JP6436337B2 - エラスチン産生作用を呈するケルセチン誘導体及びその製造方法 - Google Patents

エラスチン産生作用を呈するケルセチン誘導体及びその製造方法 Download PDF

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この発明はエラスチン産生作用を呈するケルセチン誘導体及びその製造方法に関するものである。
エラスチンは細胞間隙を構成する大切なタンパク質である。皮膚においては皮膚の弾力を増す働きがあり、毛髪においては弾力性を与えている。
エラスチンは皮膚の角質層において角質バリアを構成し、皮膚を細菌感染から保護している。炎症を制御する働きがある機能性タンパク質である。しかし、加齢とともにエラスチン含量は低下し、加齢に伴う皮膚の弾力の低下やシワの原因となる。
皮膚のエラスチンを維持させる発明としてエラスターゼの活性阻害剤および化粧品の発明があるものの具体的な物質の同定には至っておらず、産業への利用は限定される(例えば、特許文献1参照。)。
また、エラスチン産生に関する発明として例えば、皮膚外用剤に関する発明があるものの(例えば、特許文献2参照。)、その応用は限られている。
特許第4222973号 特許第3886117号
既存の物質によるエラスチン産生作用は軽度であり、産業上への利用が限定されるという課題があり、また、化学合成された物質では安全性に問題があり、利用が限られている。
そこで、副作用が弱く優れたエラスチン産生作用を呈する天然物及びそれを効率良く製造する製造方法が望まれている。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は下記の式(1)で示されるエラスチン産生作用を有するケルセチン誘導体に関するものである。
上記の目的を達成するために、請求項2に記載の発明はエラスチン産生作用を有する請求項1記載の式(1)で示されるケルセチン誘導体の製造方法に関するものである。
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載のケルセチン誘導体はエラスチン産生作用に優れている。
請求項2に記載の製造方法によれば、効率良くケルセチン誘導体を製造することができる。
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
エラスチン産生作用を呈するケルセチン誘導体とは、下記の式(1)で示される構造からなるものである。
前記の式(1)のようにケルセチンの1分子にチロシン1分子とグアニン1分子が結合している。
ケルセチンはポリフェノールの一種であり、IUPAC名は、2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,5,7−トリヒドロキシ−4H−クロメン−4−オンである。
炭素15個、水素10個及び酸素7個より形成され、分子量は302.24である。
ケルセチンはそば、かい花、クランベリー、シソ、葡萄、桂皮、ブルーベリー、アサイーなどの植物に含有されている。ケルセチンは抗酸化作用に優れており、遺伝子にも作用が確認されている。
このケルセチン誘導体はケルセチンの1分子にL−チロシンの1分子とグアニンの1分子が結合している。
さらに、ケルセチンの7位の水酸基とチロシンのカルボキシル基がエステル結合して、誘導体を形成している。さらに、ケルセチンのベンゼン核の4位にグアニンの9位の窒素が結合している。結合の窒素とベンゼン環との結合である。
すなわち、このケルセチン誘導体は核酸塩基を含有する有機化合物である。これらの物質は全て天然由来であり、その安全性は確認されている。
さらに、このケルセチン誘導体の過剰量と人が接触した場合、または飲んだ場合には、体内のエステラーゼなどの酵素により分解されて、ケルセチンとチロシンとグアニンに分解されることから安全性が高い。
このケルセチン誘導体は土壌においては微生物により分解されやすく、環境に対する負担もなく、蓄積性もないことから好ましい。
このケルセチン誘導体は細胞膜を通過し、さらに、核膜を通過して遺伝子に働くことから、その作用が直接的で効率的であることから好ましい。
このケルセチン誘導体はエラスチン生成酵素の遺伝子を活性化し、増幅させることからエラスチン生成酵素が誘導され、エラスチン産生が増加する。
このケルセチン誘導体は皮膚細胞に働き、エラスチンの分解を抑制することから、エラスチンが維持されることから好ましい。
さらに、このケルセチン誘導体は皮膚の上皮細胞の増殖を活性化する。このケルセチン誘導体による皮膚細胞の増殖は遺伝子レベルでの刺激作用による。
このケルセチン誘導体は皮膚細胞のターンオーバーを活性化し、皮膚細胞の増殖をもたらすことから好ましい。
得られたケルセチン誘導体を医薬品素材として利用する場合、目的とするケルセチン誘導体を分離精製することは、目的とするケルセチン誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
医薬品として、注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤としてエラスチン産生と美容を目的とした健康食品、美容食品などに利用される。また、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、エラスチンの産生と皮膚の健康を維持する目的として飼料やサプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
得られた化粧料はエラスチン産生により、シワの改善やタルミの防御、アトピー性皮膚炎の皮膚バリア形成に利用される。
次に、シソの新芽由来のカルス培養物をプロテアーゼ処理する工程からなるエラスチン産生作用を呈する式(1)で示されるケルセチン誘導体の製造方法について説明する。
ここでいうケルセチン誘導体とはケルセチン1分子とチロシン1分子とグアニン1分子から、前述の式(1)で示される誘導体である。このケルセチン誘導体は生体内で酵素により分解されて排泄されるため安全性が高い。
このケルセチン誘導体のケルセチンは天然に存在し、食経験も豊富であり、安全性が認められていることから好ましい。
この誘導体は皮膚細胞の遺伝子に直接作用し、エラスチン産生作用を発揮する。
この製造方法とはシソの新芽由来のカルス培養物をプロテアーゼ処理する工程からなる。
原料となる物質はシソの新芽のカルス培養物とプロテアーゼである。
シソとは学名Perilla frutescensであり、シソ科シソ属の植物であり、種子を介して増殖する。シソには紫シソ、青シソ、緑シソが存在しているが、この場合、いずれのシソも用いることができる。
シソの種子は、サカタのタネなどにより市販されており、品質の安定した種子を利用することは好ましい。
シソは清浄な水分を含んだシートの上で発芽される。発芽2〜5日の新芽が用いられる。この時期は、種子の栄養素が新芽に移行し、成長因子が豊富であることから好ましい。
発芽した新芽はブドウ糖を添加した寒天培地の上でカルス培養される。カルス培養は新芽の生長を促進し、種々の酵素を誘導して遺伝子的にも活性化されることから好ましい。
カルス培養は、30〜40℃の恒温下で実施される。カルス培養の期間は、7日〜20日が好ましい。
カルス培養されたシソの新芽は、洗浄され、清浄な精製水により分散される。
このシソの新芽にはケルセチンが含有されていることからこの誘導体の原料として好ましい。
3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。
プロテアーゼはタンパク質を分解し、ペプチドやアミノ酸を生成する加水分解の酵素であり、食用としても利用されている。アマノ製薬のプロテアーゼNは酵素活性が高いことから好ましい。
前記の発酵物にプロテアーゼを添加して加温することによりケルセチンとタンパク質が分解され、ペプチド型のケルセチン誘導体になる。
カルス培養物の1重量に対してプロテアーゼの添加量は0.002〜0.06重量が好ましい。加温温度は33〜45℃が好ましい。加温時間は1時間から8時間が好ましい。
前記のプロテアーゼ処理した分解物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収でき、プロテアーゼを失活でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。
また、得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
前記の還元反応物から、目的とするケルセチン誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするケルセチン誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜35倍量が好ましく、4〜25倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
ケルセチン誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするケルセチン誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られるケルセチン誘導体が安定に維持されることから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
また、このケルセチン誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
サカタのタネで購入した紫シソの種子を清浄な水を敷いた発芽用シートに播種した。これを恒温槽の中で35℃、5日間、水分を補充して栽培した。
発芽を確認した後、発芽したシソの新芽を採取して水洗した。これを清浄なメスで裁断した。裁断されたシソの新芽はカルス培養用寒天培地の上に設置した。
この寒天培地を38℃〜40℃で7日間カルス培養した。
生育したカルスを採取し、清浄な精製水で洗浄した。
得られたカルス1kgに対してアマノ製薬のプロテアーゼNを10g添加し、40℃で2時間加温した。
この処理物を加温し、エタノールを添加して目的とするケルセチン誘導体含有エキス355gを得た。
前述のケルセチン誘導体含有エキスの300gに6%エタノール含有精製水1Lを添加し、ダイアイオン(両イオンタイプ、三菱化学製)300gを5%エタノール液に懸濁して充填したカラムに供した。
これに3Lの5%エタノール液を添加して清浄し、さらに、55%エタノール液を1L添加して目的とするケルセチン誘導体を溶出させ、精製した。精製されたケルセチン誘導体を減圧蒸留により、エタノール部分を除去し、水溶液とした。これをケルセチン誘導体の検体1とした。
以下に、ケルセチン誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体1をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製、AC−250)で解析した。構造解析の結果、検体1からケルセチンとグアニンとチロシンが検出された。また、ケルセチン1分子にチロシンが1分子結合し、さらに、グアニンが1分子結合していることが確認された。さらなる構造解析によりこのケルセチン誘導体の構造が同定された。
すなわち、ケルセチンの1分子の7位の水酸基とチロシンのカルボキシル基がエステル結合していた。
さらに、ケルセチンのベンゼン環の4位の水酸基とグアニンの9位の窒素分子が結合していた。
以下にヒト皮膚上皮細胞を用いた確認試験について述べる。
(試験例2)
倉敷紡績株式会社より購入したヒト皮膚細胞(エピダーセル)を用いた。培養液としては、5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに、前記の実施例1で得られた検体1及び対照としてEGF(上皮細胞増殖因子)の0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。
細胞を剥離後、細胞数を計数した後、細胞懸濁液を調製し、細胞内のエラスチン量をELISA法(和光純薬)にて測定した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により皮膚の上皮細胞数が対照群に比して平均値として210%に増加した。EGFでは180%の増加であり検体1の方が優れていた。
エラスチン量については検体1により対照群に比して392%に増加した。EGFでは203%となり、検体1による増加が著しかった。なお、細胞には障害はなく、安全性が確認された。
本発明で得られるケルセチン誘導体はエラスチンを増加させることにより、細胞の組織を保護し、組織を保護することから国民の健康維持に貢献する。
本発明で得られるケルセチン誘導体は皮膚の上皮細胞とエラスチンを改善する作用を有することから、化粧料として炎症やアトピー、肌トラブルに悩む方の改善に貢献し、化粧品業界の発展に寄与する。
本発明で得られるケルセチン誘導体は食品としても利用できることから、食品業界の発展に寄与する。

Claims (2)

  1. 下記の式(1)で示されるエラスチン産生作用を呈するケルセチン誘導体。
  2. シソの新芽由来のカルス培養物をプロテアーゼ処理する工程からなるエラスチン産生作用を呈する請求項1記載の式(1)で示されるケルセチン誘導体の製造方法。
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