JP7088689B2 - 4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents
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Description
そこで、上述した特許文献1~3等において、各種エンジニアリングプラスチックの摺動特性が超高分子量ポリエチレンを含有するポリエチレン樹脂組成物によって改善されていることから、超高分子量ポリエチレンを含有するポリエチレン樹脂組成物により4-メチル-1-ペンテン系樹脂の摺動特性を向上させることを試みたが、十分な効果を得ることができなかった(本願比較例2参照)。
〔1〕下記要件(A-1)および(A-2)を満たす4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A)と、
下記要件(B-1)および(B-2)を満たす変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B)と、
下記要件(C-1)を満たす極性樹脂(C)と、
下記要件(D-1)および(D-2)を満たす変性ポリエチレン樹脂(D)と、
を含み、下記要件(X-1)を満たす、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)。
(A-1)カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位の含有量が0.01質量%未満である。
(A-2)ASTM D1238に準拠して測定した、260℃、2.16kg荷重下のメルトフローレート(MFR)が0.01~100g/10分の範囲にある。
(B-1)カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位を0.01~10質量%含む。
(B-2)ASTM D1238に準拠して測定した、260℃、2.16kg荷重下のメルトフローレート(MFR)が0.01~100g/10分の範囲にある。
(C-1)ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリカルボジイミドから選ばれる少なくとも一種を含む。
(D-1)135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が10~40dL/gである超高分子量ポリエチレン(d1)と、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dL/gである低分子量ないし高分子量ポリエチレン(d2)とを含み、(d1)と(d2)の含有比率が、それらの合計を100質量部としたときに、(d1)が5~45質量部である。
(D-2)カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位を0.01~10質量%含む。
(X-1)前記(A)~(D)の含有比率が、(A)~(D)の合計を100質量部としたときに、(A)が70~95質量部、(B)が0.1~10質量部、(C)が1~10質量部、(D)が1~20質量部である。
(D-3)密度が955~970kg/m3であり、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1.5~10dL/gの範囲にある。
〔4〕前記変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B)が、下記要件(B-3)~(B-4)のうち一つ以上をさらに満たす、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)。
(B-3)4-メチル-1-ペンテンに由来する構造単位(i)と、エチレンもしくは4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位(ii)との含有量のモル比率が、100:0~90:10である。
(B-4)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が175~250℃である。
〔6〕前記樹脂組成物(X)が、下記要件(X-2)を満たす、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)。
(X-2)鈴木式リング摩耗試験(試験温度23℃、相手剤S45C、荷重0.75MPa、速度30m/分、距離0.9km)における、射出成形して得た試験片の比摩耗量が5mm3/kg・km以下である。
〔7〕前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)を含む成形体。
本発明に係る4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)は、官能基を含む構造単位を実質的に含まない4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A)、官能基を含む構造単位を含有する変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B)、極性樹脂(C)、および変性ポリエチレン樹脂(D)を含む。以下に本発明に係る4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
本発明に係る4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構造単位を主成分とするモノマーを重合あるいは共重合して得られるものであって、下記要件(A-1)および(A-2)を満たす。
(A-2)ASTM D1238に準拠して測定した、260℃、2.16kg荷重下のメルトフローレート(MFR)が0.01~100g/10分の範囲にある。このメルトフローレートは、好ましくは2~100g/10分、より好ましくは3~30g/10分の範囲にあることが望ましい。MFRが上記範囲にあると、成型時の流動性の点で好ましい。
(A-5)JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定した密度が820~850kg/m3である。
本発明に係る変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B)は、下記要件(B-1)および(B-2)を満たす。
(B-1)カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位を0.01~10質量%含む。含有量は、赤外分光法(IR)やNMRを用いて測定できる。
(B-2)ASTM D1238に準拠して測定した、260℃、2.16kg荷重下のメルトフローレート(MFR)が0.01~100g/10分の範囲にある。好ましくは2~100g/10min、より好ましくは3~30g/10minである。MFRが上記範囲にあると、成形する際の流動性の点で好ましい。
(B-3)4-メチル-1-ペンテンに由来する構造単位(i)と、エチレンもしくは4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位(ii)との含有量のモル比率が、100:0~90:10である。
4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A)の要件(A-3)において例示したα-オレフィンが挙げられる。
本発明に係る変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B)は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A)をグラフト変性して官能基を導入することにより得られる。グラフト変性の具体的な方法は、後述する変性ポリエチレン樹脂(D)の製造方法における、ポリエチレン樹脂(D’)のグラフト変性と同様の方法が適用できるが、押出機などを用いて、無溶媒でグラフト変性を行う場合の好ましい条件は、未変性の4-メチル-1-ペンテン系樹脂の融点以上、通常200~350℃の温度である。
本発明に係る極性樹脂(C)は、下記要件(C-1)を満たす。
(C-1)ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリカルボジイミドから選ばれる少なくとも一種を含む。
本発明に係る変性ポリエチレン樹脂(D)は、下記要件(D-1)および(D-2)を満たす。
(D-1)135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が10~40dL/gである超高分子量ポリエチレン(d1)と、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dL/gである低分子量ないし高分子量ポリエチレン(d2)とを含み、(d1)と(d2)の含有比率が、それらの合計を100質量部としたときに、(d1)が5~45質量部である。
(D-2)カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位を0.01~10質量%含む。
本発明に係る変性ポリエチレン樹脂(D)は、例えば、超高分子量ポリエチレンと低分子量ないし高分子量ポリエチレンとを含む変性前(未変性)のポリエチレン樹脂(D’)をグラフト変性して官能基を導入することにより得られる。
ポリエチレン樹脂(D’)は、カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を実質的に含まない変性前のポリエチレン樹脂であって、後述する超高分子量ポリエチレン(d1)と低分子量ないし高分子量ポリエチレン(d2)の合計量100質量部に対して、超高分子量ポリエチレン(d1)を好ましくは5~45質量部、より好ましくは5~30質量部、特に好ましくは5~28質量部、もっとも好ましくは8~25質量部含有し、低分子量ないし高分子量ポリエチレン(d2)を好ましくは55~95質量部、より好ましくは70~95質量部、特に好ましくは72~95質量部、もっとも好ましくは75~92質量部含有し、かつ、以下の要件(i),(ii)を満たすことが好ましい。
超高分子量ポリエチレン(d1)は、例えば、エチレンの単独重合体、又は、エチレンとプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテンもしくは3-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンとの共重合体である。中でも、エチレンの単独重合体、又はエチレンと前記のα-オレフィンとの共重合体であって、エチレンを主成分として構成される共重合体を使用することが好ましく、エチレンの単独重合体であることが特に好ましい。
低分子量ないし高分子量ポリエチレン(d2)は、例えば、エチレンの単独重合体、又は、エチレンとα-オレフィンの共重合体である。エチレンとα-オレフィンの共重合体を構成するα-オレフィンとしては、炭素原子数3~20の直鎖状又は分岐状のα-オレフィンであり、具体的にはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ペンテン、3-エチル-4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘプテン、3,4-ジメチル-1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
変性前のポリエチレン樹脂(D’)の製造方法について特に制限はない。その製造方法の代表的な態様として、以下の(1)及び(2)を例示することができる。
(I)極限粘度[η]が20~40dL/gの範囲にある超高分子量ポリエチレン(d1)を製造する工程
(II)極限粘度[η]が0.3~1.0dL/gの範囲にある低分子量ないし高分子量ポリエチレン(d2)を製造する工程
本発明の樹脂組成物(X)、および、樹脂組成物(X)の原料となる樹脂(A)、(B)、(C)および(D)には、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の樹脂あるいは重合体および/または樹脂用添加剤を任意に添加することができる。
その他の樹脂あるいは重合体としては、下記の熱可塑性樹脂(E)を広く用いることができる。これら樹脂あるいは重合体の添加量は樹脂組成物(X)の総質量に対して、0.1~30質量%であることが好ましい。
その他の成分として用いられる熱可塑性樹脂(E)は特に制限されない。熱可塑性樹脂(E)としては、例えば、以下の樹脂が挙げられる。
熱可塑性ポリアミド系樹脂;例えば、脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612)、
熱可塑性ポリエステル系樹脂;例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー、
熱可塑性ビニル芳香族系樹脂;例えば、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、スチレン系エラストマー(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソブチレン・スチレンブロックポリマー、前述の水素添加物)、
熱可塑性ポリウレタン;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;フッ素系樹脂ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンサルファイドポリイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ロジン系樹脂;テルペン系樹脂および石油樹脂;
共重合体ゴム;例えば、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体、プロピレン・α-オレフィン・ジエン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン・ジエン共重合体、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム。
樹脂用添加剤としては、例えば、核剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料、染料、充填剤(フィラー)、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、(透明)核剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤、石油樹脂、ワックス、オレフィン系オイル、シリコーンオイルなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種単独でも、適宜2種以上を組み合わせても用いることができる。
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)は、上述した4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A)と、ポリアミド樹脂(B)と、極性樹脂(C)と、変性ポリエチレン(D)とを含み、下記要件(X-1)を満たす。
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)は、その他の成分として上述した成分等、前記樹脂(A)~(D)以外の成分を含んでも構わないが、(A)~(D)の合計が4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)中において好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
(X-2)鈴木式リング摩耗試験(試験温度23℃、相手剤S45C、荷重0.75MPa、速度30m/分、距離0.9km)における比摩耗量が5mm3/kg・km以下である。比摩耗量は小さいほど好ましいが、下限は通常1mm3/kg・km以上である。
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)は、樹脂(A)~(D)および任意成分を、公知の方法によって溶融混練することによって製造することができる。
本発明の成形体は、上述した本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)を、その一部または全部に使用してなる成形体である。この樹脂組成物は、従来種々公知の方法により成形できる。具体的には、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)を、例えば、射出成形法、異形押出成形法、パイプ成形法、チューブ成形法、異種成形体の被覆成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、インフレーションフィルム成形法、プレス成形法などの成形方法により、容器状、トレー状、シート状、棒状、フィルム状または各種成形体の被覆などに成形することができる。
以下の実施例および比較例において、各種物性は以下の方法により測定あるいは算出した。
4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A)あるいは変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B)中の、4-メチル-1-ペンテンに由来する構造単位の含有量、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来の構造単位(コモノマー)の含有量は、以下の装置および条件により、13C-NMRスペクトルより算出した。
て、溶媒はo-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1 v/v)混合溶媒、試料濃度は55mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は5.0μ秒(45°パルス)、繰返し時間は5.5秒、積算回数は64回とし、ベンゼン-d6の128ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。主鎖メチンシグナルの積分値を用い、下記式によってコモノマー由来の構造単位の含有量を算出した。
コモノマー由来の構造単位の含有量(%)=[P/(P+M)]×100
ここで、Pはコモノマー主鎖メチンシグナルの全ピーク面積を示し、Mは4-メチル-1-ペンテン主鎖メチンシグナルの全ピーク面積を示す。
また、カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位の含有量は、IR測定により評価した。
ASTM D1238に準拠して、260℃、2.16kg荷重下のメルトフローレート(MFR)を測定した。
JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定した。
島津製作所社製DSC-60を用いて30~280℃の温度範囲、速度10℃/分、窒素雰囲気下で測定した。試料5mgをアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で280℃まで加熱し、その試料を、完全融解させるために280℃で5分間保持する。次いで10℃/分で-50℃まで冷却し、-50℃で5分間置いた後、その試料を10℃/分で280℃まで再度加熱する。この2度目の加熱試験でのピーク温度を、融点(Tm)として採用した。
株式会社名機社製M-70B射出成型機で、シリンダ温度300℃、金型温度60℃、冷却時間20秒の条件でポリ-4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物の射出成形片(120mm×130mm×3mm)を作製した。得られた試験片を、JIS K7218「プラスチックの滑り摩耗試験A法」に準拠して、鈴木式リング摩耗試験機を使用して、リング摩耗試験により動摩擦係数および比摩耗量を測定した。試験条件は、相手材:S45C、速度:30m/分、距離:0.9km、荷重:0.75MPa、測定環境温度:23℃とした。摩擦発熱MAX温度の測定は、相手材であるS45Cに温度測定用の熱電対を設置して、試験中の温度を測定し、試験中の温度上昇のMAXの値を算出した。
以下の実施例および比較例において原料として使用した樹脂、その製造方法を以下に示す。
<4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)の製造>
国際公開2006/054613号の比較例9に記載の重合方法に準じて、4-メチル-1-ペンテン、その他のα-オレフィン(1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等質量混合物)、水素の割合を変更することによって、4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)を得た。すなわち、4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)は、無水塩化マグネシウム、2-エチルヘキシルアルコール、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパンおよび四塩化チタンを反応させて得られる固体状チタン触媒を重合用触媒として用いて得られたことになる。
4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)の分析結果は以下のとおりであった。
MFR(260℃、5kgf):3g/10min
融点(Tm)224℃
密度:0.83g/cm3
4-メチル-1-ペンテンに由来する構造単位93.5モル%
その他のα-オレフィン(1-ヘキサデセン、1-オクタデセン)に由来する構造単位6.5モル%
<変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B1)の製造>
上記で製造した4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)100質量部と、無水マレイン酸1質量部と、有機過酸化物として、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3を0.02質量部とを、2軸押出機(株式会社池貝、PCM45、φ=45mm,L/D=30)にて、シリンダ温度:270℃で、溶融混練を3分間行い、マレイン酸変性ポリ-4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B1)を得た。
<変性ポリエチレン(D1)の製造>
・固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン398.4gおよび2-エチルヘキシルアルコ-ル306gを温度140℃で6時間加熱反応させて均一溶液とした後、この溶液中に安息香酸エチル17.6gを添加し、更に130℃にて1時間攪拌混合を行なった。
充分に窒素置換された攪拌機付24Lのオートクレーブに12Lの精製n-デカンを添加した後、トリエチルアルミニウムをアルミニウム換算で14ミリモル、上記固体状チタン触媒成分をチタン換算で0.3ミリモル加え、十分に撹拌しながら45℃まで昇温しつつ、4.2L/分の速度でエチレンを供給して重合を開始した。オートクレーブの内圧は6kg/cm2・Gに保持した。重合温度は45~46℃に維持した。エチレンを880L供給した時点でエチレンの供給を一旦停止し、内圧が3kg/cm2・Gとなるまで温度を一定に保持した後、速やかに常圧まで脱圧した。(この段階で、得られたスラリーを少量サンプリングし、デカンとヘキサンとで洗浄して白色固体サンプル(1)を得た。)次いで水素を41リットル導入し、温度を85℃に上げつつエチレンを11.6L/分の速度で供給しながら2段目の重合を開始した。全圧を6.4kg/cm2・G、温度は85℃に保持した。
[η]all=[η]A×wtA+[η]B×wtB
[η]all:ポリマー全体(ポリエチレン樹脂(D’1))の極限粘度(dL/g)
[η]A:超高分子量ポリエチレンの極限粘度(dL/g)
wtA:超高分子量ポリエチレンの含有量(質量%)
[η]B:低分子量ないし高分子量ポリエチレンの極限粘度(dL/g)
wtB:低分子量ないし高分子量ポリエチレンの含有量(質量%)
極限粘度[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
上記で得たポリエチレン樹脂(D’1)100質量部、無水マレイン酸0.8質量部、および有機過酸化物[日本油脂(株)製、商品名パーヘキシン-25B]0.07質量部、をヘキシェルミキサーで混合し、得られた混合物を270℃に設定した100mmφの二軸押出機で、混練時間1分30秒程で溶融グラフト変性することによって、変性ポリエチレン(D1)を得た。
カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位の含有量は0.8質量%だった。
極性樹脂(C1)としては、ポリアミドである、宇部興産株式会社製UBE NYLON1030B(ポリアミド6(PA6)、MFR(280℃、5kg荷重)7g/10分、融点(Tm)225℃)を使用した。
<4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)、変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B1)、および極性樹脂(C1)の事前混練>
4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)60質量部、変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B1)5質量部、極性樹脂(C1)40質量部を混合し、二軸押出機(株式会社池貝、PCM45、φ=45mm,L/D=30)にて、シリンダ温度:270℃、回転数150rpmにて溶融混練し、樹脂組成物(X’)を得た。
<4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X1)の製造>
4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)80質量部と、上記で事前混練して得た樹脂組成物(X’)10質量部と、変性ポリエチレン(D1)10質量部を混合し、二軸押出機(株式会社池貝、PCM45、φ=45mm,L/D=30)にて、シリンダ温度:270℃、回転数150rpmにて溶融混練し、樹脂組成物(X1)を得た。樹脂組成物(X1)における各成分の含有質量比は表1のとおりである。また、上述のように樹脂組成物から射出成形片を作成し、リング摩耗試験を行った。結果を表1に併せて示す。
4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)90質量部と、実施例1と同様に事前混練して得た樹脂組成物(X’)10質量部とを混合し、実施例1と同様に樹脂組成物を製造して評価した。結果を表1に示す。
4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A1)90質量部と、未変性であるポリエチレン樹脂(D’1)とを混合し、実施例1と同様に樹脂組成物を製造して評価した。結果を表1に示す。
Claims (6)
- 下記要件(A-1)および(A-2)を満たす4-メチル-1-ペンテン系樹脂(A)と、
下記要件(B-1)および(B-2)を満たす変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B)と、
ポリアミド樹脂である極性樹脂(C)と、
下記要件(D-1)および(D-2)を満たす変性ポリエチレン樹脂(D)と、
を含み、下記要件(X-1)を満たす、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)。
(A-1)カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位の含有量が0.01質量%未満である。
(A-2)ASTM D1238に準拠して測定した、260℃、2.16kg荷重下のメルトフローレート(MFR)が0.01~100g/10分の範囲にある。
(B-1)カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位を0.01~10質量%含む。
(B-2)ASTM D1238に準拠して測定した、260℃、2.16kg荷重下のメルトフローレート(MFR)が0.01~100g/10分の範囲にある。
(D-1)135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が10~40dL/gである超高分子量ポリエチレン(d1)と、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dL/gである低分子量ないし高分子量ポリエチレン(d2)とを含み、(d1)と(d2)の含有比率が、それらの合計を100質量部としたときに、(d1)が5~45質量部である。
(D-2)カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びシラノール基からなる群より選ばれる官能基を含む構造単位を0.01~10質量%含む。
(X-1)前記(A)~(D)の含有比率が、(A)~(D)の合計を100質量部としたときに、(A)が70~95質量部、(B)が0.1~10質量部、(C)が1~10質量部、(D)が1~20質量部である。 - 前記変性ポリエチレン樹脂(D)が、下記要件(D-3)を満たす、請求項1に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)。
(D-3)密度が955~970kg/m3であり、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1.5~10dL/gの範囲にある。 - 前記変性ポリエチレン樹脂(D)が、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるポリエチレン樹脂の変性物である、請求項1または2に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)。
- 前記変性4-メチル-1-ペンテン系樹脂(B)が、下記要件(B-3)~(B-4)のうち一つ以上をさらに満たす、請求項1~3のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)。
(B-3)4-メチル-1-ペンテンに由来する構造単位(i)と、エチレンもしくは4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位(ii)との含有量のモル比率が、100:0~90:10である。
(B-4)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が175~250℃である。 - 前記樹脂組成物(X)が、下記要件(X-2)を満たす、請求項1~4のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)。
(X-2)鈴木式リング摩耗試験(試験温度23℃、相手剤S45C、荷重0.75MPa、速度30m/分、距離0.9km)における、射出成形して得た試験片の比摩耗量が5mm3/kg・km以下である。 - 請求項1~5のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(X)を含む成形体。
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