JP7090259B2 - 非水電解質二次電池の正極、非水電解質二次電池およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また非特許文献1のように、TOT中性ラジカル誘導体と導電助剤を含むバッキーペーパーを正極に利用すると、前記一般的な正極製造方法に従って正極を作製する場合よりもサイクル特性は向上するものの、さらなるサイクル特性の向上が求められる。
本発明が解決しようとする課題は、非水電解質二次電池のサイクル特性を向上させることである。
[1] 下記式(1)で示されるトリオキソトリアンギュレン中性ラジカル誘導体および/または下記式(2)で示されるトリオキソトリアンギュレンモノアニオン塩誘導体、および導電性高分子を含む非水電解質二次電池の正極。
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、またはシリル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。これらXにはさらに他の置換基が結合していてもよい。さらに別分子のXが結合することでトリオキソトリアンギュレン化合物が多量化してもよい。別分子のXが結合する場合の結合前の基Xは、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基であってもよい。実線と破線からなる二重結合は非局在化した二重結合を意味しており、式中、●で表されるラジカルおよび(-)で表される負電荷は、この非局在化二重結合中に存在する。式中、M(+)はカチオン種を示す。)
[2] 前記式(1)で示されるトリオキソトリアンギュレン中性ラジカル誘導体および/または前記式(2)で示されるトリオキソトリアンギュレンモノアニオン塩誘導体のXが水素原子である[1]に記載の正極。
[3] 前記導電性高分子が、ポリチオフェン系高分子、ポリアセチレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリピロール系高分子、およびポリパラフェニレン系高分子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む[1]または[2]に記載の正極。
[4] 前記導電性高分子が、ポリチオフェン系高分子より選ばれる少なくとも1種を含む[1]~[3]のいずれかに記載の正極。
[5] 前記導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)を含む[1]~[4]のいずれかに記載の正極。
[6] さらに導電助剤を含む[1]~[5]のいずれかに記載の正極。
[7] 前記導電助剤が、カーボンブラック、天然グラファイト、合成グラファイト、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、および酸化グラフェン還元体からなる群より選ばれる少なくとも1種である[6]に記載の正極。
[8] 前記導電助剤が、カーボンナノチューブである[6]または[7]に記載の正極。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の正極を有する非水電解質二次電池。
[10] 下記式(1)で示されるトリオキソトリアンギュレン中性ラジカル誘導体および/または下記式(2)で示されるトリオキソトリアンギュレンモノアニオン塩誘導体、導電性高分子、および溶剤を含む混合液を、集電体にスプレー塗布する非水電解質二次電池の正極の製造方法。
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、またはシリル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。これらXにはさらに他の置換基が結合していてもよい。さらに別分子のXが結合することでトリオキソトリアンギュレン化合物が多量化してもよい。別分子のXが結合する場合の結合前の基Xは、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基であってもよい。実線と破線からなる二重結合は非局在化した二重結合を意味しており、式中、●で表されるラジカルおよび(-)で表される負電荷は、この非局在化二重結合中に存在する。式中、M(+)はカチオン種を示す。)
[11] 前記混合液がさらに導電助剤を含む[10]に記載の製造方法。
TOT中性ラジカル誘導体/TOTモノアニオン塩誘導体
本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池に用いる正極は、少なくとも下記式(1)で示されるTOT中性ラジカル誘導体および/または下記式(2)で示されるTOTモノアニオン塩誘導体、および導電性高分子を含む正極活物質層と、該正極活物質層が表面に形成された集電体とから構成される。
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、またはシリル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。これらXにはさらに他の置換基が結合していてもよい。さらに別分子のXが結合することでトリオキソトリアンギュレン化合物が多量化してもよい。別分子のXが結合する場合の結合前の基Xは、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基であってもよい。実線と破線からなる二重結合は非局在化した二重結合を意味しており、式中、●で表されるラジカルおよび(-)で表される負電荷は、この非局在化二重結合中に存在する。式中、M(+)はカチオン種を示す。)
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、アミノフェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数が6~20程度、好ましくは炭素数が6~10程度のアリール基が結合したオキシ基が挙げられる。
前記アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などの炭素数が2~20程度、好ましくは炭素数が2~10程度のアシルオキシ基が挙げられる。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などの炭素数が2~20程度、好ましくは炭素数が2~10程度のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
導電性高分子は、特に限定されないが、ポリチオフェン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレン系高分子などのような共役する連結芳香族環を有する高分子(以下、含共役芳香環高分子という)、ポリアセチレン系高分子などが挙げられる。含共役芳香環高分子としては、ポリチオフェン系高分子、ポリアニリン系高分子が好ましい。また導電性高分子としては、ポリチオフェン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリアセチレン系高分子がより好ましく、ポリチオフェン系高分子が最も好ましい。これら導電性高分子は単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
共役する連結芳香族環部分を有するオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、3位および/または4位に置換基を有していてもよいチオフェン環の連結構造を有するオリゴマーまたはポリマーが挙げられ、好ましくは、無置換ポリチオフェン、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが挙げられる。ドーパントとなるアニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーなどとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などの繰り返し部分にスルホン酸基が導入された単独または共重合体が挙げられる。
共役する連結芳香族環部分を有するオリゴマーまたはポリマーと、該オリゴマーまたはポリマーをドーピングするアニオン性またはカチオン性ポリマーとを組み合わせた導電性高分子としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(ビニルスルホン酸)などが挙げられる。これらのうち、導電性が高い点で、PEDOT:PSSが好適に用いることができる。
正極活物質層は、TOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体と導電性高分子以外に、正極活物質としての金属酸化物を含んでいてもよい。金属酸化物としては、3d遷移金属の複酸化物が挙げられ、例えば層状結晶構造のコバルト酸リチウム(LiCoO2)などのコバルト系、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)などのニッケル系、スピネル型結晶構造のマンガン酸リチウム(LiMn2O4)などのマンガン系、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)などのリン酸鉄系およびコバルト酸リチウムの一部をニッケルとマンガンで置換した三元系(Li(Ni-Mn-Co)O2)などが挙げられる。ただし、本発明では、正極活物質としてのTOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体の利点を最大限にする観点から、前記金属酸化物を実質的に含まないことが好ましい。該金属酸化物の量は、TOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体100重量部に対して、例えば、50重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは1重量部以下、最も好ましくは0重量部である。
本発明の正極活物質層は導電性高分子以外の導電助剤を含んでもよい。導電助剤とは、電極の導電性を補助する働きを有する、導電性または半導電性の物質である。導電助剤としては、金属材料またはその他の炭素材料が好ましく、これら導電助剤は単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
金属材料としては、銅またはニッケルなどが好ましい。また、炭素材料としては、カーボンブラック、天然グラファイト、合成グラファイト、気相成長炭素繊維(VGCF(登録商標))、カーボンナノチューブ(以下、CNTと表記する場合がある)、グラフェン、および酸化グラフェン還元体などが好ましく、カーボンブラックには、アセチレンブラック(以下、ABと表記する場合がある)、ケッチェンブラック、およびファーネスブラックなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
前記導電助剤としては、炭素材料が好ましく、なかでも天然グラファイト、合成グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェンがより好ましく、カーボンナノチューブがさらにより好ましい。これら好ましい導電助剤、特にカーボンナノチューブは、TOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体との親和性が高い。
また正極活物質層に含まれるTOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体と導電助剤の合計量は、正極活物質層の全固形分100重量部中、例えば、50重量部以上99重量部以下、好ましくは70重量部以上99重量部以下、より好ましくは80重量部以上95重量部以下である。
本発明の正極活物質層は、必要に応じてさらに、バインダを含んでもよい。バインダを含むことにより、正極活物質層内の材料同士を結着したり、正極活物質層と集電体との結着性を高めたりすることができる。バインダとしては特に限定されないが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン(PS)、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、天然ゴム(IIR)、セルロース繊維、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、PVdF、PTFEなどの含フッ素樹脂が好ましい。バインダが含フッ素樹脂であれば、耐久性に優れる正極となる。
前記正極活物質層と積層される前記集電体としては、箔、フィルム、板、メッシュなどの種々の形態の材料を用いることができる。
集電体の材質は特に限定されないが、ステンレス、アルミニウムまたはその合金、炭素繊維、グラファイトシートなどが好ましく、JIS規格1030、1050、1085、1N90、または1N99などに代表される高純度アルミニウムまたはそれらの合金がより好ましい。これらの集電体を用いれば、正極反応雰囲気下で安定である。
集電体の厚みは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
正極は、前記式(1)で示されるTOT中性ラジカル誘導体および/または前記式(2)で示されるTOTモノアニオン塩誘導体と、導電性高分子と、必要に応じて用いられる導電助剤、金属酸化物、バインダ等とを、溶媒中で混合した混合液を作製し、前記混合液を集電体に塗布することによって、およびその後、必要に応じて乾燥したり圧縮したりすることによって作製できる。
スプレーコートによる場合、TOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体と、導電性高分子と、溶媒とを含有する混合液を作製し、前記混合液を集電体にスプレー塗布した後、加熱乾燥で溶媒を除去することによって、正極を作製できる。集電体に混合液をスプレーする場合には、集電体を所定の温度に加温しておいてもよい。加温時の集電体の温度は、塗布する混合液に使用する溶媒に応じて適宜設定でき、該溶媒がアルコール、特にエタノールの場合、例えば、80~150℃である。
<負極>
前記負極は、予めアルカリ金属またはアルカリ土類金属をドープした炭素材料を少なくとも含む負極活物質層と、該負極活物質層と積層される集電体とから構成される。
前記負極活物質として用いる炭素材料としては、カーボンブラック、天然グラファイト、合成グラファイト、気相成長炭素繊維(VGCF(登録商標))、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、酸化グラフェン還元体などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらのうち電池特性およびコストの点で天然グラファイト、合成グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)が好ましく、天然グラファイト、合成グラファイトがより好ましい。
負極活物質層は、必要に応じてさらにバインダを含んでもよい。バインダを含むことにより、負極活物質層と集電体との密着性を高めることができる。負極活物質に使用するバインダの具体例、好ましい例、およびその理由はいずれも正極活物質に使用するバインダと同じである。
バインダを含ませる場合のバインダの含有量は、負極活物質としての炭素材料100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。前記範囲であれば、負極活物質と導電助剤と集電体との接着性が十分に担保される。
前記負極活物質層は、集電体の片面に形成してもよく、両面に形成してもよい。負極活物質層を集電体の両面に形成する場合、一方の面の負極活物質層と他方の面の負極活物質層とは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。負極活物質層を集電体の片面に形成する場合、集電体の残りの面は集電体が露出していてもよく、該残りの面に前記正極活物質層を積層することで双極型(バイポーラ)電極にしてもよい。
負極活物質層と積層される前記集電体としては、箔、フィルム、板、メッシュなどの種々の形態の材料を用いることができる。
負極の集電体の材質としては、ステンレス、銅、ニッケル、アルミニウム、またはそれらの合金などが挙げられ、耐食性や重量の観点から銅やその合金であることが好ましく、導電性が高く腐食の恐れが小さい点から、ステンレスあるいは銅が最も好ましい。
負極の集電体の厚みは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
負極の作製方法としては、従来周知の技術を用いればよく、好ましくは、前記負極活物質および溶媒で負極スラリーを作製し、その後負極スラリーを集電体上に担持し、そして溶媒を除去することによって負極活物質層を含む負極を作製する。
負極スラリーの作製は従来周知の技術を使用すればよい。また、負極スラリーの調製に用いる溶媒、負極スラリーの集電体上への担持方法、および担持後の溶媒除去方法についても従来周知の技術を使用すればよい。溶媒としては、正極の混合液の調製に使用される溶媒と同様のものが適宜使用でき、好ましくはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどの非プロトン性極性溶媒などのような、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と反応しない溶媒であり、より好ましくはNMPである。
負極スラリーを集電体上に担持した後は、必要に応じて該担持物を圧縮してもよい。圧縮することによって負極活物質層の密度を調整できる。圧縮方法は、ロールプレス、油圧プレスなどが好適に用いられる。なお担持物の圧縮は、担持物から溶媒を除去する前に行ってもよく、担持物から溶媒を除去した後に行ってもよいが、担持物から溶媒を除去した後に行うことが好ましい。
ドープが実現されるメカニズムは、次のとおりと考える。負極活物質である炭素材料とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との接触または混合により、炭素材料の内部にアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンが拡散していく。炭素材料とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の電位を比較すると、炭素材料の電位が高く、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が低いため、電位差のある両者を接触させると短絡電流が発生し、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から炭素材料へ電子が移動し、この電子移動を補償するためアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から炭素材料へ移動する。その結果、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンがドープされた負極活物質層が得られる。
セパレータは、正極と負極との間に設置され、これらの間の電子やホールの伝導を阻止しつつ、これらの間のイオン伝導性を確保する機能を有する。
セパレータとしては、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート、およびそれらを2種類以上複合したものが好適に用いられる。
セパレータの形状としては、正極と負極との間に設置され、絶縁性かつ非水電解質を含むことが出来る構造であればよく、織布、不織布または多孔質膜などが好適に用いられる。
セパレータは、可塑剤、酸化防止剤または難燃剤を含んでもよいし、金属酸化物等が被覆されてもよい。
セパレータの厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、12μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
セパレータの空隙率は、30%以上90%以下であることが好ましく、35%以上85%以下がより好ましく、40%以上80%以下がさらに好ましい。セパレータの空隙率が前記範囲内であれば、イオン伝導性および短絡防止性のバランスがよい。
非水電解質は、負極と正極との間のイオン伝導を媒介する機能を有しており、非水条件を維持できる限り、液体電解質(電解液ともいう)、ゲル電解質、固体電解質のいずれであってもよく、支持電解質塩を含有する電解液またはゲル電解質であることが好ましい。非水電解液は、支持電解質塩を非水溶媒に溶解したものであり、ゲル電解質は、前記電解液を高分子に含浸させたものである。
前記非水溶媒は、非プロトン性溶媒および/または非プロトン性極性溶媒が好ましく、非プロトン性極性溶媒がより好ましい。これら非水溶媒は、非水電解質二次電池の作動電位において分解が起こりにくい。
これらの溶媒は、粘度およびイオン伝導性等のバランスを調整するために複数種を混合して用いても良く、環状非プロトン性極性溶媒と非環状非プロトン性極性溶媒とを組み合わせることが好ましい。
本発明の実施形態にかかる非水電解質二次電池の例として、以下、リチウムイオン二次電池について記載する。リチウムイオン二次電池は、前記正極シートを、セパレータを介して負極シートに対向させ、電極間に非水電解質を満たして封入することによって作製することができる。
なお、本発明の実施形態にかかる非水電解質二次電池は、リチウムイオン二次電池に限定されるものではない。例えば、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池など、リチウム以外のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を用いた非水電解質二次電池であってもよい。
電池の封入体は、正極、負極およびセパレータを交互に積層または捲回してなる積層体、ならびに積層体を電気的に接続する端子を封入する部材である。
積層体の積層数は、所望の電圧値および電池容量を得る目的で、適宜調整してよい。
封入体としては、金属箔にヒートシール用の熱可塑性樹脂層を設けた複合フィルム、蒸着やスパッタリングによって形成された金属層、または角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形もしくはシート形の金属缶が好適に用いられ、複合フィルムがより好ましい。
複合フィルムの金属箔としては、アルミニウム箔が好適に用いられる。複合フィルムの金属箔がアルミニウム箔であれば、水分遮断性、重量およびコストのバランスが良好である。
複合フィルムの熱可塑性樹脂層としては、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好適に用いられる。複合フィルムの熱可塑性樹脂層がポリエチレンまたはポリプロピレンであれば、ヒートシール温度範囲および非水電解質の遮断性が良好である。
以下において、TOT中性ラジカル誘導体あるいはTOTモノアニオン塩誘導体(H3TOTあるいはH3TOTアニオンLi塩)は、2-ヨードトルエンを出発原料として用い、非特許文献1に記載の方法によって合成した。
また、電極の膜厚はハイデンハイン株式会社製の長さゲージMT1281を用いて測定した。
(正極の作製)
エタノール59.7gに、単層CNT30mgを入れて、超音波照射しながら1時間攪拌し、CNT0.05%エタノール混合液を作製した。さらに、この混合液に、正極活物質としてH3TOTアニオンLi塩60mgを添加し、超音波照射しながら1時間攪拌した後、PEDOT:PSS(シグマ・アルドリッチ製、Orgacon DRY)10mgを入れて、さらに超音波照射しながら1時間攪拌し、混合液を作製した。
100℃に加熱したホットプレートの上に、正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔を固定し、上記にて調製した混合液を、エアブラシ(トラスコ中山株式会社製、TAB-03)を用いて0.1MPaの圧縮空気で噴霧して、集電体上に塗布し、120℃の空気雰囲気下で1時間加熱、乾燥させ正極活物質層を作製した。さらにロールプレス機で800kg/cm2の圧力でプレスして、厚み23μm(アルミニウム箔を含む)の正極を得た。
なお、本実施例での、正極中TOTモノアニオン塩誘導体の含有量は60%であった。
負極活物質として粉末状のグラファイト1.8g、PVdF(株式会社クレハ製、KFポリマー 5%NMP溶液)4.0g、溶媒としてNMP2.4mLを遊星式攪拌機で10分間撹拌させて、負極スラリーを作製した。この負極スラリーをクリアランス300μmのアプリケーターを用いて銅箔上に塗工し、120℃で1時間乾燥させ、ロールプレス機で800kg/cm2の圧力でプレスして、負極活物質層を作製した。
前記負極活物質層とリチウム箔とを電解液中で10時間以上接触させて、リチウムイオンをドープした負極を作製した。電解液としては、LiPF6を1.0Mの濃度でエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(体積比3:7)に溶解させたものを用いた。
前記で得られた正極を、予め80℃の減圧雰囲気下で12時間乾燥させた。負極側外装、ステンレス金属板、負極、ポリプロピレン製多孔質膜のセパレータ、正極、ステンレス金属板、バネ、正極側外装の順に重ね、内部に電解液を入れてかしめることにより、国際電気標準会議(IEC)60086が定めるCR2032と同じ形状の非水電解質二次電池を製造した。
電解液としては、LiPF6を1.0Mの濃度でエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(体積比3:7)に溶解させたものを用いた。
前記非水電解質二次電池を充放電試験機(東洋システム株式会社製、TOSCAT-3100)に接続して、25℃、1.4~3.8Vの電圧範囲で、1.0Cレートで定電流充放電試験を200回繰り返し、容量維持率を算出した。
上記のCレートとは、リチウムイオン二次電池の全容量を1時間で充電または放電するために必要な電流値を1Cと定義し、例えば0.02Cとはその電流値の0.02倍を指す。
また、上記容量維持率とは、1~15回目間の最大放電容量に対する、100回目の放電容量の割合を容量維持率とした、下記式により定義した値である。下記式中、最大放電容量とは、1~15回目において放電容量が最大となるときのサイクル数における放電容量である。例えば、1~15回目における最大放電容量を100としたとき、100回目の放電容量が80であれば容量維持率は80%となる。
TOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体の種類、およびTOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体とCNTとPEDOT:PSSの混合比を表1のように変更した以外は、実施例1と同様の方法に正極を作製し、前記負極と組み合わせて非水電解質二次電池を製造して試験を行った。
PEDOT:PSSの代わりにPVdFを用いた以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を製造して試験を行った。
正極を次のようにして作製した以外は実施例1と同様の方法で非水電解質二次電池を製造した。アセチレンブラック(AB)30部、PVdF10部、H3TOT60部と、NMPを混合して遊星式攪拌機で10分間撹拌させ、混合液を作製した。クリアランス300μmのアプリケーターを用いてアルミ箔上に塗工し120℃で1時間乾燥した。これをロールプレス機で800kg/cm2の圧力でプレスして、正極を作製した。
正極を、CNTバッキーペーパー正極に変更した以外は実施例1と同様の方法で非水電解質二次電池を製造した。
エタノールにCNTを入れ、超音波照射しながら攪拌させることにより、CNT0.2%エタノール分散液を作製した。この分散液にH3TOT60部入れ、超音波照射しながら攪拌させることにより、CNTバッキーペーパー作製用分散液を作製した。この分散液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを通して減圧ろ過し、堆積物50℃で5時間乾燥させることによって、CNTバッキーペーパー正極を作製した。
比較例4では、CNT75部、PVdF25部と、溶媒であるNMPを混合して遊星式攪拌機で10分間撹拌させ、混合液を作製した。
比較例5では、CNT75部、PEDOT:PSS25部と、溶媒である水を混合して遊星式攪拌機で10分間撹拌させ、混合液を作製した。
これらの混合液を比較例2と同様にクリアランス300μmのアプリケーターを用いてアルミ箔上に塗工した。しかしながら、CNTの凝集が非常に強く、均一な正極の形成は困難であり、電池作製までに至らなかった。
比較例6では、CNT75部とPVdF25部とNMPとを超音波照射しながら攪拌させることにより、CNT0.2%のCNT/PVdF/NMPからなる混合液を作製した。
比較例7では、CNT75部、PEDOT:PSS25部と、溶媒である水を、超音波照射しながら攪拌させることにより、CNT0.2%のCNT/PEDOT:PSS/水からなる混合液を作製した。
これらの混合液を、実施例1と同様にエアブラシを用いて噴霧した。しかしながら、CNTの凝集が非常に強く、均一な正極の形成は困難であり、電池作製までに至らなかった。
実施例1~4および比較例1~7にて得られた非水電解質二次電池の評価結果を、表1に示す。
導電性高分子の代わりにバインダを用いた比較例1では、容量維持率は70%程度まで減少した。この結果から、正極にTOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体だけではなく導電性高分子を含むことが、サイクル特性向上に寄与しているといえる。
比較例2では、導電助剤としてAB、導電性高分子の代わりにバインダを用い、アプリケーターで塗工して作製した正極であり、広く一般に知られた二次電池正極の作製方法に準拠したものである。実施例1~4の本願発明の構成を満足するものと比較すると、容量維持率は60%未満と非常に低い結果であった。
導電性高分子を含まず、導電助剤の重量割合が高い比較例3では、TOT中性ラジカル誘導体および/またはTOTモノアニオン塩誘導体に対する導電助剤の重量割合が増加したことにより、正極の導電性が向上するものと考えられるが、実施例2と比較して、容量維持率が70%程度まで減少しており、サイクル特性が悪化しているといえる。したがって、導電性高分子は、単に導電性を向上させるだけでなく、導電助剤と組み合わせることによって相乗的にサイクル特性向上の効果をもたらすものであるといえる。
Claims (11)
- 下記式(1)で示されるトリオキソトリアンギュレン中性ラジカル誘導体および/または下記式(2)で示されるトリオキソトリアンギュレンモノアニオン塩誘導体、および導電性高分子を含み、バインダを含まない非水電解質二次電池の正極。
- 前記式(1)で示されるトリオキソトリアンギュレン中性ラジカル誘導体および/または前記式(2)で示されるトリオキソトリアンギュレンモノアニオン塩誘導体のXが水素原子である請求項1に記載の正極。
- 前記導電性高分子が、ポリチオフェン系高分子、ポリアセチレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリピロール系高分子、およびポリパラフェニレン系高分子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1または2に記載の正極。
- 前記導電性高分子が、ポリチオフェン系高分子より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~3のいずれかに記載の正極。
- 前記導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)を含む請求項1~4のいずれかに記載の正極。
- さらに導電助剤を含む請求項1~5のいずれかに記載の正極。
- 前記導電助剤が、カーボンブラック、天然グラファイト、合成グラファイト、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、および酸化グラフェン還元体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の正極。
- 前記導電助剤が、カーボンナノチューブである請求項6または7に記載の正極。
- 請求項1~8のいずれかに記載の正極を有する非水電解質二次電池。
- 下記式(1)で示されるトリオキソトリアンギュレン中性ラジカル誘導体および/または下記式(2)で示されるトリオキソトリアンギュレンモノアニオン塩誘導体、導電性高分子、および溶剤を含み、バインダを含まない混合液を、集電体にスプレー塗布する非水電解質二次電池の正極の製造方法。
- 前記混合液がさらに導電助剤を含む請求項10に記載の製造方法。
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