A.第1実施形態:
A1.セラミックグロープラグの構成:
図1は、実施形態のセラミックグロープラグの一例の概略図である。図1(A)は、セラミックグロープラグ10(以下、単に「グロープラグ10」とも呼ぶ)の断面図であり、図1(B)は、グロープラグ10のうちのセラミックヒータ素子40を含む部分を示す拡大断面図である。図示されたラインCLは、グロープラグ10の中心軸を示している。図示された断面は、中心軸CLを含む平らな断面である。以下、中心軸CLのことを「軸線CL」とも呼び、中心軸CLに平行な方向を「軸線方向」とも呼ぶ。中心軸CLを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、中心軸CLを中心とする円の円周方向を「周方向」とも呼ぶ。中心軸CLと平行な方向のうち、図1における下方向を第1方向D1と呼ぶ。第1方向D1は、後述する端子部材80からセラミックヒータ素子40に向かう方向である。図中の第2方向D2と第3方向D3とは、互いに垂直な方向であり、いずれも、第1方向D1と垂直な方向である。以下、第1方向D1を、先端方向D1とも呼び、第1方向D1の反対方向を、後端方向D1rとも呼ぶ。また、図1における先端方向D1側をグロープラグ10の先端側と呼び、図1における後端方向D1r側をグロープラグ10の後端側と呼ぶ。
グロープラグ10は、主体金具20と、中軸30と、セラミックヒータ素子40(以下、単に「ヒータ素子40」とも呼ぶ)と、Oリング50(以下、パッキン50とも呼ぶ)と、絶縁部材60と、金属外筒70(以下、単に「外筒70」とも呼ぶ)と、端子部材80と、接続部材90と、を含んでいる。主体金具20は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔20xを有する筒状の部材である。また、主体金具20は、後端方向D1r側の端部に形成された工具係合部28と、工具係合部28よりも先端方向D1側に設けられた雄ネジ部22と、を含んでいる。工具係合部28は、グロープラグ10の脱着時に、図示しない工具と係合する部分である。雄ネジ部22は、図示しない内燃機関の取付孔の雌ネジに螺合するためのネジ山を含んでいる。主体金具20は、導電性材料(例えば、炭素鋼等の金属)で形成されている。
主体金具20の貫通孔20xには、中軸30が収容されている。中軸30は、棒状の部材であり、軸線CLに沿って延びている。中軸30は、導電材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)で形成されている。中軸30の後端方向D1r側の端部である後端部39は、主体金具20の後端方向D1r側の開口OPbの後端方向D1r側に露出している。中軸30のうちの先端方向D1側の端部31と後端方向D1r側の端部39との間には、括れ部410が設けられている。括れ部410の詳細については、後述する。
開口OPbの近傍において、中軸30の外面と、主体金具20の貫通孔20xの内面と、の間には、リング状のパッキン50が設けられている。パッキン50は、弾性材料(例えば、ゴム)で形成されている。さらに、主体金具20の開口OPbには、リング状の絶縁部材60が装着されている。絶縁部材60は、筒状部62と、筒状部62の後端方向D1r側に設けられたフランジ部68と、を含んでいる。筒状部62は、中軸30の外面と、主体金具20の開口OPbを形成する部分の内面と、の間に挟まれている。絶縁部材60は、例えば、樹脂で形成されている。主体金具20は、これらの部材50、60を介して、中軸30を支持している。
図1(A)の左部には、主体金具20と中軸30とのうちのパッキン50を挟む部分の部分拡大図が示されている。パッキン50は、主体金具20の内周面20sと中軸30の外周面30sとの双方に接触することによって、主体金具20の内周面20sと中軸30の外周面30sとの間をシールしている。また、パッキン50は、これらの面20s、30sの間で押しつぶされている。図中の領域Acは、中軸30の外周面30sのうちのパッキン50と接触する部分を示している(以下、接触部分Acとも呼ぶ)。第1位置P1は、この接触部分Acのうち軸線CLに平行な方向の中心の位置である。すなわち、第1位置P1は、接触部分Acの先端方向D1側の端Ac1から、接触部分Acの後端方向D1r側の端Ac2までの範囲を、軸線CLに平行に二等分する位置である。
絶縁部材60の後端方向D1r側には、端子部材80が配置されている。端子部材80は、キャップ状の部材であり、導電材料(例えば、炭素鋼等の金属)で形成されている。端子部材80と主体金具20との間には、絶縁部材60のフランジ部68が挟まれている。端子部材80には、中軸30の後端部39が挿入されている。端子部材80が加締められることによって、端子部材80が後端部39に固定されている。これにより、端子部材80は、中軸30に、電気的に接続される。
主体金具20の先端方向D1側の開口OPaには、外筒70の後端方向D1r側の部分が挿入され、そして、主体金具20に外筒70が固定されている(例えば、圧入や溶接)。外筒70は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔70xを有する筒状の部材である。外筒70は、導電性材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)で形成されている。
外筒70の貫通孔70xには、通電によって発熱するヒータ素子40が挿入されている。ヒータ素子40は、中心軸CLに沿って延びるように配置された棒状の部材である。外筒70は、ヒータ素子40の中央部分の外周面を、保持している。ヒータ素子40の先端部41と後端部49とは、外筒70の外に露出している。ヒータ素子40の後端部49は、主体金具20の貫通孔20xに収容されている。以下、ヒータ素子40と金属外筒70との全体を、「ヒータモジュール490」とも呼ぶ。
ヒータ素子40の後端部49には、接続部材90が固定されている。接続部材90は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔を有する円筒状の部材であり、導電性材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)で形成されている。接続部材90の先端方向D1側の部分には、ヒータ素子40の後端部49が圧入されている。接続部材90の後端方向D1r側の部分には、中軸30の先端方向D1側の端部である先端部31が圧入されている。これにより、中軸30は、接続部材90を介して、ヒータ素子40に固定される。また、中軸30は、接続部材90に電気的に接続される。なお、中軸30の先端部31と接続部材90とは、溶接されてもよい。
次に、ヒータモジュール490の詳細について、説明する。図1(B)には、金属外筒70と接続部材90とヒータ素子40とのより詳細な断面図が示されている。ヒータ素子40は、軸線CLに沿って延びる丸棒状の基体210と、基体210の内部に埋設された、略U字状の発熱抵抗体220(以下、単に「抵抗体220」と呼ぶ)と、を含んでいる。基体210は、絶縁性セラミック材料で形成されている(例えば、窒化ケイ素を含む材料)。抵抗体220は、導電性セラミック材料で形成されている(例えば、窒化ケイ素と導電物質とを含む材料。導電物質は、例えば、炭化タングステンである)。基体210は、抵抗体220を覆った状態で、抵抗体220を支持している。ヒータ素子40は、材料を焼成することによって、形成される。基体210の先端部(すなわち、ヒータ素子40の先端部41)は、丸められている。抵抗体220の電気伝導率は、基体210の電気伝導率よりも、高い。抵抗体220は、通電によって、発熱する。
抵抗体220は、2本のリード部221、222と、それらのリード部221、222に接続された発熱部223と、電極取出部281、282と、を含んでいる。各リード部221、222は、ヒータ素子40の後端部49から先端部41の近傍まで軸線CLの延びる方向に沿って(ここでは、軸線CLに平行に)延びている。第1リード部221と第2リード部222とは、中心軸CLを挟んでおおよそ対称な位置に、配置されている。第3方向D3は、第2リード部222から第1リード部221へ向かう方向である。
発熱部223は、ヒータ素子40の先端部41に埋設され、第1リード部221の先端方向D1側の端と第2リード部222の先端方向D1側の端とを接続する。すなわち、リード部221、222は、発熱部223の後端方向D1r側に接続されている。発熱部223の形状は、ヒータ素子40の先端部41の丸い形状に沿って湾曲する略U字状である。発熱部223の断面積は、リード部221、222のそれぞれの断面積よりも、小さい。また、発熱部223の単位長さ当たりの電気抵抗は、リード部221、222の単位長さ当たりの電気抵抗よりも、大きい。この結果、通電時には、発熱部223の温度が、リード部221、222の温度と比べて、急速に上昇する。
第1リード部221の後端方向D1r側の部分には、第1電極取出部281が接続されている。第1電極取出部281は、径方向に沿って延びている。第1電極取出部281の内側の端部は第1リード部221に接続され、第1電極取出部281の外側の端部は、ヒータ素子40の外面に露出する。第1電極取出部281の露出部分は、外筒70の内周面に接触している。これにより、外筒70と第1リード部221とが、電気的に接続される。
第2リード部222の後端方向D1r側の部分には、第2電極取出部282が接続されている。第2電極取出部282は、径方向に沿って延びており、第1電極取出部281よりも、後端方向D1r側に配置されている。第2電極取出部282の内側の端部は、第2リード部222に接続され、第2電極取出部282の外側の端部は、ヒータ素子40の外面に露出する。第2電極取出部282の露出部分は、接続部材90の内周面に接触している。これにより、接続部材90と第2リード部222とが、電気的に接続される。
図中の第2位置P2は、ヒータ素子40と外筒70との接触部分Aeのうちの最も後端方向D1r側の端Ae2の位置である。すなわち、ヒータ素子40の外周面40sのうち外筒70の内周面70sに接触する部分Aeは、第2位置P2から先端方向D1側に向かって延びている。
グロープラグ10の使用時には、主体金具20と端子部材80との間に、電圧が印加される。上述したように、第1リード部221は、第1電極取出部281と金属外筒70とを介して、主体金具20に電気的に接続されている。第2リード部222は、第2電極取出部282と接続部材90と中軸30とを介して、端子部材80に電気的に接続されている。従って、主体金具20と端子部材80とを通じて供給された電力は、リード部221、222を通じて、発熱部223に供給される。これにより、発熱部223が発熱する。
図2は、中軸30の説明図である。図2(A)は、中軸30の外観の概略を示し、図2(B)は、中軸30の括れ部410の断面を示している。図2(B)の断面は、軸線CLを含む平らな断面である。図示するように、括れ部410の外周面には、径方向の内側に向かって凹む複数の溝部300が形成されている。各溝部300は、中軸30の外周面30s上で、中軸30の周方向に亘って1周する閉じたループ状の溝である。すなわち、各溝部300は、軸線CLの周りを1周している。
図2(B)の断面上において、各溝部300は、底部310と、底部310を挟んで対向する2つの傾斜面320、330と、で形成されている。底部310は、軸線CLにおおよそ平行な外周面を有している。図中の第1長L1は、各底部310の軸線CLに平行な方向の長さである。第1傾斜面320は、径方向の内側から外側に向かって傾斜面を辿る場合に先端方向D1側に向けて軸線CLに対して斜めに傾斜している傾斜面である。底部310の先端方向D1側には、この第1傾斜面320が接続されている。溝部300の先端方向D1側の傾斜面320を、先端側傾斜面320とも呼ぶ。第2傾斜面330は、径方向の内側から外側に向かって傾斜面を辿る場合に後端方向D1r側に向けて軸線CLに対して斜めに傾斜している傾斜面である。底部310の後端方向D1r側には、第2傾斜面330が接続されている。溝部300の後端方向D1r側の傾斜面330を、後端側傾斜面330とも呼ぶ。
第1傾斜面320の径方向の外側の端部と、第2傾斜面330の径方向の外側の端部とは、頂部340に接続されている。頂部340は、軸線CLにおおよそ平行な外周面を有している。図中の第2長L2は、各頂部340の軸線CLに平行な方向の長さである。頂部340の後端方向D1r側に、第1傾斜面320が接続され、頂部340の先端方向D1側に、第2傾斜面330が接続されている。
図示するように、括れ部410は、底部310と頂部340とが先端方向D1に向かって交互に並んだ波状の部分を形成している。このように、括れ部410は、軸線CLに平行な方向に沿って延びている。
図中のピッチPtは、複数の溝部300の軸線CLに平行な方向のピッチである。図2(B)の実施形態では、底部310の後端方向D1r側の端の位置を基準として、ピッチPtが特定されている。また、複数の溝部300は、先端方向D1に向かって同じピッチPtで並んで配置されている。
図中の先端410fは、括れ部410の先端を示し、後端410rは、括れ部410の後端を示している。括れ部410の先端410fは、括れ部410の複数の底部310のうち、最も先端方向D1側の底部310の先端である。なお、本実施形態では、括れ部410の先端410fは、最も先端方向D1側の傾斜面320に接続する最も先端方向D1側の底部310の先端を起点としている。また、最も先端方向D1側の底部310よりも先端方向D1側に頂部340が形成されている場合であっても、括れ部410の先端410fは、最も先端方向D1側の底部310の先端を起点とする。他方、括れ部410の後端410rは、括れ部410の複数の底部310のうち、最も後端方向D1r側の底部310の後端である。なお、本実施形態では、括れ部410の後端410rは、最も後端方向D1r側の傾斜面330に接続する最も後端方向D1r側の底部310の後端を起点としている。また、最も後端方向D1r側の底部310よりも後端方向D1r側に頂部340が形成されている場合であっても、括れ部410の後端410rは、最も後端方向D1r側の底部310の後端を起点とする。
図2(B)中の長さLfは、括れ部410の軸線CLに平行な方向の長さである。この長さLfは、括れ部410の先端410fと後端410rとの間の、軸線CLに平行な方向の長さである。また、図中の外径Dbは、括れ部410における最小の外径である。本実施形態では、最小の外径Dbは、底部310の外径である。本実施形態では、括れ部410は、中軸30のうちのおおよそ一定の外径Dcの円柱状の部分に形成されている。括れ部410の最小外径Dbは、外径Dcよりも小さい。図2(A)中の第2距離Lbは、第1位置P1と括れ部410の先端410fとの間の、軸線CLに平行な方向の距離である。
図2(C)は、図2(B)の断面のうちの溝部300を含む部分拡大図である。図中の角度Angは、第1傾斜面320と第2傾斜面330とのなす角度である。図2(C)の実施形態では、複数の溝部300の間で、角度Angは同じである。
このような複数の底部310と複数の頂部340(ひいては、複数の溝部300が形成された部分である括れ部410)を、中軸30に形成する方法としては、種々の方法を採用可能である。例えば、いわゆる転造を採用してもよい。具体的には、括れ部410の形状を反転させた形状の部分を有するローラを、中軸30に押しつけた状態で、ローラと中軸30とを回転させることによって、中軸30に括れ部410を形成してもよい。このような加工は、ローレット加工とも呼ばれる。
このように小さい外径Dbの溝部300を有する括れ部410は、中軸30の他の部分と比べて、曲がりやすい。従って、括れ部410は、中軸30に力が印加される場合に、曲がることによって、中軸30からグロープラグ10の他の部分(例えば、ヒータ素子40)に力が伝わることを抑制できる。例えば、グロープラグ10の製造時(例えば、中軸30と主体金具20との間にパッキン50を嵌める時)に、中軸30に力が印加され得る。このような力が、中軸30からヒータ素子40へ、伝わり得る。また、グロープラグ10を備える内燃機関が振動する時に、主体金具20内で中軸30が振動し得る。これにより、中軸30からヒータ素子40へ、力が伝わり得る。ヒータ素子40へ伝わる力が大きい場合には、ヒータ素子40が破損し得る。本実施形態では、括れ部410は、変形することによって、中軸30からヒータ素子40に力が伝わることを抑制できる。
また、図2(A)に示すように、括れ部410の後端410rは、中軸30のうちのパッキン50との接触部分Acよりも先端方向D1側に配置されている。すなわち、括れ部410は、接触部分Acには設けられずに、接触部分Acよりも先端方向D1側に配置されている。従って、中軸30とパッキン50との間に隙間が生じることを抑制できる。
B.評価試験:
次に、評価試験について、説明する。図3は、評価試験に用いられた組立体200の概略断面図である。組立体200は、外筒70と、外筒70に挿入されたヒータ素子40と、ヒータ素子40に固定された接続部材90と、接続部材90に固定された中軸30と、を備えている。グロープラグ10(図1)の他の要素(具体的には、主体金具20とパッキン50と絶縁部材60と端子部材80)は、組立体200から省略されている。
図中の外径Daは、第2位置P2におけるヒータ素子40の外径である。第1距離Laは、第1位置P1と第2位置P2との間の軸線CLに平行な方向の距離である。第2距離Lbと、括れ部410の長さLfと、括れ部410の最小外径Dbとは、図2(A)、図2(B)で説明した通りである。
評価試験の方法は、以下の通りである。組立体200の外筒70を、試験機(オートグラフとも呼ばれる)の台に固定した。そして、試験機を用いて、中軸30の外周面30s上の第1位置P1に、軸線CLに垂直に軸線CLに向かう方向の荷重F1を、印加した。荷重F1の印加により、中軸30は荷重F1の方向に向かって曲がった。図中には、曲がった中軸30xの一部が、点線で示されている。そして、荷重F1の印加に起因する第1位置P1の荷重F1の方向(すなわち、軸線CLに垂直な方向)の移動距離dfが、予め決められた参考距離となるまで、荷重F1を強くした。そして、移動距離dfが参考距離となった時点での荷重F1を、参考荷重として採用した(以下、参考荷重の符号として、「F」を用いる)。この参考荷重Fから、ヒータ素子40の第2位置P2での応力を算出した。ヒータ素子40の第2位置P2から先端方向D1側の部分(先端部41を除く)は、外筒70によって保持されている。従って、図3のように中軸30に荷重Fが印加された場合には、ヒータ素子40の第2位置P2の部分に作用する応力が、大きくなる。
ヒータ素子40の第2位置P2での応力は、「曲げモーメントM/断面係数Z」によって算出された。曲げモーメントMは、第2位置P2での曲げモーメントであり、「参考荷重F×第1距離La」によって算出される。断面係数Zは、第2位置P2でのヒータ素子40の断面係数である。本評価試験で用いたヒータ素子40の形状は、軸線CLに沿って延びる円柱状であるので、第2位置P2での断面係数は、「(π×Da3)/32」である。以上により、ヒータ素子40の第2位置P2の部分に作用する応力Saは、F×La/((π×Da3)/32)である。そして、予め決められた基準応力Szに対する、算出された応力Saの割合を、応力割合Raとして、算出した(Ra=Sa/Sz)。基準応力Szは、ヒータ素子40の割れに影響を及ぼし得る程度の応力である。応力割合Raが大きいほど、ヒータ素子40に作用する応力が大きい。ヒータ素子40の破損を抑制するためには、応力割合Raが小さいことが好ましく、応力割合Raが1以下であること(すなわち、応力Saが基準応力Sz以下であること)が特に好ましい。評価試験では、応力割合Raを、中軸30の構成が互いに異なる複数種類の組立体200のサンプルのそれぞれについて、取得した。いずれのサンプルにおいても、L1=L2(図2(B))となるように、括れ部410が構成されている。
図4(A)〜図4(C)は、それぞれ、評価試験の結果を示すグラフである。各グラフの各黒点は、サンプルの試験結果を表している。まず、これらのグラフの横軸と縦軸とについて説明し、続いて、試験結果について説明する。
図4(A)のグラフでは、横軸は、距離割合RLbを示し、縦軸は、応力割合Raを示している。横軸の距離割合RLbは、基準距離Dzに対する第2距離Lbの割合である(RLb=Lb/Dz)。基準距離Dzは、19.7×La/(Da3)である(詳細については、後述)。この距離割合RLbは、括れ部410の先端410fの位置を示している。距離割合RLbが大きいほど、括れ部410の先端410fは、第1位置P1から遠い、すなわち、先端410fは、ヒータ素子40に近い。
基準距離Dzは、以下のように、決定された。上述したように、ヒータ素子40の第2位置P2の部分に作用する応力は、F×La/((π×Da3)/32)である。また、中軸30の括れ部410の先端410fの部分に作用する応力は、F×Lb/((π×Db3)/32)である。括れ部410の先端410fは、括れ部410のうちの第1位置P1から最も遠い部分であり、括れ部410のうちの応力が大きい部分である。ヒータ素子40の破損を抑制するためには、ヒータ素子40に作用する応力が、中軸30に作用する応力以下であることが好ましい。すなわち「F×La/((π×Da3)/32)<F×Lb/((π×Db3)/32)」という関係式が成立することが好ましい。この関係式を括れ部410の最小外径Dbについて整理すると、「Db<((Lb/La)の三乗根)×Da」という関係式が導かれる。ここで、ヒータ素子40の破損を抑制するためには、括れ部410の最小外径Dbが小さいことが好ましい。例えば、外径Dbが2.7mm未満であれば、ヒータ素子40の破損を抑制することができる。Db=2.7mmである場合、上記の関係式は、「Lb>19.7×La/Da3」となる。この関係式の右辺、すなわち、この関係式によって表される第2距離Lbの最小値を、基準距離Dzとして採用した。
図4(B)のグラフでは、横軸は、括れ部410の長さLfを示し、縦軸は、応力割合Raを示している。
図4(C)のグラフでは、横軸は、外径割合RDbを示し、縦軸は、応力割合Raを示している。横軸の外径割合RDbは、基準外径Dyに対する括れ部410の最小外径Dbの割合である(RDb=Db/Dy)。基準外径Dyは、((Lb/La)の三乗根)×Daである(詳細については、後述)。この外径割合RDbが小さいほど、括れ部410の最小外径Dbが小さい、すなわち、中軸30が曲がりやすい。
基準外径Dyは、以下のように決定された。上述したように、ヒータ素子40の第2位置P2の部分に作用する応力は、F×La/((π×Da3)/32)である。また、中軸30の括れ部410の先端410fに作用する応力は、F×Lb/((π×Db3)/32)である。ここで、ヒータ素子40に作用する応力が、中軸30に作用する応力未満であることが好ましい。すなわち「F×La/((π×Da3)/32)<F×Lb/((π×Db3)/32)」という関係式が成立することが好ましい。この関係式を最小外径Dbについて整理すると、「Db<((Lb/La)の三乗根)×Da」という関係式が導かれる。この関係式の右辺、すなわち、この関係式によって表される最小外径Dbの上限が、基準外径Dyである。
次に、試験結果について説明する。図4(A)のグラフでは、4種類のサンプルが、評価された。これらのサンプルの間では、距離割合RLb(具体的には、第2距離Lb、ひいては、括れ部410の位置)が互いに異なっており、中軸30の他の構成は、共通であった。例えば、括れ部410の長さLfは20mmであり、外径割合RDbは、0.83であり、角度Angは、60度であり、ピッチPtは、1.06mmであった。
図示するように、距離割合RLbが大きいほど(すなわち、第2距離Lbが大きいほど)、応力割合Raは小さかった。この理由は、以下のように推定される。距離割合RLbが大きいほど、括れ部410は荷重F(図3)が作用する第1位置P1から遠いので、中軸30の括れ部410の部分に作用する応力が大きくなる。従って、距離割合RLbが大きいほど、同じ荷重によって、中軸30の括れ部410は、大きく曲がる。具体的には、複数の底部310のそれぞれの部分が曲がることによって、中軸30の括れ部410は、全体として、大きく曲がる。この結果、距離割合RLbが大きいほど、ヒータ素子40に作用する応力が小さくなる、すなわち、応力割合Raが小さくなる。
また、図示するように、距離割合RLbが1.0よりも小さいサンプルの応力割合Raは、1.0よりも大きかったが、距離割合RLbが1.0よりも大きいサンプルの応力割合Raは、1.0以下であった。このように、1.0よりも大きい距離割合RLb(すなわち、基準距離Dzより大きい第2距離Lb)を採用することによって、ヒータ素子40に作用する応力を、適切に小さくできた、すなわち、中軸30からヒータ素子40に伝わる力を適切に緩和できた。
なお、1.0以下の良好な応力割合Raを実現した距離割合RLbは、1.10、1.24、1.31であった。距離割合RLbの好ましい範囲(下限以上、上限以下の範囲)を、上記の3個の値を用いて定めてもよい。具体的には、3個の値のうちの任意の値を、距離割合RLbの好ましい範囲の下限として採用してもよい。例えば、距離割合RLbは、1.10以上であってよい。すなわち、第2距離Lbは、基準距離Dzの1.10倍以上であってよい。また、これらの値のうち下限以上の任意の値を、上限として採用してもよい。例えば、距離割合RLbは、1.31以下であってよい。すなわち、第2距離Lbは、基準距離Dzの1.31倍以下であってよい。
なお、距離割合RLbが大きいほど、括れ部410が第1位置P1から遠いので、括れ部410に作用する応力が大きくなる。従って、中軸30の括れ部410の曲がりによって中軸30からヒータ素子40へ伝わる力を緩和するためには、距離割合RLb(すなわち、第2距離Lb)が大きいことが好ましい。例えば、距離割合RLbは、図4(A)のサンプルの距離割合RLbのいずれよりも大きくてよい。なお、中軸30における軸線CLに平行な方向の括れ部410の位置のうち、距離割合RLbが最大値となる位置は、括れ部410の先端410fが中軸30の先端となる位置である。距離割合RLbは、このような最大値以下の種々の値であってよい。すなわち、第2距離Lbは、第1位置P1と中軸30の先端との間の距離以下の種々の値であってよい。
なお、距離割合RLbは、上記の好ましい範囲外であってもよい。例えば、長さLfが、サンプルの長さLfである20mmよりも長い場合には、距離割合RLbが1.0未満であっても、良好な応力割合Raを実現できると推定される。また、外径割合RDbが、サンプルの外径割合RDbである0.83よりも小さい場合には、距離割合RLbが1.0未満であっても、良好な応力割合Raを実現できると推定される。
図4(B)のグラフでは、6種類のサンプルが、評価された。これらのサンプルの間では、括れ部410の長さLfが互いに異なっており、中軸30の他の構成は、共通であった。例えば、距離割合RLbは、1.24であり、外径割合RDbは、0.83であり、角度Angは、60度であり、ピッチPtは、1.06mmであった。括れ部410の先端410fの位置は、6種類のサンプルに共通であり、括れ部410の後端410rの位置は、6種類のサンプルの間で異なっている。いずれのサンプルに関しても、括れ部410の後端410rは、中軸30(図1)とパッキン50との接触部分Acよりも先端方向D1側(すなわち、第1位置P1よりも先端方向D1側)に位置している。また、溝部300の総数は、長さLfに正比例する。
図示するように、長さLfが長いほど、応力割合Raは小さかった。この理由は、以下のように推定される。図2(B)で説明したように、中軸30のうち底部310を形成する部分の外径Dbは、中軸30の他の部分の外径よりも小さい。従って、図3のように中軸30に荷重Fが印加された場合には、中軸30のうち底部310を形成する部分に作用する応力が、中軸30の他の部分に作用する応力よりも、大きくなる。そして、中軸30のうち底部310を形成する部分が、曲がる。長さLfが長い場合には、長さLfが短い場合と比べて、括れ部410の溝部300の総数(すなわち、最小外径Dbの底部310の総数)が多くなる。従って、括れ部410の長さLfが長いほど、同じ荷重によって、中軸30の括れ部410は、大きく曲がる。この結果、長さLfが長いほど、ヒータ素子40に作用する応力が小さくなる、すなわち、応力割合Raが小さくなる。
また、図示するように、長さLfが5mm未満であるサンプルの応力割合Raは、1.0よりも大きかったが、長さLfが5mm以上であるサンプルの応力割合Raは、1.0よりも小さかった。このように、5mm以上の長さLfを採用することによって、ヒータ素子40に作用する応力を、適切に小さくできた、すなわち、中軸30からヒータ素子40に伝わる力を適切に緩和できた。
なお、1.0以下の良好な応力割合Raを実現した長さLfは、5、11、50、80(mm)であった。括れ部410の長さLfの好ましい範囲(下限以上、上限以下の範囲)を、上記の4個の値を用いて定めてもよい。具体的には、4個の値のうちの任意の値を、長さLfの好ましい範囲の下限として採用してもよい。例えば、長さLfは、5mm以上であってよい。また、これらの値のうち下限以上の任意の値を、上限として採用してもよい。例えば、長さLfは、80mm以下であってよい。
なお、括れ部410の長さLfが長いほど、曲がりやすい底部310の総数が多い。従って、中軸30の括れ部410の曲がりによって中軸30からヒータ素子40へ伝わる力を緩和するためには、長さLfが長いことが好ましい。例えば、長さLfは、図4(B)のサンプルの長さLfのいずれよりも長くてもよい。なお、長さLfの実現可能な最大値は、中軸30の全長と同じである。長さLfは、このような最大値以下の種々の値であってよい。
なお、長さLfは、上記の好ましい範囲外であってもよい。例えば、距離割合RLbが、サンプルの距離割合RLbである1.24よりも大きい場合には、長さLfが5mm未満であっても、良好な応力割合Raを実現できると推定される。また、外径割合RDbが、サンプルの外径割合RDbである0.83よりも小さい場合には、長さLfが5mm未満であっても、良好な応力割合Raを実現できると推定される。
図4(C)のグラフでは、4種類のサンプルが、評価された。これらのサンプルの間では、外径割合RDb(具体的には、最小外径Db)が互いに異なっており、中軸30の他の構成は、共通であった。例えば、距離割合RLbは、1.24であり、括れ部410の長さLfは、20mmであり、角度Angは、60度であり、ピッチPtは、1.06mmであった。
図示するように、外径割合RDbが小さいほど(すなわち、最小外径Dbが小さいほど)、応力割合Raは小さかった。この理由は、以下のように推定される。外径割合RDbが小さいほど、括れ部410の底部310の最小外径Dbが小さいので、中軸30の底部310の部分に作用する応力が大きくなる。従って、外径割合RDbが小さいほど、同じ荷重によって、中軸30の底部310の部分は、大きく曲がる。この結果、外径割合RDbが小さいほど、ヒータ素子40に作用する応力が小さくなる、すなわち、応力割合Raが小さくなる。
また、図示するように、評価された4種類のサンプルのそれぞれの外径割合RDbは、1よりも小さかった(すなわち、最小外径Dbは、基準外径Dyよりも小さかった)。そして、いずれのサンプルの応力割合Raも、1.0以下であった。このように、1未満の外径割合RDb(すなわち、基準外径Dy未満の最小外径Db)を採用することによって、ヒータ素子40に作用する応力を、適切に小さくできた、すなわち、中軸30からヒータ素子40に伝わる力を適切に緩和できた。
なお、1.0以下の良好な応力割合Raを実現した外径割合RDbは、0.83、0.86、0.90、0.93であった。外径割合RDbの好ましい範囲を、上記の4個の値を用いて定めてもよい。具体的には、4個の値のうちの任意の値を、外径割合RDbの好ましい範囲の上限として採用してよい。例えば、外径割合RDbは、0.93以下であってよい。すなわち、最小外径Dbは、基準外径Dyの0.93倍以下であってよい。また、これらの値のうち上限以下の任意の値を、外径割合RDbの下限として採用してもよい。例えば、外径割合RDbは、0.83以上であってよい。すなわち、最小外径Dbは、基準外径Dyの0.83倍以上であってよい。
なお、最小外径Dbが小さいほど、中軸30の底部310の部分に作用する応力が大きくなる。従って、中軸30の括れ部410の曲がりによって中軸30からヒータ素子40へ伝わる力を緩和するためには、最小外径Db(ひいては、外径割合RDb)が小さいことが好ましい。例えば、外径割合RDbは、図4(C)のサンプルの外径割合RDbのいずれよりも小さくてよい。なお、最小外径Dbが過度に小さい場合には、不具合が生じる場合がある(例えば、中軸30が破損し得る)。従って、最小外径Dbは、過小ではないことが好ましく、例えば、2mm以上であることが好ましい。
なお、外径割合RDb、ひいては、最小外径Dbは、上記の好ましい範囲外であってもよい。例えば、距離割合RLbが、サンプルの距離割合RLbである1.24よりも大きい場合には、外径割合RDbが1以上であっても、良好な応力割合Raを実現できると推定される。また、括れ部410の長さLfが、サンプルの長さLfである20mmよりも長い場合には、外径割合RDbが1以上であっても、良好な応力割合Raを実現できると推定される。
C.第2実施形態:
図5は、中軸の第2実施形態の概略図である。図5(A)は、図3と同様に、第2実施形態の中軸30bを備える組立体200bの概略断面図を示している。図5(B)は、図2(A)と同様に、中軸30bの外観の概略を示している。図2、図3の第1実施形態の中軸30との差異は、第2括れ部420が設けられている点だけである。中軸30bの他の部分の構成は、第1実施形態の中軸30の対応する部分の構成と、同じである(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。また、この中軸30bは、図1の中軸30の代わりに、利用可能である。
第2括れ部420は、図2(B)に示す括れ部410(以下、第1括れ部410とも呼ぶ)と同様に、複数の溝部300が軸線CLに平行な方向に並んで形成された部分である。このような第2括れ部420は、第1括れ部410と同様に、中軸30bに荷重が印加された場合に、曲がることによって、中軸30bからヒータ素子40へ伝わる力を緩和できる。特に、第2実施形態の中軸30bは、曲がりやすい部分として、第1括れ部410に加えて、第2括れ部420を備えている。従って、中軸30bは、ヒータ素子40に伝わる力を、さらに緩和できる。
図5(A)には、中間位置Pcが示されている。中間位置Pcは、第1位置P1と第2位置P2との間の軸線CLに平行な方向の中間位置である。すなわち、中間位置Pcと第1位置P1との間の軸線CLに平行な方向の距離は、中間位置Pcと第2位置P2との間の軸線CLに平行な方向の距離と、等しい。
第2実施形態では、第1括れ部410の全体が、中間位置Pcよりも先端方向D1側に配置されている。そして、第2括れ部420の全体が、中間位置Pcよりも後端方向D1r側に配置されている。このように、中間位置Pcの先端方向D1側と後端方向D1r側との双方に、括れ部が設けられている。これにより、中軸30bは、グロープラグを備える内燃機関の駆動時などの中軸30bが振動するときに、中軸30bからヒータ素子40に伝わる力を適切に緩和できる。
具体的には、以下の通りである。組立体200bがグロープラグ10(図1)に組み込まれる場合、中軸30bの第1位置P1の部分は、パッキン50によって保持され、ヒータ素子40の第2位置P2の部分は、外筒70によって保持される。従って、グロープラグ10が振動する場合、中軸30bのうち、これらの位置P1、P2の間の中間位置Pcの近傍の部分が、大きい振幅で振動し得る。本実施形態では、このような振動が生じる場合に、中間位置Pcを挟む第1括れ部410と第2括れ部420との両方が、変形できる(例えば、曲がることができる)。これらの括れ部410、420が変形することによって、中軸30bの中間位置Pcの近傍の部分の振動が、他の部分に伝わることが抑制される。このように、中軸30bからヒータ素子40へ伝わる力を、適切に、緩和できる。
なお、第1括れ部410の全体が中間位置Pcよりも先端方向D1側に配置されているが、これに限らず、第1括れ部410は、中間位置Pcよりも先端方向D1側から、中間位置Pcを超えて、中間位置Pcよりも後端方向D1r側まで延びていてもよい。一般的には、第1括れ部410の先端410fが、第1位置P1と第2位置P2との間の軸線CLに平行な方向の中間位置Pcよりも先端方向D1側に配置され、第2括れ部420の先端420fが、中間位置Pcよりも後端方向D1r側に配置されていることが好ましい。この構成によれば、中軸30bの中間位置Pcの近傍の部分の振動が、他の部分に伝わることを抑制できる。
なお、第2実施形態の中軸30bの第1括れ部410にも、図4(A)〜図4(C)で説明した括れ部410の好ましい構成の少なくとも一部を、適用することが好ましい。これにより、中軸30bも、第1実施形態の中軸30と同様に、中軸30bからヒータ素子40へ伝わる力を、適切に、緩和できる。
D.第3実施形態:
図6は、中軸の別の実施形態の概略図である。図6(A)は、図2(A)と同様に、中軸30cの外観の概略を示している。図2の第1実施形態の中軸30との差異は、括れ部410の先端側に隣接する第1移行部500と、括れ部410の後端側に隣接する第2移行部700と、が形成されている点だけである。中軸30cの他の部分の構成は、第1実施形態の中軸30の対応する部分の構成と、同じである(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。この中軸30cは、図1の中軸30の代わりに、利用可能である。
第1移行部500と第2移行部700とは、それぞれ、括れ部410と同様に、中軸30cの外周面30s上に中軸30cの周方向に亘って設けられる溝部が形成された部分である。ただし、溝部の深さが、括れ部410の溝部300の深さと異なっている(詳細は、後述)。
第1移行部500は、括れ部410の先端方向D1側に接続されるとともに、中軸30cの先端部31よりも後端方向D1r側に設けられている。第1移行部500の先端側の部分910には、溝部は形成されていない(第1胴部910と呼ぶ)。第1胴部910は、第1移行部500の先端方向D1側に接続されるとともに、略一定の外径Dcの円柱状の部分である。
第2移行部700は、括れ部410の後端方向D1r側に接続されるとともに、中軸30cの後端部39よりも先端方向D1側に設けられている。第2移行部700の後端側の部分920には、溝部は形成されていない(第2胴部920と呼ぶ)。第2胴部920は、第2移行部700の後端方向D1r側に接続されるとともに、略一定の外径Dcの円柱状の部分である。
図6(B)は、中軸30cの第1移行部500の断面(軸線CLを含む平らな断面)を示している。図中では、ハッチングが省略されている(後述する図6(C)、図7、図8、図9についても、同様である)。図示するように、第1移行部500の外周面には、径方向の内側に向かって凹む複数の溝部600が形成されている。各溝部600は、中軸30cの外周面30s上で、中軸30cの周方向に亘って1周する閉じたループ状の溝である。複数の溝部600は、軸線CLに平行な方向に並んで形成されている。本実施形態では、第1移行部500は、3個の溝部600を含んでいる。
図6(B)の断面上において、各溝部600は、底部610と、底部610を挟んで対向する先端方向D1側の第1傾斜面620と後端方向D1r側の第2傾斜面630と、で形成されている。第1傾斜面620は、括れ部410の溝部300の第1傾斜面320と同様に、径方向の内側から外側に向かって傾斜面を辿る場合に先端方向D1側に向けて傾斜している。第2傾斜面630は、括れ部410の溝部300の第2傾斜面330と同様に、径方向の内側から外側に向かって傾斜面を辿る場合に後端方向D1r側に向けて傾斜している。図示を省略するが、第1傾斜面620と第2傾斜面630とのなす角度は、図2(C)で説明した第1傾斜面320と第2傾斜面330とのなす角度Angと同じである(ただし、傾斜面620、630のなす角度が、傾斜面320、330のなす角度Angと異なっていてもよい)。第1傾斜面620の径方向の外側の端部と、第1傾斜面620の後端方向D1r側の隣の第2傾斜面630の径方向の外側の端部とは、共通の頂部640に接続されている。頂部640は、軸線CLにおおよそ平行な外周面を有している。頂部640の外径は、括れ部410の頂部340の外径と、同じである(ただし、頂部640の外径が、括れ部410の頂部340の外径と、異なっていてもよい)。
底部610は、軸線CLにおおよそ平行な外周面を有している。底部610は、溝部600のうちの最も外径が小さい部分である。図6(B)中の外径D61〜D63と半径R61〜R63は、先端方向D1に向かって並ぶ3個の底部610のそれぞれの外径と半径とを示している。本実施形態では、3個の外径D61〜D63は、同じである。また、3個の外径D61〜D63は、いずれも、括れ部410の底部310の外径Dbよりも大きく、かつ、第1胴部910の外径Dcよりも小さい。すなわち、第1移行部500の溝部600の底部610の外周面と中軸30cの中心軸(ここでは、中心軸CLと同じ)との間の距離(ここでは、半径R61〜R63)は、括れ部410の溝部300の底部310の外周面と中心軸CLとの間の距離(Dbの半分)よりも大きく、かつ、第1胴部910の外周面と中心軸CLとの間の距離(Dcの半分)よりも小さい。
このように、括れ部410と第1胴部910との間に、括れ部410の溝部300の底部310よりも外径が大きく、かつ、第1胴部910よりも外径が小さい、溝部600が形成されている。従って、中軸30cに力が印加された場合に、溝部600の底部610が曲がることによって、括れ部410の先端方向D1側の端部に応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸30cの過度の湾曲を抑制できる。
なお、複数の溝部600の軸線CLに平行な方向のピッチPtは、括れ部410の複数の溝部300のピッチPtと、同じである。図6(B)では、ピッチPtは、底部610、310の軸線CLに平行な方向の中央の位置を基準として、特定されている。また、図示するように、括れ部410の最も先端方向D1側の溝部300と、第1移行部500の最も後端方向D1r側の溝部600と、の間のピッチPt1(第1接続ピッチPt1と呼ぶ)も、ピッチPtと同じである。
図6(C)は、中軸30cの第2移行部700の断面(軸線CLを含む平らな断面)を示している。本実施形態では、第1移行部500の形状と第2移行部700の形状とは、中軸30cの中心軸CLに垂直な対称面Ps(図6(A))に関して面対称である(対称面Psは、括れ部410の中央に位置している)。具体的には、第2移行部700の外周面には、径方向の内側に向かって凹む複数の溝部800が形成されている。複数の溝部800は、中軸30cの周方向に亘って1周する閉じたループ状の溝であり、軸線CLに平行な方向に並んで形成されている。なお、第1移行部500の形状は、第2移行部700の形状と異なっていてもよい。
各溝部800は、底部810と、底部810を挟んで対向する先端方向D1側の第1傾斜面820と後端方向D1r側の第2傾斜面830と、で形成されている。第1傾斜面820は、第1傾斜面620(図6(B)と同様に、先端方向D1側に向けて傾斜している。第2傾斜面830は、第2傾斜面630(図6(B))と同様に、後端方向D1r側に向けて傾斜している。図示を省略するが、第1傾斜面820と第2傾斜面830とのなす角度は、図2(C)で説明した第1傾斜面320と第2傾斜面330とのなす角度Angと同じである(ただし、傾斜面820、830のなす角度が、傾斜面320、330のなす角度Angと異なっていてもよい)。第1傾斜面820の径方向の外側の端部と、第1傾斜面820の後端方向D1r側の隣の第2傾斜面830の径方向の外側の端部とは、共通の頂部840に接続されている。頂部840は、軸線CLにおおよそ平行な外周面を有している。頂部840の外径は、括れ部410の頂部340の外径と、同じである(ただし、頂部840の外径が、括れ部410の頂部340の外径と、異なっていてもよい)。
底部810は、軸線CLにおおよそ平行な外周面を有しており、溝部800のうちの最も外径が小さい部分である。図6(C)中の外径D81〜D83と半径R81〜R83は、後端方向D1rに向かって並ぶ3個の底部810のそれぞれの外径と半径とを示している。本実施形態では、3個の外径D81〜D83は、同じである。また、3個の外径D81〜D83は、いずれも、括れ部410の底部310の外径Dbよりも大きく、かつ、第2胴部920の外径Dcよりも小さい。すなわち、第2移行部700の溝部800の底部810の外周面と中軸30cの中心軸CLとの間の距離(ここでは、半径R81〜R83)は、括れ部410の溝部300の底部310の外周面と中心軸CLとの間の距離(Dbの半分)よりも大きく、かつ、第2胴部920の外周面と中心軸CLとの間の距離(Dcの半分)よりも小さい。
このように、括れ部410と第2胴部920との間に、括れ部410の溝部300の底部310よりも外径が大きく、かつ、第2胴部920よりも外径が小さい、溝部800が形成されている。従って、中軸30cに力が印加された場合に、溝部800の底部810が曲がることによって、括れ部410の後端方向D1r側の端部に応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸30cの過度の湾曲を抑制できる。
なお、複数の溝部800の軸線CLに平行な方向のピッチPtは、括れ部410の複数の溝部300のピッチPtと、同じである。図6(C)では、ピッチPtは、底部810、310の軸線CLに平行な方向の中央の位置を基準として、特定されている。また、図示するように、括れ部410の最も後端方向D1r側の溝部300と、第2移行部700の最も先端方向D1側の溝部800と、の間のピッチPt2(第2接続ピッチPt2と呼ぶ)も、ピッチPtと同じである。
なお、複数の溝部600が形成された第1移行部500と、複数の溝部800が形成された第2移行部700とを、中軸30cに形成する方法としては、種々の方法を採用可能である。例えば、切削、または、転造を採用してよい。
E.第4実施形態:
図7(A)、図7(B)は、中軸の別の実施形態の概略図である。図6の実施形態の中軸30cとの差異は、第1移行部500が、第1移行部500dに置換され、第2移行部700が、第2移行部700dに置換されている点だけである。図7(A)は、第1移行部500dの断面を示し、図7(B)は、第2移行部700dの断面を示している(いずれの断面も、軸線CLを含む平らな断面である)。第1移行部500(図5(B))と第1移行部500d(図7(A))との間では、溝部600の総数と底部610の外径とが異なっている。第2移行部700(図6(C))と第2移行部700d(図7(B))との間では、溝部800の総数と底部810の外径とが異なっている。本実施形態の中軸30dの他の部分の構成は、図6の中軸30cの対応する部分の構成と同じである(同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。
図7(A)に示すように、本実施形態では、第1移行部500dは、5個の溝部600を含んでいる。図7(A)中の外径D61〜D65と半径R61〜R65は、先端方向D1に向かって並ぶ5個の底部610のそれぞれの外径と半径とを示している。図6(B)の実施形態と同様に、外径D61〜D65は、いずれも、括れ部410の底部310の外径Dbよりも大きく、かつ、第1胴部910の外径Dcよりも小さい。すなわち、半径R61〜R65は、いずれも、括れ部410の底部310の外径Dbの半分よりも大きく、かつ、第1胴部910の外径Dcの半分よりも小さい。従って、図6(B)の実施形態と同様に、中軸30dに力が印加された場合に、溝部600の底部610が曲がることによって、括れ部410の先端方向D1側の端部に応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸30dの過度の湾曲を抑制できる。
また、本実施形態では、図6(B)の実施形態とは異なり、5個の底部610の間で、外径が異なっている。具体的には、5個の底部610の外径D61〜D65は、先端方向D1に向かって大きくなる(D65>D64>D63>D62>D61)。すなわち、5個の溝部600に関して、先端側の溝部600の底部610の外径が、後端側の溝部600の底部610の外径よりも大きい。このように、第1移行部500dの複数の溝部600は、括れ部410と第1胴部910との間で、溝部の外径を徐々に変化させる。従って、第1移行部500dのうちの一部分(例えば、先端方向D1側の端部、または、後端方向D1r側の端部)に、応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸30dの過度の湾曲を抑制できる。
図7(B)に示すように、本実施形態では、第2移行部700dは、5個の溝部800を含んでいる。図7(B)中の外径D81〜D85と半径R81〜R85は、後端方向D1rに向かって並ぶ5個の底部810のそれぞれの外径と半径とを示している。図6(C)の実施形態と同様に、外径D81〜D85は、いずれも、括れ部410の底部310の外径Dbよりも大きく、かつ、第1胴部910の外径Dcよりも小さい。すなわち、半径R81〜R85は、いずれも、括れ部410の底部310の外径Dbの半分よりも大きく、かつ、第1胴部910の外径Dcの半分よりも小さい。従って、図6(C)の実施形態と同様に、中軸30dに力が印加された場合に、溝部800の底部810が曲がることによって、括れ部410の後端方向D1r側の端部に応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸30dの過度の湾曲を抑制できる。
また、本実施形態では、図6(C)の実施形態とは異なり、5個の底部810の間で、外径が異なっている。具体的には、5個の底部810の外径D81〜D85は、後端方向D1rに向かって大きくなる(D81<D82<D83<D84<D85)。すなわち、5個の溝部800に関して、後端側の溝部800の底部810の外径が、先端側の溝部800の底部810の外径よりも大きい。このように、第2移行部700dの複数の溝部800は、括れ部410と第2胴部920との間で、溝部の外径を徐々に変化させる。従って、第2移行部700dのうちの一部分(例えば、先端方向D1側の端部、または、後端方向D1r側の端部)に、応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸30dの過度の湾曲を抑制できる。
なお、本実施形態においても、第1移行部500dの複数の溝部600のピッチPtは、括れ部410の複数の溝部300のピッチPtと同じである。そして、括れ部410と第1移行部500dとの第1接続ピッチPt1は、ピッチPtと同じである。また、第2移行部700dの複数の溝部800のピッチPtは、括れ部410のピッチPtと同じである。そして、括れ部410と第2移行部700dとの第2接続ピッチPt2は、ピッチPtと同じである。
なお、複数の溝部600が形成された第1移行部500dと、複数の溝部800が形成された第2移行部700dとを、中軸30dに形成する方法としては、種々の方法を採用可能である。例えば、切削、または、転造を採用してよい。
F.第5実施形態:
図8(A)、図8(B)は、中軸の別の実施形態の概略図である。図7の実施形態の中軸30dとの差異は、第1移行部500dが、第1移行部500eに置換され、第2移行部700dが、第2移行部700eに置換されている点だけである。図8(A)は、第1移行部500eの断面を示し、図8(B)は、第2移行部700eの断面を示している(いずれの断面も、軸線CLを含む平らな断面である)。図7の実施形態との差異は、本実施形態では、移行部500e、700eの頂部640、840の外径が、括れ部410の頂部340の外径とは異なっている点だけである。本実施形態の中軸30eの他の部分の構成は、図7の中軸30dの対応する部分の構成と同じである(同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。
図8(A)中の外径D34と半径R34は、括れ部410の頂部340の外径と半径とを示している。図示を省略するが、括れ部410の複数の頂部340の間で、外径は同じである(すなわち、半径も同じ)。
第1移行部500eは、5個の底部610の後端方向D1r側に形成された5個の頂部640を含んでいる。外径D641〜D645と半径R641〜R645とは、先端方向D1に向かって並ぶ5個の頂部640のそれぞれの外径と半径とを示している。図8(A)の実施形態では、外径D641〜D645は、括れ部410の頂部340の外径D34よりも小さく、かつ、第1胴部910の外径Dcよりも大きい。さらに、5個の頂部640の外径D641〜D645は、先端方向D1に向かって小さくなる(D645<D644<D643<D642<D641)。このように、頂部640の外径は、頂部640の隣の底部610の外径が小さいほど、大きい。
このように、隣の底部610の外径が小さいほど頂部640の外径が大きい形状は、例えば、切削に限らず、転造を用いる場合にも、容易に形成可能である。転造では、溝の無い外周面30sに、溝部600に対応する凸部分を有するローラが押しつけられる。外周面30sのうちローラの凸部分に押されて内周側に凹んだ部分が、溝部600(ひいては、底部610)を形成する。外周面30sの一部が凹むことにより、外周面30sの他の部分(特に、溝部600と隣の溝部600との間の部分)が、盛り上がる。この盛り上がった部分が、頂部640を形成する。ここで、頂部640の盛り上がる量は、隣の底部610の凹む量が大きいほど、大きい。従って、頂部640の外径は、隣の底部610の外径が小さいほど、大きくなりやすい。
図8(B)の第2移行部700eについても、同様である。第2移行部700eは、5個の底部810の先端方向D1側に形成された5個の頂部840を含んでいる。外径D841〜D845と半径R841〜R845とは、後端方向D1rに向かって並ぶ5個の頂部840のそれぞれの外径と半径とを示している。図8(B)の実施形態では、外径D841〜D845は、括れ部410の頂部340の外径D34よりも小さく、かつ、第2胴部920の外径Dcよりも大きい。さらに、5個の頂部840の外径D841〜D845は、後端方向D1rに向かって小さくなる(D841>D842>D843>D844>D845)。このように、頂部840の外径は、頂部840の隣の底部810の外径が小さいほど、大きい。このような第2移行部700eは、図8(A)の第1移行部500eと同様に、切削、または、転造によって、容易に形成できる。
D.変形例:
(1)括れ部の構成としては、上述の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、括れ部を形成する複数の溝部のそれぞれは、中軸の周方向に1周する閉じたループ状の溝に代えて、中軸の周方向に1周する螺旋状の溝であってもよい。具体的には、溝部は、中軸の外周面上で、中軸の軸線CLを基準とする周方向に回転しつつ先端方向D1に向かって進む螺旋状の溝であってもよい。そして、複数の溝部が先端方向D1に向かって並ぶように形成され、さらに、複数の溝部が直列に接続されることによって、複数の溝部が螺旋状の1本の溝を形成してもよい。閉じたループ状の溝部と螺旋状の溝部とのいずれも、中軸の外周面上に中軸の周方向に亘って設けられている、といえる。
いずれの場合も、中軸の外周面上において軸線CLに平行な方向に向かって延びるライン上に、そのラインに交差する複数の溝が並んで配置されていれば、複数の溝部が軸線CLに平行な方向に並んで配置されている、といえる。そして、そのような複数の溝部を含む括れ部は、軸線CLに平行な方向に沿って延びている、といえる。中軸にこのような括れ部が設けられている場合、括れ部が曲がることによって、中軸からヒータ素子へ伝わる力を緩和できる。
(2)溝部300の形状は、図2(B)で説明した形状に代えて、他の種々の形状であってよい。例えば、底部310の第1長L1が、頂部340の第2長L2よりも長くてもよい。逆に、頂部340の第2長L2が、底部310の第1長L1よりも長くてもよい。また、底部310と第1傾斜面320との接続部分が丸められていてもよい。また、底部310と第2傾斜面330との接続部分が丸められていてもよい。いずれの場合も、ピッチPtは、底部310のうちの最小外径Dbの部分の後端方向D1r側の端の位置を基準として、特定すればよい。また、頂部340と第1傾斜面320との接続部分が丸められていてもよい。また、頂部340と第2傾斜面330との接続部分が丸められていてもよい。また、底部310の全体が丸められていてもよい。この場合、ピッチPtを、底部310のうちの最も外径が小さい部分を基準として、特定すればよい。また、頂部340の全体が丸められていてもよい。また、底部は、底部を挟んで対向する2つの傾斜面が互いに接続されて形成されたV字状の部分であってもよい。また、頂部は、頂部を挟んで対向する2つの傾斜面が互いに接続されて形成されたV字状の角であってもよい。いずれの場合も、角度Angとしては、軸線CLを含む断面において、第1傾斜面320のうちの直線部分と、第2傾斜面330のうちの直線部分と、がなす角度を採用可能である。また、括れ部の先端としては、その括れ部の複数の底部のうちの最も先端方向D1側の底部のうちの最も外径が小さい部分の先端方向D1側の端を採用すればよい。括れ部の後端としては、その括れ部の複数の底部のうちの最も後端方向D1r側の底部のうちの最も外径が小さい部分の後端方向D1r側の端を採用すればよい。最も先端方向D1側の底部のうちの最も外径が小さい部分が軸線CLに沿って延びていない場合(例えば、底部の全体が丸められている場合、または、底部がV字状の部分である場合)、括れ部の先端として、底部のうちの最も外径が小さい部分を採用すればよい。括れ部の後端についても、同様である。
(3)中軸に設けられる括れ部の総数は、3以上であってもよい。一般的には、中軸に設けられる括れ部の総数は、1以上の任意の数であってよい。なお、軸線CLを含む中軸の断面において、複数の溝部が配置されることによって形成される波状の部分を、1つの括れ部として採用可能である。そして、この波状の部分における隣合う2つの溝部の間の距離(例えば、ピッチ)よりも遠く離れた2つの溝部を、互いに異なる括れ部の溝部として、扱うことができる。また、中軸の括れ部の各部分のサイズ(例えば、角度Ang、ピッチPtなど)は、上述したサンプルのサイズに代えて、他の種々のサイズであってよい。
いずれの場合も、中軸に設けられた1以上の括れ部のうち、最も先端方向D1側の括れ部の先端(例えば、図5(A)の第1括れ部410の先端410f)と、第1位置P1と、の間の軸線CLに平行な方向の距離が、図4(A)で説明した第2距離Lbの好ましい範囲内であることが、好ましい。また、最も先端方向D1側の括れ部の長さ(例えば、図5(A)の第1括れ部410の長さLf)が、図4(B)で説明した長さLfの好ましい範囲内であることが、好ましい。また、最も先端方向D1側の括れ部が、閉じたループ状の溝部によって形成されている場合に、最も先端方向D1側の括れ部の最小外径(例えば、図5(A)の第1括れ部410の最小外径Db)が、図4(C)で説明した最小外径Dbの好ましい範囲内であることが、好ましい。
(4)括れ部の複数の溝部を中軸に形成する方法としては、転造を用いる方法に変えて、他の任意の方法を採用可能である。例えば、複数の溝部を、切削によって形成してもよい。この場合、括れ部の外周面の全体は、中軸のうちの括れ部が形成されていない部分の外周面(例えば、図2(B)の中軸30の外径Dcの部分の外周面30s)から内周側に、形成され得る。
(5)中軸に形成された複数の溝部が、底部と中軸の中心軸との間の距離が互いに異なる複数の溝部を含んでもよい。ここで、溝部の底部と中軸の中心軸との間の距離(例えば、半径)が同じである1以上の溝部が軸線CLに平行な方向に並んで形成された部分を、括れ部として採用してよい。なお、中軸に形成された複数の溝部のうちの1以上の溝部のそれぞれの底部が丸められていてもよい。丸められた底部と中心軸との間の距離としては、底部と中心軸との間の最小の距離を採用すればよい。また、1つの括れ部としては、複数の溝部が同じピッチで並んだ部分を、採用してよい。
(6)括れ部の先端側に第1移行部が接続され、第1移行部の先端側に外径が略一定な部分である第1胴部が接続されていることが好ましい。第1移行部の構成としては、図6(B)、図7(A)、図8(A)で説明した構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、溝部の総数は、1以上の任意の数であってよい。また、第1移行部は、括れ部の上記の変形例と同様に、螺旋状の溝部によって形成されていてもよい。また、第1移行部の溝部の形状は、括れ部の溝部の上記の実施形態と変形例と同様に、種々の形状であってよい。一般的には、第1移行部としては、以下の条件を満たすW個(Wは、1以上の整数)の溝部が並んで形成された部分を採用してよい。その条件は、W個の溝部のそれぞれの底部と中軸の中心軸との間の距離(例えば、半径)が、括れ部の溝部の底部と中心軸との間の距離よりも大きく、かつ、第1胴部の外周面と中心軸との間の距離よりも小さい、というものである。このような第1移行部は、括れ部の先端側の端部に応力が集中することを適切に緩和できる。
ここで、第1移行部は、中軸の周方向に亘って1周する閉じたループ状の複数の溝部を含んでもよい。そして、図7(A)、図8(A)の実施形態のように、第1移行部の複数の溝部に関しては、先端側の溝部の底部の外径が後端側の溝部の底部の外径よりも大きくてよい。この構成によれば、第1移行部の複数の溝部は、括れ部と第1胴部との間で、溝部の外径を徐々に変化させるので、第1移行部のうちの一部分に応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸の過度の湾曲を抑制できる。
一方、図9(A)には、変形例の中軸30fの第1移行部500fが示されている。図7(A)の実施形態と異なる点は、第1移行部500fに、底部610の外径が同じである複数の溝部600が設けられている点だけである(具体的には、Dc>D65=D64=D63>D62=D61>Db)。このように、第1移行部の隣合う2個の溝部の複数のペアのうち、1以上のペアにおいて、先端側の溝部の底部の外径が後端側の溝部の底部の外径よりも大きく、1以上の別のペアにおいて、先端側の溝部の底部の外径が後端側の溝部の底部の外径と同じであってもよい。一般的には、第1移行部に含まれる複数の溝部によって形成される隣合う2個の溝部のN個(Nは2以上の整数)のペアのうち、L個(Lは1以上N−1以下の整数)のペアのそれぞれに関しては、先端側の溝部の底部の外径が後端側の溝部の底部の外径よりも大きく、N−L個のペアのそれぞれに関しては、先端側の溝部の底部の外径が後端側の溝部の底部の外径と同じであってよい。この構成によれば、第1移行部の溝部の少なくとも1個のペアにおいて、先端方向D1側に向かって溝部の底部の外径が大きくなるので、第1移行部の複数の溝部は、括れ部と第1胴部との間で、溝部の外径を複数の段階で変化させる。従って、第1移行部のうちの一部分に応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸の過度の湾曲を抑制できる。
また、第1移行部がW個の溝部を含む場合、第1移行部は、W個の溝部の後端方向D1r側にそれぞれ形成されるW個の頂部を含む。ここで、図6(B)、図7(A)の実施形態のように、第1移行部の隣合う2個の頂部のペアに関して、頂部の外径が同じであってもよい。また、図8(A)の実施形態のように、第1移行部の隣合う2個の頂部のペアに関して、先端側の頂部の外径が後端側の頂部の外径よりも小さくてもよい。一般的には、第1移行部に含まれるW個の頂部によって形成される隣合う2個の頂部のB個(B=W−1)のペアのうち、C個(Cは1以上B以下の整数)のペアのそれぞれに関しては、先端側の頂部の外径が後端側の頂部の外径よりも小さく、B−C個のペアのそれぞれに関しては、先端側の頂部の外径が後端側の頂部の外径と同じであってよい。ここで、頂部が丸められている場合、丸められた頂部の外径としては、頂部の最大の外径を採用すればよい。
また、第1移行部の最も後端方向D1r側の溝部と括れ部の最も先端方向D1側の溝部との間の第1接続ピッチが、括れ部の複数の溝部のピッチ(基準ピッチと呼ぶ)の3倍以下である場合に、第1移行部は括れ部に接続されていると言える(図6(B)、図7(A)、図8(A)、図9(A)の実施形態では、ピッチPt1が、第1接続ピッチに対応する)。なお、第1移行部の複数の溝部のピッチは、第1移行部の後端方向D1r側に接続された括れ部の基準ピッチと異なっていてもよい。また、第1移行部の複数の溝部の間で、ピッチが変化してもよい。
(7)括れ部の後端側に第2移行部が接続され、第2移行部の後端側に外径が略一定な部分である第2胴部が接続されていることが好ましい。第2移行部の構成としては、図6(C)、図7(B)、図8(B)で説明した構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、溝部の総数は、1以上の任意の数であってよい。また、第2移行部は、括れ部の上記の変形例と同様に、螺旋状の溝部によって形成されていてもよい。また、第2移行部の溝部の形状は、括れ部の溝部の上記の実施形態と変形例と同様に、種々の形状であってよい。一般的には、第2移行部としては、以下の条件を満たすX個(Xは、1以上の整数)の溝部が並んで形成された部分を採用してよい。その条件は、X個の溝部のそれぞれの底部と中軸の中心軸との間の距離(例えば、半径)が、括れ部の溝部の底部と中心軸との間の距離よりも大きく、かつ、第2胴部の外周面と中心軸との間の距離よりも小さい、というものである。このような第2移行部は、括れ部の後端側の端部に応力が集中することを適切に緩和できる。
ここで、第2移行部は、中軸の周方向に亘って1周する閉じたループ状の複数の溝部を含んでもよい。そして、図7(B)、図8(B)の実施形態のように、第2移行部の複数の溝部に関しては、後端側の溝部の底部の外径が先端側の溝部の底部の外径よりも大きくてよい。この構成によれば、第2移行部の複数の溝部は、括れ部と第2胴部との間で、溝部の外径を徐々に変化させるので、第2移行部のうちの一部分に応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸の過度の湾曲を抑制できる。
一方、図9(B)には、変形例の中軸30fの第2移行部700fが示されている。図7(B)の実施形態と異なる点は、第2移行部700fに、底部810の外径が同じである複数の溝部800が設けられている点だけである(具体的には、Db<D81=D82<D83=D84=D85<Dc)。このように、第2移行部の隣合う2個の溝部の複数のペアのうち、1以上のペアにおいて、後端側の溝部の底部の外径が先端側の溝部の底部の外径よりも大きく、1以上の別のペアにおいて、後端側の溝部の底部の外径が先端側の溝部の底部の外径と同じであってもよい。一般的には、第2移行部に含まれる複数の溝部によって形成される隣合う2個の溝部のP個(Pは2以上の整数)のペアのうち、Q個(Qは1以上P−1以下の整数)のペアのそれぞれに関しては、後端側の溝部の底部の外径が先端側の溝部の底部の外径よりも大きく、P−Q個のペアのそれぞれに関しては、後端側の溝部の底部の外径が先端側の溝部の底部の外径と同じであってよい。この構成によれば、第2移行部の溝部の少なくとも1個のペアにおいて、後端方向D1r側に向かって溝部の底部の外径が大きくなるので、第2移行部の複数の溝部は、括れ部と第2胴部との間で、溝部の外径を複数の段階で変化させる。従って、第2移行部のうちの一部分に応力が集中することを緩和できる。この結果、中軸の過度の湾曲を抑制できる。
また、第2移行部がX個の溝部を含む場合、第2移行部は、X個の溝部の先端方向D1側にそれぞれ形成されるX個の頂部を含む。ここで、図6(C)、図7(B)の実施形態のように、第2移行部の隣合う2個の頂部のペアに関して、頂部の外径が同じであってもよい。また、図8(B)の実施形態のように、第2移行部の隣合う2個の頂部のペアに関して、後端側の頂部の外径が先端側の頂部の外径よりも小さくてもよい。一般的には、第2移行部に含まれるX個の頂部によって形成される隣合う2個の頂部のG個(G=X−1)のペアのうち、H個(Hは1以上G以下の整数)のペアのそれぞれに関しては、後端側の頂部の外径が先端側の頂部の外径よりも小さく、G−H個のペアのそれぞれに関しては、後端側の頂部の外径が先端側の頂部の外径と同じであってよい。ここで、頂部が丸められている場合、丸められた頂部の外径としては、頂部の最大の外径を採用すればよい。
また、第2移行部の最も先端方向D1側の溝部と括れ部の最も後端方向D1r側の溝部との間の第2接続ピッチが、括れ部での基準ピッチの3倍以下である場合に、第2移行部は括れ部に接続されていると言える(図6(C)、図7(B)、図8(B)、図9(B)の実施形態では、ピッチPt2が、第2接続ピッチに対応する)。なお、第2移行部の複数の溝部のピッチは、第2移行部の先端方向D1側に接続された括れ部の基準ピッチと異なっていてもよい。また、第2移行部の複数の溝部の間で、ピッチが変化してもよい。
(8)第1移行部と第2移行部との間で構成が異なっていてもよい。例えば、図6(B)、図7(A)、図8(A)の第1移行部500、500d、500eから任意に選択された第1移行部と、図6(C)、図7(B)、図8(B)の第2移行部700、700d、700eから任意に選択された第2移行部とが、共通の括れ部に接続されていてもよい。また、第2移行部が省略されて、第1移行部が括れ部に接続されてもよく、逆に、第1移行部が省略されて、第2移行部が括れ部に接続されてもよい。また、第1移行部と第2移行部との少なくとも一方は、上記の任意の実施形態の中軸の任意の括れ部に、適用してよい。一般的には、T個(Tは1以上の整数)の括れ部が中軸に設けられている場合に、U個(Uはゼロ以上T以下の整数)の括れ部に第1移行部が接続され、V個(Vはゼロ以上T以下の整数)の括れ部に第2移行部が接続されてよい。Vは、Uと同じであってもよく、Uと異なっていてもよい。また、U個の第1移行部の間で、構成が異なっていてもよく、V個の第2移行部の間で、構成が異なっていてもよい。
(5)グロープラグの構成は、図1で説明した構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、中軸30の後端部39の外周面には、雄ねじが形成され、端子部材80には、雌ねじが形成され、端子部材80を中軸30の後端部39にねじ込むことによって、中軸30に端子部材80が固定されてもよい。ここで、端子部材80としては、キャップ状の部材に代えて、ナットを採用してもよい。
(6)上述したグロープラグは、内燃機関の始動補助のために利用されるグロープラグに限らず、種々のグロープラグに適用可能である。例えば、排気ガスを昇温するための排気ガスヒータ装置や、触媒やディーゼル粒子フィルタ(DPF: Diesel Particulate Filter)を再活性化するためのバーナーシステムや、冷却水を昇温するためのウォータヒータ装置等の種々の装置に、上記のグロープラグを適用可能である。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。