤は、溶媒を含み、液状であることがよい。つまり、本発明の収縮低減剤は、適宜、溶媒などで希釈し、液状として用いることが好ましい。液状とすることで、収縮低減剤を水硬性組成物に添加するときに、練り混ぜに用いる水と収縮低減剤を同時に添加することができ、収縮低減剤が均一に混合しやすい。また、練り混ぜた後、未だ固まっていない水硬性組成物をアジテータトラックで運搬する場合には、収縮低減剤をアジテータ内に添加することもあるが、液状の収縮低減剤とすることでアジテータ内に添加したとき、均一に混ざりやすいという長所を有する。
本発明の収縮低減剤を希釈する溶媒は、収縮低減剤を使用する温度範囲内で液状であるものなら特に制限されない。水硬性組成物に使用することから、水溶性の高いものが好ましい。具体的には、水若しくはエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、また、収縮低減効果を有する、炭素原子数1~4のアルコールのアルキレンオキシド付加物(特許文献1参照)、オリゴマー領域のポリプロピレングリコール(特許文献2参照)を用いてもよい。中でも、コストや安全性の面からは溶媒として水を用いることが好ましい。
本発明の収縮低減剤は、土木、建築、二次製品(例えば、プレキャスト部材など)等に用いられるセメントを含有する水硬性組成物に添加して使用するものであるが、その用途は特に限定されるものではない。なお、本発明の収縮低減剤が良好に機能する水硬性組成物は、少なくとも水、セメントを含有するペースト、モルタル、又はコンクリートである。
本発明の収縮低減剤は、公知の添加剤(添加材)と併用することができる。一例を挙げれば、AE(Air Entraining)減水剤、高性能AE減水剤等の各種分散剤、AE剤、消泡剤、他の収縮低減剤、増粘剤、硬化促進剤、硬化遅延剤又は高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石微粉末、膨張材等が挙げられる。
本発明の収縮低減剤の使用量は特に制限はないが、セメントを含む水硬性結合材100質量部あたり0.2~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~8質量部である。本発明の収縮低減剤の使用量は、コンクリートに適用する場合、単位容積当たりの使用量で示すこともできる。その場合、セメントの量を300kg/mとした場合は、0.6~30kg/mとすることができ、好ましくは1.5~24kg/mである。
本発明の水硬性組成物の調製に用いる水硬性結合材としては、セメントを含有するものである。このセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱セメント等の各種ポルトランドセメントの他に、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメントが挙げられる。セメント以外の結合材も同時に用いることができ、例えば、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム等が挙げられる。
また、本発明の水硬性組成物は、骨材を含有する。骨材としては、細骨材、粗骨材が挙げられる。細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、スラグ細骨材等が挙げられ、粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、軽量骨材等が挙げられる。
本発明の水硬性組成物において、水/水硬性結合材の割合(組成物中の水硬性結合材に対する水の百分率(質量%))は、10~70質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、30~55質量%が更に好ましく、35~55質量%が更により好ましい。
本発明の水硬性組成物は、水硬性結合材100質量部当たり、本発明の収縮低減剤を0.2~10質量部の割合で含有することが好ましい。このような割合で本発明の収縮低減剤を含有すると、収縮低減効果が良好になり更に硬化後の空気残存率が大きくなる。
また、本発明の水硬性組成物としては、セメントを含有した水硬性結合材、骨材、水、本発明の収縮低減剤、分散剤及び空気連行剤を用いて調製したものが好ましい。この場合にも、水硬性結合材100質量部当たり、本発明の収縮低減剤を0.2~10質量部の割合で含有することが好ましい。なお、分散剤と空気連行剤とは、それぞれ従来公知のものを適宜採用することができる。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また、%は質量%を意味する。
試験区分1(化合物Aとしてのポリオキシアルキレン化合物の製造)
・製造例1{化合物A(SRA-1)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE-60(三洋化成工業社製)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」196.9g及び水酸化カリウム1.5gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド(表1中、「EO」と記す)1303.1gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRA-1)を得た。
・製造例2{化合物A(SRA-2)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE-60(三洋化成工業社製、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」318.9g及び水酸化カリウム3.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド2681.1gを0.4MPaのゲージ圧にて6時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、85%リン酸を用いてpH6になるよう中和を行った、脱水後、ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRA-2)を得た。
・製造例3{化合物A(SRA-3)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE-60(三洋化成工業社製)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」338.5g及びtert-ブトキシカリウム10.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド4661.5gを0.4MPaのゲージ圧にて7時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード700(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRA-3)を得た。
・製造例4{化合物A(SRA-4)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE-60(三洋化成工業社製、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」272.5g及び水酸化カリウム5.0gを仕込んだ。次いで、反応系を130℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド4727.5gを0.4MPaのゲージ圧にて8時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRA-4)を得た。
・製造例5{化合物A(SRA-5)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン96.9g及びtert-ブトキシカリウム1.8gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、エチレンオキシドを34g仕込み、反応を開始した。圧力が低下することを確認後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド1669gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。反応温度で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRA-5)を得た。
・製造例6{化合物A(SRA-6)の製造}
化合物A(SRA-6)は、表1に示すように、製造例5において使用したビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンに代えて、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンを使用し、更に、エチレンオキシドの量を変化させたこと以外は、製造例5と同様にして製造した。
・製造例7{化合物A(SRA-7)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE-60(三洋化成工業社製、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」229.2g及び水酸化カリウム1.8gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド1517gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持した。更に同温度にてプロピレンオキシド(表1中、「PO」と記す)を54g添加し、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRA-7)を得た。
・製造例8{化合物A(SRA-8)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE-60(三洋化成工業社製、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」628.4g及び水酸化カリウム4.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド3371.7gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(150±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRA-8)を得た。
・製造例9{RE-1の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のジエチレングリコール106g及び水酸化カリウム4.4gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド4312gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、その後、回収した。
・製造例10{RE-2}
「ニューポールBPE-100(三洋化成工業社製)」をそのまま用いたものをRE-2とした。
以上で調製した各化合物Aの内容を表1にまとめて示した。
Figure 0007103648000007
表1において、
※1:式(1)中の「R」は、この欄に記載された化合物から水酸基を除いた残基である。
※2:RE-2は、「ニューポールBPE-100(三洋化成工業社製)」をそのまま用いた。
a1+a2(平均総付加モル数)は、「EOモル数」と「POモル数」との和の値である。
試験区分2(化合物Bとしてのポリオキシアルキレン化合物の製造)
・製造例1{化合物B(SRB-1)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のジエチレングリコールモノブチルエーテル(n-ブチルアルコールのエチレンオキシド(表2中、「EO」と記す)2モル付加物)526.6g及び水酸化カリウム1.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらプロピレンオキシド(表2中、「PO」と記す)377gを0.4MPaのゲージ圧にて3時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード700(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRB-1)を得た。
・製造例2{化合物B(SRB-3)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のイソブチルアルコール363.1g及び水酸化カリウム1.5gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらプロピレンオキシド1137gを0.4MPaのゲージ圧にて3時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRB-3)を得た。
・製造例4{化合物B(SRB-4)の製造}
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(イソプロピルアルコールのエチレンオキシド(表2中、「EO」と記す)1モル付加物))757.6g及び水酸化カリウム1.5gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド320gを0.4MPaのゲージ圧にて1時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持した。更に同温度にてプロピレンオキシド(表1中、「PO」と記す)422gを2時間かけて添加し、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、85%リン酸を用いてpH6まで中和を行った後、減圧脱水・ろ過を行い、ポリオキシアルキレン化合物(SRB-4)を得た。
以上で調製した各化合物Bの内容を表2にまとめて示した。
Figure 0007103648000008
表2において、
SRB-2:東京化成製 試薬 トリエチレングリコールモノブチルエーテルをそのまま用いた。
SRB-5:日油製 ユニオックスAA-480をそのまま用いた。
試験区分3(収縮低減剤の調製)
表1に記載の化合物A及び表2に記載の化合物Bを表3に示す割合で配合して、よく振り混ぜ、混合し、収縮低減剤(EX-1)~(EX-14)を調製した。
収縮低減剤(EX-1)と同様にして、収縮低減剤(R-1)~(R-4)を調製した。
以上で調製した各収縮低減剤の内容を表3にまとめて示した。
Figure 0007103648000009
試験区分4(水硬性組成物としてのコンクリートの調製及び評価)
表3で示した収縮低減剤をコンクリートに添加し、以下の評価を行った。
具体的には、表4に示した配合条件で、20℃の試験室内で50Lのパン型強制練りミキサーに、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、宇部三菱セメント社製、及び住友大阪セメント社製等量混合、密度=3.16g/cm)からなる水硬性結合材と、骨材として陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm)及び砕石(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm)とを添加し、更に、AE減水剤として「チューポールEX60(竹本油脂社製)」をセメントに対して0.7~1.0%と、更に表5に示した添加量で、収縮低減剤(表3参照)及び空気連行剤「AE-300(竹本油脂社製)」を、それぞれ所定量と、消泡剤である「AFK-2(竹本油脂社製)」を上記セメントに対して0.002%として練り混ぜ水(水道水)の一部として計量し、ミキサーに投入して90秒間練混ぜた。スランプが18±1cm、連行空気量が4.5±0.5%の範囲となるよう、AE減水剤、空気連行剤の量を調整し、コンクリート組成物(水硬性組成物)を調製した。
Figure 0007103648000010
表4中、「セメント」は、上述した普通ポルトランドセメントを示す。「細骨材」は、上述した陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm)を示し、「粗骨材」は、砕石(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm)を示す。また、「水/セメントの割合(%)」は、式:水/セメント×100により算出した値を示す。
調製したコンクリート組成物について、スランプ、空気量、圧縮強度及び乾燥収縮率の評価を行い、結果を表5にまとめて示した。
・スランプ(cm):
連行空気量の測定と同時にJIS A 1101に準拠して測定した。
・空気量(容量%):
「混練直後の空気量」は、練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、寸法Φ100mm、高さ200mmの円柱供試体を採取し、JIS A 1128に準拠して測定した。「硬化後空気量」は、練り混ぜから24時間後に、寸法Φ100mm、高さ200mmの円柱供試体を脱型し、大気中質量(A)、水中質量(B)を測定し式:(1-(A×測定時の水の密度/A-B)×(1/単位容積質量))×100により算出した値を示す。
・長さ変化率(乾燥収縮率):
JIS A 1129に準拠し、各コンクリート組成物を20℃×60%RHの条件下で保存した材齢26週の供試体について、コンパレータ法により乾燥収縮ひずみを測定し、長さ変化率(乾燥収縮率)を求めた。この数値は小さいほど、乾燥収縮が小さいことを示す。
・圧縮強度(N/mm
JIS A 1108に準拠して試験を行った。20℃×80%RHの恒温室で鋼製型枠に充填し硬化させ、材齢1日で脱型し、水温20℃の養生槽にて材齢28日まで養生した。
Figure 0007103648000011
(結果)
表5に示すように、実施例1~14に示される収縮低減剤は、得られる水硬性組成物の乾燥収縮を低減する収縮低減性能に優れ、且つ、硬化後の空気残存率が大きく、水硬性組成物の品質の均一性を図ることができることが分かった。
本発明の収縮低減剤は、水硬性組成物を調製する際の添加剤として利用することができる。本発明の水硬性組成物は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物として利用することができる。

Claims (11)

  1. 下記のA成分と、下記のB成分とを含有する収縮低減剤。
    A成分:下記の式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物:
    Figure 0007103648000012
    (式(1)中、Rは炭素数6~25の芳香族炭化水素基及びフェノール性の2個の水酸基を有する化合物から前記2個の水酸基を除いた残基を表し、X、Yはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~22のアルキル基を表し、OR、ROはそれぞれ独立に、炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、a1、a2は1~299の整数であって、かつa1+a2=60~300を満足する整数を表す。)
    B成分:下記の式(2)で示されるポリオキシアルキレン化合物:
    Figure 0007103648000013
    (式(2)中、Rは炭素数2~8のアルキル基又はアルケニル基を表し、ROは炭素数2~4のオキシアルキレン基の一種又は二種以上を表し、a3は1~10の整数を表し、Rは水素原子又は炭素数2~8のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。)
  2. 前記式(1)において、Rが下記の式(3)で示されるビス(4-ヒドロキシフェニル)骨格を有する基である、請求項1に記載の収縮低減剤。
    Figure 0007103648000014
    (式(3)中、Zは、炭素数1~13の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又はスルホニル基を表す。)
  3. 前記A成分と前記B成分の質量比率がA成分/B成分=10/90~90/10である請求項1又は2に記載の収縮低減剤。
  4. 前記A成分と前記B成分の質量比率がA成分/B成分=20/80~80/20である請求項1又は2に記載の収縮低減剤。
  5. 前記式(1)において、Rが2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、又はビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンから2個の水酸基を除いた残基である請求項1~4のいずれか1項に記載の収縮低減剤。
  6. 前記式(1)において、a1、a2はa1+a2=80~220を満足する整数を表す請求項1~5のいずれか1項に記載の収縮低減剤。
  7. 前記式(2)において、a3は1~6の整数を表す請求項1~6のいずれか1項に記載の収縮低減剤。
  8. 前記式(2)において、Rは炭素数2~5のアルキル基又はアルケニル基を表す請求項1~7のいずれか1項に記載の収縮低減剤。
  9. 前記式(2)において、Rは水素原子である請求項1~8のいずれか1項に記載の収縮低減剤。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の収縮低減剤を含有する水硬性組成物。
  11. 結合材を含有する請求項10に記載の水硬性組成物。
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