以下、図面を参照して本発明のインクジェット印刷装置の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、印刷媒体の表面の高さに応じたインクの吐出制御に特徴を有するものであるが、まずは、インクジェット印刷装置全体の構成について説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。なお、以下に示す実施形態の説明では、図1に矢印で示す上下左右前後を、インクジェット印刷装置1における上下左右前後方向とする。また、前後方向が、本発明の搬送方向に相当する。
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、図1に示すように、シャトルベースユニット2と、フラットベッドユニット3と、シャトルユニット4とを備えている。
シャトルベースユニット2は、シャトルユニット4を支持するとともに、前後方向(副走査方向)にシャトルユニット4を移動させるものである。シャトルベースユニット2は、具体的には、架台部11と、副走査駆動モータ12(図4参照)とを備えている。
架台部11は、矩形枠状に形成されたものであり、シャトルユニット4を支持するものである。架台部11の左右の枠上には、前後方向に延びる副走査駆動ガイド13A,13Bがそれぞれ形成されている。副走査駆動ガイド13A,13Bは、シャトルユニット4を前後方向に移動するようにガイドするものである。副走査駆動モータ12は、シャトルユニット4を前後方向に移動させるものである。本実施形態においては、副走査駆動ガイド13A,13Bおよび副走査駆動モータ12が、本発明の搬送機構に相当するものである。
フラットベッドユニット3は、建材や化粧パネルなどの印刷媒体15を支持するものである。本実施形態においては、フラットベッドユニット3が、本発明のテーブルに相当する。
フラットベッドユニット3は、シャトルベースユニット2の架台部11の内側に形成された直方体形状の凹部内に配置されている。フラットベッドユニット3は、印刷媒体15が載置される水平面である媒体載置面3aを有している。フラットベッドユニット3は、図示省略した油圧駆動機構などからなる昇降機構を有し、これにより媒体載置面3aの高さを調整できるように構成されている。
また、本実施形態においては、フラットベッドユニット3の媒体載置面3a上に厚さの異なる複数の印刷媒体15が載置される。そして、シャトルユニット4の副走査方向への移動およびシャトルユニット4内のヘッドユニット26の主走査方向への移動によって、複数の印刷媒体15に対して印刷処理が施される。厚さが異なる複数の印刷媒体15としては、同じ種類の印刷媒体15であるが、製造誤差によって厚さが異なるものでもよいし、設計上、厚さが異なる複数種類の印刷媒体15でもよい。
シャトルユニット4は、印刷媒体15に対してインクを吐出して印刷処理を施すものである。図2は、シャトルユニット4の概略構成を示す図である。シャトルユニット4は、図2に示すように、筐体21と、主走査駆動ガイド22と、主走査駆動モータ23(図4参照)と、ヘッドユニット26と、表面位置検出部40とを備えている。
筐体21は、ヘッドユニット26などの各部を収納するものである。筐体21は、フラットベッドユニット3を左右方向に跨ぐような門型に形成されている。筐体21は、シャトルベースユニット2の架台部11に支持され、副走査駆動ガイド13A,13Bに沿って移動可能に構成されている。
主走査駆動ガイド22は、ヘッドユニット26を左右方向(主走査方向)に移動するようにガイドするものである。主走査駆動ガイド22は、左右方向に延びる長尺状の部材によって形成されている。ヘッドユニット26は、主走査駆動モータ23によって左右方向に移動する。
ヘッドユニット26は、上述したように主走査駆動ガイド22に沿って左右方向に移動しながら、印刷媒体15にインクを吐出することによって印刷処理を施すものである。本実施形態においては、ヘッドユニット26は、500mm/s~1500mm/sの速度で移動する。
ヘッドユニット26は、図2に示すように、4つのインクジェットヘッド31を有している。図3は、インクジェットヘッド31の外観を示す斜視図である。インクジェットヘッド31は、図3に示すように、ノズルプレート36と、ノズルガード32とを備えている。ノズルプレート36は、インクを吐出するノズル37が、前後方向に複数配列されたノズル列を有するものである。
ノズルガード32は、ノズルプレート36のインク吐出面36aを保護するものであり、ノズルプレート36のノズル列に対応する部分に開口46を有し、ノズル列のインク吐出面36aに対して設けられるものである。ノズルガード32の開口46は、前後方向に細長い矩形状に形成され、全ノズル37が露出するように形成されている。
4つのインクジェットヘッド31は、左右方向に並列して配置されている。4つのインクジェットヘッド31は、それぞれ異なる色(たとえばシアン、ブラック、マゼンダおよびイエロー)のインクを吐出するものである。
各インクジェットヘッド31には、インク供給管54の一端が接続されている。そして、インク供給管54の他端には、インクを貯留するインクタンク(図示省略)が接続されおり、インクタンクに貯留されたインクが、インク供給管54を介してインクジェットヘッド31に供給される。
また、各インクジェットヘッド31には、温度検出部33が設けられている。温度検出部33は、温度センサを備え、各インクジェットヘッド31の温度を検出し、その温度情報を後述する制御部5に出力する。
表面位置検出部40は、フラットベッドユニット3の媒体載置面3aに載置された印刷媒体15の表面の位置を検出する。
本実施形態の表面位置検出部40は、反射型の光学センサを備えている。表面位置検出部40は、フラットベッドユニット3上に載置された印刷媒体15に対してセンサ光を出射し、印刷媒体15において反射した反射光を検出することによって印刷媒体15の表面の位置を検出し、これによりヘッドユニット26とフラットベッドユニット3に載置された各印刷媒体15との距離を計測する。
表面位置検出部40は、ヘッドユニット26に設けられ、ヘッドユニット26とともに主走査駆動ガイド22に沿って主走査方向に移動し、これにより各印刷媒体15とヘッドユニット26との距離を計測する。各印刷媒体15における距離の計測点については、各印刷媒体15に対して少なくとも1点計測すれば良いが、複数点計測することが好ましく、より好ましくは各印刷媒体15に対して3点以上である。1枚の印刷媒体15について複数の計測点の距離を検出する場合には、たとえばその距離の平均値、最大値、最小値または中央値などの統計値をその印刷媒体15とヘッドユニット26との距離の代表値として用いればよい。
なお、表面位置検出部40としては、上述した構成に限らず、印刷媒体15毎の表面の位置を検出するものであれば、その他の構成を採用してもよい。また、表面位置検出部40としては、各印刷媒体15の高さ(媒体載置面3aから印刷媒体15の表面までの距離)を光学センサなどによって検出したり、もしくはユーザによって設定入力された各印刷媒体15の厚さを取得するものでもよい。
図4は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系を示すブロック図である。インクジェット印刷装置1は、装置全体を制御する制御部5を備えている。制御部5は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えている。制御部5は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたプログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって図4に示す各部を制御するものである。
また、本実施形態の制御部5は、分割領域設定部51と、高さ情報取得部52と、吐出制御部53とを備えている。分割領域設定部51、高さ情報取得部52および吐出制御部53は、上述したプログラムが実行されることによって機能する。
分割領域設定部51は、フラットベッドユニット3上に配置された全ての印刷媒体15の表面を含む全体印刷領域を複数の分割領域に分割する。具体的には、分割領域設定部51は、少なくとも2枚の印刷媒体15の表面を含む分割領域が少なくとも1つ含まれるように複数の分割領域を設定する。なお、分割領域の設定方法については、後で詳述する。
高さ情報取得部52は、表面位置検出部40によって検出された各分割領域に含まれる印刷媒体15の表面の位置に基づいて、各分割領域の高さに関する情報を取得する。本実施形態の高さ情報取得部52は、高さに関する情報として、分割領域に含まれる印刷媒体15とヘッドユニット26との距離の平均値を算出する。すなわち、高さ情報取得部52は、分割領域毎について、その分割領域に含まれる各印刷媒体15の表面とヘッドユニット26との距離を取得し、その各印刷媒体15の表面とヘッドユニット26との距離の平均値を算出する。なお、高さに関する情報としては、平均値に限らず、最大値、最小値および中央値などその他の統計量を算出するようにしてもよい。また、高さに関する情報として、分割領域に含まれる印刷媒体15の表面とヘッドユニット26との距離そのものを用いるようにしてもよい。
吐出制御部53は、各分割領域の高さに関する情報に基づいて、分割領域毎にインクジェットヘッド31のインク吐出制御を行う。本実施形態の吐出制御部53は、各分割領域の高さに関する情報を取得し、その高さに関する情報に基づいて、分割領域毎について、インク吐出制御の情報としてインク吐出速度を求める。
吐出制御部53には、上述した高さに関する情報の値とインク吐出速度とを対応付けた吐出速度テーブル(本発明の吐出制御テーブルに相当する)が予め記憶されており、吐出制御部53は、各分割領域の高さに関する情報に基づいて、その吐出速度テーブルを参照して分割領域毎のインク吐出速度を決定する。このように吐出速度テーブルを用いることによって、より簡易な構成で、高さに関する情報に応じたインク吐出速度を決定することができる。
さらに、吐出制御部53には、種々のインク吐出速度とインクジェットヘッド31の駆動電圧とを対応付けた駆動電圧テーブルが予め記憶されている。また、吐出制御部53には、インクジェットヘッド31の温度毎の上述した駆動電圧テーブルが予め記憶されている。
吐出制御部53は、各分割領域に含まれる印刷媒体15に印刷処理を施す際には、上述した温度検出部33によって検出された各インクジェットヘッド31の温度に応じた駆動電圧テーブルを選択する。そして、吐出制御部53は、各分割領域に対応するインク吐出速度に基づいて、選択した駆動電圧テーブルを参照することによって、各インクジェットヘッド31の駆動電圧を決定し、その駆動電圧を各インクジェットヘッド31に出力することによって各インクジェットヘッド31のインク吐出速度を制御する。
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1の印刷動作について説明する。図5は、印刷動作の一連の流れを示すフローチャートである。以下、図5に示すフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
インクジェット印刷装置1において、印刷動作の開始前の待機状態では、シャトルユニット4は、待機位置(HOME)に配置されている。シャトルユニット4の待機位置は、図1において実線で示すシャトルユニット4の位置であり、シャトルベースユニット2の架台部11の後端部である。
そして、図1に示すように、複数の印刷媒体15がフラットベッドユニット3の媒体載置面3a上に設置された後、印刷ジョブが入力されると、制御部5は、まず、各印刷媒体15の表面の位置を検出する(S10)。具体的には、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御してシャトルユニット4を待機位置から印刷処理開始位置へ移動させるとともに、主走査駆動モータ23を制御して副走査方向に並ぶ各走査区間においてヘッドユニット26を主走査方向に移動させることによって、全ての印刷媒体15の表面を表面位置検出部40によって走査し、各印刷媒体15の表面の位置を検出することによって各印刷媒体15とヘッドユニット26との距離を計測する。なお、シャトルユニット4の印刷処理開始位置は、図1において二点鎖線で示すシャトルユニット4の位置であり、シャトルベースユニット2の架台部11の前端部である。
そして、各印刷媒体15とヘッドユニット26との距離が計測された後、制御部5の分割領域設定部51は、全ての印刷媒体15の表面を含む全体印刷領域を複数の分割領域に分割する(S12)。本実施形態においては、図1に示すように、3×3の9枚の印刷媒体15がフラットベッドユニット3上に載置される。そして、分割領域設定部51は、図6に示すように、左右方向(主走査方向)に並べられた3枚の印刷媒体15のうちの、一番左に載置された1枚の印刷媒体15aを含む分割領域G1と残りの2枚の印刷媒体15b,15cを含む分割領域G2とに全体印刷領域を分割する。分割領域G1と分割領域G2は、左右方向に並ぶ3枚の印刷媒体15からなる印刷媒体15の列毎に設定される。すなわち、全体印刷領域は、全部で6つの分割領域G1,G2に分割される。
なお、本実施形態においては、上述したように9枚の印刷媒体15を含む全体印刷領域を6つの分割領域G1および分割領域G2に分割するようにしたが、フラットベッドユニット3に載置される印刷媒体15の枚数および分割領域の設定方法については、これに限らず、ユーザによって適宜設定される。
次いで、制御部5の高さ情報取得部52は、各分割領域G1,G2の高さに関する情報として、各分割領域G1,G2に含まれる印刷媒体15とヘッドユニット26との距離の平均値を算出する(S14)。本実施形態においては、分割領域G1には1枚の印刷媒体15aしか含まれていないので、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離h1がそのまま分割領域G1の平均値H1として取得される。1枚の印刷媒体15aについて、複数の測定点の上記距離を計測する場合には、その平均値が用いられる。
また、分割領域G2には、2枚の印刷媒体15b,15cが含まれているので、印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2と印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離h3との平均値H2が、分割領域G2の高さに関する情報として算出される。印刷媒体15bと印刷媒体15cについて、それぞれ複数の測定点の上記距離を検出する場合には、印刷媒体15bの複数の上記距離の平均値と印刷媒体15cの複数の上記距離の平均値が算出され、その2つの平均値の平均値が分割領域G2の平均値H2として用いられる。
そして、高さ情報取得部52において算出された分割領域G1の平均値H1と分割領域Gの平均値H2は吐出制御部53に出力される。吐出制御部53は、入力された分割領域G1の平均値H1と分割領域Gの平均値H2に基づいて、各分割領域G1,G2の印刷処理時におけるインク吐出速度を求め、その各インク吐出速度に応じたインクジェットヘッド31の駆動電圧を求める(S16)。ここでは、分割領域G1に含まれる印刷媒体15aの印刷処理時の駆動電圧をV1とし、分割領域G2に含まれる印刷媒体15b,15cの印刷処理時の駆動電圧をV2とする。
次いで、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御してシャトルユニット4を第1の走査区間まで移動させた後、主走査駆動モータ23を制御し、ヘッドユニット26を主走査方向に移動させながらインクジェットヘッド31を制御して第1の走査区間の印刷処理を行う(S18)。この際、制御部5の吐出制御部53は、分割領域G1に含まれる印刷媒体15aの印刷処理の際には、インクジェットヘッド31の駆動電圧をV1に設定し、分割領域G2に含まれる印刷媒体15b,15cの印刷処理の際には、インクジェットヘッド31の駆動電圧をV2に設定する。
そして、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御してシャトルユニット4を第2の走査区間から最後の第nの走査区間まで順次移動させ、第1の走査区間と同様にしてインクジェットヘッド31の駆動電圧を分割領域G1,G2毎に制御し、各走査区間の印刷処理を行う。
制御部5は、最後の第nの走査区間の印刷処理が終了した後、副走査駆動モータ12を制御してシャトルユニット4を待機位置(HOME)へ移動させ、これにより印刷動作が終了となる。
上記実施形態のインクジェット印刷装置によれば、フラットベッドユニット3上の配置された複数の印刷媒体15の表面の位置を検出し、フラットベッドユニット3上に配置された全ての印刷媒体の表面を含む全体印刷領域を複数の分割領域G1,G2に分割し、各分割領域G1,G2に含まれる印刷媒体15の高さに関する情報を取得する。そして、各分割領域G1,G2の高さに関する情報に基づいて、分割領域G1,G2毎にインクジェットヘッド31のインク吐出制御を行うようにしたので、厚さが異なる複数の印刷媒体15に対して、効率良く、かつ画像再現性の高い印刷処理を施すことができる。
すなわち、各印刷媒体15a,15b,14の表面位置に基づいてインク吐出制御を行うことで、画像再現性の高い印刷処理を施すことができるとともに、2枚の印刷媒体15b,15cを含む分割領域G2を設定し、その分割領域G2の高さに関する情報(印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離と印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離の平均値)を用いてインク吐出制御を行うようにしたので、印刷媒体15bと印刷媒体15cとで別々にインク吐出制御を行う場合と比較すると、効率的に印刷処理を行うことができる。
また、上記実施形態では、従来のように印刷媒体の高さに応じてインクジェットヘッドを上下方向に移動させるのではなく、インク吐出速度を制御するようにしたので、印刷媒体の表面位置に応じて即座に切り替え可能であり、これによりインクジェットヘッド31による高速な走査も可能となり、生産性を向上させることができる。
また、上記実施形態においては、図6に示すように分割領域G1と分割領域G2を設定するようにしたが、上述したように分割領域の設定方法は、この例に限られない。たとえば図7に示すように、左右方向(主走査方向)に並べられた3枚の印刷媒体15のうちの、左側に載置された2枚の印刷媒体15a,15bを含む分割領域G1と残りの一番右に載置された印刷媒体15cを含む分割領域G2とに全体印刷領域を分割してもよい。この場合、分割領域G1の高さに関する情報は、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離h1と印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2の平均値H3となり、分割領域G2の高さに関する情報(平均値H4)は、印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離h3そのものとなる。
また、上記実施形態においては、分割領域G1と分割領域G2とでインク吐出速度を変更し、図6に示す分割領域G2については、平均値H2からインク吐出速度を算出しているが、この平均値H2と、分割領域G2に含まれる印刷媒体15bおよび印刷媒体15cのヘッドユニット26との距離h2,h3との差は、できるだけ小さい方が画像再現性の観点から好ましい。
そこで、分割領域設定部51が、分割領域の分割方法が異なる複数の分割パターンを生成し、その各分割パターンの場合における統計量(平均値)に基づいて、複数の分割パターンの中からいずれかの分割パターンを選択し、その選択した分割パターンで分割領域を設定するようにしてもよい。
具体的には、上記実施形態のように主走査方向(左右方向)に3枚の印刷媒体15a,15b,15cを並べて載置する場合、図6に示す第1の分割パターンと、図7に示す第2の分割パターンとがある。さらに、図8に示すように印刷媒体15a,15b,15cの全てを含む非分割領域G3を設定し、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離h1と印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2と印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離h3の平均値H5を算出し、その平均値H5に基づいてインク吐出速度を決定する非分割パターンも考えられる。
したがって、分割領域設定部51は、上述した第1の分割パターン、第2の分割パターンおよび非分割パターンのうち、各分割領域の高さに関する情報(各印刷媒体15とヘッドユニット26との距離の統計量(平均値))と各印刷媒体15とヘッドユニット26との距離との差が最も小さくなるパターンを選択する。このようにパターンを選択することによって、画像再現性をより向上させることができる。
分割領域設定部51は、たとえば図6に示す第1の分割パターンについて、分割領域G2の高さに関する情報である平均値H2と、印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2との差Δh22を算出し、分割領域G2の高さに関する情報である平均値H2と、印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離h3との差Δh23とを算出する。そして、分割領域設定部51は、差Δh22と差Δh23との加算値を第1の分割パターンの差分情報として取得する。
また、分割領域設定部51は、図7に示す第2の分割パターンについて、分割領域G1の高さに関する情報である平均値H3と、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離h1との差Δh31を算出し、分割領域G1の高さに関する情報である平均値H3と、印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2との差Δh32とを算出する。そして、分割領域設定部51は、差Δh31と差Δh32との加算値を第2の分割パターンの差分情報として取得する。
また、分割領域設定部51は、図8に示す非分割パターンについて、非分割領域G3の高さに関する情報である平均値H5と、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離h1との差Δh51を算出し、非分割領域G3の高さに関する情報である平均値H5と印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2との差Δh52を算出し、非分割領域G3の高さに関する情報である平均値H5と、印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離h3との差Δh53とを算出する。そして、分割領域設定部51は、差Δh51と差Δh52と差Δh53との加算値を非分割パターンの差分情報として取得する。
分割領域設定部51は、第1の分割パターンの差分情報と第2の分割パターンの差分情報と非分割パターンの差分情報の大きさを比較し、この差分情報が最も小さいパターンを選択する。そして、分割領域設定部51は、その選択されたパターンに基づいて、分割領域または非分割領域を設定し、その高さに関する情報である平均値に基づいて、インク吐出速度を決定する。
また、上記説明では、分割領域または非分割領域の高さに関する情報(印刷媒体15とヘッドユニット26との距離の平均値)と、その領域に含まれる印刷媒体15とヘッドユニット26と距離との差が最も小さくなるように分割パターンまたは非分割パターンを選択するようにしたが、これに限らず、分割領域設定部51が、たとえばインク吐出速度の変更量が最も少なくなるように分割パターンを選択するようにしてもよい。
この場合、上述した第1の分割パターンおよび第2の分割パターンの他に、各印刷媒体15a,15b,15c毎に分割領域を設定した第3の分割パターンも考えられる。
したがって、分割領域設定部51は、たとえば図6に示す第1の分割パターンについて、分割領域G1の高さに関する情報である平均値H1と分割領域G2の高さに関する情報である平均値H2との差ΔH12を算出する。
また、分割領域設定部51は、図7に示す第2の分割パターンについて、分割領域G1の高さに関する情報である平均値H3と分割領域G2の高さに関する情報である平均値H4との差ΔH34を算出する。
また、分割領域設定部51は、上述した第3の分割パターンについて、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離h1と印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2との差ΔH21を算出し、印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2と印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離h3との差ΔH23を算出し、これらの差のうちの大きい方を選択する。
そして、分割領域設定部51は、第1の分割パターンの差ΔH12と、第2の分割パターンの差ΔH34と、第3の分割パターンの差ΔH21および差ΔH23のいずれか大きい方の差とを比較し、最も小さい差を有する分割パターンを最終的な分割パターンとして選択する。
また、上記実施形態においては、分割領域を設定する際、分割領域の境界が印刷媒体15と印刷媒体15の間に設定されるようにしたが、これに限らず、たとえば図9に示すように、印刷媒体15b内に分割領域の境界位置を設定するようにしてもよい。すなわち、分割領域の主走査方向(左右方向)の長さについては、ヘッドユニット26の主走査方向の移動速度をXとし、インクジェットヘッド31の駆動電圧の変更に要する時間をtとした場合、Xt以上であれば任意に設定することが可能である。
たとえば図9に示すように分割領域G1と分割領域G2とが設定された場合には、高さ情報取得部52は、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離h1と印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2との平均値H6を分割領域G1の高さに関する情報として算出とする。また、高さ情報取得部52は、印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2と印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離h3との平均値H7を分割領域G2の高さに関する情報として算出する。
そして、吐出制御部53は、分割領域G1の平均値H7に基づいて、分割領域G1内の印刷媒体15aと印刷媒体15bの一部(左側部分)とに印刷処理を施す際のインク吐出速度を決定し、分割領域G2の平均値H7に基づいて、分割領域G2内の印刷媒体15bの一部(右側部分)と印刷媒体15cとに印刷処理を施す際のインク吐出速度を決定する。
また、上述したように印刷媒体15b内に分割領域の境界位置を設定する場合、分割領域設定部51は、印刷媒体15bに印刷される画像データに基づいて、分割領域の境界位置を決定するようにしてもよい。具体的には、分割領域設定部51は、たとえば印刷媒体15bに印刷される画像データが、主走査方向について左側と右側とで異なる画像データである場合には、その左側の画像データと右側の画像データとの境界位置を分割領域の境界位置として設定する。なお、ここでいう左側の画像データと右側の画像データが異なる場合とは、たとえば画像データに含まれる模様のパターンが異なっている場合や、文字領域と写真領域とで異なっている場合などがある。分割領域の境界位置については、予めユーザが設定入力してもよいし、分割領域設定部51が、画像データから自動的に認識したり、印刷ジョブ内に分割領域の情報を含めておき、これを認識するようにしてもよい。
また、たとえばフラットベッドユニット3上に載置されている印刷媒体15の配置が、インク吐出速度の変更量が大きい配置であり、並べ替えた方がインク吐出速度の変更量が小さくなる場合には、制御部5が、表示パネル(図示省略)などに印刷媒体15の配置の変更を促すメッセージや変更後の印刷媒体15の配置方法を表示させるようにしてもよい。具体的には、制御部5は、たとえば図6に示すように印刷媒体15a,15b,15cが配置されている場合、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離h1と印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2との差ΔH21と、印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離h2と印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離h3との差ΔH23との加算値を算出する。
また、制御部5は、印刷媒体15aと印刷媒体15bとを入れ替えて配置した場合を想定し、その場合にも同様に、印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離と印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離との差を算出し、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離と印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離との差を算出し、これらの差の加算値を算出する。
また、制御部5は、印刷媒体15bと印刷媒体15cとを入れ替えて配置した場合を想定し、その場合も同様に、印刷媒体15aとヘッドユニット26との距離と印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離との差を算出し、印刷媒体15cとヘッドユニット26との距離と印刷媒体15bとヘッドユニット26との距離との差を算出し、これらの差の加算値を算出する。
そして、制御部5は、現在の印刷媒体15a,15b,15cの配置の場合の差の加算値と、上述した2つの想定した配置の場合の差の加算値とを比較し、最も差の加算値が小さくなる配置方法を求める。そして、その配置方法が現在の印刷媒体15a,15b,15cの配置方法とは異なる場合には、制御部5は、印刷媒体15の配置の変更を促すメッセージと、最も差の加算値が小さくなる配置方法を表示パネルに表示させる。
そして、ユーザによって印刷媒体15a,15b,15cの配置が変更された後、制御部5は、上記実施形態と同様にして分割領域を設定し、分割領域毎のインク吐出速度を決定する。
また、上記実施形態においては、分割領域毎にインク吐出速度を制御するようにしたが、インク吐出タイミングを制御するようにしてもよい。インク吐出速度を制御する場合、分割領域の高さに関する情報の平均値が大きいほどインク吐出速度が速くなるように制御されるが、インク吐出タイミングを制御する場合には、分割領域の高さに関する情報の平均値が大きいほどインク吐出タイミングを早めるようにすればよい。
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、印刷媒体15(フラットベッドユニット3)に対してシャトルユニット4を移動させて副走査方向への走査を行うようにしたが、これに限らず、シャトルユニット4を固定して印刷媒体15(フラットベッドユニット3)を移動させるようにしてもよいし、シャトルユニット4と印刷媒体15(フラットベッドユニット3)との両方を移動させるようにしてもよい。
本発明のインクジェット印刷装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
本発明のインクジェット印刷装置において、吐出制御部は、高さに関する情報とインク吐出制御の制御情報とを対応付けた吐出制御テーブルを備えることができ、その吐出制御テーブルを用いてインク吐出制御を行うことができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置において、高さ情報取得部は、高さに関する情報として、各分割領域に含まれる印刷媒体の表面の位置に基づく統計量を取得することができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置において、分割領域設定部は、分割領域の分割方法が異なる複数の分割パターンを生成し、その各分割パターンの場合における統計量に基づいて、複数の分割パターンの中からいずれかの分割パターンを選択することによって分割領域を設定することができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置において、吐出制御部は、インク吐出制御として、インク吐出速度を制御することができる。