以下に、図を用いて本発明の実施形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる対応で実施しうる。
<本発明の原理的な説明>
本発明者は、特願2018-163242号として、発酵した動物の発酵産生物からなる液体(発酵時液体)を動物の構成部位に浸透させた釣り餌の発明を行った。発酵時液体とは例えば、酒盗抽出液などである。これに漬け込んだ釣り餌は常温保存可能で、かつ一定の釣果が得られる。一方、発酵時液体を浸透させる動物の構成部位としては、比較的海に住んでいる魚類を採用すると釣果が上がりやすい。やはり、釣りの対象となる魚類は、同じ海で生息している魚類を餌として好むからである。一方、「うろこ」と「ひれ」がある魚類の身を、発酵時液体を浸透させる対象、すなわち釣り餌として採用した場合には、比較的短時間で餌がばらけてしまうので、希少魚などを狙う長時間にわたって竿を上げないような釣りにはあまり向いていなかった。しかしながら「イカ」や「タコ」「貝」などの「うろこ」と「ひれ」がない海の生き物の場合には鱗で魚体を守れないので体表や身が比較的しっかりとしている。そこで、一般的な釣りはもちろんのこと、長時間にわたって竿を上げないような釣りなどには「イカ」「タコ」「貝柱」などを、発酵時液体を浸透させる動物部位として採用すると効果的である。また、「イカ」「タコ」「貝」は広く日本近海全体(世界的にも全域)に生息しており、釣りの対象となる対象魚を選ばない。つまり、ほぼすべての海に生息している魚類を効果的に釣り上げることができる。
特に発明者らは、今回「イカ」を、発酵時液体を浸透させる対象とした場合に最適な釣り餌の製造方法を発明した。本願発明でいうところの「イカ」は、コウイカ目、ダンゴイカ目、トグロコウイカ目、閉眼目(ヤリイカ目)、などを指す。以上のように「イカ」は発酵時液体を浸透させる動物の部位として最適であるが、そのメリットをもたらす点が発酵時液体の浸透工程には逆にデメリットをもたらすことが判明した。つまり、「うろこ」や「ひれ」がある魚類を発酵時液体を浸透させる動物の構成部位として選択した場合と比較して、同等のプロセスでは発酵時液体の身への浸透が十分でないことが判明した。
そこで、鋭意検討を重ねた結果、イカの原料を使用し、イカの酒盗抽出液等への漬け込みを行う前に、イカを保湿剤に漬け込んでおき、所定時間冷蔵保管後に、酒盗抽出液等に漬け込みを行うプロセスを採用することで、酒盗抽出液等のイカへの浸透度合いが促進され、釣果が期待できるイカの釣り餌が製造できることが分かった。本発明の常温可能な釣り餌の原理的な説明を行う。図9(A)は、イカの細胞0901(図9(A)中左端)の間に水分の伴った保湿剤0902(図中丸の中に「保」で示す)が入り込み(図9(A)中真ん中)、酒盗抽出液等の発酵時液体0903(図中丸の中に「発」で示す)に漬け込むと、保湿剤0902と発酵時液体0903が置換される(図9(A)中右端)遷移状態を示している。また、図9(B)はイカの細胞0901(図9(B)中左端)の間に保湿剤を入れないで、発酵時液体0904に漬け込んだ(図9(B)中右端)状態遷移を示している。
図9(A)に示すように、保湿剤有の場合はイカの細胞0901の間に水分を含んだ保湿剤0902が入り込み、細胞分子間が広がった状態(細胞分子間隔L1→L2に変化)で、保湿状態を維持しているので、その後イカを発酵時液体0903(例えば、酒盗抽出液等)に漬け込むと、発酵時液体0903(酒盗抽出液等)の濃度が高いので、水分を含んだ保湿剤0902と発酵時液体0903(酒盗抽出液等)が置換され、発酵時液体0903(酒盗抽出液等)の浸透が促進される。
また、図9(B)に示すように、保湿剤無しの場合は、イカの細胞0901の分子間の隙間(細胞分子間隔L1)が狭いので、イカを発酵時液体0904(酒盗抽出液等)に漬け込んでも、浸透が促進しにくい。
本発明の常温保存可能な釣り餌の製造方法は、この原理を利用して常温保存可能なイカ釣り餌の製造を実現したものである。
<実施形態1>
実施形態1は、主に請求項1に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法の実施形態である。
<実施形態1 概要>
実施形態1の常温保存可能な釣り餌の製造方法は、釣り餌本体となるイカを発酵時液体(漬込材)に漬け込む漬込工程前に、イカを保湿剤で保湿する保湿工程を経て、漬け込み工程を行うものである。
<実施形態1 構成>
実施形態1は、イカ準備工程と、保湿工程と、漬込工程と、からなる常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態1 構成の説明>
「イカ準備工程」とは、釣り餌の本体であるイカを準備する工程をいう。釣り餌の本体のイカが冷凍イカの場合は、解凍処理を行う。解凍は例えば、自然解凍により行う。加熱すると、イカの身から水分が外に出て余計にイカの細胞間が狭くなり、硬くなった状態となるからである。そうすると、発酵時液体の含浸がさらに困難となり、釣り餌には使えない。生イカの場合は、解凍作業はいらない。
準備工程で準備するイカの形態として、小形のイカ(例えば胸部、頭部、腕部の全長が20センチメートル以下。「ホタルイカ」やこれに近い「イカ」特にホタルイカもどき科)のものは内臓込みでイカが丸ごとの状態で次の工程に進めるし、通常の大きさのもの(例えば胸部、頭部、腕部の全長が20センチメートルよりも長いもの)は入荷された状態が内臓が含まれている場合には、内臓を取り出し、イカを洗浄して胴体と足に分離し、イカの胴体を主原料に使用する。なお、大型のイカの場合には足を原料として使用してもよい。釣り餌の形態をイカの切り身で使用する場合は、準備工程にイカを正方形、長方形や、短冊状(例えば長さ40ミリメートルから80ミリメートル、幅3ミリメートルから10ミリメートル程度:海中でひらひら舞うので釣りの対象となる魚類の注意をひきやすい。)にするカット作業が含まれる。イカが主原料となるが、イカの厚みが3センチメートル以上ある場合には、厚さを薄くするスライス工程を伴ってもよい。解凍等して洗浄し、カット作業などを行ったのちには次の工程に入る前にイカの表面についた水分を取る液切りを行う。その後、次工程で利用する材料の算定のためにイカの計量を行う。1バッチは5キログラムから15キログラム程度がよい。例えば10キログラム単位で行うと次以降の工程で利用する材料の算定が容易となる。
「イカ」は、例えば、アオリイカ(水イカ)、アカイカ、コウイカ(甲いか)、ムラサキイカ、ヤリイカ、ホタルイカ、スルメイカ、剣先イカなどが一般に利用される。
「イカの使用部位」としては、大きなイカは、イカの胴体を主に釣り餌の原料とするが、足を原料として使用しても良い。ホタルイカの場合は、イカの内臓や足を含めて丸ごと釣り餌とする。
「イカの形状」としては、釣りのスタイルによって適している形状が考えられる。釣り餌を泳がさせて行う釣りのスタイルの場合には短冊状が適しており、所定の棚に垂らして釣るスタイルの場合には正方形に近い形がよい。また釣りの実践においては、イカの釣り餌を数枚重ねて釣り針に刺してもよい。いわゆるだんご状にして対象魚に注目させることや、棚に垂らしている状態でも海流によってひらひらと舞うように短冊状のものを複数枚、できれば3枚から7枚程度一つの釣り針に刺して釣りを行うことも効果的である。後述するが、イカを着色して釣り餌として利用する場合には、一つの釣り針に複数色のイカの釣り餌を刺すことで、海中ではより魚類の注目を集める効果もある。1枚の切り身をカットしないで釣り餌として使用する場合と、細かくカットした切り身で使用する場合がある。また、提供されるイカのサイズが当日の狙いの魚と異なる場合には、釣り場(堤防、船上、岩場)でハサミでカットすることにより、適切な大きさの釣り餌とすることが簡単にできる。
「保湿工程」とは、準備したイカを保湿剤で保湿する工程をいう。この保湿工程は、図9(A)のような原理により発酵時液体(酒盗抽出液等)のイカへの浸透を促進するために行う工程である。保湿剤は液体状ものを使用するが、粉末状のものを用いて溶解して液体状にして使用しても良い。
「保湿剤」は、例えばソルビット(ソルビトール)などが使用できる。保湿剤としては、自然環境破壊や魚に取っても良い釣り餌を製造するため、環境対策を施したものを使用する。後記する実験では、ソルビットの重量%が70%、残余の水重量%が30%の液体(ここで、例えば塩1重量%などを含んでいても良い)を使用したが、100%のソルビット粉末を水に溶かしてソルビット重量%が60%~80%の液体を使用することができる。好ましくは、ソルビット重量%が65%~75%のものが良い。他の保湿剤の例としては、高糖化還元水飴を使用することができる。
「漬込工程」とは、保湿工程を経たイカを、動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体からなる漬込材に漬け込む工程をいう。
保湿工程を経たイカは、イカの細胞間に水を伴った保湿剤を含んでおり、漬込工程において発酵時液体の浸透が促進される。
「動物」(発酵時液体を産生するための動物)とは、哺乳類のみならず、爬虫類、鳥類、両生類、魚類といった脊椎動物はもちろん、貝類、昆虫、カイメンなど、幅広い種類の生物を含むものである。
「動物の構成部位」とは、発酵時液体を産生するために用いられる動物の構成部位である。魚類であれ、その他の種類の動物であれ、からなずしも全体を発酵に用いる必要はなく、発酵時液体を産生するに適している動物の部位を採用することができる。要は、腐敗でなく、いかに腐敗を防止して発酵させるか、という点から選ばれる動物の部位である。魚類であれば身の部分の他に消化器系の内臓などを利用することができる。
通常の発酵プロセスを用いる場合には、動物の部位のうち、粘膜バリアを有する部位を利用することが好ましい。粘膜バリアを有する部位は、腐敗菌類の存在が動物の部位中で少ない部位であるために発酵に利用するに適している部位だからである。粘膜バリアがある部位としては上記の消化器系の他に口腔部位、鼻部位、咽頭部位が適している。ただし、発酵温度を十分に低くできる発酵菌を用いる場合には、十分な時間をかけて低温で発酵させることができるので粘膜バリアがない部位を利用することもできる。ただし、その場合には十分な血抜きが必要となる。一般に動物の血液中には細菌等が紛れ込みやすいからである。血抜きを十分に行うためには、単に動脈や静脈を裂いてつるしておくのみでは十分でない場合がある。その場合には血管にパイプを挿入して真空引きなどをすると効果的である。
さらに、発酵に供するものであるので、前処理として十分に清潔に処理し、腐敗菌が入り込むことを防止できるようにしなければならない。なお、動物の構成部位は主に発酵によって発酵液を産生するために用いられるものであり、動物の種類は一種類に限定されるものではない。例えば、カツオ、マグロ、サバ、イワシなど複数種類の魚類の胃や腸を同時に利用して発酵液を産生するように構成することも可能である。
「発酵」とは、生物、特に微生物等が栄養素として取り込んだ有機物を嫌気的に代謝してエネルギーを得るとともに、代謝物を産生する過程であり、微生物が発酵食品など人間等に有益な有機物を生成する過程全般を指す。発酵は、その副産物として生成される有機物によって、アルコール発酵、乳酸発酵などに分類される。さらに発酵は微生物が増殖する過程をも一般に含む。従って、発酵によって特有の代謝物が産生されるとともに、発酵に寄与した微生物が増殖する結果となる。
「発酵構成部位」とは、前記動物の発酵に寄与した部位を言う。前述のとおり、微生物によって発酵構成部位は徐々に代謝され、それと同時に発酵に寄与した微生物で満たされる結果となる。
「発酵時液体」とは、前述のとおり微生物の発酵過程によって産生される代謝物であって液体状のものを指す。又は、発酵した動物の構成部位単独で、又は発酵した動物の構成部位と前記代謝物である液体状のものとを混合・撹拌し、あるいは加熱(摂氏40度から摂氏45度程度:発酵菌が死滅しない程度の温度)をし、発酵した動物の構成部位に含まれている水分(液成分)を用いて液体状となったものも含まれうる。必ずしも完全な液体のみをさすのでなく、液体に微小な個体状のものや、微小なゲル状のものが含まれている状態の全体を指すものであってもよい。一般には発酵によって産生される代謝物の大部分が液体状のものとなる。本明細書ではこの液体状のものを発酵時液体と称する。なお、この液体にも発酵に寄与した微生物が多く含まれる。そして、発酵に寄与した微生物の存在は腐敗菌などがそこに入り込んで生存することを防ぐという役割を果たす。これによって本願発明の製造方法で製造されたイカを原料とする釣り餌は長期の常温保存が可能となる。
一般的には発酵時液体は、腐敗菌の含有が無視できる程度低く抑えられており、また腐敗菌と接触したとしても短時間で発酵時液体が腐敗しない組成で構成されている。発酵過程を担う菌種としてはMicrococcus、各種嫌気性菌、Bacillus、その他の好塩菌、乳酸菌等であり、場合によって酵母を利用することもある。そして、発酵時液体は、これらの菌によって産生された産生物(種々の酵素、ヒドロキシ酸類、その他:いずれかが欠ける場合もある。)及び発酵によって増殖した菌類に満たされているものであり、動物の生の部位からの直接的に搾取される液体等(例えば生の血液等)は含まれていない。そして、これらを構成している分子は十分に小さくイカの肉表面を構成している細胞間に浸潤可能なサイズである。
なお、発酵時液体を産生するために利用される動物の部位は、釣りの対象として狙う魚類が食する種類の魚類であることが好ましい。魚類は、一般に他の魚類を餌として生きている上に、その餌となる魚類としては生きているもののほか、何らかの理由で死んでいるものも該当する。魚類はすでに死んでいる魚体を餌とすることが多く、魚類は一般に魚類の死後に発生する腐敗臭や、発酵臭をかぎ分ける能力も高い。従って、発酵時液体の臭は、捕食活動をする魚類にとっては日常的に餌の存在を示唆するものであり、この点から発酵時液体は高い集魚効果を有する。また魚種によっては、その魚種の生息領域に分布する動物の構成部位の発酵の際の臭に強い食欲を示す場合が多いので、魚種によっては適切に動物の種類を選択することでより高い釣果につなげることができる。また釣りの対象となる魚種が全国的に生息領域が分布している場合には全国的に分布している動物を発酵時液体の産生用の動物種として選択することができる。それが今回選択しているイカである。
本発明では従来になかった発酵という要素を取り込み、発酵菌によって餌を満たすことによって腐敗菌の侵入や、増殖を防止し、もって長期間の常温保存を可能にしたものである。ここで、防腐剤などの化学薬品を利用しないのは、防腐剤は自然界の敏感な生物からは忌避され、例え釣り餌が長期間保存可能となっても、釣り餌として役に立たない一方、自然発酵によって長期保存を可能にした場合には自然の成り行きであるから魚に忌避されないという自然の仕組みを応用したものである。
なお、発酵時液体には、発酵の結果残された個体がある場合に、これをミキサーなどで液体とともに粉砕して個体を微粒化した処理をしたものも含む。さらに発酵時液体の性質を調整するために添加剤(Ph調整剤、増粘剤等)が添加されたもの、濃度調整を水やアルコール、お茶、コーヒー等で行ったものも発酵時液体に含まれる。
「漬け込む」とは、動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体からなる漬込材に漬け込むことをいう。漬け込みは、イカの原料を保湿剤に所定時間(例えば、20~24時間)冷蔵保管(摂氏マイナス3度から摂氏10度程度)したものを使用する。発酵時液体である漬込材としては、例えば、酒盗抽出液などを使用する。なお、漬込みは一般に大気圧下で行われるが、コストをかけてもよい場合には圧力をかけて行うことも考えられる。イカの肉の内圧よりも発酵時液体に加えられている圧力を高くすることで漬込みによる発酵時液体の浸透がさらに促進される。この圧力をかけるためには圧力釜に漬込み状態にした後に、圧力釜を密閉し、外部から高圧ガス、ないしは高圧発酵時液体を注入することで可能である。高圧ガスは、発酵が嫌気性で行われるので、窒素ガスなどが適している。なお、窒素ガス源として液体窒素ボンベを採用すると、低温ガスで圧力釜が充填されるので冷蔵設備を利用しなくても済むというメリットも有する。この場合には常時窒素ガスが圧力釜にかけ流し状態で入る必要があり、圧力釜に窒素ガスリーク弁を設けるのが好ましい。
「漬込材」は発酵時液体として、酒盗抽出液を用いる。酒盗抽出液は準備した酒盗原料を加熱・攪拌して、液状化し、液状化した酒盗の液体を冷却する。その後、アルコールを溶媒として増粘剤(例えばキサンタンガム、ペクチン、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン)を混合して酒盗抽出液を作成する。この作成した酒盗抽出液を漬込材とする。漬込材の原料となる酒盗の製造工程に付いては、後記する。なお、増粘剤を用いないで酒盗抽出液を作成し、増粘剤を入れない状態で漬込材とすることも考えられる。この場合には、漬込み工程の後に増粘剤を付加した酒盗抽出液にイカを漬込んで、イカの表面に付着する酒盗抽出液の粘着度を指の付着などで忌避されない程度の適切な範囲で向上させるのが良い。
「常温保存」とは、夏季の30度を超える温度も含み、低真空引きしたパッケージを未開封状態で1か月以上の長期間保存できることをいう。なお、一旦開封した後でも、冷蔵庫等に保管すれば1か月程度は保存できる。釣り餌本体としてイカを用い、イカの切り身(ホタルイカの場合はイカ全体を含んだものを、イカの切り身等という)の重量に対して所定重量%の保湿剤に漬け込んで、その後にイカの切り身等の重量に対して所定重量%の発酵時液体(酒盗抽出液)と所定重量%の食塩を加えて(ホタルイカの場合、保湿剤は同時に加える)釣り餌を製造することにより、常温で長期間保存でき、常温での流通経路に乗せられる釣り餌を実現することができる。後記実験では、気温25℃の環境で行ったが、実際に製造した釣り餌を釣りの現場で使用したところ、夏季の30度を超える気温下でも釣り餌の変質が見られなかったので、特別な保管環境(冷凍庫や冷蔵庫)を整備することなく、通常の常温環境下で保管し、密封した容器(袋を含む)に入れて釣り餌の形態で釣具店や通販サイトで販売することができる。未開封状態であれば、数か月の長期間(少なくとも3か月以上)でも、釣り餌として十分使用可能である。なお、イカと発酵時液体とからなる釣り餌をいれたパックは真空引きされた状態となるが、釣り餌を使用する段階では開封される。釣りは長時間(~72時間程度)にわたって行われる場合があり、常温保存は開封後にも必要とされる条件である。後述される実験においては真空パックされた釣り餌の常温保存性の加速度試験と、開封後の釣り餌の常温保存性の両者を検討するために、開封後を想定した釣り餌の常温保存性を試験した。
<実施形態1 発明の効果>
このようにして製造され、真空パック(大気圧状態の真空度を0%とする場合に50%から90%程度の真空度)に封入された釣り餌であるイカの発酵時液体漬けのものは、少なくとも3か月間は、常温で保存しても品質の劣化がなく、保存期間3日間程度のものと比較して釣果に遜色はなかった。従って常温保存できるだけでなく、常温の物流に乗せられるので、通信販売などに適しており、へんぴな釣り場に出かける場合でもわざわざ当日に生エサ販売店に立ち寄ることなく数日から数か月前にあらかじめ購入している本発明の餌を持参することで生エサと同等の釣りができる。
<実施形態2>
実施形態2は、主に請求項2に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法の実施形態である。
<実施形態2 概要>
本実施形態2は、実施形態1を基本としつつ、前記発酵は酒盗を製造するための発酵である。
<実施形態2 構成の説明>
「酒盗」とは、カツオ、マグロの胃や腸に食塩を追加し、一定温度で6ヶ月~1年塩蔵熟成させ、自己消化酵素により自然発酵させたものをいう。本実施形態2では、この酒盗は液状化された状態の漬込材を用いて釣り餌を製造する。
酒盗は、魚(うお)ホルモンと言える魚介の内臓を使った食品で脂肪分がほぼゼロである、魚介のホルモンを使った食品の一つである。酒盗は低脂肪でオルチニンが豊富なうまみ成分の宝庫であり、長期間に渡り塩蔵熟成する生産手法が特色で、100gの酒盗に天然のうまみ成分(アミノ酸)は約5700mg含まれている。
図22に酒盗の製造工程を示す。酒盗の製造工程は、原料の入荷(2201)、血抜き(2202)、胃(又は/及び腸)選別(2203)、洗浄(2204)、水切り(2205)、塩漬け(2206)、塩水切り(2207)、カット(2208)、熟成(2209)の手順で行われる。以下、酒盗の製造工程について詳細に説明する。
<酒盗の製造工程>
<原料入荷工程2201>
図82(写真)にあるように、カツオの胃、腸、鰓、幽門垂、卵巣、精巣などの内臓が付いた状態で原料を入荷する。
<血抜き工程2202>
図83(写真)にあるように、原料をタンク(たとえば、FRP製タンク)に入れ、ホースで流水して血抜きをする。
<胃選別・解体工程2203>
図84(写真)にあるように、原料から胃(又は/及び腸)を選別し包丁やハサミでカットすることで胃(又は/及び腸)を切り開いて内容物を除去する。なお、魚種によっては、胃腸のみでなく、皮、骨、などを利用してもよい。
前述した原料入荷工程2201、血抜き工程2202、および胃選別・解体工程2203の工程は、後記図21の原材料準備工程2101に対応する。
<洗浄工程2204>
図85(写真)にあるように、胃(又は/及び腸)選別・解体した原料を洗浄機(水洗い:撹拌機能あり)に投入して洗浄する。
<水切り工程2205>
図86(写真)にあるように、洗浄後の原料をザルで水切りする。
前述した洗浄工程2204および水切り工程2205の工程は、後記図21の洗浄工程2102に対応する。
<塩漬け工程2206>
図87(写真)にあるように、水切りした原料に塩を加えて塩漬け(塩度15%、72時間程度が好ましい)にする。この塩漬けは、材料の水分活性を落とし雑菌等の繁殖を防止するため、及び材料のぬめりをとって後工程でのカッター機でのカットをしやすくするためである。
<塩水切り工程2207>
図86(写真)と同様に、塩漬け後の原料をザルで塩水切りする。
<カット工程2208>
図88(写真)にあるように、塩水切りした原料をカッター機でカットする。カッター機でのカットはカッター刃のサイズを変える、又は複数台のカッター機で複数回にわたって行ってもよい。
前述した塩漬け工程2206、塩水切り工程2207、およびカット工程2208の工程は、後記図21の塩漬工程2103に対応する。
<熟成工程2209>
図89、図90(写真)にあるように、カット済みの原料を熟成タンクに投入し半年から1年熟成を行う。
前述した熟成工程2209の工程は、後記図21の熟成工程2104に対応する。
以上の工程により、熟成された酒盗が製造できる。
この熟成された酒盗を釣り餌製造の酒盗抽出液用に使用するため、熟成されたカツオの胃(腸を含んでもよい)をカッター機でさらに細かくカットし、プラスチック製のタルに充填し、酒盗原料(酒盗原材料)とする。そして、この酒盗原料から後記図21の液状化工程2105を経て漬込材(発酵時液体)としての酒盗抽出液を作成する。
<実施形態3>
実施形態3は、主に請求項3に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態3 概要>
実施形態3は、実施形態1又は実施形態2を基本とし、前記保湿剤は、ソルビット溶液であり、イカの重量に対して溶質であるソルビットの重量割合が14%以上である常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態3 構成の説明>
<実施形態3 総論>
保湿剤はソルビット溶液(ソルビット65重量%から75重量%:水25重量%から35重量%)であり、イカの重量に対して溶質であるソルビットの重量割合が14%以上であることが適している。他の保湿剤として高糖化還元水飴などを使用してもよい。20%(溶質のソルビット重量割合が14%)未満では釣り餌の本体となるイカの柔軟性が悪いからである。イカの柔軟性が悪いと、次の工程である漬込み工程で漬込材が十分にイカに浸透せず、また、その柔軟性は漬込材の漬込み工程後も引き継がれるので、結果として出来上がった釣り餌で釣りをしたとき釣り餌が海中(水中)でひらひらとせず、釣果に影響を与えるからである。これらの最適な数値範囲を決定するため、後記するソルビット添加実験2を行った。この実験結果を図3に示す。ここで、ソルビット添加実験2は、イカの重量に対してソルビットの添加重量%は、10%刻みで0%~80%振って実験した。ソルビット添加実験2は、ソルビットの重量%濃度が70%、残りの重量%が30%の水の液体を使用した。図3中、括弧( )内の数値はイカの重量に対する溶質のソルビットの重量%を示す。さらに好ましい数値範囲を決定するため、図4に示すソルビット添加実験3を行った。ここで、ソルビット添加実験3において、ソルビット添加実験2と同様な濃度のソルビット液体を使用した。また、ソルビット添加実験2の実験結果よりソルビットが20%以上であれば良いことがわかったので、イカ重量に対してソルビット添加重量%を25%から34%に振って実験を行った。図4中、括弧( )内の数値はイカの重量に対する溶質のソルビットの重量%を示す。これらの詳細なソルビット添加実験2及びソルビット添加実験3の実験内容については後記することとし、ここでは説明を省略する。
<実施形態3 実験2結果及び実験結果3の説明 評価項目の意味>
図3に示す実験2と図4に示す実験3の評価項目について説明する。「柔軟性」とは、釣り餌の硬い柔らかいなどの柔軟性のことをいう。釣り餌として使用したとき、柔軟性が高いと釣り餌が海中(水中)でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつき度合いが良くなる。×は硬く餌として使えない状態、△はやや硬くベストではない状態、〇は僅かに硬いが釣りには支障がない状態、◎は柔らかい状態で最良の状態である。
<実施形態3 実験2結果の説明 結果>
図3に示すように、ソルビット溶液0%では、イカの切り身は硬かった。ソルビット溶液10%では、やや硬かった。ソルビット溶液20%では、僅かに硬かった。ソルビット溶液30%以上では、柔らかかった。
この結果から、ソルビット溶液30%以上であれば十分である。ソルビット溶液はイカの重量に対して20%(イカの重量に対する溶質のソルビット重量%が14%)を添加した場合、イカは僅かに硬いが釣りには支障がない程度である。従って、ソルビットの採用できる割合は、イカの重量に対してソルビット溶液20%(イカの重量に対する溶質のソルビット重量%が14%)以上であれば良いと判断した。
<実施形態3 実験3結果の説明 結果>
図4に示すように、ソルビット溶液25~27%では、イカの切り身は僅かに硬かった。ソルビット溶液28~34%では、柔らかかった。
この結果から、ソルビット溶液をイカ総重量に対する割合で、溶液28%(溶質のソルビット重量%が19.6%)以上添加することで、ソルビット溶液の保湿効果によりイカの柔軟性が向上する。
これらの結果から、保湿剤はソルビット溶液であり、イカの重量に対して20%(溶質のソルビット重量%が14%)以上が適しており、より好ましくはイカの重量に対して28%(溶質のソルビット重量%が19.6%)以上が良いと判断した。なお、動物の発酵時液体等にソルビット溶液で保湿状態にあるイカを漬込んで所定時間保管しても発酵時液体とソルビット溶液が置換されるがその硬さに大きな変化はない。硬さに影響を与えるのは主に後工程で追加して加えられる塩のイカに対する重量割合である。
<実施形態4>
実施形態4は、主に請求項4に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法の実施形態である。
<実施形態4 概要>
実施形態4は、実施形態1から実施形態3のいずれかを基本としつつ、前記イカは、平均肉厚が1ミリメートル以上の外套部分である常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態4 構成の説明>
「外套部分」とは、イカの耳部、胴部のことをいう。釣り餌本体となる部分は、イカを使用し、通常はイカの胴部を使用する。イカの耳部も使用することができる。イカの肉厚によって前述した保湿時の保湿剤(ソルビット溶液)や漬込時の漬込材の浸透度合いが異なるため、イカは、平均肉厚が1ミリメートル以上の外套部分のものを使用することができる。従って、ホタルイカのような平均肉厚が1ミリメートル以下の外套部分のものは含まない。例えば、ホタルイカは、平均肉厚が0.4ミリメートルから0.8ミリメートル程度である。
<実施形態5>
実施形態5は、主に請求項5に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法の実施形態である。
<実施形態5 概要>
本実施形態5は、実施形態1から実施形態4のいずれかを基本としつつ、前記漬込材は、イカの重量に対して30%以上40%以下であり、前記漬込材は、漬込材の全重量に対して塩分濃度が15%以上25%以下である常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態5 構成の説明>
<実施形態5 総論>
漬込材は発酵時液体であり、イカの重量に対して30%以上40%以下が適している。さらに、漬込材の全重量に対して塩分濃度が15%以上25%以下(15%以下であると発酵時液体による常温保存性がおとり、25%以上であると発酵に利用できる菌種が限定されてしまう。大部分の好塩菌は25%以下の環境でないと発酵活動を活発に行うことができないため発酵時液体を産生するために相当な時間がかかってしまい不適切である。)である。発酵時液体の一例としては、酒盗抽出液を用いることができる。これらの最適な数値範囲を決定するため、後記する酒盗抽出液の添加実験5を行った。この実験結果を図7に示す。この詳細な酒盗抽出液の添加実験5の実験内容については後記することとし、ここでは説明を省略する。
<実施形態5 実験5結果の説明 評価項目の意味>
図7に示す実験5の評価項目について説明する。「常温保存性(非変質性)」とは、常温例えば気温25度から35度程度の状態で保存できる性質のことを言い、釣り餌の変質(主に腐敗性の観点で、つまんだ場合の身崩れや腐敗臭から判断)の度合いで判断する。本願請求項で使用する用語としての「常温保存」とは異なる意味で使用している。主に真空パックされた本願発明の釣り餌のパックを開封した後にどの程度の時間長で継続して釣り餌として利用可能という尺度から検討するためのものである。従って、この尺度で常温保存性があると判断されたものは真空パックされることで前述の通り常温で1か月以上利用可能に保存することができる。
「常温保存性」は、「◎」は腐敗なし変質なしで最良な状態、「〇」はほとんど腐敗なし変質なし、「△」は部分的に腐敗し変質している、「×」は全体的に腐敗し変質あり、釣り餌として使えない状態である。
「変色性」は、釣り餌のイカの身が茶色く変色する度合のことを言う。イカの身が茶色く変色すると釣り餌として使用したときに食いつきが悪くなることが知られている。「×」は茶色く変色し常識的に釣り餌として使えない状態。「△」はやや茶色く変色し、ベストではない状態。「〇」は部分的に茶色く変色するが釣りには支障がない状態。「◎」は変色が全くない状態で最良の状態。
「匂いの程度」は人間(試験者)の嗅覚で感じる度合をいう。釣り餌の匂いの程度により魚の集魚効果が変わるので評価項目とする。匂いが強い方が「◎」、やや匂いを感じるが「〇」、匂いをわずかに感じるが「△」、ほとんど感じられないが「×」。
「付着性」とは、実験者の手、指への発酵時液体の汚れとしての付着の度合いを言う。これは餌をつまむたびに手を一生懸命拭かなければならないとすると大変であるという観点から採用された評価項目である。「◎」は最も汚れる程度(付着)が少なく、「〇」はわずかに指に付着する程度、「△」はやや指に付着する程度、「×」はかなり指に付着する状態である。
<実施形態5 実験5結果の説明 結果>
図7に示すように、酒盗抽出液の対イカ重量%で20%から40%の範囲では比較的良好な結果(「△」「〇」「◎」の結果)が得られた。多少の問題は、酒盗抽出液の対イカ重量%で20%(実際に可能性としては数値範囲として20%から30%未満の範囲の可能性がある。)の際に常温保存性、変色性、匂いの程度が「△」判断、すなわち部分的に腐敗し、やや茶色く変色し、匂いはわずかにしか感じられない程度であるという結果となった。
集魚効果(変色性と匂いの程度で判断)には多少の影響があり、又、常温保存性が多少劣ることから釣りの際の衛生面から好ましくない。
さらに酒盗抽出液が30%(30%以上40%未満の範囲での評価を代表している。)の評価では変色性が「△」評価となった。つまり、やや茶色く変色した。しかし、30%では常温保存性が飛躍的に向上し、また匂いの程度や、付着性も問題がないとの判断である。変色性は集魚効果に多少の悪影響はあるが、それほど致命的でなく、この点に目をつぶれば、発酵時液体がイカの重量に対して30%~は採用可能である。
また酒盗抽出液の対イカ重量%で40%(実際に可能性としては数値範囲として30%より大きく50%未満の範囲の可能性がある。)の場合には「△」判断が付着性に対してなされた。つまり酒盗抽出液がやや指に付着する結果となった。これは釣り動作の迅速性や快適性に多少影響を与えるものである。以上から問題点として注意を要する点は人の健康に影響を与えかねない常温保存性であるが、この欠点は季節要因として夏場に特に問題となるもので、レシピの変更などで夏場をしのげれば他のシーズンでは受け入れることは必ずしもできないことではないので酒盗抽出液の対イカ重量%で20%以上40%以下の範囲を発明としては採用することができる。
さらに、衛生面の判断の基準となる常温保存性と、釣りの快適性の判断の基準となる付着性を比較すると、人の健康に危険な因子となる常温保存性の方が付着性よりもより重要視されるべきである。釣り餌の保管期間は、常温保存で3か月程度以上保存可能であるが、入手時期が春であっても、使用時期が夏場になってしまうと、腐敗した釣り餌を触った手で釣り上げた魚が汚染され、結果としてそれが人の口に運ばれたり、釣りの最中で腐敗した釣り餌を触った手が直接又は間接に唇にふれるなどして結果として腐敗成分が釣り人の体内に運び込まれるなどの事態を招来しかねない。従って、常温保存性をより重要視すればより良い酒盗抽出液の対イカ重量%は30%から40%の範囲では比較的良好な結果が得られた。従って、酒盗抽出液の対イカ重量%で30%以上40%以下の範囲をよりよい適用範囲として発明としては採用することができる。
前記漬込材としての発酵時液体(酒盗抽出液)には、塩分が含有されている。この理由は、動物構成部位(カツオの胃や腸)を発酵させるに際して塩分(塩)を含有すると、動物構成部位の水分活性が下げられ、腐敗系細菌(特に腸炎ビブリオ)の繁殖を抑え、腐敗を抑えるからである。前記塩分の含有は漬込材の全重量に対して塩分濃度が15%以上25%以下とした。この理由は、漬込材の全重量に対して塩分濃度が15%以下であると発酵時液体による常温保存性が劣り、25%以上であると発酵に利用できる菌種が限定されてしまうからである。この濃度であれば特に海水に生息する腸炎ビブリオに対して大きな繁殖抑制効果が認められる。一方、発酵に寄与する菌類も大部分の好塩菌は25%以下の環境でないと発酵活動を活発に行うことができないため発酵時液体を産生するために相当な時間、例えば2~3年かかってしまい実用的でない。
<実施形態6>
本実施形態6は、主に請求項7に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態6 概要>
実施形態6は、実施形態1から実施形態5のいずれかを基本とし、図10に示すように、漬込工程1003は、漬込材がイカの重量に対して30%以上39%以下であり、イカ重量に対して塩を33%以上38%以下加える漬込時塩追加サブ工程1004を有する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。実施形態5においては漬込工程において塩を追加するか否かに関しては検討しないでイカに対する漬込材(酒盗抽出液)の最適範囲を検討した。これに対して、本実施形態6では、漬込み工程において漬込材に漬込むと同時に塩を加えることによってさらに釣り餌の品質を向上することを発案したものである。
<実施形態6 構成の説明>
<実施形態6 総論>
図10に示す漬込工程の漬込時塩追加サブ工程1004において、漬込材がイカの重量に対して30%以上39%以下であり、イカ重量に対して塩を33%以上38%以下加えるのが適している。漬込時塩追加サブ工程1004は、イカ(例えば、イカの切り身等)の水分活性を所定値以下に下げて常温保存性を向上させるために行う。これらの最適な数値範囲を決定するため、後記する食塩+酒盗抽出液の添加実験7を行った。この実験結果を図13~図20に示す。この詳細な酒盗抽出液の添加実験7の実験内容については後記することとし、ここでは説明を省略する。
<実施形態6 実験7結果の説明 評価項目の意味>
図13~図20に示す実験7の評価項目についての「常温保存性」、「変色性」、「匂いの程度」、「柔軟性」、「付着性」に関しては、実験6と同様の評価である。
<実施形態6 実験7結果の説明 結果>
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:32%+酒盗抽出液>
図13に示すように、対イカ総重量の32%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)については全てにおいて変質が見られなかった。変色性については、対イカ総重量の酒盗抽出液(漬込材)29%で「△」評価となり、やや茶色く変色、対イカ総重量の30%から33%酒盗抽出液(漬込材)で「〇」評価となり、部分的に茶色く変色となったが、対イカ総重量の34%~41%酒盗抽出液(漬込材)では変色なしとなった。匂いの程度については、対イカ総重量の32%の食塩に対イカ総重量の29%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「△」評価で僅かに感じる、対イカ総重量の30%~31%酒盗抽出液で「〇」評価結果で、はやや感じる、32~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したとき「◎」評価結果で強く感じた。
柔軟性については、対イカ総重量の32%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときいずれの濃度でも柔らかかった。付着性については、対イカ総重量の29%~37%酒盗抽出液(漬込材)で「〇」評価で僅かに付着、対イカ総重量の38%~41%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:33%+酒盗抽出液>
図14に示すように、対イカ総重量の33%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・柔軟性については、対イカ総重量の32%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。つまり、問題となる評価はなかった。変色性については、対イカ総重量の酒盗抽出液(漬込材)29%でやや茶色く変色、対イカ総重量の30%~32%酒盗抽出液(漬込材)で部分的に茶色く変色となったが、対イカ総重量の33%~41%酒盗抽出液(漬込材)では変色なしとなった。付着性については対イカ総重量の29%~39%酒盗抽出液(漬込材)で僅かに付着、対イカ総重量の40%、41%酒盗抽出液(漬込材)でやや付着となった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:34%+酒盗抽出液>
図15に示すように、対イカ総重量の34%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・匂いの程度・柔軟性・付着性については、対イカ総重量の33%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。変色性については、対イカ総重量の酒盗抽出液(漬込材)29%でやや茶色く変色、対イカ総重量の30%酒盗抽出液(漬込材)で部分的に茶色く変色となったが、対イカ総重量の31%~41%酒盗抽出液(漬込材)では変色なしとなった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:35%+酒盗抽出液>
図16に示すように、対イカ総重量の35%の食塩に同じく対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性については、対イカ総重量の34%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:36%+酒盗抽出液>
図17に示すように、対イカ総重量の36%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性については、対イカ総重量の35%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。付着性については対イカ総重量の29%~40%酒盗抽出液(漬込材)で僅かに付着、対イカ総重量の41%酒盗抽出液(漬込材)でやや付着となりわずかに向上した。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:37%+酒盗抽出液>
図18に示すように、対イカ総重量の37%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性について、対イカ総重量の36%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:38%+酒盗抽出液>
図19に示すように、対イカ総重量の38%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性について、対イカ総重量の37%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:39%+酒盗抽出液>
図20に示すように、対イカ総重量の39%の食塩に同じく対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・柔軟性については、対イカ総重量の38%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。変色性については、対イカ総重量の29%、30%酒盗抽出液(漬込材)ではところどころでやや茶色く変色、対イカ総重量の31%~33%酒盗抽出液(漬込材)では部分的にところどころで茶色く変色、対イカ総重量の34%~41%酒盗抽出液(漬込材)では変色なしとなった。変色性で他の実験より劣る結果となったのは、酒盗抽出液に加える塩分があまりに多くなりすぎて、十分に塩が溶けず、偏在したためと考えられる。これを見るために、酒盗抽出液に塩を溶かした場合の溶け具合を実験した。図99は、酒盗抽出液に塩を溶解する容器を秤の上に置き、表示をゼロ表示とした写真である。図100は、酒盗抽出液(塩分濃度がカツオの胃に対して19.7%)を10.0グラム分容器に入れたところである。図101はこれに8.0グラムの塩を足したもので、塩を単に載せても酒盗抽出液に溶解しない。図102は、これをスプーンでよく混ぜてそのコップの内部を拡大した写真である。塩の粒が見て取れる。図103は、さらに塩を2グラム追加して静置した写真である。同じく塩を載置しただけでは塩は酒盗抽出液に溶解しない。これをスプーンでかき混ぜてコップの内部を観察したものが図104に示す写真である。これを見てもわかるように塩の粒が溶けないで残留している。このように、塩を増やしてゆくと、塩の粒が残り、イカを重ねた熟成タンクの中で、イカどうしが接している領域と、イカが塩分が溶けない酒盗抽出液に接している領域とで塩の接触態様が変わり、まだら模様が形成されるようになる。つまり、塩分濃度が高くなりすぎると、変色性に問題が出る。匂いの程度については、対イカ総重量の29%、33%酒盗抽出液(漬込材)では僅かに感じる、対イカ総重量の31%~33%酒盗抽出液(漬込材)ではやや感じる、対イカ総重量の34%~41%酒盗抽出液(漬込材)でかなり感じるとなった。付着性については対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)で僅かに付着となった。
<実施形態6 実験7から求められる組成の最適範囲>
イカに対する塩分重量%に関しては、イカに対する酒盗の重量%が小さい場合には「付着性」を損なう結果になる。付着性は釣りの動作の容易さ、快適性に関する指標であり、この付着性が不適切な範囲が大きい塩の添加重量%が32%の組成の物は不適切である。一方、イカに対する塩の重量%が39%の組成の物も、塩分が多くなりすぎることによって比較的広い酒盗抽出液組成範囲にて変色性の問題を生じるので不適切である。従って、塩分の添加対イカ重量%は33%から38%が適切な範囲として考えられる。
さらに酒盗抽出液のイカに対する重量%の範囲に関しては、29重量%では評価に「△」が塩添加領域の全域にわたって存在し、また40%以上では、付着性に問題を生じる塩の重量%の領域が比較的広く(塩重量%が33%から38%)好ましくない。従って結論としては、イカの重量に対する塩の重量%が33から38%かつ、酒盗抽出液の重量%が30%から39%の範囲に適切な漬込み工程の組成範囲が存在する。なお、より好ましくは、イカの重量に対する塩の重量%が36から38%かつ、酒盗抽出液の重量%が31%から39%の範囲がよりよい適切な漬込み工程の組成範囲であるといえる。この領域の端部組成領域でも安定した評価が全体に得られるからである。なお、イカの重量に対する塩の重量%が36から38%かつ、酒盗抽出液の重量%が31%から40%の範囲も今回の実験では利用可能な領域であることが判明した。この領域では付着性に関しても「△」評価がないからである。
<実施形態7>
本実施形態7は、主に請求項9に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態7 概要>
実施形態7は、実施形態1から実施形態6のいずれかを基本とし、図11に示すように、保湿工程1102は、イカ重量に対して塩を1%以上6%以下加える保湿時塩追加サブ工程1103を有する。その後の漬込工程1104の塩追加サブ工程1105で追加した塩と合わせた値が33%以上38%以下とすると柔軟性がイカの切り身にあり、かつ常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態7 構成の説明>
<実施形態7 総論>
保湿工程は、イカ重量に対して塩を1%以上6%以下加えるのが適している。保湿工程は保湿時塩追加サブ工程1103を有し、保湿時塩追加サブ工程1103において、保湿剤としてソルビット溶液で保湿するとき、塩の濃度重量%が少ない塩を1%以上6%以下加える。これにより、漬込工程1104の塩追加サブ工程1105の塩追加と合わせて2段階の塩追加を行う。1段目の保湿時の塩追加は塩分濃度重量%が少ないので、一気にイカに塩を触れさせる場合よりもイカが締まって硬くなることを軽減することができる。また、保湿工程においてはソルビット溶液、塩漬け込み後に20~24時間の冷蔵保管も行うので、保湿剤(ソルビット溶液)の保湿も促進される。
その後の漬込工程1104で合わせた値がイカ重量に対して塩を33%以上38%以下とするのが適している。実施形態6で得られた数値範囲を超えてしまうと、釣り餌の特性が変わってしまうため、保湿工程1102と漬込工程1104で追加される塩は、イカ重量に対して塩を33%以上38%以下とするのが良い。これらの最適な数値範囲を決定するために、ソルビット+塩添加実験4を行った。この実験結果を図5に示す。この詳細なソルビット+塩添加実験4の実験内容については後記することとし、ここでは説明を省略する。
<実施形態7 実験4結果の説明 評価項目の意味>
図5に示す実験4の評価項目について説明する。「柔軟性」とは、釣り餌の硬い柔らかいなどの柔軟性のことをいう。釣り餌として使用したとき、柔軟性が高いと釣り餌が海中(水中)でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつき度合いが良くなる。◎は柔らかい状態で実験7の柔軟性の◎と同じ評価である。さらに、保湿工程で添加する塩分のイカに対する重量%が1%から6%の「◎〇」は、実験7の「◎」よりもさらに柔らかい最良の状態である。
<実施形態7 実験4結果の説明 結果>
図5に示すように、柔軟性は食塩1%から6%までは柔らかいという官能評価が得られた。
この結果、保湿時に1%以上6%以下の塩を加えることが適切と考える。
<実施形態8>
本実施形態8は、主に請求項10から請求項12に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態8 概要>
実施形態8は、本実施形態1から実施形態7のいずれかを基本としつつ、図12に示すイカ準備工程1201の後で保湿工程1203の前に、イカを水分で膨潤させる膨潤工程1202をさらに有する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。また、膨潤工程1202はリン酸塩水溶液を用いてイカを膨潤させる工程である。このとき、前記リン酸塩(粉末)の重量%は、イカの重量に対して1.0%以上6.0%未満である。これをイカと同重量の水に溶かしてリン酸塩水溶液としてイカを膨潤させることは新しい知見である。リン酸塩の種類は食品添加物として利用できるものであれば特に問われない。
例えば、Na2OとP2O5を主成分とした高分子縮合リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどを利用することができる。
リン酸塩水溶液のリン酸塩濃度は、一般には0.05%から0.5%程度のものであるが、本発明では、リン酸塩自体のイカに対する重量%は、1.0%から6.0%のリン酸塩粉末をイカと同重量の水に溶解して利用した。いずれにしてもリン酸塩と水とを用いてイカ(外套等)を膨潤させることで後工程の保湿工程や、漬込工程をより効果的とすることができる。なお、膨潤工程を採用した場合には保湿工程を省略することも可能である。また保湿剤とリン酸塩溶液との混合液を用いて膨潤工程と保湿工程を同時に行うことも考えられる。発明としては、リン酸塩水溶液の濃度を限定することなくリン酸塩水溶液を用いてイカを膨潤させることができる点を挙げることができる。
<実施形態8 構成の説明>
「膨潤工程」1202はイカ準備工程1201の後で保湿工程1203の前に、イカを水分で膨潤させる工程である。保湿工程1203の前に、イカを膨潤させておくと、ソルビット溶液の保湿効果が促進されるからである。膨潤工程1202において、リン酸塩水溶液を用いてその効果によりイカに水分を含ませて膨潤させる。この膨潤実験1の結果を図2に示す。膨潤実験1の詳細については、後述することとし、ここでは、説明を省略する。図2では、リン酸塩水溶液(対イカの重量%が0%、1%、2%、4%、6%、8%の範囲のものをイカと同重量の水に溶解したものを利用して24時間後の重量変化を測定して順位を決めた。
図2に示すように、リン酸塩水溶液無添加区の0%(リン酸塩粉末対イカ重量%)では、重量は変化しなかった。リン酸塩水溶液2%(リン酸塩粉末対イカ重量%)添加区で最も重量の増加が見られた。リン酸塩水溶液無添加区では、柔軟性は変化しなかった。
リン酸塩水溶液を使用することでイカの重量を増加させることができる。リン酸塩水溶液2%が最もイカの重量が増加する添加区である。リン酸塩水溶液を用いることで、いずれも重量が増加するが、リン酸塩の粉末状態の物の重量%は、イカの重量に対して1.0%以上6.0%未満が適切と判断した。
<実施形態9>
実施形態9は、主に請求項13に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態9 概要>
実施形態9は、実施形態1から実施形態8をいずれかを基本とし、図27に示す保湿工程2702は、着色剤によってイカを着色する着色サブ工程2703を含む常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態9 構成の説明>
「着色サブ工程」2703は着色剤によってイカを着色する工程である。常温保存可能な釣り餌の製造方法において、前記保湿工程2702は、着色剤によってイカを着色する着色サブ工程2703を含む常温保存可能な釣り餌の製造方法であってもよい。着色サブ工程2703は、漬け込み作業(漬込工程2704)を行う前の保湿工程2702で着色剤を加えるようにすると良い。その理由は、使用する保湿剤も液体で使用し、着色剤も液体で使用するので、イカ(例えば、イカの切り身等)への浸透が促進されるからである。ここで、着色を行う場合は、イカ全重量の0.05~1%の着色剤(着色料)を着色剤重量の約100倍程度の水に溶き、保湿剤に混合する。レッド、ブルー、イエローなどの色分けする場合は、保湿剤用の容器を別々に分けて使用する。そうしないと、色が混じってしまうからである。
<着色剤>
着色剤は、釣り餌をルアーのように色分けして魚の食いをよくする役割を果たす。例えば、レッド、ブルー、イエロー、グリーンなどの着色を行う。着色剤(着色料)としては、食用色素が使用できる。食用色素の例としては、食用赤色3号、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色2号、食用赤色40号などが挙げられる。これらの着色剤の平均粒子径は、色素粉末が平均粒度1~10ミクロン程度である。
<着色剤で着色されているイカ>
イカは、着色剤で着色されている。天候(晴天、雨、曇など)や海水や川の濁り具合、朝、昼、夜などの時間によってルアーのように釣り餌を使い分けすることができる。この着色は、魚の喰いつきに影響したり、釣り人の気分に応じて餌の色を変えることによって、釣りを楽しむことができる。
<表面>
イカの表面は、着色剤により着色されているので、色がついている。生の釣り餌などでは、第二の動物の構成部位由来の色彩に制限されないで魚が興味を持つ各種の色を採択できる。イカの切り身等の場合は、その素材では存在しない色の釣り餌が実現できる。何色も、例えば5色用意することにより、ルアーの置き換えのような使い方ができる。ルアーであると、プラスチックやシリコンなどの材料で作製されているため、魚が飲み込んでしまい、釣れなかった場合は、魚の体内にルアーが留まることになり、環境的にも良くない。しかし、本釣り餌はイカの切り身等に色づけしたので、魚が食べても安全であり、環境への影響も少ない。
<自然環境対応>
着色剤を含めて、本実施形態では製造原材料に自然環境破壊を起こさない自然環境対策が施されたものを使用する。
図25に示すように、使用したイカ餌製造原料は、イカと食塩は自然由来のもの、リン酸塩(膨潤剤)、ソルビット、着色剤は食品添加物である赤色3号、青色1号、黄色4号(合成着色料)、および酒盗抽出液である。酒盗抽出液製造の使用原料の詳細については図26に示す。
図26に示すように、酒盗抽出液製造の使用原料は、カツオ胃と食塩は自然由来のもの、アルコールとキサンタンガム(増粘剤)は食品添添加物である。
<実施形態10>
本実施形態10は、主に請求項14、請求項15、請求項16に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態10 概要>
実施形態10は、成体のホタルイカを準備するイカ準備工程と、準備した成体のホタルイカを保湿剤で保湿する保湿工程と、成体のホタルイカを、動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体からなる漬込材に漬け込む漬込工程と、からなる常温保存可能な釣り餌の製造方法であって、保湿工程と、漬込工程は同時に行われる常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態10 ホタルイカ>
「ホタルイカ」とは、ツツイカ目ホタルイカモドキ科が正式名称で、別名「コイカ」、「マツイカ」とも称される。体長6cm前後の小さなイカで、発光する。漁場は、日本海全域、太平洋側では北海道から土佐湾までの沿岸領域である。漁期以外には深海に住み、春の産卵期に沿岸に近づき捕獲される。よって旬は春(3月から5月)である。ホタルイカは、内臓ごと丸ごと食べることができその栄養素も豊富にある。ビタミンAやEなど自然には摂り難いものも豊富で、ミネラルやアミノ酸のバランスも良い。浜で茹であげる「桜煮」が旧来からの食の姿であったが、最近は生食の旨さが広まっている。
<実施形態10 構成の説明>
<実施形態10 保湿工程と漬込工程を同時>
保湿工程と、漬込工程は同時に行う常温保存可能な釣り餌の製造方法である。つまり成体のホタルイカの重量に対して所定の重量%の保湿剤(ソルビット溶液等)、および所定の重量%の漬込材を混ぜた液体にホタルイカを漬込むことにより、ホタルイカを用いた常温保存可能な釣り餌を製造する。ホタルイカは成体のホタルイカを一杯丸ごと使用している。例えば、ホタルイカを利用する場合は、内臓なども取り除かいないで漬込みを行う。
ホタルイカは一般のイカと比較して小ぶりでイカの胴体を構成する肉厚も薄いので、一般のイカのように保湿工程を独立させなくてもよい。そこで保湿工程と、漬込み工程とを同時に行うことでホタルイカに対する処理時間を短縮でき、ホタルイカの肉質の低下を少なくすることができる。特に生のホタルイカを使って釣り餌の加工をおこなう場合、ホタルイカの漁期は、3月から5月であり、5月くらいには気温も上昇するために生のホタルイカは短時間で品質の劣化をきたすために、この保湿工程と漬込工程とを同時に行うことの意義がある。また冷凍のホタルイカを解凍して使う場合でも、夏場などには同じく解凍されたホタルイカの劣化速度が速いのでこのように保湿工程と漬込工程とを同時に行うことに意義がある。
実施形態10において、「保湿工程」、「漬込工程」の内容自体は、実施形態1にて説明したものと同様であるので、説明を省略する。
<実施形態10 保湿剤=ソルビット>
実施形態10の常温保存可能な釣り餌の製造方法において、保湿剤としてソルビットを採用することができる。成体のホタルイカの重量に対して溶質であるソルビットの重量割合が14%以上が適している。14%以上であれば十分に保湿が可能であるが、ソルビットを増加しても、その効果が横ばいになるので、ソルビットの前記重量割合が30%以下とすることが好ましい。ソルビットを増加する効果がなくなるからである。
<実施形態10 漬込材生成=酒盗生成>
実施形態10の常温保存可能な釣り餌の製造方法において、前記発酵は酒盗を製造するための発酵であってもよい。前述の通り、「酒盗」とは、カツオ、マグロの胃や腸に食塩を追加し、一定温度で6ヶ月~1年塩蔵熟成させ、自己消化酵素により自然発酵させたものをいう。
酒盗の製造(発酵)工程に関しては実施形態2に記載の通りである。酒盗に含まれるうまみ成分としては、「アミノ酸グルタミン酸(昆布・チーズ・海苔・トマトなどに含有)」、「核酸イノシン酸 (鰹節・鮪に多く含有)」の2種類のうまみ成分が同時に含まれており、釣りの対象魚にとっても魅力的なにおいが漂うこととなる。
<実施形態11>
実施形態11は、主に請求項19に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態11 概要>
実施形態11は、実施形態10を基本とし、保湿工程は、着色剤によって成体のホタルイカを着色する着色サブ工程を含む常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態11 構成の説明>
「着色サブ工程」は着色剤によって成体のホタルイカを着色する工程である。常温保存可能な釣り餌の製造方法において、前記保湿工程は、着色剤によって成体のホタルイカを着色する着色サブ工程を含む常温保存可能な釣り餌の製造方法であってもよい。着色サブ工程は、漬け込み作業(漬込工程)と同時行う保湿工程で着色剤を加えるようにすると良い。その理由は、使用する保湿剤も液体で使用し、着色剤も液体で使用するので、成体のホタルイカへの浸透が促進されるからである。ここで、着色を行う場合は、イカ全重量の0.05~1%の着色剤(着色料)を着色剤重量の約100倍程度の水に溶き、保湿剤に混合する。レッド、ブルー、イエローなどの色分けする場合は、保湿剤用の容器を別々に分けて使用する。そうしないと、色が混じってしまうからである。
<着色剤>
着色剤については、段落[0135]で前述したとおりである。
<着色剤で着色されているイカ>
着色剤で着色されているイカについては、段落[0136]で説明したので、ここでは説明を省略する。
<表面>
イカの表面については、段落[0137]で説明したので、ここでは説明を省略する。
<自然環境対応>
着色剤を含めて、本実施形態では製造原材料に自然環境破壊を起こさない自然環境対策が施されたものを使用する。
図25に示すように、使用したイカ餌製造原料は、イカと食塩は自然由来のもの、リン酸塩(膨潤剤)、ソルビット、着色剤は食品添加物である赤色3号、青色1号、黄色4号(合成着色料)、および酒盗抽出液である。酒盗抽出液製造の使用原料の詳細については図26に示す。
図26に示すように、酒盗抽出液製造の使用原料は、カツオ胃と食塩は自然由来のもの、アルコールとキサンタンガム(増粘剤)は食品添加物である。
<実施形態12>
実施形態12は、主に請求項20に対応する発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体の製造方法である。
<実施形態12 概要>
実施形態12は、前記動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体の製造方法であって、原材料準備工程と、洗浄工程と、塩漬工程と、熟成工程と、液状化工程と、からなる。
<実施形態12 構成の説明>
実施形態12は、前記動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体の製造方法であり、図21に発酵時液体の製造工程を示す。発酵時液体の製造工程は、原材料準備(2101)、洗浄(2102)、塩漬け(2103)、熟成(2104)、液状化(2105)の手順で行われる。以下、発酵時液体の製造工程について詳細に説明する。
<発酵時液体の製造工程>
<原材料準備工程2101>
図21に示すように、原材料準備工程2101は動物の原材料として生の魚類の胃又は/及び腸を準備する工程である。動物としては魚類が適しており、入手のしやすさから生のカツオの内臓を使用するが、生のマグロなどの内臓を使用しても良い。生のカツオの胃、腸、鰓、幽門垂、卵巣、精巣などの内臓が付いた状態で原料をトラックで入荷し、所定量を収納タンクに入れる。タンク内で流水血抜きを行い、作業員が手作業で胃を選別し、包丁で切り開き、内容物を除去する。ここで、胃に加えて腸を選別したり、胃と腸の両者を選別してもよい。ここまでが原材料準備工程である。
<洗浄工程2102>
図21に示すように、洗浄工程2102は準備した原材料を水で洗浄する工程である。準備した胃を洗浄機に所定量入れ、流水で洗浄する。洗浄された胃をザルに入れて水切りを行う。1回の処理量は作業員がザルに原料を入れて運搬できるぐらいの量である。当然、洗浄機に1回に入れられる量の範囲で行う。
<塩漬工程2103>
図21に示すように、塩漬工程2103は洗浄された原材料を塩漬けにする工程である。水切りされたカツオの胃を所定量(数十キロ程度)タルに入れ、塩度約20%~25%ぐらいの塩を加えて、数日間塩付けを行う。これは、カツオの胃の水分活性を下げ、雑菌等の繁殖を防ぐために行う。この数日間の塩漬けで出た塩水を所定量ザルに入れて、塩水切りを行う。塩水切りしたカツオの胃の発酵が促進されるように、所定のサイズ、例えば1センチメートルから数センチメートルにカッター機でカットする。これらの原料が準備できたら、次に熟成工程に移る。
<熟成工程2104>
図21に示すように、熟成工程2104は塩漬けされた原材料を熟成させる工程である。1トン以上貯蔵できる熟成タンクを用意し、この熟成タンクがいっぱいになるまでカットされた原材料のカツオの胃を貯め、熟成庫に1年間熟成する。熟成期間は半年~1年間程度であれば良く、これに限定されない。夏季や冬季などの気温の変化で熟成期間が変動するからである。熟成はなるべく気温変化が少ない場所が良く、冷暗所(熟成庫)に保管する。この熟成工程において、熟成された酒盗が漬込材としての発酵時液体(酒盗抽出液)の原料となる。なお、酒盗を釣り餌製造の酒盗抽出液用に使用するため、熟成されたカツオの胃をカッター機でさらに細かくカットし、プラスチック製のタルに充填し、酒盗原料(酒盗原材料)とする。
<液状化工程2105>
図21に示すように、液状化工程2105は熟成された原材料の液状化を促進する工程である。液状化工程2105は、プラスチック製のタルに充填され準備された酒盗抽出液用の酒盗を加熱・撹拌して酒盗のカツオの胃を溶解して液状化して発酵時液体(酒盗抽出液)とする加熱・撹拌工程と、加熱され液状化した酒盗抽出液を冷却する冷却工程と、からなる。ここで、加熱・撹拌工程は、準備された酒盗を30分から1時間程度40~45℃以上で加熱・撹拌し完全に溶解させ、液状化した酒盗抽出液を作る。冷却工程では、加熱された液状化酒盗を30℃以下まで冷却を行う。加熱された40~45℃以上の酒盗抽出液(液状化酒盗)をイカの切り身等に漬け込むと、原料としてのイカの切り身等が加熱されていると変質する恐れがあるからである。
<実施形態13>
実施形態13は、主に請求項21、22に対応する前記動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体の製造方法である。
<実施形態13 概要>
実施形態13は、実施形態12を基本としつつ、前記液状化工程の前又は/及び後に増粘剤を添加する増粘剤添加工程を有する発酵時液体の製造方法である。前記増粘剤には、溶媒としてのアルコールが含まれている。
<実施形態13 構成の説明>
<実施形態13 増粘剤添加工程>
「増粘剤添加工程」は前記液状化工程の前又は/及び後に増粘剤を添加する工程である。ここで、増粘剤の種類については、前述したとおりである。増粘剤添加工程は、液状化工程の後に、冷却された漬込材(発酵時液体)にアルコールを溶媒として増粘剤を使用し、漬込材の粘度を上げて漬け込み液(漬込材のベースとなる)を作成した後に図1に示す漬込工程0103の漬け込み作業を行う。ここで、酒盗原料の重量に対して増粘剤を約0.5%程度、酒盗原料の重量に対してアルコールを約1%程度使用する。このアルコールは増粘剤の溶媒として用いている。漬込材を撹拌しながらアルコールに増粘剤を溶いたものを混合する。増粘剤を利用することで漬込材の粘度が向上し、イカの切り身等の構成部位に対する付着性が向上する。従って集魚効果が向上する。増粘剤の添加タイミングは、上記では液状化工程の後で行うように説明したが、液状化工程の前でも良い。
<実験>
<実験 総論>
釣り餌本体となる生イカ(切り身)を用いて最適な酒盗抽出液(発酵時液体である漬込材)の対イカ重量%、加える塩分の対イカ重量%、膨潤剤としてのリン酸塩水溶液中のリン酸塩の対イカ重量%、保湿剤としてのソルビット溶液の対イカ重量%を決定するために、以下の実験1~実験8を行った。膨潤実験1、ソルビット添加実験2、ソルビット添加実験3、ソルビット+塩添加実験4、酒盗抽出液添加実験5、食塩添加実験6、食塩+酒盗抽出液添加実験7、浸透度実験8を行った。
膨潤実験1(図2:請求項10、11、12:実施形態8)の目的は、膨潤剤としてのリン酸塩水溶液の効果でイカを膨潤させて水分を取り込ませ、柔軟性を上げることを目的としている。評価項目は、柔軟性の代用変数として重量を採用し、同時に順位を付す。
ソルビット添加実験2(図3:請求項3:実施形態3)の目的は、イカに添加する最適なソルビットの対イカ重量%を得るための予備実験である。評価項目は、柔軟性である。
ソルビット添加実験3(図4:請求項3:実施形態3)の目的は、ソルビット添加実験2で得られた結果を絞り込んでイカに添加する最適なソルビット溶液の対イカ重量%を得るための実験である。評価項目は、柔軟性である。
ソルビット+塩添加実験4(図5:請求項9:実施形態7)の目的は、ソルビット溶液と同時にイカに添加する最適な食塩の対イカ重量%を得るための実験である。評価項目は、柔軟性である。
酒盗抽出液添加実験5(図7:請求項5:実施形態5)の目的は、イカを漬け込む酒盗抽出液(漬込材)の最適な対イカ重量%を得るための予備実験である。評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
食塩添加実験6(図8:請求項7、9:実施形態6,7)の目的は、イカに添加する最適な食塩の対イカ重量%を得るための予備実験である。評価項目は、常温保存性(非変質性)、柔軟性である。
食塩+酒盗抽出液添加実験7(図13から図20:請求項7、9:実施形態6,7)の目的は、イカに添加する最適な食塩と酒盗抽出液の最適な対イカ重量%を得ることである。評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
浸透度実験8(図28:請求項1、3:実施形態1,3)の目的は、本発明のソルビット溶液+酒盗抽出液(漬込材)入りイカ釣り餌と、酒盗抽出液(漬込材)入りサバ釣り餌とについての浸透度の比較実験によって酒盗抽出液への浸透割合を得ることである。評価項目は、Bx(可溶性固形分の指標)(%)、塩度(%)、水分(%)、重量(g)である。
<実験 評価項目総論>
本実施形態の釣り餌は、長期間に常温保存可能で、取扱い容易で、集魚効果(漬込材)を備えたものを実現したものであり、常温で保存できるかを示す「常温保存性(非変質性)」、釣り人の手指に付着して汚れの原因になりやすいかを示す「付着性」、海中でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつきやすさを示す「柔軟性」、イカの構成部位の茶色くなることを示す「変色性」、釣りの対象魚の集魚性に影響を与えるイカの構成部位の「匂いの程度」という評価項目(観点)から釣り餌の評価をイカの切り身を用いて行った。ここで、茶色くなるとは、イカの切り身等(ホタルイカの場合は全体を含む)が茶色っぽくなる程度を示している。
<実験 評価項目:常温保存性(非変質性)>
「常温保存性(非変質性)」とは、釣り餌を入れた真空パック開封後を想定して常温(例えば、気温25℃から35℃程度)状態での保存できる性質のことをいい、釣り餌の変質(主に腐敗性の観点)の度合いで判断する。評価方法は、「×:全体的に変質、△:部分的に変質、〇:ほとんど変質なし、◎:変質なし」のように評価した。
<実験 評価項目:変色性>
「変色性」とは、釣り餌のイカの身が茶色っぽくなる度合いのことをいう。イカの身が茶色くなると釣り餌として使用したときに喰いつきが悪くなることが知られている。評価方法は、「×:茶色く変色、△:やや茶色く変色、〇:部分的に茶色く変色、◎:変色なし」のように評価した。
<実験 評価項目:匂いの程度>
「匂いの程度」とは、人間(試験者)の嗅覚で感じる度合いをいう。釣り餌の匂いの程度により魚の集魚効果が変わるので、評価項目としている。
評価方法は、「×:ほとんど感じられない、△:僅かに感じる、〇:やや感じる、◎:強く感じる」のように評価した。
<実験 評価項目:付着性>
「付着性」とは、実験者の手指への発酵時液体(具体的な実験は酒盗抽出液にて行った。)付着の度合いをいう。後記する酒盗抽出液(漬込材)を用いる場合は、付着性が高まると、釣り餌として使用したときに手指が汚れやすくなることと、それに伴い手指に匂いがつきやすいことにより使用感が悪くなる。釣り餌が手にベタベタつくと、使用感が悪いので、取扱い容易性の観点から評価項目としている。
評価方法は、「×:かなり付着、△:やや付着、〇:僅かに付着、◎:ほとんど付着しない」のように評価した。
<実験 評価項目:柔軟性>
「柔軟性」とは、釣り餌の硬い柔らかいなどの柔軟性のことをいう。釣り餌として使用したとき、柔軟性が高いと釣り餌が海中でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつき度合いが良くなる。評価方法は、「×:硬い、△:やや硬い、〇:僅かに硬い、◎:柔らかい、◎○:◎よりさらに柔らかい」のように評価した。
<実験 評価項目:浸透度>
「浸透度」とは、釣り餌に浸透した酒盗抽出液(可溶性固形分)等の浸透度合いをいう。評価方法は、酒盗抽出液の漬け込み前と漬け込み後で、Bx(可溶性固形分の指標)(%)、塩度(%)、水分率(%)、重量(g)を測定して評価した。
この実験の際、本発明のソルビット溶液+酒盗抽出液(漬込材)入りイカ釣り餌と、酒盗抽出液(漬込材)入りサバ釣り餌を所定量みじん切りにし、ガーゼに包んで搾り取り、漬け込み前と漬け込み後のサバ釣り餌とイカ釣り餌のBx(Brix:ブリックス)値、塩度、水分率、重量を測定した。Bxの測定には、アタゴ社製ポケット調味料濃度計「PAL-97S」を使用した。塩度測定には柴田化学製の自動ビュレットを使用し、塩度は指示薬にクロム酸カリウムを用い硝酸銀溶液で滴定するモール法によって分析した。水分率の測定は、A&D社製加熱乾燥式水分計「ML-50」を使用した。重量の測定は、AS ONE社製電子天秤「selfi IB-300H」を使用した。浸透度の実験の様子を図68~図77の写真で表した。図68は浸透度実験 測定対象のイカ厚みの写真、図69は浸透度実験 イカ使用部(中央)の写真、図70は浸透度実験 イカ漬け込みの写真、図71は浸透度実験 イカBx測定の写真、図72は浸透度実験 イカBx測定 みじん切りの写真、図73は浸透度実験 イカBx測定 ガーゼ搾り取りの写真、図74は浸透度実験 サバ厚みの写真、図75は浸透度実験 サバ使用部(左)の写真、図76は浸透度実験 サバ漬け込みの写真、図77は浸透度実験 サバBx測定の写真である。
<実験 利用する酒盗抽出液(漬込材)>
実験5と実験7で利用する酒盗抽出液(漬込材)は以下のように調整された。
すなわち、酒盗抽出液(漬込材)である発酵時液体を産生するための投入原材料の成分割合は、図6に示すように、カツオの胃由来成分:78.8%、食塩19.7%にて生成される酒盗抽出液(漬込材)に、アルコール1%、増粘剤0.50%を加えて使用した。なお、酒盗の生成には、カツオなどの胃(腸を含んでも良い)の投入原材料全重量に対する割合が75%以上で85%以下に、食塩の投入原材料全重量に対する割合が15%以上で25%以下が好ましい。食塩の量がこの範囲よりも少なすぎたり多すぎたりすると、自然発酵が適切に行われず、6か月から1年程度で酒盗(発酵時液体)を得ることはできない。従って、実験で採用する酒盗抽出液(漬込材)は、上記の最適範囲のほぼ中間値を用いて調整したものである。
<膨潤実験1>
<膨潤実験1の目的>
膨潤実験1の目的は、リン酸塩水溶液の効果でイカを膨潤させて水分を取り込ませ、柔軟性を増すことである。
釣り餌は海中であたかも生餌のように動くことが好ましい。例えば生餌は尾ひれを振って捕食者から逃げようとするが、それに類似したように動くと、あたかも対象魚から逃げている捕食対象がいるかのように錯覚して追いかけ、結果として餌を食うこととなる。従って海中でひらひらするように餌に柔軟性があることは重要である。
<膨潤実験1の内容>
イカの切り身を用いてソルビット溶液添加について実験を行った。図30~図35に膨潤実験の写真を示す。図30はリン酸塩膨潤実験(リン酸塩粉末0%+水に溶解、24時間後)の写真、図31はリン酸塩膨潤実験(リン酸塩粉末1%+水に溶解、24時間後)の写真、図32はリン酸塩膨潤実験(リン酸塩粉末2%+水に溶解、24時間後)の写真、図33はリン酸塩膨潤実験(リン酸塩粉末4%+水に溶解、24時間後)の写真、図34はリン酸塩膨潤実験(リン酸塩粉末6%+水に溶解、24時間後)の写真、図35はリン酸塩膨潤実験(リン酸塩粉末8%+水に溶解、24時間後)の写真である。
アカイカ20gに、アカイカ総重量の0%、1%、2%、4%、6%、8%のリン酸塩を、アカイカ総重量と同量の水20gを加え、冷蔵庫(2.5℃)で24時間保管した。その後、冷蔵庫からアカイカを取り出し、24時間保管後のアカイカの重量を計測した。重量が増加した順に1~6位まで順位をつけて判断した。
<膨潤実験1の評価結果>
図2に示すように、リン酸塩水溶液無添加区では、重量は変化しなかった。
リン酸塩水溶液中リン酸塩対イカ重量2%添加区で最も重量の増加が見られた。リン酸塩水溶液無添加区では、柔軟性は変化しなかった。
<膨潤実験1の考察>
リン酸塩水溶液を使用することでイカの重量を増加させることができる。
対イカ重量%でリン酸塩重量2%(アカイカと同重量の水に溶解)が最もイカの重量が増加する添加区である。
<ソルビット添加実験2>
<ソルビット添加実験2の目的>
ソルビット添加実験2の目的は、イカに添加する最適なソルビット溶液の対イカ重量%を得るための予備実験である。ソルビット溶液の保湿効果で、イカを保湿することによりイカに柔軟性を持たせる。
評価項目は柔軟性である。
<ソルビット添加実験2の内容>
イカの身を用いてソルビット添加について実験を行った。
まず、事前にアカイカ20gは、アカイカ総重量の2%のリン酸塩(0.4g)をイカ重量と同量の水(20g)に溶かしたものに24時間漬け込んだものを準備した。
事前準備した膨潤して保水力を増したアカイカ20gに、イカ総重量の0%~80%のソルビット溶液(ソルビット濃度溶液=ソルビット:水=70:30)を添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に72時間放置し、アカイカの状態の変化を観察した。図36~図44にソルビット添加実験の実験開始時の写真を示す。図36はソルビット添加実験(0%、開始)の写真、図37はソルビット添加実験(10%、開始)の写真、図38はソルビット添加実験(20%、開始)の写真、図39はソルビット添加実験(30%、開始)の写真、図40はソルビット添加実験(40%、開始)の写真、図41はソルビット添加実験(50%、開始)の写真、図42はソルビット添加実験(60%、開始)の写真、図43はソルビット添加実験(70%、開始)の写真、図44はソルビット添加実験(80%、開始)の写真である。
図45~図53にソルビット添加実験の実験開始から24時間後の写真を示す。図45はソルビット添加実験(0%、24時間後)の写真、図46はソルビット添加実験(10%、24時間後)の写真、図47はソルビット添加実験(20%、24時間後)の写真、図48はソルビット添加実験(30%、24時間後)の写真、図49はソルビット添加実験(40%、24時間後)の写真、図50はソルビット添加実験(50%、24時間後)の写真、図51はソルビット添加実験(60%、24時間後)の写真、図52はソルビット添加実験(70%、24時間後)の写真、図53はソルビット添加実験(80%、24時間後)の写真である。
図54~図62にソルビット添加実験の実験開始から72時間後の写真を示す。図54はソルビット添加実験(0%、72時間後)の写真、図55はソルビット添加実験(10%、72時間後)の写真、図56はソルビット添加実験(20%、72時間後)の写真、図57はソルビット添加実験(30%、72時間後)の写真、図58はソルビット添加実験(40%、72時間後)の写真、図59はソルビット添加実験(50%、72時間後)の写真、図60はソルビット添加実験(60%、72時間後)の写真、図61はソルビット添加実験(70%、72時間後)の写真、図62はソルビット添加実験(80%、72時間後)の写真である。
<ソルビット添加実験2の評価結果>
図3に示すように、ソルビット溶液0%では、イカの切り身は硬かった。ソルビット溶液10%では、やや硬かった。ソルビット溶液20%では、僅かに硬かったソルビット溶液30%以上では、柔らかかった。
<ソルビット添加実験2の考察>
ソルビット溶液をアカイカ総重量に対する割合で、20%以上で効果があり、30%以上添加することで、ソルビット溶液の保湿効果によりアカイカの柔軟性がさらに向上する。
<ソルビット添加実験3>
<ソルビット添加実験3の目的>
ソルビット添加実験3の目的は、ソルビット添加実験2で得られた結果を絞り込んでイカに添加する最適なソルビット溶液の対イカ重量%を得るための実験である。ソルビット溶液の保湿効果で、イカを保湿することにより柔軟性を持たせることができるソルビット溶液の割合を調べる。
評価項目は柔軟性である。
<ソルビット添加実験3の内容>
イカの切り身を用いてソルビット添加について実験を行った。
まず、事前にアカイカ20gは、アカイカ総重量の2%のリン酸塩(0.4g)をイカ重量と同量の水(20g)に溶かしたものに24時間漬け込んだものを準備した。
事前準備したアカイカ20gに、イカの総重量の25~34%のソルビット溶液を添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に放置した状態で72時間放置し、アカイカの状態の変化を観察した。
<ソルビット添加実験3の評価結果>
図4に示すように、ソルビット溶液25~27%では、僅かに硬かった。
ソルビット溶液28~34%では、柔らかかった。
<ソルビット添加実験3の考察>
ソルビット溶液をアカイカ総重量に対する割合で、28%以上添加することで、ソルビット溶液の保湿効果によりアカイカの柔軟性が向上する。
<ソルビット+塩添加実験4>
<ソルビット+塩添加実験4の目的>
ソルビット+塩添加実験4の目的は、ソルビット溶液と同時にイカに添加する最適な食塩の対イカ重量%を得るための実験である。ソルビット溶液と塩を併用して1段階目の漬け込みを行うことで、2段階目の漬け込み時の急激な浸透圧の変化によるイカの締まりを防止する。ソルビット溶液と塩を併用したときに、イカの締まりが起こらず柔軟性に影響の無い食塩の濃度を調べる。
評価項目は柔軟性である。◎は柔らかい状態で実験7の柔軟性の◎と同じ評価である。さらに、保湿工程で添加する塩分のイカに対する重量%が1%から6%の「◎〇」は、実験7の「◎」よりもさらに柔らかい最良の状態である。
<ソルビット+塩添加実験4の内容>
イカの切り身を用いてソルビット溶液添加について実験を行った。
まず、事前にアカイカ20gは、アカイカ総重量の2%のリン酸塩(0.4g)をイカ重量と同量の水(20g)に溶かしたものに24時間漬け込んだものを準備した。
準備したアカイカ20gに、アカイカ総重量の28%のソルビット溶液とアカイカ総重量の0~10%の塩を添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に放置した状態で72時間放置し、アカイカの状態の変化を観察した。図63~図67にソルビット+塩添加実験の実験風景の写真を示す。図63はソルビット+塩添加実験(イカ身側)の写真、図64はソルビット+塩添加実験(イカ皮側)の写真、図65はカットイメージの写真、図66はソルビット+塩添加実験(冷蔵保管)の写真、図67はソルビット+塩添加実験(実験風景)の写真である。
<ソルビット+塩添加実験4の評価結果>
図5に示すように、柔軟性は食塩1%から6%までは柔らかいという官能評価が得られた。
<ソルビット+塩添加実験4の考察>
この結果、保湿時に1%以上6%以下の塩を加えることが適切と考える。
<酒盗抽出液添加実験5>
<酒盗抽出液添加実験5の目的>
酒盗抽出液添加実験5の目的は、イカを漬け込む酒盗抽出液(漬込材)の対イカ重量%とこれに加える塩分量の最適組合せ実験(「食塩+酒盗抽出液添加実験7」)の際にどの範囲で酒盗抽出液の対イカ重量%を振ればよいのかを見出すための予備実験である。
評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
<酒盗抽出液添加実験5の内容>
イカの切り身を用いて酒盗抽出液(漬込材)について実験を行った。
まず、事前にイカ20gは、イカ総重量の2%のリン酸塩(0.4g)をイカ重量と同量の水(20g)に溶かしたものに24時間漬け込み、その後アカイカ重量の30%のソルビット溶液(6g)に24時間漬け込み後のアカイカを準備した。
事前準備したイカ20gに、イカ総重量の0%~80%の酒盗抽出液を添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に72時間放置し、アカイカの状態の変化を観察した。
<酒盗抽出液添加実験5の評価結果>
図7に示すように、酒盗抽出液の対イカ重量%で20%から40%の範囲では比較的良好な結果(「△」「〇」「◎」の結果)が得られた。多少の問題は、酒盗抽出液の対イカ重量%で20%(実際に可能性としては数値範囲として20%から30%未満の範囲の可能性がある。)の際に常温保存性、変色性、匂いの程度が「△」判断、すなわち部分的に腐敗し、やや茶色く変色し、匂いはわずかにしか感じられない程度であるという結果となった。
集魚効果(変色性と匂いの程度で判断)には多少の影響があり、又、常温保存性が多少劣ることから釣りの際の衛生面から好ましくない。
さらに酒盗抽出液が30%(30%以上40%未満の範囲での評価を代表している。)の評価では変色性が「△」評価となった。つまり、やや茶色く変色した。しかし、30%では常温保存性が飛躍的に向上し、また匂いの程度や、付着性も問題がないとの判断である。変色性は集魚効果に多少の悪影響はあるが、それほど致命的でなく、この点に目をつぶれば、発酵時液体がイカの重量に対して30%~は採用可能である。
また酒盗抽出液の対イカ重量%で40%(実際に可能性としては数値範囲として30%より大きく50%未満の範囲の可能性がある。)の場合には「△」判断が付着性に対してなされた。つまり酒盗抽出液がやや指に付着する結果となった。これは釣り動作の迅速性や快適性に多少影響を与えるものである。以上から問題点として注意を要する点は人の健康に影響を与えかねない常温保存性であるが、この欠点は季節要因として夏場に特に問題となるもので、レシピの変更などで夏場をしのげれば他のシーズンでは受け入れることは必ずしもできないことではないので酒盗抽出液の対イカ重量%で20%以上40%以下の範囲を発明としては採用することができる。
<食塩添加実験6>
<食塩添加実験6の目的>
食塩添加実験6の目的は、イカに添加する最適な食塩の対イカ重量%を得るための予備実験である。
評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
<食塩添加実験6の内容>
イカ切り身を用いて食塩添加について食塩添加実験を行った。
まず、事前にイカ20gは、イカ総重量の2%のリン酸塩(0.4g)をイカ重量と同量の水(20g)に溶かしたものに24時間漬け込み、その後アカイカ重量の30%のソルビット溶液(6g)に24時間漬け込み後のアカイカを準備した。
事前準備したイカ20gに、イカ総重量の0%~80%の食塩を添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に72時間放置し、イカの状態の変化を観察した。
<食塩添加実験6の評価結果>
図8に示すように、対イカ総重量の食塩10%では常温保存性(非変質性)は向上するものの、部分的な変質が見られた。対イカ総重量の食塩20%以上では変質は見られなかった。対イカ総重量の柔軟性は食塩30%以上で低下していった。
<食塩添加実験6の考察>
以上の結果から、総合的に判断すると、食塩の対イカ重量%で最適化実験でパラメータとして振るのに適していると判断できる範囲は概ね30%から40%の範囲であると結論付けた。40%近辺になると柔軟性の評価が「△」となって、やや硬いとの評価となるが、保湿工程や、膨潤工程を採用することによって、この評価を改善することができ、従って総合的な塩分濃度は、40%を上回っても問題ないように設計することができる。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7>
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の目的>
食塩+酒盗抽出添加実験7の目的は、イカ添加する最適な食塩と酒盗抽出液の最適な対イカ重量%を得ることである。
評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の内容>
イカ切り身を用いて食塩と酒盗抽出液(漬込材)とを合わせて実験を行った。その実験結果を図13から図20に示す。以下の説明では、酒盗抽出液と漬込材は同じ意味で用いている。
まず、事前にイカ20gは、イカ総重量の2%のリン酸塩(0.4g)をイカ重量と同量の水(20g)に溶かしたものに24時間漬け込み、その後アカイカ重量の30%のソルビット溶液(6g)に24時間漬け込み後のアカイカを準備した。
事前準備したイカ切り身20gに対イカ総重量の28%~39%の食塩と、対イカ総重量の29%~41%の酒盗抽出液(漬込材)を添加・撹拌し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に72時間放置し、アカイカの状態の変化を観察した。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果>
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:32%+酒盗抽出液>
図13に示すように、対イカ総重量の32%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)については全てにおいて変質が見られなかった。変色性については、対イカ総重量の酒盗抽出液(漬込材)29%で「△」評価となり、やや茶色く変色、対イカ総重量の30%から33%酒盗抽出液(漬込材)で「〇」評価となり、部分的に茶色く変色となったが、対イカ総重量の34%~41%酒盗抽出液(漬込材)では変色なしとなった。匂いの程度については、対イカ総重量の32%の食塩に対イカ総重量の29%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「△」評価で僅かに感じる、対イカ総重量の30%~31%酒盗抽出液で「〇」評価結果で、はやや感じる、32~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したとき「◎」評価結果で強く感じた。
柔軟性については、対イカ総重量の32%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときいずれの濃度でも柔らかかった。付着性については、対イカ総重量の29%~37%酒盗抽出液(漬込材)で「〇」評価で僅かに付着、対イカ総重量の38%~41%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:33%+酒盗抽出液>
図14に示すように、対イカ総重量の33%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・柔軟性については、対イカ総重量の32%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。変色性については、対イカ総重量の酒盗抽出液(漬込材)29%でやや茶色く変色、対イカ総重量の30%~32%酒盗抽出液(漬込材)で部分的に茶色く変色となったが、対イカ総重量の33%~41%酒盗抽出液(漬込材)では変色なしとなった。付着性については対イカ総重量の29%~39%酒盗抽出液(漬込材)で僅かに付着、対イカ総重量の40%、41%酒盗抽出液(漬込材)でやや付着となった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:34%+酒盗抽出液>
図15に示すように、対イカ総重量の34%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・匂いの程度・柔軟性・付着性については、対イカ総重量の33%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。変色性については、対イカ総重量の酒盗抽出液(漬込材)29%でやや茶色く変色、対イカ総重量の30%酒盗抽出液(漬込材)で部分的に茶色く変色となったが、対イカ総重量の31%~41%酒盗抽出液(漬込材)では変色なしとなった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:35%+酒盗抽出液>
図16に示すように、対イカ総重量の35%の食塩に同じく対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性については、対イカ総重量の34%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:36%+酒盗抽出液>
図17に示すように、対イカ総重量の36%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性については、対イカ総重量の35%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。付着性については対イカ総重量の29%~40%酒盗抽出液(漬込材)で僅かに付着、対イカ総重量の41%酒盗抽出液(漬込材)でやや付着となった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:37%+酒盗抽出液>
図18に示すように、対イカ総重量の37%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性について、対イカ総重量の36%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:38%+酒盗抽出液>
図19に示すように、対イカ総重量の38%の食塩に同じく対イカ総重量の29~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性について、対イカ総重量の37%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の評価結果 食塩添加量:39%+酒盗抽出液>
図20に示すように、対イカ総重量の39%の食塩に同じく対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・柔軟性については、対イカ総重量の38%の食塩に対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。変色性については、対イカ総重量の29%、30%酒盗抽出液(漬込材)ではやや茶色く変色、対イカ総重量の31%~33%酒盗抽出液(漬込材)では部分的に茶色く変色、対イカ総重量の34%~41%酒盗抽出液(漬込材)では変色なしとなった。匂いの程度については、対イカ総重量の29%、33%酒盗抽出液(漬込材)では僅かに感じる、対イカ総重量の31%~33%酒盗抽出液(漬込材)ではやや感じる、対イカ総重量の34%~41%酒盗抽出液(漬込材)でかなり感じるとなった。付着性については対イカ総重量の29%~41%酒盗抽出液(漬込材)で僅かに付着となった。ここで、図20の実験結果は、上述した食塩+酒盗抽出液添加実験7の内容と同じ条件で行ったものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験7の考察>
イカに対する塩分重量%に関しては、イカに対する酒盗の重量%が小さい場合には「付着性」を損なう結果になる。付着性は釣りの動作の容易さ、快適性に関する指標であり、この付着性が不適切な範囲が大きい塩の添加重量%が32%の組成の物は不適切である。一方、イカに対する塩の重量%が39%の組成の物も、塩分が多くなりすぎることによって比較的広い酒盗抽出液組成範囲にて変色性の問題を生じるので不適切である。従って、塩分の添加対イカ重量%は33%から38%が適切な範囲として考えられる。
さらに酒盗抽出液のイカに対する重量%の範囲に関しては、29重量%では評価に「△」が塩添加領域の全域にわたって存在し、また40%以上では、付着性に問題を生じる塩の重量%の領域が比較的広く(塩重量%が33%から38%)好ましくない。従って結論としては、イカの重量に対する塩の重量%が33から38%かつ、酒盗抽出液の重量%が30%から39%の範囲に適切な漬込み工程の組成範囲が存在する。なお、より好ましくは、イカの重量に対する塩の重量%が36から38%かつ、酒盗抽出液の重量%が31%から39%の範囲がよりよい適切な漬込み工程の組成範囲であるといえる。この領域の端部組成領域でも安定した評価が全体に得られるからである。なお、イカの重量に対する塩の重量%が36から38%かつ、酒盗抽出液の重量%が31%から40%の範囲も今回の実験では利用可能な領域であることが判明した。この領域では付着性に関しても「△」評価がないからである。
<浸透度実験>
サバとアカイカの表面積を揃えて、酒盗抽出液(漬込材)に浸漬したサバとイカの餌としての浸透度について実験を行った。その実験結果を図28(A)、(B)、(C)に示す。
<浸透度実験8の目的>
浸透度実験8の目的は、先に本発明者が提案した生魚としてのサバ餌(特願2018-163242号にて開示した方法にて作成)と本発明のイカ餌の酒盗抽出液(漬込材)への浸透度合いの相違を得ることである。漬け込み前後でBx値、塩度、水分率、重量を測定して評価した。
評価項目は、Bx値、塩度、水分率、重量である。
<浸透度実験8の内容>
図23の製造工程によって製造した対イカ総重量及び対サバ総重量の30%酒盗抽出液(漬込材)に浸漬した酒盗抽出液(漬込材)入りイカ(アカイカ)と、サバとを使用して比較実験を行った。まず、サバとアカイカの表面積を揃えてカットした。今回は70×30×5mmで実験を行った(厚さ5mm)。それぞれのイカとサバのそれぞれの重量に対して30%酒盗抽出液を添加・塗布し、24時間冷蔵庫内で漬け込みを行った。その後、漬け込み前・後のサバとアカイカのBx(Brix値)、塩度、水分率、重量を測定した。図68~図77に酒盗抽出液(漬込材)の浸透度実験を示す。図68は浸透度実験 イカ厚みの写真、図69は浸透度実験 イカ使用部(中央)の写真、図70は浸透度実験 イカ漬け込みの写真、図71は浸透度実験 イカBx測定の写真、図72は浸透度実験 イカBx測定 みじん切りの写真、図73は浸透度実験 イカBx測定 ガーゼ搾り取りの写真、図74は浸透度実験 サバ厚みの写真、図75は浸透度実験 サバ使用部(左)の写真、図76は浸透度実験 サバ漬け込みの写真、図77は浸透度実験 サバBx測定の写真である。
<浸透度実験8の評価結果>
浸透度実験については、漬け込み前の計測値を図28(A)に示す。サバのBx値は16.5%、塩度は0%、水分は68.4%、重量は9.5gである。アカイカのBx値は26.8%、塩度は0%、水分は77.1%、重量は11.5gである。
漬け込み後の計測値は図28(B)に示す。サバのBx値は25.1%、塩度は4.0%、水分は56.9%、重量は8.9gである。アカイカのBx値は36.68%、塩度は5.5%、水分は62.7%、重量は10.4gである。
漬け込み後の増減(漬け込み後-漬け込み前)の計測値は、図28(C)に示す。
サバのBx値は+8.6、塩度は+4.0、水分は-11.5、重量は-0.6であるアカイカのBx値は+9.8、塩度は+5.5、水分は-14.4、重量は-1.1である。
サバ・アカイカ共に漬け込み後にBxと塩度が上昇し、水分率と重量が減少した。
<浸透度実験8の考察>
以上のことから、漬け込み後にサバとアカイカのBx、塩度が上昇し、酒盗抽出液のBx、塩度が減少していることから、漬け込み後には酒盗抽出液の成分がサバとアカイカに浸透していると考えられる。
漬け込み後のBxの増減を比較すると、サバ+8.6%,アカイカ+9.8%であり、アカイカはサバよりも数値の上昇が大きく、酒盗の成分はアカイカの方がサバよりも浸透しやすいと思われる。
漬け込み後の塩度の比較では、サバ+4.0%,アカイカ+5.5%であり、サバの方がアカイカよりも数値の上昇が大きく、塩分についてもアカイカの方がサバよりも浸透しやすいと思われる。
本発明の酒盗抽出液(漬込材)のイカでは、保湿剤としてソルビット溶液に漬け込み、その後酒盗抽出液(漬込材)にイカを漬け込むことで、サバの釣り餌よりも酒盗抽出液の浸透度が向上するので、サバ餌と同等な釣り餌が製造できる。
これらのことから、釣り餌本体としてイカを用い、イカの切り身身の重量に対して所定重量%の発酵時液体(酒盗抽出液)と所定重量%の食塩を加えて釣り餌を製造することにより、常温で長期間保存でき、常温での流通経路に乗せられる釣り餌を実現することができる。上記実験では、気温25℃の環境で行ったが、実際に製造した釣り餌を釣りの現場で使用したところ、夏季の30度を超える気温下での釣り餌の変質が見られなかったので、特別な保管環境(冷凍庫や冷蔵庫)を整備することなく、通常の常温環境下で保管し、密封した容器(袋を含む)に入れて釣り餌の形態で釣具店や通販サイトで販売することができる。数か月の長期間でも、釣り餌として十分使用可能である。
図23に従ってイカを用いた釣り餌製造工程の実施例1について説明する。
まず、冷凍イカ10kgを3時間~5時間程度かけて自然解凍する(工程2301)。この自然解凍時間は気温の影響を受けるので、季節によって変動する値である。例えば、夏季の気温が高いときは自然解凍時間が短くなり、冬季の気温が低いときは自然解凍時間が長くなる。
次に、解凍したイカには、水(水分)がついているので、水分を調整するため、10分程度かけて液切りを行う(工程2302)。
次に、液切りしたイカを150mm四方、または60mm×5mmの大きさにカッター機を使用してカットする(工程2303)。
次に、液切り後のイカの計量を行い(工程2304)、膨潤剤(図92参照)の使用量を計算して水に溶解し、イカの膨潤剤漬け込みを行う(工程2305)。膨潤剤としてはリン酸塩水溶液を用い、水に溶かして液状化してイカに漬け込む。膨潤剤の使用量は液切り後のイカの全重量に対する重量割合で計算する。リン酸塩水溶液中のリン酸塩はイカの全重量に対して2~3%の値である。原材料費の関係で適宜選択される。
次に、イカに液状化した膨潤剤(膨潤剤漬け込み液)を浸透させるため、20時間以上冷蔵保管する(工程2306)。漬け込み後冷蔵保管時間は、20時間以上あれば良く、例えば20時間~24時間程度あれば十分である。
次に、余分な水分を調整するため、10分から20分程度かけて容器に溜まった液切りを行う(工程2307)。この液切りは、釣り餌使用者の使用感を良くする役割もある。釣り餌がべたべたしていると、使用感が悪いからである。
次に、液切りを行った全イカの計量を行い(工程2308)、ソルビット溶液、塩を添加し、イカを漬け込む(工程2309)。イカの重量に対し使用する量は、それぞれソルビット溶液28%、塩6%とする。
次に、イカに十分にソルビット溶液・塩を浸透させるため、20時間以上冷蔵保管する(工程2310)。漬け込み後、冷蔵保管時間は20時間以上あれば良く、例えば20時間~24時間程度あれば十分である。
一方、漬込材(酒盗抽出液)の作成を行う。まず、酒盗抽出液の動物の原材料として生の魚類の胃又は/及び腸を準備する(工程2311)。生のカツオの胃、腸、鰓、幽門垂、卵巣、精巣などの内臓が付いた状態で原料をトラックで入荷し、所定量を収納タンクに入れる。タンク内で流水血抜きを行い(工程2312)、作業員が手作業で胃を選別し、包丁で切り開き、内容物を除去する(工程2313)。
次に準備した原材料を水で洗浄し水切りする(工程2314)。準備した胃を洗浄機に所定量入れ、流水で洗浄した後、洗浄された胃をザルに入れて水切りを行う(工程2315)。
次に、洗浄された原材料を塩漬けにする(工程2316)。水切りされたカツオの胃を所定量(数十キロ程度)タルに入れ、塩度約20%~25%ぐらいの塩を加えて、数日間塩付けを行う。これは、カツオの胃の水分活性を下げ、雑菌等の繁殖を防ぐために行う。この数日間の塩漬けで出た塩水を所定量ザルに入れて、塩水切りを行う(工程2317)。塩水切りしたカツオの胃の発酵が促進されるように、所定のサイズ、例えば1センチメートルから数センチメートルにカッター機でカットする(工程2318)。
次に、塩漬けされた原材料を熟成させる(工程2319)。1トン以上貯蔵できる熟成タンクを用意し、この熟成タンクがいっぱいになるまでカットされた原材料のカツオの胃を貯め、熟成庫に1年間熟成する。熟成はなるべく気温変化が少ない場所が良く、冷暗所(熟成庫)に保管する。この熟成工程において、熟成された酒盗が漬込材としての発酵時液体(酒盗抽出液)の原料となる。なお、酒盗を釣り餌製造の酒盗抽出液用に使用するため、図91(写真)にあるように、熟成されたカツオの胃をカッター機でさらに細かくカットし、プラスチック製のタルに充填し、酒盗原料(酒盗原材料)とする。
次に、熟成された酒盗原材料の液状化を促進する(工程2315)。液状化工程は、図93、図94、図95(写真)にあるように、プラスチック製のタルに充填され準備された酒盗抽出液用の酒盗を加熱・撹拌して酒盗のカツオの胃を溶解して液状化して発酵時液体(酒盗抽出液)とする加熱・撹拌工程と、図96(写真)にあるように、加熱され液状化した酒盗抽出液を冷却する冷却工程と、からなる。ここで、加熱・撹拌工程は、準備された酒盗を30分から1時間程度40~45℃以上で加熱・撹拌し完全に溶解させ、液状化した酒盗抽出液を作る。冷却工程では、加熱された液状化酒盗を30℃以下まで冷却を行う。加熱された40~45℃以上の酒盗抽出液(液状化酒盗)をイカの切り身等に漬け込むと、原料としてのイカの切り身等が加熱されていると変質する恐れがあるからである。
次に、上記工程(工程2311~2320)によって完成された酒盗抽出液(漬込材)を使用し、イカへの漬け込みを行う(工程2321)。イカの全重量に対して、酒盗抽出液(漬込剤)は30%、塩は27%を使用する。このとき、ソルビット溶液と塩に漬け込んであるイカに酒盗抽出液(漬込剤)と塩を加える形で漬け込み、液切は行わない。
次に、イカに酒盗抽出液(漬込材)を浸透させるため、20時間以上冷蔵保管する(工程2322)。漬け込み後、冷蔵保管時間は20時間以上あれば良く、例えば20時間~24時間程度あれば十分である。
次に、漬込材漬け込みおよび塩添加によって冷蔵保管すると、塩分濃度の高さがイカの内部よりも漬込材側の方が高くなるためにイカの内部の水分が浸透圧の作用で外に染み出すために漬込みに用いていた漬込材の濃さが薄まってしまうということとなる。このような薄まった状態の漬込材とともにパッケージングするとパッケージング後の物流時間帯に漬込材がイカにしみ込む作用が少なくなるので、イカがまとっている漬込材などの液体をいったん取り去る液切を行う。例えばざるに入れて自然流下によって液切を行う。液切は所定の単位に分けてざるに入れて行う。大きなざるを用いて5kg単位で行う場合には10分から20分程度で液切を終了する(工程2323)。なお、仕様により液切りを行わずに、液ごと充填することも可能である。
イカと漬込材場合により、さらに塩分を併せて所定量の重量単位(例えば、80g:この数字に限定されない)で袋詰めを行い(工程2324)、真空引きを行い、密封(シール)する(工程2325)。ここで、袋詰めを行っているが、プラスチックなどの容器で真空パッケージ化しても良い。また、できあがった釣り餌は真空パッケージ化されているので、かなりの長期保存が可能となっている。なお、真空パッケージ化しなくとも常温で長期間保存することが可能である。
図78、図79(写真)にあるように、真空パッケージ化された釣り餌セットにラベルを貼り、倉庫に入庫される(工程2326、2327)。
これにより、通常の釣具店や通販サイトで釣り餌セットを販売することができる。常温保存可能で特別な保管をする必要がなくなり、物流コストも安くなる。物流コストが安くなるのは倉庫での保管時に冷蔵、冷凍の倉庫を利用する必要がなく、また輸送も冷蔵、冷凍の機能を持ったトラック等を利用しなくて済むからである。また常温保存が可能なので釣り船などの船倉に常備しておくことも可能であり、釣り客の餌切れの場合でもその場で船員が釣り餌を提供できて便利である。またそもそも釣り船が釣り餌を提供できることを事前に釣り客にホームページ等で告知できれば釣り客がわざわざ釣り餌を準備し、持参する必要もなくなるので軽装で釣り船に向かうことが可能となり釣り客にとっての利便性も高まる。
図29に従ってイカを用いた釣り餌製造工程の実施例2について説明する。図29の実施例2では、工程2909に着色剤(着色剤添加)によってイカを着色する着色サブ工程を含んでいる点が異なるだけで、工程2901~2908、工程2910~2927は実施例1と同様であるので、説明を省略する。
以下、工程2909の着色サブ工程について説明する。
着色サブ工程は、イカ全重量の0.05~1%の着色剤(着色料)を着色剤重量の100倍の水に溶き、保湿剤のソルビット溶液に混合し、イカを着色する工程である。このように、着色剤をソルビット溶液に混合してから工程2910の20~24時間の冷蔵保管を行う。イカの着色を保湿時に行うことにより、着色剤のイカへの浸透が促進され、保湿効果がさらにアップされる。
このように、本実施形態等によれば、保湿されたイカを発酵時液体(酒盗抽出液)と塩を配合したものに漬け込むことによって生エサに近い状態で常温長期保存可能な釣り餌となっている。また、本釣り餌は保湿剤でイカを保湿してから発酵時液体(酒盗抽出液)を使用することでイカの身の柔軟性を生エサに近い状態で保持することができる。本釣り餌は発酵時液体(酒盗抽出液)を使用することで身の変色を防止し、生エサに近い状態を保持することができる。本釣り餌は発酵時液体(酒盗抽出液)を使用することで集魚効果を付与することができる。本釣り餌は保湿時に着色剤によって着色した後に、発酵時液体(酒盗抽出液)と塩を混ぜたものに加え、それに漬け込むことによって色を浸透させ、時間や天候など海の状況に左右される魚の活性に合わせた色の使い分けを可能にしている。
図24に従ってホタルイカを用いた釣り餌製造工程の実施例3について説明する。図24の実施例3では、工程2404~2413(酒盗抽出液作成工程)、工程2415~2420(製造工程)は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
まず、ホタルイカを1時間~2時間程度かけて流水解凍する(工程2401)。この流水解凍時間は気温の影響を受けるので、季節によって変動する値である。例えば、夏季の気温が高いときは解凍時間が短くなり、冬季の気温が低いときは解凍時間が長くなる。
次に、解凍したホタルイカには、水(水分)がついているので、水分を調整するため、15分程度かけて液切りを行う(工程2402)。
次に、液切り後のホタルイカの計量(工程2403)を行い、上記酒盗抽出液作成工程(工程2404~2413)によって完成された酒盗抽出液(漬込材)を使用し、ホタルイカへの漬け込みを行う(工程2414)。この漬け込みは、保湿工程のソルビット溶液漬け込みと塩追加サブ工程を同時に行う。ホタルイカの全重量に対して、酒盗抽出液(漬込剤)は15%、塩は30%、ソルビット溶液25%を使用する。このイカゴロは必ずしも使用しなくても良い。ここで、ホタルイカの場合は、ホタルイカ丸ごと餌の原料として使用し、内臓も含んでいるため、酒盗抽出液の添加割合のイカに対する重量%は、食塩+酒盗抽出液実験7の結果よりも少なくても良い。
次の工程、ホタルイカの冷蔵保管(工程2415)、液切り(工程2416)、袋詰め(工程2417)、真空引き、シール(工程2418)、ラベル貼り(工程2419)、入庫(工程2420)については、実施例1と同様であるため説明を省略する。このようにして製造されたホタルイカ餌とホタルイカ餌パッケージを図80、図81に示す。図80は実施形態の製造方法によって製造されたホタルイカ餌の写真、図81は実施形態の製造方法によって製造された常温保存可能なホタルイカ餌包装パッケージの写真である。
このようにして製造された釣り餌の釣果実験を行ったので、以下では釣果実験結果について説明する。
<釣果実験>
<釣果実験の目的>
本発明の漬込材入りイカ餌の有効性を調べるために、冷凍生イカ餌との釣果比較実験を実施した。
<釣果実験内容>
・場所:小田原早川湾沖
・日時:2019年7月29日、8:00~14:00
・天候:晴れ
・潮:若潮
・水深:200m
・使用餌:漬込材入りイカ餌、冷凍生イカ餌
・人数:4人
<使用餌について>
(1)漬込材入りイカ餌
アカイカ使用
・大きさ:60mm×5mmに揃えてカットして使用
酒盗抽出液浸透の構成成分(イカ重量に対しての使用割合)
・ソルビット溶液・・・28%
・漬込材(酒盗抽出液)・・・30%
・食塩・・・33%
・アルコール・・・0.15%
・増粘剤・・・・・0.07%
※アルコールと増粘剤は酒盗抽出液に含まれる
(2)冷凍生イカ餌
スルメイカ使用
・大きさ:60mm×5mmに揃えてカットして使用
<釣果実験方法>
図97に示すように、釣り船を使用し、右舷に前方から順に使用者A,Cと並び、使用者Aが漬込材入り(酒盗抽出液浸透)イカ餌を使用し、使用者Cが冷凍生イカ餌を使用、左舷には前方から順に使用者B,Dと並び、Bが漬込材入りイカ餌を使用、Dが冷凍生イカ餌を使用した。計4人で釣果実験を行った。
<釣果実験結果>
図98(A)は本実施形態の漬込材入りイカ餌を使用した使用者(A,B)の釣果を示し、図98(B)は冷凍生イカ餌を使用した使用者(C,D)の釣果を示し、図98(C)はそれらの釣果の比較検討結果を示す。ここで、船上のA,B,C,Dは使用者の釣り場を示す。
釣れた魚種はA,B,C,Dを合計して、キンメダイ、シロムツ、クロムツ、カサゴ、スミヤキ、サバの計6種であった。
本実施形態の漬込材入りイカ餌を使用した使用者(A,B)の釣果は、図98(A)に示すように、使用者Aは、シロムツ5匹、クロムツ2匹、カサゴ1匹、スミヤキ2匹、サバ3匹、計13匹という釣果であった。使用者Bは、キンメダイ2匹、シロムツ3匹、クロムツ4匹、カサゴ3匹、サバ4匹、計16匹という釣果であった。使用者A+Bは、使用者AとBの釣果を合計してキンメダイ2匹、シロムツ8匹、クロムツ6匹、カサゴ4匹、 スミヤキ2匹、サバ7匹、計29匹という釣果であった。
冷凍生イカ餌を使用した使用者(C, D)の釣果は、図98(B)に示すように、使用者Cは、キンメダイ1匹、シロムツ3匹、クロムツ5匹、スミヤキ1匹、サバ4匹、計14匹という釣果であった。使用者Dは、キンメダイ2匹、シロムツ2匹、クロムツ1匹、カサゴ2匹、スミヤキ1匹、サバ5匹、計13匹という釣果であった。使用者C+Dは、使用者CとDの釣果を合計して、キンメダイ3匹、シロムツ5匹、クロムツ6匹、カサゴ2匹、スミヤキ2匹、サバ9匹、計27匹という釣果であった。
以上の釣果から、釣果合計匹数を比較すると、図98(C)に示すように、本実施形態の漬込材入りイカ餌使用の使用者A,Bが29匹、冷凍生イカ餌使用の使用者C,Dが27匹となっており、両餌の釣果に大きな差は見られなかったため、漬込材入りイカ餌は冷凍生イカ餌と遜色の無い餌であると思われる。
<実施形態14 ホタルイカ餌の製造方法全体像>
実施形態14は、常温保存可能なホタルイカ餌の製造方法において、主として保湿工程と漬込工程とを同時に行うことにより、ホタルイカ餌の製造を行う。つまり、図126に示すように、イカ準備工程12601の後に、保湿工程・漬込工程同時処理工程12602を行う。すなわち、ホタルイカの漬込時に、成体のホタルイカの重量に対して所定の重量%の保湿剤、所定の重量%の漬込材、及び所定の重量%の塩を加えることにより(ステップ12603、ステップ12604、ステップ12605)、ホタルイカの常温保存可能な釣り餌を製造する。当然、常温保存可能なホタルイカ餌の製造方法において、実施形態1のように保湿工程0102の後に漬込工程0103を行っても良いし、保湿工程0102によりホタルイカを保湿剤に漬込んで保湿を行い、漬込工程0103によりホタルイカを漬込材に漬け込むのと同時に塩の追加を行っても良く、漬込工程の後に塩追加工程を別に行っても良い。また、保湿工程0102と漬込工程0103が同時になされなくても良いことは言うまでもない。実施形態1等で説明したイカ餌(アカイカ)の場合はイカの厚みが厚いので、保湿工程と漬込工程を同時に行うと、漬込材のイカへの浸透が促進されない。そこで、保湿工程0102において保湿剤に漬込んでイカを柔らかくした後に、漬込工程0103により漬込材のイカへの漬込みを行った。ホタルイカの場合は、イカ全体が柔らかくイカの厚みが薄いので、保湿工程0102と漬込工程013を同時に行い、製造工程を簡素化している。
<実施形態14 ホタルイカ餌の製造方法で製造される常温保存可能な釣り餌>
以上により、動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体が外套膜内側及び内臓も含めたイカの全体にまぶされ又は/及び浸透している内臓付きのホタルイカの全体からなる常温保存可能な釣り餌が得られる。この釣り餌は、魚類が好む発酵時液体が外套膜内及び、内臓にも十分行き渡っているので、集魚効果が長時間持続するという特徴を有する。
また、ホタルイカの全体は加熱されていないと、本来の魚類が好むかおり、匂いがするので集魚効果が高い。さらにホタルイカは表面が着色剤で着色されていると、魚類の注目を集めやすく、集魚効果がさらに高まる。これらの餌をワンパック化して、常温保存可能な釣り餌を前記発酵時液体とともに容器(袋も含む)に封入した釣り餌セットは釣りの際に携行するのに便利である。
<実施形態14>
実施形態14は、主に請求項6、請求項8、請求項17、請求項18に対応する常温保存可能な釣り餌の製造方法の実施形態である。
<実施形態14 概要>
本実施形態14の常温保存可能な釣り餌の製造方法は、実施形態1から実施形態3のいずれかを基本としつつ、前記漬込材は、成体のホタルイカの重量に対して15%以上27%以下であり、前記漬込材は、漬込材の全重量に対して塩分濃度が15%以上25%以下である。前記漬込工程は、成体のホタルイカの重量に対して塩を30%以上35%以下加える漬込時塩追加サブ工程を有する常温保存可能な釣り餌の製造方法である。
<実施形態14 構成の説明>
<実施形態14 総論>
漬込材は発酵時液体であり、成体のホタルイカの重量に対して15%以上27%以下が適している。さらに、漬込材の全重量に対して塩分濃度が15%以上25%以下であることについては、実施形態1と同様である。発酵時液体の一例としては、酒盗抽出液を用いることができる。成体のホタルイカの重量に対する最適な漬込材の重量%の数値範囲と最適な食塩(塩追加)の重量%の数値範囲を決定するため、食塩+酒盗抽出液のホタルイカへの添加実験11を行った。この実験結果を図107~図114に示す。この食塩+酒盗抽出液のホタルイカへの添加実験11の詳細については後記することとし、ここでは説明を省略する。また、成体のホタルイカの場合は内臓を含んでおり、漬込工程において成体のホタルイカの重量に対して酒盗抽出液や食塩のホタルイカへの添加量(重量%)は、ホタルイカ以外のイカ(中型以上のイカ)であって内臓を取り去って漬込工程を行う場合とは異なると考えられるため、5重量%単位の数値パラメータを振って0重量%から80重量%の酒盗抽出液のホタルイカへの添加予備実験を行い常温保存性、変色性、匂いの程度、柔軟性、付着性に関する官能評価試験をおこなった(図105参照)。また、5重量%単位の数値パラメータを振って0重量%から80重量%の食塩(塩)のみのホタルイカへの添加予備実験を行った(図106参照)。この実験は特に食塩が常温保存性と柔軟性に影響を与えると考えられるためにこの両者についての官能評価を行った。これらの予備実験(図105と図106)の結果から図107から図114で示される本実験の酒盗抽出液の添加量と、食塩の添加量の数値パラメータ範囲を決定した。これらの本実験において保湿剤の量は固定とした。これは成体のホタルイカの重量に対して25%固定とした。食塩+酒盗抽出液のホタルイカへの添加実験11において、食塩の添加量を図示しない21重量%の食塩から28重量%の範囲、および37重量%の食塩から39重量%の範囲でも行ったが、常温保存可能な釣り餌として適切な結果が得られなかったので省略した。そして、臨界的意義を示す数値データの下限の29重量%の食塩と上限の36%重量%の食塩に含まれる範囲を図107と図114に示した。
<実施形態14 実験11結果の説明 評価項目の意味>
図107~図114に示す実験11の評価項目について説明する。「常温保存性(非変質性)」とは、常温例えば気温25度から35度程度の状態で保存できる性質のことを言い、釣り餌の変質(主に腐敗性の観点で、つまんだ場合の身崩れや腐敗臭から判断)の度合いで判断する。本願請求項で使用する用語としての「常温保存」とは異なる意味で使用している。主に真空パックされた本願発明の釣り餌のパックを開封した後にどの程度の時間長で継続して釣り餌として利用可能という尺度から検討するためのものである。従って、この尺度で常温保存性があると判断されたものは真空パックされることで前述の通り常温で1か月以上利用可能に保存することができる。
「常温保存性」は、「◎」は腐敗なし変質なしで最良な状態、「〇」はほとんど腐敗なし変質なし、「△」は部分的に腐敗し変質している、「×」は全体的に腐敗し変質あり、釣り餌として使えない状態である。
「付着性」とは、実験者の手、指への発酵時液体の汚れとしての付着の度合いを言う。これは餌をつまむたびに手を一生懸命拭かなければならないとすると大変であるという観点から採用された評価項目である。「◎」は最も汚れる程度(付着)が少なく、「〇」はわずかに指に付着する程度、「△」はやや指に付着する程度、「×」はかなり指に付着する状態である。
「変色性」は、釣り餌のイカの身が茶色く変色する度合のことを言う。イカの身が茶色く変色すると釣り餌として使用したときに食いつきが悪くなることが知られている。「×」は茶色く変色し常識的に釣り餌として使えない状態。「△」はやや茶色く変色し、ベストではない状態。「〇」は部分的に茶色く変色するが釣りには支障がない状態。「◎」は変色が全くない状態で最良の状態。
「匂いの程度」は人間(試験者)の嗅覚で感じる度合をいう。釣り餌の匂いの程度により魚の集魚効果が変わるので評価項目とする。匂いが強い方が「◎」、やや匂いを感じるが「〇」、匂いをわずかに感じるが「△」、ほとんど感じられないが「×」。
「柔軟性」とは、釣り餌の硬い柔らかいなどの柔軟性のことをいう。釣り餌として使用したとき、柔軟性が高いと釣り餌が海中でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつき度合いが良くなるので評価項目とする。柔軟性が柔らかい方が「◎」、僅かに硬いが「○」、やや硬いが「△」、硬いが「×」。
図107~図114において、「常温保存性」、「付着性」、「変色性」、「匂いの程度」、「柔軟性」の評価項目のうち、常温保存可能な釣り餌を実現するうえで、重要度の高い「常温保存性」と「付着性」を重要度「A」とし、釣り餌として必須の評価項目の「変色性」、「匂いの程度」、「柔軟性」を重要度「B」と区別した。
<実施形態14 実験11結果の説明 結果>
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量:29重量%+酒盗抽出液>
図107に示すように、対成体のホタルイカ総重量の29重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)については11~25重量%酒盗抽出液で「△」となり、26~29重量%酒盗抽出液で「○」となった。変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の15重量%から29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変質なしとなった。匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の29重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の29重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときいずれの濃度でも柔らかかった。付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
今回製造する釣り餌は常温保存可能な釣り餌なので、図107の常温保存性の評価結果が「△」と「○」は不適と判断し、対成体のホタルイカ総重量の29重量%以下の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した釣り餌は不採用とする。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量:30重量%+酒盗抽出液>
図108に示すように、対成体のホタルイカ総重量の30重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)については11~14重量%酒盗抽出液で「○」となり、15~29重量%酒盗抽出液で「◎」となった。変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11、12重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の13重量%から29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変質なしとなった。匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の30重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の30重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときいずれの濃度でも柔らかかった。付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量:31重量%+酒盗抽出液>
図109に示すように、対成体のホタルイカ総重量の31重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性については、対成体のホタルイカ総重量の30重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量:32重量%+酒盗抽出液>
図110に示すように、対成体のホタルイカ総重量の32重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性については、対成体のホタルイカ総重量の31重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量:33重量%+酒盗抽出液>
図111に示すように、対成体のホタルイカ総重量の33重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性については、対成体のホタルイカ総重量の32重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量:34重量%+酒盗抽出液>
図112に示すように、対成体のホタルイカ総重量の34重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・柔軟性・付着性については、対成体のホタルイカ総重量の33重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の34重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「△」で僅かに感じる、対成体のホタルイカ総重量の12~14重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量:35重量%+酒盗抽出液>
図113に示すように、対成体のホタルイカ総重量の35重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・柔軟性・付着性については、対成体のホタルイカ総重量の34重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときと大きな差は見られなかった。匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の34重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11、12重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「△」で僅かに感じる、対成体のホタルイカ総重量の13、14重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量:36重量%+酒盗抽出液>
図114に示すように、対成体のホタルイカ総重量の36重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、常温保存性(非変質性)については11重量%酒盗抽出液で「○」となり、12重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」となった。変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%、12重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の13重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変質なしとなった。匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の36重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11~16重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「△」評価で僅かに感じる、対成体のホタルイカ総重量の17、18重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の19重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の36重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したところ、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~18重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに対成体のホタルイカ総重量の11~18重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや硬い、対成体のホタルイカ総重量の19~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価結果で僅かに硬さを感じた。
<実施形態14 実験11から求められる組成の最適範囲>
成体のホタルイカに対する塩分重量%に関しては、成体のホタルイカに対する酒盗抽出液の重量%が大きい場合には「付着性」を損なう結果になる。付着性は釣りの動作の容易さ、快適性に関する指標であり、この付着性が不適切な範囲が大きい塩の添加重量%が29重量%の組成の物は不適切である。一方、成体のホタルイカに対する塩の重量%が36重量%の組成の物も、塩分が多くなりすぎることによって比較的広い酒盗抽出液組成範囲にて匂いの程度と柔軟性の問題を生じるので不適切である。従って、塩分の添加対成体のホタルイカ重量%は30重量%から35重量%が適切な範囲として考えられる。
さらに酒盗抽出液の成体のホタルイカに対する重量%の範囲に関しては、14重量%以下では「常温保存性」の評価が「○」であるので、常温保存可能な釣り餌として不適と判断する。従って、下限として15重量%が適切と判断する。また28重量%以上では、付着性に問題を生じる塩の重量%の領域が比較的広く(塩重量%が30重量%から35重量%)好ましくない。従って結論としては、成体のホタルイカの重量に対する塩の重量%が30から35重量%かつ、酒盗抽出液の重量%が15重量%以上から27重量%以下の範囲に適切な漬込み工程の組成範囲が存在する。
<ホタルイカに関する実験の詳細な説明>
<ホタルイカに関する実験 要約>
釣り餌本体となるホタルイカ(成体:一杯丸ごと)を用いて最適な酒盗抽出液(発酵時液体である漬込材)の対ホタルイカ重量%、漬込時に追加する塩分の対ホタルイカ重量%を決定するために、以下の予備実験9、10、本実験11を行って酒盗抽出液と追加する塩の量の最適範囲を求めた。さらに、ホタルイカを用いた釣り餌の性能を、一般のイカの代表であるアカイカと比較する実験12、実験13を行った。予備実験9は酒盗抽出液添加実験で酒盗抽出液の本実験でのパラメータを振る最適範囲を見つけるための実験、予備実験10は漬込時に追加する食塩添加量の本実験でのパラメータを振る最適範囲を見つけるための実験、本実験11は、漬込時に追加する食塩+酒盗抽出液添加量の最適範囲を求める実験である。
さらに実験12は、ホタルイカを用いた釣り餌と、アカイカを用いた釣り餌の酒盗抽出液のからみつき量の差を明らかにして、この絡みつき量は、アカイカよりホタルイカの方がイカに対する酒盗抽出液の絡みつきの点で優れていることを明らかにした。さらに実験13は、ホタルイカを用いた釣り餌と、アカイカを用いた釣り餌の酒盗抽出液のイカの体に対する浸透量の差を明らかにして、この浸透量は、アカイカよりホタルイカの方がイカの体に対する酒盗抽出液の浸透量の点で優れていることを明らかにした。
以下、実験9~13について詳細に説明する。
<酒盗抽出液添加予備実験9>
<酒盗抽出液添加予備実験9の目的>
酒盗抽出液添加予備実験9の目的は、ホタルイカを漬け込む酒盗抽出液(漬込材)の対ホタルイカ重量%とこれに加える塩分量の最適組合せ実験(「食塩+酒盗抽出液添加実験11)の際にどの範囲で酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%を振ればよいのかを見出すための予備実験である。
<酒盗抽出液添加予備実験9の内容>
ホタルイカ(1匹)とアカイカの切り身を用いて酒盗抽出液(漬込材)について実験を行った。
ホタルイカ一杯の重量に対して、総重量の0~80重量%の酒盗抽出液を添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に放置した状態で72時間放置し、72時間放置後のホタルイカの変化や状態を観察した。
<酒盗抽出液添加予備実験9の評価結果>
図105に示すように、酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%で10重量%から50重量%の範囲では、「常温保存性」、「変色性」、「匂いの程度」、「柔軟性」、「付着性」ともに、比較的良好な結果(「△」「〇」「◎」の結果)が得られた。さらに発明に準じたより好適な常温保存可能な釣り餌を実現するために、重要度の高い「常温保存性」と「付着性」を重要度「A」とし、それに続く必須評価項目の「変色性」、「匂いの程度」および「柔軟性」を「B」とする。これらの評価項目の重要度を比較することによって、採用できるより好適な酒盗抽出液濃度を求めた。「常温保存性」と「付着性」を重要度「A」としたのは、釣り餌の運搬や実際の釣り場での保存や取り扱いの際の利便性や衛生を考え、常温保存可能な釣り餌には不可欠な評価項目だからである。重要度「B」とした、「変色性」、「匂いの程度」、「柔軟性」については、一定以上「○」程度以上の評価が得られれば十分だと考えられる。こういった観点から、比較的良好な結果が得られた酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%で10重量%から50重量%(実際に可能性としては数値範囲として10重量%以上55重量%未満の範囲の可能性がある)の範囲で、さらに以下に検討する。
図105に示すように、酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%で30重量%から50重量%(30重量%以上55重量%未満)は、重要度「A」の「常温保存性」および、重要度「B」の「変色性」、「匂いの程度」、「柔軟性」はいずれも「◎」判断という結果が得られたが、重要度「A」の「付着性」が「△」判断という結果となり、より好適な酒盗抽出液濃度とは言えない。一方、酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%で15重量%から25重量%(15重量%以上29重量%未満)は、重要度「B」の「変色性」、「匂いの程度」、「柔軟性」はいずれも「◎」、重要度「A」の「付着性」は「○」という結果が得られたが、重要度「A」の常温保存性は「△」判断という結果となった。ただし、常温保存性は食塩添加の量によって変化するため、食塩添加による向上が期待できることから、酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%で15重量%から25重量%(15重量%以上29重量%未満)は、十分に採用できることが期待できる。また、酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%で10重量%では、重要度「A」の常温保存性、「重要度B」の変色性がいずれも「△」となっているが、常温保存性については食塩添加による向上が期待できること、変色性については15重量%で「◎」に転じていることから酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%が10重量%を超えていれば採用できる可能性があると考えられる。さらに酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%で30重量%では、重要度「A」の常温保存性および、重要度「B」の「変色性」「匂いの程度」「柔軟性」は「◎」、重要度「A」の付着性は「△」である。「△」判断の付着性は25重量%では「〇」の評価に転じていることから、30重量%より小さければ採用できる可能性がある。
したがって、酒盗抽出液の対ホタルイカ重量%で10重量%より大きく30重量%より小さい範囲で、後述の食塩添加予備実験10を行い、ホタルイカに添加する最適な食塩の対ホタルイカ重量%を求めた。
<食塩添加予備実験10>
<食塩添加予備実験10の目的>
食塩添加予備実験10の目的は、ホタルイカ漬込時に追加する食塩添加量の本実験(実験11)でのパラメータを振る最適範囲を見つけるための予備実験である。
<食塩添加予備実験10の内容>
ホタルイカを用いて食塩添加について食塩添加予備実験を行った。
ホタルイカ一杯の重量に対して、ホタルイカ総重量の0重量%~80重量%の食塩を添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に放置した状態で72時間放置し、72時間放置後のホタルイカの変化や状態を観察した。
図130~図134にホタルイカへの食塩添加予備実験の実験開始時の写真を示す。図130は食塩添加予備実験9(0%、開始)の写真、図131は食塩添加予備実験9(20%、開始)の写真、図132は食塩添加予備実験9(40%、開始)の写真、図133は食塩添加予備実験9(60%、開始)の写真、図134は食塩添加予備実験9(80%、開始)の写真である。実際には5%刻みで実験しており、上記写真は代表的に示したものである。
図135~図139にホタルイカへの食塩添加予備実験9の実験開始から72時間後の写真を示す。図135は食塩添加予備実験9(0%、72時間後)の写真、図136は食塩添加予備実験9(20%、72時間後)の写真、図137は食塩添加予備実験9(40%、72時間後)の写真、図138は食塩添加予備実験9(60%、72時間後)の写真、図139は食塩添加予備実験9(80%、72時間後)の写真である。実際には5%刻みで実験しており、上記写真は代表的に示したものである。
<食塩添加予備実験10の評価結果>
図106に示すように、対ホタルイカ総重量の食塩0~5重量%では全体的に変質した。対ホタルイカ総重量の食塩10~20重量%では部分的に変質した。対ホタルイカ総重量の食塩25重量%ではほとんど変質しなかった。対ホタルイカ総重量の食塩30重量%以上では変質は見られなかった。対ホタルイカ総重量の食塩40重量%以上で柔軟性が低下していった。
<食塩添加予備実験10の考察>
以上の結果から、総合的に判断すると、食塩の対ホタルイカ重量%で最適化実験でパラメータとして振るのに適していると判断できる範囲は概ね30重量%から40重量%の範囲であると結論付けた。40重量%近辺になると柔軟性の評価が「△」となって、やや硬いとの評価となるが、保湿工程を採用することによって、この評価を改善することができ、従って総合的な塩分濃度は、40重量%を上回っても問題ないように設計することができる。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の目的>
食塩+酒盗抽出添加実験11の目的は、ホタルイカ漬込時に追加する食塩+酒盗抽出液添加量の最適範囲を求める本実験である。
<実験11 評価項目総論>
本実施形態の釣り餌は、長期間に常温保存可能で、取扱い容易で、集魚効果(漬込材)を備えたものを実現したものであり、常温で保存できるかを示す「常温保存性(非変質性)」(重要度:A)、釣り人の手指に付着して汚れの原因になりやすいかを示す「付着性」(重要度:A)、海中でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつきやすさを示す「柔軟性」(重要度:B)、ホタルイカの構成部位の茶色くなることを示す「変色性」(重要度:B)、釣りの対象魚の集魚性に影響を与えるホタルイカの構成部位の「匂いの程度」(重要度:B)という評価項目(観点)から釣り餌の評価をホタルイカ丸ごと一杯(内臓などを取り除かない)用いて行った。ここで、茶色くなるとは、ホタルイカ全体の色が茶色っぽくなることを示している。
<実験11 評価項目:常温保存性(非変質性)>(重要度:A)
「常温保存性(非変質性)」とは、釣り餌を入れた真空パック開封後を想定して常温(例えば、気温25℃から35℃程度)状態での保存できる性質のことをいい、釣り餌の変質(主に腐敗性の観点)の度合いで判断する。評価方法は、「×:全体的に変質、△:部分的に変質、〇:ほとんど変質なし、◎:変質なし」のように評価した。
<実験11 評価項目:付着性>(重要度:A)
「付着性」とは、実験者の手指への発酵時液体(具体的な実験は酒盗抽出液にて行った。)付着の度合いをいう。後記する酒盗抽出液(漬込材)を用いる場合は、付着性が高まると、釣り餌として使用したときに手指が汚れやすくなることと、それに伴い手指に匂いがつきやすいことにより使用感が悪くなる。釣り餌が手にベタベタつくと、使用感が悪いので、取扱い容易性の観点から評価項目としている。
<実験11 評価項目:変色性>(重要度:B)
「変色性」とは、釣り餌のホタルイカ全体の色が茶色っぽくなる度合いのことをいう。ホタルイカ全体の色が茶色くなると釣り餌として使用したときに喰いつきが悪くなることが知られている。評価方法は、「×:茶色く変色、△:やや茶色く変色、〇:部分的に茶色く変色、◎:変色なし」のように評価した。
<実験11 評価項目:匂いの程度>(重要度:B)
「匂いの程度」とは、人間(試験者)の嗅覚で感じる度合いをいう。釣り餌の匂いの程度により魚の集魚効果が変わるので、評価項目としている。
評価方法は、「×:ほとんど感じられない、△:僅かに感じる、〇:やや感じる、◎:強く感じる」のように評価した。この匂いの強さが強いほど集魚効果が得られる。
<実験11 評価項目:柔軟性>(重要度:B)
「柔軟性」とは、釣り餌の硬い柔らかいなどの柔軟性のことをいう。釣り餌として使用したとき、柔軟性が高いと釣り餌が海中でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつき度合いが良くなる。評価方法は、「×:硬い、△:やや硬い、〇:僅かに硬い、◎:柔らかい、◎○:◎よりさらに柔らかい」のように評価した。
<実験11 利用する酒盗抽出液(漬込材)>
実験11で利用する酒盗抽出液(漬込材)は以下のように調整された。
すなわち、酒盗抽出液(漬込材)である発酵時液体を産生するための投入原材料の成分割合は、図6に示すように、カツオの胃由来成分:78.8%、食塩19.7%にて生成される酒盗抽出液(漬込材)に、アルコール1%、増粘剤0.50%を加えて使用した。なお、酒盗の生成には、カツオなどの胃(腸を含んでも良い)の投入原材料全重量に対する割合が75%以上で85%以下に、食塩の投入原材料全重量に対する割合が15%以上で25%以下が好ましい。食塩の量がこの範囲よりも少なすぎたり多すぎたりすると、自然発酵が適切に行われず、6か月から1年程度で酒盗(発酵時液体)を得ることはできない。従って、実験で採用する酒盗抽出液(漬込材)は、上記の最適範囲のほぼ中間値を用いて調整したものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の内容>
ホタルイカを用いて食塩と酒盗抽出液(漬込材)とを合わせて実験を行った。その実験結果を図107から図114に示す。以下の説明では、酒盗抽出液と漬込材は同じ意味で用いている。
ホタルイカ1杯の重量に対して、29重量%~36重量%の塩を塩重量パラメータとして振った。そして、各塩重量%ごとに酒盗抽出液の濃度をホタルイカ1杯に対して11重量%~29重量%の酒盗抽出液を添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に放置した状態で72時間放置し、72時間放置後のホタルイカの変化や状態を観察した。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果>
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量(追加食塩重量%):29重量%+酒盗抽出液>
図107に示すように、対成体のホタルイカ総重量の29重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した。
<実験11 追加食塩重量% 29重量% 常温保存性の結果>
常温保存性(非変質性)については11~25重量%酒盗抽出液で「△」評価で部分的に変質し、26~29重量%酒盗抽出液で「○」評価でほとんど変質なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 29重量% 変色性の結果>
変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の15重量%から29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変質なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 29重量% 匂いの程度の結果>
匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の29重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。
<実験11 追加食塩重量% 29重量% 柔軟性の結果>
柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の29重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときいずれの濃度でも柔らかかった。
<実験11 追加食塩重量% 29重量% 付着性の結果>
付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<実験11 追加食塩重量% 29重量% 総合評価>
今回製造する釣り餌は常温保存可能な釣り餌なので、図107の常温保存性の評価結果が「△」と「○」は不適と判断し、対成体のホタルイカ総重量の29重量%以下の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した釣り餌は不採用とする。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量(追加食塩重量%):30重量%+酒盗抽出液>
図108に示すように、対成体のホタルイカ総重量の30重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した。
<実験11 追加食塩重量% 30重量% 常温保存性の結果>
常温保存性(非変質性)については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液で「○」評価でほとんど変質なしとなり、15~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価となり、変質なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 30重量% 変色性の結果>
変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11、12重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の13重量%から29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変色なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 30重量% 匂いの程度の結果>
匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の30重量%の食塩に対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。
<実験11 追加食塩重量% 30重量% 柔軟性の結果>
柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)でいずれの濃度でも「◎」評価で柔らかかった。
<実験11 追加食塩重量% 30重量% 付着性の結果>
付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<実験11 追加食塩重量% 30重量% 総合評価>
総合的に判断すると、食塩対ホタルイカ重量%が30重量%で、酒盗抽出液対ホタルイカ重量%が15重量%から27重量%の範囲で常温保存可能な釣り餌として採用できる。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量(追加食塩重量%):31重量%+酒盗抽出液>
図109に示すように、対成体のホタルイカ総重量の31重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した。
<実験11 追加食塩重量% 31重量% 常温保存性の結果>
常温保存性(非変質性)については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液で「○」評価でほとんど変質なし、15~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価で変質なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 31重量% 変色性の結果>
変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11、12重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の13重量%から29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変色なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 31重量% 匂いの程度の結果>
匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。
<実験11 追加食塩重量% 31重量% 柔軟性の結果>
柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)でいずれの濃度でも「◎」評価で柔らかかった。
<実験11 追加食塩重量% 31重量% 付着性の結果>
付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<実験11 追加食塩重量% 31重量% 総合評価>
総合的に判断すると、食塩対ホタルイカ重量%が31重量%で、酒盗抽出液対ホタルイカ重量%が15重量%から27重量%の範囲で常温保存可能な釣り餌として採用できる。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量(追加食塩重量%):32重量%+酒盗抽出液>
図110に示すように、対成体のホタルイカ総重量の32重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した。
<実験11 追加食塩重量% 32重量% 常温保存性の結果>
常温保存性(非変質性)については11~14重量%酒盗抽出液で「○」評価でほとんど変質なしとなり、15~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価で変質なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 32重量% 変色性の結果>
変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11、12重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の13重量%から29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変色なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 32重量% 匂いの程度の結果>
匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。
<実験11 追加食塩重量% 32重量% 柔軟性の結果>
柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でいずれの濃度でも柔らかかった。
<実験11 追加食塩重量% 32重量% 付着性の結果>
付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<実験11 追加食塩重量% 32重量% 総合評価>
総合的に判断すると、食塩対ホタルイカ重量%が32重量%で、酒盗抽出液対ホタルイカ重量%が15重量%から27重量%の範囲で常温保存可能な釣り餌として採用できる。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量(追加食塩重量%):33重量%+酒盗抽出液>
図111に示すように、対成体のホタルイカ総重量の33重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した。
<実験11 追加食塩重量% 33重量% 常温保存性の結果>
常温保存性(非変質性)については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液で「○」評価でほとんど変質なしとなり、15~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価で変質なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 33重量% 変色性の結果>
変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11、12重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の13重量%から29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変色なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 33重量% 匂いの程度>
匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。
<実験11 追加食塩重量% 33重量% 柔軟性>
柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)でいずれの濃度でも「◎」評価で柔らかかった。
<実験11 追加食塩重量% 33重量% 付着性>
付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<実験11 追加食塩重量% 33重量% 総合評価>
総合的に判断すると、食塩対ホタルイカ重量%が33重量%で、酒盗抽出液対ホタルイカ重量%が15重量%から27重量%の範囲で常温保存可能な釣り餌として採用できる。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量(追加食塩重量%):34重量%+酒盗抽出液>
図112に示すように、対成体のホタルイカ総重量の34重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した。
<実験11 追加食塩重量% 34重量% 常温保存性の結果>
常温保存性(非変質性)については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液で「○」評価でほとんど変質なしとなり、15~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価で変質なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 34重量% 変色性の結果>
変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11、12重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の13重量%から29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変色なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 34重量% 匂いの程度>
匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価で僅かに感じる、対成体のホタルイカ総重量の12~14重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。
<実験11 追加食塩重量% 34重量% 柔軟性の結果>
柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)でいずれの濃度でも「◎」評価で柔らかかった。
<実験11 追加食塩重量% 34重量% 付着性の結果>
付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<実験11 追加食塩重量% 34重量% 総合評価>
総合的に判断すると、食塩対ホタルイカ重量%が34重量%で、酒盗抽出液対ホタルイカ重量%が15重量%から27重量%の範囲で常温保存可能な釣り餌として採用できる。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量(追加食塩重量%):35重量%+酒盗抽出液>
図113に示すように、対成体のホタルイカ総重量の35重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した。
<実験11 追加食塩重量% 35重量% 常温保存性の結果>
常温保存性(非変質性)については、対成体のホタルイカ総重量の11~14重量%酒盗抽出液で「○」評価でほとんど変質なしとなり、15~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価で変質なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 35重量% 変色性の結果>
変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11、12重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の13重量%から29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変色なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 35重量% 匂いの程度の結果>
匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の11、12重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「△」で僅かに感じる、対成体のホタルイカ総重量の13、14重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の15重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で強く感じた。
<実験11 追加食塩重量% 35重量% 柔軟性の結果>
柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でいずれの濃度でも柔らかかった。
<実験11 追加食塩重量% 35重量% 付着性の結果>
付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<実験11 追加食塩重量% 35重量% 総合評価>
総合的に判断すると、食塩対ホタルイカ重量%が35重量%で、酒盗抽出液対ホタルイカ重量%が15重量%から27重量%の範囲で常温保存可能な釣り餌として採用できる。
<食塩+酒盗抽出液添加実験11の評価結果 食塩添加量(追加食塩重量%):36重量%+酒盗抽出液>
図114に示すように、対成体のホタルイカ総重量の36重量%の食塩に同じく対成体のホタルイカ総重量の11重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加した。
<実験11 追加食塩重量% 36重量% 常温保存性の結果>
常温保存性(非変質性)については、11重量%酒盗抽出液で「○」評価でほとんど変質なしとなり、12重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価で変質なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 36重量% 変色性の結果>
変色性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%、12重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり、部分的に茶色く変色、対成体ホタルイカ総重量の13重量%~29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価となり、変色なしとなった。
<実験11 追加食塩重量% 36重量% 匂いの程度の結果>
匂いの程度については、対成体のホタルイカ総重量の11~16重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価で僅かに感じる、対成体のホタルイカ総重量の17、18重量%酒盗抽出液(漬込材)を添加したときに「○」評価でやや感じる、対成体のホタルイカ総重量の19重量%~29重量%酒盗抽出液で「◎」評価結果で匂いを強く感じた。
<実験11 追加食塩重量% 36重量% 柔軟性の結果>
柔軟性については、対成体のホタルイカ総重量の11~18重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや硬い、対成体のホタルイカ総重量の19~29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価となり僅かに硬いと感じた。
<実験11 追加食塩重量% 36重量% 付着性の結果>
付着性については、対成体のホタルイカ総重量の11重量%~25重量%酒盗抽出液(漬込材)で「◎」評価でほとんど付着しない、対成体のホタルイカ総重量の26重量%、27重量%酒盗抽出液(漬込材)で「○」評価で僅かに付着、対成体のホタルイカ総重量の28重量%、29重量%酒盗抽出液(漬込材)で「△」評価でやや付着となった。
<実験11 追加食塩重量% 36重量% 総合評価>
総合的に判断すると、食塩対ホタルイカ重量%が36重量%で、酒盗抽出液対ホタルイカ重量%が15重量%から27重量%の範囲で、常温保存性および付着性は適しているが、釣り餌としての匂いの程度および柔軟性が悪くなるので、不採用とする。
<実施形態14 実験11から求められる組成の最適範囲>
成体のホタルイカに対する塩分重量%に関しては、成体のホタルイカに対する酒盗の重量%が大きい場合には「付着性」を損なう結果になる。付着性は釣りの動作の容易さ、快適性に関する指標であり、この付着性が不適切な範囲が大きい塩の添加重量%が29重量%の組成の物は不適切である。一方、成体のホタルイカに対する塩の重量%が36重量%の組成の物も、塩分が多くなりすぎることによって比較的広い酒盗抽出液組成範囲にて匂いの程度と柔軟性の問題を生じるので不適切である。従って、塩分の添加量対成体のホタルイカ重量%は30重量%から35重量%が適切な範囲として考えられる。
さらに酒盗抽出液の成体のホタルイカに対する重量%の範囲に関しては、14重量%以下では「常温保全性」の評価が「○」であるので、常温保存可能な釣り餌として不適と判断する。従って、下限として15重量%が適切と判断する。また28重量%以上では、付着性に問題を生じる塩の重量%の領域が比較的広く(塩重量%が30重量%から35重量%)好ましくない。従って結論としては、成体のホタルイカの重量に対する塩の重量%が30から35重量%かつ、酒盗抽出液の重量%が15%重量以上から27重量%以下の範囲に適切な漬込み工程の組成範囲が存在する。
<絡みつき量実験12>
<絡みつき量実験12の目的>
絡みつき量実験12の目的は、ホタルイカの全体を利用した釣り餌と、アカイカの外套膜の切身を利用した釣り餌の酒盗抽出液の絡みつき量を計測し、全体を利用したホタルイカの釣り餌として優位性を確認することである。(請求項26から請求項29にも関連)
<実験12 評価項目:絡みつき量>
「絡みつき量」とは、釣り餌に絡みついた酒盗抽出液の単位体積当たりの増加量をいう。ホタルイカは一杯に酒盗抽出液が絡みついた量で計測し、アカイカは切り身に酒盗抽出液が絡みついた量で計測した。
評価方法は、酒盗抽出液の漬け込み前と漬け込み後で、一杯当たり又は一切り身当りの重量(g)を10回測定して平均値で評価した。
この実験の際、本発明の酒盗抽出液(漬込材)入りホタルイカ釣り餌と、酒盗抽出液(漬込材)入りイカ釣り餌の体積(cm3)、重量(g)を測定した。重量の測定は、AS ONE社製電子天秤「selfi IB-300H」を使用した。体積の測定は、浮力による測定法を用いた。
すなわち、絡みつき量の体積測定は、以下の方法で行った。手順(1)ビーカーに水を入れ、電子天秤に載せ、表示を0に合わせる。手順(2)ホタルイカまたはアカイカを紐で縛り、ビーカー内の水に入れ、吊るす。ここで、測定対象物が水に完全に浸かり、ビーカーに触れないように注意する。手順(3)表示される重量を体積として記録する。
<絡みつき量実験12の内容>
ホタルイカ(一杯)とアカイカ(ホタルイカと同重量の切身)にそれぞれの総重量に対する割合の30重量%の酒盗抽出液を添加し冷蔵庫(2.5℃)で72時間保管・漬け込みを行った。漬け込み後のホタルイカとアカイカの重量を計測した。ホタルイカとアカイカの漬け込み前の体積を測定し、漬け込み前後での単位体積当たりの重量増加量(絡みつき量)を求めた。
上記実験をホタルイカとアカイカについて、それぞれ10回行った。
酒盗抽出液漬け込み後の単位体積当たりの重量増加量(絡みつき量)をホタルイカとアカイカで比較した。
図117および図118はそれぞれ、絡みつき量実験12において、酒盗抽出液漬け込み後72時間経たホタルイカおよびイカの写真である。絡みつき量実験12で行ったホタルイカの重量計測の様子を示した写真を図119に、ホタルイカの体積計測の様子を示した写真を図120、図121、図122に示した。同様にアカイカの体積計測の様子を、図123、図124、図125の写真で示した。
<絡みつき量実験12の評価結果>
図115(A)(B)に示すように、単位体積当たりの増加量の10回の平均値を比較するとホタルイカが0.07g、アカイカが0.03gとなり、ホタルイカの方が増加量(絡みつき量)が0.04g多かった。
<ホタルイカの実験結果>
1回目~10回目の実験結果は、順に体積(cm3):5.5、5.3、5.1、5.7、5.3、5.0、5.2、5.4、6.4、5.4、平均値5.43、漬け込み前重量(g):5.3、6.1、4.9、5.9、5.6、5.3、5.4、5.6、6.7、5.7、平均値5.65、漬け込み後重量(g):5.6、6.3、5.3、6.4、6.1、5.7、5.6、6.1、7.1、6.1、平均値6.03、増加量:0.3、0.2、0.4、0.5、0.5、0.4、0.2、0.5、0.4、0.4、平均値0.38、単位体積当たりの増加量(g):0.05、0.04、0.08、0.09、0.09、0.08、0.04、0.09、0.06、0.07、平均値0.07となった。
<アカイカの実験結果>
1回目~10回目の実験結果は、順に体積(cm3):4.7、5.5、4.4、5.1、4.9、4.8、4.9、5.1、6.0、5.0、平均値5.04、漬け込み前重量(g):5.3、6.1、4.9、5.9、5.6、5.3、5.4、5.6、6.7、5.7、平均値5.65、漬け込み後重量(g):5.4、6.3、5.0、6.0、5.8、5.5、5.5、5.7、6.9、5.8、平均値5.79、増加量(g):0.1、0.2、0.1、0.1、0.2、0.2、0.1、0.1、0.2、0.1、平均値0.14、単位体積当たりの増加量(g):0.02、0.04、0.02、0.02、0.04、0.04、0.02、0.02、0.03、0.02、平均値0.03となった。
<絡みつき量実験12の考察>
ホタルイカの方がアカイカよりも表面積が大きいため、酒盗抽出液が纏わりつきやすく、単位体積当たりの増加量(絡みつき量)が多くなったと考えられる。
<浸透度実験13>
<浸透度実験13の目的>
浸透度実験13の目的は、全体を利用したホタルイカの釣り餌と切身を利用したアカイカの釣り餌への酒盗抽出液の浸透度(浸透量)を計測することである。計測によって、全体を利用したホタルイカの釣り餌としての優位性を確認することである。(請求項25から請求項28にも関連)
<実験13 評価項目:浸透度>
「浸透度」とは、釣り餌に浸透した酒盗抽出液(可溶性固形分)等の浸透度合いをいう。評価方法は、酒盗抽出液の漬け込み前と漬け込み後で、Bx値(可溶性固形分の指標)(%)、塩度(%)、重量(g)、体積(cm3:立方センチメートル)を測定して評価した。
この実験の際、ソルビット溶液(イカの重量に対する重量%で25%の重量の溶液:ソルビット水溶液の溶液濃度はソルビット:水=70:30)+酒盗抽出液(漬込材)入りホタルイカ釣り餌と、酒盗抽出液(漬込材)入りアカイカ釣り餌を所定量みじん切りにし、ガーゼに包んで搾り取り、漬け込み前と漬け込み後のホタルイカ釣り餌とアカイカ釣り餌のBx(Brix:ブリックス)値、塩度、重量、体積(Bx値と、塩度増加量を比較可能とするために用いられる。)を測定した。Bxの測定には、アタゴ社製ポケット調味料濃度計「PAL-97S」を使用した。塩度測定には柴田化学製の自動ビュレットを使用し、塩度は指示薬にクロム酸カリウムを用い硝酸銀溶液で滴定するモール法によって分析した。重量の測定は、AS ONE社製電子天秤「selfi IB-300H」を使用した。体積測定は、絡みつき量実験12と同様な測定方法を用いた。
<浸透度実験13の内容>
ホタルイカ(一杯)とアカイカ(ホタルイカと同重量の切身)にそれぞれの総重量に対する割合の30重量%の酒盗抽出液を添加し冷蔵庫(2.5℃)で72時間保管・漬け込みを行った。ホタルイカは同等サイズのものを20杯用意し、アカイカの切身も同等サイズのものを20片用意した。一つの実験にホタルイカを2杯、アカイカ片を2片つかう。これは、Bx値と、塩度増加量を測定するために試料を細かく刻まなければならないために、ホタルイカ、アカイカの両者で漬込み前のイカに見立てる試料と、実際に漬込みをおこなう試料の一対の資料を必要とするためである。このようにして漬け込み前後での単位体積当たりのBxと塩度の増加量を予測した。この実験をホタルイカとアカイカについて、それぞれ10回行った。
浸透度実験13の様子を図142~図148の写真で表した。図142は浸透度実験13 ホタルイカみじん切りの写真、図143は浸透度実験13 ホタルイカガーゼ搾り取りの写真、図144は浸透度実験13 ホタルイカBx測定の写真、図145は浸透度実験13 ホタルイカ塩度測定の写真、図146は浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み前の重量測定の写真、図147は浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み前の体積測定の写真、図148は浸透度実験13 ホタルイカの漬け込み写真である。
<浸透度実験13 ホタルイカ浸透度実験フローチャート>
図140にホタルイカ浸透度実験におけるホタルイカ漬け込み前のBx値測定および塩度測定のフローチャートを示している。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み前 浸透度測定>
<浸透度実験13 ホタルイカ原料解凍>
図140の工程14001:原料の冷凍生ホタルイカを解凍する。ここで、ホタルイカの内臓を取り除かないで1杯のホタルイカを用いる。
<浸透度実験13 ホタルイカみじん切り>
図140の工程14002:図142にあるように、解凍したホタルイカのみじん切りを行う。
<浸透度実験13 ホタルイカガーゼ搾り取り>
図140の工程14003:図143にあるように、みじん切りにしたホタルイカをガーゼに包んでホタルイカの搾り取りを行う。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み前 Bx測定>
図140の工程14004:図144にあるように、ホタルイカのガーゼで搾り取った液汁(液体)をアタゴ社製ポケット調味料濃度計「PAL-97S」の測定部に垂らしてBx値測定を行う。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み前 塩度測定>
図140の工程14005:図145にあるように、ホタルイカの塩度測定を行う。
なお、アカイカの漬け込み前の浸透度実験については、図140と同様な工程により行うので、説明を省略している。
図141に、ホタルイカ浸透度実験におけるホタルイカ漬け込み・Bx値測定および塩度測定のフローチャートを示している。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み 浸透度測定>
<浸透度実験13 ホタルイカ原料解凍>
図141の工程14101:原料の冷凍生ホタルイカを解凍する。ここで、ホタルイカの内臓を取り除かないで1杯のホタルイカを用いる。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み前 重量測定>
図141の工程14102:図146にあるように、漬け込み前のホタルイカの重量測定を行う。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み前 体積測定>
図141の工程14103:図147にあるように、漬け込み前のホタルイカの体積測定を行う。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み 漬け込み>
図141の工程14104:図148にあるように、ホタルイカの漬け込みを行う。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み後 重量測定>
図141の工程14105:漬け込み後のホタルイカの重量測定を行う(図146を参照、同様な方法であるので、図を省略)。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み後 体積測定>
図141の工程14106:漬け込み後のホタルイカの体積測定を行う(図147を参照、同様な方法であるので、図を省略)。
<浸透度実験13 漬け込み後のホタルイカみじん切り>
図141の工程14107:漬け込み後のホタルイカのみじん切りを行う(図142を参照、同様な方法であるので、図を省略)。
<浸透度実験13 漬け込み後のホタルイカガーゼ搾り取り>
図141の工程14108:みじん切りにした漬け込み後のホタルイカをガーゼに包んでホタルイカの搾り取りを行う(図143を参照、同様な状態であるので、図を省略)。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み後 Bx測定>
図141の工程14109:漬け込み後のホタルイカのガーゼで搾り取った液汁(液体)をアタゴ社製ポケット調味料濃度計「PAL-97S」の測定部に垂らしてBx値測定を行う(図144を参照、同様な方法であるので、図を省略)。
<浸透度実験13 ホタルイカ漬け込み後 塩度測定>
図141の工程14110:漬け込み後のホタルイカの塩度測定を行う(図145を参照、同様な方法であるので、図を省略)。
なお、アカイカの漬け込み・各種測定の浸透度実験については、図141と同様な工程により行うので、説明を省略している。
<浸透度実験13の評価結果>
図116(A)(B)に示すように、単位体積当たりのBx増加量平均値を比較するとホタルイカが2.1%、アカイカが1.6%となり、ホタルイカの方が、増加量が0.5%大きかった。単位体積当たりの塩度増加量平均値を比較するとホタルイカが1.3%、アカイカが1.2%となり、ホタルイカの方が、増加量が0.1%大きかった。
すなわち、
<ホタルイカの実験結果>
1回目~10回目の実験結果は、順に体積(cm3):5.5、5.3、5.1、5.7、5.3、5.0、5.2、5.4、6.4、5.4、平均値5.43、漬け込み前Bx値(%):18.1、18.1、18.1、18.1、18.1、18.1、18.1、18.1、18.1、18.1、平均値18.10、漬け込み前の塩度(%):0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、平均値0.00、漬け込み後Bx値(%):28.0、27.6、27.8、30.1、31.2、29.3、30.1、31.4、29.0、29.2、平均値29.37、漬け込み後の塩度(%):6.6、6.5、6.6、6.9、6.8、7.0、6.8、6.6、6.7、7.1、平均値6.76、Bx値増加量(%):9.9、9.5、9.7、12.0、13.1、11.2、12.0、13.3、10.9、11.1、平均値11.27、塩度増加量(%):6.6、6.5、6.6、6.9、6.8、7.0、6.8、6.6、6.7、7.1、平均値6.76、単位体積当たりのBx値増加量(%):1.8、1.8、1.9、2.1、2.5、2.2、2.3、2.5、1.7、2.1、平均値2.08、単位体積当たりの塩度増加量(%):1.2、1.2、1.3、1.2、1.3、1.4、1.3、1.2、1.0、1.3、平均値1.25となった。
<アカイカの実験結果>
1回目~10回目の実験結果は、順に体積(cm3):4.7、5.5、4.4、5.1、4.9、4.8、4.9、5.1、6.0、5.0、平均値5.04、漬け込み前Bx値(%):27.2、27.2、27.2、27.2、27.2、27.2、27.2、27.2、27.2、27.2、平均値27.20、漬け込み前の塩度(%):0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、0.0、平均値0.00、漬け込み後Bx値(%):34.0、34.6、34.8、34.6、35.3、35.3、40.8、33.7、34.8、34.0、平均値35.19、漬け込み後の塩度(%):5.4、5.9、5.9、6.0、5.9、5.6、7.0、5.7、5.6、5.4、平均値5.83、Bx値増加量(%):6.8、7.4、7.6、7.4、8.1、8.1、13.6、6.5、7.6、6.8、平均値7.99、塩度増加量(%):5.4、5.9、5.9、6.0、5.9、5.6、7.0、5.7、5.6、5.4、平均値5.83、単位体積当たりのBx値増加量(%):1.4、1.3、1.7、1.5、1.7、1.7、2.8、1.3、1.3、1.4、平均値1.60、単位体積当たりの塩度増加量(%):1.1、1.1、1.3、1.2、1.2、1.2、1.4、1.1、0.9、1.1、平均値1.16となった。
<浸透度実験13の考察>
ホタルイカの方がアカイカよりもBx値と塩度の増加量が大きかったため、酒盗抽出液の浸透量はホタルイカの方がアカイカよりも多いと思われる。これらのことから、常温保存可能な釣り餌をイカの切り身を用いる場合よりも、ホタルイカ(丸ごと1杯)を用いて製造することで、酒盗抽出液(漬込材)による集魚効果がより期待できる。
以下では、常温保存可能な釣り餌として、図24の製造工程によって製造した漬込材入りホタルイカ餌と、図23の製造工程によって製造した漬込材入りイカ餌(アカイカ)との有効性比較を行うため、釣果実験を行ったので、その釣果実験結果について図127~図129を用いて説明する。また、図127(A)(B)に使用餌に対する酒盗抽出液浸透の構成成分を示している。
<釣果実験>
<釣果実験の目的>
本発明の漬込材入りホタルイカ餌の有効性を調べるために、漬込材入りイカ餌(アカイカ)との釣果比較実験を3回実施した。
<釣果実験内容>
日程
1日目 2019年10月5日、8:00~14:00
2日目 2019年10月20日、8:00~14:00
3日目 2019年10月27日、8:00~14:00
・場所:小田原早川湾沖
・潮:小潮
・水深:200m
・使用餌:漬込材入りホタルイカ餌、集魚剤入りイカ餌
・人数:4人
<使用餌について>(図127(A)(B)参照)
漬込材入りホタルイカ餌
大きさ 1杯
酒盗抽出液浸透の構成成分(ホタルイカ重量に対しての使用割合)
・ソルビット溶液・・・25%
・漬込材(酒盗抽出液)・・・15%
・食塩・・・30%
漬込材入りイカ餌(アカイカ)
大きさ 60mm×5mmにカットして使用
酒盗抽出液浸透の構成成分(イカ重量に対しての使用割合)
・ソルビット溶液・・・28%
・漬込材(酒盗抽出液)・・・30%
・食塩・・・33%
<釣果実験方法>
図128に示すように、釣り船を使用し、右舷に前方から順に使用者A,Cと並び、使用者Aが漬込材入りホタルイカ餌を使用し、使用者Cが集魚剤入りイカ餌を使用、左舷には前方から順に使用者B,Dと並び、Bが漬込材入りホタルイカ餌を使用、Dが漬込材入りイカ餌を使用した。計4人で釣果実験を行った。
<釣果実験結果>
図129(A)(B)(C)は、本実施形態の漬込材入りホタルイカ餌と漬込材入りイカ餌を使用した釣果の比較結果を示し、それぞれ1日目、2日目、3日目の釣果の詳細である。釣れた魚種はA,B,C,Dを合計して、キンメダイ、シロムツ、クロムツ、カサゴ、メダイの計6種であった。
図129(A)は1日目の釣果を示しており、本実施形態の漬込材入りホタルイカ餌を使用したA、Bの釣果は、キンメダイ9匹、クロムツ7匹、シロムツ5匹、カサゴ3匹、キンメダイ2匹、計26匹で、漬込材入りイカ餌を使用したC、Dの釣果は、シロムツ7匹、メダイ5匹、カサゴ3匹、キンメダイ1匹、クロムツ1匹、計17匹であった。
図129(B)は2日目の釣果を示しており、本実施形態の漬込材入りホタルイカ餌を使用したA、Bの釣果は、シロムツ9匹、クロムツ9匹、メダイ2匹、キンメダイ1匹、計21匹で、漬込材入りイカ餌を使用したC、Dの釣果は、カサゴ7匹、シロムツ3匹、クロムツ3匹、キンメダイ2匹、メダイ1匹、計16匹であった。
図129(C)は3日目の釣果を示しており、本実施形態の漬込材入りホタルイカ餌を使用したA、Bの釣果は、カサゴ8匹、クロムツ6匹、キンメダイ3匹、メダイ3匹、計23匹で、漬込材入りイカ餌を使用したC、Dの釣果は、クロムツ10匹、シロムツ4匹、メダイ4匹、カサゴ1匹、キンメダイ0匹、計19匹であった。
以上の釣果から、釣果合計匹数を比較すると、1日目の釣果は、本実施形態の漬込材入りホタルイカ餌が26匹、漬込材入りイカ餌が17匹、2日目の釣果は、本実施形態の漬込材入りホタルイカ餌が21匹、漬込材入りイカ餌が16匹、3日目の釣果は、本実施形態の漬込材入りホタルイカ餌が23匹、漬込材入りイカ餌が19匹となり、3日間いずれの日も本実施形態の漬込材入りホタルイカ餌の方が、釣果が良かった。
<釣果実験 考察>
ホタルイカ餌はイカ餌よりも皮が薄く柔らかいため、イカ餌よりも酒盗抽出液の絡みつき量と浸透量が多くなり、その結果匂いが強くなったことが漬込材入りイカ餌よりも釣果が良くなった理由と思われる。また、ホタルイカ餌は、内臓を取り除いてから加工するイカ餌と異なり、内臓も使用しているため、内臓の匂いも釣果が良くなった原因だと考えられる。
<実施形態14 効果>
このように、実施形態14によれば、実施形態10に加えて、イカの切り身を用いて製造した常温保存可能な釣り餌よりも、ホタルイカの内臓を取り除かないで丸ごと一杯のホタルイカを用いて製造した常温保存可能な釣り餌の方が釣果を期待できるものが実現できる。そのときの常温保存可能な釣り餌の製造方法において、漬込材は、成体のホタルイカの重量に対して15重量%以上27重量%以下が適しており、また、漬込工程は、成体のホタルイカの重量に対して塩を30重量%以上35重量%以下加えることが適している。