以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、下記の式(1)に示されるapurinic/apyrimidinic endonuclese-1(APE-1)活性化作用を呈する環状フェニルグルカン誘導体は炭素元素、水素元素、酸素元素及び窒素元素から構成されている。
すなわち、環状に結合したフェニルグルカン類である。
この環状フェニルグルカン誘導体は6分子のグルカンと3分子のフェニル基より構成されている。グルカンはNアセチルグルコサミンとグルコサミンであり、3分子のNアセチルグルコサミンと3分子のグルコサミンである。グルカンの間の結合はエーテル結合であり、糖質の間の通常の結合形式である。Nアセチルグルコサミンとグルコサミンは交互に配列している。すなわち、Nアセチルグルコサミンの1位とグルコサミンの4位が結合し、このグルコサミンの1位と次のNアセチルグルコサミンの4位が結合している。これとは別にグルコサミンの1位とNアセチルグルコサミンの4位が結合し、このNアセチルグルコサミンの1位と別のグルコサミンの4位が結合している。この2種類のトリグルカン同志はNアセチルグルコサミンの4位とグルコサミンの4位が結合し、さらに、Nアセチルグルコサミンの1位とグルコサミンの1位が結合している。このように6つの糖により環状構造が形成されている。
この環状フェニルグルカン誘導体をNアセチルグルコサミン、グルコサミン及びフェニルエステル体を原料として有機化学的に合成することができる。この有機合成された誘導体は標準物質として解析や分析に利用される。しかし、化学的な製造にはコストがかかり、かつ、有機合成反応には触媒として有機溶媒と重金属を使用することから、化粧品や食品分野には利用しにくいという安全性上の欠点がある。
この環状フェニルグルカン誘導体の構造についてはこの誘導体の重水素化クロロホルム中の500MHzのH-NMR(1H-NMR)解析(ブルカー製)により、ピークの位置は1.11、1.12、1.17、1.24、1.26、1.29、1.30、2.19、2.21、2.46、2.55、3.61、3.72、3.79、3.81、3.95、4.06、4.13、4.29、4.40、4.52、4.58、4.93、5.00、5.11、5.12、5.13、5.24、5.55、5.57、7.37、7.78及び7.97ppmに認められる。
また、この誘導体について重水素化クロロホルム中のC-NMR(13C-NMR)解析ではピークの位置は6.7、14.9、17.0、17.1、17.2、18.0、18.2、24.1、24.8、25.0、25.7、28.9、29.6、30.1、31.0、33.3、33.9、34.7、43.6、43.7、61.9、62.0、66.2、67.1、67.5、67.8、68.7、68.9、69.3、71.1、71.5、71.7、72.4、74.7、74.9、76.3、84.4、98.3、99.5、99.8、100.3、101.2、112.7、113.0、117.1、120.7、125.8、134.7、137.7、138.2、139.5、158.5、159.0、164.0、187.6、192.5、193.6及び212.9ppmに認められる。
仮にヒトがこの誘導体を過剰摂取した場合、体内酵素により分解され、Nアセチルグルコサミンやグルコサミンに分解され、これらの物質は生体内に存在する物質であることからこの誘導体の安全性も高い。また、生体内に貯留することもないことから安全性が高い。
この誘導体はAPE-1活性化作用を呈して障害された遺伝子を修復する。すなわち、この誘導体がAPE-1を拮抗型タイプとして活性化する。つまり、この誘導体は障害された遺伝子を基質とし、この基質とAPE-1との結合反応を高める働きを示す。その場合、障害された遺伝子との間のkm値を低下させる。このkm値の低下はAPE-1の活性中心の反応性を高めることにより生じる。この誘導体はAPE-1の活性中心に働き、障害された遺伝子との結合性を高める。この誘導体は低濃度の遺伝子障害に対してもAPE-1が働きやすくする。
この反応メカニズムはこの誘導体の環状構造の内部に障害された遺伝子の塩基部分をとらえて固定することにより、障害遺伝子部位とAPE-1との反応を高めることである。すなわち、この誘導体のNアセチルグルコサミンのN位のアセチル基はマイナス電位を帯び、一方、グルコサミンのN位はプラス電子を帯びることにより、障害遺伝子の水酸基とアセチル基を結合することができる。たとえば、8-OHdG(8-ヒドロキシデオキシグアノシン)のヒドロキシル基部分とAPE-1との反応を高める。APE-1は8-OHdGをDNAから切断して分離させ、酸化されていないデオキシグアノシンを組込み、遺伝子を修復させる。
一方、この誘導体は反応の最大速度Vmaxには影響しない。つまり、障害された遺伝子を大量に修復する作用はない。最大速度に影響しない点からこの誘導体が過剰に遺伝子と結合して遺伝子の複製と転写には影響しない点により安全性が高いことから好ましい。
さらに、この誘導体はビタミンA、ビタミンE、ビタミンDなどの脂溶性ビタミン類、アスタキサンチン、レスベラトロールなどの脂溶性の高い有用な成分を環状構造の内部に結合することができる。つまり、この誘導体は有用な疎水性エキス、脂溶性物質、脂溶性エキス、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸や脂溶性ビタミンと結合する。脂溶性エキスの結合性は高く、数個から10個程度のエキス成分と結合することが可能である。
この誘導体と脂溶性エキスの結合体は乾燥にも耐え、また、100℃の沸騰にも安定である。さらに、マイナス200℃程度の液体窒素の中でも安定である。
また、この得られた誘導体と脂溶性エキスの結合体は親水性の溶媒の中で安定である。たとえば、水溶液中で100℃程度の加熱にも安定である。
さらに、この誘導体と脂溶性エキスの結合体は酸及びアルカリに対して耐性を示し、安定的に維持される。たとえば、胃酸の中でも室温で24時間以上安定である。一方、強アルカリ、たとえば、水酸化ナトリウム溶液の中でも安定である。
この誘導体と脂溶性エキスとの結合体はリパーゼやヒドロキシラーゼに対して防御作用を呈して有用エキスを安定に維持して水溶性を高めて血液中を輸送する。一方、細胞内にはエステラーゼが存在していることから細胞膜を通過した後に、分解されて脂溶性エキスを細胞内に放出する。
この誘導体は粉末にして水溶液と反応する際に水素ガスを発生する。発生する水素ガスは活性酸素を除去する働きがあるため、紫外線や酸化物質によって発生した活性酸素を除去して生体を安定に維持できることから好ましい。また、水素ガスはヒドロキシルラジカルを消去し、遺伝子の障害を減少させ、かつ、抗酸化作用を発揮して遺伝子を保護することから好ましい。
また、この誘導体は紫外線により遺伝子障害を受けた皮膚表皮細胞に働き、皮膚細胞を増殖させ、また、ケラチンを増加させる。この環状フェニルグルカン誘導体は障害された遺伝子を修復することによりケラチン合成酵素を活性化してケラチン量を増加させる。ケラチンの増加作用は皮膚や毛髪を強固にすることから好ましい。
さらに、この誘導体はアレルギー物質であるヒスタミンと結合してヒスタミンによるアレルギー反応を抑制する。つまり、この誘導体は抗アレルギー薬としても利用される。また、炎症物質であるプロスタグランジンやキニン類も吸着して排泄する働きもあることから抗炎症作用にも優れている。
この環状フェニルグルカン誘導体の抽出方法または製造方法としては発酵法、酵素反応法や化学合成法などがある。たとえば、この環状フェニルグルカン誘導体の製造方法としては古細菌であるアエロピラム ペルニクス(Aeropyrum pernix)から抽出することができる。つまり、このアエロピラム ペルニクスには特有の細胞壁が存在し、この誘導体を産生しやすく、また、遺伝子の障害を修復する働きを有している。
特に、アエロピラム ペルニクスを大豆とともに培養して発酵させる方法はこの誘導体の製造工程として優れている。すなわち、増殖したアエロピラム ペルニクスからこの誘導体を抽出する工程はこの誘導体の製造には適している。
アエロピラム ペルニクスや大豆の安全性が確認されている。この発酵技術は日本では知識が豊富であり、食用としての実績も多く、かつ、安全性も高いことから好ましい。
アエロピラム ペルニクスは市販されていないため、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンターや東北大学、北里大学などの研究機関から譲渡されることが好ましい。
さらに、高純度の誘導体を得る目的で精製されることは好ましい。精製の方法としては、分離用の樹脂を用いて分離用溶媒で抽出する精製操作を利用することは好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることは好ましい。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の環状フェニルグルカン、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン-ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1~300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製、HP-20及びHP-21)及びXAD-2またはXAD-4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH-20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA-410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオンHP-20、セファデックスLH-20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1~40倍量が好ましく、4~20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4~30℃が好ましく、10~25℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH-20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはこれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオンHP-20及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。また、活性を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
この環状フェニルグルカン誘導体の優れたAPE-1活性化作用を利用して遺伝子修復作用を期待した化粧料に用いられることは好ましい。また、皮膚細胞のケラチン増加作用を呈することから、化粧料、シャンプー、まつ毛増殖剤、育毛剤、毛髪用化粧料としても利用できる。さらに、抗アレルギー作用を利用してアトピー性皮膚炎にも利用される。また、脂溶性エキス、疎水性アミノ酸やフェニルグルカン類も結合できることから、これらのエキスのキャリアーとして利用される。
この環状フェニルグルカン誘導体にエキスを添加した後、油脂に分散することは、得られる活性部分が油脂の中で安定に維持することから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。この誘導体は水溶性と油溶性の両方の溶媒に溶解する。この両親媒性の性質はこの誘導体の利用を広げることから好ましい。
医薬品として注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。特に、胃酸に対して耐性を示すことから、内容物が胃酸に対して保護されることから、腸溶性の製剤に利用される。
経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。上記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。上記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
また、上記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに液体エキス担体を含有させることができる。上記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によってエキスを導入するための軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤としてAPE-1活性化作用を目的とした食品、APE-1活性化作用を目的とした健康食品、さらには、遺伝子や皮膚保護のための食品などに利用される。また、保健機能食品として栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、刺激による遺伝子障害の修復作用や有用なエキスやビタミンなどの栄養素の導入を目的として飼料やペット用サプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができ、APE-1活性化作用及びケラチンの産生を呈する化粧料となる。化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。この誘導体は水溶性と油溶性の両方の溶媒に溶解する。この両親媒性の性質はこの誘導体の利用を広げることから好ましい。
また、この誘導体はAPE-1活性化作用を利用した遺伝子修復を目的とした植物活性化剤としても利用される。さらに、この誘導体に結合した有用なエキスを植物細胞内に導入することにより植物の生育を活性化し、開花、結実、収穫量の増加をもたらすことは好ましい。たとえば、この誘導体にHB-101(株式会社フローラ製)の植物活力剤を結合することにより植物の成長を促進する働きが増強され、維持され、安定化されることから好ましい。
以下に、アエロピラム ペルニクスと大豆を発酵する製造工程について説明する。この製造工程はアエロピラム ペルニクスと大豆を発酵させた発酵液に分岐シクロデキストリンを添加してプロテアーゼ処理を行う工程からなる。
すなわち、原料はアエロピラム ペルニクス、大豆、分岐シクロデキストリン及びプロテアーゼである。
原料となる大豆は国産、アメリカ産などいずれの産地でも良いが遺伝子組み換え体ではないものが好ましい。
これらの原料は使用に際して株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH-40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD-7、VD-20、中山技術研究所製DM-6などの粉砕機で乾燥され、粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
用いるアエロピラム ペルニクスは食経験が豊富で有用な食用菌である。地球上で太古から生息して、食品中、大気中や土壌にも認められる。
上記の発酵に関するそれぞれの添加量は大豆は1重量に対してアエロピラム ペルニクスは0.001~0.07重量が好ましい。アエロピラム ペルニクスは発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
上記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により上記の材料を混合することは好ましい。さらに、発酵物は以下の工程により実施され、製造される。
分岐シクロデキストリンは環状ブドウ糖の一つであり、内腔に疎水性部分を有することから疎水性の高い物質を吸着しやすい。塩水港精糖社製の分岐シクロデキストリンは品質が高いことから好ましい。
用いるプロテアーゼとしては天野エンザイム社製の食品加工用プロテアーゼであるプロテアーゼA「アマノ」SD、プロテアーゼM「アマノ」SDまたはプロテアーゼP「アマノ」3SDの品質が安定し、使用実績が豊富なことから好ましい。
このアエロピラム ペルニクスによる発酵によりNアセチルグルコサミン、グルコサミン及びフェニルが結合して立体的にねじれが生まれて環状化が生じる。この発酵の工程は静置法または撹拌法のいずれでも良いが、発酵を短時間で実施できる点から撹拌法が好ましい。発酵は39~46℃で24時間から72時間行われることが好ましい。
温度が低く、時間が短い場合には発酵が進まず、温度が高く、時間が長い場合には産生された環状フェニルグルカン誘導体が分解されてしまうおそれがある。
次に、発酵した後、濾過され、そのろ液に分岐シクロデキストリンが添加される。これはフェニルグルカンの吸着を行い、目的とする環状フェニルグルカンが安定に維持されることから好ましい。
添加される分岐シクロデキストリンは上記の発酵液100gに対して分岐シクロデキストリンの100gから300gが好ましい。この分岐シクロデキストリンにより目的とする環状フェニルグルカン誘導体が内部に包接されて安定に維持される。この分岐シクロデキストリンとの懸濁液は攪拌されることが好ましい。一方、余分なタンパク質や菌体成分は分岐シクロデキストリンに包接されないことから以下のプロテアーゼ処理により分解される。
この懸濁液にプロテアーゼが添加され、過剰なタンパク質は分解される。添加されるプロテアーゼは上記の発酵液100gに対して0.001gから0.8gが好ましい。このプロテアーゼは精製水に懸濁して添加されることは酵素反応が進みやすいことから好ましい。
この懸濁液は反応を促進するために加温され、攪拌されることは好ましい。加温としては38~45℃が好ましい。また、攪拌は1分間当り10~25回が好ましい。時間は1時間から6時間が好ましい。
このプロテアーゼ反応液は濾過される。濾紙やメンブランフィルターを用いることにより効率良くろ過される。ろ過してろ液を得ることにより反応していない余分な成分や原料を排除できることから好ましい。
得られた反応物は煮沸滅菌され、これによりプロテアーゼを失活させることは好ましい。さらに、得られた反応物は、凍結乾燥することにより粉末化され、用いられる。
上記の反応物から、目的とする環状フェニルグルカン誘導体を上記に記載した精製方法により分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。
環状フェニルグルカン誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とする環状フェニルグルカン誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
また、この環状フェニルグルカン誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
以下、上記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
アエロピラム ペルニクス(Aeropyrum pernix)NBRC100138T株を独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンターから分与され、これを保存して必要に応じて培養して用いた。このアエロピラム ペルニクスを大豆含有栄養源とした培養液に分散し、好気下で培養して用いた。
みやもと山農園より千葉県産の大豆を購入して用いた。洗浄後、粉砕して約1kgを発酵に利用した。
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水10kgを添加し、攪拌した。攪拌後、40~42℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行った。発酵の状態は溶解したタンパク質の定量(ビューレット法)によりモニタリングした。発酵後、得られた発酵液の上清を濾過布により粗濾過してろ液を得た。
発酵後、発酵液をろ過してろ液を採取した。このろ液に塩水港精糖社製の分岐シクロデキストリン(イソエリート)50gを添加して十分に攪拌した。
さらに、天野エンザイム製のプロテアーゼM「アマノ」SDの4gを添加し、37℃に加温して攪拌した。
攪拌は攪拌装置を用いて室温で12時間実施した。この反応液を短時間煮沸滅菌し、酵素を失活させ、また、滅菌させた。得られた液を冷却後、東洋濾紙の濾紙(No.2)により吸引ろ過してろ液を得た。
この溶液を凍結乾燥機(タイテック社製のフリーズトラップVA-140S)により凍結乾燥させて目的とする粉末32.8gを得た。これを検体1とした。
得られた検体1の粉末10gを精製水100mLに懸濁して5%エタノールで膨潤させたダイヤイオンHP-20(三菱化学製)700gに供した。5%エタノール800mLで洗浄後、15%エタノール1000mLでさらに洗浄した。
これに60%エタノール700mLを添加し、目的とする環状フェニルグルカン誘導体を分画した。この精製操作を4回実施して最終精製物とした。得られた最終分画を減圧乾燥器により乾燥して粉末7.1gを得た。これを検体2とした。
以下に、環状フェニルグルカン誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体2を精製水に溶解し、濾過後、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
さらに、重水素化クロロホルム中、500MHzの核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製)で解析した。構造解析の結果、検体2及び検体1から環状フェニルグルカンを同定した。すなわち、Nアセチルグルコサミン、グルコサミン及びフェニルエステル体が結合した目的とする誘導体が検出された。
500MHzのH-NHR分析結果では、1.11、1.12、1.17、1.24、1.26、1.29、1.30、2.19、2.21、2.46、2.55、3.61、3.72、3.79、3.81、3.95、4.06、4.13、4.29、4.40、4.52、4.58、4.93、5.00、5.11、5.12、5.13、5.24、5.55、5.57、7.37、7.78及び7.97ppmにピークが認められた。
さらに、C-NMR分析結果では6.7、14.9、17.0、17.1、17.2、18.0、18.2、24.1、24.8、25.0、25.7、28.9、29.6、30.1、31.0、33.3、33.9、34.7、43.6、43.7、61.9、62.0、66.2、67.1、67.5、67.8、68.7、68.9、69.3、71.1、71.5、71.7、72.4、74.7、74.9、76.3、84.4、98.3、99.5、99.8、100.3、101.2、112.7、113.0、117.1、120.7、125.8、134.7、137.7、138.2、139.5、158.5、159.0、164.0、187.6、192.5、193.6及び212.9ppmにピークが認められた。
以下に、C-NMRの解析結果のチャートを示した。(横軸単位はppm、縦軸単位はピーク強度を示す。)
上記の分析値は有機化学合成された環状フェニルグルカン誘導体のピークと同一であり、目的とする環状フェニルグルカン誘導体として同定された。検体2に含まれるこの誘導体は98.3%、すなわち、純度98.3%であり、一方、検体1の純度は79.4%であった。
また、得られた誘導体の粉末0.1gを精製水10mLに溶解した場合、水素ガスの発生が認められた。ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、PDD高感度分析システム)で定量した結果、1.6ppmの水素ガス濃度を検出した。
以下に、環状フェニルグルカン誘導体によるAPE-1活性化作用に関する確認試験について述べる。
(試験例2)
APE-1はNew England BioLabsより購入した。ヒト由来APE-1遺伝子を有する大腸菌から得られたAPE-1(製品コードM0272S)を用いた。
まず、AP部位含有DNAはウラシル残基を1塩基を含有する20pmolの34mer2本鎖オリゴヌクレオチドを1単位のウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)で37℃下、2分間処理して作製した。
APE-1活性の1unitを37℃下、全反応溶液0.1mL中1時間の反応により、1個のAP部位を有する20pmolの34merの2本鎖オリゴヌクレオチドを切断するために必要な酵素量と定義した。
また、AP部位の切断についてはコメットアッセイにより定量した。なお、このAPE-1酵素反応の測定方法は生化学的な手法として確立されており、実験例も豊富である。
NE緩衝液中AP部位含有DNAと1ユニットのAPE-1酵素と上記の検体1及び検体2を添加して37℃で反応させた。常法に従い、基質濃度と検体濃度を変動させてこの反応のkm値とVmaxを定量した。なお、溶媒対照として精製水を用いた。
その結果、溶媒対照のkm値は18.9pmol及びVmaxは1.3unitであった。検体1添加によるkm値は11.3pmol及びVmaxは1.4unitであった。さらに、検体2添加によるkm値は10.3pmol及びVmaxは1.4unitであった。この結果から、検体1及び検体2はいずれもkm値を低下させるものの、Vmaxには影響しないと結論された。
また、AP部位含有DNAの修復率は溶媒対照に比して検体1で145%及び検体2の添加により336%に活性化した。つまり、検体1及び検体2はDNA修復に有効であった。一方、基質であるAP部位含有DNAを2倍に増加させることにより、検体1及び検体2の活性化率は低下した。
これらの結果、検体1及び検体2はAPE-1のkm値を低下させ、APE-1を活性化することが判明した。検体1及び検体2の添加によるAPE-1の活性化は拮抗型であると結論された。
以下にヒト皮膚表皮細胞を用いたヒト皮膚への作用試験について述べる。なお、この試験方法は生化学的に成分の効果を検証できる再現性のある常法である。
(試験例3)
クラボウより購入したヒト由来表皮細胞(表皮由来、エピーダーセル)を用いた。培養液として5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレ(FALCON製)に播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。ここに紫外線照射装置(クオークテクノロジー製)により280nmの紫外線を1時間照射した。ここに、前記の検体1、検体2及び陽性対照としてEGF(フナコシ製、表皮成長因子)をいずれも0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養して試験した。
培養液を採取後、表皮細胞の生存率をトリパンブルー法により計数した。その後、表皮細胞の懸濁液を調製した。1000個当たりの細胞懸濁液に含まれるAPE-1活性を上記のAPE-1活性測定法により測定した。同時に、細胞懸濁液中の8-OHdG量をキット(日本老化制御研究所製)にて定量した。8-OHdGに特異的なモノクローナル抗体を使用したELISAキットである。
なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加によりヒト由来表皮細胞数は溶媒対照群に比して平均値として178%に増加した。また、検体2では255%に増加した。一方、EGFでは155%となった。この結果、検体1及び検体2の方がEGFよりも優れた細胞活性化作用を呈した。
上記の細胞懸濁液中のAPE-1活性値は溶媒対照群に比して平均値として199%に活性化した。また、検体2では338%に活性化した。一方、EGFでは101%となった。この結果、検体1及び検体2はAPE-1活性化作用を示した。
上記の細胞中の8OHdG量は溶媒対照群では590ng、検体1処理群では49ng、検体2処理群では30ng、EGF処理群では551ngであった。
8OHdGは遺伝子が活性酸素により修飾された変異した状態であり、遺伝子の障害をあらわしている。検体1及び検体2でこの値が低く、EGFの働きより優っていた。これは検体1及び検体2による遺伝子修復の活性化作用を示していた。
一方、安全性試験の一環として人工皮膚であるEpiSkin(SkinEthic社製)を用いた皮膚刺激性実験では、検体1及び検体2の添加により刺激性は認められず、安全性が確認された。なお、この方法は細胞を用いる皮膚刺激性試験評価法として動物を使用しない方法として確立されている。
以下にヒト神経細胞の障害モデルを用いた障害に対する試験について述べる。なお、この試験方法は生化学的に成分の働きを検証できる再現性のある常法である。
(試験例4)
コスモバイオから購入したヒト神経細胞(Human Neurons(HN))を用いた。培養液として専用の培養液(神経細胞増殖培地)を用いて培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに1%の神経毒であるアクリルアミド水溶液を添加して神経細胞を障害させた。
ここに、前記の実施例1で得られた検体1及び検体2、陽性対照としてNGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)をいずれも0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
培養終了後、細胞数を顕微鏡下で計数した。さらに、上記と同様の方法により、遺伝子修復の働きを検証した。上記の方法によりAPE-1酵素活性及び細胞懸濁液中の8-OHdG量をキット(日本老化制御研究所製)にて定量した。8-OHdGに特異的なモノクローナル抗体を使用したELISAキットである。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により神経細胞数は溶媒対照群に比して平均値として149%に増加した。また、検体2では210%に増加した。一方、NGFでは139%となった。この結果、検体1及び検体2の方がNGFよりも優れた細胞活性化作用を呈した。
上記の細胞懸濁液中のAPE-1活性値は溶媒対照群に比して平均値として177%に活性化した。また、検体2では260%に活性化した。一方、NGFでは109%となった。この結果、検体1及び検体2はいずれもAPE-1活性化作用を示した。
上記の細胞中の8OHdG量は溶媒対照群では220ng、検体1処理群では39ng、検体2処理群では20ng、NGF処理群では201ngであった。
もともと8OHdGは遺伝子が活性酸素により修飾された変異した状態であり、遺伝子の障害をあらわしている。検体1及び検体2で8OHdG量が低く、これらの働きはNGFより優れていた。これは検体1及び検体2による遺伝子修復の活性化作用を示していた。
以下に、ビタミンE結合環状フェニルグルカン誘導体の結合性及び安定性に関する確認試験について述べる。
(試験例5)
ビタミンEと上記の検体2を結合させた場合とリン脂質によりリポソーム化したビタミンEを製造し、ビタミンEの結合性及び安定性について試験した。なお、この結合性及び安定性に関する試験方法は分析法の常法であり、試験例が豊富である。
まず、検体2の粉末0.1mgを精製水10mLに懸濁した。ここにビタミンE(トコフェロール、和光純薬製)0.1mgを添加して撹拌しながら1時間31℃~33℃に加温した。これを濾紙(アドバンテック東洋ろ紙製、No.2)により濾過して濾液を採取した。このろ液をゲル濾過(GEヘルスケア・ジャパン製)カラムに供して分子量1000~1500の分画を採取した。ここには、ビタミンEを結合した環状フェニルグルカン誘導体が採取される分画である。
これとは別に常法によりリン脂質によりビタミンE含有リポソームを製造した。つまり、日油株式会社製のPEG化リン脂質(SUNBRIGHT DSPE-020CN)を用いて加温下、ビタミンEをリポソーム化した。これを対照とした。
検体2を用いたビタミンE結合環状フェニルグルカン誘導体とリポソーム化ビタミンEの安定性を検討した。すなわち、両者を1%w/vの水溶液状態にして100℃に6時間加温した後、両者に含有されるビタミンE量をHPLC(島津製作所製)により定量した。測定条件はShimpackSCRを用い、移動相として0.1%酢酸含有30%アセトニトリルを用いてカラム温度40℃で354nmの波長で測定した。標準物質として上記のビタミンEを用いた。なお、実験は5回実施し、その平均値を算出した。
その結果、検体2の結合環状フェニルグルカン誘導体に結合したビタミンE量は133μgであった。一方、リポソーム化ビタミンEのビタミンE含量は30μgであった。この結果、検体2の方が4倍以上、安定性に優れ、より多くのビタミンEを含有すると結論された。
以下に、アスタキサンチン結合環状フェニルグルカン誘導体の結合性及び安定性に関する確認試験について述べる。
(試験例6)
精製されたアスタキサンチンを武田紙器株式会社より購入して用いた。アスタキサンチンと上記の検体2を結合させた場合とリン脂質によりリポソーム化したアスタキサンチンを製造し、アスタキサンチンの結合性及び安定性について試験した。なお、この結合性及び安定性に関する試験方法は常法であり、試験例が豊富である。
まず、検体2の粉末0.1mgを精製水10mLに懸濁した。ここに上記のアスタキサンチン10mLを添加して撹拌しながら1時間で38℃~40℃に加温した。これを濾紙(アドバンテック東洋ろ紙製、No.2)により濾過して濾液を採取した。このろ液をゲル濾過(GEヘルスケア・ジャパン製)カラムに供して分子量1500~2000の分画を採取した。ここには、アスタキサンチンを結合した環状フェニルグルカン誘導体が採取される分画である。
これとは別に常法によりリン脂質によりアスタキサンチン含有リポソームを製造した。つまり、日油株式会社製のPEG化リン脂質(SUNBRIGHT DSPE-020CN)を用いて加温下、アスタキサンチンをリポソーム化した。これを対照とした。
検体2を用いたアスタキサンチン結合環状フェニルグルカン誘導体とリポソーム化アスタキサンチンの安定性を比較した。つまり、これらの試験溶液を98℃に6時間加温した後、両者に含有されるアスタキサンチン量をHPLC(島津製作所製)により定量した。測定条件にはShimpackXR-ODS(粒子径2.2μm)カラムを用いた。移動相として0.1%SDS含有20%アセトニトリル(関東化学製)を用いて470nmの波長で測定した。なお、実験は5回実施し、その平均値を算出した。
その結果、検体2のアスタキサンチン結合環状フェニルグルカン誘導体のアスタキサンチン量は227μgであった。一方、リポソーム化アスタキサンチンのアスタキサンチン量は37μgであった。この結果、検体2の方が6倍以上、安定性に優れ、より多くのアスタキサンチンを結合して含有すると結論された。
以下に、ヒト由来皮膚細胞を用いたケラチン産生の確認試験について述べる。
(試験例7)
コスモ・バイオ株式会社より購入したヒト皮膚由来の初代表皮培養細胞を用いた。細胞を専用の培養液に懸濁し、前培養して細胞を増殖させた。37℃、5%炭酸ガス下、炭酸ガス培養器内で培養した。その後、増殖期にある細胞をトリプシン含有培地にて剥離して実験に供した。生細胞数をトリパンブルー色素排除法により顕微鏡下で計数した。細胞数を1mLあたり1000個に調整して5mLずつ培養シャーレに播種してさらに、37℃、5%炭酸ガス下で培養した。これを紫外線照射装置(ロックタイト、出力88MH)により紫外線を照射して細胞にダメージを与えた。照射はシャーレの蓋を外して1時間実施した。
この紫外線照射により皮膚細胞が障害を受け、この障害に対する回復を試験した。なお、この方法は皮膚に対する試験物質の評価に実施される方法である。
試験物質として検体2及び対照としてリポソーム化アスタキサンチンを用いた。いずれも生理食塩液に懸濁し、希釈して最終濃度で1mg/mLになるように添加した。なお、溶媒対照として生理食塩液を用いた。これを37℃で3日間培養して生細胞数を顕微鏡下で計数した。さらに、細胞を精製水に分散して超音波破砕機により細胞分散液を得た。この細胞分散液中に含まれるケラチン量をELISA法(コスモ・バイオ株式会社)により定量した。なお、実験には5枚のシャーレを用い、その平均値を算出した。
その結果、溶媒対照の細胞数を100%として検体2の添加による比率を求めた結果、検体2の添加により細胞数は258%に増加した。一方、リポソーム化アスタキサンチンの添加により144%に増加した。ケラチン量については溶媒対照の値を100%として検体2の添加により507%に増加した。一方、リポソーム化アスタキサンチンの添加により190%に増加した。また、この誘導体はヒト由来皮膚細胞に対して障害を与えず、安全性は高いと結論された。
以下に、ヒト由来マスト細胞(肥満細胞)を用いたヒスタミン抑制及び吸着性の確認試験について述べる。
(試験例8)
スギ花粉アレルギーのあるヒト(男性5名及び女性5名、年齢29歳~67歳)より採取した白血球よりマスト細胞を採取し、培養液に培養して96孔マイクロプレートに播種した。これを培養し、アレルゲンとなるスギ花粉(コスモ・バイオ株式会社)を0.1mg添加した。同時に、試験物質として検体2及び対照物質として塩酸ジフェンヒドラミンをいずれも生理食塩液に懸濁し、希釈して最終濃度で1mg/mLになるように添加した。なお、溶媒対照として生理食塩液を用いた。これを37℃で1日間培養して培養上清に遊離されたヒスタミン量をELISA法(高感度ヒスタミンELISAキット、コスモ・バイオ株式会社)により定量した。なお、実験は5回実施し、その平均値を算出した。
その結果、ヒスタミン量は溶媒対照の値を100%として検体2の添加により44%に減少した。一方、塩酸ジフェンヒドラミンでは57%となり、検体2の方がヒスタミン抑制作用に優れていた。
また、検体2に結合されたヒスタミン量をELISA法により定量した結果、上記の検体2には78μgのヒスタミンが結合していた。すなわち、この検体2にはヒスタミンを吸着して生体に反応させないという吸着効果が期待される。この結果から、検体2はヒスタミン遊離を抑制し、かつ、ヒスタミンを吸着して抗アレルギー作用を発揮する。