JP2015165795A - 養殖魚介類用飼料及び魚介類の養殖方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はこのような要求に応えるべくなされたもので、アユ等の養殖魚介類に対して摂餌促進効果及び成長促進効果の高い養殖魚介類用飼料及びこれを用いた魚介類の養殖方法の提供を目的とする。
本発明の発明者はこのような魚腸液の成長促進機能に着目し、魚介類由来の原料を発酵又は分解させたもの、特に、養殖対象の魚介類と同一種の魚介類由来の原料を発酵又は分解させたものが高い摂餌促進効果及び成長促進効果を有することを見出した。
前記原料の発酵物又は分解物は、請求項2に記載するように、養殖魚介類用飼料に対して0.01重量%〜10重量%程度含有されていればよい。好ましくは、請求項3に記載するように0.05重量%〜5重量%であるとよい。さらに好ましくは0.5重量%である。
請求項5に記載するように、前記原料を食塩無添加で40℃以上かつ1時間以上発酵させてもよい。あるいは、請求項6に記載するように、前記原料を食塩無添加で40℃以上かつ1時間以上発酵させ、食塩を10重量%以上になるよう添加するか又は酸度がpH5以下になるように酸性溶液を添加してもよい。
本発明の飼料によって養殖できる魚介類としては、請求項7に記載するように、アユ、マグロ類、サケ類、ウナギ類、フグ類、ブリ、カンパチ、マダイを挙げることができる。
ここで、魚類においては、稚魚期と成魚期において栄養要求性が異なる場合が多い。そのため、請求項11に記載するように、前記第一の養殖魚介類用飼料の前記魚介類よりも脂質成分が多い同一種類又は異種類の魚介類の魚腸を原料として用いた発酵物又は分解物を含有する第二の養殖魚介類用飼料をさらに準備し、成魚期に前記第二の養殖魚介類用飼料を給餌するようにしてもよい。前記第一の養殖魚介類用飼料及び前記第二の養殖魚介類用飼料の少なくとも一方は、前記原料を、自己消化酵素を含む酵素または微生物により発酵させたものとしてもよい。前記第二の養殖魚介類用飼料における前記原料の発酵物又は分解物の含有量は、請求項12に記載するように0.05重量%〜5重量%であるのが好ましい。
また、請求項13に記載するように、前記養殖する魚介類がアユである場合に、前記第一の養殖魚介類用飼料の原料がアユの魚腸であり、前記第二の養殖魚介類用飼料の原料がクロマグロの魚腸であるものとしてもよい。
特に、アユの養殖において、稚魚期に、アユ魚腸の発酵物又は分解物を0.05重量%〜5重量%、好ましくは0.5重量%含有する養殖魚介類用飼料を給餌し、成魚期にクロマグロの魚腸の発酵物又は分解物を0.05重量%〜5重量%、好ましくは0.5重量%又は5重量%含有する養殖魚介類用飼料を給餌することで高い効果が得られた。
本発明の養殖魚介類用飼料は、魚介類由来の原料を発酵・分解させたものを用い、かつ、養殖する魚介類と同一種のものを用いる。本発明が適用可能な養殖対象魚介類としては、アユ、マグロ類、サケ類、ウナギ類、フグ類、ブリ、カンパチ、マダイを挙げることができる。
原料としては魚腸のみを用いたものであってもよいし、魚腸を含む魚介類の一部又は全部を用いたものであってもよい。養殖対象魚介類がアユの場合にはアユの内臓(魚腸)を用い、マグロ類の場合は同じ種類のマグロの内臓(魚腸)を用いる。この原料はそのままであってもよいが、ミキサー等で細かく粉砕してから用いるのが好ましい。
発酵・分解は、原料である魚介類のタンパク質が分解されアミノ酸が遊離されるものであればよい。発酵・分解は自己消化によるもの、酵素の添加によるもの、微生物の作用によるもののいずれであってもよい。酵素又は微生物の作用によるものとしては、プロテアーゼやペプチダーゼ等のタンパク質分解酵素によるもの、あるいはこれらの酵素を産生する微生物によるものを挙げることができる。これらの発酵・分解の他に、麹菌等の発酵・分解を促進させる添加剤を加えてもよい。
本発明においては、特開2011−182663号公報で開示された速醸法による発酵を好適に用いることができる。この方法は、12時間〜24時間程度の短時間で発酵・分解を終了させることができ、かつ、タンパク質の80%以上を分解してアミノ酸含有率が高いという特徴がある。
本発明においては、ここまでの工程で得られたものをそのまま養殖魚介類用飼料として使用してもよい。上記工程で得られた生成物は主として液状体又は半液状体であるが、この中には発酵・分解されなかった残滓固形物が含まれているので、これを養殖魚介類用飼料として用いることもできる。
上記手順で得られた養殖魚介類用飼料には、水中での拡散を抑制する拡散抑制剤や目標とする魚介類以外の魚介類の捕食を抑制する捕食抑制剤等の添加剤を添加してもよい。
ところで、魚類においては、稚魚期と成魚期において栄養要求性が異なることがある。アユを例に取ると、天然アユは稚魚期においては晩秋から初春にかけて海で生息し、甲殻類の幼生(動物プランクトン)等を餌料としている。その後、ある程度成長すると河川を遡上し、秋頃まで河床に成育する藻類を摂食する。そして、アユ養殖においては仔魚期には1%のリノレン酸又はエイコサペンタエン酸を要求し、稚魚期においては1%のリノール酸及び1%のリノレン酸を要求することが知られている。従って、成長が促進される養殖用飼料を提供するためには、養殖対象魚の成長段階に合わせて栄養成分を適宜に切り替えていくのが好ましい。
そこで、アユの養殖の場合には、アユ魚腸から上記手順で得られた養殖魚介類用飼料を第一の養殖魚介類用飼料として主に稚魚期に与え、成長に合わせて前記第一の養殖魚介類用飼料を徐々に減らしつつ、成魚期に摂餌効果の高い別の魚介類の魚腸を原料とする第二の養殖魚介類用飼料を与えるようにしてもよい。前記別の魚介類は、前記第一の養殖魚介類用飼料に用いる魚介類よりも脂質成分の多い一種類又は複数種類の魚介類を用いるとよい。前記第二の養殖魚介類用飼料に含有させる別の魚介類の魚腸の発酵物又は分解物の量は、第一の養殖魚介用飼料に含有させるアユの魚腸の発酵物又は分解物の量と同等程度を目安とすることができるが、好ましくは0.05重量%〜5.0重量%程度とするのがよい。
以下、上記構成の養殖魚介類用飼料を、魚介類の中で飼料に対する嗜好性が特に強いとされるアユの養殖に用いた場合の実施例1について説明する。
[魚腸液の作成]
この実施例では、アユについては魚腸(内臓)を含むアユ全体を原料としたものを準備した。以後、この実施例において単に「アユ魚腸」と記載するときは「アユ全体魚腸」を指すものとする。また、比較例として、クロマグロ及びビンナガマグロの天然漁獲物から取り出した魚腸(内臓)のみを原料としたものも準備した。
これらの原料を粉砕機にて粉砕後、ステンレス容器に移し、約60℃の温水を入れた容器に浸しながら、食塩を添加せず、緩やかに撹拌して55℃まで加温した。この後55℃に設定された恒温器に入れてそのまま放置し、発酵させた。発酵の進捗状況は、経時的にサンプルをとりグルタミン酸の遊離を分析することにより確認した。
そして、グルタミン酸濃度上昇が緩やかになる24〜48時間経過後、粗いメッシュにて未分解物を除去し、食塩を重量濃度15%になるように添加したものを魚腸分解液(液化魚腸)とした。
なお、グルタミン酸濃度分析に供するサンプルは、上記発酵液を遠心分離し、底に溜まる沈殿物と上部に浮かぶ油分を除去したものを用いた。褐色の透明な液体が得られるが、サンプルによっては、上記操作で完全に透明にならず、濁っている場合がある。その場合は、得られた褐色の液体を、ろ過し、浮遊物を除去したものを分析用サンプルとする。遊離グルタミン酸は、グルタミン酸分析キット(ヤマサ)を用いて分析した。
図1は上記手順で調製した各種魚腸液の一般成分の分析結果を示す表、図2は同魚腸液の脂肪酸組成の分析結果を示す表、図3は図2の脂肪酸のうち必須脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸、EPA及びDHAの分析結果を示す表(いずれも筋肉100g当たり)である。なお、図1〜図3では、参考のためにアユの魚腸のみを発酵・分解させたものを「アユ内臓魚腸液(参考)」としている。
その結果、図1に示すように、クロマグロの魚腸を原料としたものが豊富な脂質を有することがわかる。特に、図2及び図3に示すように、必須脂肪酸であるリノール酸やリノレン酸の他、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタ塩酸(EPA)等の高度不飽和脂肪酸の含有量が多かった。
アユ用飼料(日本配合飼料製、EP-2C)1kgに対して実施例1で調製した魚腸液5gを計量し、トータルで20mLまで蒸留水でメスアップし、懸濁した後に飼料と混合し、魚腸液を0.5重量%含有する飼料を得た。当該飼料は4℃にて冷蔵保存を行った。
アユ供試魚の飼育は屋外コンクリート製2t水槽(2m×3m×0.35m)に地下水を1日4回換水されるように注水して行った。アユ供試魚は山口県産の海産系人工種苗(平均体重4.1g)を用い、各試験区に240尾ずつ導入した。なお、この際、統計分析により各試験区の間で体重における有意な差が生じていないことを確認した。
アユへの給餌は自動給餌器(ヤマハ製、YDF−160SO)を用い、タイマーを使用して1日3回(9時、13時、17時)行った。給餌量は給餌率表に従い、魚体重×日間摂餌率で決定した。なお、体重測定を実施した週は実測値を用い、体重測定を実施しなかった週は給餌量の70%が魚体重に変換されていると仮定して、魚体重を推定し、給餌量の計算を行った。給餌の際は目視による観察を併せて行い、残餌がないことを確認した。
約3ヶ月間飼育したときの給餌量を図4に示す。図4においては、一般の飼料を与えた「対照」と、ビンナガ魚腸、アユ魚腸、クロマグロ魚腸を用いたものを示している。その結果、「対照」に比して各々8.3%、11.8%、又は10.4%の飼料を多く摂餌した。このことから、魚腸液に含まれる成分が稚魚期の魚類の摂餌を誘引すると考えられ、特にアユ魚腸を原料としたものが最も摂餌誘因力が高いことがわかった。
図5は、アユ(稚魚期)の平均体重の推移を示すグラフである。このグラフにおいて白丸は対照を、三角はビンナガマグロ魚腸を、黒丸はアユ魚腸を、黒四角はクロマグロ魚腸をそれぞれ示している。測定日に、全供試魚を10尾ずつ無作為に抽出毎に体重を測定した。試験開始から約1ヶ月においては、アユ魚腸液を添加した試験区の体重増加が著しく、その平均体重は「対照」と比べ9.0%重かった。このことは、特に稚魚期においては同種由来の成分を摂食することで、成長に必要な栄養分が補給され成長が促されることを示している。
一方、図5のグラフから、アユの体重が10gを超えてくる(飼育日数で40日を超えるあたり)と、アユの栄養要求性が変化するようであり、アユ魚腸よりも、脂肪分を豊富に含むクロマグロ又はビンナガマグロ魚腸液を添加する方が、アユの成長が促進されることがわかる。アユ魚腸、クロマグロ魚腸及びビンナガマグロ魚腸の試験区のアユの平均体重は、対照と比べて各々10.6%、11.0%、及び12.3%重かった。魚腸液に含まれる特に脂肪酸等の成分がアユの摂餌を促し、その成長を促進したと考えられる。
以下の式により飼料効率を算出した。
飼料効率(%)=期間における魚体重の増加量/当該期間で給餌した飼料重量×100
図6(a)は、試験開始から約1ヶ月経過時におけるアユ魚腸液、クロマグロ魚腸液及びビンナガマグロ魚腸液を用いた場合の飼料効率を示すグラフ、(b)はアユ(稚魚期)の飼育期間全体(約3ヶ月)の飼料効率を求めたものである。
図示するように飼料効率は魚腸を用いない「対照」と比べて9.2〜15.1%高かった。アユの稚魚期は特に飼料に対する嗜好性が強いといわれていることから考えると、これらの魚腸液は摂餌を促す作用が強いことが伺える。一方、稚魚期における期間全体でみると、アユ魚腸液区と対照区における飼料効率の差は縮小する傾向にあった。この原因を明らかにするために以下の試験を実施した。
アユ成魚期における栄養要求性を検討するため、アユ内臓のみから作成した魚腸液とアユ全体から作成した魚腸液を飼料に0.5重量%添加した試験区を設定し、比較を行った。アユの飼育は屋外コンクリート製3t水槽(2m×5m×0.35m)に地下水を1日4回換水されるように注水して行った。アユ供試魚は山口県産の海産系人工種苗(平均体重27.1g)を用い、各試験区に170尾ずつ導入した。なお、この際、統計分析により各試験区の間で体重における有意な差が生じていないことを確認した。
アユへの給餌は自動給餌器(ヤマハ製、YDF−160SO)を用い、1日3回(9時、13時、17時)、目視により観察しながら、満腹まで食べさせる方法(飽食摂餌)で行った。約2ヶ月半間飼育した。その結果、試験区間において平均体重及び飼料効率の差はなかった。このことから成魚期のアユ(体重25g以上)については、アユ魚腸液の添加効果は稚魚期に比べると薄いと考えられる。
図7は、アユ成魚期における平均体重の推移を示すグラフである。図7のグラフにおいて、白丸は対照を、三角はビンナガマグロ魚腸を、黒丸はクロマグロ魚腸をそれぞれ示している。
図7のグラフでは、クロマグロ魚腸液及びビンナガマグロ魚腸液の添加効果を検証するため、何も添加しない「対照」のほか、クロマグロ魚腸液及びビンナガ魚腸液を0.5重量%添加した飼料を用いて比較を行った。アユの飼育は屋外コンクリート製2t水槽(2m×3m×0.35m)に地下水を1日5回換水されるように注水して行った。アユ供試魚は山口県産の海産系人工種苗(平均体重27.6g)を用い、各試験区に150尾ずつ供した。
アユへの給餌は自動給餌器(ヤマハ製、YDF−160SO)を用い、タイマーを使用して1日3回(9時、13時、17時)行った。給餌量は給餌率表に従い、魚体重×日間摂餌率で決定した。なお、体重測定を実施した週は実測値を用い、体重測定を実施しなかった週は給餌量の70%が魚体重に変換されていると仮定して、魚体重を推定し、給餌量の計算を行った。給餌の際は目視による観察を併せて行い残餌がないことを確認した。約3ヶ月間飼育したところ、「対照」のアユに比べてビンナガ魚腸、又はクロマグロ魚腸を原料とするものでは、各々6.3%、又は11.5%の飼料を多く摂餌した。このことから、成魚期においてビンナガ及びクロマグロ魚腸液に含まれる成分がアユの摂餌を誘引する効果が高いことがわかる。
約1ヶ月毎に各試験区のアユ全体の体重を測定した。ほぼ三ヶ月が経過した試験終了時においては1尾毎の重量を測定した。試験終了時においてはクロマグロ魚腸及びビンナガマグロ魚腸の試験区のアユの平均体重は、図7に示すように「対照」と比べて各々10.0%及び3.7%重かった。なお、統計分析により対照区との比較を行ったところ、それぞれp=0.000057及びp=0.027であり、有意な差が見られた。これらの魚腸液に含まれる特に脂肪酸等の成分がアユの摂餌を促し、その成長も促進したと考えられる。
以下の式により飼料効率を算出した。
飼料効率(%)=期間における魚体重の増加量/当該期間で給餌した飼料重量×100
飼育試験期間(約3ヶ月)においては、クロマグロ魚腸液及びビンナガマグロ魚腸液添加区の飼料効率の方が「対照」と比べて5.1及び5.4%高かった。これらの魚腸液についてはアユの成魚期においても体重増加効果があることが分かる。
魚腸液の添加効果を検証するため、何も添加しない対照区、アユ全体魚腸添加区、アユ内臓魚腸添加区、クロマグロ魚腸液添加区、及びビンナガ魚腸液添加区の成魚を10尾ずつランダムに採取し一般成分分析を行った。
3枚におろした後、筋肉部分を採取した。10尾分の筋肉をまとめ、ホモジェナイズした物を分析に供した。その結果を図8に示す。
アユ筋肉100gあたりのエネルギー含量では、対照区に比べ、アユ全体魚腸液添加区、アユ内臓魚腸液添加区及びクロマグロ魚腸液添加区のアユで、17.8%、21.5%及び4.4%の増加が見られた。
アユ筋肉100gあたりの脂質量では、対照区に比べ、アユ全体魚腸液添加区、アユ内臓魚腸液添加区及びクロマグロ魚腸液添加区のアユで、42.6%、50.0%及び8.8%の増加が見られた。
アユ魚腸液添加区において、アユ筋肉100g中のエネルギー含量及び脂質含量が著しく増加したことから、同一魚種由来の魚腸液を飼料に添加して飼育することにより、飼育魚の脂質含量及びエネルギー含量を増加させる効果があると考えられる。
魚腸液の添加効果を検証するため、何も添加しない対照区、アユ全体魚腸添加区、アユ内臓魚腸添加区、クロマグロ魚腸液添加区、及びビンナガ魚腸液添加区の成魚を10尾ずつランダムに採取し脂肪酸組成分析を行った。
3枚におろした後、筋肉部分を採取した。10尾分の筋肉をまとめホモジェナイズした物を分析に供した。図9は飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸の分析結果を示す表、図10はアユ筋肉100gあたりの成分分析結果を示す詳細な表である。
アユ筋肉100gあたりの脂肪酸組成では、対照区に比べ、アユ全体魚腸液添加区、アユ内臓魚腸液添加区、クロマグロ魚腸液添加区、及びビンナガ魚腸液添加区のアユで、殆どの脂肪酸種において数値の増加が見られた。とりわけ、その効果はアユ内臓魚腸液添加区において強かった。
ヒトにとっての必須脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸においても、数値の増加が認められた。その効果はアユ内臓魚腸液添加区において最も強く、対照区のアユと比べ、リノール酸で61.9%、リノレン酸で61.6%、アラキドン酸で52.9%、エイコサペンタエン酸で77.0%、ドコサヘキサエン酸で44.9%の増加が認められた。同一魚種由来魚腸液を飼料に添加した場合、体成分の脂質の上昇率に比して、必須脂肪酸の上昇率の方が概ね大きい傾向にあった。このことは、同一魚種由来魚腸液は魚類養殖時の脂肪酸供給源として最適であることを示唆する。
[稚魚期]
実施例2においては、アユ用飼料に対して各濃度の魚腸液を添加し、給餌率表に基づいて制限給餌を行った。魚腸液としてはアユ全体を液化した物(アユ全体魚腸)及びアユの魚腸のみを液化した物(アユ内臓魚腸)を用いた。その結果を図11のグラフに示す。平均体重の推移においては、図11に示すように、アユ全体魚腸を0.5重量%添加した場合に、対照区と比べて16.9%の体重増加効果が認められた。なお、アユ内臓のみを使用した魚腸(アユ内臓魚腸)液を0.5重量%添加した場合は、対照区と比べて4.9%の体重増加効果が認められた。また、アユ全体魚腸を0.05重量%又は5重量%添加した場合は、対照区と比べて2.7%程度の体重増加効果であった。
[成魚期]
アユ用飼料に対して各濃度の魚腸液を添加し、給餌率表に基づいて制限給餌を行った。魚腸液としてはクロマグロ内臓を液化した物を用いた。比較対象として、フィードオイルを3重量%添加した試験区を用意した。その結果を図12のグラフに示す。平均体重においては、図12に示すように、クロマグロ魚腸を0.5%重量及び5%重量添加した場合に、対照区と比べてそれぞれ17.4%及び12.4%の体重増加効果が認められた。また、クロマグロ魚腸を0.05重量%添加した場合は、対照区と比べて6%の体重増加効果が認められた。フィードオイルを3重量%添加した場合は、対照区と比べて15.5%の体重増加効果が認められた。クロマグロ魚腸液は脂肪酸含量が多いことから、成魚期のアユにおいては、その飼料に適切な脂肪酸を添加することにより、アユの体重を増加させることができることが明らかとなった。図13にアユ(成魚期)の可食部の脂肪酸含量を示すが、クロマグロ魚腸液を添加した飼料を摂食したアユでは、対照区と比べて、有用な多価不飽和脂肪酸(DHA、EPA等)が増加した。
Claims (13)
- 魚介類由来の原料の発酵物又は分解物を含有する養殖魚介類用飼料において、
前記原料として養殖する魚介類と同一種類の魚介類の魚腸を用いたこと、
を特徴とする養殖魚介類用飼料。 - 前記原料の発酵物又は分解物を0.01重量%〜10重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の養殖魚介類用飼料。
- 前記原料の発酵物又は分解物を0.05重量%〜5重量%含有することを特徴とする請求項2に記載の養殖魚介類用飼料。
- 前記原料を発酵又は分解させたものを濾過して液状体又は半液状体としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の養殖魚介類用飼料。
- 前記原料を食塩無添加で40℃以上で1時間以上発酵させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の養殖魚介類用飼料。
- 前記原料を食塩無添加で40℃以上かつ1時間以上発酵させた後、食塩を10重量%以上になるよう添加するか又は酸度がpH5以下になるように酸性溶液を添加したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の養殖魚介類用飼料。
- 養殖する前記魚介類がアユ、マグロ類、サケ類、ウナギ類、フグ類、ブリ、カンパチ、マダイであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の養殖魚介類用飼料。
- 養殖する魚介類と同一種類の魚介類の魚腸を原料として用いた発酵物又は分解物を含有する第一の養殖魚介類用飼料を準備し、
稚魚期に前記第一の養殖魚介類用飼料を給餌すること、
を特徴とする魚介類の養殖方法。 - 前記原料の発酵物又は分解物を0.01重量%〜10重量%含有することを特徴とする請求項8に記載の魚介類の養殖方法。
- 前記原料の発酵物又は分解物を0.05重量%〜5重量%含有することを特徴とする請求項9に記載の魚介類の養殖方法。
- 前記第一の養殖魚介類用飼料の前記魚介類よりも脂質成分が多い同一種類又は異種類の魚介類の魚腸を原料として用いた発酵物又は分解物を含有する第二の養殖魚介類用飼料をさらに準備し、
成魚期に前記第二の養殖魚介類用飼料を給餌すること、
を特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の魚介類の養殖方法。 - 前記第二の養殖魚介類用飼料における前記原料の発酵物又は分解物の含有量が0.05重量%〜5重量%であることを特徴とする請求項11に記載の魚介類の養殖方法。
- 前記養殖する魚介類がアユである場合に、前記第一の養殖魚介類用飼料の原料がアユの魚腸であり、前記第二の養殖魚介類用飼料の原料がクロマグロの魚腸であることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の魚介類の養殖方法。
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