以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、下記の式(1)に示されるランゲルハンス細胞活性化作用を呈するノイラミン酸誘導体はノイラミン酸の1分子とグルタミンの1分子からなる。
この誘導体のノイラミン酸とは糖質の一種であり、種々の細胞の細胞膜上に存在し、細胞機能に関与している。炭素9個、水素17個、窒素1個及び酸素8個から構成されている。
ノイラミン酸は誘導体として存在しているものが多く、たとえば、NまたはO位の置換体としてシアル酸、N−アセチルノイラミン酸が存在している。
その他には、アセチル基、乳酸基、メチル基、リン酸基が結合した誘導体がある。これらの誘導体は機能に差異があり、細胞の分化と機能に関係している。また、一部は受容体として機能を呈している。
このノイラミン酸誘導体は、ノイラミン酸のカルボン酸部分に、グルタミンのアミノ基が結合している。グルタミンはL型であり、ペプチドやタンパク質を構成するタイプである。この結合は、ペプチド結合であり、ノイラミン酸のカルボキシル基の炭素とグルタミンのN基が直接、結合している。
このノイラミン酸誘導体は化学合成され、標準品として利用される。その構造はH−NMRなどの分析により同定される。たとえば、400MHzのH−NMR解析により、ケルミカルシフトのピークとして1.71、1.89、1.99、2.14、2.46、3.18、3.49、3.51、3.61、3.74、3.84及び8.08ppmあたりに検出される。さらに、標準品の質量分析、IRや定性反応などによってこのノイラミン酸誘導体が同定される。
その他の水酸基はフリータイプであり、水酸基として反応性を保持している。これらの水酸基には抗酸化作用があり、このノイラミン酸誘導体を安定化する。さらに、水溶性を高め、腸管や皮膚からの吸収を高める。
このノイラミン酸誘導体のグルタミン部分は軽度の疎水性を有しており、脂肪部分への浸透が促進されることから好ましい。
このノイラミン酸誘導体は水酸基の水溶性部分とグルタミン酸の疎水性部分により、両親媒性を呈し、皮膚の角質層への浸透に優れることは効果の点から好ましい。ランゲルハンス細胞は角質の下層である表皮層に存在しているため、このノイラミン酸誘導体はランゲルハンス細胞に直接的に作用できることは好ましい。
また、このノイラミン酸誘導体は小腸の粘膜層に浸透し、腸管から吸収されやすく、肝臓を経て全身の皮膚に輸送されることは好ましい。
このノイラミン酸誘導体は表皮組織に浸透してランゲルハンス細胞を活性化する。ランゲルハンス細胞は免疫を調整する働きがあり、低下した免疫機能に対しては免疫を賦活し、高すぎる免疫機能に対しては抑制するという両面を呈することから好ましい。特に、免疫が低下した状態に対してランゲルハンス細胞を活性化して免疫機能を高める働きに優れ、加齢、放射線照射、紫外線による日焼けや障害で低下した免疫機能を高めることは好ましい。
このノイラミン酸誘導体はランゲルハンス細胞の細胞表面で種々の受容体を刺激してこの細胞を活性化させ、抗原提示能力を調整する。
さらに、EGFやSCFなどの成長因子と相乗的に作用することは好ましい。つまり、EGFは皮膚上皮細胞のEGF受容体に結合して細胞内情報伝達系を活性化するが、このノイラミン酸誘導体はEGF受容体の反応性を高めてかつ、細胞内情報伝達系を刺激することによりEGFの働きを活性化する。
また、ノイラミン酸誘導体はランゲルハンス細胞の細胞膜を通過して細胞内に取り込まれ、核内の免疫調整遺伝子、成長因子の遺伝子、サイトカインの遺伝子などに働きかけ、ランゲルハンス細胞を活性化する。さらに、皮膚癌に対してノイラミン酸誘導体はランゲルハンス細胞を活性化し、免疫機能、特に、ナチュラルキラー活性を高めることにより、皮膚癌の食作用を増加させ、癌の減少を行うことは好ましい。
このノイラミン酸誘導体は粉末化された場合、還元状態により水溶性溶媒と反応することにより水素ガスを発生する。これはノイラミンの水酸基により反応であり、発生された水素ガスはヒドロキシルラジカルを消去することにより活性酸素による影響を除去できる点は産業上の利点であり、化粧料や食品に利用できる点は好ましい。
一方、このノイラミン酸誘導体は腎臓内部のエステラーゼにより分解されてノイラミン酸とグルタミンに分解され、代謝されて排泄されることから、安全性が高く、体内や土壌などの環境中での残留性が低いことは環境の側面から好ましい。
このノイラミン酸誘導体は発酵法、酵素反応法や化学合成法などのいずれかの方法でも製造される。
たとえば、このノイラミン酸誘導体の製法としてはアミガサタケから抽出することができる。この抽出方法には発酵やプロテアーゼやリパーゼなどの消化酵素を利用する方法は抽出効率が高められることから好ましい。
また、酵素反応法の場合、ノイラミン酸を含有する植物から抽出することができる。または、発酵により微生物に生合成させることができる。
さらに、精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることは好ましい。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜40倍量が好ましく、4〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
また、活性を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
このノイラミン酸誘導体はランゲルハンス細胞に直接作用し、美肌作用や皮膚再生作用を呈する。
ノイラミン酸誘導体に油脂を添加することは、得られる活性成分が油の中で安定に維持することから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
医薬品として注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤として美容を目的とした美容食品、美容を目的とした食品、健康的な細胞の維持を目的とした免疫機能賦活剤などに利用される。また、保健機能食品として栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、皮膚や組織の健康を維持する目的として、飼料やペット用サプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができ、ランゲルハンス細胞の産生を促進する化粧料となる。
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
次に、アミガサタケと大豆を添加し、納豆菌により発酵させた発酵液に分岐シクロデキストリンを添加してプロテアーゼ処理を行う工程からなる式(1)で示されるランゲルハンス細胞活性化作用を呈するノイラミン酸誘導体の製造方法について説明する。
ここでいう式(1)で示されるノイラミン酸誘導体はノイラミン酸の1分子とグルタミンの1分子からなる物質であり、ランゲルハンス細胞活性化作用を呈する物質である。
このノイラミン酸誘導体は表皮組織に浸透してランゲルハンス細胞を活性化する。ランゲルハンス細胞は免疫を調整する働きがあり、低下した免疫機能に対しては免疫を賦活し、高すぎる免疫機能に対しては抑制するという両面を呈することから好ましい。
特に、免疫が低下した状態に対してランゲルハンス細胞を活性化して免疫機能を高める働きに優れ、加齢、放射線照射、紫外線による日焼けや障害で低下した免疫機能を高めることは好ましい。
このノイラミン酸誘導体はランゲルハンス細胞の細胞表面で種々の受容体を刺激して細胞を活性化させ、抗原提示能力を調整する。
この製造方法はアミガサタケと大豆を添加し、納豆菌により発酵させた発酵液に分岐シクロデキストリンを添加してプロテアーゼ処理を行う工程からなる。
原料となる物質はアミガサタケ、大豆、納豆菌、分岐シクロデキストリン及びプロテアーゼである。
アミガサタケとは学名Morchella esculentaであり、アミガサタケ科アミガサタケ属の食用キノコである。
アミガサタケは、天然に自生しているもの、胞子から栽培されるもののいずれでも用いられる。自生の場合、日本、アジア、ヨーロッパ、アメリカなどの北半球のいずれのものでも良く、農薬が使用されていない山間地で自生したものは安全性が高いことから好ましい。
胞子から栽培する場合には、ジャガイモとブドウ糖寒天培地や麦芽エキス寒天培地などを用いて生育させることができる。
これらの培地上で胞子を播種し、20℃で24時間以内、培養することにより、発芽し菌糸が得られる。
この原産国は日本、アジア、アメリカ、ヨーロッパなどいずれも利用できる。特に、日本内のアミガサタケは品質も良好であることから好ましい。
原料となる大豆は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆は有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
大豆は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
用いる納豆菌は学名バチルス サブチリスであり、納豆の製造に利用される有用な微生物である。納豆素本舗の粉末の納豆菌は品質が良好で発酵に適していることから好ましい。
分岐シクロデキストリンは環状ブドウ糖の一つであり、ブドウ糖が環状に結合し、食品や化粧料に利用されることから好ましい。この分岐シクロデキストリンは内腔に疎水性部分を有することから疎水性の高い物質を吸着しやすい。塩水港精糖社製の分岐シクロデキストリンは品質が高いことから好ましい。
用いるプロテアーゼとしては天野エンザイム社製の食品加工用プロテアーゼであるプロテアーゼA「アマノ」SD、プロテアーゼM「アマノ」SDまたはプロテアーゼP「アマノ」3SDの品質が安定し、使用実績が豊富なことから好ましい。
まず、アミガサタケは粉砕機やミキサーなどにより粉砕にされる。粉砕されることにより、加工がしやすくなる。大豆は粉砕機により粉砕され、清浄な水を添加して懸濁される。アミガサタケ100gに対して大豆は60〜200g添加され、清浄な容器の中で精製水などの水と3リットル〜10リットルとともに攪拌される。
アミガサタケと大豆は煮沸滅菌され、発酵タンクに添加される。滅菌することにより雑菌の混入が防御され、納豆菌による発酵が進行する。
発酵は静置法または撹拌法のいずれでも良いが、発酵を短時間で実施できる点から撹拌法が好ましい。発酵は40〜44℃で21時間から74時間行われることが好ましい。温度が低く、時間が短い場合には発酵が進まず、温度が高く、時間が長い場合には目的とするノイラミン酸誘導体が分解されてしまうおそれがある。
この発酵液は濾過布などにより濾過されることは以下の工程を容易に行えることから好ましい。
このろ液に分岐シクロデキストリンが添加される。分岐シクロデキストリンは環状ブドウ糖の一つであり、ブドウ糖が環状に結合し、食品や化粧料に利用されることから好ましい。この分岐シクロデキストリンは内腔に疎水性部分を有することから疎水性の高い物質を吸着しやすい。塩水港精糖社製の分岐シクロデキストリンは品質が高いことから好ましい。
添加される分岐シクロデキストリンはアミガサタケ100gに対して分岐シクロデキストリンの30gから300gが好ましい。この分岐シクロデキストリンによりノイラミン酸とグルタミンが結合して誘導体が生成される。
この分岐シクロデキストリンとの懸濁液は攪拌されることが好ましい。
この懸濁液にプロテアーゼが添加される。添加されるプロテアーゼは発酵液100gに対して0.003gから0.5gが好ましい。このプロテアーゼは精製水に懸濁して添加されることは反応が進むことから好ましい。
この懸濁液は反応を促進するために加温され、攪拌されることは好ましい。加温としては37〜44℃が好ましい。また、攪拌は1分間当り13〜37回が好ましい。時間は1時間から5時間が好ましい。
このプロテアーゼ反応液は濾過される。濾紙やメンブランフィルターを用いることにより効率良くろ過される。ろ過してろ液を得ることにより反応していない成分や原料を排除できることから好ましい。
得られた反応物は煮沸滅菌され、プロテアーゼを失活させることは好ましい。
得られた反応物は、凍結乾燥することにより粉末化され、用いられる。
前記の反応物から、目的とするノイラミン酸誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするノイラミン酸誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜32倍量が好ましく、5〜19倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜26℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
ノイラミン酸誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするノイラミン酸誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
また、このノイラミン酸誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
フランス産のアミガサタケ1kgを有限会社パセオより購入して用いた。これを水洗後、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)に精製水とともに懸濁して懸濁物0.9kgを得た。
アミガサタケは農薬の分析を事前に行い、在留農薬のないことを確認した。なお、使用まで凍結保管した。
さらに、北海道産の大豆1kgを三輪物産より購入して用いた。これを洗浄後、粉砕機により粉砕し、粉砕物約950gを得た。
アミガサタケの懸濁物500gと大豆粉末500gを清浄なステンレス製の寸胴に移し、5リットルの精製水を添加して懸濁した。
これを93〜97℃で1時間煮沸して滅菌した。これらを100kg容量の横河電機社製の撹拌式発酵タンク(FP211)に移し、滅菌した精製水20リットルを添加した。
これに納豆菌本舗である有限会社高橋祐蔵研究所製造の粉末納豆菌3gを購入した。この納豆菌を滅菌水100gに懸濁し、これに粉末大豆粉を添加し、37℃で1時間加温して前培養した。
この納豆菌液を前記の撹拌式発酵タンクに添加して41〜43℃で36時間発酵させた。発酵の状態は大豆の粉末の分解性及び溶解したタンパク質の定量(ビューレット法)によりモニタリングした。
発酵後、得られた発酵液の上清を濾過布により粗濾過してろ液を得た。
このろ液22リットルを清浄なタンクに移してこれに塩水港精糖社製の分岐シクロデキストリン(イソエリート)200gを添加して十分に攪拌した。
さらに、天野エンザイム製のプロテアーゼM「アマノ」SDの3gを添加し、37℃に加温して攪拌した。
攪拌は攪拌装置を用いて室温で3時間実施した。この反応液を煮沸滅菌し、酵素を失活させた。得られた反応液を東洋濾紙の濾紙(No.2)により吸引ろ過してろ液を得た。
この溶液を凍結乾燥機(タイテック社製のフリーズトラップVA−140S)により凍結乾燥させて目的とする粉末136gを得た。これを検体1とした。この検体1の0.1gを10mLの精製水に懸濁したところ、1.6ppmの水素ガスが発生することがガスクロマトグラフィーにより検知された。
得られた検体1の粉末100gを精製水400mLに懸濁して5%エタノールで膨潤させたダイアイオン(三菱化学製)500gに供した。6%エタノール900mLで洗浄後、50%エタノールの1リットルでさらに、洗浄した。
これに、80%エタノール700mLを添加し、目的とするノイラミン酸誘導体を分画した。得られた分画を減圧乾燥器(日本バイオコン社製)により乾燥し、粉末13gを得た。この粉末を検体2とした。この検体2の0.1gを5mLの精製水に懸濁したところ、1.6ppmの水素ガスが発生することがガスクロマトグラフィーにより検知された。
以下に、ノイラミン酸誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体2を精製水に溶解し、濾過後、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製)で解析した。構造解析の結果、検体2からノイラミン酸とグルタミンが結合した誘導体が検出された。
その結合はノイラミン酸のカルボキシル基とグルタミンのアミノ基の1分子ずつが結合するペプチド結合であった。一方、イノラミン酸の水酸基はフリーであった。その他の結合や重合体については、認められなかった。
H−NMR(400MHz、ブルカー製)による解析の結果、ケミカルシフトとして1.71、1.89、1.99、2.14、2.46、3.18、3.49、3.51、3.61、3.74、3.84及び8.08ppmにピークが認められた。さらに、IRや質量解析の結果から、ノイラミン酸誘導体が同定された。
以下に、ヒト皮膚由来ランゲルハンス細胞に対する作用の確認試験について述べる。
(試験例2)
年齢25歳から46歳の女性ボランティア3名より皮膚を医師の指導下、インフォームドコンセプトを得たのち、麻酔下で剥離法により採取した。これを消毒液で洗浄後、コラゲナーゼ含有リン酸緩衝液にて分散させて、細胞懸濁液を採取した。
抗ランゲルハンス細胞抗体を接着させたシャーレ(ファルコン製)に上記の細胞懸濁液を添加し、無菌下、室温で1時間反応させた。
抗体は、コスモバイオ社より購入したヒト由来ランゲルハンス細胞抗体4D12マウスIgGを用いた。
この方法は抗原抗体法による細胞の採取法であり、細胞の回収率は90%程度と効率的である。
抗原抗体反応後、シャーレを慎重に培養液(5%ヒト血清含有MEM培地)にて洗浄し、これを5%炭酸ガス下、37℃で培養液中培養した。
培養を24時間実施して培養終了後、さらに、培養液で軽度に洗浄した。シャーレに付着した細胞をトリプシンにより採取し、ランゲルハンス細胞とした。
これを培養液に懸濁してシャーレに播種した。これを培養し、18時間後に、検体2の培養液懸濁液0.1mg/mLを添加した。溶媒対照として培養液のみを用いた。成長因子の対照としてヒト由来EGFを0.1mg/mL添加した。さらに、EGFと検体2を同時に添加する群も設定した。
これを37℃で48時間培養し、生細胞数をトリパンブルー色素法により計数した。
さらに、細胞懸濁液中のATP産生量を蛍光法(CellTiter−Gloアッセイ、プロメガ)により定量した。なお、5枚のシャーレにより実験し、結果は平均値を溶媒対照に対する変化率で求めた。
その結果、溶媒対照の細胞数を100%として検体2の添加によりランゲルハンス細胞数は320%に増加した。一方、EGFでは180%となり。検体2の方が優れていた。さらに、EGFと検体2の併用により細胞数は720%となり、相乗的な増殖効果が認められた。
ATP量については溶媒対照の値を100%とした場合検体2の添加によりATP量は530%に増加した。一方、EGFでは240%となり、検体2の方がランゲルハンス細胞のATP産生が高まり、活性化に優れていた。さらに、EGFと検体2の併用によりATP量は1530%となり相乗的な増加効果が認められた。