以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。また、以下の説明において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各図において矢印で示した方向を基準として用いる。但し、各構成の向きは、一例にすぎず、任意の向きに変更することができる。
図1は、実施の形態に係る把持機構を上方から見た概略斜視図である。図2は、実施の形態に係る把持機構を下方から見た概略斜視図である。図1及び図2に示すように、把持機構1は、上部把持部10と、高さ位置検出部20と、下部把持部30と、引っ掛け部40とを備えて構成され、上部把持部10と下部把持部30とで物品Wを鉛直方向から挟み込んで把持するものである(図24参照)。
上部把持部10は、概略長方形の板状をなして水平方向に向けられるベースプレート11と、ベースプレート11の面内中央領域にて貫通する複数(本実施の形態では8体)の吸着部12とを備えている。ベースプレート11は、本実施の形態では、長辺が前後両側に形成され、短辺が左右両側に形成される。
ベースプレート11の上面における左右両端に沿う位置には、ブラケット13、14が起立して設けられ、左側のブラケット13の方が右側のブラケット14より高さが高くなっている。右側のブラケット14の上端側から左側のブラケット13の高さ方向中間部には、水平方向に向けられた板状のロボット接続部15が連結されている。ロボット接続部15は、不図示の多関節アーム等のロボットアームや2軸或いは3軸の移動機構等に接続される部分であり、接続対象に応じて締結具等を装着するための開口や穴が形成されている。
吸着部12は、ベースプレート11の下方に設けられて吸盤状に形成される吸着パッド12aと、吸着パッド12aを上方から支持するとともにベースプレート11を上下に貫通して設けられるホルダ12bとを備えている。ホルダ12bの上端部には、真空ポンプ等の吸引源に連通するホース(何れも不図示)が接続され、これらを通じた吸引によって吸着パッド12aの下面となる吸着面に負圧を生じさせて物品W(図17参照)を吸着保持できるようになる。ベースプレート11において吸着部12が設置される領域には、高さ位置検出部20も設けられる。
高さ位置検出部20はポテンションメータ21を備え、ポテンションメータ21は、メータ本体21aと、メータ本体21aによって鉛直方向に直線的に移動可能に支持される移動子21bとを有している。ポテンションメータ21は、移動子21bの上下位置に対応する位置信号、或いは、所定の上下位置を閾値として移動子21bが閾値より上下の何れかに位置するかの信号を出力する機能を備えている。なお、ポテンションメータ21は、移動子21bの移動による力を検出するようにしてもよく、ポテンションメータ21に替えて他のセンサ等を用いてもよい。
ポテンションメータ21において、メータ本体21aは、ベースプレート11上に設けられる一方、移動子21bは、ベースプレート11を貫通して先端がベースプレート11の下面から突出するよう設けられる。ここで、高さ位置検出部20は、移動子21bの先端(下端)に連結される長方形の板状部材23と、板状部材23の左右両側にそれぞれ設けられた案内部24とを更に備えている。
板状部材23は、ベースプレート11の下方にて水平に設けられており、上面中央部にて移動子21bの先端が連結されている。板状部材23の面内には、吸着パッド12aと接触しないように吸着パッド12aが挿通される穴23aが複数形成されている。また、板状部材23の下面中央部には、合成樹脂等の弾性体からなる突起25(図1では不図示)が下方に突出して設けられている。突起25の先端は半球状に形成されている。
案内部24は、下端側が板状部材23に固定されてベースプレート11を貫通する丸軸状の軸部24aと、ベースプレート11に設けられて軸部24aが挿通されるガイド部24bとを備えている。案内部24では、軸部24aがガイド部24bに挿通されることで軸部24a及び板状部材23の鉛直方向の移動を案内し、且つ、それらの水平方向の移動を規制している。板状部材23には移動子21bが連結されるので、かかる移動子21bにおいても、案内部24により鉛直方向の移動が案内され且つ水平方向の移動が規制される。これにより、移動子21bに水平方向等の鉛直方向とは異なる方向の力が加わることを防ぐことができる。軸部24aの上端には、軸部24aの外径及びガイド部24bの内径より大径となる抜け止め部24c(図2では不図示)が形成される。抜け止め部24cがガイド部24bの上端面に載置されることで、軸部24a及び板状部材23の下方移動が規制される。つまり、抜け止め部24cがガイド部24bの上端面に載置されたときの板状部材23の位置が下降限となる。
下部把持部30は、水平方向に延びて細長い片状をなす第1受け部材31a及び第2受け部材31bと、下端部に第1受け部材31a及び第2受け部材31bが固定されて鉛直方向に延びる第1長尺部材32a及び第2長尺部材32bと、各長尺部材32a、32bを支持するためのリフタプレート33とを備えている。更に、下部把持部30は、各長尺部材32a、32bを鉛直方向に駆動させる駆動部34と、リフタプレート33上に設けられた回転変位部35(図2では不図示)とを備えている。本実施の形態では、左側に第1受け部材31a及び第1長尺部材32aが配置され、右側に第2受け部材31b及び第2長尺部材32bが配置される。下部把持部30は、第2受け部材31bと第2長尺部材32bとの間に設けられた高さ調整部50を更に備えている。
図3は、実施の形態に係る把持機構を後方から見た概略斜視図である。図3に示すように、各長尺部材32a、32bの上端は、回転変位部35を介してリフタプレート33に支持されている。また、各長尺部材32a、32bは、長手方向中間部にてベースプレート11上の軸受36に挿通され、鉛直方向に移動可能とされつつ軸線周りに回転変位可能に設けられている。リフタプレート33は、表裏が水平方向に向けられて左右に細長い板状に形成されている。
駆動部34は、ベースプレート11上に設けられた駆動用モータ34aと、駆動用モータ34aの出力軸に接続された駆動プーリ34bと、駆動プーリ34bの上方にてブラケット13にアングル部材を介して回転可能に支持される従動プーリ34cとを備えている。更に、駆動部34は、駆動プーリ34b及び従動プーリ34cに掛け回される無端ベルト34dと、リフタプレート33に固定されて無端ベルト34dを挟み込むクランプ部材34eとを備えている。駆動部34では、駆動用モータ34aの駆動によって駆動プーリ34b及び従動プーリ34cを介して無端ベルト34dを回動させる。この回動によって、駆動プーリ34b及び従動プーリ34cの間の無端ベルト34dは上下動するので、クランプ部材34eも無端ベルト34dと共に上下動する。これにより、クランプ部材34eが固定されるリフタプレート33及びこれに支持される各長尺部材32a、32bが鉛直方向に駆動され、この駆動によって各受け部材31a、31bが鉛直方向に変位する。かかる変位により、各受け部材31a、31bが上部把持部10の吸着部12(図2参照)と相対的に離間接近可能になる。
ここで、ベースプレート11の左右両側には、リフタプレート33を貫通するガイドシャフト37がそれぞれ起立して設けられている。また、リフタプレート33の左右両側には、ガイドシャフト37が挿通される案内支持部38が設けられている。リフタプレート33を含む下部把持部30が鉛直方向に動作するときに、ガイドシャフト37に沿って案内支持部38が鉛直方向に動作することとなる。これにより、左右に案内支持部38が設けられるリフタプレート33が水平方向に移動したり水平方向から傾いたりすることを規制しつつ、リフタプレート33及び各長尺部材32a、32bの鉛直方向の移動を円滑に案内する。
回転変位部35は、リフタプレート33の上面側に設けられた変位用モータ35aと、変位用モータ35aの出力軸に接続される駆動ギヤ35bと、各長尺部材32a、32bの上端側にそれぞれ設けられた従動ギヤ35c、35dと、2体の従動ギヤ35c、35dと駆動ギヤ35bとの間に設けられた中間ギヤ35e、35f、35gとを備えている。なお、本件図面においては、中間ギヤ35e、35f、35gの歯の図示を省略している。各中間ギヤ35e、35f、35gの回転軸及び各長尺部材32a、32bの上端側は、リフタプレート33と、その上方に位置する軸受プレート39とにより回転可能に支持される。
第1長尺部材32aに設けられた従動ギヤ35cと駆動ギヤ35bとの間には、1枚の中間ギヤ35eが噛み合うように設けられている。第2長尺部材32bに設けられた従動ギヤ35dと駆動ギヤ35bとの間には、2枚の中間ギヤ35f、35gが左右に並んで噛み合うように設けられている。従って、駆動ギヤ35bを回転させたときに、左側の従動ギヤ35c及び第1長尺部材32aと、右側の従動ギヤ35d及び第2長尺部材32bとでは、中間ギヤ35e、35f、35gの枚数の相違によって回転方向が反対方向となる。これにより、駆動ギヤ35bをR1方向に回転することで、各長尺部材32a、32bがr1方向に回転して各受け部材31a、31bが前方に突出する方向に回転変位する。このとき、各受け部材31a、31bが各把持部10、30で把持する物品W(図22参照)の下面に当接し、図1ないし図3の状態での各受け部材31a、31bの位置を「把持位置」と称する。把持位置では、各受け部材31a、31bの先端が左右に離れ、前後方向に延出するように位置する。
一方、駆動ギヤ35bをR2方向に回転することで、各長尺部材32a、32bがr2方向に回転し、各受け部材31a、31bが長尺部材32a、32bの前後位置まで後退する方向に回転変位する(図4A参照)。ここで、各受け部材31a、31bは、図4Aに示す位置が最も後退し、且つ、物品Wの下面から退避した位置(図19参照)となる。この位置において、各受け部材31a、31bは、各長尺部材32a、32b間で左右方向に略平行に向けられつつ、上下に部分的に重なるように位置する。この状態での各受け部材31a、31bの位置を「退避位置」と称する。なお、各受け部材31a、31bの退避位置と把持位置との間における移動過程での動作については後述する。
図5は、一部構成を省略した把持機構を上方から見た概略斜視図である。図5に示すように、引っ掛け部40は、リフタプレート33に支持されるモータ41と、リフタプレート33に連結されて下方に延在する可動フック42とを備えている。モータ41の出力軸には、カップリング43を介して左右に延びるシャフト44の一端(右端)が連結され、シャフト44の他端(左端)側は軸受45に回転可能に支持されている。シャフト44の延在方向中間部には、2体のプーリ46が所定間隔を隔てて設けられ、各プーリ46には図5にて二点鎖線で示すワイヤ47が巻き掛けられている。従って、引っ掛け部40では、モータ41の駆動によってプーリ46を介してワイヤ47を巻き取り及び繰り出し可能となっている。ワイヤ47は、プーリ46から後方に延びてから不図示の滑車等を通過し、可動フック42の前面に沿って下方に延びるように配設される。
可動フック42は、リフタプレート33から下方に延びるフック本体部42aと、フック本体部42aの下端側に中間部42bを介して配設される先端部42cとを備えている。フック本体部42aと中間部42bとは左右2体のヒンジ42dで回転可能に連結されている。中間部42bと先端部42cとは、上記左右2体のヒンジ42dの間に配置されたヒンジ42eで回転可能に連結されている。各ヒンジ42d、42eには、戻しばね(付勢手段)42fが設けられ、ワイヤ47による力が加わっていないときには、各ヒンジ42d、42e及び戻しばね42fによって中間部42b及び先端部42cの前後両面が鉛直方向に向けられた姿勢に保たれる。また、ワイヤ47が巻き上げられることで、戻しばね42fの力に抗しつつ各ヒンジ42d、42eを介して中間部42b及び先端部42cが横向きや上向きとなるように変位する。かかる変位については、図6を参照して以下に説明する。
図6A~図6Cは、可動フックを側方からみた説明用模式図である。図6Aに示すように、可動フック42の前面側において、フック本体部42aの下端側と、中間部42bとには、ワイヤ47が挿通される鞘部材48が設けられている。そして、鞘部材48を通過するように上方から下方に延びるワイヤ47の下端は先端部42cに固定されている。可動フック42では、ワイヤ47が巻き上げられることで、ワイヤ47によって中間部42b及び先端部42cに引っ張り力が作用する。この引っ張り力によって、図6B及び図6Cに示すように、ヒンジ42dを介して中間部42bが横向きに回転変位し、先端部42cの先端がヒンジ42eを介して上向きになるよう回転変位する。一方、ワイヤ47による引っ張り力が解除されると、戻しばね42f(図5参照)の力によって、中間部42b及び先端部42cの前後両面が鉛直方向に向けられた姿勢に復帰される。
図3に戻り、可動フック42は、ベースプレート11の後端側に形成された凹部11a内に配置され、各長尺部材32a、32bの前後幅に収まるように配置されている。また、各長尺部材32a、32bは、ベースプレート11及びリフタプレート33の後端近傍に貫通して配置されている。従って、把持機構1の最後方位置近傍に、各長尺部材32a、32bが配置され、把持機構1にて各長尺部材32a、32bから後方に大きく突出する部分がないように構成されている。
ここで、把持機構1は、中央処理装置(CPU)等からなる制御部2(図1参照)によって駆動制御される。制御部2は、ポテンションメータ21の出力信号や、予め記憶されたデータ、各種プログラムの演算結果に基づき、各モータ34a、35a、41や把持機構1を移動するロボットアーム等の駆動量、駆動タイミング等を制御する。
続いて、高さ調整部50、第1受け部材31a及び第2受け部材31bについての詳細な構成を、図7ないし図13を参照して以下に説明する。
図7Aは、第2受け部材が下限位置となる高さ調整部の縦断面図であり、図7Bは、図7Aの状態から第2受け部材が上昇した高さ調整部の縦断面図である。図7A及び図7Bに示すように、高さ調整部50は、ガイド軸51と、圧縮コイルばね(弾性部材)52と、ピン53とを備えている。ガイド軸51は、第2受け部材31bを下面側から貫通し、先端側が中空となる第2長尺部材32b内に挿入されている。ガイド軸51と第2受け部材31bとは、ねじ結合されて固定される。ガイド軸51には、上下方向に延在する切欠部51aが形成され、切欠部51aの上端はガイド軸51上端から若干低い位置に設定される。切欠部51aの下端は第2受け部材31bの上面から所定距離上方に離された位置に設定される。
切欠部51aの内部には、ピン53が受容される。ピン53は、第2長尺部材32bを横方向から貫通して第2長尺部材32bの内周面から突出している。ピン53及び切欠部51aを介してガイド軸51及びこれに固定される第2受け部材31bの移動が許容及び規制される。
具体的には、高さ調整部50において、ピン53の内方端が切欠部51aの鉛直面に当接することで、第2長尺部材32bとガイド軸51及び第2受け部材31bとの相対回転が規制される。また、ピン53が切欠部51aの上端面と切欠部51aの上端縁とが当接した状態で(図7A参照)、ガイド軸51及び第2受け部材31bの下方への移動が規制され、この状態にて第2受け部材31bが下限位置に配置される。一方、この下限位置からピン53が切欠部51aの内に位置する範囲において、ガイド軸51及び第2受け部材31bの上方への移動が許容される(図7B参照)。このように、高さ調整部50では、第2受け部材31bを上下方向に変位でき、第1受け部材31aに対する第2受け部材31bの高さを相違させることができる。
ガイド軸51は、圧縮コイルばね52の内部に挿入されている。圧縮コイルばね52は、上端が第2長尺部材32bの下端面に当接しており、下端が第2受け部材31bの上面に当接している。圧縮コイルばね52は、圧縮させた反力で第2受け部材31bを下方に移動させる力を常時発揮するように設けられる。従って、圧縮コイルばね52の力によって第2受け部材31bが下限位置に位置決めされるようになり、後述のように下方から外力が加わると、圧縮コイルばね52の弾性力に抗して第2受け部材31bが上方に移動するようになる。
図8は、退避位置における第1及び第2受け部材の縦断面図である。図4A及び図8に示すように、第1受け部材31aは、上面側において、水平方向に沿って位置する受け面31aaと、受け面31aaに連なる第1傾斜面31abとを備えている。また、第1受け部材31aは、下面側において、受け面31aaと平行になる底面31acとを備えている。第1傾斜面31abは、第1受け部材31aの回転方向において、退避位置側から把持位置側に向かって次第に低くなるように形成されている。従って、第1受け部材31aは、第1受け部材31aの回転方向で把持位置側が尖った形状となるブレード状に形成される。
第2受け部材31bは、水平方向に沿って位置して上面を形成する受け面31baを備えている。また、第2受け部材31bは、下面側において、第2傾斜面31bbと、第2傾斜面31bbに連なって受け面31baと平行になる底面31bcとを備えている。第2傾斜面31bbは、第2受け部材31bの回転方向において、把持位置側から退避位置側に向かって次第に高くなるように形成されている。従って、第2受け部材31bは、第2受け部材31bの回転方向で退避位置側が尖った形状となるブレード状に形成される。
図9Aは、退避位置における第1及び第2受け部材の平面図、図9Bは、退避位置における第1受け部材の平面図、図9Cは、退避位置における第2受け部材の平面図である。図9Aに示すように、退避位置においては、第1受け部材31aと第2受け部材31bとが上下方向(図9A中紙面直交方向)に重なっている。図9Bに示すように、第1受け部材31a及びその受け面31aaは、第1受け部材31aの回転変位の中心となる基端側(右端側)から離れるに従って、平面視での幅寸法が次第に小さくなる形状に形成されている。第1受け部材31aの先端側(左端側)における上面には、該先端側が尖った形状になるようにテーパ面31ad(図10Aも参照)が形成されている。
図9Cに示すように、第2受け部材31b及びその受け面31baは、第2受け部材31bの回転変位の中心となる基端側(左端側)から離れるに従って、平面視での幅寸法が次第に小さくなる形状に形成されている。第2受け部材31bの先端側(右端側)における下面には、該先端側が尖った形状になるようにテーパ面31bd(図10Aも参照)が形成されている。
各受け部材31a、31bが退避位置に位置する状態では、第1傾斜面31abと第2傾斜面31bbとが接触して上下に重なって配置される(図8も参照)。このとき、各傾斜面31ab、31bbの接触によって第2受け部材31bが押し上げられており、第2受け部材31bの下限位置から圧縮コイルばね52(図7B参照)の弾性力に抗して上方に移動した状態となっている。
このように各受け部材31a、31bが退避位置に位置する状態から、把持位置に移動する際の動作について、以下に説明する。退避位置として図4A及び図8に示す状態から、上述した回転変位部35(図3参照)を介して各受け部材31a、31bが前方に突出する方向に同時に回転変位すると、第1傾斜面31abと第2傾斜面31bbとが擦れ合うようになる。これにより、第1受け部材31aに対して第2受け部材31bがせり上がり、図10A及び図10Bに示すように、第1受け部材31aの受け面31aaに第2受け部材31bの底面31bcが接触するよう乗り上がった状態となる。
このとき、高さ調整部50の圧縮コイルばね52が圧縮され、第2受け部材31bの上方への変位を許容するようになり、各受け部材31a、31bの高さを相違させて同時に回転変位可能としている。また、各受け部材31a、31bの回転変位で第2受け部材31bがせり上がるときに、各傾斜面31ab、31bbの接触位置が変化するようになり、かかる変化に応じて第2受け部材31bが上方に変位している。
図10A及び図10Bに示す状態から各受け部材31a、31bの回転変位を更に継続すると、図11A及び図11Bに示すように、各受け部材31a、31bのテーパ面31ad、31bd同士が接触した状態となる。そして、かかる状態を経て各受け部材31a、31bの回転変位を継続することで、図12A及び図12Bに示すように、各受け部材31a、31bが相互に離れた状態となる。この状態になると、第2受け部材31bが第1受け部材31aからの外力を受けなくなり、圧縮コイルばね52の付勢力によって第2受け部材31bが下方に変位して下限位置に位置決めされる。このとき、各受け部材31a、31bの受け面31aa、31baは、概略同一面となる水平面上に揃って配置されるようになる。そして、各受け部材31a、31bの高さ位置が維持されたまま、図13A及び図13Bに示す把持位置まで回転変位した後、該回転変位が停止される。
次に、各受け部材31a、31bが把持位置に位置する状態から、退避位置に移動する際の動作について、以下に説明する。図13A及び図13Bに示す状態から上述とは逆方向に各受け部材31a、31bを回転変位すると、図12A及び図12Bに示す状態を経て、図11A及び図11Bに示すように各受け部材31a、31bのテーパ面31ad、31bd同士が接触した状態となる。この状態では、第1受け部材31aのテーパ面31adの上方に、第2受け部材31bのテーパ面31bdが被さるように位置し、各受け部材31a、31bの先端側が上下に重なる状態にすることができる。そして、各受け部材31a、31bの回転変位を継続することで、各テーパ面31ad、31bdが擦れ合うようになる。これにより、第1受け部材31aに対して第2受け部材31bがせり上がり、図10A及び図10Bに示すように、第1受け部材31aの受け面31aaに第2受け部材31bの底面31bcが接触するよう乗り上がった状態となる。
かかる状態になる場合も、高さ調整部50の圧縮コイルばね52が圧縮され、第2受け部材31bの上方への変位を許容するようになり、各受け部材31a、31bの高さを相違させて同時に回転変位可能としている。また、各受け部材31a、31bの回転変位で第2受け部材31bがせり上がるときに、各テーパ面31ad、31bdの接触位置が変化するようになり、かかる変化に応じて第2受け部材31bが上方に変位している。
図10A及び図10Bに示す状態から各受け部材31a、31bの回転変位を更に継続すると、図4A及び図4Bに示すように、第1傾斜面31abと第2傾斜面31bbとが接触する退避位置まで回転変位する。
続いて、本実施の形態の把持機構1が物品を把持する際の動作及び把持機構1を用いた搬送方法について説明する。かかる搬送方法として、先ず、番重Bから物品Wを取り出す搬出方法を図14から図24を参照して説明する。搬出方法は、位置決め工程、高さ位置検出工程、吸着工程、上昇工程、下降工程、リフト工程、挿入工程、把持工程、搬出工程の順に実施される。
図14は、搬出方法の位置決め工程を示す説明用背面図であり、図15は、搬出方法の位置決め工程を示す説明用側面図である。図14及び図15に示すように、搬出方法を実施する前においては、下部把持部30は上限位置又はこれに近い位置まで上昇された位置に保たれ、各受け部材31a、31bが退避位置であって板状部材23より高い位置に設定される。
ここで、本実施の形態の把持機構1で把持する物品Wは、弁当容器であり、鉛直方向に複数(本実施の形態では3つ)積み重ねられている。以下の説明では、先ず、3つ積み重ねた状態の物品Wを把持機構1で把持して搬送する方法について説明する。本実施の形態の物品Wは、下部のトレイ部Waと、トレイ部Waの上方を閉塞する蓋部Wbとを備えている。物品Wの側面におけるトレイ部Waと蓋部Wbとの接続部分には、つば部(被引っ掛け部)Wcが外方に突出するように形成される。つば部Wcは、物品Wの底面より高い位置に形成されている。
位置決め工程では、予め、図14及び図15に示す番重Bの内部に配置される物品Wの前後及び左右方向の座標値を画像処理等の手段を介して取得しておく。そして、この座標値に基づき、不図示のロボットアーム等によって把持機構1が物品Wの上方に移動されてから位置決めされる。この位置決めによって、物品Wの上面側中央領域に吸着部12が配置され、物品Wの後端より僅かに後方に、各受け部材31a、31b及び可動フック42が配置される。
位置決め工程が実施された後に、図16に示すように、高さ位置検出工程が実施される。図16は、搬出方法の高さ位置検出工程を示す説明用側面図である。高さ位置検出工程では、最上段の物品Wに突起25が接触するまでロボットアーム等を介して把持機構1が下降される。そして、突起25が物品Wの上面に接触され、板状部材23及び案内部24を介して上昇されると、この上昇がポテンションメータ21にて検知され、当該検知のタイミングでの把持機構1の高さ方向の座標値が取得される。この座標値に基づき、制御部2(図1参照)を介して最上段の物品Wにおける上面位置が演算されて記憶される。また、ポテンションメータ21の検知のタイミングに応じ、吸着部12の吸着パッド12aが接触しないようにロボットアーム等による把持機構1の下降が停止される。
高さ位置検出工程が実施された後に、図17に示すように、吸着工程が実施される。図17は、搬出方法の吸着工程を示す説明用側面図である。吸着工程では、高さ位置検出工程にて演算された最上段の物品Wの上面に、吸着部12の吸着パッド12aが接触するよう把持機構1がロボットアーム等によって下降移動されてから位置決めされる。この下降移動中、突起25が最上段の物品Wに当接すると、板状部材23の上下移動は停止された状態となり、この状態から把持機構1の下降移動に応じ板状部材23の穴23aを通じて吸着パッド12aが板状部材23より下方に突出するようになる。吸着パッド12aが物品Wの上面に接触されると、不図示の吸引源と吸着部12とが連通した状態とされ、吸着パッド12aにて負圧を生じさせて最上段の物品Wの上面が吸着保持される。
吸着工程が実施された後に、図18に示すように、上昇工程が実施される。図18は、搬出方法の上昇工程を示す説明用側面図である。上昇工程では、吸着工程による最上段の物品Wの吸着保持を維持しつつ、把持機構1がロボットアーム等によって上方に移動される。これにより、複数の物品Wのうち最上段の物品Wだけが吸着部12で吸着されて上昇される。そして、最上段の物品Wの下面側と上から2段目の物品Wの上面側との間に隙間S1を形成した状態で把持機構1が位置決めされる。
上昇工程が実施された後に、図19に示すように、下降工程が実施される。図19は、搬出方法の下降工程を示す説明用側面図である。下降工程では、上昇工程により隙間S1が形成された状態を維持しつつ、駆動部34の無端ベルト34dが回動され、下部把持部30と引っ掛け部40とが下降される。具体的には、下部把持部30の各長尺部材32a、32b及び各受け部材31a、31bと、引っ掛け部40の可動フック42とが、積み重なった物品Wと番重Bの内面との間に入り込むように下降される。
下降工程が実施された後に、図20に示すように、リフト工程が実施される。図20は、搬出方法のリフト工程を示す説明用側面図である。リフト工程では、引っ掛け部40のモータ41が駆動され、積み重ねた物品Wのうちの最下段の物品W、言い換えると、番重B内の底面となる載置面上に載置された物品Wに可動フック42の先端(下端)側が引っ掛けられる。具体的には、図6Cで示したように、可動フック42の中間部42bが横向きに、先端部42cの先端が上向きに回転変位する動作がなされ、当該先端が上方に変位することで引っ掛け箇所となる物品Wのつば部Wcが下方から持ち上げられる。この持ち上げによって、最上段の物品Wを除いた全ての物品Wが前方より後方の方が高くなるよう傾けられ、最下段の物品Wとその載置面となる番重Bの底面との間に隙間S2が形成される。
リフト工程が実施された後に、図21に示すように、挿入工程が実施される。図21は、搬出方法の挿入工程を示す説明用側面図である。挿入工程では、リフト工程により隙間S2が形成された状態を維持しつつ、回転変位部35の変位用モータ35aが駆動され、各受け部材31a、31bが前方に突出する方向に回転変位される。言い換えると、各長尺部材32a、32bが軸回りに回転され、上述したように退避位置の各受け部材31a、31bが把持位置まで回転変位される。これにより、各受け部材31a、31bが隙間S2内に挿入され、各受け部材31a、31bが最下段の物品Wの下方に重なる位置に配置される。ここで、図21においては、物品Wの下面と各受け部材31a、31bの先端とが当接するように見えるが、各受け部材31a、31bの先端は物品W下面の外周より中央側に位置し、当該中央側は凹んでいるので、挿入工程において、それらは非接触となる。
挿入工程が実施された後に、把持工程が実施される。図22及び図23は、搬出方法の把持工程を示す説明用側面図である。把持工程では、先ず、図22に示すように、リフト工程とは反対方向に引っ掛け部40のモータ41が駆動され、可動フック42の先端が下向きになるように動作されて最下段の物品Wとの引っ掛けが解除される。これにより、最下段の物品Wの下面が各受け部材31a、31bの受け面31aa、31baに載置(当接)され、物品Wの下面が番重Bの載置面と非接触となって隙間S2aが形成される。その後、駆動部34の無端ベルト34dが回動され、図23に示すように、下部把持部30における各受け部材31a、31bが上昇されて上から2段目の物品Wの上面が最上段の物品Wの下面に当接される。各受け部材31a、31bの上昇によって各受け部材31a、31bが上部把持部10の吸着部12に相対的に接近され、それらによって積み重ねた物品Wが鉛直方向から挟み込まれて把持される。
把持工程が実施された後に、図24に示すように、搬出工程が実施される。図24は、搬出方法の搬出工程を示す説明用側面図である。搬出工程では、把持工程によって積み重ねた物品Wが把持された状態を維持しつつ、ロボットアーム等の駆動によって把持機構1が上昇され、番重Bの内部から積み重ねた物品Wが取り出される。この取り出し後、ロボットアーム等が更に駆動されることで他の番重等の所定の搬送位置まで物品Wが搬送される。
ここで、複数の物品Wを積み重ねた状態で搬出した場合を説明したが、単一の物品Wを把持して搬出することもできる。この場合、例えば、積み重ねた物品Wの最上段の物品Wだけ搬出する際には、位置決め工程から上昇工程までは上記と同様に実施される。その後、下降工程で隙間S1に対応する高さに各受け部材31a、31bが位置するように下部把持部30が下降される。下降工程の実施後、各受け部材31a、31bが回転変位して隙間S1内に挿入される挿入工程が実施される。挿入工程の実施後は、各受け部材31a、31bの上昇によって各受け部材31a、31bが上部把持部10の吸着部12に相対的に接近され、それらによって単一の物品Wが鉛直方向から挟み込まれる把持工程が実施される。そして、上記と同様に搬出工程が実施される。従って、単一の物品Wを把持する場合には、上述したリフト工程が省略されることとなる。
なお、単一の物品Wを把持して搬出する場合は、番重Bの内部に積み重ねずに収容された物品Wを搬送することもできる。この場合、番重Bにおける側壁の高さによっては、当該側壁よりベースプレート11やリフタプレート33の方が低い位置まで移動される。このとき、把持機構1にて各受け部材31a、31bや可動フック42から後方に大きく突出する部分がないので、番重Bの側壁付近に物品Wが収容されていても、かかる側壁に把持機構1が接触することを抑制することができる。
以上のように、本実施の形態においては、吸着部12で物品Wの上面を吸着しつつ、吸着部12と各受け部材31a、31bと鉛直方向から物品Wを挟み込むので、吸着部12の吸引力が弱まっても挟み込み力の作用によって物品Wを保持した状態を維持することができる。これにより、把持機構1による物品Wの搬送中に物品Wの保持が解除されて落下することを防止することができる。なお、吸引力が弱まる要因としては、物品W上面の凹凸や、シート等で包装した際の皺、搬送時の移動による慣性力が考えられるが、かかる要因があっても落下防止を実現することができる。
また、上記のように退避位置と把持位置との間で各受け部材31a、31bを回転変位させる場合、それらが上下に重なっても高さ調整部50により第2受け部材31bを上下方向に変位させることができる。従って、各受け部材31a、31bの高さを相違させて同時に回転変位させることが可能となり、各受け部材31a、31bのうちの一方を所定角度回転した後で他方の回転を開始する時間差を不要とすることができる。これにより、各受け部材31a、31bを同じタイミングで回転変位して物品Wの把持及び把持解除に要する各受け部材31a、31bの動作時間を短縮することができる。
しかも、各受け部材31a、31bが離れるまで回転変位すると、高さ調整部50によって第2受け部材31bを下限位置に設定でき、把持位置にて各受け部材31a、31bの受け面31aa、31baを同一の水平面上に配置することができる。これにより、物品Wのフラットな底面に対して両方の受け面31aa、31baを接触させることができ、両方の受け面31aa、31baが物品Wから離れないようにして物品Wを安定して把持することができる。
また、高さ調整部50では、各受け部材31a、31bの回転変位時に、各傾斜面31ab、31bbや各テーパ面31ad、31bdの接触位置の変化によって、第2受け部材31bを上下方向に変位させることができる。これにより、各受け部材31a、31bの回転変位を利用して第2受け部材31bを上下に変位でき、第2受け部材31bを上下方向に駆動するためのアクチュエータ等の駆動機構を省略でき、構成の簡略化を図ることができる。
また、第1受け部材31aに対して第2受け部材31bを上方に変位可能としたので、第2受け部材31bの下限位置を把持位置として位置決め可能としつつ、第2受け部材31bが第1受け部材31aの上方に位置するように変位させることができる。
また、本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
上記実施の形態において、各受け部材31a、31bの長さや、物品Wを把持するときの各受け部材31a、31bの前方への突出量は物品Wの大きさ等に応じて適宜変更してもよい。但し、受け部材31a、31bの先端が物品Wの前後方向中央に位置させると、鉛直方向からの挟み込み力を安定して付与でき、且つ、傾けて持ち上げられた物品Wの下面に接触しないように各受け部材31a、31bを挿入及び退避し易くなる。
また、上記実施の形態では、退避位置の各受け部材31a、31bを上下に並べて配置すべく各傾斜面31ab、31bbを接触させたが、これらが上下方向に離れていてもよい。更に、高さ調整部50においては、送りねじ構造等の駆動機構を備え、該駆動機構によって少なくとも一方の受け部材31a、31bを上下動させるようにしてもよい。
また、下部把持部30では、第1受け部材31a及び第2受け部材31bの2体の受け部材により構成することに限られるものでない。上述のように動作する第1受け部材31a及び第2受け部材31bを備えた構成であれば、受け部材を更に増設してもよい。
また、各受け部材31a、31bを同時に回転変位させる場合、何れか一方が所定時間経過後に回転変位したりする等、両方の受け部材31a、31bが多少ずれたタイミングで回転変位させることを妨げるものでない。
また、各受け部材31a、31bの回転変位において、互いに接触しつつ上下の高さ位置を変位できるのであれば、各傾斜面31ab、31bbや各テーパ面31ad、31dbの形成を省略したり、曲面等の他の形状にしたりしてもよい。
また、高さ調整部50は、第2受け部材31bを下方に付勢するために圧縮コイルばね52を用いたが、上記実施の形態と同様に把持位置に位置決めできる限りにおいて、圧縮コイルばね52に代えて第2受け部材31bの自重で下方に変位するようにしてもよい。
また、高さ調整部50では、把持位置と退避位置との間の回転変位において、第2受け部材31bに対して第1受け部材31aを下方向に変位させるようにしてもよい。但し、上記実施の形態のように第2受け部材31bを上方に変位させるようにすると、その下限位置を把持位置での高さ位置とできる点で有利となる。
また、図9B及び図9Cにおいて、各傾斜面31ab、31bbの前後方向の幅を概略均一としたが、各受け部材31a、31bの先端側に向かう従って次第に小さく形成するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、把持する物品Wを弁当容器としたが、把持機構1によって把持できる物品であれば何ら限定されるものでない。例えば、サンドイッチやパン、弁当等の他の食品、各種の電気機器、装置、それらの部品としたり、弁当容器以外の箱やトレイによって梱包されたものとしたりしてもよい。更に、物品Wにおいて、引っ掛け部40による引っ掛け箇所となる被引っ掛け部は、上記のようなつば部Wcに限られず、物品Wの側面や、下面から側面に亘って形成される凹凸部分、傾斜部分、突出部分等とすることができる。かかる被引っ掛け部が物品Wに形成されると、把持機構1において、物品Wを水平な載置面で載置された状態から把持したり、把持した物品Wを水平な載置面に載置したりする際に、物品Wを容易に持ち上げて傾けることができる。
また、把持機構1を用いて物品Wを搬送する場合、下部把持部30で物品Wを下方から支持せずに吸着部12だけで単一の物品Wを吸着保持したり、かかる吸着保持を行わずに、下部把持部30の各受け部材31a、31bに少なくとも1個の物品Wを載せて支持することを妨げるものでない。但し、上記実施の形態のように、上部把持部10及び下部把持部30にて少なくとも1個の物品Wを挟み込んだ方が物品Wを安定して支持することができる。