JP2014072129A - 蓄電デバイス用電極およびそれを用いた蓄電デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】エネルギー密度およびサイクル特性に優れる蓄電デバイス用電極およびそれを用いた蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】蓄電デバイス用電極を、集電体1に接する電極基層2と、電解質層4に接する電極表面層3とを備える積層構造とし、上記電極基層2および電極表面層3を、下記のように設定するようにした。
電極基層2 :活物質、導電助剤およびバインダーを含有する。
電極表面層3:導電性物質を含有し、電極表面の一部または全部として形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、蓄電デバイス用電極およびそれを用いた蓄電デバイスに関し、詳しくはエネルギー密度およびサイクル特性に優れる蓄電デバイス用電極およびそれを用いた蓄電デバイスに関するものである。
近年、携帯型PC、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等における電子技術の進歩、発展に伴い、これら電子機器の蓄電デバイスとして、繰り返し充放電することができる二次電池等が広く用いられている。このような二次電池等の電気化学的蓄電デバイスにおいては、高容量化およびハイレート化が望まれる。
蓄電デバイスの電極には、通常、イオンの挿入・脱離が可能な機能を有する活物質が含有されている。活物質のイオンの挿入・脱離は、いわゆるドーピング・脱ドーピングとも称され、一定の分子構造あたりのドーピング・脱ドーピング量をドープ率(またはドーピング率)と呼び、ドープ率が高い材料ほど、蓄電デバイスの高容量化が可能となる。なお、上記挿入・脱離されるイオンはドーパントと呼ばれる。
また、電気化学的には、イオンの挿入・脱離の量が多い材料を蓄電デバイスの電極材料として使用することにより、高容量化が可能となる。より詳しく述べると、蓄電デバイスとして注目されるリチウム二次電池においては、リチウムイオンを挿入・脱離することができるグラファイト系の電極が負極として用いられ、6つの炭素原子あたり1つ程度のリチウムイオンが挿入・脱離することにより、高容量化を得ている。
このようなリチウム二次電池のなかでも、正極にマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムのようなリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極にリチウムイオンを挿入・脱離し得る炭素材料を用いるようにし、両電極を電解液中で対峙させたリチウム二次電池は、高エネルギー密度を有するようになるため、上述した電子機器の蓄電デバイスとして広く用いられている。
しかし、上記リチウム二次電池は、電気化学反応によって電気エネルギーを得る二次電池であって、上記電気化学反応の速度が小さいために、出力密度が低いという問題がある。さらに、二次電池の内部抵抗が高いため、急速な放電は困難であるとともに、急速な充電も困難となっている。また、充放電に伴う電気化学反応によって電極や電解液が劣化するため、一般に短寿命、すなわち、サイクル特性がよくない。
上記の問題を改善するため、ドーパントを有するポリアニリンのような導電性ポリマーを正極の活物質に用いるリチウム二次電池が開発されている(特許文献1参照)。
しかしながら、一般に、導電性ポリマーを正極の活物質として有する二次電池は、充電時には導電性ポリマーにアニオンがドープされ、放電時にはそのアニオンがポリマーから脱ドープされるアニオン移動型である。そのため、負極の活物質にリチウムイオンを挿入・脱離し得る炭素材料等を用いる場合には、充放電時にカチオンが両電極間を移動するカチオン移動型のロッキングチェア型二次電池を構成することができない。すなわち、ロッキングチェア型二次電池は電解液量が少なくてすむという利点を有するが、上記導電性ポリマーを正極の活物質として有する二次電池はそれができず、蓄電デバイスの小型化を図ることができない。
このような問題を解決するために、電解液を大量に必要とせず、電解液中のイオン濃度を実質的に変化させないようにするとともに、体積や重量あたりの容量密度、エネルギー密度の向上を目的とした、カチオン移動型の二次電池も提案されている(特許文献2参照)。このものは、ドーパントとしてポリビニルスルホン酸のようなポリマーアニオンを有する導電性ポリマーを用いて正極を構成し、負極にリチウム金属を用いている。
特開平3−129679号公報 特開平1一132052号公報
しかしながら、上記二次電池は、性能において未だ充分ではない。すなわち、この二次電池は、正極にマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムのようなリチウム含有遷移金属酸化物を用いたリチウム二次電池に比べ、容量密度やエネルギー密度が低い、またサイクル特性に劣るといった問題がある。
本発明は、従来のリチウム二次電池のような蓄電デバイスにおける上述した問題を解決するためになされたものであって、エネルギー密度およびサイクル特性に優れる蓄電デバイス用電極およびそれを用いた蓄電デバイスを提供することをその目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、集電体に接する電極基層(A)と、電解質層に接する電極表面層(B)とを備える積層構造の電極であって、上記電極基層(A)および電極表面層(B)が、下記のように設定されている蓄電デバイス用電極を、第一の要旨とする。
電極基層 (A):活物質、導電助剤およびバインダーを含有する。
電極表面層(B):導電性物質を含有し、電極表面の一部または全部として形成される。
また、電解質層とこれを挟んで対峙する一対の正負の電極とを備える蓄電デバイスであって、上記一対の電極のうち、正極が上記第一の要旨に記載の蓄電デバイス用電極であり、負極がイオンを挿入・脱離し得る化合物およびイオンを挿入・脱離し得る化合物の金属の少なくとも一方を含む電極である蓄電デバイスを、第二の要旨とする。
すなわち、本発明者らは、エネルギー密度およびサイクル特性に優れる蓄電デバイスを得るために鋭意検討を重ねた。一般に、蓄電デバイス用電極において、導電助剤等の導電性物質の含有量を増やすと、エネルギー密度およびサイクル特性が向上することが知られているが、導電性物質の含有量を増加しすぎると、電極基層の層強度が小さくなり、活物質量の多い電極基層を形成することが困難になる。そこで、本発明者らは、充放電時のイオン移動をスムーズにすることによって蓄電デバイスの特性を高めることに着目し、検討を重ねた。そして、その検討のなかで、電解液等の電解質層と接する電極表面に、導電性物質を多量に含有する層を形成すると、充放電時のイオン移動がスムーズに行えるようになり、高いエネルギー密度およびサイクル特性が実現できることを見出し、本発明に到達した。
本発明の蓄電デバイス用電極は、集電体に接する電極基層(A)と、電解質層に接する電極表面層(B)とを備える積層構造を有し、上記電極基層(A)が活物質、導電助剤およびバインダーを含有するとともに、上記電極表面層(B)が導電性物質を含有し、電極表面の一部または全部として形成されている。このように、導電性物質の含有量が高い電極表面層(B)が電解質層に接することにより、電極基層(A)自体の導電性物質の含有量を高めなくても、充放電時における電解質層との間のイオン移動がスムーズに行えるようになっている。したがって、本発明の蓄電デバイス用電極を用いた蓄電デバイスは、エネルギー密度およびサイクル特性に優れるようになる。
また、上記電極基層および電極表面層が、いずれも多孔質であると、電解液がこれらの孔の中に入り込み、この部分で保持されるため、電解液の保持性が向上し、蓄電デバイスの容量維持率が向上するようになる。
さらに、上記蓄電デバイス用電極が正極として用いられ、その電極基層の活物質が導電性ポリマーであると、より優れたエネルギー密度を有する高性能な蓄電デバイスを提供できるようになる。
そして、上記蓄電デバイス用電極が正極として用いられ、その電極基層のバインダーがアニオン性ポリマーであると、より一層優れたエネルギー密度を有する高性能な蓄電デバイスを提供できるようになる。
また、電解質層とこれを挟んで対峙する一対の正負の電極とを備える蓄電デバイスであって、上記一対の電極のうち、正極が前記本発明の蓄電デバイス用電極であり、負極がイオンを挿入・脱離し得る化合物およびイオンを挿入・脱離し得る化合物の金属の少なくとも一方を含む電極である蓄電デバイスであると、エネルギー密度だけでなくサイクル特性にもより一層優れるようになる。
本発明の電極の一例を示す断面図である。 本発明の蓄電デバイスの一例を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明は、以下の内容に限定されない。
本発明の蓄電デバイス用電極(以下「電極」と略すことがある)は、図1に示すように、集電体1に接する電極基層2と、電解質層4に接する電極表面層3を備える積層構造の電極であり、この電極は、上記電極基層2が活物質、導電助剤およびバインダーを含有するとともに、上記電極表面層3が導電性物質を含有することを特徴とする。
この電極は、正極および負極のいずれにも用いることができるが、とりわけ、正極として用いることが好ましい。すなわち、上記電極は、図2に示すように、電解質層4とこれを挟んで対峙する一対の電極(正極2および3,負極5)が設けられた蓄電デバイスにおける正極として用いることができる。以下、これらについて順に説明する。
<電極について>
本発明の電極は、上述のとおり、電極基層2と電極表面層3とを備える積層構造を有している。集電体1上に電極基層2が形成され、電解質層4に接するように電極表面層3が形成されていれば、電極基層2と電極表面層3との間に他の層を含んでいてもよいが、電極基層2および電極表面層3の二層から本発明の電極が形成されることが好ましい。以下、電極基層2、電極表面層3について説明する。
〔電極基層〕
上記電極基層2は、少なくとも活物質、導電助剤およびバインダーを含有する。
(活物質について)
ここで活物質とは、少なくともイオンの挿入・脱離が可能な機能を有するものをいい、特にイオンの挿入・脱離により導電性が変化する物質であることが好ましい。例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリアズレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、およびこれらの置換体ポリマー等の導電性ポリマー系材料、あるいはポリアセン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン等のカーボン系材料があげられる。また、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム等の無機系材料もあげられる。特に、電気化学的容量の大きなポリアニリンまたはポリアニリン誘導体が特に好ましく用いられる。
上記ポリアニリンの誘導体としては、例えば、アニリンの4位以外の位置にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキル基等の置換基を少なくとも1つ有するものがあげられる。なかでも、o−メチルアニリン、o−エチルアニリン、o−フェニルアニリン、o−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン等のo−置換アニリン、m−メチルアニリン、m−エチルアニリン、m−メトキシアニリン、m−エトキシアニリン、m−フェニルアニリン等のm−置換アニリンが好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
ポリアニリンのような導電性ポリマー系材料は、通常、ドープ状態(イオンが挿入された状態)にあるが、ドープ状態にない場合には、ドープ処理を行うことによりドープ状態とすることができる。ドープ処理としては、具体的には、出発物質(例えば、アニリン)にドープする原子を含むドーパントを混ぜる方法、また生成物質(例えば、ポリアニリン)をドーパントと反応させる方法等があげられる。
上記活物質におけるイオンの挿入・脱離は、いわゆるドーピング・脱ドーピングとも称される。そして、一定の分子構造あたりのドーピング・脱ドーピング量をドープ率と呼び、ドープ率が高い材料ほど、電池としては高容量化が可能となる。なお、導電性を変化させるために挿入・脱離するイオンをドーパントと呼ぶことがある。
例えば、活物質である導電性ポリマーのドープ率は、ポリアニリンでは0.5、ポリピロールでは0.25程度であり、導電性ポリアニリンの導電性は、ドープ状態では100〜103S/cm程度、脱ドープ状態では、10-15〜10-2S/cmである。
したがって、活物質は、蓄電デバイスの充電時または放電時において、ドープ状態(放電時)であってもよいし、脱ドープ状態もしくは還元脱ドープ状態(充電時)であってもよい。
ところで、活物質を還元脱ドープ状態とするためには、活物質を直接還元脱ドープ状態とする方法もあるが、一般には、まず活物質を脱ドープ状態にし、つぎにこれを還元する工程を要する。そして、上記活物質の脱ドープ状態は、活物質が有するドーパントを中和することによって得られる。例えば、そのドーパントを中和する溶液中で活物質を撹拌し、その後洗浄濾過することにより、脱ドープ状態の活物質が得られる。具体的には、テトラフルオロホウ酸をドーパントとするポリアニリンを脱ドープ状態とするには、水酸化ナトリウム水溶液中でテトラフルオロホウ酸を撹拌し、中和する方法があげられる。
そして、上記脱ドープ状態の活物質を還元することにより、還元脱ドープ状態の活物質が得られる。例えば、脱ドープ状態の活物質を還元する溶液中で撹拌し、その後洗浄濾過することにより、還元脱ドープ状態の活物質が得られる。具体的には、脱ドープ状態となったポリアニリンを、フェニルヒドラジンのメタノール水溶液中で撹拌することにより還元する方法があげられる。
(バインダーについて)
つぎに、電極基層2を構成するバインダーとしては、例えば、フッ化ビニリデンやスチレン−ブタジエンゴムのようなバインダーが用いられる。また、このほかにも、ポリアニオンや分子量の比較的大きなアニオン化合物、電解液に溶解性の低いアニオン性ポリマー等を用いることができる。
なかでも、バインダーの主成分が上記アニオン性ポリマーからなることが好ましい。ここで、主成分とは、全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
またさらにアニオン性ポリマーの中でも、分子中にカルボキシル基を有する化合物が好ましく用いられ、とりわけポリカルボン酸がより好適に用いられる。
上記ポリカルボン酸としては、例えば、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリフマル酸、ポリグルタミン酸およびポリアスパラギン酸等があげられ、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸が特に好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記ポリカルボン酸としては、分子中にカルボキシル基を有する化合物のカルボン酸をリチウム型にするものがあげられる。リチウム型への交換率は、100%が理想であるが、必ずしもそうでなくてもよく、好ましくは40%〜100%である。
上記ポリカルボン酸などのポリマーをバインダーに用いた場合は、このポリマーがドーパントとしても機能することから、本発明に係る蓄電デバイスはロッキングチェア型の機構を有し、その特性の向上に関与するものとみられる。
上記バインダーは、活物質100重量部に対して、通常、1〜100重量部、好ましくは、2〜70重量部、最も好ましくは、5〜40重量部の範囲で用いられる。上記活物質に対するバインダーの量が少なすぎると、均一な電極が得られない傾向にあり、他方、上記活物質に対するバインダーの量が多すぎると、エネルギー密度の高い蓄電デバイスを得ることができない傾向にある。
(導電助剤について)
つぎに、電極基層2を構成する導電助剤は、蓄電デバイスの放電時に印加する電位によって性状の変化しない導電性材料であればよく、例えば、導電性炭素材料、金属材料等があげられ、なかでもアセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックや、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の繊維状炭素材料が好ましく用いられる。特に好ましくは導電性カーボンブラックである。
上記導電助剤は、活物質100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは、1〜30重量部、最も好ましくは、5〜20重量部の範囲で用いられる。上記活物質に対する導電助剤の量が少なすぎると、エネルギー密度の高い蓄電デバイスを得られない傾向にあり、他方、活物質に対する導電助剤の量が多すぎると、電極基層の層強度が小さくなり、活物質量の多い電極基層を得ることが困難となる傾向にある。
〔電極表面層〕
上記電極表面層3は、電解質層4に接するものであり、導電性物質を含有し、電極表面の一部または全部として形成される。ここで、導電性物質とは、例えば、炭素材料、金属、導電性ポリマー等があげられ、なかでも炭素材料が好ましく用いられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックや、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の繊維状炭素材料が用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、導電性物質以外の材料としては、バインダー、水、溶媒等があげられ、これらは攪拌・塗布等の必要に応じて用いられる。電極基層2に用いられる導電助剤と同様の材料を用いると、導電助剤同士の連結構造が形成され、よりスムーズな電子およびイオンの移動が実現され、高品質な電極を得ることができるため好ましい。
上記電極表面層3の導電性物質の配合量は、電極基層2の導電性よりも電極表面層の導電性が高くなるように設定されることが好ましく、例えば、電極表面層3を構成する材料の50重量%以上、さらには60重量%以上、特には70重量%以上であることがより好ましい。導電性物質が少なすぎると、蓄電デバイスに用いた際に、所望のエネルギー密度およびサイクル特性が得られない傾向にあり、反対に、導電性物質が多すぎると、電極表面層3が電極基層2から剥がれやすくなる傾向がみられる。
〔電極の作製について〕
本発明の電極は、上述のように、特殊な電極基層2および電極表面層3の積層構造を有しているが、この電極を構成する電極基層2は、例えば、つぎのようにして形成される。上記バインダーを水に溶解して水溶液とし、これに活物質と、導電性カーボンブラックのような導電助剤を加え、充分に分散させて、ペーストを調製する。これを集電体1上に塗布した後、水を蒸発させることによって、集電体1上に活物質、バインダー、および導電助剤の均一な混合物の層として、電極基層2(シート電極)を得ることができる。
つぎに、電極表面層3用の材料として、導電性物質を準備し、これをバインダーや水等に加え混練してペーストを調製する。これを例えば電極基層2上に塗布した後、水を蒸発させることによって、電極表面(電解液と接する面)の一部または全部として、多量の導電性物質が均一に含まれた電極表面層3(シート電極)を得ることができる。
そして、本発明の電極は、電解液の保持性向上のため多孔質からなることが好ましい。すなわち、電極基層2および電極表面層3のいずれもが多孔質であることが好ましい。とりわけ、電極基層2の多孔質孔径より電極表面層3の多孔質孔径の方が小さいと、より電解液保持性が向上し、これによって容量維持率も向上するようになる。
また、電極基層2はその表面において凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸構造の凹部を電極表面層3材料で埋めるように形成することが、より電解液保持性の点から好ましい。また、電極基層2の表面の凹凸構造を利用して電極表面層3がしっかりと電極基層2上に保持されるため、電極の優れた性能を長期間発揮させることができる点からも好ましい。なお、電極(電極基層2,電極表面層3)が多孔質からなる場合においては、電極基層2の凹凸構造を形成する凸部自体も多孔質層から形成されており、凹部に存在する電解液と凸部多孔質層中の電解液とが貫通孔により連結されている場合がある。
このような電極基層2の凹凸構造は、例えば、つぎのようにして形成することができる。すなわち、多孔質の電極基層2を作製するには、まず、活物質、バインダー、導電助剤、そして必要に応じて溶媒等を加えたスラリー状溶液を調製するが、このスラリー状溶液を調製する際の攪拌混合工程で、通常より大きな一定の分散径を有する分散状態となるように調製する。具体的には、上記攪拌混合工程において、元から存在する大きなある一定の分散径を残すように攪拌混合条件を制御する。
そして、上記スラリー状溶液の溶媒として、バインダーに対して溶解性が小さいものを用い、このスラリー状溶液を集電体1上に塗布し、乾燥することにより、比較的大きな分散径を有する多孔質の電極基層2を形成することができる。したがって、この電極基層2の表面は上記大きな分散径に起因する凹凸構造が形成される。
また、上記スラリー状溶液における分散径を制御する以外に、上記スラリー状溶液における活物質の粒子の円形度を小さくし、最密充填し難いようにすることによっても、電極基層2の凹凸構造を形成することが可能である。
<凹部の平均直径について>
上記のように電極基層2表面に凹凸構造を形成した場合、その凹凸構造の凹部の平均直径は、50〜10,000μmである。特に上記平均直径は、100〜10,000μmであることが好ましく、さらに好ましくは500〜5,000μmである。
ここで、上記凹部の平均直径は、次のようにして測定することができる。
まず、製造した電極(電極基層2)を厚み方向に切断し、測定試料を作製する。X線CTにより断層像を構築し、凸部間の距離が50μm以上ある個所を複数個所求め、その凸部間距離の平均値を凹部の平均直径とする。なお、作製した測定試料において、観察された凸部間距離が50μm未満である場合には、SEM観察を行い同様の操作により凸部間距離の平均値を求め、凹部の平均直径とする。
なお、電極基層2が多孔質からなる場合においては、上記凹部は多孔質層表面に形成されるが、上述のようにその凹部の平均直径は50〜10,000μmであるのに対し、多孔質層の孔の平均直径は5μm未満であり、両者は明らかに異なる。
なお、上記のように形成された電極は、蓄電デバイスの正極または負極として用いることができるが、正極として用いることがエネルギー密度の高い蓄電デバイスが得られることから好ましい。
また、本発明に係る電極を正極として用いる際には、その厚みは、1〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがさらに好ましい。
上記電極の厚みは、先端形状が直径5mmの平板である標準型ダイヤルゲージ(尾崎製作所社製)を用いて測定し、10点の測定値の平均をもとめることにより得られる。集電体1上に電極基層2および電極表面層3(いずれも多孔質層)が設けられ複合化している場合には、その複合化物の厚みを、上記と同様に測定し、測定値の平均をもとめた後、集電体1(アルミ箔)の厚みを差し引くことにより電極の厚みが得られる。
さらに、電極基層2のバインダーとしてアニオン性材料を用いる場合、上記活物質との混合物の層として配置されるため、上記アニオン性材料は正極内に固定される。そして、このように上記活物質の近傍に固定配置されたアニオン性材料のアニオンは、活物質の酸化還元時に電荷補償に使用される。
<電解質層について>
本発明の蓄電デバイスに用いる電解質層4は、電解質により構成されるが、例えば、セパレータに電解液を含浸させてなるシートや、固体電解質からなるシートが好ましく用いられる。なお、固体電解質からなるシートは、それ自体がセパレータを兼ねている。
上記電解質層材料は、溶質(電解質)と、必要に応じて溶媒と、各種添加剤とを用いて構成される。このような溶質(電解質)としては、例えば、リチウムイオンなどの金属イオンとこれに対する適宜のカウンターイオン、スルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、ハロゲンイオン等を組み合わせてなるもの等があげられる。具体的には、LiCF3SO3、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiCl等が好ましく用いられる。
上記必要に応じて用いられる溶媒としては、例えば、カーボネート類、ニトリル類、アミド類、エーテル類等の少なくとも1種の非水溶媒、すなわち、有機溶媒が用いられる。このような有機溶媒の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N'−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン等をあげることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、溶媒に溶質が溶解したものを「電解液」ということがある。
また、本発明においては、上述のように、セパレータを各種の態様で用いることができる。上記セパレータとしては、これを挟んで対峙して配置される正極と負極の間の電気的な短絡を防ぐことができ、さらに、電気化学的に安定であり、イオン透過性が大きく、ある程度の機械強度を有する絶縁性の多孔質シートであればよい。従って、上記セパレータの材料としては、例えば、紙、不織布や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド等の樹脂からなる多孔性のフィルムが好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
<負極について>
本発明の蓄電デバイスにおける負極としては、イオンを挿入・脱離し得る化合物およびイオンを挿入・脱離し得る化合物の金属の少なくとも一方(以下、「負極活物質」ということがある)を用いて形成される。上記負極活物質としては、金属リチウムや、酸化・還元時にリチウムイオンが挿入・脱離し得る炭素材料や遷移金属酸化物、シリコン、スズなどが好ましく用いられる。また、本発明において、「用いる」とは、その形成材料のみを使用する場合以外に、その形成材料と他の形成材料とを組み合わせて使用する場合も含める趣旨であり、通常、他の形成材料の使用割合は、その形成材料の50重量%未満に設定される。そして、負極の厚みは、正極の厚みに準ずることが好ましい。
<集電体>
上記集電体1および集電体6の材料としては、例えば、ニッケル、アルミ、ステンレス、銅等の金属箔や、メッシュ等があげられる。なお、正極集電体(例えば集電体1)と負極集電体(例えば集電体6)とは、同じ材料で構成されていても、異なる材料で構成されていても差し支えない(図2参照)。
<蓄電デバイスの製造について>
上記材料を用いた蓄電デバイスの製造について、図2にもとづき説明する。なお、蓄電デバイスの組立ては、グローブボックス中、超高純度アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
図2において、正極(電極基層2および電極表面層3)および負極5の集電体(1,6)としては、ニッケル、アルミ、ステンレス、銅等の金属箔やメッシュが適宜用いられる。そして、まず、この集電体1,6に、正極(電極基層2および電極表面層3)および負極5の電流取り出し用接続端子(タブ電極、図示せず)を、スポット溶接機にて接続して用いる。
つぎに、正極(電極基層2および電極表面層3)と、集電体1とを真空乾燥する。一方、露点−100℃のグローブボックス内にて金属リチウム箔等の負極活物質をステンレスメッシュに押しつけて、負極5と集電体6の複合体を作製する。
ついで、上記グローブボックス内にて、上記正極と負極5の複合体との間に所定枚数の各種セパレータ(図示せず)を挟み、これらをヒートシールされたラミネートセルの中に、正極と負極5とを正しく対峙させ、またショートしないように配置する。
そして、正極および負極5のタブ電極部分にシール剤をセットし、電解液注入口となるスペースを少し残して、タブ電極部分のヒートシールを行う。その後、所定量の電池電解液をマイクロピペットで吸引して、ラミネートセルの電解液注入口から所定量注入する。最後にラミネートセル上部の電解液注入口をヒートシールにて溶封し、本発明の蓄電デバイス(ラミネートセル)が完成する。
上記得られた本発明に係る蓄電デバイスは、上記ラミネートセル以外に、フィルム型、シート型、角型、円筒型、ボタン型等種々の形状に形成される。また、蓄電デバイスの正極サイズとしては、ラミネートセルであれば1辺が、1〜300mmであることが好ましく、特に好ましくは10〜50mmである。また、負極サイズは1〜400mmであることが好ましく、特に好ましくは10〜60mmである。負極サイズは、正極サイズより、わずかに大きくすることが好ましい。
本発明の蓄電デバイスは、電気二重層キャパシタと同様に、重量出力密度とサイクル特性に優れる。そして、それだけでなく、本発明の蓄電デバイスは、電気二重層キャパシタの重量エネルギー密度よりも非常に高い重量エネルギー密度を有する。そのため、本発明の蓄電デバイスは、キャパシタ的蓄電デバイスであると言える。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例,比較例となる蓄電デバイスの製造に先立ち、下記に示す各成分を調製・準備した。
〔活物質の調製〕
活物質として、テトラフルオロホウ酸をドーパントとする導電性ポリアニリン粉末を下記のように調製した。
(導電性ポリアニリン粉末)
イオン交換水138gを入れた300mL容量のガラス製ビーカーに、42重量%濃度のテトラフルオロホウ酸水溶液(和光純薬工業社製、試薬特級)84.0g(0.402モル)を加え、磁気スターラーにて撹拌しながら、さらにアニリン10.0g(0.107モル)を加えた。テトラフルオロホウ酸水溶液にアニリンを加えた当初は、アニリンは、テトラフルオロホウ酸水溶液に油状の液滴として分散していたが、その後、数分以内に水に溶解し、均一で透明なアニリン水溶液になった。このようにして得られたアニリン水溶液を低温恒温槽を用いて−4℃以下に冷却した。
つぎに、上記アニリン水溶液に、酸化剤として二酸化マンガン粉末(和光純薬工業社製、試薬1級)11.63g(0.134モル)を、ビーカー内の混合物の温度が−1℃を超えないように少量ずつ加えた。このように、アニリン水溶液に酸化剤を加えることによって、アニリン水溶液は直ちに黒緑色に変化し、しばらく撹拌を続けると、黒緑色の固体が生成し始めた。
上記アニリン水溶液への酸化剤の添加を80分間かけて行った後、生成した反応生成物(黒緑色の固体)を含む反応混合物を、さらに100分間、冷却しながら撹拌した。その後、ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて、得られた反応生成物をNo.2濾紙にて吸引濾過して、粉末を得た。この粉末を約2モル/Lのテトラフルオロホウ酸水溶液中にて磁気スターラーを用いて撹拌、洗浄した。ついで、アセトンにて数回、撹拌、洗浄し、これを減圧濾過した。得られたものを室温(25℃)で10時間真空乾燥することにより、テトラフルオロホウ酸をドーパントとする導電性ポリアニリン粉末12.5gを得た。この導電性ポリアニリン粉末は鮮やかな緑色であった。
(導電性ポリアニリン粉末の電導度)
上記導電性ポリアニリン粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測定用KBr錠剤成形器を用い、75MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、厚み720μmの導電性ポリアニリンのディスクを得た。ファン・デル・ボー法による4端子法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は、19.5S/cmであった。
(脱ドープ状態の導電性ポリアニリン粉末)
上記により得られた導電性ポリアニリン粉末はドープ状態にあるが、このドープ状態の導電性ポリアニリン粉末を2モル/L水酸化ナトリウム水溶液中に入れ、3Lセパラブルフラスコ中にて30分間撹拌し、中和反応によりドーパントのテトラフルオロホウ酸を脱ドープした。そして、この脱ドープしたポリアニリンを濾紙の上に置き、濾液が中性になるまで水洗した。その後、さらにこの脱ドープしたポリアニリンをアセトン中で撹拌洗浄し、ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて減圧濾過し、No.2濾紙上に、脱ドープしたポリアニリンを得た。これを室温下、10時間真空乾燥して、脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。この脱ドープ状態のポリアニリン粉末は茶色であった。
(還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末)
つぎに、上記得られた脱ドープ状態のポリアニリン粉末をフェニルヒドラジンのメタノール水溶液中に入れ、撹拌下30分間還元処理を行った。上記脱ドープ状態のポリアニリン粉末の色は、還元により、茶色から灰色に変化した。反応後、メタノール洗浄およびアセトン洗浄をこの順で行い、ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて減圧濾過し、No.2濾紙上に、還元脱ドープしたポリアニリンを得た。これを室温下、10時間真空乾燥して、還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。
(還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末の電導度)
上記還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測定用KBr錠剤成形器を用い、75MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、厚み720μmの還元脱ドープ状態のポリアニリンのディスクを得た。ファン・デル・ボー法による4端子法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は、5.8×10-3S/cmであった。
〔バインダー溶液の準備〕
ポリアクリル酸(和光純薬工業社製、重量平均分子量100万)を水に加えて加熱攪拌して溶解し、4.4重量%濃度の均一で粘稠なポリアクリル酸水溶液20.5gを得た。このポリアクリル酸水溶液に水酸化リチウム0.15gを加えて溶解させ、アクリル酸部位の50%がリチウムに置換したポリアクリル酸−ポリアクリル酸リチウム複合体溶液(バインダー溶液)を準備した。
〔負極の準備〕
負極5として、厚み50μmの金属リチウム箔(本城金属社製、コイン型金属リチウム)を準備した。
〔電解液の準備〕
1モル/dm3濃度のテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)のエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート溶液(キシダ化学社製)を準備した。
〔セパレータの準備〕
不織布(宝泉社製、TF40−50(空孔率:55%))を準備した。
〔タブ電極〕
正極の電流取り出し用タブ電極として、厚み50μmのアルミ金属箔を準備し、負極5の電流取り出し用タブ電極として、厚み50μmのニッケル金属箔を準備した。
〔集電体〕
正極用集電体1として、厚み30μmのアルミ箔(宝泉社製、電気二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔)を準備し、負極用集電体6として、厚み180μmのステンレスメッシュを準備した。
〔実施例1〕
<電極基層2を形成>
上記調製した還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末4gと、アセチレンブラック粉末(電気化学工業社製、デンカブラック)0.5gと、さらに水4gとを混合した後、これを上記準備したバインダー溶液20.5g中に加え、スパチュラでよく練った。これを超音波式ホモジナイザーにて5分間超音波処理を施し、フィルミックス40−40型(プライミックス社製)を用いて流動性を有するペーストを得た。このペーストをさらに3分間脱泡操作(シンキー社製、あわとり練太郎)を行い、脱泡ペーストを得た。
上記脱泡ペーストを、卓上型自動塗工装置(テスター産業社製)を用い、マイクロメーター付きドクターブレ−ド式アプリケータによって、溶液塗工厚みを360μmに調整し、塗布速度10mm/秒にて、正極用集電体1上に塗布した。これを室温で45分間放置した後、さらに温度100℃のホットプレート上で乾燥することにより、正極用集電体1の上に、その表面が凹凸構造を有する電極基層2(多孔質のポリアニリンシート電極)を形成した。
<電極表面層3を形成>
つぎに、アセチレンブラック5.37g、前記バインダー溶液24.63g及び水21.06gを混合し、電極基層2と同様に超音波式ホモジナイザーとフィルミックス40−40型を用いてペーストを作製した。このペーストを、電極基層2の形成の際と同様に、脱泡後、卓上型自動塗工装置を用い、ワイヤーバーを用いて、上記電極基層2表面の凹部を埋めながらその全面に塗布した。塗布後、電極基層2の形成の際と同様に室温乾燥した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥することにより、電極基層2上に電極表面層3(アセチレンブラックからなる多孔質層)を形成した。
上記得られた電極(電極基層2,電極表面層3)のポリアニリン/ポリアクリル酸リチウム/アセチレンブラックの重量分率は63.1/17.1/19.8であった。
<蓄電デバイスの作製>
上記により得られた電極(電極基層2,電極表面層3)を正極として用い、その他準備した上記材料を用いて、蓄電デバイス(リチウム二次電池)の組立をつぎに示す。
蓄電デバイスの組立てはグローブボックス中、超高純度アルゴンガス雰囲気下にて行った(グローブボックス内の露点:−100℃)。
また、上記により得られた電極(正極)の電極サイズは27mm×27mmとし、負極5のサイズは29mm×29mmとし、負極サイズを正極サイズより、わずかに大きくした。
まず、正極および負極のタブ電極の金属箔を、対応する集電体(1,6)の金属箔にスポット溶接機にてそれぞれ接続した。そして、正負の電極のそれぞれに上記タブ電極をスポット溶接機にて取り付け、これらをセパレータとともに80℃にて2時間、真空乾燥した。その後、正負の電極およびセパレータを露点−100℃に設定したグローブボックスに入れるとともに、グローブボックス内にて、負極5(金属リチウム箔)を集電体6(ステンレスメッシュ)に押しつけてめり込ませて、負極と集電体の複合体を作製した。
つぎに、グローブボックス内にて、この正極2,3と負極5の複合体の間に各種セパレータを挟み、これらを三方がヒートシールされたラミネートセルの中にセットし、正極と負極を正しく対峙させ、またショートしないようにセパレータの位置を調整し、正極および負極用タブ部分にシール剤をセットした上で、電解液注入口とするスペースを少し残して、タブ電極部分のヒートシールを行った。その後、所定量の電解液をマイクロピペットで吸引して、上記電解液注入口からラミネートセル内に所定量注入した。最後にラミネートセル上部の電解液注入口をヒートシールにて溶封し、ラミネートセルとして蓄電デバイス(リチウム二次電池)完成させた。
〔実施例2〕
実施例1の電極表面層3の作製時において、ワイヤーバーに代えて、ステンレス製丸棒(ワイヤーレスのバー)で電極表面層3を形成した以外は、実施例1同様に電極を作製し、これを用いて蓄電デバイス(リチウム二次電池)を作製した。ステンレス製丸棒で電極表面層3を形成すると、電極基層2表面の凹部へのペーストの充填が若干甘く、形成された電極表面層3の表面が多少の凹凸を有していた。
上記得られた電極(電極基層2,電極表面層3)のポリアニリン/ポリアクリル酸リチウム/アセチレンブラックの重量分率は69.7/13.2/17.1であった。
〔比較例1〕
電極基層2上に電極表面層3(アセチレンブラック層)を形成しない以外は、実施例1と同様に電極を作製し、これを用いて蓄電デバイス(リチウム二次電池)を作製した。すなわち、比較例1の正極は、電極基層2のみからなっている。
上記得られた電極(電極基層2)のポリアニリン/ポリアクリル酸リチウム/アセチレンブラックの重量分率は74.2/8.7/17.1であった。
〔比較例2〕
実施例1の電極基層2のペーストとして、下記(α)の組成のペーストを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基層2を作製し、電極表面層3は形成しなかった。
(α)前記ポリアニリン粉末4gと導電性アセチレンブラック粉末(電気化学工業社製、デンカブラック)1.08gと水4gとを混合した後、これを前記ポリアクリル酸−ポリアクリル酸リチウム複合体溶液24.0g中に加えた。
上記得られた電極(電極基層2)は、ヒビワレ及びアルミ基板からの剥離が生じ、蓄電デバイス(リチウム二次電池)の製造に供することが出来なかった。
[比較例3]
実施例1の電極基層2のペーストとして、アセチレンブラックの総量を実施例1の電極基層および電極表面層におけるアセチレンブラックの合計量と同量にした以外は、実施例1と同様のペーストを調整した。このペーストを用いて電極を作製しようとしたが、剥離が起こり電極を作製することができなかった。
このようにして得られた各蓄電デバイス(リチウム二次電池)について、前記した電極の厚み測定方法に加え、下記の測定方法に従って、各種特性(重量エネルギー密度および放電容量維持率)を測定・評価し、その結果を後記の〔表1〕に示した。
<重量エネルギー密度(Wh/kg)>
各蓄電デバイスを、電池充放電装置(北斗電工社製、SD8)を用いて、25℃の環境下で、定電流一定電圧充電/定電流放電モードにて測定を行った。すなわち、充電終止電圧を3.8Vに設定するとともに、定電流充電により電圧が3.8Vに到達した後は、3.8Vの定電圧充電を2分間行い、その後、放電終止電圧2.0Vまで5時間かけて全容量を充放電するように設定した時の、0.2C放電時の重量エネルギー密度(Wh/kg)を測定した。
<放電容量維持率(%)>
ポリアニリンの重量容量密度を150mAh/gとし、各蓄電デバイスに含まれるポリアニリン量から全容量密度(mAh)を算出し、この全容量密度(mAh)を上記電池充放電装置(北斗電工社製、SD8)を用いて定電流一定電圧充電/定電流放電モードにて、1時間で充電する速さを1C充放電とした。
そして、各蓄電デバイスについて、0.05Cの充放電を5回繰り返し、その後0.2C充放電を20回繰り返し行った際の、0.2C充放電の20回目の容量密度を、1回目(0.2C充放電20回のうちの1回目)の容量密度で除し、これに100を乗じて放電容量維持率(%)とした。
なお、ここで「1C」とは、上述のように、組み立てた各蓄電デバイスを用いて、定電流充電もしくは放電して、1時間で充電もしくは放電終了となる電流値を意味し、「0.05C」とは、20時間で充電もしくは放電終了となる電流値を意味する。また、「0.2C」とは、5時間で充電もしくは放電終了となる電流値を意味する。
Figure 2014072129
上記表1の実施例1および2から明らかなように、電極基層2に加えて電極表面層3を有する本実施例品の電極は、重量エネルギー密度が高く、放電容量維持率も高いことからサイクル特性に優れることが分かった。
これに対して電極基層2のみからなる比較例1は、実施例品ほどの優れたサイクル特性を有しないことが分かった。また、実施例1の電極(電極基層2および電極表面層3)に用いた材料と同じ重量分率の材料を用いて電極基層2の一層のみからなる電極を作製した比較例2は、ひび割れ、アルミ板からの剥離が生じたため、蓄電デバイス自体の作製ができないものであった。比較例3は、先に述べたように電極基層2内で剥離が生じ電極自体作製できないものであった。
本発明の電極は、リチウム二次電池等の蓄電デバイスに好適に用いられる。また、本発明の蓄電デバイスは、従来の二次電池と同様の用途に使用でき、例えば、携帯型PC、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等の携帯用電子機器や、ハイブリッド電気自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の駆動用電源に広く用いられる。
1 集電体
2 電極基層
3 電極表面層
4 電解質層
5 負極
6 (負極用)集電体

Claims (5)

  1. 集電体に接する電極基層(A)と、電解質層に接する電極表面層(B)とを備える積層構造の電極であって、上記電極基層(A)および電極表面層(B)が、下記のように設定されていることを特徴とする蓄電デバイス用電極。
    電極基層 (A):活物質、導電助剤およびバインダーを含有する。
    電極表面層(B):導電性物質を含有し、電極表面の一部または全部として形成される。
  2. 上記電極基層および電極表面層が、いずれも多孔質である請求項1記載の蓄電デバイス用電極。
  3. 上記蓄電デバイス用電極が正極として用いられ、その電極基層の活物質が導電性ポリマーである請求項1または2記載の蓄電デバイス用電極。
  4. 上記蓄電デバイス用電極が正極として用いられ、その電極基層のバインダーがアニオン性ポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用電極。
  5. 電解質層とこれを挟んで対峙する一対の正負の電極とを備える蓄電デバイスであって、上記一対の電極のうち、正極が請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用電極であり、負極がイオンを挿入・脱離し得る化合物およびイオンを挿入・脱離し得る化合物の金属の少なくとも一方を含む電極であることを特徴とする蓄電デバイス。


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