しかしながら、中軸に特許文献1のような縮径部、ローレット部、雄ネジ部を形成したとしても、十分に中軸の振れを抑制できず、その結果、セラミックヒータにかかる曲げ応力を十分に抑制することできていないことがあった。
本願は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、中軸の振れを効果的に抑制することで、セラミックヒータにかかる曲げ応力を抑制可能なグロープラグ及びグロープラグの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の一態様は、軸線方向に延びる棒状で金属製の中軸と、前記中軸よりも先端側に配置され、前記中軸と電気的に接続される棒状のセラミックヒータと、前記中軸及び前記セラミックヒータを取り囲み、前記セラミックヒータを保持する主体金具と、を備えるグロープラグであって、
前記中軸には、前記軸線方向に沿って延びる矯正部であり、前記中軸の前記周方向に延びると共にそれぞれが不規則な形状の凹部及び凸部が前記軸線方向にそれぞれ複数並ぶ外周面を備える矯正部を有し、前記矯正部の前記外周面は、複数の前記凸部も含んで全面が転造面にて形成されてなることを特徴とする。
このグロープラグでは、中軸には、軸線方向に沿って延びる矯正部であり、中軸の周方向に延びると共にそれぞれが不規則な形状の凹部及び凸部が軸線方向にそれぞれ複数並ぶ外周面を備える矯正部を有している。その上、矯正部の外周面は、複数の凸部も含んで全面が転造面にて形成されてなる。これにより、矯正部が中軸の振れを効果的に抑制することができ、その結果、セラミックヒータに曲げ応力がかかりにくく、セラミックヒータが破損することを抑制できる。
なお、「中軸の前記周方向に延びる凹部及び凸部」とは、中軸の外周面に形成される凹部及び凸部が、それぞれ中軸の周方向に沿って設けられることを指す。但し、凹部及び凸部は、周方向に亘って全周設けられる(つまり、それぞれが周方向に連結された形態である)必要は無く、凹部又は凸部が周方向の一部で離間していても良い。
また、「それぞれ不規則な形状の凹部及び凸部」とは、中軸の軸線方向に見たときに、凸部同士がそれぞれ異なる形状、又は凹部同士がそれぞれ異なる形状であることを指す。なお、一部の凸部同士が異なる形状、又は一部の凹部同士がそれぞれ異なる形状であれば、他部の凸部同士が同じ形状、又は他部の凹部同士が同じ形状であっても良い。
さらに、「矯正部の外周面は、複数の凸部も含んで全面が転造面にて形成されてなる」とは、ローレット部や雄ネジ部のような、中軸の外周面の一部のみが径方向内側に向かって押圧されて最終的な外周面を得るものではない。詳細には、中軸の外周面の一部を押圧することで凹部を形成しつつ、押圧せずに凹部の形成により凸部を盛り上げることで、最終的な外周面を得るものではない。矯正部の外周面の全面が、少なくとも1度は転造加工により径方向内側に押圧されたものであり、このような転造加工により形成された外周面を転造面と言う。
また、前記矯正部の外周面は、前記複数の凸部も含んで全面にわたり周方向に延びる加工痕が設けられてなることが好ましい。これにより、矯正部の外周面は全面が転造面にて形成することができる。その結果、矯正部が中軸の振れを効果的に抑制することができ、その結果、グロープラグを組み立てたとしてもセラミックヒータに曲げ応力がかかりにくく、セラミックヒータが破損することを抑制できる。
また、複数の前記凹部の深さ、又は複数の前記凸部の高さは、不規則な長さとなることが好ましい。このように、複数の凹部の深さ、又は複数の凸部の高さが不規則な長さになることで、矯正部が中軸の振れをより効果的に抑制することができ、その結果、グロープラグを組み立てたとしてもセラミックヒータに曲げ応力がかかりにくく、セラミックヒータがより破損することを抑制できる。
なお、「凹部の深さ」とは、隣接する凸部からの最大深さを指し、「凸部の高さ」とは、隣接する凹部からの最大高さを指す。なお、隣接した凸部と凹部においては、「凹部の深さ」と「凸部の高さ」とは同じ長さとなる。
また、前記凸部及び前記凹部の前記軸線方向の幅は、不規則な長さとなることが好ましい。このように、凸部及び凹部の長さが不規則になることで、矯正部が中軸の振れをより効果的に抑制することができ、その結果、グロープラグを組み立てたとしてもセラミックヒータに曲げ応力がかかりにくく、セラミックヒータがより破損することを抑制できる。
また、前記中軸のうち前記矯正部よりも先端側及び後端側の少なくとも一方には、前記軸線方向に沿って延びる括れ部であり、前記中軸の周方向に亘って設けられる溝部が前記軸線方向に複数並ぶ外周面を備える括れ部を有するグロープラグに効果的である。
ディーゼルエンジンが発生する振動がディーゼルエンジンに組み付けられたグロープラグに伝わることで、グロープラグの中軸が振動してしまい、中軸に接続するセラミックヒータに力が負荷され、その結果、セラミックヒータが破損するおそれがある。これに対し、中軸に上述の構成を有する括れ部を設けることで、ディーゼルエンジンの振動を起因としたセラミックヒータへの力の負荷をより抑制することができる。
しかしながら、中軸に括れ部を設けることで、グロープラグを組み立てる前の中軸の振れがより大きくなることがあり、その結果、セラミックヒータにかかる曲げ応力がより大きくなり、セラミックヒータが破損してしまうおそれがあった。
これに対し、本願のような矯正部を中軸に設けることで、矯正部が中軸の振れを効果的に抑制することができ、その結果、グロープラグを組み立てたとしてもセラミックヒータに曲げ応力がかかりにくく、セラミックヒータが破損することをより抑制できる。
また、前記括れ部は、前記中軸の中央よりも先端側の部位に少なくとも設けられており、前記矯正部は、前記括れ部よりも前記中軸の後端側に設けられていることが好ましい。これにより、括れ部によって、ディーゼルエンジンの振動を起因としたセラミックヒータへの力の負荷をより抑制できる。その上、上述のような矯正部が後端側に設けられているので、矯正部が中軸の振れをより効果的に抑制することができ、その結果、グロープラグを組み立てたとしてもセラミックヒータに曲げ応力がかかりにくく、セラミックヒータが破損することをより抑制できる。その結果、セラミックヒータがより破損することを抑制できる。
さらに、前記括れ部と前記矯正部は互いが隣接されて設けられていることが好ましい。これにより、括れ部を設けることで生ずる振れを矯正部により効果的に抑制することができる。その結果、セラミックヒータがより破損することを抑制できる。
上記課題を解決するための本発明の別の態様は、請求項1乃至7の何れか一項に記載されたグロープラグの製造方法であって、
前記中軸に対して前記矯正部を形成する矯正部形成工程を有し、前記矯正部形成工程では、前記矯正部が形成される矯正部予定部位に対し、前記軸線方向に対して斜め方向に延びる複数の突起部が形成された転造ダイスを押しつけ、前記転造ダイスに対して相対的に前記中軸を複数回以上、前記周方向に回転させることによって、前記矯正部の前記外周面に、前記中軸の前記周方向に延びると共にそれぞれが不規則な形状の凹部及び凸部を前記軸線方向にそれぞれ複数並ぶように形成しつつ、複数の前記凸部も含んで前記矯正部の前記外周面の全面を転造面に形成することを特徴とする。
このグロープラグの製造方法では、矯正部形成工程として、矯正部が形成される矯正部予定部位に対し、軸線方向に対して斜め方向に延びる複数の突起部が形成された転造ダイスを押しつけ、転造ダイスに対して相対的に中軸を複数回以上、周方向に回転させている。これにより、矯正部の外周面に、中軸の周方向に延びると共にそれぞれが不規則な形状の凹部及び凸部が軸線方向に複数並ぶように形成しつつ、複数の凸部も含んで全面が転造面となるように矯正部の外周面を形成することができる。これにより、矯正部が中軸の振れを抑制することができ、その結果、グロープラグを組み立てたとしてもセラミックヒータに曲げ応力がかかりにくく、セラミックヒータが破損することを抑制できる。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、グロープラグやグロープラグの製造方法の他に、例えば、グロープラグを搭載した車両等の態様で実現することができる。
図1は、実施形態のセラミックグロープラグ10(以下、単に「グロープラグ10」とも呼ぶ)の概略断面図である。図2は、図1の先端側を拡大した概略断面図である。図示されたラインCLは、グロープラグ10の中心軸を示している。図示された断面は、中心軸CLを含む平らな断面である。以下、中心軸CLのことを「軸線CL」とも呼び、中心軸CLに平行な方向を「軸線方向」とも呼ぶ。中心軸CLを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、中心軸CLを中心とする円の円周方向を「周方向」とも呼ぶ。また、図1におけるセラミックヒータ40側をグロープラグ10の先端側と呼び、図1における端子部材80側をグロープラグ10の後端側と呼ぶ。
グロープラグ10は、主体金具20と、中軸30と、セラミックヒータ40(以下、単に「ヒータ40」とも呼ぶ)と、Oリング50と、絶縁部材60と、金属外筒70(以下、単に「外筒70」とも呼ぶ)と、端子部材80と、リング部材90と、を含んでいる。主体金具20は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔20xを有する筒状の部材である。また、主体金具20は、後端側に形成された工具係合部28と、工具係合部28よりも先端側に設けられた雄ネジ部22と、を含んでいる。工具係合部28は、グロープラグ10の脱着時に、図示しない工具と係合する部分である。雄ネジ部22は、図示しない内燃機関の取付孔の雌ネジに螺合するためのネジ山を含んでいる。主体金具20は、導電性材料(例えば、炭素鋼等の金属)で形成されている。
主体金具20の貫通孔20xには、中軸30が収容されている。中軸30は、棒状の部材であり、軸線CLに沿って延びている。中軸30は、導電材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)で形成されている。中軸30の後端部39は、主体金具20の後端開口OPbよりも後端側に露出している。中軸30の先端側には、括れ部410が設けられており、中軸の後端側には、矯正部510が設けられている。括れ部410及び矯正部510の詳細については、それぞれ後述する。
後端開口OPbの近傍において、中軸30の外面と、主体金具20の貫通孔20xの内面と、の間には、Oリング50が設けられている。Oリング50は、弾性材料(例えば、ゴム)で形成されている。さらに、主体金具20の後端開口OPbには、リング状の絶縁部材60が装着されている。絶縁部材60は、筒状部62と、筒状部62の後端側に設けられたフランジ部68と、を含んでいる。筒状部62は、中軸30の外面と、主体金具20の後端開口OPbを形成する部分の内面と、の間に挟まれている。絶縁部材60は、例えば、樹脂で形成されている。主体金具20は、これらの部材50、60を介して、中軸30を支持している。
絶縁部材60の後端側には、端子部材80が配置されている。端子部材80は、キャップ状の部材であり、導電材料(例えば、炭素鋼等の金属)で形成されている。端子部材80と主体金具20との間には、絶縁部材60のフランジ部68が挟まれている。端子部材80には、中軸30の後端部39が挿入されている。端子部材80が加締められることによって、端子部材80が後端部39に固定されている。これにより、端子部材80は、中軸30に、電気的に接続される。
主体金具20の先端開口OPaには外筒70が挿入され、これにより、主体金具20に外筒70が固定されている(例えば、圧入や溶接)。外筒70は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔70xを有する筒状の部材である。外筒70は、導電性材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)で形成されている。
外筒70の貫通孔70xには、通電によって発熱するヒータ40が挿入されている。ヒータ40は、中心軸CLに沿って延びるように配置された棒状の部材である。外筒70は、ヒータ40の中央部分の外周面を、保持している。ヒータ40の先端部41と後端部49とは、外筒70の外に露出している。ヒータ40の後端部49は、主体金具20の貫通孔20xに収容されている。以下、ヒータ40と金属外筒70との全体を、「ヒータモジュール490」とも呼ぶ。
ヒータ40の後端部49には、リング部材90が固定されている。リング部材90は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔を有する円筒状の部材であり、導電性材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)で形成されている。リング部材90の先端側には、ヒータ40の後端部49が圧入されている。接続部材90の後端側には、中軸30の先端部31が圧入されている。これにより、中軸30は、リング部材90を介して、ヒータ素子40に固定される。また、中軸30は、リング部材90に電気的に接続される。なお、中軸30の先端部31とリング部材90とは、溶接されてもよい。
次に、ヒータモジュール490の詳細について、説明する。図2に示すように、ヒータ40は、軸線CLに沿って延びる丸棒状の基体210と、基体210の内部に埋設された、略U字状の発熱抵抗体220(以下、単に「抵抗体220」と呼ぶ)と、を含んでいる。基体210は、絶縁性セラミック材料で形成されている(例えば、窒化ケイ素を含む材料)。抵抗体220は、導電性セラミック材料で形成されている(例えば、窒化ケイ素と導電物質とを含む材料。導電物質は、例えば、炭化タングステンである)。基体210は、抵抗体220を覆った状態で、抵抗体220を支持している。ヒータ40は、材料を焼成することによって、形成される。基体210の先端部(すなわち、ヒータ40の先端部41)は、丸められている。抵抗体220の電気伝導率は、基体210の電気伝導率よりも、高い。抵抗体220は、通電によって、発熱する。
抵抗体220は、2本のリード部221、222と、それらのリード部221、222に接続された発熱部223と、電極取出部281、282と、を含んでいる。各リード部221、222は、ヒータ40の後端部49から先端部41の近傍まで軸線CLの延びる方向に沿って(ここでは、軸線CLに平行に)延びている。第1リード部221と第2リード部222とは、中心軸CLを挟んでおおよそ対称な位置に、配置されている。
発熱部223は、ヒータ40の先端部41に埋設され、第1リード部221の先端と第2リード部222の先端とを接続する。すなわち、リード部221、222は、発熱部223の後端側に接続されている。発熱部223の形状は、ヒータ40の先端部41の丸い形状に沿って湾曲する略U字状である。発熱部223の断面積は、リード部221、222のそれぞれの断面積よりも、小さい。また、発熱部223の単位長さ当たりの電気抵抗は、リード部221、222の単位長さ当たりの電気抵抗よりも、大きい。この結果、通電時には、発熱部223の温度が、リード部221、222の温度と比べて、急速に上昇する。
第1リード部221の後端側には、第1電極取出部281が接続されている。第1電極取出部281は、径方向に沿って延びている。第1電極取出部281の一方は第1リード部221に接続され、他方はヒータ40の外面に露出し、外筒70の内周面に接触している。これにより、外筒70と第1リード部221とが、電気的に接続される。
第2リード部222の後端側には、第2電極取出部282が接続されている。第2電極取出部282は、径方向に沿って延びており、第1電極取出部281よりも、後端側に配置されている。第2電極取出部282の一方は第2リード部222に接続され、他方はヒータ40の外面に露出し、リング部材90の内周面に接触している。これにより、リング部材90と第2リード部222とが、電気的に接続される。
グロープラグ10の使用時には、主体金具20と端子部材80との間に、電圧が印加される。上述したように、第1リード部221は、第1電極取出部281と金属外筒70とを介して、主体金具20に電気的に接続されている。第2リード部222は、第2電極取出部282とリング部材90と中軸30とを介して、端子部材80に電気的に接続されている。従って、主体金具20と端子部材80とを通じて供給された電力は、リード部221、222を通じて、発熱部223に供給される。これにより、発熱部223が発熱する。
図3は、中軸30の外観説明図である。図4は、中軸30の括れ部410の説明図(断面)を示している。図5は、中軸の矯正部510の説明図を示している。図3に示すように、中軸30の先端側には、軸線方向に沿って延びる括れ部410が設けられており、中軸の後端側には、括れ部410に隣接するようにして軸線方向に沿って延びる矯正部510が設けられている。
括れ部410の外周面には、径方向の内側に向かって凹む複数の溝部300が形成されている。各溝部300は、中軸30の外周面30s上で、中軸30の周方向に亘って1周する閉じたループ状の溝である。すなわち、各溝部300は、軸線CLの周りを1周している。
図4の断面上において、各溝部300は、底部310と、底部310を挟んで対向する2つの傾斜面320、330と、で形成されている。底部310は、軸線CLにおおよそ平行な外周面を有している。第1傾斜面320は、径方向の内側から外側に向かって傾斜面を辿る場合に先端側に向けて軸線CLに対して斜めに傾斜している傾斜面である。底部310の先端側には、この第1傾斜面320が接続されている。溝部300の先端側の傾斜面320を、先端側傾斜面320とも呼ぶ。第2傾斜面330は、径方向の内側から外側に向かって傾斜面を辿る場合に後端側に向けて軸線CLに対して斜めに傾斜している傾斜面である。底部310の後端側には、第2傾斜面330が接続されている。溝部300の後端側の傾斜面330を、後端側傾斜面330とも呼ぶ。
第1傾斜面320の径方向の外側の端部と、第2傾斜面330の径方向の外側の端部とは、頂部340に接続されている。頂部340は、軸線CLにおおよそ平行な外周面を有している。頂部340の後端側に、第1傾斜面320が接続され、頂部340の先端側に、第2傾斜面330が接続されている。
図示するように、括れ部410は、底部310と頂部340とが軸線方向に交互に並んだ波状の部分を形成している。このように、括れ部410は、軸線CLに平行な方向に沿って延びている。
このような括れ部410を、中軸30に形成する方法としては、種々の方法を採用可能である。例えば、いわゆる転造を採用してもよい。具体的には、括れ部410の形状を反転させた形状の部分を有するローラを、中軸30に押しつけた状態で、ローラと中軸30とを回転させることによって底部310を形成しつつ、底部310の形成により頂部340を盛り上げて形成することで、中軸30に括れ部410を形成してもよい。このような加工は、ローレット加工とも呼ばれる。
このように溝部300を有する括れ部410は、中軸30の他の部分と比べて、曲がりやすい。従って、括れ部410は、中軸30に力が印加される場合に、曲がることによって、中軸30からグロープラグ10の他の部分(例えば、ヒータ40)に力が伝わることを抑制できる。例えば、ディーゼルエンジンの振動がグロープラグ10に伝わることで、主体金具20内の中軸30が振動してしまう。これにより、中軸30からヒータ40へ、力が伝わり、ヒータ40へ伝わる力がより大きい場合には、ヒータ40が破損するおそれがある。これに対し、中軸30が括れ部410を設けることで、中軸30からヒータ40に力が伝わることを抑制できる。
その一方、中軸30に括れ部410を設けることで、グロープラグ10を組み立てる前の中軸30の振れ(特に、括れ部410以外の部位)がより大きくなることがある。そして、振れが大きい中軸30を用いてグロープラグ10を組み立てた場合、ヒータ40にかかる曲げ応力が大きくなり、ヒータ40が破損してしまうおそれがあった。
これに対し、図3に示すように、中軸30には矯正部510を備えている。具体的には、図5に示すように、矯正部510の外周面に、軸線方向に並ぶようにして、複数の凹部520及び複数の凸部530が形成されている。但し、図5からも明らかなように、複数の凹部520の形状は、それぞれ不規則な形状であり、また複数の凹部520の形状も、それぞれ不規則な形状である。
各凹部520及び各凸部530は、中軸30の外周面30s上で、中軸30の周方向に延びている。なお、凹部520及び凸部530は中軸30の周方向に亘って1周する閉じたループ状であっても良いし、中軸30の周方向の一部で離間していても良い。
そして、矯正部510の外周面は、凹部520や凸部530に係わらず、全面にわたって周方向に延びる加工痕Sが形成されている。このような加工痕Sが形成されていることで、矯正部510の外周面は全面が転造面にて形成することができる。その結果、矯正部510が中軸30の振れを効果的に抑制することができ、その結果、グロープラグ10を組み立てたとしてもヒータ40に曲げ応力がかかりにくく、ヒータ40が破損することを抑制できる。
また、実施形態の凸部530は、隣接した凹部520からの最大高さTが凸部ごとに不規則な長さとなっている。言い換えると、実施形態の凹部520は、隣接した凸部530からの最大深さHが凹部ごとに不規則な長さとなっている。このように、凹部520の深さ、又は凸部530の高さが不規則な長さになることで、矯正部510が中軸30の振れをより効果的に抑制することができ、その結果、グロープラグ10を組み立てたとしてもヒータ40に曲げ応力がかかりにくく、ヒータ40がより破損することを抑制できる。
また、実施形態の凸部530や、凹部520の軸線方向の幅W1、W2は、それぞれ不規則な長さとなっている。このように、凹部520、又は凸部530の長さが不規則になることで、矯正部510が中軸30の振れをより効果的に抑制することができ、その結果、グロープラグ10を組み立てたとしてもヒータ40に曲げ応力がかかりにくく、ヒータ40がより破損することを抑制できる。
また、実施形態の括れ部410は、中軸30の中央よりも先端側の部位に少なくとも設けられており、矯正部510は、括れ部410よりも中軸30の後端側に設けられている。これにより、括れ部410によって、ディーゼルエンジンの振動を起因としたヒータ40への力の負荷をより抑制できる。その上、上述のような矯正部510が後端側に設けられているので、矯正部510が中軸30の振れをより効果的に抑制することができ、その結果、グロープラグ10を組み立てたとしてもヒータ40に曲げ応力がかかりにくく、ヒータ40が破損することをより抑制できる。その結果、ヒータ40がより破損することを抑制できる。
さらに、括れ部410と矯正部510は互いが隣接されて設けられている。これにより、括れ部410を設けることで生ずる振れをより効果的に抑制することができる。その結果、ヒータ40がより破損することを抑制できる。
なお、このような実施形態の矯正部510を中軸30に形成する方法としては、転造加工を採用する。具体的には、図6に示すように、縦方向(紙面上下方向)よりも横方向(紙面左右方向)の方が長い横長の矩形状の転造ダイス600を準備する。但し、この転造ダイス600には、縦方向に対して交差する斜め方向に延びる複数の突起部610が形成されている。この転造ダイス600の縦方向と括れ部410が既に形成された中軸30とを軸線方向を平行にしつつ、中軸30の矯正部予定部位510Aに転造ダイス600を押しつけた状態で、転造ダイス600の横方向に中軸30を相対的に回転させる。なお、中軸30の直径よりも転造ダイス600の横方向の長さが長いため、中軸30は複数回、転造ダイス600上で周方向に回転することになる。このとき、転造ダイス600に設けられた突起部610は、矯正部予定部位510Aの様々な面を押し付けることになる。その結果、矯正部510の外周面に、中軸30の周方向にそれぞれが延びると共にそれぞれが不規則な形状の凹部520及び凸部530が軸線方向に複数並びように形成しつつ、複数の凹部520及び凸部530も含んで全面が転造面となるように矯正部510の外周面を形成することができる。
以上のように、このグロープラグ10では、中軸30に、軸線方向に沿って延びる矯正部510であり、中軸30の周方向に延びると共にそれぞれが不規則な形状の凹部520及び凸部530が軸線方向にそれぞれ複数並ぶ外周面を備える矯正部510を有している。その上、矯正部510の外周面は、複数の凸部530も含んで全面が転造面にて形成されてなる。これにより、矯正部510が中軸の振れを抑制することができ、その結果、グロープラグ10を組み立てたとしてもヒータ40に曲げ応力がかかりにくく、ヒータ40が破損することを抑制できる。
次に、本実施形態の中軸の振れ量を評価した。評価としては、3種類のサンプルを準備した。サンプル1は、本実施形態の中軸30と同様の位置に括れ部410を設けたものの、矯正部を設けてない中軸である。サンプル2は、本実施形態の中軸30と同様の位置に括れ部410を設けつつも、矯正部予定部位に従来技術に記載された縮径部を形成した中軸である。縮径部とは、図7に示すように、中軸の一部を全周にわたり塑性加工により縮径させた部分が軸線方向に離間して配置されている形態である。つまり、縮径させた部分以外の縮径部には、押圧加工が施されていない。サンプル3は、本実施形態の中軸30である。つまり、サンプル3の中軸30には、括れ部410を設けると共に、全面に転造面が形成された矯正部510(図5参照)が設けられている。なお、3種類のサンプルは、いずれのサンプルも中軸の形状や寸法、括れ部の形状や寸法は同一にしており、また、中軸の製造方法や括れ部の製造方法も同一の製造方法を用いている。
3種類のサンプルに関し、中軸の後端部(本実施形態における後端部39に相当)を通る中軸の軸線を基準として、中軸の先端部(本実施形態における先端部31に相当)の振れ量(基準とした中軸の軸線と先端部の中心位置との径方向距離)を測定した。そして、サンプル1の振れ量を100%としたときの、サンプル2、3の振れ量の割合を算出した。その結果、サンプル2の振れ量の割合は35%となり、サンプル3の振れ量の割合は18%となった。つまり、サンプル3の振れ量の割合は、サンプル2の振れ量の割合の約半分まで抑えることができるようになった。
なお、この発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
上記実施形態では、中軸30に括れ部410と矯正部510とが隣接して設けられていたが、これに限られる必要はない。例えば、中軸に括れ部と矯正部とが離間して設けられて(具体的には、括れ部が中軸の先端側に設けられ、矯正部が中軸の後端側に設けられ、その間に括れ部や矯正部等の加工が加わっていない部位が設けられて)いても良い。
また、上記実施形態では、括れ部410が中軸30の先端側に配置され、矯正部510が中軸の後端側に配置されていたが、これに限られる必要はない。例えば、括れ部が中軸の後端側に配置され、矯正部が中軸の先端側に配置されていても良い。さらには、括れ部の先端側及び後端側に矯正部が設けられる構成であっても良い。
また、上記実施形態では、中軸30に括れ部410と矯正部510との両方が設けられていたが、これに限られる必要はない。例えば、中軸に矯正部のみが設けられている構成であっても良い。この構成であっても、矯正部が中軸の振れを抑制することができ、その結果、グロープラグを組み立てたとしてもセラミックヒータに曲げ応力がかかりにくく、セラミックヒータが破損することを抑制できる。
また、上記実施形態では、括れ部410が既に形成された中軸30の矯正部予定部位510Aに転造ダイス600を相対的に回転させて矯正部510を形成したが、これに限られる必要は無い。例えば、括れ部及び矯正部が形成されていない中軸の括れ部予定部位及び矯正部予定部位に対して、括れ部を形成する転造ダイスと矯正部を形成する転造ダイスとを同時に押し付けて、転造ダイスを相対的に回転させることで括れ部及び矯正部を形成しても良い。さらには、括れ部を形成する転造ダイスと矯正部を形成する転造ダイスが一体であっても良い。