JP2015225753A - 蓄電デバイス - Google Patents

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敦子 水池
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慶裕 植谷
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豊 岸井
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Abstract

【課題】高い容量密度を有しつつ電極形成性にも優れる蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】電解質層と、これを挟んで対向して設けられた正極と負極とを有する蓄電デバイスであって、上記正極が、導電性ポリマー(a)と、ポリカルボン酸およびその金属塩の少なくとも一方(b)と、導電助剤(c)とを含み、かつ、上記導電助剤(c)が略球状炭素材料(c1)と繊維状炭素材料(c2)とを含有することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、高い容量密度を有しつつ電極形成性にも優れる蓄電デバイスに関するものである。
近年、携帯型PC、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等における電子技術の進歩、発展に伴い、これら電子機器の蓄電デバイスとして、繰り返し充放電することができる二次電池等が広く用いられている。このような二次電池等の電気化学的蓄電デバイスにおいては、電極として使用する材料の高容量化が望まれる。
蓄電デバイスの電極は、イオンの挿入・脱離が可能な機能を有する活物質を含有する。活物質のイオンの挿入・脱離は、いわゆるドーピング・脱ドーピングとも称され、一定の分子構造あたりのドーピング・脱ドーピング量をドープ率(またはドーピング率)と呼び、ドープ率が高い材料ほど、電池としては高容量化が可能となる。
電気化学的には、イオンの挿入・脱離の量が多い材料を電極として使用することにより、電池として高容量化が可能となる。より詳しく述べると、蓄電デバイスとして注目されるリチウム二次電池においては、リチウムイオンを挿入・脱離することができるグラファイト系の負極が用いられ、6つの炭素原子あたり1つ程度のリチウムイオンが挿入・脱離し高容量化が得られている。
このようなリチウム二次電池のなかでも、正極にマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムのようなリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極にリチウムイオンを挿入・脱離し得る炭素材料を用い、両電極を電解液中で対峙させたリチウム二次電池は、高エネルギー密度を有するようになるため、上記した電子機器の蓄電デバイスとして広く用いられている。
しかし、上記リチウム二次電池は、電気化学反応によって電気エネルギーを得る二次電池であって、上記電気化学反応の速度が小さいために、出力密度が低いという欠点がある。さらに、二次電池の内部抵抗が高いため、急速な放電は困難であるとともに、急速な充電も困難となっている。また、充放電に伴う電気化学反応によって電極や電解液が劣化するため、一般に寿命、すなわち、サイクル特性もよくない。
そこで、上記の問題を改善するため、ドーパントを有するポリアニリンのような導電性ポリマーを正極活物質に用いるリチウム二次電池も知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、一般に、導電性ポリマーを正極活物質として有する二次電池は、充電時には導電性ポリマーにアニオンがドープされ、放電時にはそのアニオンがポリマーから脱ドープされるアニオン移動型である。そのため、負極活物質にリチウムイオンを挿入・脱離し得る炭素材料等を用いたときは、充放電時にカチオンが両電極間を移動するカチオン移動型のロッキングチェア型二次電池を構成することができない。すなわち、ロッキングチェア型二次電池は電解液量が少なくてすむという利点を有するが、上記導電性ポリマーを正極活物質として有する二次電池はそれができず、蓄電デバイスの小型化に寄与することができない。
このような問題を解決するために、電解液を大量に必要とせず、電解液中のイオン濃度を実質的に変化させないとともに、これにより体積や重量あたりの容量密度、エネルギー密度の向上を目的とした、カチオン移動型の二次電池も提案されている。これは、ドーパントとしてポリビニルスルホン酸のようなポリマーアニオンを有する導電性ポリマーを用いて正極を構成し、負極にリチウム金属を用いているものである(特許文献2参照)。
特開平3−129679号公報 特開平1−132052号公報
しかしながら、上記のような導電性ポリマーをベースとする正極を有する蓄電デバイスにおいては、高出力特性を得るために導電助剤を大量に添加する必要があったが、導電助剤を大量に添加すると電極が脆くなり、電極形成性が悪く実用性に欠くものであった。
そこで、本発明は上記した問題を解決するためになされたものであって、高い容量密度を有しつつ電極形成性にも優れる蓄電デバイスを提供することをその目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、電解質層と、これを挟んで対向して設けられた正極と負極とを有する蓄電デバイスであって、上記正極が、導電性ポリマー(a)と、ポリカルボン酸およびその金属塩の少なくとも一方(b)と、導電助剤(c)とを含み、かつ、上記導電助剤(c)が略球状炭素材料(c1)と繊維状炭素材料(c2)とを含有する蓄電デバイスを、要旨とする。
すなわち、本発明者らは、導電性ポリマー(a)を含む正極の構成を有する蓄電デバイスにおいて、高出力特性を有しつつ、電極形成性にも優れる電池を得るために鋭意検討を重ねた。その過程で、導電助剤(c)の粒子形状に着目して各種実験した結果、略球状の導電助剤とともに繊維状の導電助剤を併せて用いると、従来では充填することができなかった高充填量の導電助剤(c)を良好な電極形成性を維持しながら充填することができるため優れた容量密度を実現するとともに、従来と同様の充填量の導電助剤(c)を用いた場合には、驚くべきことに電流レートのほぼ全ての領域に渡って従来より高い容量密度を実現できることを見出し、本発明に到達した。
このように、本発明は、電解質層と、これを挟んで対向して設けられた正極と負極とを有する蓄電デバイスであって、上記正極が、導電性ポリマー(a)と、ポリカルボン酸およびその金属塩の少なくとも一方(b)と、導電助剤(c)とを含み、かつ、上記導電助剤(c)が略球状炭素材料(c1)と繊維状炭素材料(c2)とを含有することから、高い容量密度を有しつつ電極形成性にも優れるようになる。特に、従来と同量の導電助剤(c)であれば、電流レートのほぼ全ての領域に渡って高い容量密度を実現できる。
また、上記繊維状炭素材料(c2)の平均繊維径が30〜200nmであると、さらに電極形成性に優れるようになる。
上記繊維状炭素材料(c2)のアスペクト比が10〜1,000であると、さらに容量密度に優れるようになる。
さらに、上記略球状炭素材料(c1)と繊維状炭素材料(c2)との含有割合が、重量比(c1/c2)で、10/90〜90/10であると、より一層電極形成性に優れるようになる。
また、上記導電助剤(c)の含有量が、正極全体に対し5〜40重量%、好ましくは8〜35重量%であると、より一層電極密度に優れるようになる。
そして、 上記導電性ポリマー(a)が、ポリアニリンおよびポリアニリン誘導体の少なくとも一方であると、エネルギー密度等の電池性能の一層の向上が得られるようになる。
さらに、上記(b)のポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、アルギン酸、カルボキシルメチルセルロース、およびこれらポリマーの繰り返し単位の少なくとも1種を含む共重合体から選ばれる少なくとも1種であると、さらなるエネルギー密度等の電池性能の向上が得られるようになる。
そして、上記(b)のポリカルボン酸金属塩が、ポリカルボン酸アルカリ金属塩およびポリカルボン酸アルカリ土類金属塩の少なくとも一方であると、さらなるエネルギー密度等の電池性能の向上が得られるようになる。
蓄電デバイスの一例を示す断面図である。 実施例1の正極断面を拡大した走査型電子顕微鏡(FE−SEM)写真を示す。 実施例1および比較例1の蓄電デバイスについて、電流レート(C)に対する容量密度(mAh/g)を表したグラフ図を示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明は、以下の内容に限定されない。
本発明の蓄電デバイスは、例えば、図1に示すように、電解質層3と、これを挟んで対向して設けられた正極2と負極4とを有する蓄電デバイスであって、上記正極2が、導電性ポリマー(a)と、ポリカルボン酸およびその金属塩の少なくとも一方(b)と、導電助剤(c)とを含み、かつ、上記導電助剤(c)が略球状炭素材料(c1)と繊維状炭素材料(c2)とを含有することを特徴とする。
以下、上記各部材および使用材料等について順を追って説明する。
<正極2について>
〔導電性ポリマー(a)〕
上記のように、蓄電デバイスに係る正極2は、導電性ポリマー(a)粒子を含有するため、まず導電性ポリマー(a)について述べる。
まず、本発明における導電性ポリマー(a)とは、ポリマー主鎖の酸化反応または還元反応によって生成し、または消失する電荷の変化を補償するために、イオン種がポリマーに挿入し、またはポリマーから脱離することによって、ポリマー自身の導電性が変化する一群のポリマーをいう。
このようなポリマーにおいて、導電性が高い状態をドープ状態といい、低い状態を脱ドープ状態という。導電性を有するポリマーが酸化反応または還元反応によって導電性を失い、絶縁性(すなわち、脱ドープ状態)となっても、そのようなポリマーは、酸化還元反応によって再度、可逆的に導電性を有することができるので、このように脱ドープ状態にある絶縁性のポリマーも、本発明においては、導電性ポリマー(a)の範疇に入れることとする。
また、好ましい導電性ポリマー(a)の1つとしては、無機酸アニオン、脂肪酸スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、ポリマースルホン酸アニオンおよびポリビニル硫酸アニオンからなる群から選ばれた少なくとも1つのプロトン酸アニオンをドーパントとして有するポリマーである。また、本発明において好ましい別の導電性ポリマー(a)としては、上記導電性ポリマーを脱ドープした脱ドープ状態のポリマーである。
上記導電性ポリマー(a)の具体例としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリアズレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等や、これらの種々の誘導体があげられる。なかでも、電気化学的容量の大きなポリアニリンおよびポリアニリン誘導体が好ましく用いられる。
本発明において、上記ポリアニリンとは、アニリンを電解重合させ、または化学酸化重合させて得られるポリマーをいい、ポリアニリンの誘導体とは、例えば、アニリンの誘導体を電解重合させ、または化学酸化重合させて得られるポリマーをいう。
ここでアニリンの誘導体としてより詳しくは、アニリンの4位以外の位置にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキル基等の置換基を少なくとも1つ有するものを例示することができる。好ましい具体例としては、例えば、o−メチルアニリン、o−エチルアニリン、o−フェニルアニリン、o−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン等のo−置換アニリン、m−メチルアニリン、m−エチルアニリン、m−メトキシアニリン、m−エトキシアニリン、m−フェニルアニリン等のm−置換アニリンがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また本発明においては、4位に置換基を有するものでも、p−フェニルアミノアニリンは、酸化重合によってポリアニリンが得られるので、アニリン誘導体として好適に用いることができる。
以下、本発明において、「アニリンまたはその誘導体」を単に「アニリン」ということがあり、また、「ポリアニリンおよびポリアニリン誘導体の少なくとも一方」を単に「ポリアニリン」ということがある。したがって、導電性ポリマー(a)を構成するポリマーがアニリン誘導体から得られる場合であっても、「導電性ポリアニリン」ということがある。
上記導電性ポリアニリンは、既によく知られているように、適宜の溶媒中、アニリンをプロトン酸の存在下に電解重合し、または酸化剤を用いて化学酸化重合させることによって得ることができるが、好ましくは、適宜の溶媒中、プロトン酸の存在下にアニリンを酸化剤にて酸化重合させることによって得ることができる。上記溶媒としては、通常、水が用いられるが、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒や、また、水と非極性有機溶媒との混合溶媒も用いられる。この場合には、界面活性剤等を併用することもある。
また、正極2では、さらにポリカルボン酸およびその金属塩の少なくとも一方(b)を有する。以下、(b)成分について説明する。
〔ポリカルボン酸およびその金属塩の少なくとも一方(b)について〕
本発明において、上記ポリカルボン酸とは、分子中にカルボキシル基を有するポリマーをいう。上記ポリカルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、アルギン酸、カルボキシルメチルセルロース、およびこれらポリマーの繰り返し単位の少なくとも1種を含む共重合体等が好ましく用いられ、なかでもポリアクリル酸およびポリメタクリル酸がより好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。特に、ポリカルボン酸を用いた場合は、ポリカルボン酸がバインダーとしての機能を有するとともに、ドーパントとしても機能することから、蓄電デバイスの特性が向上する。
また、上記ポリカルボン酸金属塩は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩をいい、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。アルカリ金属塩は、好ましくは、リチウム塩やナトリウム塩であり、上記アルカリ土類金属塩は、好ましくは、マグネシウム塩やカルシウム塩である。
上記(b)は、導電性ポリマー(a)との混合物の層として配置されるため、正極2内に固定される。そして、このように導電性ポリマー(a)の近傍に固定配置された(b)は、導電性ポリマー(a)の酸化還元時に電荷補償に使用される。
さらに、正極2の材料には、上記(a)成分および(b)成分に加え、導電助剤(c)を含有する。以下、導電助剤(c)について説明する。
〔導電助剤(c)〕
上記導電助剤(c)は、蓄電デバイスの放電時に印加する電位によって性状の変化しない導電性材料であって、例えば、導電性炭素材料、金属材料等があげられ、本発明においては略球状炭素材料(c1)と繊維状炭素材料(c2)を含有する。
ここで、略球状炭素材料(c1)とは、楕円球状、多面体等をも含めた球体に近似できる形状を意味し、真球も含む炭素材料をいう。上記楕円球状とは、アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)が5以下のものであり、好ましくは3以下である。このような略球状炭素材料(c1)としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックがあげられる。ここで、上記アスペクト比の測定は、正極断面を撮影したSEM写真に表れている導電助剤(c)から無作為に抽出した50個の導電助剤(c)を測定し、測定値の平均値を算出することにより得られる。
また、上記繊維状炭素材料(c2)とは、上記アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)が10以上の炭素材料をいい、形状については直線状であっても曲線状であってもよく、その一部に直線部および/または曲線部を有する形状であってもよい。また、繊維状炭素材料(c2)の平均繊維径は30〜200nmであることが好ましく、さらに50〜160nmであることがより好ましい。上記繊維状炭素材料(c2)のアスペクト比はさらに10〜1,000、特に30〜900であることが好ましい。このような繊維状炭素材料(c2)としては、例えば、導電性があるカーボン繊維や単層および多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等があげられる。これらの市販品としては、例えば、昭和電工社製のVGCF(平均繊維径150nm、繊維長10μm)、VGNF(平均繊維径80nm)、VGNT(ナノチューブ)、三菱マテリアル電子化成社製のCNF−T、保土谷化学社製のNT−7(平均繊維径65nm)、CT−12(平均繊維径120nm)、CT−15(平均繊維径150nm)等があげられる。
上記略球状炭素材料(c1)および繊維状炭素材料(c2)は、導電助剤(c)の主成分であることが好ましい。ここで、主成分とは、全体の過半を示す成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
また、上記導電助剤(c)の略球状炭素材料(c1)と繊維状炭素材料(c2)との含有割合は、重量比(c1/c2)で、10/90〜90/10であることが容量密度向上の点から好ましく、さらに25/75〜80/20、特に30/70〜75/25であることが好ましい。
上記導電助剤(c)の含有量は、正極全体に対し5〜50重量%であることが容量密度と電極形成性とのバランスから好ましく、さらに10〜40重量%であることが好ましい。
さらに、正極2の材料には、上記(a)〜(c)成分に加え、必要に応じて、バインダー、水等を適宜加えることができる。
また、上記導電性ポリマー(a)とともに用いられるバインダーとしては、上記(b)成分以外に、例えば、フッ化ビニリデン等があげられる。
〔正極2の作製について〕
蓄電デバイスに係る正極2は、例えば、つぎのようにして形成される。上記導電性ポリマー(a)に、ポリカルボン酸およびその金属塩の少なくとも一方(b)と、導電助剤(c)と、必要に応じてバインダーと、水とを加えて、充分に分散させてスラリーを調製する。そして、これを集電体上に塗布した後、水を蒸発させる等によって、上記スラリーをシート状に賦形する。これによって、集電体上に(a)〜(c)成分と、任意材料等との混合物の層からなる正極2(シート電極)を得ることができる。
上記正極2の厚みは、通常、1〜500μmであり、好ましくは10〜300μmである。上記正極2の厚みは、例えば、先端形状が直径5mmの平板であるダイヤルゲージ(尾崎製作所社製)を用いて測定し、電極の面に対して10点の測定値の平均を求めることにより算出できる。なお、集電体上に正極2(多孔質層)が設けられ複合化している場合には、その複合化物の厚みを上記と同様に測定して測定値の平均を求め、この値から集電体の厚みを差し引いて計算することにより正極2の厚みが求められる。
<電解質層3について>
上記電解質層3は、電解質により構成されるが、例えば、セパレータに電解液を含浸させてなるシートや、固体電解質からなるシートが好ましく用いられる。固体電解質からなるシートは、それ自体がセパレータを兼ねている。
上記電解質は、溶質と、必要に応じて溶媒と各種添加剤とを含むものから構成される。上記溶質としては、例えば、リチウムイオン等の金属イオンとこれに対する適宜のカウンターイオン、例えば、スルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、ハロゲンイオン等を組み合わせてなるものが好ましく用いられる。上記電解質の具体例としては、LiCF3SO3、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiCl等をあげることができる。
必要に応じて用いられる溶媒としては、例えば、カーボネート類、ニトリル類、アミド類、エーテル類等の少なくとも1種の非水溶媒、すなわち、有機溶媒が用いられる。このような有機溶媒の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N'−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン等をあげることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、溶媒に溶質が溶解したものを「電解液」ということがある。
また、本実施の形態では、上記のように、セパレータを各種の態様で用いることができる。上記セパレータとしては、これを挟んで対向して配設される正極2と負極4の間の電気的な短絡を防ぐことができ、さらに、電気化学的に安定であり、イオン透過性が大きく、ある程度の機械強度を有する絶縁性の多孔質シートであればよい。したがって、上記セパレータの材料としては、例えば、紙、不織布や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド等の樹脂からなる多孔性のフィルムが好ましく用いられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
<負極4について>
蓄電デバイスに係る負極4は、卑金属、または酸化・還元時に卑金属イオンが挿入・脱離し得る材料である負極活物質を用いて形成される。上記卑金属としては、金属リチウムや金属ナトリウム、金属カリウム等のアルカリ金属類、金属マグネシウム、金属カルシウム等のアルカリ土類金属をあげることができ、また、上記卑金属イオンとしては、上記卑金属のイオンをあげることができる。本発明においては、好ましい蓄電デバイスはリチウム二次電池であり、したがって、好ましい卑金属としてリチウムを、また好ましい卑金属イオンとしてリチウムイオンをあげることができる。上記卑金属イオンを挿入・脱離し得る材料としては、好ましくは、炭素材料が用いられるが、ケイ素やスズ等も用いることができる。なお、本発明において、「用いる」とは、その形成材料のみを使用する場合以外に、その形成材料と他の形成材料とを組み合わせて使用する場合も含める趣旨であり、通常、他の形成材料の使用割合は、その形成材料の50重量%未満に設定される。
<集電体1,5>
また、本発明の蓄電デバイスは、上記の正極2、電解質層3、負極4等のほかに、集電体1,5を用いることができる。集電体1,5は、導電性がよく安定なものであれば特に限定されないが、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属箔やメッシュ等が好ましく用いられ、さらにステンレス製の材料が好ましく用いられる。さらに負極4そのものが集電体を兼ねてもよい。なお、正極用集電体1と負極用集電体5とは、同じ材料で構成されていても、異なる材料で構成されていても差し支えない。
<蓄電デバイスの作製について>
上記材料を用いて、蓄電デバイスの作製を、図1にもとづき説明する。なお、電池の組立ては、グローブボックス中、超高純度アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
図1において、正極2および負極4の集電体(図1の1,5)としては、ニッケル、アルミ、ステンレス、銅等の金属箔やメッシュが適宜用いられる。そして、この集電体1,5に、正極2および負極4の電流取り出し用接続端子(タブ電極、図示せず)を、スポット溶接機にて接続して用いる。
この正極2と負極4の間に所定枚数の各種セパレータ(図示せず)を挟み、これらの三方をヒートシールされたラミネートセルの中に、正極2と負極4が正しく対向するように、またショートしないようにセパレータの位置を調整する。
そして、正極2および負極4用タブ部分にシール剤をセットした上で、電解液注入口を少し残して、タブ電極部分のヒートシールを行う。その後、所定量の電池電解液をマイクロピペットで吸引して、ラミネートセルの電解液注入口から所定量注入する。最後にラミネートセル上部の電解液注入口をヒートシールにて溶封し、蓄電デバイス(ラミネートセル)が完成する。
上記得られた蓄電デバイスは、上記ラミネートセル以外に、フィルム型、シート型、角型、円筒型、ボタン型等種々の形状に形成される。また、蓄電デバイスの正極2の電極サイズとしては、ラミネートセルであれば1辺が、1〜300mmであることが好ましく、特に好ましくは10〜50mmであり、負極4の電極サイズは1〜400mmであることが好ましく、特に好ましくは10〜60mmである。負極4の電極サイズは、正極2の電極サイズより、わずかに大きくすることが好ましい。
また、蓄電デバイスは、電気二重層キャパシタのように、出力密度とサイクル特性に優れるとともに、従来の電気二重層キャパシタのエネルギー密度よりも非常に高いエネルギー密度を有する。そのため、上記蓄電デバイスは、キャパシタ的蓄電デバイスであるといえる。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例,比較例となる蓄電デバイスの作製に先立ち、下記に示す各成分を調製・準備した。
<導電性ポリアニリン粉末の調製>
テトラフルオロホウ酸をドーパントとする導電性ポリアニリン(導電性ポリマー(a))の粉末を、下記のように調製した。なお、本明細書において粉末とは、粒子が集合したものをいい、通常、1次粒子が集合した2次粒子の状態のものである。すなわち、イオン交換水138gを入れた300mL容量のガラス製ビーカーに、42重量%濃度のテトラフルオロホウ酸水溶液(和光純薬工業社製、試薬特級)84.0g(0.402mol)を加え、磁気スターラーにて撹拌しながら、これにアニリン10.0g(0.107mol)を加えた。テトラフルオロホウ酸水溶液にアニリンを加えた当初は、アニリンは、テトラフルオロホウ酸水溶液に油状の液滴として分散していたが、その後、数分以内に水に溶解し、均一で透明なアニリン水溶液になった。このようにして得られたアニリン水溶液を低温恒温槽を用いて−4℃以下に冷却した。
つぎに、酸化剤として二酸化マンガン粉末(和光純薬工業社製、試薬1級)11.63g(0.134mol)を、上記アニリン水溶液中に少量ずつ加えて、ビーカー内の混合物の温度が−1℃を超えないようにした。このようにして、アニリン水溶液に酸化剤を加えることによって、アニリン水溶液は直ちに黒緑色に変化した。その後、しばらく撹拌を続けたとき、黒緑色の固体が生成し始めた。
このようにして、80分間かけて酸化剤を加えた後、生成した反応生成物を含む反応混合物を冷却しながら、さらに、100分間、撹拌した。その後、ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて、得られた固体をNo.2濾紙(ADVANTEC社製)にて吸引濾過して、粉末を得た。この粉末を約2mol/Lのテトラフルオロホウ酸水溶液中にて磁気スターラーを用いて撹拌洗浄した。ついで、アセトンで数回、撹拌洗浄し、これを減圧濾過した。得られた粉末を室温(25℃)で10時間真空乾燥することにより、テトラフルオロホウ酸をドーパントとする導電性ポリアニリン12.5gを得た。この導電性ポリアニリンは鮮やかな緑色粉末であった。
(導電性ポリアニリン粉末の電導度)
上記導電性ポリアニリン粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測定用KBr錠剤成形器を用い、75MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、直径13mm、厚み720μmの導電性ポリアニリンのディスクを得た。ファン・デル・ポー法による4端子法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は、19.5S/cmであった。
(脱ドープ状態の導電性ポリアニリン粉末の調製)
上記により得られたドープ状態である導電性ポリアニリン粉末を、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液中に入れ、3Lセパラブルフラスコ中にて30分間撹拌し、中和反応によりドーパントのテトラフルオロホウ酸を脱ドープした。濾液が中性になるまで脱ドープしたポリアニリンを水洗した後、アセトン中で撹拌洗浄し、ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて減圧濾過し、No.2濾紙上に、脱ドープしたポリアニリン粉末を得た。これを室温下、10時間真空乾燥して、茶色の脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。
(還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末の調製)
つぎに、フェニルヒドラジンのメタノール水溶液中に、上記で得た脱ドープ状態のポリアニリン粉末を入れ、撹拌下30分間還元処理を行った。ポリアニリン粉末の色は、還元により、茶色から灰色に変化した。反応後、メタノール洗浄、アセトン洗浄し、濾別後、室温下真空乾燥し、還元脱ドープ状態のポリアニリンを得た。
アセトンを溶媒として用いた、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−2100)による上記粒子の平均粒子径(モード径)は13μmであった。
(還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末の電導度)
上記還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測定用KBr錠剤成形器を用い、75MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、厚み720μmの還元脱ドープ状態のポリアニリンのディスクを得た。ファン・デル・ポー法による4端子法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は、5.8×10-3S/cmであった。これより、ポリアニリン化合物は、イオンの挿入・脱離により導電性の変化する活物質化合物であるといえる。
<導電助剤(c)の準備>
A.略球状炭素材料(c1)として、平均粒子径40nmの導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を準備した。
B.繊維状炭素材料(c2−1)として、平均繊維径150nmの炭素繊維(保土谷化学工業社製、CT−15)を準備した。
C.繊維状炭素材料(c2−2)として、平均繊維径65nmの炭素繊維(保土谷化学工業社製、NT−7K)を準備した。
D.繊維状炭素材料(c2−3)として、平均繊維径120nmの炭素繊維(保土谷化学工業社製、CT−12)を準備した。
E.繊維状炭素材料(c2−4)として、平均繊維径10nmの炭素繊維(Cnano社製、FloTube9000)を準備した。
<ポリカルボン酸の準備>
ポリアクリル酸(和光純薬工業社製、重量平均分子量100万)4.4gをイオン交換水に溶解し、超音波式ホモジナイザーを用いて4.4重量%濃度の粘稠なポリアクリル酸水溶液20.5gを得た。ついで、得られたポリアクリル酸水溶液に、水酸化リチウム0.15gを加え、再度溶解させアクリル酸部位の50%がリチウムに置換したポリアクリル酸−ポリアクリル酸リチウム複合体溶液を調製した。
<セパレータの準備>
不織布(宝泉社製、TF40−50、空孔率:55%)を準備した。
<負極の準備>
負極Liとして本城金属製、圧延リチウムホイル(29mm幅、0.05mm厚み)グローブボックス内にて、上記リチウム金属箔ロールを29mm×29mmの寸法に裁断し、メッシュ状の35mm×29mmのSUSにニッケルタブをあらかじめ超音波溶接で溶接しておいたものに押しつけて密着させることで負極シートとした。
<電解液の準備>
電解液として、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを1:2の体積比で含む溶媒に、ビニレンカーボネートを10重量%分添加したものに、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を2mol/Lの濃度で溶解させたものを準備した。
<タブ電極>
正極の電流取り出し用タブ電極として、厚み50μmのアルミ金属箔を準備し、負極の電流取り出し用タブ電極として、厚み50μmのニッケル金属箔を準備した。
<集電体>
正極用集電体として、厚み30μmのアルミ箔を準備した。なお、負極用集電体については、負極そのものが集電体を兼ねていることからここでは不要とした。
準備した上記材料を用いて、まず正極を作製するための正極用スラリーを調製した。
〔実施例1用スラリー〕
前記ポリアニリン粉末3.6gに、導電助剤である略球状炭素材料(c1)および繊維状炭素材料(c2−2)〔略球状:繊維状=9:3(重量比)〕を、全固形重量分の12重量%になるように添加し、スパチュラで3種類の粉体が混合するように静かに撹拌して、ポリアニリンおよび導電助剤の混合粉末を調製した。この混合粉末を、前記ポリアクリル酸−ポリアクリル酸リチウム複合体溶液7.15g中に加えてスパチュラで練った。これを超音波式ホモジナイザーにて6分間分散処理を施して、流動性を有する分散液を得た。この分散液を超音波式ホモジナイザーにて5分間超音波処理を施し、薄膜旋回型高速ミキサー (プライミックス社製、フィルミックス40−40型)にて高せん断力を用いるマイルド分散処理を行って、流動性を有するペーストを得た。このペーストを更に自転・公転ハイブリッドミキサー(THNKY社製、あわとり練太郎MH−500)を用いて撹拌脱泡した。
〔実施例2用スラリー〕
上記実施例1用スラリーにおいて、導電助剤の繊維状炭素材料(c2−2)に代えて、繊維状炭素材料(c2−3)を用いた以外は、実施例1用スラリーと同様にして、実施例2用スラリーを調製した。
〔実施例3用スラリー〕
上記実施例1用スラリーにおいて、導電助剤の繊維状炭素材料(c2−2)に代えて、繊維状炭素材料(c2−1)を用いた以外は、実施例1用スラリーと同様にして、実施例3用スラリーを調製した。
〔実施例4用スラリー〕
上記実施例1用スラリーにおいて、導電助剤の繊維状炭素材料(c2−2)に代えて、繊維状炭素材料(c2−1)を用いるとともに、略球状炭素材料(c1)および繊維状炭素材料の重量比(略球状:繊維状)を9:11に変更し、さらにこれらの導電助剤を、全固形重量分の20重量%の添加になるように変更した以外は、実施例1用スラリーと同様にして、実施例4用スラリーを調製した。
〔実施例5用スラリー〕
上記実施例1用スラリーにおいて、導電助剤の繊維状炭素材料(c2−2)に代えて、繊維状炭素材料(c2−1)を用いるとともに、略球状炭素材料および繊維状炭素材料の重量比(略球状:繊維状)を9:21に変更し、さらにこれらの導電助剤を、全固形重量分の30重量%の添加になるように変更した以外は、実施例1用スラリーと同様にして、実施例5用スラリーを調製した。
〔比較例1用スラリー〕
実施例1用スラリーにおいて、導電助剤として略球状炭素材料(c1)のみを用いる以外は、実施例1用スラリーと同様にして、比較例1用スラリーを調製した。
〔比較例2用スラリー〕
実施例1用スラリーにおいて、導電助剤として略球状炭素材料(c1)のみを用いるとともに、導電助剤を全固形重量の20重量%の添加になるように変更した以外は、実施例1用スラリーと同様にして、比較例2用スラリーを調製した。
〔比較例3用スラリー〕
実施例1用スラリーにおいて、導電助剤として略球状炭素材料(c1)のみを用いるとともに、導電助剤を全固形重量の30重量%の添加になるように変更した以外は、実施例1用スラリーと同様にして、比較例3用スラリーを調製した。
〔比較例4用スラリー〕
実施例1用スラリーにおいて、導電助剤の略球状炭素材料(c1)および繊維状炭素材料(c2−2)に代えて、繊維状炭素材料(c2−1)のみを用いる以外は、実施例1用スラリーと同様にして、比較例4用スラリーを調製した。
〔比較例5用スラリー〕
実施例1用スラリーにおいて、導電助剤の略球状炭素材料(c1)および繊維状炭素材料(c2−2)に代えて、繊維状炭素材料(c2−4)のみを用いる以外は、実施例1用スラリーと同様にして、比較例5用スラリーを調製した。
〔実施例1〜5、比較例1〜5〕
つぎに、上記得られた実施例用スラリーおよび比較例用スラリー(脱泡ペースト)を用いて、各種の正極を得るため、卓上型自動塗工装置(テスター産業社製)を用い、マイクロメーター付きドクターブレ−ド式アプリケータによって溶液塗工厚みを調整し、塗布速度10mm/秒にて、電気二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉社製、30CB)上に塗布した。ついで、室温にて60分間乾燥した後、温度100℃乾燥機にて30分間乾燥してポリアニリンシート電極を作製し、これを一定面積にカットすることによって、実施例1〜5、および比較例1〜5の正極を作製した。
上記の実施例1〜5、比較例1〜5の正極において、正極の電極形成性を下記の基準に従って評価し、その結果を下記の表1に併せて示した。
≪電極形成性≫
○…正極加工に適している。
△…多少不具合(表面凹凸)はあるがラミネートセル正極加工に差し支えない。
×…正極加工に適していない。
上記表1の結果より、実施例群は全て電極形成性が良好であった。比較例1については、正極として加工可能であるが、実施例群と比較すると脆く、実用に向かないものであった。比較例2,3については、正極加工時にアルミ箔をカットした時点で活物質層が剥がれ、正極加工は不可能であった。このように、略球状炭素材料の単独系では、電極の12重量%しか充填していない比較例1であっても電極形成性に劣っているのに対し、略球状および繊維状の併用系(実施例1〜5)では、それ以上の量を充填した場合であっても良好な電極形成性を示した。
また、比較例4は電極形成性が良好であったが、比較例5では正極加工できなかった。比較例5は乾燥後に導電助剤と活物質の凝集物であると考えられる物体が観察され、電極の膜厚均一性が著しく悪かった。これは平均繊維径が比較例4や実施例1〜3と比較して一桁小さくなっていることから、繊維同士の凝集力が格段に高まったためと推察される。
なお、導電性ポリマー粒子の分散状態を観察するため、別途用意した実施例1の正極に重金属染色を施したものについて、クロスセクションポリッシャ(Jeol社製,SM09010)により断面を作製し、走査型電子顕微鏡(Hitachi社製,S−4800,加速電圧:2kV)観察を実施することで断面構造画像を得た。その実施例1の正極断面画像を図2に示した。
図2より、活物質である数μm径の粒子の間に、繊維状導電助剤が分散されていることが分かった。繊維状導電助剤によって活物質間の導電パス形成性が良好になったといえる。
<蓄電デバイスの作製>
上記により得られた実施例1〜5および比較例1,4の正極と、その他準備した上記材料を用いて、蓄電デバイス(リチウム二次電池)であるラミネートセルを組み立てた。具体的には、上記の正極と負極との間にセパレータ3枚が配置されるように積層し、積層体を得た。この積層体をアルミニウムラミネートパッケージに入れた後、真空乾燥機にて80℃で2時間、真空乾燥した。ついで、真空乾燥したパッケージに、前記準備した電解液を0.3mL注入し、その後、パッケージを封口して、実施例1〜5および比較例1,4の蓄電デバイスを得た。
なお、電池の組立てはグローブボックス中、超高純度アルゴンガス雰囲気下にて行った(グローブボックス内の露点:−90℃)。また、正極用および負極用のタブ電極の金属箔は、対応する集電体にあらかじめスポット溶接機にてそれぞれ接続して用いた。
得られた上記の実施例1〜5、比較例1,4の蓄電デバイスにおいて、その容量密度(mAh/g)を下記の方法により測定し、その結果を下記の表2に併せて示した。
≪容量密度の測定≫
蓄電デバイスを25℃の恒温槽内に静置し、電池充放電装置(東洋システム社製、TOSCAT)を用いて、定電流一定電圧充電/定電流放電モードにて測定を行った。充電終止電圧は3.8Vとし、定電流充電により電圧が3.8Vに到達した後は、3.8Vの定電圧充電を電流値が定電流充電時の電流値に対して20%の値になるまで行い、得られた容量を充電容量とした。その後、放電終止電圧2.0Vまで定電流放電を行って、これらを1充放電サイクルとした。上記蓄電デバイスについて、25℃における放電容量を基に活物質量当たりの放電容量密度(mAh/g)を算出した。定電流充電時の電流値は正極の理論容量から算出した1C電流値に対して、0.2Cとなるように設定し、定電流放電時の電流値を200Cとなるように設定した場合の容量密度(mAh/g)を表2に示した。
上記表2の結果から略球状炭素材料および繊維状炭素材料の併用する実施例1〜5はいずれも高い容量密度を示した。これに対し、略球状および繊維状の炭素材料を併用しない比較例では、比較例1は適度な容量密度を示したものの、前記のように電極形成性に劣るものであり、また、比較例4では明らかに容量密度が低いものとなった。
したがって、導電助剤として略球状炭素材料だけでなく繊維状炭素材料を併せて用いることによって、電極形成性とともに容量密度にも優れる蓄電デバイスが得られることが分かった。
また、実施例1〜3の結果より、平均繊維径が小さくなるほど容量密度が上がることが分かった。これは平均繊維径が小さい方が、かさ密度が小さく、同じ重量比率でも正極中に占める体積割合が大きいため、導電パスの形成性が良好になるためであると推察される。
上記容量密度の測定において、定電流放電時の電流値を0.2C、0.5C、1C、2C、5C、10C、20C、50C、100C、200Cとなるように電流レートのほぼ全ての領域に渡って設定した場合の実施例1および比較例1の容量密度の測定結果を図3に示した。
図3より、実施例1では、電流レートのほぼ全ての領域に渡って、比較例1よりも高い容量密度を実現できることが分かった。これは導電性という点から意外な効果であった。つまり、電流レートが高い場合には繊維形状の導電助剤の効果により容量密度が高く維持されることを予想していたが、電流レートが低い場合にも容量密度が向上しているという点である。これは繊維状導電助剤には導電パス形成性の改善のみならず、活物質である導電高分子との接触面積を向上させる効果があったためではないかと推測される。このように繊維状導電助剤を付加することで、広い範囲での電流レートにおける容量密度の向上を達せることができた。
上記蓄電デバイスは、リチウム二次電池等の蓄電デバイスとして好適に使用できる。また、上記蓄電デバイスは、従来の二次電池と同様の用途に使用でき、例えば、携帯型PC、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等の携帯用電子機器や、ハイブリッド電気自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の駆動用電源に広く用いられる。
1 正極用集電体
2 正極
3 電解質層
4 負極
5 負極用集電体

Claims (8)

  1. 電解質層と、これを挟んで対向して設けられた正極と負極とを有する、蓄電デバイスであって、上記正極が、導電性ポリマー(a)と、ポリカルボン酸およびその金属塩の少なくとも一方(b)と、導電助剤(c)とを含み、かつ、上記導電助剤(c)が略球状炭素材料(c1)と繊維状炭素材料(c2)とを含有することを特徴とする蓄電デバイス。
  2. 上記繊維状炭素材料(c2)の平均繊維径が30〜200nmである請求項1記載の蓄電デバイス。
  3. 上記繊維状炭素材料(c2)のアスペクト比が10〜1,000である請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
  4. 上記略球状炭素材料(c1)と繊維状炭素材料(c2)との含有割合が、重量比(c1/c2)で、10/90〜90/10である請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
  5. 上記導電助剤(c)の含有量が、正極全体に対し5〜40重量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
  6. 上記導電性ポリマー(a)が、ポリアニリンおよびポリアニリン誘導体の少なくとも一方である請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
  7. 上記(b)のポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、アルギン酸、カルボキシルメチルセルロース、およびこれらポリマーの繰り返し単位の少なくとも1種を含む共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
  8. 上記(b)のポリカルボン酸金属塩が、ポリカルボン酸アルカリ金属塩およびポリカルボン酸アルカリ土類金属塩の少なくとも一方である請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
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